(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095103
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/063 20060101AFI20240703BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K15/063 B
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212142
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CB06
3D038CB09
3D038CC18
3D038CD03
3D235AA14
3D235AA19
3D235BB57
3D235CC12
3D235CC14
3D235CC24
3D235FF13
3D235FF23
(57)【要約】
【課題】キャビンの上部にタンクや燃料電池を設ける場合に輸送時の嵩を低く抑える。
【解決手段】
本発明の作業車両1は、車体2と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動モータ6と、駆動モータ6に電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8に燃料用のガスを供給するタンク7と、を有する駆動装置5と、燃料電池8及び/又はタンク7を車体2に対して上下方向に移動する移動機構120と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する駆動モータと、
前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池に燃料用のガスを供給するタンクと、
前記燃料電池及び/又は前記タンクを前記車体に対して上下方向に移動する移動機構と、
を備える作業車両。
【請求項2】
前記タンクを収容するケーシングを備え、
前記移動機構は、前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを前記車体に対して上下方向に移動する請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、
前記車体の前部に配備されるボンネットと、を備え、
前記ボンネットは、前記キャビンよりも低く、
前記移動機構は、前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを支持し、且つ前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを前記ボンネットの上方の第1位置と、前記キャビンの上方の第2位置と、に移動させ、
前記第1位置に位置している前記燃料電池及び/又は前記ケーシングは、前記キャビンよりも低い位置に配置されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記移動機構は、
アクチュエータと、
前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを載置する載置部と、
前記アクチュエータによって駆動され、前記載置部を前記第1位置と前記第2位置とに上下方向に昇降自在に支持するブーム部と、
を有している請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、
前記車体の前部に配備されるボンネットと、を備え、
前記移動機構は、前記ケーシングを支持し、且つ当該ケーシングを前記ボンネットの上方の第1位置と、前記キャビンの上方の第2位置と、に移動させ、
前記燃料電池は、前記ボンネットの内部に収容されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、
前記車体の前部に配備されるボンネットと、を備え、
前記移動機構は、前記燃料電池を支持し、且つ当該燃料電池を前記ボンネットの上方の第1位置と、前記キャビンの上方の第2位置と、に移動させ、
前記タンクは、前記ボンネットの内部に収容されている請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池で発電された電力を用いて駆動する作業車両の輸送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、トラクタは、車体の前部に、ボンネットを有している。ボンネットの内部には、エンジン、ラジエータ、燃料タンク及びバッテリ等が収容されている。
【0003】
一方、脱炭素化の実現を目指して、水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の開発が進んでいる。当該作業車両には、水素ガスを収容(貯留)するタンク(水素タンク)と、タンクの水素ガスを用いて発電を行う燃料電池が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池車に設けられる燃料電池は、燃料である水素を収容するタンクを、どの位置に配備するかが技術的に重要となる。一般に、タンクへの燃料充填のし易さなどを考慮して作業車両のキャビンの上部に設ける技術が既に考えられている。しかし、キャビンの上部にタンクを設ける場合、トラックなどを用いて輸送する際に貨物の嵩が高くなって、輸送が非常に不便になるという問題があった。
【0006】
このような問題は、キャビンの上部に燃料電池などを設ける場合にも起こりうる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、キャビンの上部にタンクや燃料電池を設ける場合でも、輸送時の嵩を低く抑えることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0009】
本発明の作業車両は、車体と、前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池に燃料用のガスを供給するタンクと、前記燃料電池及び/又は前記タンクを前記車体に対して上下方向に移動する移動機構と、を備える。
【0010】
作業車両は、前記タンクを収容するケーシングを備え、前記移動機構は、前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを前記車体に対して上下方向に移動するようにしてもよい、
作業車両は、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記車体の前部に配備されるボンネットと、を備え、前記ボンネットは、前記キャビンよりも低く、前記移動機構は、前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを支持し、且つ前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを前記ボンネットの上方の第1位置と、前記キャビンの上方の第2位置と、に移動させ、前記第1位置に位置している前記燃料電池及び/又は前記ケーシングは、前記キャビンよりも低い位置に配置されていてもよい。
【0011】
前記移動機構は、アクチュエータと、前記燃料電池及び/又は前記ケーシングを載置する載置部と、前記アクチュエータによって駆動され、前記載置部を前記第1位置と前記第2位置とに上下方向に昇降自在に支持するブーム部と、を有していてもよい。
【0012】
作業車両は、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記車体の前部に配備されるボンネットと、を備え、前記移動機構は、前記ケーシングを支持し、且つ当該ケーシングを前記ボンネットの上方の第1位置と、前記キャビンの上方の第2位置と、に移動させ、前記燃料電池は、前記ボンネットの内部に収容されていてもよい。
【0013】
作業車両は、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記車体の前部に配備されるボンネットと、を備え、前記移動機構は、前記燃料電池を支持し、且つ当該燃料電池を前記ボンネットの上方の第1位置と、前記キャビンの上方の第2位置と、に移動させ、前記タンクは、前記ボンネットの内部に収容されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る作業車両によれば、キャビンの上部にタンクや燃料電池を設ける場合でも、輸送時の嵩を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】移動機構が第1位置に位置する第1実施形態の作業車両の側面図である。
【
図2】移動機構が第2位置に位置する第1実施形態の作業車両の側面図である。
【
図3】移動機構が第2位置に位置する第1実施形態の作業車両の平面図である。
【
図4】移動機構が第1位置に位置する第2実施形態の作業車両の側面図である。
【
図5】移動機構が第2位置に位置する第2実施形態の作業車両の側面図である。
【
図6】移動機構が第1位置に位置する第2実施形態の作業車両の平面図である。
【
図7】移動機構が第1位置に位置する第3実施形態の作業車両の側面図である。
【
図9】第1実施形態の作業車両において使用可能なケーシング(タンクケーシング)の内部を示す図である。
【
図10】第2実施形態の作業車両において、ボンネットの内部に収容されたタンクを保持する保持体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る作業車両1の好適な第1実施形態について説明する。
【0017】
図1は、第1実施形態のトラクタ(作業車両1)の斜視図である。第1実施形態の作業車両1は、燃料である水素を電極反応させて発電を行う燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)である。作業車両1は、燃料である水素などを貯蔵するタンク7と、タンク7に貯蔵された水素ガスなどの燃料を用いて発電を行う燃料電池8が設けられている。
【0018】
なお、本発明の「貯留する」には、液化した水素ガスなどを貯留するだけでなく、金属化合物などに吸蔵するものも含まれる。
【0019】
また、燃料電池車の燃料には水素以外のメタンなどを燃料として用いる場合もあるため、メタンなどの燃料を用いて発電を行う燃料電池車も、本発明の作業車両1には含まれる。この場合、タンク7にはメタンなどの燃料が貯蔵され、燃料電池8ではメタンなどの燃料を用いて発電が行われる。
【0020】
また、第1実施形態では、作業車両1として、トラクタを例に挙げている。しかし、本発明に係る作業車両1はトラクタに限定されず、例えば、トラクタ以外の農業機械(コンバインや田植機など)、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。
【0021】
以下の説明においては、
図2及び
図3に矢印A1方向で示す方向(作業車両1の前進方向)を前方という。
図2及び
図3に矢印A2で示す方向(作業車両1の後進方向)を後方という。
図2及び
図3に矢印A3で示す方向を前後方向として説明する。矢印A1~矢印A3で示す方向は、
図2及び
図3などの図面において適宜図示している。
【0022】
また、前後方向(矢印A3で示す方向)に直交する方向である水平方向(左右方向)を車体幅方向K1又は幅方向(
図3参照)として説明する。車体幅方向K1は、作業車両1の幅方向である。作業車両1の幅方向の中央部から右方、或いは、中央部から左方へ向かう方向を、車体幅方向K1の外方(幅方向外方)として説明する。つまり、幅方向外方は、作業車両1の幅方向の中心から車体幅方向K1に離れる方向である。幅方向外方とは反対の方向を、車体幅方向K1の内方(幅方向内方)として説明する。つまり、幅方向内方は、車体幅方向K1に作業車両1の幅方向の中心に近づく方向である。
【0023】
図1~
図3に示すように、作業車両1は、車体2と、キャビン3と、走行装置4と、駆動装置5と、を備えている。車体2は、作業装置を連結可能となっている。キャビン3は、車体2に設けられた運転席10を収容している。キャビン3は、車体2の後部に配備されている。車体2の前部には、ボンネット9が配備されている。走行装置4は、車体2を支持すると共に走行させるものである。駆動装置5は、走行装置4を駆動するものである。
【0024】
以降では、作業車両1を構成する車体2、キャビン3、ボンネット9、走行装置4、及
び駆動装置5について説明する。
【0025】
図1~
図3に示すように、車体2は、作業車両1の下部に設けられている。車体2の車体幅方向の両端には、走行装置4が配備されている。車体2の上部には、駆動装置5が配備されている。車体2の後部にはキャビン3が配備されており、車体2の前部にはボンネット9が配備されている。キャビン3及びボンネット9は、車体2の上に載せられた状態で、車体2に固定されている。つまり、第1実施形態の車体2は、走行装置4、駆動装置5、キャビン3、及びボンネット9を支持している。また、車体2の後部には、駆動装置5から走行装置4に動力を伝達するミッションケース29が設けられている。車体2の前部は、金属製のフレーム材などを組み合わせて高い剛性を発揮できるように形成されている。
【0026】
図1及び
図2に示すように、キャビン3は、車体2の後部上方に搭載された箱体であり、内部には運転席10が配備されている。キャビン3は、前後左右のパネルと、隣接するパネル同士の間に配備されるピラーとを有している。具体的には、キャビン3は、運転席10の前方に配備されたフロントパネル11と、運転席10の左方及び右方にそれぞれ配備されたドアパネルと、運転席10の後方に配備されたリアパネル13と、を含んでいる。
【0027】
また、キャビン3は、左フロントピラーと、右フロントピラー15と、左リアピラーと、及び右リアピラー17と、を含んでいる。左フロントピラーは、フロントパネル11と左方のドアパネルとの間に設けられている。右フロントピラー15は、フロントパネル11と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。左リアピラーは、リアパネル13と左方のドアパネルとの間に設けられている。右リアピラーは、リアパネル13と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。
【0028】
ボンネット9は、車体2の前部に搭載されたカバーである。ボンネット9は、金属板などを用いて、後方と下方が開放されると共に、前方、左方、右方、及び上方が閉鎖された形状に形成されている。
【0029】
第1実施形態の作業車両1は、ボンネット9の内部に、収容部62を有している。第1実施形態の場合であれば、収容部62には、燃料電池8、駆動モータ6などが収容されている。このような収容部62をボンネット9の内部に設ければ、燃料電池8などの被収容物がボンネット9により覆われ、ボンネット9により燃料電池8などを走行風、雨、汚泥、塵埃から保護することができる。
【0030】
走行装置4は、路面(地面)に対して車体2を支持すると共に走行させることができる。言い換えると、走行装置4は、車体2に推進力を付与する。第1実施形態の場合、走行装置4は、ゴムタイヤなどで形成された左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び右後輪19Rである。左後輪19L及び右後輪19Rは、左前輪18L及び右前輪18Rよりも大径なゴムタイヤで形成されており、車体2の後部に加わる大きな荷重を支持している。本発明の走行装置4では、左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び右後輪19Rのいずれか、又はこれらの全てに、駆動装置5から動力が伝達されている。なお、走行装置4には、ゴムタイヤに替えてクローラなどを用いても良い。
【0031】
図1~
図6に示すように、本発明の駆動装置5は、車体2に配備されて、走行装置4を駆動させる動力を発生している。第1実施形態の駆動装置5には、燃料電池8で発生した電力が用いられている。具体的には、駆動装置5は、走行装置4を駆動させる動力を発生する駆動モータ6と、駆動モータ6に電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8から供給される電力を貯留するバッテリ20と、を有している。また、作業車両1には、燃料電池8に燃料用の水素ガスを供給するタンク7が設けられている。
【0032】
以降、駆動装置5を構成する駆動モータ6、燃料電池8、バッテリ20、及びタンク7について説明する。
【0033】
図1~
図3に示すように、駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流又は交流の同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、車体2の前後方向の中央よりやや前方に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸を備えており、出力軸を回転駆動させている。出力軸の後端は、ミッションケース29に接続
されている。
【0034】
ミッションケース29には、駆動モータの出力軸に伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどが配備されている。ミッションケース29は、出力軸から入力された動力を減速あるいは増速し、減速あるいは増速された動力を走行装置4の左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び/又は右後輪19Rに出力している。例えば、作業車両1が後輪駆動である場合、動力は左後輪19L及び右後輪19Rのみに伝達される。また、作業車両1が四輪駆動である場合、左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び右後輪19Rの全てに伝達される。
【0035】
なお、第1実施形態の駆動モータ6は、車体2の上部に一箇所だけ配備されており、一基の駆動モータ6で発生した動力が左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び/又は右後輪19Rに分配されている。しかし、本発明の駆動装置5に内蔵される駆動モータ6の設置数などは適宜変更してもよい。
【0036】
第1実施形態の作業車両1では、ミッションケース29は、減速あるいは増速した動力を走行装置4に伝達するだけでなく、動力の一部を作業装置(図示略)に伝達する。具体的には、作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、PTO軸(パワーテイクオフ軸)を設けておき、ミッションケース29に伝達(入力)された動力を、走行装置4だけでなくPTO軸にも出力する。このようにすれば、燃料電池で発生した電力を用いて、作業装置(インプルメント)を作動させることも可能となる。
【0037】
また、本実施形態の作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、連結装置(3点リンク機構102)を設けてもよい。このような3点リンク機構102を設ければ、作業車両1の後方にさまざまなインプルメント(作業装置)を取り付けて、姿勢変更させたり駆動させたりすることが可能になり、作業車両1に多様な作業を実施させることができる。
【0038】
作業装置は、耕運機、ロータリ、マルチャー、ハンマーナイフモア、畦塗り機、運搬機、播種機、ハロー、又は畝立て機などのインプルメントである。
【0039】
なお、上述したPTO軸や3点リンク機構102は、必ず設置されるものではない。コンバインや田植機のような農業機械や建設機械などの作業車両1では、設置されない場合も存在し得る。また、上述した駆動モータ6とは別に、当該駆動モータ6が出力した動力によって駆動する油圧ポンプや、駆動モータ6とは別の電動モータなどを設けておき、作業装置(インプルメント)を油圧又は電動で作動させても良い。
【0040】
燃料電池8は、駆動装置5を駆動させる電力を供給している。燃料電池8は、燃料である水素を酸素と電極反応させ、電気を発生させている。燃料電池8に供給される水素は、タンク7に吸蔵されている。燃料電池8には、電極が多層に亘って積層されて収容されている。タンク7の水素ガスは、バルブユニットを介して燃料電池8に供給され、燃料電池8内において電極反応が行われる。燃料電池8での電極反応では、内燃機関の燃焼反応などで必ず排出される二酸化炭素が排出されない。それゆえ、燃料電池で発生する電力を用いて駆動する本発明の作業車両1は脱炭素化の実現に有望である。
【0041】
具体的には、燃料電池8は、箱状に形成された電池ケーシングの内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数備えている。正極及び負極は、それぞれ正極材及び負極材を用いて、シート状又は膜状に形成されている。単セルには、正極及び負極が1枚ずつ含まれており、隣り合う単セルの間はセパレータにより区切られている。正極にはタンク7の水素ガスが供給され、負極にはコンプレッサなどで圧縮された酸素ガス(酸化ガス)が供給されており、単セルごとに電池反応(発電)が行われる。燃料電池8は、それぞれの単セルで発電された電力を集約することで、駆動装置5を駆動可能な電圧及び電流の電力を発生させている。
【0042】
燃料電池8は、内部に設けられた電極温度を発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整可能とされている。また、燃料電池8には、タンク7からガス配管を通じて水素ガスが供給されている。
【0043】
図4に示すように、タンク7は、燃料電池8で発電させるガスを収容している。タンク7は、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂などを用いて長尺な円筒状に形成
されたボンベが用いられている。タンク7は、ケーシング30(以下、「タンクケーシング30」という)に入れられた状態で、キャビン3の上部に配備されている。第1実施形態の場合であれば、タンク7(ボンベ)は、いずれも車体幅方向に軸心を向けるように前後方向に並んでタンクケーシング30に4本収容されている。
【0044】
図9は、タンクケーシング30の内部を示す図である。タンクケーシング30は、移動機構120の載置部122に取り付けられている。タンクケーシング30は、移動機構120の載置部122に載置される底壁部30A、移動機構120に固定された状態で前側に位置する前壁部30B、移動機構120に固定された状態で左側に位置する左壁部30C、移動機構120に固定された状態で後側に位置する後壁部30D、移動機構120に固定された状態で右側に位置する右壁部30E、移動機構120に固定された状態で上側に位置する上壁部30Fを有している。タンクケーシング30は、底壁部30A、前壁部30B、左壁部30C、後壁部30D、右壁部30E、上壁部30Fによって箱型に形成され、底壁部30A、前壁部30B、左壁部30C、後壁部30D、右壁部30E、上壁部30Fによって囲まれた空間にタンク7が収容されている。なお、底壁部30A、前壁部30B、左壁部30C、後壁部30D、右壁部30Eの少なくとも1つに、ブラケットを設け、ブラケットをボルド、ナット等の締結具で載置部122に着脱自在に取り付けることで、タンクケーシング30を移動機構120から着脱できるようにしてもよい。
【0045】
タンク7の先端には、ネック7aが形成されている。タンク7のネック7aには、図示しない安全弁(電磁弁)を介してガス配管23が連結されている。
【0046】
ガス配管23は、複数のタンク7のそれぞれに配備されており、それぞれのタンク7の水素ガスをバルブユニット24に案内している。ガス配管23には、水素ガスの透過を防止可能な合成樹脂と、可撓性を備えた金属ワイヤなどを組み合わせた複合材料のホースなどが用いられる。
【0047】
バルブユニット24は、ガス配管23を通じてそれぞれのタンク7から送られてきた水素ガスを集め、適宜混合している。バルブユニット24は、水素ガスの圧力及び流量を調整可能な電磁弁などを備えており、燃料電池8で発電するのに適した圧力及び流量に水素ガスを調整することができる。バルブユニット24には、接続管25が設けられている。接続管25の先端は、タンクケーシング30の外部に突出している。接続管25は、前壁部30B、左壁部30C、後壁部30D、右壁部30Eのうち、少なくとも1つの壁部から外部に突出している。接続管25の先端には、燃料電池8と接続される配管(図示略)が接続される。これにより、タンクケーシング30に収容されたタンク7に貯蔵された水素ガスを燃料電池8に送ることができる。
【0048】
上述したボンネット9内には、油圧を発生する油圧ポンプ130が配備されている。油圧ポンプ130には、油圧配管が連結されている。油圧配管の先端は、後述する移動機構120のアクチュエータ121(第1アクチュエータ121a及び第2アクチュエータ121b)に接続されている。
【0049】
バッテリ20は、燃料電池8で発生した電気を蓄電するものである。第1実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、運転席10の下方に配備されている。バッテリ20を運転席10の下方に配備すれば、重量のあるバッテリ20が車両の中でも下方に位置するようになり、作業車両1の重心が低くなり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0050】
さて、本発明の作業車両1は移動機構120を備えることを特徴としている。この移動機構120は、駆動装置5に設けられる駆動モータ6、燃料電池8、バッテリ20、及びタンク7のうち、燃料電池8とタンク7の2つを車体2に対して上下方向に移動する。つまり、移動機構120は、燃料電池8のみを上下方向に移動するものでも、タンク7のみを上下方向に移動するものでも、燃料電池8とタンク7の双方を移動するものでも良い。
【0051】
上述した移動機構120が移動する対象は、燃料電池8とタンク7の2つに限定される。これは、燃料電池8とタンク7がキャビン3の上部に配備される可能性があり、加えて比較的容積が大きな部材であることに起因する。燃料電池8やタンク7のような大容積の部材を、キャビン3の上部に配備すると、作業車両1の輸送時に荷物の嵩が高くなりすぎて、輸送が困難になる。そこで、本発明の作業車両では、燃料電池8やタンク7を、キャビン3の上部から下方に移動する移動機構120を設けている。
【0052】
以降の第1実施形態では、移動対象をタンク7のみとし、キャビン3の上部からタンク7を下方に移動する移動機構120を例に挙げて、本発明の移動機構120を説明する。
【0053】
以下の説明では、移動機構120は、タンク7を収容したタンクケーシング30を移動対象としている。但し、移動機構120は、タンク7自体(ケーシングに収容されていないもの)を移動対象としてもよい。タンク7自体単体を移動対象とする場合、以下の説明の「タンクケーシング30」を「タンク7」と読み替えればよい。
【0054】
第1実施形態の移動機構120は、タンク7を収容したタンクケーシング30を支持しつつ上下に移動させている。移動機構120は、タンクケーシング30を、第1位置P1と、第2位置P2との間で移動する。第1位置P1は、ボンネット9の上方に位置しており、第2位置P2はキャビン3の上方に位置している。つまり、ボンネット9とキャビン3とは前後方向に距離をあけて配置されているので、第1位置P1と第2位置P2との間でタンクケーシング30を移動する際には、かならず前後方向に沿った移動が行われる。
【0055】
タンクケーシング30を第2位置P2とした状態で、タンクケーシング30の外部に突出した接続管25(
図9参照)に対して燃料電池8と接続される配管(図示略)を接続する。タンクケーシング30を第1位置P1とした状態で、燃料電池8と接続される配管と接続管25との接続を解除する。
【0056】
また、第1位置P1に位置しているタンクケーシング30の高さは、キャビン3の上面よりも低い位置に配置されている。つまり、タンクケーシング30を第2位置P2から第1位置P1に移動させると、タンクケーシング30はキャビン3の上面よりも低い位置まで下降する。このような高さに第1位置P1を設定すれば、第1位置P1に移動されたタンクケーシング30はキャビン3よりは低くなる。その結果、タンクケーシング30により作業車両1の嵩が高くなることがなく、タンクケーシング30が作業車両1の輸送時に支障になることもない。
【0057】
つまり、
図1におけるタンクケーシング30の上端の高さをH1、キャビン3の上面の高さをH2とする。上述した「第1位置P1に位置しているタンクケーシング30の高さ」とは、
図1におけるタンクケーシング30の上端の高さH1に他ならない。そして、「第1位置P1に位置しているタンクケーシング30の高さは、キャビン3の上面よりも低い位置に配置」とは、キャビン3の上面の高さH2から、
図1におけるタンクケーシング30の上端の高さH1を引いた場合に、高さの差ΔH(>0)が必ず存在するという意味と解釈することもできる。
【0058】
具体的には、移動機構120としては、
図1~
図3に示すようなものを用いることができる。
【0059】
図1~
図3に示すように、移動機構120は、アクチュエータ121、載置部122、ブーム部123を有している。アクチュエータ121は、基端に近い位置に配備される第1アクチュエータ121aと、先端に近い位置に配備される第2アクチュエータ121bとを有している。載置部122は、水平方向に沿って平坦な板状に形成されており、タンクケーシング30や燃料電池8を載置できるようになっている。ブーム部123は、基端に近い位置に配備される第1ブーム部123aと、先端に近い位置に配備される第2ブーム部123bとを有している。
【0060】
また、移動機構120は、マスト部124、中間体125、マルチカプラ126、及びヘッド部127を有している。
【0061】
マスト部124は、作業車両1のボンネット9の側面に回転自在に配備されている。マスト部124には、第1ブーム部123aの基端と、第1アクチュエータ121aの基端が車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に枢支されている。
【0062】
中間体125は、第1ブーム部123aと、第2ブーム部123bとの間に配備されている。中間体125には、第1ブーム部123aの先端と、第1アクチュエータ121aの先端が車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に枢支されている。中間体125と、マスト部124との間には、第1ブーム部123aを強度面で補助する第1補助アーム128aが設けられている。第1補助アーム128aは、第1ブーム部123aとほぼ並行となる
方向に向かって延びるように取り付けられている。
【0063】
中間体125には、第2ブーム部123bの基端と、第2アクチュエータ121bの基端が車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に枢支されている。
【0064】
マルチカプラ126は、第2ブーム部123bの先端に配備されている。マルチカプラ126には、第2ブーム部123bの先端が、第1連動アーム129aを介して車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に枢支されている。
【0065】
第2ブーム部123bの先端と、基端との間には、第2ブーム部123bを強度面で補助する第2補助アーム128bが設けられている。第2補助アーム128bは、第2ブーム部123bとほぼ並行となる方向に向かって延びるように取り付けられている。
【0066】
ヘッド部127は、第2ブーム部123bの先端に対して、車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に枢支されている。ヘッド部127には、載置部122が側方に向かって張り出すように固定されている。
【0067】
上述した移動機構120には、マスト部124に対して、ブーム部123の基端を揺動させる第1アクチュエータ121aが設けられている。つまり、マスト部124、第1補助アーム128a、中間体125、及び第1ブーム部123aは平行リンク機構を構成している。そのため、第1アクチュエータ121aを用いてマスト部124と中間体125との距離を変更すると、ブーム部123の基端を揺動させることが可能となる。
【0068】
例えば、第1アクチュエータ121aを延ばすと、マスト部124に対して、ブーム部123が、
図1において時計回り方向に回動する方向に揺動する。また、第1アクチュエータ121aを縮めると、マスト部124に対して、ブーム部123が、
図1において反時計回り方向に回動する方向に揺動する。
【0069】
マルチカプラ126は、第2ブーム部123bの先端と、ヘッド部127との双方に対して、車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に連結されている。また、マルチカプラ126は、第2アクチュエータ121bの先端に対して、車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に連結される第1連動アーム129aを有している。マルチカプラ126は、第1連動アーム129aと、ヘッド部127との間を、車体幅方向を向く軸回りに揺動自在に連結する第2連動アーム129bを備えている。つまり、マルチカプラ126は、第1連動アーム129a、第2連動アーム129b、第2ブーム部123b、及びヘッド部127で構成された平行リンク機構となっている。それゆえ、第2アクチュエータ121bを延ばすと、マルチカプラ126は、ヘッド部127を
図1において時計回り方向に回動するように揺動させる。また、第2アクチュエータ121bを縮めると、マルチカプラ126は、ヘッド部127を
図1において反時計回り方向に回動するように揺動させる。
【0070】
つまり、移動機構120では、第1アクチュエータ121aを縮めると、ブーム部123が後方に向かって揺動し、ブーム部123を起立させることができる。なお、ブーム部123に対する載置部122(ヘッド部127)の傾動角度を変えない場合は、ブーム部123の起立に合わせて載置部122が傾斜し、タンクケーシング30が落下する可能性がある。そこで、第2アクチュエータ121bを縮めて、マルチカプラ126を用いて、ヘッド部127を
図1において反時計回り方向に回動するように揺動させる。そうすると、載置部122の姿勢を水平方向に沿った状態に維持したまま、ブーム部123を起立させることができる。つまり、移動機構120では、載置部122の位置を第1位置P1(
図1に示す位置)から、第2位置P2(
図2に示す位置)に移動させることができる。
【0071】
上述した移動機構120での動作は、載置部122にタンクケーシング30を載せたまま、ブーム部123を起立させて、載置部122の位置を第1位置P1から第2位置P2に移動させるものである。しかし、上述した手順と全く逆の手順で操作を行えば、載置部122にタンクケーシング30を載せたまま、ブーム部123を前方に倒すことも可能となる。つまり、移動機構120では、載置部122の位置を第2位置P2から第1位置P1に移動させることもできる。
【0072】
上述した第1実施形態の作業車両1は、移動機構120の移動対象をタンクケーシング30に限定したものである。つまり、第1実施形態の作業車両1は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2の前部に配備されるボンネット9と、を備え
ている。
【0073】
図8に示すように、移動機構120は、タンクケーシング30を支持し、且つタンクケーシング30をボンネット9の上方の第1位置P1と、キャビン3の上方の第2位置P2と、に移動させるものとなっている。そして、第1実施形態の作業車両1では、燃料電池8は、ボンネット9の内部に収容されている。
【0074】
このような第1実施形態の作業車両1では、タンクケーシング30をキャビン3の上方の第2位置P2から、ボンネット9の上方の第1位置P1に移動させることができる。第1位置P1に位置するタンクケーシング30は、キャビン3の上面よりも低い位置に存在している。そのため、このような高さに第1位置P1を設定すれば、タンクケーシング30がキャビン3の上面よりも上方に突出することはない。それゆえ、タンクケーシング30が作業車両1の輸送時に支障になることもない。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の作業車両1について説明する。
【0075】
上述した第1実施形態とは異なり、第2実施形態の移動機構120は、移動対象を燃料電池8のみとし、キャビン3の上部から燃料電池8を下方に移動する移動機構120を例に挙げる。
【0076】
図4~
図6に示すように、第2実施形態の移動機構120では、移動対象がタンクケーシング30(又はタンク7)から燃料電池8に変化しているが、第1位置P1や第2位置P2の定義自体は第1実施形態と変わりがない。
【0077】
第2実施形態の作業車両1では、燃料電池8はキャビン3の上部に位置している。第2実施形態の燃料電池8は、上部の角が丸められた直方体形状のケーシングを備えており、内部には単セルが複数枚積層されている。燃料電池8には、図示を省略するガス配管を通じて水素ガスが供給されている。第2実施形態の作業車両1に設けられるガス配管は、ボンネット9の内部に配備されたタンク7から、後方に向けて配備されている。ガス配管は、キャビン3の左フロントピラー、右フロントピラー15、左リアピラー、又は右リアピラー17のいずれかの内部を通って、下方から上方に向かって配設されている。
【0078】
第2実施形態の燃料電池8では、ガス配管を通じて供給された水素ガスを用いて発電が行われ、電気が発生する。燃料電池8で発生した電気は、キャビン3の左フロントピラー、右フロントピラー15、左リアピラー、又は右リアピラー17のいずれかの内部を通って、上方から下方に送電される。キャビン3の下方に送電された電気は、キャビン3の床下を通ってバッテリ20に送られ、バッテリ20に蓄電される。また、キャビン3の下方に送電された電気は、車体2に設けられた駆動モータ6に送られ、駆動モータ6が駆動される。
【0079】
第2実施形態の作業車両1では、タンク7は、ボンネット9内に収容されている。つまり、ボンネット9は内部が空洞に形成されており、ボンネット9内には収容部62が設けられている。収容部62には、複数(図例では8本)のタンク7が収容されている。複数のタンク7は、上下方向に軸心を向けるようにして起立した状態で収容されている。
【0080】
図10は、ボンネット9の内部に収容されたタンク7を保持する保持体32である。保持体32は、複数本のタンク7を収容でき、ボルト等の締結部材や溶接等により車体2に固定(リジット固定)されている。保持体32は上述したタンク7より大きな内寸を備えた箱状に形成されており、複数本のタンク7を収容する。本実施形態の保持体32は、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。
【0081】
保持体32は、底部34、前壁部35、左壁部36、後壁部37、右壁部38を有している。底部34は、車体幅方向に比べて前後方向に長い長方形の板状に形成されている。前壁部35は、底部34の前縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。左壁部36は、底部34の左縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。後壁部37は、底部34の後縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。右壁部38は、底部34の右縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。保持体32の底部34は、車体2の上部に対して、ボルトなどを用いて締結あるいは溶接などの手段で固定されている。
【0082】
保持体32の前壁部35及び後壁部37の上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部39が形成されている。切欠部39は、タンク7の収容本数に合わせて、前壁部35及び後壁部37に4箇所ずつ形成されている。切欠部39は、凹んだ部分にネック7aを嵌め込むようにして、切欠部39の1箇所につきタンク7が1本収容される。切欠部39の凹んだ部分にネック7aを嵌め込むことで、保持体32は、タンク7に横揺れを起こさないようにタンク7を収容する。
【0083】
第2実施形態の移動機構120には、第1実施形態と同様なアクチュエータ121、載置部122、ブーム部123、マスト部124、中間体125、マルチカプラ126、及びヘッド部127などが配備されている。これらの部材は、載置部122に載置されるものがタンクケーシング30ではなく、燃料電池8である点を除けば、第1実施形態と同じ構成となっている。
【0084】
それゆえ、第2実施形態の移動機構120でも、第1アクチュエータ121aを縮めると、ブーム部123が後方に向かって揺動し、ブーム部123を起立させることができる。なお、ブーム部123に対する載置部122(ヘッド部127)の傾動角度を変えない場合は、ブーム部123の起立に合わせて載置部122が傾斜し、燃料電池8が落下する可能性がある。そこで、第2アクチュエータ121bを縮めて、マルチカプラ126を用いて、ヘッド部127を
図1において反時計回り方向に回動するように揺動させる。そうすると、載置部122の姿勢を水平方向に沿った状態に維持したまま、ブーム部123を起立させることができる。つまり、移動機構120では、載置部122の位置を第1位置P1(
図1に示す位置)から、第2位置P2(
図2に示す位置)に移動させることができる。
【0085】
上述した移動機構120での動作は、載置部122に燃料電池8を載せたまま、ブーム部123を起立させて、載置部122の位置を第1位置P1から第2位置P2に移動させるものである。しかし、上述した手順と全く逆の手順で操作を行えば、載置部122に燃料電池8を載せたまま、ブーム部123を前方に倒すことも可能となる。つまり、第2実施形態の移動機構120でも、載置部122の位置を第2位置P2から第1位置P1に移動させることができる。
【0086】
上述した第2実施形態の作業車両1は、移動機構120の移動対象を燃料電池8に限定したものである。つまり、第2実施形態の作業車両1は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2の前部に配備されるボンネット9と、を備えている。また、移動機構120は、燃料電池8を支持し、且つ燃料電池8をボンネット9の上方の第1位置P1と、キャビン3の上方の第2位置P2と、に移動させるものとなっている。そして、第1実施形態の作業車両1では、タンク7は、ボンネット9の内部に収容されている。
【0087】
このような第1実施形態の作業車両1では、燃料電池8をキャビン3の上方の第2位置P2から、ボンネット9の上方の第1位置P1に移動させることができる。第1位置P1に位置する燃料電池8は、キャビン3の上面よりも低い位置に存在している。そのため、このような高さに第1位置P1を設定すれば、燃料電池8がキャビン3の上面よりも上方に突出することはない。それゆえ、燃料電池8が作業車両1の輸送時に支障になることもない。
[第3実施形態]
上述した第1実施形態の作業車両1では、タンク7は、キャビン3の上部において、左右方向に軸心を向けて、前後方向に並んで配備されていた。また、第2実施形態の作業車両1では、タンク7は、上下方向に軸心を向けて、前後方向及び左右方向に並んで配備されていた。しかし、本発明の作業車両1では、タンク7は、前後方向に軸心を向けて、左右方向に並んで配備されていてもよい。
【0088】
例えば、
図7は、タンク7を、前後方向に軸心を向けて、左右方向に並んで配備した第3実施形態の作業車両1を示している。
【0089】
第3実施形態の作業車両1は、ボンネット9の外形が前後に長く、左右方向に狭幅となっている。それゆえ、第3実施形態のように、タンク7を、前後方向に軸心を向けて配備すれば、ボンネット9内(収容部62)のスペースを余すことなく用いて、タンク7を収容することができる。
【0090】
本発明の作業車両1は、車体2と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動モータ6と、駆動モータ6に電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8に燃料用のガスを供給するタンク7と、を有する駆動装置5と、駆動装置5のうち、燃料電池8及び/又はタンク7を車体2に対して上下方向に移動する移動機構120と、を備える。
【0091】
このような移動機構120を設ければ、燃料電池8やタンク7の設置高さを任意に変更でき、キャビン3の上部に燃料電池8やタンク7を設ける場合でも、輸送時の嵩を低く抑えることができる。
【0092】
作業車両1は、タンク7を収容するケーシング30を備え、移動機構120は、燃料電池8及び/又はケーシング30を車体2に対して上下方向に移動する。
【0093】
この構成によれば、タンク7がケーシング30に収容されているため、移動機構120によってタンク7を移動させるときに、タンク7が落下する等の不具合が発生することを防止できる。
【0094】
作業車両1は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2の前部に配備されるボンネット9と、を備え、ボンネット9は、キャビン3よりも低く、移動機構120は、燃料電池8及び/又はケーシング30を支持し、且つ燃料電池8及び/又はケーシング30をボンネット9の上方の第1位置P1と、キャビン3の上方の第2位置P2と、に移動させ、第1位置P1に位置している燃料電池8及び/又はケーシング30は、キャビン3よりも低い位置に配置されている。
【0095】
上述した移動機構120において、燃料電池8及び/又はケーシング30を、第1位置P1と第2位置P2との間で移動すれば、燃料電池8やケーシング30がキャビン3の上面よりも上方に突出することがなく、これらの部材が作業車両1の輸送時に支障になることもなくなる。
【0096】
移動機構120は、アクチュエータ121と、燃料電池8及び/又はケーシング30を載置する載置部122と、アクチュエータ121によって駆動され、載置部122を第1位置P1と第2位置P2とに上下方向に昇降自在に支持するブーム部123と、を有している。
【0097】
載置部122、ブーム部123、及びアクチュエータ121を備えた移動機構120を用いることで、燃料電池8及び/又はケーシング30を、第1位置P1と第2位置P2との間で確実に移動させることができる。
【0098】
本発明の作業車両1の構成を具体的に示せば、以下のようになる。
【0099】
まず、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2の前部に配備されるボンネット9と、を備え、移動機構120は、ケーシング30を支持し、且つ当該ケーシング30をボンネット9の上方の第1位置P1と、キャビン3の上方の第2位置P2と、に移動させ、燃料電池8は、ボンネット9の内部に収容されている。
【0100】
また、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2の前部に配備されるボンネット9と、を備え、移動機構120は、燃料電池8を支持し、且つ当該燃料電池8をボンネット9の上方の第1位置P1と、キャビン3の上方の第2位置P2と、に移動させ、タンク7は、ボンネット9の内部に収容されている。
【0101】
このような2つの具体例の作業車両1であれば、移動機構120により燃料電池8及び/又はタンク7の高さを下げるメリットを満足に享受することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1 作業車両
2 車体
3 キャビン
4 走行装置
5 駆動装置
6 駆動モータ
7 タンク
8 燃料電池
9 ボンネット
10 運転席
30 ケーシング(タンクケーシング)
120 移動機構
121 アクチュエータ
122 載置部
123 ブーム部
P1 第1位置
P2 第2位置