(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095105
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240703BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212144
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA14
3D235AA19
3D235BB17
3D235CC12
3D235CC23
3D235CC24
3D235DD21
3D235FF23
(57)【要約】
【課題】電動モータとバッテリとを備えた作業車両において、バッテリの配置を工夫することによって他の機器の配置スペースを確保し易くすること。
【解決手段】作業車両は、車体と、前記車体に搭載された電動モータと、前記電動モータに供給される電力を蓄積するバッテリを含むバッテリユニットと、を備え、前記バッテリユニットは、前記車体の幅方向外側に配置されている。バッテリユニットは、側面視において、前輪と後輪との間に配置されていることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載された電動モータと、
前記電動モータに供給される電力を蓄積するバッテリを含むバッテリユニットと、
を備え、
前記バッテリユニットは、前記車体の幅方向外側に配置されている作業車両。
【請求項2】
前輪と後輪とを有する走行装置を備え、
前記バッテリユニットは、側面視において、前記前輪と前記後輪との間に配置されている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記バッテリユニットの車体幅方向の外端は、前記前輪の車体幅方向の外端よりも外側であって且つ前記後輪の車体幅方向の外端よりも内側にある請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記車体に搭載された運転席と、
前記運転席の周囲に配置されたキャビンと、
を備え、
前記バッテリユニットは、前記キャビンの下方に配置された下部位を有している請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記バッテリユニットは、前記キャビンの前方に配置された前部位を有している請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記キャビンは、前記運転席よりも前方に配置された前支柱と、前記運転席よりも後方に配置された後支柱と、前記運転席よりも上方に配置されたルーフと、を有し、
前記バッテリユニットは、前後方向の位置が、前記前支柱とオーバーラップしている請求項4に記載の作業車両。
【請求項7】
前記後輪の上方に設けられたフェンダを備え、
前記バッテリユニットの下部位は、前後方向の位置が、前記フェンダとオーバーラップしている請求項4に記載の作業車両。
【請求項8】
前記バッテリユニットの前部位は、前記前支柱の前方において前記前支柱に沿って上方に延びている請求項6に記載の作業車両。
【請求項9】
前記キャビンは、前記運転席の前方に配置されたフロントガラスを備え、
前記バッテリユニットの前部位は、正面視において、前記フロントガラスと重なっている請求項5に記載の作業車両。
【請求項10】
前記キャビンの前方において前記車体の上方を覆うボンネットを備え、
前記バッテリユニットの前部位は、前記ボンネットの幅方向外側に配置されている請求項5に記載の作業車両。
【請求項11】
前記前部位の上端は、前記ボンネットの上端よりも下方に位置している請求項10に記載の作業車両。
【請求項12】
前記キャビンの車体幅方向の一方側には、前記キャビンに乗降する作業者が足を掛けるステップが設けられており、
前記バッテリユニットは、前記車体幅方向の他方側であって、側面視において前記ステップと重なる位置に配置されている請求項4に記載の作業車両。
【請求項13】
前記バッテリユニットの上端は、前記前輪の上端よりも上方であって且つ前記後輪の上端よりも下方にある請求項2に記載の作業車両。
【請求項14】
前記車体に搭載された運転席を備え、
前記バッテリユニットは、前記運転席の上端と前記前輪の外周面上部とを結ぶ仮想直線よりも下方に配置されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項15】
前記キャビンの側部には、開閉可能なドアが設けられており、
前記バッテリユニットは、側面視において前記ドアと重ならない位置に配置されており、且つ前記下部位の前後方向の位置が前記ドアとオーバーラップしている請求項4に記載の作業車両。
【請求項16】
前記バッテリユニットの下端は、前記車体よりも下方に位置している請求項1に記載の作業車両。
【請求項17】
前記バッテリユニットは、前記バッテリを含むバッテリパックと、電気回路と、前記バッテリパック及び前記電気回路を収容する筐体と、を有し、
前記バッテリパックは、前記下部位に配置されている請求項5に記載の作業車両。
【請求項18】
燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールに供給する燃料を収容する燃料タンクと、
を備え、
前記バッテリは、前記燃料電池モジュールにより発電された電力を蓄積する請求項1~17のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示された作業車両が知られている。特許文献1に開示された作業車両は、電動モータとバッテリとを備えたトラクタである。バッテリは、ボンネットの内部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された作業車両は、バッテリがボンネットの内部に配置されているため、ボンネットの内部に他の機器(例えば、燃料電池モジュール等)を配置するためのスペースを広く確保することが難しい。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、電動モータとバッテリとを備えた作業車両において、バッテリの配置を工夫することによって他の機器の配置スペースを確保し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が上記課題を解決するために講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る作業車両は、車体と、前記車体に搭載された電動モータと、前記電動モータに供給される電力を蓄積するバッテリを含むバッテリユニットと、を備え、前記バッテリユニットは、前記車体の幅方向外側に配置されている。
【0008】
また、作業車両は、前輪と後輪とを有する走行装置を備え、前記バッテリユニットは、側面視において、前記前輪と前記後輪との間に配置されていてもよい。
【0009】
また、前記バッテリユニットの車体幅方向の外端は、前記前輪の車体幅方向の外端よりも外側であって且つ前記後輪の車体幅方向の外端よりも内側にあるようにしてもよい。
【0010】
また、作業車両は、前記車体に搭載された運転席と、前記運転席の周囲に配置されたキャビンと、を備え、前記バッテリユニットは、前記キャビンの下方に配置された下部位を有していてもよい。
【0011】
また、前記バッテリユニットは、前記キャビンの前方に配置された前部位を有していてもよい。
【0012】
また、前記キャビンは、前記運転席よりも前方に配置された前支柱と、前記運転席よりも後方に配置された後支柱と、前記運転席よりも上方に配置されたルーフと、を有し、前記バッテリユニットは、前後方向の位置が、前記前支柱とオーバーラップしていてもよい。
【0013】
また、作業車両は、前記後輪の上方に設けられたフェンダを備え、前記バッテリユニットの下部位は、前後方向の位置が、前記フェンダとオーバーラップしていてもよい。
【0014】
また、前記バッテリユニットの前部位は、前記前支柱の前方において前記前支柱に沿って上方に延びていてもよい。
【0015】
また、前記キャビンは、前記運転席の前方に配置されたフロントガラスを備え、前記バッテリユニットの前部位は、正面視において、前記フロントガラスと重なっていてもよい。
【0016】
また、作業車両は、前記キャビンの前方において前記車体の上方を覆うボンネットを備え、前記バッテリユニットの前部位は、前記ボンネットの幅方向外側に配置されていてもよい。
【0017】
また、前記前部位の上端は、前記ボンネットの上端よりも下方に位置していてもよい。
【0018】
また、前記キャビンの車体幅方向の一方側には、前記キャビンに乗降する作業者が足を掛けるステップが設けられており、前記バッテリユニットは、前記車体幅方向の他方側であって、側面視において前記ステップと重なる位置に配置されていてもよい。
【0019】
また、前記バッテリユニットの上端は、前記前輪の上端よりも上方であって且つ前記後輪の上端よりも下方にあるようにしてもよい。
【0020】
また、作業車両は、前記車体に搭載された運転席を備え、前記バッテリユニットは、前記運転席の上端と前記前輪の外周面上部とを結ぶ仮想直線よりも下方に配置されていてもよい。
【0021】
また、前記キャビンの側部には、開閉可能なドアが設けられており、前記バッテリユニットは、側面視において前記ドアと重ならない位置に配置されており、且つ前記下部位の前後方向の位置が前記ドアとオーバーラップしていてもよい。
【0022】
また、前記バッテリユニットの下端は、前記車体よりも下方に位置していてもよい。
【0023】
また、前記バッテリユニットは、前記バッテリを含むバッテリパックと、電気回路と、前記バッテリパック及び前記電気回路を収容する筐体と、を有し、前記バッテリパックは、前記下部位に配置されているようにしてもよい。
【0024】
また、作業車両は、燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールに供給する燃料を収容する燃料タンクと、を備え、前記バッテリは、前記燃料電池モジュールにより発電された電力を蓄積するものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る作業車両によれば、バッテリユニットが車体の幅方向外側に配置されているため、ボンネットの内部に他の機器(例えば、燃料電池モジュール等)を配置するためのスペースを確保し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る作業車両の一例を示す左側面図である。
【
図2】本発明に係る作業車両の一例を示す右側面図である。
【
図3】本発明に係る作業車両の一例を示す平面図である。
【
図4】本発明に係る作業車両の一例を示す正面図である。
【
図5】作業車両の基本構成を示すブロック図である。
【
図6】バッテリユニット内部(筐体内部)の構成を示す左側面図である。
【
図7】作業車両の車体、第1支持体、第2支持体等を示す平面図である。
【
図8】バッテリユニットを上部位と下部位とに分割した場合を示す左側面図である。
【
図9】バッテリユニットを第2位置とした作業車両の平面図である。
【
図10】バッテリユニットを第2位置とした作業車両の正面図である。
【
図11】移動機構の一例であるスライドレールの構成を示す斜視図である。
【
図12】支持脚が第1姿勢にある状態と第2姿勢にある状態を示す正面図である。
【
図13】支持脚を第2姿勢とした作業車両の左側面図である。
【
図14】車体に対する第1支持部材及び第2支持部材の固定構造を示す分解斜視図である。
【
図15】第1コネクタと第2コネクタとを係合した状態(バッテリユニットが第1位置にある状態)と、第1コネクタと第2コネクタとの係合を解除した状態(バッテリユニットが第2位置にある状態)とを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の作業車両1は、トラクタである。但し、本発明に係る作業車両1は、トラクタに限定されない。例えば、本発明に係る作業車両1は、トラクタ以外の農業機械、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。また、本実施形態の作業車両1は、燃料電池で発生した電力を用いて駆動するFCV(Fuel Cell Vehicle)である。但し、本発明に係る作業車両1は、電力を用いて駆動する車両であればよく、燃料電池で発生した電力を用いて駆動する車両には限定されない。
【0028】
以下、作業車両1が前進する方向(
図1,
図2の矢印X1方向)を前方、作業車両1が後退する方向(
図1,
図2の矢印X2方向)を後方、前方を向いて左側(
図3,
図4の矢印Y1方向)を左方(又は左側方)、前方を向いて右側(
図3,
図4の矢印Y2方向)を右方(又は右側方)という。また、前後方向(
図1,
図2の矢印X方向)に対して水平に直交する方向(
図3,
図4の矢印Y方向)を車体幅方向(又は左右方向)という。
【0029】
図1~
図4に示すように、作業車両1は、車体2と、車体2に搭載された運転席15と、運転席15の周囲に配置されたキャビン3と、車体2を走行可能に支持する走行装置4と、燃料を貯蔵する燃料タンク5と、燃料タンク5に貯蔵された燃料により駆動する駆動装置6とを備えている。本実施形態の場合、燃料タンク5は、水素ガスを貯蔵する水素タンクである。駆動装置6は、燃料タンク5に貯蔵された水素ガスをエネルギー源として走行装置4を駆動させる。
【0030】
図1に示すように、駆動装置6は、電動モータ7、燃料電池モジュール8及びバッテリユニット9(
図5も参照)を有している。電動モータ7は、走行装置4を駆動する。燃料電池モジュール8には、燃料タンク5から水素ガスが供給される。燃料電池モジュール8は、水素ガスにより発電し、電動モータ7に電力を供給する。燃料電池モジュール8は、燃料電池スタックを有している。バッテリユニット9は、燃料電池モジュール8から供給される電力(電動モータ7に供給される電力)を蓄積する。
【0031】
図1,
図2,
図7等に示すように、車体2は、フロントフレーム2Aとミッションケース2Bとを有している。フロントフレーム2Aは、車体2の前部を構成している。ミッションケース2Bは、フロントフレーム2Aの後部に接続されており、車体2の後部を構成している。フロントフレーム2Aは、金属製のフレーム材などを組み合わせて形成されている。
【0032】
車体2は、キャビン3、走行装置4、及び駆動装置6を支持している。尚、本実施形態の作業車両1は、キャビン3を備えているが、作業車両1はキャビン3を備えていないものであってもよい。例えば、作業車両1は、キャビン3の代わりに、キャノピやロプス(ROPS)を備えているものであってもよい。
【0033】
図1~
図3等に示すように、車体2には、燃料タンク5を固定するための固定フレーム10が設けられている。燃料電池モジュール8は、車体2の上部前寄りの位置に設けられている。燃料電池モジュール8は、ボンネット11の内部に収容されている。即ち、燃料電池モジュール8は、運転席15の前方位置に設けられ、且つ車両前部のハウジング(ボンネット11)により覆われている。
【0034】
図1~
図4に示すように、固定フレーム10の上フレーム部10aには、燃料タンク5を収容するタンクケース12が設けられている。固定フレーム10の後フレーム部10bには、燃料タンク5に水素ガスを充填する際に、車両外部に設置された水素ガス供給機のガス充填ノズル(図示略)を接続するガス充填口(レセプタクル)13(
図5参照)が設けられている。
【0035】
図1等に示すように、固定フレーム10は、車体2の上部に設けられている。固定フレーム10は、長軸状の管体であり、キャビン3及びボンネット11を跨ぐように車体2の上方へ湾曲するアーチ状に形成されている。詳しくは、固定フレーム10は、前端が車体2におけるボンネット11の前下方位置に連結され、後端が車体2におけるキャビン3の後下方位置に連結されている。尚、固定フレーム10は、ボンネット11の後方位置においてキャビン3を跨ぐように車体2の上方へ湾曲するアーチ状に形成されてもよい。
【0036】
図3に示すように、固定フレーム10は、ボンネット11を挟んで左右の両側方位置に一対並設されている。固定フレーム10は、タンクケース12をキャビン3の上方位置にて下方から支持している。即ち、燃料タンク5は、左右2つの固定フレーム10を介して車体2に支持されている。固定フレーム10は、燃料タンク5を安定して支持する機能と、走行時や作業時の車体2の振動を吸収して燃料タンク5への衝撃を緩和する機能と、を兼備している。
【0037】
図3に示すように、左右の上フレーム部10aはそれぞれ、前後方向へ略直線状に形成されている。タンクケース12は、左右の上フレーム部10aに支持固定されている。左右の後フレーム部10bはそれぞれ、上下方向へ略直線状に形成されている。
図4に示すように、左右の後フレーム部10b相互間には、左右方向へ略平行に延長する上下一対の連結バー10cが設けられている。
【0038】
タンクケース12は、複数の燃料タンク5を収容可能な箱体である。タンクケース12は、固定ブラケットやボルトナット、溶接等により上フレーム部10aに固定(リジット固定)されている。本実施形態のタンクケース12は、外部から燃料タンク5を熱的及び物理的に保護可能な材質及び厚みの鋼材によって形成されている。尚、タンクケース12は、収容される燃料タンク5の全体を覆う箱状に形成されているが、上方に開口するバケット状に形成されてもよいし、下方に開口するカバー状に形成されてもよい。
【0039】
図1等に示すように、キャビン3は、車体2の上部後寄りの位置に設けられている。キャビン3は、運転席15よりも前方に配置された前支柱3aと、運転席15よりも後方に配置された後支柱3bと、運転席15よりも上方に配置されたルーフ3cと、を有している。前支柱3aは、運転席15の左前方及び右前方に設けられている。後支柱3bは、運転席15の左後方及び右後方に設けられている。ルーフ3cは、前支柱3aの上部及び後支柱3bの上部に支持されている。前支柱3aの下部には、当該下部から後方に向けて延びる下部材3dが接続されている。下部材3dは、前支柱3aの下部からフェンダ14の下部まで延びている。下部材3dは、キャビン3の乗降口の下部を構成している。固定フレーム10の上フレーム部10aは、ルーフ3cの上面部と略平行に前後方向へ延長形成されている。タンクケース12は、ルーフ3cの上方において上フレーム部10aに固定されている。
【0040】
図4に示すように、キャビン3は、運転席15の前方に配置されたフロントガラス16を備えている。フロントガラス16は、左右の前支柱3aの間に設けられている。
図1,
図2に示すように、キャビン3の側部には、開閉可能なドア17が設けられている。ドア17は、前支柱3aと後支柱3bとの間の前部に設けられている。ドア17は、キャビン3の左部と右部に夫々設けられている。
【0041】
図2,
図3に示すように、キャビン3の車体幅方向の一方側(左側)には、ステップ19が設けられている。ステップ19は、キャビン3に乗降する作業者が足を掛けるための部材である。作業者は、ステップ19を使用して左のドア17からキャビン3への乗降を行うことができる。ステップ19の上端部は、キャビン3の前支柱3aの下部及び下部材3dに取り付けられており、キャビン3の下方に延びている。
【0042】
図1~
図4に示すように、キャビン3の前方にボンネット11が設けられている。ボンネット11は、キャビン3の前方において、車体2の上方を覆っている。本実施形態の作業車両1は、ボンネット11の幅(車体幅方向の長さ)がキャビン3の幅(車体幅方向の長さ)よりも小さい。ボンネット11の内部には、電動モータ7及び燃料電池モジュール8が配置されている。
【0043】
図1に示すように、燃料電池モジュール8は、車体2の上方に配置されている。電動モータ7は、燃料電池モジュール8の後方に配置されている。電動モータ7は、側面視にて、車体2(フロントフレーム2A)と重なる位置に配置されている。電動モータ7の上端は、燃料電池モジュール8の上端より下方に位置している。電動モータ7の下端は、燃料電池モジュール8の下端より下方に位置している。
【0044】
走行装置4は、前輪4Aと後輪4Bとを有している。前輪4Aは、車体2の前部の左右に設けられている。後輪4Bは、車体2の後部の左右に設けられている。
図3に示すように、本実施形態の作業車両1は、左側の後輪4Bの外端(左端)と右側の後輪4Bの外端(右端)との距離は、左側の前輪4Aの外端(左端)と右側の前輪4Aの外端(右端)との距離よりも大きい。左側の後輪4Bの外端と右側の後輪4Bの外端との距離が作業車両1の最大車幅となっている。
【0045】
後輪4Bの上方には、フェンダ14が設けられている。フェンダ14は、後輪4Bの上方を覆っている。フェンダ14は、後輪4Bの上面に沿って湾曲している。フェンダ14の上縁は、キャビン3の後部(下部材3dよりも後方部分)の下縁に沿うように延びている。
【0046】
本実施形態の作業車両1では、前輪4A及び後輪4Bのいずれか一方又は両方に対して電動モータ7から動力が伝達される。尚、電動モータ7から動力が伝達されて駆動輪となる前輪4A及び後輪4Bのいずれか一方又は両方は、クローラであってもよい。
【0047】
燃料タンク5は、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂等によって形成された略円筒状の高圧容器である。燃料タンク5は、キャビン3の上方位置に設けられたタンクケース12の内部に単数又は複数収容されている。本実施形態の作業車両1は、タンクケース12の内部に3つの燃料タンク5が前後横並びに収容されている。このように、本実施形態の作業車両1は、燃料タンク5がキャビン3(運転席15)の上方位置に配されている。そのため、車体2に対する電動モータ7や燃料電池モジュール8、バッテリユニット9の配置構成の自由度が高い。また、従来のエンジン駆動式の車両から本実施形態の作業車両1のようなモータ駆動式の車両に設計変更するにあたり、各部材の配置構成を大幅に変更する必要もない。
【0048】
尚、燃料タンク5の搭載数は、3つに限定されない。例えば、燃料タンク5は、作業車両1に1つのみ搭載されてもよいし、2つ搭載されてもよいし、4つ以上搭載されてもよい。また、燃料タンク5の配置は、キャビン3の上方位置に限定されない。例えば、燃料タンク5は、キャビン3の後部に設けられてもよいし、運転席15の下方の空間に設けられてもよいし、ボンネット11の内部に設けられてもよい。
【0049】
図5に示すように、燃料タンク5は、バルブユニット18を介してガス導入配管L1及びガス導出配管L2に連結されている。ガス導入配管L1は、ガス充填口13とバルブユニット18とを繋ぐガス導入管路であり、車両外部からガス充填口13に導入される水素ガスを燃料タンク5へ導く。ガス導出配管L2は、燃料電池モジュール8とバルブユニット18とを繋ぐガス導出管路であり、燃料タンク5内に貯蔵された水素ガスを燃料電池モジュール8へ導く。このように、燃料タンク5は、車両外部からガス充填口13に導入される水素ガスを貯蔵し、燃料電池モジュール8に供給する。尚、バルブユニット18は、開閉弁や減圧弁等を有しており、燃料タンク5に貯蔵された水素ガスを所定の流量に調整した上で、ガス導出配管L2を通じて燃料電池モジュール8に導出させる。
【0050】
電動モータ7は、回転するロータと、複数のコイルを有するステータと、を有しており、所定のトルク及び回転速度で出力軸を回転駆動させる。
図1に示すように、電動モータ7は、燃料電池モジュール8の後方位置で且つ運転席15の下方位置に配設されている。電動モータ7の出力軸は、ミッションケース2B内の動力伝達機構に接続されている。
【0051】
尚、電動モータ7は、作業車両1に複数搭載されてもよい。詳しくは、例えば、作業車両1は、前輪4A用の電動モータ7と、後輪4B用の電動モータ7とを備えており、これら電動モータ7の動力を前輪4A及び後輪4Bにそれぞれ出力する。或いは、電動モータ7は、前輪4A及び後輪4Bの4輪全てに独立して設けられており、これら電動モータ7の動力を対応する前輪4A及び後輪4Bにそれぞれ出力する。
【0052】
ミッションケース2Bは、電動モータ7の後部に連設されている。ミッションケース2Bは、内部にトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤ等の動力伝達機構が組み込まれており、電動モータ7の出力軸から入力された動力を減速又は増速し、走行装置4(前輪4A及び/又は後輪4B)に出力する。本実施形態の作業車両1は、車体2の上部に1基のみ電動モータ7が設けられており、当該電動モータ7の動力をミッションケース2B内にて左右の後輪4Bに分配して出力する。
【0053】
ミッションケース2B内の動力伝達機構は、電動モータ7の動力を走行装置4に出力するだけでなく、その動力の一部を車体2の後部に設けられたPTO軸(図示略)にも出力する。PTO軸は、ミッションケース2Bに連結されており、作業車両1に連結して用いられる作業装置(インプルメント)E1(
図5参照)に電動モータ7の動力を伝達する。作業装置E1は、例えば、耕運機やベーラ等である。このように、本実施形態の作業車両1は、燃料電池モジュール8で発生させた電力を用いて、作業装置を作動させることも可能である。
【0054】
燃料電池モジュール8は、略矩形箱状の電池ケーシングの内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数並設して構成されたものであり、各単セルで発電された電力を集約することで、電動モータ7の駆動に要する電圧及び電流の電力を発生させる。燃料電池モジュール8は、図示しない冷媒流路を通じてラジエータ21,22に接続されており、ラジエータ21,22から温度調整用の冷却液を循環供給させることで、上記電極が所定温度に調整される。これにより、燃料電池モジュール8は、高い発電効率を維持できる。
【0055】
図5に示すように、燃料電池モジュール8は、昇圧回路23を介してインバータ24に接続されている。昇圧回路23は、燃料電池モジュール8で発生させた電力を昇圧させる。インバータ24は、電動モータ7と電気的に接続される。インバータ24は、昇圧回路23から入力される直流電力を三相交流電力に変換して電動モータ7に出力する。燃料電池モジュール8は、昇圧回路23で昇圧された電力により電動モータ7を駆動させる。尚、作業車両1は、電動モータ7よりも低電圧で作動する弱電の電装品を有しており、これら弱電の電装品に対しては、降圧回路で降圧された電力が供給される。本実施形態の作業車両1は、上記弱電の電装品として、バッテリユニット9、ラジエータ21,22、及び空調装置25を有しており、上記降圧回路として、第1DC/DCコンバータ26、及び第2DC/DCコンバータ27を有している。
【0056】
第1DC/DCコンバータ26及び第2DC/DCコンバータ27は、入力された直流電力の電圧をさらに低い電圧に変換する降圧コンバータである。第1DC/DCコンバータ26は、上記のように降圧させた電力をバッテリユニット9や空調装置25に供給する。第2DC/DCコンバータ27は、上記のように降圧させた電力をラジエータ21,22に供給する。インバータ24、第1DC/DCコンバータ26、及び第2DC/DCコンバータ27は、車体2の上部における運転席15の下方位置に配設される。
【0057】
図1に示すように、燃料電池モジュール8及びラジエータ21,22は、ボンネット11の内部に収容されている。ラジエータ21,22は、車体2の上部における燃料電池モジュール8の前方位置及び後方位置にそれぞれ設けられている。ラジエータ21,22は、燃料電池モジュール8の前方位置に配される第1ラジエータ21と、燃料電池モジュール8の後方位置に配される第2ラジエータ22と、を含んでいる。
【0058】
図5に示すように、第1ラジエータ21及び第2ラジエータ22は、燃料電池モジュール8、電動モータ7、昇圧回路23、インバータ24、DC/DCコンバータ26,27等の電装品を冷却液(冷媒)により冷却させる冷却システムを構成している。
【0059】
第1ラジエータ21は、第1冷却流路H1を通じて供給される冷却液を外部空気との熱交換により冷却する。第2ラジエータ22は、第2冷却流路H2を通じて供給される冷却液を外部空気との熱交換により冷却する。第1ラジエータ21及び第2ラジエータ22はそれぞれ、ラジエータファン35,36(第1ファン35及び第2ファン36)を有しており、当該ラジエータファン35,36を回転駆動させることによって第1ラジエータ21及び第2ラジエータ22にそれぞれ空気を流通させ、上記冷却液との熱交換を促進させる。
【0060】
第1ラジエータ21は、第1冷却流路H1を介して電動モータ7、昇圧回路23、インバータ24、及びDC/DCコンバータ26,27の冷却を要する電装品(発熱部品)に接続されている。第2ラジエータ22は、第2冷却流路H2を介して燃料電池モジュール8に接続されている。
【0061】
第1冷却流路H1は、第1循環ポンプ33を有しており、当該第1循環ポンプ33によって第1ラジエータ21と電動モータ7を含む上記電装品との間で冷却液を循環させる。第2冷却流路H2は、第2循環ポンプ34を有しており、当該第2循環ポンプ34によって第2ラジエータ22と燃料電池モジュール8との間で冷却液を循環させる。このように、第2ラジエータ22は、燃料電池モジュール8の冷却流路H2に接続されており、燃料電池モジュール8との間で循環される冷却液を熱交換により冷却することで、燃料電池モジュール8の内部電極を所定温度に調整する。これにより、燃料電池モジュール8は、高い発電効率を維持できる。
【0062】
バッテリユニット9は、電動モータ7に供給される電力を蓄積する。
図6に示すように、バッテリユニット9は、バッテリパック9Aと、バッテリマネジメントユニット9Bと、電気回路9Cと、筐体9Dとを含む。バッテリユニット9は、燃料電池モジュール8で発生させた電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をインバータ24等に適宜出力する。
【0063】
バッテリパック9Aは、複数のバッテリ9A1から構成されている。バッテリパック9Aを構成するバッテリ9A1は、リチウムイオン電池や鉛蓄電池等の充放電型の二次電池である。バッテリ9A1は、燃料電池モジュール8により発電された電力を蓄積することができる。バッテリマネジメントユニット9Bは、バッテリ9A1の状態を監視するユニットである。電気回路9Cは、ECUや電圧変換回路等の種々の電気回路を含むことができる。筐体9Dは、バッテリパック9A、バッテリマネジメントユニット9B、電気回路9Cを収容する。
【0064】
以下、バッテリユニット9の配置について詳しく説明する。
【0065】
図1~
図4,
図7に示すように、バッテリユニット9は、車体2の幅方向外側に配置されている。つまり、バッテリユニット9は、車体2の上方(ボンネット11の内部等)や下方ではなく、車体2の幅方向外側(即ち、車体2の側方)に配置されている。本実施形態の場合、バッテリユニット9は、車体2の右側方に配置されているが、車体2の左側方に配置されていてもよい。
【0066】
図1に示すように、バッテリユニット9は、側面視において、前輪4Aと後輪4Bとの間に配置されている。つまり、バッテリユニット9は、車体2の幅方向外側において、前輪4Aと後輪4Bとに挟まれる位置に配置されている。これにより、作業車両1の車幅を拡張させずにバッテリユニット9を車体2の幅方向外側に配置することが可能となる。
【0067】
図2に示すように、バッテリユニット9は、側面視においてステップ19と重なる位置に配置されている。つまり、バッテリユニット9は、車体2を挟んでステップ19と反対側の位置に配置されている。バッテリユニット9がステップ19と反対側に設けられているため、バッテリユニット9の配置スペースを、ステップ19に妨げられずに広く確保することができる。また、バッテリユニット9によってキャビン3への作業者の乗降が妨げられることがない。
【0068】
図1に示すように、バッテリユニット9は、側面視において電動モータ7と重なる位置に配置されている。バッテリユニット9は、側面視においてミッションケース2Bと重なる位置に配置されている。バッテリユニット9は、側面視においてラジエータ(第2ラジエータ22)と重なる位置に配置されている。
【0069】
図2に示すように、バッテリユニット9は、側面視においてインバータ24と重なる位置に配置されている。これにより、バッテリユニット9とインバータ24との距離が近くなり、両者を接続する配線の長さを短くすることができ、配線の配策を容易に行うことができる。
【0070】
図1,
図2,
図7に示すように、バッテリユニット9とインバータ24は、車体2を挟んで反対側の位置に配置されている。具体的には、車体幅方向の一方側(左側)にインバータ24が配置され、車体幅方向の他方側(右側)にバッテリユニット9が配置されている。但し、バッテリユニット9を車体2の左側(左側方)に配置し、インバータ24を車体2の右側(右側方)に配置してもよい。
【0071】
図3,
図4に示すように、バッテリユニット9の車体幅方向の外端91は、後輪4Bの車体幅方向の外端よりも内側にある。本実施形態の場合、バッテリユニット9の右端は、後輪4Bの右端よりも左側にある。これにより、バッテリユニット9を車体2の幅方向外側に配置しても、作業車両1の最大車幅が拡張されることがない。
【0072】
また、バッテリユニット9の車体幅方向の外端91は、前輪4Aの車体幅方向の外端よりも外側にある。本実施形態の場合、バッテリユニット9の右端は、前輪4Aの右端よりも右側である。この配置を、バッテリユニット9の外端91の配置と組み合わせることによって、作業車両1の最大車幅を拡張することなく、バッテリユニット9を車体幅方向の外側に大きくすることが可能となる。
【0073】
図3,
図4に示すように、バッテリユニット9の車体幅方向の内端92は、前輪4Aの車体幅方向の内端よりも内側にある。バッテリユニット9の幅(車体幅方向の長さ)は、前輪4Aの幅よりも大きい。これらの構成によって、バッテリユニット9を車体幅方向の内側に大きくすることが可能となる。
【0074】
図7に示すように、バッテリユニット9の車体幅方向の内端92は、車体幅方向における位置が、後輪4Bの車体幅方向の内端と同じ(又は略同じ)である。バッテリユニット9の幅(車体幅方向の長さ)は、後輪4Bの幅よりも小さい。これにより、例えば、左右の後輪4Bで圃場の畝を跨いで走行する際に、バッテリユニット9が畝に接触することが防がれる。
【0075】
図1,
図4に示すように、バッテリユニット9の上端93は、前輪4Aの上端よりも上方であって且つ後輪4Bの上端よりも下方にある。また、バッテリユニット9の上端93は、フェンダ14の上端よりも下方であって且つフェンダ14の下端よりも上方に位置している。バッテリユニット9の上端93は、キャビン3の下端よりも上方であって且つキャビン3の上端よりも下方に位置している。バッテリユニット9の上端93は、ドア17の取っ手17aよりも下方に位置している。バッテリユニット9の上端93は、キャビン3の前支柱3aに取り付けられた照明灯20よりも下方に位置している。
【0076】
図1に示すように、バッテリユニット9の上端93は、運転席15よりも下方に位置している。また、バッテリユニット9は、運転席15の上端と前輪4Aの外周面上部とを結ぶ仮想直線SL1(前輪4Aの接線)よりも下方に配置されている。これにより、キャビン3の運転席15に着座した作業者の前方視界に影響を及ぼすことを回避することが可能となる。
【0077】
図1に示すように、バッテリユニット9は、上下方向の位置が燃料電池モジュール8とオーバーラップしている。また、バッテリユニット9は、上下方向の位置が電動モータ7とオーバーラップしている。これにより、バッテリユニット9と燃料電池モジュール8及び電動モータ7との距離が近くなるため、上述したバッテリユニット9とインバータ24との位置関係と相まって、電動モータ7、燃料電池モジュール8、バッテリユニット9、インバータ24の間の配線の配策を容易に行うことが可能となる。
【0078】
図1に示すように、バッテリユニット9の下端94は、車体2よりも下方に位置している。バッテリユニット9の下端94は、前輪4Aの車軸4A1及び後輪4Bの車軸4B1よりも下方に位置している。これにより、バッテリユニット9の上下方向の長さを長く確保することができる。
【0079】
図1,
図6等に示すように、バッテリユニット9は、キャビン3の下方に配置された下部位9aと、キャビン3の前方に配置された前部位9bを有している。前部位9bは、キャビン3の前方に配置された側面視にて長方形の部位である。下部位9aは、前部位9bの下方に配置された側面視にて長方形の部位である。つまり、下部位9aは、バッテリユニット9の前部位9bを除く部位(前部位9bの下方に配置された部分を含む)である。
【0080】
下部位9aと前部位9bは、いずれも直方体形状である。下部位9aの前後方向の長さは、前部位9bの前後方向の長さよりも長い。下部位9aの上下方向の長さは、前部位9bの上下方向の長さよりも長い。下部位9aの幅(車体幅方向の長さ)は、前部位9bの幅(車体幅方向の長さ)と等しい。但し、下部位9aの幅と前部位9bの幅とが異なっていてもよい。前部位9bは、車体2の上方にあり、側面視にてボンネット11と重なっている。下部位9aは、側面視にて車体2(フロントフレーム2A及びミッションケース2B)と重なっている。
【0081】
下部位9aと前部位9bとは、夫々の内部空間が互いに連通するように、一体化されている。つまり、下部位9aと前部位9bは、1つの筐体9Dにより構成されている。バッテリユニット9の外形は、筐体9Dの外形と一致している。但し、下部位9aと前部位9bとを別々の筐体9Dにより構成してもよい(
図8参照)。
図8において、2つの筐体9Dの境界線(下部位9aと前部位9bとの境界線)を線BL1で示している。下部位9aと前部位9bとを別々の筐体9Dにより構成する場合、2つの筐体9Dを結束具やピン等の連結具を用いて連結する。
【0082】
図1に示すように、バッテリユニット9は、側面視にてL字形状である。本実施形態の場合、バッテリユニット9は、車体2の右側方に配置されているため、バッテリユニット9は、車体内方側からみた側面視にてL字形状(L字を左右反転させた形状)である。バッテリユニット9が車体2の左側方に配置されている場合、バッテリユニット9は、車体外方側からみた側面視にてL字形状となる。
【0083】
図6に示すように、バッテリパック9Aは、下部位9aに配置されている。バッテリマネジメントユニット9Bは、下部位9aに配置されている。電気回路9Cは、前部位9bに配置されている。このように、バッテリユニット9は、重量物であるバッテリパック9Aが下部位9aに配置され、バッテリパック9Aに比べて軽量物である電気回路9Cが前部位9bに配置されている。これにより、作業車両1の重心位置を低くすることができる。
【0084】
本実施形態の場合、バッテリユニット9は、下部位9aと前部位9bの両方を備えるものであるが、バッテリユニット9は、下部位9aと前部位9bのいずれか一方の部位のみを備えるものであってもよい。この場合、バッテリユニット9は、側面視にて長方形とすることができる。
【0085】
図1に示すように、バッテリユニット9は、前後方向の位置が、キャビン3とオーバーラップしている。詳しくは、バッテリユニット9は、前後方向の位置が、前支柱3a及び下部材3dとオーバーラップしている。また、バッテリユニット9の下部位9aは、前後方向の位置が、フェンダ14とオーバーラップしている。バッテリユニット9は、前支柱3aの下方からフェンダ14の下方に亘って配置されている。また、バッテリユニット9は、前後方向の位置が、照明灯20とオーバーラップしている。さらに、バッテリユニット9は、前後方向の位置が、タンクケース12とオーバーラップしている。
【0086】
図1,
図4に示すように、バッテリユニット9の前部位9bは、前支柱3aの前方に配置されている。前部位9bは、前支柱3aの前方において、前支柱3aに沿って上方に延びている。バッテリユニット9の下部位9aは、下部材3dの下方において、下部材3dに沿って前後方向に延びている。バッテリユニット9は、側面視においてドア17と重ならない位置に配置されている。これにより、バッテリユニット9がドア17の開閉を妨げることがない。バッテリユニット9の下部位9aの前後方向の位置は、ドア17とオーバーラップしている。
【0087】
図4に示すように、バッテリユニット9の前部位9bは、正面視において、フロントガラス16と重なっている。つまり、前部位9bの一部は、フロントガラス16の前方に配置されている。また、前部位9bは、ボンネット11の幅方向外側に配置されている。前部位9bの上端(バッテリユニット9の上端93)は、ボンネット11の上端よりも下方に位置している。
【0088】
図3に示すように、バッテリユニット9は、平面視にて、キャビン3と重なる位置に配置されている。バッテリユニット9は、平面視にて、タンクケース12と重なる位置に配置されている。バッテリユニット9は、平面視にて、フェンダ14と重なる位置に配置されている。バッテリユニット9は、平面視にて、照明灯20と重なる位置に配置されている。
【0089】
図1,
図7に示すように、バッテリユニット9は、第1支持体30により支持されている。第1支持体30は、車体2(具体的には、車体2の下部)に固定されている。インバータ24は、第2支持体31により支持されている。第2支持体31も、車体2(具体的には、車体2の下部)に固定されている。つまり、バッテリユニット9及びインバータ24は、共に車体2に固定された支持体(第1支持体30、第2支持体31)により固定されている。本実施形態の場合、第1支持体30と第2支持体31は、別々の部材であるが、共通の部材から構成してもよい。第2支持体31は、インバータ24に加えてコンデンサ28及び蓄電池29も支持している。コンデンサ28は、インバータ24と車体2との間に配置されている。蓄電池29は、インバータ24の前方に配置されている。蓄電池29は、車体2に搭載された各種の機器(電動モータ7を除く)に電力を供給する。
【0090】
第1支持体30は、バッテリユニット9を地面から浮かせて支持する。第1支持体30は、バッテリユニット9を車体2に対して移動不能に支持するものであってもよいが、バッテリユニット9を車体2に対して移動可能に支持するものであることが好ましい。本実施形態の場合、第1支持体30は、バッテリユニット9を車体2に対して移動可能に支持するものである。以下、バッテリユニット9を車体2に対して移動可能に支持する第1支持体30を移動機構40という。
【0091】
移動機構40は、バッテリユニット9を第1位置から、第1位置よりも車体幅方向外側の第2位置まで移動可能とする。つまり、移動機構40は、バッテリユニット9を車体2から離れる側方に向けて移動可能とする。本実施形態の場合、バッテリユニット9が車体2の右側に配置されているため、移動機構40はバッテリユニット9を右方に移動可能とする。バッテリユニット9が車体2の左側に配置されている場合、移動機構40はバッテリユニット9を左方に移動可能とする。
【0092】
図3,
図4は、バッテリユニット9が第1位置P1にある状態を示している。バッテリユニット9が第1位置P1にあるとき、バッテリユニット9の車体幅方向の外端91が後輪4Bの外端よりも内側に位置する。
図9,
図10は、バッテリユニット9が第2位置P2にある状態を示している。バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、バッテリユニット9の車体幅方向の外端91が後輪4Bの外端よりも外側に位置する。
【0093】
好ましくは、バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、バッテリユニット9の車体幅方向の内端が後輪4Bの外端よりも外側に位置する(
図9,
図10参照)。つまり、バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、バッテリユニット9の少なくとも一部が後輪4Bの車体幅方向の外端よりも外側にあればよいが、バッテリユニット9の全体が後輪4Bの車体幅方向の外端よりも外側にあることが好ましい。
【0094】
バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、バッテリユニット9の全体が後輪4Bの車体幅方向の外端よりも外側にあると、バッテリユニット9と車体2との間に広い空間が形成されるため、バッテリユニット9の交換(バッテリパック9A等の交換)作業を容易に行うことが可能となる。
【0095】
図11に示すように、本実施形態の場合、移動機構40は、スライドレール41を有している。移動機構40がスライドレール41を有していることによって、バッテリユニット9の移動方向を正確に定めることができる。そのため、バッテリユニット9を確実に車体幅方向の外側に向けて(第1位置P1から第2位置P2に向けて)移動させることができる。但し、移動機構40はスライドレール41には限定されない。
【0096】
スライドレール41は、金属等の剛性材料から構成されている。スライドレール41は、第1部材42と第2部材43とを有する。第1部材42は、車体2に固定されている。第1部材42は、車体2から車体幅方向の外側に向けて延伸している。第2部材43は、第1部材42に沿って車体幅方向に移動可能(スライド可能)である。
【0097】
図1,
図11等に示すように、スライドレール41は、前後方向に間隔を開けて平行に配置された前部レール41Aと後部レール41Bとを有している。前部レール41Aは、バッテリユニット9の前部を支持する。後部レール41Bは、バッテリユニット9の後部を支持する。前部レール41Aと後部レール41Bとは、台板41Cにより連結されている。台板41Cは、第2部材43に固定されている。台板41Cの上面にバッテリユニット9が載置される。
【0098】
図7に示すように、スライドレール41は、車体2に固定されている。詳しくは、スライドレール41は、後述する第1支持部材46を介して、車体2に固定されている。前部レール41Aは、フロントフレーム2Aに固定されている。後部レール41Bは、ミッションケース2Bに固定されている。
【0099】
図7,
図14に示すように、車体2には、スライドレール41を支持する第1支持部材46が固定されている。第1支持部材46は、前部レール41Aに沿って車体幅方向に延びる第1部位46aと、後部レール41Bに沿って車体幅方向に延びる第2部位46bと、第1部位46aの先端(外端)と第2部位46bの先端(外端)とを連結する第3部位46cとを有している。第1部位46aは、フロントフレーム2Aに固定されている。第2部位46bは、ミッションケース2Bに固定されている。スライドレール41の第1部材42は、第1支持部材46に取り付けられている。
【0100】
図7に示すように、第2支持体31は、第2支持部材55によりミッションケース2Bに固定されている。第2支持体31は、ミッションケース2Bから車体2の幅方向外側に向けて延びている。
図14に示すように、第2支持部材55は、ミッションケース2Bの下部に固定されている。
【0101】
バッテリユニット9は、第1部材42に対して第2部材43及び台板41Cが移動することによって、第1位置P1と第2位置P2とに移動することができる。バッテリユニット9は、スライドレール41が最も短い状態にあるとき(第1部材42に対する第2部材43の突出量が最大のとき)(
図11の上図参照)、第1位置P1に位置する。バッテリユニット9は、スライドレール41が最も長い状態にあるとき(第1部材42に対する第2部材43の突出量が最小のとき)(
図11の下図参照)、第2位置P2に位置する。
【0102】
図1に示すように、台板41Cには、バッテリユニット9を台板41C上に固定するための固定具47が取り付けられている。固定具47は、紐状の部材であって、バッテリユニット9を上方から押さえるように、台板41Cの左部から右部に掛け渡されている。
【0103】
図4,
図10に示すように、スライドレール41の第2部材43には、当該第2部材43を地面上に支持する支持脚44が設けられている。支持脚44は、ブラケット56を介して第2部材43に取り付けられている。ブラケット56には、支持脚44を回動可能に支持する支軸53(
図12参照)が設けられている。
図12に示すように、支持脚44は、支軸53を支点として回動することができる。これにより、支持脚44は、第2部材43に沿う方向に延伸して接地しない第1姿勢(
図4,
図12の仮想線,
図1参照)と、第2部材43から下方に延伸して接地する第2姿勢(
図10,
図12の実線,
図13参照)とに姿勢変更可能である。支持脚44は、第1姿勢において、第2部材43と平行(又は略平行)に車体幅方向に延びる。
【0104】
支持脚44は、バッテリユニット9が第1位置P1にあるときは第1姿勢とし、第2位置P2にあるときは第2姿勢とすることができる。これにより、バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、スライドレール41が片持ち状態となることを防ぐことができる。そのため、バッテリユニット9の重量によってスライドレール41が下方に撓んだり変形したりすることを防ぐことができる。支持脚44は、バッテリユニット9が第1位置P1と第2位置P2の間の位置にあるとき、第1姿勢としてもよいし第2姿勢としてもよい。
【0105】
図11に示すように、スライドレール41は、支持脚44の姿勢を保持する保持機構60を有している。保持機構60は、レバー61を揺動することによって、支持脚44の姿勢を第1姿勢に保持する第1状態と、支持脚44の姿勢を第2姿勢に保持する第2状態とを切り替えることができるように構成されている。保持機構60の具体的な構成は、特に限定されないが、例えば、レバー61の揺動に連動して動く保持部材を設け、この保持部材が、保持機構60が第1状態にあるときには第1姿勢にある支持脚44に当接して支持脚44を第1姿勢に保持し、第2状態にあるときには第2姿勢にある支持脚44に当接して支持脚44を第2姿勢に保持するように構成することができる。
【0106】
図10,
図12,
図13等に示すように、支持脚44は、第2姿勢にあるときに接地する車輪45を有することが好ましい。第1部材42に対して第2部材43を車体幅方向に移動させるときに、支持脚44を第2姿勢として車輪45を接地させることにより、第1部材42に対する第2部材43の移動を小さい力で容易に且つ円滑に行うことができる。
【0107】
バッテリユニット9の移動方向が車体幅方向のみであるため、車輪45の向きは一定であってもよいが、地面の凹凸等に対応できるように車輪45の向きを変更可能とすることもできる。変更可能とする場合、車輪45は、例えば、上下方向の軸心回りに回転可能な車輪を含むキャスタの形態とすることができる。
【0108】
支持脚44が車輪45を有するものである場合、支持脚44は、バッテリユニット9が第1位置P1にあるとき、又は第1位置P1と第2位置P2の間の位置にあるときに、第1姿勢から第2姿勢に変更可能であることが好ましい。このようにすると、バッテリユニット9を車体幅方向の外側に移動させる(第1部材42から第2部材43を引き出す)動作を、接地した車輪45の転動によって容易に且つ円滑に行うことができる。
【0109】
尚、支持脚44は、姿勢変更可能なものに代えて伸縮可能なものであってもよい。この場合、支持脚44を伸長させることによって、支持脚44を接地した状態とすることができる。また、支持脚44を短縮することによって、支持脚44を接地しない状態とすることができる。
【0110】
本実施形態の場合、支持脚44は、前部レール41Aと後部レール41Bに夫々1つ設けられている。つまり、支持脚44は、1本のスライドレール41に1つ設けられている。しかし、1本のスライドレール41に2つ以上の支持脚44を設けてもよい。例えば、スライドレール41の長さ方向に沿って間隔を空けて2つ以上の支持脚44を設けることができる。
【0111】
図3,
図15の左図に示すように、バッテリユニット9が第1位置P1にあるとき、車体2とバッテリユニット9との間(例えば、ボンネット11とバッテリユニット9との間)には殆ど空間が形成されない。一方、
図9,
図15の右図に示すように、バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、車体2とバッテリユニット9との間に空間S1が形成される。つまり、バッテリユニット9が第1位置P1から第2位置P2に移動することによって、車体2とバッテリユニット9との間(特に、ボンネット11とバッテリユニット9との間)に、比較的広い空間S1が形成される。この空間S1の車体幅方向の長さ(即ち、車体2とバッテリユニット9との隙間の長さ)は、少なくとも1人の作業者が入ることができる長さである。そのため、この空間S1において、スライドレール41(例えば、前部レール41A)上に作業者が乗ることができる。そのため、スライドレール41を車体2に対する作業(例えば、燃料タンク5の積み下ろし等)を行うための足場として使用することができる。これにより、作業者はバッテリユニット9に邪魔されずに車体2に対する作業を行うことが可能となる。
【0112】
図15に示すように、作業車両1は、バッテリユニット9とインバータ24とを接続するケーブル50を備えている。ケーブル50は、バッテリユニット9とインバータ24とを電気的に接続する。バッテリユニット9は、ケーブル50を着脱可能な第1コネクタ51を有している。第1コネクタ51は、バッテリユニット9の前側、上側、車体幅方向内側のいずれかの位置に設けられる。ケーブル50の先端には、第1コネクタ51と接続可能な第2コネクタ52が設けられている。
【0113】
本実施形態の場合、第1コネクタ51は、バッテリユニット9の車体幅方向内側に設けられている。ケーブル50は、車体2から車体幅方向外側に向けて延びている。バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき(
図15の右図参照)、バッテリユニット9が車体2から離れることにより、作業者は第1コネクタ51に容易にアクセスすることができる。そのため、コネクタ51は、バッテリユニット9が少なくとも第2位置P2にあるときにケーブル50を取り外し可能である。
【0114】
第1コネクタ51からのケーブル50の取り外しは、バッテリユニット9が第1位置P1にあるときに行ってもよいし、第2位置P2にあるときに行ってもよい。
図15は、バッテリユニット9が第1位置P1にあるとき(左図参照)に、第1コネクタ51と第2コネクタ52との係合を解除して(矢印A1参照)、第1コネクタ51からケーブル50を取り外している様子を示している。
【0115】
例えば、第2コネクタ52(ケーブル50)を第1支持部材46に移動不能に固定した場合、バッテリユニット9が第1位置P1にあるときに第1コネクタ51からケーブル50(第2コネクタ52)を取り外すことによって、バッテリユニット9を第2位置P2まで移動させることができる。
【0116】
また、第2コネクタ52(ケーブル50)が第1支持部材46から車体幅方向へ引き出し可能であり、当該第2コネクタ52(ケーブル50)を引き出した状態において、第2コネクタ52の端部が第2位置P2に達しない場合、即ち、ケーブル50の長さが短い場合(第2位置P2まで延ばせない場合)、バッテリユニット9が第1位置P1にあるときに第1コネクタ51からケーブル50(第2コネクタ52)を取り外すことによって、バッテリユニット9を第2位置P2まで移動させることができる。
【0117】
また、第2コネクタ52(ケーブル50)が第1支持部材46から車体幅方向へ引き出し可能であり、当該第2コネクタ52(ケーブル50)を引き出した状態において、第2コネクタ52の端部が第2位置P2に達するか、或いは、第2コネクタ52の端部を第2位置P2よりも車体幅方向外側に位置させることができる場合、即ち、ケーブル50の長さが長い場合(第2位置P2まで延ばせる場合)には、第2コネクタ52が第1コネクタ51に接続されたままでバッテリユニット9を第2位置P2に移動させることができる。バッテリユニット9が第2位置P2又は第2位置の近傍に達した状態において、第1コネクタ51からケーブル50(第2コネクタ52)を取り外すことによって、第1コネクタ51からケーブル50の取り外しを容易に行うことができる。
【0118】
上記実施形態に係る作業車両1によれば、以下に述べる効果を奏することができる。
【0119】
作業車両1は、車体2と、車体2に搭載された電動モータ7と、電動モータ7に供給される電力を蓄積するバッテリを含むバッテリユニット9とを備え、バッテリユニット9は、車体2の幅方向外側に配置されている。
【0120】
この構成によれば、バッテリユニット9が車体2の幅方向外側に配置されているため、車体2の幅方向内側(例えば、ボンネット11の内部)に他の機器(例えば、燃料電池モジュール8等)を配置するためのスペースを確保し易くなる。
【0121】
また、作業車両1は、前輪4Aと後輪4Bとを有する走行装置4を備え、バッテリユニット9は、側面視において、前輪4Aと後輪4Bとの間に配置されている。
【0122】
この構成によれば、車体2の幅方向外側において前輪4Aと後輪4Bとの間に形成されるスペース(従来、エンジン駆動の作業車両では、燃料タンク等が配置されていたスペース)を有効に利用してバッテリユニット9を配置することができる。詳しくは、前輪4A及び後輪4Bは車体2よりも外側(幅方向外側)に突出しているため、前輪4Aと後輪4Bとの間において車体2の幅方向外側にスペースが形成され、このスペースを利用してバッテリユニット9を配置することができる。
【0123】
また、バッテリユニット9の車体幅方向の外端は、前輪4Aの車体幅方向の外端よりも外側であって且つ後輪4Bの車体幅方向の外端よりも内側にある。
【0124】
この構成によれば、バッテリユニット9の幅をなるべく大きく確保しながら、作業車両1の車幅を増加させることなく、バッテリユニット9を配置することができる。
【0125】
また、作業車両1は、車体2に搭載された運転席15と、運転席15の周囲に配置されたキャビン3と、を備え、バッテリユニット9は、キャビン3の下方に配置された下部位9aを有している。
【0126】
この構成によれば、キャビン3の下方に形成されるスペースを有効に利用してバッテリユニット9の下部位9aを配置することができる。また、重量物であるバッテリユニット9の一部又は全部である下部位9aがキャビン3の下方に配置されることにより、作業車両1の重心位置を低くすることができ、作業車両1の走行時の安定性を向上させることが可能となる。
【0127】
また、バッテリユニット9は、キャビン3の前方に配置された前部位9bを有している。
【0128】
この構成によれば、キャビン3の前方に形成されるスペースを有効に利用してバッテリユニット9の前部位9bを配置することができる。
【0129】
また、キャビン3は、運転席15よりも前方に配置された前支柱3aと、運転席15よりも後方に配置された後支柱3bと、運転席15よりも上方に配置されたルーフ3cとを有し、バッテリユニット9の下部位9aは、前後方向の位置が前支柱3aとオーバーラップしている。
【0130】
この構成によれば、バッテリユニット9の下部位9aが高い剛性を有する部材である前支柱3aの下方に位置するため、キャビン3の前支柱3aによって下部位9aの上方の少なくとも一部を保護することができる。
【0131】
また、作業車両1は、後輪4Bの上方に設けられたフェンダ14を備え、バッテリユニット9の下部位9aは、前後方向の位置がフェンダ14とオーバーラップしている。
【0132】
この構成によれば、フェンダ14によってバッテリユニット9の下部位9aの上方の少なくとも一部を保護することができる。
【0133】
また、バッテリユニット9の前部位9bは、前支柱3aの前方において前支柱3aに沿って上方に延びている。
【0134】
この構成によれば、バッテリユニット9の前部位9bとキャビン3の前部との間の隙間を小さくすることができるため、キャビン3の前方の空間を有効に利用してバッテリユニット9を配置することができる。
【0135】
また、キャビン3は、運転席15の前方に配置されたフロントガラス16を備え、バッテリユニット9の前部位9bは、正面視においてフロントガラス16と重なっている。
【0136】
この構成によれば、バッテリユニット9の幅(車体幅方向の幅)を大きく確保することができる。また、バッテリユニット9の前部位9bによってフロントガラス16の一部(前部位9bと重なる部分)を保護することができる。
【0137】
また、作業車両1は、キャビン3の前方において車体2の上方を覆うボンネット11を備え、バッテリユニット9の前部位9bはボンネット11の幅方向外側に配置されている。
【0138】
この構成によれば、キャビン3の前方においてボンネット11の幅方向外側に形成されるスペースを有効に利用してバッテリユニット9の前部位9bを配置することができる。
【0139】
また、前部位9bの上端は、ボンネット11の上端よりも下方に位置している。
【0140】
この構成によれば、バッテリユニット9の前部位9bによって作業車両1に乗る作業者の前方視界が遮られることを回避することができる。
【0141】
また、キャビン3の車体幅方向の一方側には、キャビン3に乗降する作業者が足を掛けるステップ19が設けられており、バッテリユニット9は、車体幅方向の他方側であって、側面視においてステップ19と重なる位置に配置されている。
【0142】
この構成によれば、バッテリユニット9が車体幅方向においてステップ19と反対側に配置されるため、ステップ19に阻害されることなく、バッテリユニット9を配置することができる。そのため、バッテリユニット9を配置することによって、キャビン3に乗降する作業者の利便性が損なわれることがない。
【0143】
また、バッテリユニット9の上端は、前輪4Aの上端よりも上方であって且つ後輪4Bの上端よりも下方にある。
【0144】
この構成によれば、バッテリユニット9の上端が前輪4Aの上端よりも上方にあるため、バッテリユニット9の上下方向の長さを長く確保することができる。また、バッテリユニット9の上端が後輪4Bの上端よりも下方にあるため、後方から見てバッテリユニット9が視認されず、作業車両1の後方視の外観がバッテリユニット9により損なわれることがない。
【0145】
また、作業車両1は、車体2に搭載された運転席15を備え、バッテリユニット9は、運転席15の上端と前輪4Aの外周面上部とを結ぶ仮想直線SL1よりも下方に配置されている。
【0146】
この構成によれば、運転席15に着座した作業者の前方視界がバッテリユニット9によって遮られることを回避することができる。
【0147】
また、キャビン3の側部には、開閉可能なドア17が設けられており、バッテリユニット9は、側面視においてドア17と重ならない位置に配置されており、且つ下部位9aの前後方向の位置がドア17とオーバーラップしている。
【0148】
この構成によれば、バッテリユニット9が側面視にてドア17と重ならない位置に配置されているため、バッテリユニット9によりドア17の開閉が妨げられることを回避できる。また、下部位9aの前後方向の位置がドア17とオーバーラップしているため、ドア17の下方のスペースにバッテリユニット9を配置することができる。
【0149】
また、バッテリユニット9の下端は、車体2よりも下方に位置している。
【0150】
この構成によれば、重量物であるバッテリユニット9の位置が低くなるため、作業車両1の重心位置を低くすることができ、作業車両1の走行時の安定性を向上させることが可能となる。
【0151】
また、バッテリユニット9は、バッテリ9A1を含むバッテリパック9Aと、電気回路9Cと、バッテリパック9A及び電気回路9Cを収容する筐体9Dとを有し、バッテリパック9Aは下部位9aに配置されている。
【0152】
この構成によれば、バッテリユニット9の構成要素のうちバッテリパック9Aを下部位9aに配置することによって、バッテリパック9Aの配置スペースを広く確保することができ、バッテリパック9Aを高容量化することができる。また、重量物であるバッテリパック9Aを下部位9aに配置することによって、作業車両1の重心位置を低くすることができ、作業車両1の走行時の安定性を向上させることが可能となる。
【0153】
また、作業車両1は、燃料電池モジュール8と、燃料電池モジュール8に供給する燃料を収容する燃料タンク5とを備え、バッテリ9A1は、燃料電池モジュール8により発電された電力を蓄積する。
【0154】
この構成によれば、燃料電池モジュール8により駆動する作業車両1について、車体2の幅方向内側(例えば、ボンネット11の内部)に他の機器(例えば、燃料電池モジュール8等)を配置するためのスペースを確保し易くなる。
【0155】
また、作業車両1は、車体2と、車体2に搭載された電動モータ7と、電動モータ7に供給される電力を蓄積するバッテリを含み且つ車体2の幅方向外側の第1位置P1に配置されたバッテリユニット9と、バッテリユニット9を第1位置P1から第1位置P1よりも車体幅方向外側の第2位置P2まで移動可能とする移動機構40と、を備えている。
【0156】
この構成によれば、バッテリユニット9が車体2の幅方向外側に配置されているため、車体2の幅方向内側(例えば、ボンネット11の内部)に他の機器(例えば、燃料電池モジュール8等)を配置するためのスペースを確保し易くなる。また、バッテリユニット9を車体幅方向外側に移動可能であるため、バッテリユニット9を車体2から離れた位置に移動させることが可能となり、バッテリの交換作業を容易に行うことができる。
【0157】
また、作業車両1は、前輪4Aと後輪4Bとを有する走行装置4を備え、バッテリユニット9は、側面視において前輪4Aと後輪4Bとの間に配置されているとともに、第1位置P1にあるときは車体幅方向の外端が後輪4Bの外端よりも内側に位置し、第2位置P2にあるときは車体幅方向の外端が後輪4Bの外端よりも外側に位置する。
【0158】
この構成によれば、バッテリユニット9が第1位置P1にあるときには、バッテリユニット9が後輪4Bよりも外側にはみ出さないため、バッテリユニット9によって作業車両1の車幅が増加することがない。一方、バッテリユニット9が第2位置P2にあるときには、バッテリユニット9が後輪4Bよりも外側にはみ出すため、バッテリユニット9に含まれるバッテリ(バッテリパック9A)の交換作業を容易に行うことができる。
【0159】
また、バッテリユニット9は、第2位置P2にあるとき、車体幅方向の内端が後輪4Bの車体幅方向の外端よりも外側に位置する。
【0160】
この構成によれば、バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、バッテリユニット9の全体が後輪4Bよりも外側に位置するため、バッテリユニット9に含まれるバッテリ(バッテリパック9A)の交換作業を非常に容易に行うことができる。
【0161】
また、移動機構40は、車体2に固定されて車体幅方向に延伸する第1部材42と、第1部材42に沿って車体幅方向に移動可能な第2部材43とを有するスライドレール41を有し、バッテリユニット9は、第2部材43に支持され且つ第2部材43の移動に伴って第1位置P1と第2位置P2とに移動する。
【0162】
この構成によれば、移動機構40がスライドレール41を有することによって、第1部材42に対する第2部材43の移動方向を定めることができる。そのため、第2部材43を確実に車体幅方向の外側に向けて移動させることができる。
【0163】
また、第2部材43には、当該第2部材43を地面上に支持する支持脚44が設けられている。
【0164】
この構成によれば、支持脚44によって第2部材43を地面上に支持することができるため、第2部材43がバッテリユニット9の重量によって撓んだり変形したりすることを防ぐことができる。
【0165】
また、支持脚44は、第2部材43に沿う方向に延伸して接地しない第1姿勢と、第2部材43から下方に延伸して接地する第2姿勢とに姿勢変更可能である。
【0166】
この構成によれば、支持脚44を第1姿勢とすることによって、バッテリユニット9を第1位置P1としたときに支持脚44が邪魔にならない。また、支持脚44を第2姿勢とすることによって、バッテリユニット9を第2位置P2としたときに、スライドレール41が片持ち状態となることを防ぐことができる。そのため、バッテリユニット9の重量によってスライドレール41が下方に撓んだり変形したりすることを防ぐことができる。
【0167】
また、支持脚44は、第2姿勢にあるときに接地する車輪45を有している。
【0168】
この構成によれば、第1部材42に対して第2部材43を車体幅方向に移動させるときに、支持脚44を第2姿勢として車輪45を接地させることにより、第1部材42に対する第2部材43の移動(即ち、バッテリユニット9の移動)を小さい力で容易に且つ円滑に行うことができる。
【0169】
また、スライドレール41は、バッテリユニット9の前部を支持する前部レール41Aと、バッテリユニット9の後部を支持する後部レール41Bと、を有している。
【0170】
この構成によれば、重量物であるバッテリユニット9の前部と後部がスライドレール41で支持されるため、スライドレール41に加わる負荷を小さくすることができ、スライドレール41の変形等を防ぐことができる。
【0171】
また、バッテリユニット9が第2位置P2にあるとき、車体2とバッテリユニット9との間に空間S1が形成され、空間S1においてスライドレール41上に作業者が乗ることができる。
【0172】
この構成によれば、スライドレール41を車体2に対する作業(例えば、燃料タンク5の積み下ろし等)を行うための足場として使用することができる。これにより、作業者はバッテリユニット9に邪魔されずに車体2に対する作業を行うことが可能となる。
【0173】
また、作業車両1は、電動モータ7と接続されるインバータ24と、バッテリユニット9とインバータ24とを接続するケーブル50と、を備え、バッテリユニット9は、ケーブル50を着脱可能なコネクタ(第1コネクタ)51を有し、コネクタ51は、バッテリユニット9の前側、上側、車体幅方向内側のいずれかの位置に設けられ、少なくともバッテリユニット9が第2位置にあるときにケーブル50を取り外し可能である。
【0174】
この構成によれば、コネクタ(第1コネクタ)51は、バッテリユニット9の前側、上側、車体幅方向内側のいずれかの位置に設けられているため、コネクタ51に対するケーブル50の着脱を容易に行うことができる。また、コネクタ51は、バッテリユニット9が第2位置にあるときにケーブル50を取り外し可能であるため、バッテリユニット9を第1位置P1から第2位置P2に移動させることにより、ケーブル50を確実に取り外すことが可能となる。
【0175】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0176】
1 作業車両
2 車体
3 キャビン
3a 前支柱
3b 後支柱
3c ルーフ
4A 前輪
4B 後輪
5 燃料タンク
7 電動モータ
8 燃料電池モジュール
9 バッテリユニット
9a 下部位
9b 前部位
9A バッテリパック
9C 電気回路
9D 筐体
11 ボンネット
14 フェンダ
15 運転席
16 フロントガラス
17 ドア
19 ステップ
SL1 仮想直線