(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095106
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20240703BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K15/03 E
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212145
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CB06
3D038CD03
3D235AA14
3D235CC24
3D235FF23
3D235GB02
(57)【要約】
【課題】重量バランスを崩すことなく、タンクのような重量物を収容する。
【解決手段】
本発明の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、を備え、タンク7は、キャビン3の下方に配備されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を連結可能な車体と、
前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、
前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を駆動させるためのガスを収容するタンクと、
を備え、
前記タンクは、前記キャビンの下方に配備されている作業車両。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記タンクの前記ガスにより発電する燃料電池と、前記燃料電池が発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池が発電した電力によって駆動する駆動モータと、を備えている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記バッテリは、前記タンクと共に前記キャビンの下方に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記燃料電池は、前記タンクと共に前記キャビンの下方に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記タンクは、前記車体の前後方向に沿って並ぶように複数配備されており、
複数の前記タンクは、前記車体の幅方向に延びる筒状に形成されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記タンクは、前記車体の幅方向に沿って並ぶように複数配備されており、
複数の前記タンクは、前記車体の前後方向に延びる筒状に形成されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記駆動装置は、複数の前記タンクから前記燃料電池に供給する前記ガスの流量を調整するバルブユニットを備え、
前記バルブユニットは、複数の前記タンクの側方、且つ前記キャビンの下方に配備されている請求項5又は6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記駆動モータが発生させた駆動力を前記走行装置に伝達するミッションケースを備え、
前記タンクは、前記キャビンと前記ミッションケースの間に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項9】
前記駆動モータが発生させた駆動力を前記走行装置に伝達するミッションケースを備え、
前記バッテリは、前記キャビンと前記ミッションケースの間に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項10】
前記駆動モータが発生させた駆動力を前記走行装置に伝達するミッションケースを備え、
前記燃料電池は、前記キャビンと前記ミッションケースの間に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに収容されたガスを用いて駆動する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、トラクタは、車体の前部に、ボンネットを有している。ボンネットの内部には、エンジン、ラジエ-タ、燃料タンク及びバッテリ等が収容されている。
【0003】
一方、脱炭素化の実現を目指して、水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の開発が進んでいる。当該作業車両には、水素ガスを収容(貯留)するタンク(水素タンク)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池車以外の作業車両であっても、燃料を収容(貯留)するタンクが設けられる場合がある。例えば、メタンなどのガスを燃料とする作業車両には、燃料のガスを収容(貯留)するタンクが設けられる。
【0006】
タンクは、駆動装置を構成する部材のうち、比較的体積が大きく重量がある部材である。タンクのような重量物を配備する位置によっては、作業車両の重量バランスを考慮することが望ましい。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、重量バランスを崩すことなく、タンクのような重量物を収容することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0009】
本発明の作業車両は、作業装置を連結可能な車体と、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を駆動させるためのガスを収容するタンクと、を備え、前記タンクは、前記キャビンの下方に配備されている。
【0010】
前記駆動装置は、前記タンクの前記ガスにより発電する燃料電池と、前記燃料電池が発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池が発電した電力によって駆動する駆動モータと、を備えてもよい。
【0011】
前記バッテリは、前記タンクと共に前記キャビンの下方に配備されてもよい。
【0012】
前記燃料電池は、前記タンクと共に前記キャビンの下方に配備されてもよい。
【0013】
前記タンクは、前記車体の前後方向に沿って並ぶように複数配備されており、複数の前記タンクは、前記車体の幅方向に延びる筒状に形成されてもよい。
【0014】
前記タンクは、前記車体の幅方向に沿って並ぶように複数配備されており、複数の前記タンクは、前記車体の前後方向に延びる筒状に形成されてもよい。
【0015】
前記駆動装置は、複数の前記タンクから前記燃料電池に供給する前記ガスの流量を調整するバルブユニットを備え、前記バルブユニットは、複数の前記タンクの側方、且つ前記キャビンの下方に配備されてもよい。
【0016】
作業車両1は、前記駆動モータが発生させた駆動力を前記走行装置に伝達するミッションケースを備え、前記タンクは、前記キャビンと前記ミッションケースの間に配備されてもよい。
【0017】
作業車両1は、前記駆動モータが発生させた駆動力を前記走行装置に伝達するミッションケースを備え、前記バッテリは、前記キャビンと前記ミッションケースの間に配備されてもよい。
【0018】
作業車両1は、前記駆動モータが発生させた駆動力を前記走行装置に伝達するミッションケースを備え、前記燃料電池は、前記キャビンと前記ミッションケースの間に配備され
てもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る作業車両によれば、重量バランスを崩すことなく、タンクのような重量物を収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】本発明の作業車両に設けられる駆動装置のブロック図である。
【
図6】タンクを幅方向に並べたタンクユニットを示す図である。
【
図8】タンクを前後方向に並べたタンクユニットの分解図である
【
図9】ミッションケースに固定されたタンクユニットを示す図であって、(a)はタンクを車体幅方向に複数備えるタンクユニット、(b)はタンク及び燃料電池スタックを備えたタンクユニット、(c)はタンク、燃料電池スタック、及びバッテリを備えるタンクユニットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る作業車両1の好適な実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の作業車両1の一例であるトラクタの斜視図である。本実施形態の作業車両1は、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7がボンネット9に配備された車両である。このようなタンク7を備える車両としては、電極反応の燃料である水素ガスをタンク7に貯留する燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)が挙げられる。そして、本実施形態の作業車両1も、この燃料電池車となっている。
【0023】
なお、燃料電池車の燃料には水素以外のメタンなどを燃料として用いる場合もあるため、メタンなどをタンク7に貯留する燃料電池車も、本発明の作業車両1には含まれる。また、水素、メタン、又はメタンを主成分とする天然ガス、石油ガス、バイオマスガスなどをタンク7に貯留し、タンク7に貯留されたガスを燃料として内燃式のエンジン(ディーゼルエンジンなど)を駆動させる車両も、本発明の作業車両1には含まれる。
【0024】
また、本実施形態では、作業車両1として、トラクタを例に挙げている。しかし、本発明に係る作業車両1はトラクタに限定されず、例えば、トラクタ以外の農業機械(コンバインや田植機など)、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。
【0025】
以下の説明においては、
図3に矢印A1方向で示す方向(作業車両1の前進方向)を前方といい、矢印A2で示す方向(作業車両1の後進方向)を後方といい、矢印A3で示す方向を前後方向として説明する。A1~A3の方向は、
図3以外の図面においても、適宜図示している。
【0026】
また、前後方向A3に直交する方向である水平方向(左右方向)を車体幅方向K1または幅方向(
図2、
図4参照)として説明する。車体幅方向K1は、作業車両1の幅方向である。作業車両1の幅方向の中央部から右方、或いは、中央部から左方へ向かう方向を、車体幅方向K1の外方(幅方向外方)として説明する。つまり、幅方向外方は、作業車両1の幅方向の中心から車体幅方向K1に離れる方向である。幅方向外方とは反対の方向を、車体幅方向K1の内方(幅方向内方)として説明する。つまり、幅方向内方は、車体幅方向K1に作業車両1の幅方向の中心に近づく方向である。
【0027】
図1~
図4に示すように、作業車両1は、車体2と、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、を備えている。
図5は、本実施形態の作業車両1に設けられる駆動装置5のブロック図である。なお、本発明の作業車両1に設けられる駆動装置5は、
図2に示す例に限定されない。駆動装置5に内蔵される駆動モータ6などについては、設置数を適宜変更することが可能である。
【0028】
本実施形態の駆動装置5に用いられる燃料電池(燃料電池スタック8)は、燃料である
水素を酸素と電極反応させ、電気を発生させている。燃料電池に対して燃料として供給される水素は、タンク7に吸蔵あるいは貯蔵されている。駆動装置5には、電極が多層に亘って積層された燃料電池スタック8が設けられている。タンク7の水素ガスは、燃料電池スタック8に供給され、燃料電池スタック8内において電極反応が行われる。本発明の駆動装置5は、燃料電池スタック8内での電極反応により取り出された電気を用いて、駆動モータ6を駆動させる構造となっている。燃料電池スタック8での電極反応では、内燃機関の燃焼反応などで必ず排出される二酸化炭素が排出されない。それゆえ、燃料電池で発生する電力を用いて駆動する本発明の作業車両1は脱炭素化の実現に有望である。
【0029】
以降では、まず駆動装置5以外の作業車両1の構成について説明する。
【0030】
図1~
図4に示すように、車体2の車体幅方向の両端には、走行装置4が配備されている。車体2の上部には、駆動装置5が配備されている。車体2の後部上方にはキャビン3が搭載されており、車体2の前部上方にはボンネット9が配備されている。つまり、本実施形態の車体2は、走行装置4、駆動装置5、及びキャビン3などを支持する部材である。具体的には、車体2の後部には、駆動装置5から走行装置4に動力を伝達するミッションケース29が設けられている。車体2の前部は、金属製のフレーム材などを組み合わせて高い剛性を発揮できるように形成されている。
【0031】
図2~
図4に示すように、キャビン3は、車体2の後部上方に搭載された箱体であり、内部には運転席10が配備されている。キャビン3は、前後左右のパネルと、隣接するパネル同士の間に配備されるピラーとを有している。具体的には、キャビン3は、運転席10の前方に配備されたフロントパネル11と、運転席10の左方及び右方にそれぞれ配備されたドアパネル12L、12Rと、運転席10の後方に配備されたリアパネル13と、を含んでいる。
【0032】
また、キャビン3は、左フロントピラー14と、右フロントピラー15と、左リアピラー16と、及び右リアピラーと、を含んでいる。左フロントピラー14は、フロントパネル11と左方のドアパネル12Lとの間に設けられている。右フロントピラー15は、フロントパネル11と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。左リアピラー16は、リアパネル13と左方のドアパネル12Lとの間に設けられている。右リアピラーは、リアパネル13と右方のドアパネルとの間に設けられている。
【0033】
走行装置4は、路面(地面)に対して車体2を支持すると共に走行させることができる。言い換えると、走行装置4は、車体2に推進力を付与する。本実施形態の場合、走行装置4は、ゴムなどで形成された前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rである。後輪タイヤ19L、19Rは、前輪タイヤ18L、18Rよりも大径なゴムタイヤで形成されており、車体2の後部に加わる大きな荷重を支持可能となっている。本実施形態の走行装置4では、前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rのいずれか一方、または前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rの双方に、駆動装置5から動力が伝達されている。なお、走行装置4には、ゴムタイヤに替えてクローラなどを用いても良い。
【0034】
次に、駆動装置5について説明する。駆動装置5は、走行装置4を駆動させる動力を発生している。本発明の場合、駆動装置5には、燃料電池で発生した電力が用いられている。具体的には、駆動装置5は、走行装置4を駆動させる動力を発生する駆動モータ6と、駆動モータ6に電力を供給する燃料電池スタック8と、燃料電池スタック8から供給される電力を貯留するバッテリ20と、を有している。また、作業車両1には、燃料電池スタック8に燃料用の水素ガスを供給するタンク7が設けられている。
【0035】
以降、駆動装置5を構成する駆動モータ6、バッテリ20、及びタンク7について説明する。
【0036】
図1~
図4に示すように、燃料電池スタック8は、箱状に形成された電池ケーシング21の内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数備えている。
【0037】
具体的には、正極及び負極は、それぞれ正極材及び負極材を用いて、シート状又は膜状に形成されている。単セルには、正極及び負極が1枚ずつ含まれており、隣り合う単セルの間はセパレータにより区切られている。正極にはタンク7の水素ガスが供給され、負極
にはコンプレッサなどで圧縮された酸素ガス(酸化ガス)が供給されており、単セルごとに電池反応(発電)が行われる。燃料電池スタック8は、それぞれの単セルで発電された電力を集約することで、駆動装置5を駆動可能な電圧及び電流の電力を発生させている。
【0038】
図5に示すように、燃料電池スタック8には、電極温度調整用の冷却液が供給されており、内部に設けられた電極温度を発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整可能とされている。冷却液は、燃料電池スタック8の内部と、車体2の前部に設けられたラジエ-タ(第1ラジエ-タ22)との間を循環しており、図示しないポンプやバルブなどを用いて流量調整を行うことで、燃料電池スタック8の内部の温度を調整可能となっている。
【0039】
図3~
図5に示すように、本実施形態の場合であれば、燃料電池スタック8は、車体2の前部上方に配備されたボンネット9の内部に収容されている。燃料電池スタック8には、タンク7からガス配管23を通じて水素ガスが供給されている。ボンネット9内部における燃料電池スタック8の後方には、電極温度調整用の冷却液を冷却する第1ラジエ-タ22が配備されている。
【0040】
なお、本実施形態の作業車両1では、ボンネット9内部における燃料電池スタック8の前方にもラジエ-タが設けられている。燃料電池スタック8の前方に位置するラジエ-タは、後方に設けられた第1ラジエ-タ22とは別に設けられるものであり、第2ラジエ-タ24と呼ばれている。本実施形態の場合、第2ラジエ-タ24は、電極温度調整の用途ではなく、燃料電池スタック8以外の冷却など(例えば、キャビン3の室内を冷却する空調装置28など)に用いられている。
【0041】
図5に示すように、駆動モータ6の下流(電力伝達経路における下流)には、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧する昇圧回路25が設けられている。これにより、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧回路25が昇圧することで、駆動モータ6を起動するための電圧を確保することができる。
【0042】
昇圧回路25は、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧させる回路を備えており、昇圧された電力は駆動モータ6に送られて、駆動モータ6を駆動させる。なお、作業車両1で用いられる電装品には、駆動モータ6よりもさらに低電圧で作動するものがある。このような低電圧で作動する電装品(弱電の電装品)に対しては、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27を含む降圧回路で降圧された電力が供給される。本実施形態の場合であれば、低電圧で作動する電装品には、上述したラジエ-タ(第1ラジエ-タ22及び/又は第2ラジエ-タ24)、バッテリ20、及び空調装置28が挙げられる。
【0043】
バッテリ20は、燃料電池スタック8で発生した電気を蓄電するものである。バッテリ20及び空調装置28に対しては第1DC-DCコンバータ26で降圧された電力が供給され、ラジエ-タに対しては第2DC-DCコンバータ27で降圧された電力が供給される。
【0044】
なお、本実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27と一緒に、右の前輪タイヤ18Rと、右の後輪タイヤ19Rとの間に(車体2における前後方向の中央部の右方に)、ケースに収容された状態で配備されている。また、空調装置28は、キャビン3における運転席10の下方に配備されている。バッテリ20及び空調装置28の設置位置は、本実施形態の例に限られるものではない。
【0045】
駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流または交流の同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、燃料電池スタック8の後方に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸6aを備えており、出力軸6aを回転駆動させている。出力軸6aの後端は、ミッションケース29に接続されている。
【0046】
ミッションケース29には、出力軸6aに伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどが配備されている。ミッションケース29は、出力軸6aから入力された動力を減速あるいは増速し、減速あるいは増速された動力を走行装置4の前輪タイヤ18L、18R及び/又は後輪タイヤ19L、19Rに出力している。例えば、走行装置4に出力される動力は、作業車両1が後輪駆動である場合は後輪タ
イヤ19L、19Rのみに伝達され、四輪駆動である場合は前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rの両方に伝達される。
【0047】
なお、本実施形態の駆動モータ6は、車体2の上部に一箇所だけ配備されており、一基の駆動モータ6で発生した動力を前輪タイヤ18L、18R及び/又は後輪タイヤ19L、19Rに分配している。しかし、本発明の駆動装置5に内蔵される駆動モータ6の設置数などは適宜変更してもよい。
【0048】
本実施形態の作業車両1では、ミッションケース29は、減速あるいは増速した動力を走行装置4に伝達するだけでなく、動力の一部を作業装置49に伝達する。具体的には、作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、PTO軸30(パワーテイクオフ軸)を設けておき、ミッションケース29に伝達(入力)された動力を、走行装置4だけでなくPTO軸30にも出力する。このようにすれば、燃料電池で発生した電力を用いて、作業装置49(インプルメント)を作動させることも可能となる。
【0049】
また、本実施形態の作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)には、PTO軸30だけでなく、連結装置(3点リンク機構)が設けられている。このような3点リンク機構を設ければ、作業車両1の後方にさまざまなインプルメント(作業装置49)を取り付けて、姿勢変更させたり駆動させたりすることが可能になり、作業車両1に多様な作業を実施させることができる。作業装置49は、耕運機、ロータリ、マルチャー、ハンマーナイフモア、畦塗り機、運搬機、播種機、ハロー、又は畝立て機などのインプルメントである。
【0050】
なお、上述したPTO軸30や3点リンク機構は、必ず設置されるものではない。コンバインや田植機のような農業機械や建設機械などの作業車両1では、設置されない場合も存在し得る。また、上述した駆動モータ6とは別に、当該駆動モータ6が出力した動力によって駆動する油圧ポンプや、駆動モータ6とは別の電動モータなどを設けておき、作業装置49(インプルメント)を油圧または電動で作動させても良い。
【0051】
タンク7は、キャビン3の下方に、タンク7が含まれたタンクユニット31として配備されている。タンクユニット31は、ミッションケース29とキャビン3との間に設けられている。タンクユニット31は、複数のタンク7を収容可能なタンクケーシング32を備えている。本実施形態の場合であれば、タンクケーシング32には、4本のタンク7が収容されている。タンクユニット31の上部には、キャビン3に設けられる左フロントピラー14、右フロントピラー15、左リアピラー16、及び右リアピラーの下端を弾性的に支持するブラケット42が設けられている。また、タンクユニット31は、タンク7の水素ガスを案内するガス配管23が、タンク7ごとに設けられている。ガス配管23の先端には、ガス配管23を通じて導入された水素ガスを混合等し、所定の流量に調整した上で、燃料電池スタック8に送るバルブユニット33が配備されている。
【0052】
次に、タンクユニット31が有するタンク7、タンクケーシング32、ブラケット42、ガス配管23、及びバルブユニット33について説明する。
【0053】
図6及び
図7に示すように、タンク7は、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂などを用いて長尺な円筒状に形成されたボンベが用いられている。本実施形態の場合であれば、タンク7(ボンベ)は、いずれも前後方向に軸心を向けるように配備されており、タンクケーシング32内に幅方向に並んで4本収容されている。
【0054】
タンク7の前端には、ネック7aが形成されている。タンク7のネック7aには、図示しない安全弁(電磁弁)を介してガス配管23が連結されている。
【0055】
タンクケーシング32は、複数本のタンク7を収容でき、ボルト等の締結部材や溶接等によりミッションケース29に固定されている。
図9に示すように、タンクケーシング32は、ミッションケース29の上部に固定されている。本実施形態の場合、タンクケーシング32はミッションケース29の上面に当接して固定されている。但し、タンクケーシング32は、ミッションケース29の上面との間に空間が形成された状態で固定されていてもよい。
【0056】
タンクケーシング32は上述したタンク7より大きなサイズに形成されており、複数本のタンク7を収容する。本実施形態のタンクケーシング32は、外部からタンク7を熱的
及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。
【0057】
具体的には、本実施形態のタンクケーシング32は、車体幅方向に比べて前後方向に長い長方形の板状に形成された底部34と、底部34の前縁に上下方向に沿って起立状に形成された前壁部35と、底部34の左縁に上下方向に沿って起立状に形成された左壁部36と、底部34の後縁に上下方向に沿って起立状に形成された後壁部37と、底部34の右縁に上下方向に沿って起立状に形成された右壁部38と、を有している。タンクケーシング32の底部34は、ミッションケース29の上部に対して、ボルトなどを用いて締結あるいは溶接などの手段で固定されている。なお、上述した実施形態では、タンクケーシング32の下部がミッションケース29の上部に固定されていたが(
図9参照)、ミッションケース29以外の構造体、例えば、車体2に直接固定されていてもよい。
【0058】
タンクケーシング32の前壁部35及び後壁部37の上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部39が形成されている。切欠部39は、タンク7の収容本数に合わせて、前壁部35及び後壁部37に4箇所ずつ形成されている。切欠部39は、凹んだ部分にネック7aを嵌め込むようにして、切欠部39の1箇所につきタンク7が1本収容される。切欠部39の凹んだ部分にネック7aを嵌め込むことで、タンクケーシング32は、タンク7に横揺れを起こさないようにタンク7を収容されている。
【0059】
タンクケーシング32の上部には、前ビーム材40と後ビーム材41とが配備されている。前ビーム材40及び後ビーム材41は、いずれも長尺棒状の部材であり、車体幅方向に延伸するように配備されている。前ビーム材40は、左壁部36の前部上端と、右壁部38の前部上端と、を車体幅方向に連結している。また、前ビーム材40は、タンクケーシング32が収容するタンク7の前部の上方に位置しており、タンク7が縦揺れを起こさないよう、当該タンク7の前部を前壁部35とともに保持している。
【0060】
後ビーム材41は、左壁部36の後部上端と、右壁部38の後部上端と、を車体幅方向に連結している。また、後ビーム材41は、タンクケーシング32が収容するタンク7の後部の上方に位置しており、タンク7が縦揺れを起こさないよう、当該タンク7の後部を後壁部37とともに保持している。
【0061】
なお、後ビーム材41はタンクケーシング32の車体幅方向に沿った幅寸法とほぼ同寸に形成されているが、前ビーム材40はタンクケーシング32の車体幅方向に沿った幅寸法よりも長く形成されており、前ビーム材40の左端及び右端はタンクケーシング32よりも幅方向外方に突出するように形成されている。タンクケーシング32よりも幅方向外方に突出した前ビーム材40の左端及び右端の上部には、ブラケット42が配備されている。
【0062】
なお、本実施形態のタンクケーシング32は箱状に形成されているが、本発明のタンクケーシング32にはタンク7を収容可能な棚やラックなどを用いても良い。また、本実施形態のタンクケーシング32では、前壁部35と後壁部37の双方に切欠部39が形成された例を挙げたが、切欠部39は前壁部35及び後壁部37のいずれか一方だけ(タンク7のネック7aが設けられる方)に形成されていても良い。
【0063】
ブラケット42は、キャビン3の下端を車体2に支持する部材である。具体的には、ブラケット42は、キャビン3の左右に設けられたフロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端を支持する。ブラケット42は、フロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端と嵌合するブラケット本体43と、ブラケット本体43に対してフロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端を弾性的に支持するマウント部材44と、を有している。
【0064】
ブラケット本体43は、金属板を折り曲げるなどして、前方または後方から見た場合に略U字状になるように形成されている。具体的には、ブラケット本体43は、上方に向かって起立するように突出すると共に左右方向に距離をあけて配備された左突片45及び右突片46と、左突片45の下端及び右突片46の下端を車体幅方向に連結する連結片47と、を有している(
図6及び
図7参照)。左突片45及び右突片46を上方に向かって起立状に形成することで、フロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端が左
右方向に移動することが抑制され、キャビン3をブラケット42で強固に固定することが可能となる。
【0065】
マウント部材44は、ゴムなどの弾性材料を用いて板状に形成された部材であり、ブラケット本体43の連結片47に配備されている。マウント部材44は、フロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端に接触することで、フロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端を弾性的に支持している。
【0066】
図6に示すように、ガス配管23は、複数のタンク7のそれぞれに配備されており、それぞれのタンク7の水素ガスをバルブユニット33に案内する。ガス配管23には、水素ガスの透過を防止可能な合成樹脂と、可撓性を備えた金属ワイヤなどを組み合わせた複合材料のホースなどが用いられる。
【0067】
バルブユニット33は、ガス配管23を通じてそれぞれのタンク7から送られてきた水素ガスを集め、適宜混合している。バルブユニット33は、水素ガスの圧力及び流量を調整可能な電磁弁などを備えており、燃料電池スタック8で発電するのに適した圧力及び流量に水素ガスを調整して、燃料電池スタック8に水素ガスを送っている。
【0068】
バルブユニット33は、複数のタンク7の側方、且つキャビン3の下方に配備されるのが好ましい。バルブユニット33を複数のタンク7の側方に設置することで、タンク7とバルブユニット33の高さがほぼ等しくなり、バルブユニット33は、タンク7との上下方向に高さの差がない分だけ、タンク7から近い距離に設置することが可能となる。その結果、ガス配管23の長さを短くすることが可能となる。
【0069】
また、バルブユニット33の設置位置をキャビン3の下方に設定すれば、キャビン3と車体2との間に形成されるスペースを利用してガス配管23を配設できるので、他の部材と物理的に干渉することなくガス配管23を配設でき、装置レイアウトの設計自由度が大きくなる。なお、バルブユニット33をタンクユニット31(タンクケーシング32)に設けてもよい。
【0070】
さて、
図1~
図3に示すように、本実施形態において、タンク7(タンクユニット31)は、キャビン3の下方に配置されている。タンク7(タンクユニット31)は、上述した作業車両1の駆動装置5を構成する部材のうち、比較的重量が大きな重量物である。従って、このような重量物をキャビン3の下方、即ち作業車両1の下部に配置することで、作業車両1全体の重心を低くするができる。作業車両1の下部に配置することが好ましい。
【0071】
さらに、
図3に示すように、タンク7(タンクユニット31)は、ミッションケース29の上部に配置されている。言い換えると、ミッションケース29の上方の空間、具体的にはミッションケース29とキャビン3との上下方向に設けられる空間が、タンクユニット31を収容する収容部48となっている。
【0072】
つまり、本発明の作業車両1では、タンクユニット31はミッションケース29の上部に配備され、このタンクユニット31の上部にキャビン3が配備されている。ミッションケース29もタンクユニット31と同様に、比較的重量が大きい。つまり、比較的重量が大きい重量物(タンクユニット31)及びミッションケース29をキャビン3の下方に集約することで、作業車両1の重心をより効果的に低くすることができる。
【0073】
図2及び
図3に1点鎖線で示されるように、収容部48は、前後方向に長い直方体形状の空間である。収容部48は、車体幅方向の中央部に位置している。
【0074】
収容部48の車体幅方向の一方(左方)には、左後輪タイヤ19Lが位置し、他方(右方)には、右後輪タイヤ19Rが位置している。これにより、タンクユニット31の両側部の少なくとも一部を後輪タイヤ19L、19Rで車体幅方向外側から遮蔽(遮断)している。つまり、後輪タイヤ19L、19Rがタンクユニット31を防護する壁部を構成する。これにより、タンクユニット31の両側部が外部と接触することにより損傷することを回避できる。
【0075】
収容部48の車体幅方向の長さL1は、左後輪タイヤ19Lから右後輪タイヤ19Rまでの長さL2以下である。つまり、タンクユニット31は、正面視において、左後輪タイヤ19Lと右後輪タイヤ19Rとの間に配置される。本実施形態において、左後輪タイヤ
19Lの右端よりも左前輪タイヤ18Lの右端の方が、左方に位置し、右後輪タイヤ19Rの右端よりも右前輪タイヤ18Rの左端の方が、右方に位置しているため、タンクユニット31は、正面視において、左前輪タイヤ18Lと右前輪タイヤ18Rとの間に配置される。これにより、タンクユニット31が前輪タイヤ18L、18Rの接地面及び後輪タイヤ19L、19Rの接地面を結ぶ範囲に位置するため、重量バランスを向上させることができる。
【0076】
また、収容部48の車体幅方向の長さL1は、キャビン3の車体幅方向の長さL3以下である。つまり、タンクユニット31は、正面視においてキャビン3の車体幅方向の一方の端部(左端)と、他方の端部(右端)との間に配置される。
【0077】
また、収容部48の前端は、ボンネット9の後部に位置し、前輪タイヤ18L、18Rの車軸と後輪タイヤ19L、19Rの車軸との間に位置している。収容部48の後端は、後輪タイヤ19L、19Rの車軸よりも後方に位置している。つまり、タンクユニット31は、側方視において、前端が前輪タイヤ18L、18Rの車軸と後輪タイヤ19L、19Rの車軸との間に位置し、後端が後輪タイヤ19L、19Rの車軸よりも後方に位置している。これにより、作業車両1の重心をより効果的に低くするとともに、後輪タイヤ19L、19Rのトラクションを増加することができる。
【0078】
さらに、収容部48の上端は、後輪タイヤ19L、19Rの上端よりも下方に位置しており、タンクユニット31は、後輪タイヤ19L、19Rの上端よりも下方に配置される。
【0079】
次に、上述した収容部48に対して、タンクユニット31を配備するには、次のような配置例が考えられる。
【0080】
1つ目の配置例は、
図6及び
図7に示すようなものである。
【0081】
図6及び
図7に示す配置例では、タンク7は、車体2の幅方向に沿って並ぶように複数配備される。図例の場合であれば、タンク7は、車体2の幅方向に沿って4本配備されている。これら4本(複数)のタンク7は、車体2の前後方向に延びる筒状(図例では円筒状)に形成されている。このような配置であれば、車体2とキャビン3との間の収容部48に、複数のタンク7を幅方向に並べて集中的に配備できる。その結果、少なくともタンク7を含む重量物をミッションケース29の上方(キャビン3の下方)の限られたスペースに配備できるので、作業車両1の重量バランスが低下することを抑制できる。
【0082】
【0083】
図8に示すように、タンク7は、車体2の前後方向に沿って並ぶように複数配備される。図例の場合、タンク7は、車体2の前後方向に沿って6本配備されている。これら6本(複数)のタンク7は、前記車体2の幅方向に延びる筒状(図例では円筒状)に形成されている。このような配置でも、車体2とキャビン3との間のスペースに、複数のタンク7を前後方向に並べて集中的に配備できる。その結果、少なくともタンク7を含む重量物をミッションケース29の上方(キャビン3の下方)の限られたスペースに配備できるので、
図6及び
図7の場合と同様に作業車両1の重量バランスが低下することを抑制できる。
【0084】
なお、
図8に示すように、複数のタンク7を車体2の前後方向に沿って並ぶように収容する場合は、幅方向に長いビーム材を前後に2本用いるのに替えて、後端の一部がタンクケーシング32の左壁部36及び右壁部38に沿うように後方に延設された(櫛歯状の)前ビーム材40を用いても良い。
【0085】
また、タンク7(水素ボンベ)の形状、寸法、収容本数、及び材質は、図例に限られたものではない。収容部48や作業車両1のサイズ、仕様などに合わせて、言い換えればキャビン3と車体2との間に形成されるスペースに合わせて適宜変更することができる。
【0086】
上述した重量物には、タンク7に加えて、バッテリ20及び/又は燃料電池スタック8が含まれてもよい。重量物としては、タンク7が最も重量が大きいものの、バッテリ20や燃料電池スタック8はタンク7の次に重量が大きい。また、燃料の消費が進むと、バッテリ20や燃料電池スタック8の重量と、タンク7の重量との差が小さくなるため、バッテリ20及び/又は燃料電池スタック8もタンク7の近傍に配備されるのが好ましい。
【0087】
例えば、バッテリ20や燃料電池スタック8をタンク7の近傍に配備したタンクユニッ
ト31(駆動装置5)の例としては、
図9(a)~
図9(c)に示すようなものが考えられる。
【0088】
図9(a)に示すタンクユニット31(駆動装置5)では、タンク7のみを含む重量物をキャビン3の下方の限られたスペースに配備している。このような重量物の配置は、車体2とキャビン3との間のスペースに複数のタンク7を水平方向に並べて集中的に配備できるので、作業車両1の重量バランスが低下することを抑制できる。
【0089】
図9(b)に示すタンクユニット31(駆動装置5)では、キャビン3の下方のスペースに、タンク7を前後方向に3本、上下方向に2段に重ねて、合計で6本収容している。また、タンク7の後方には、燃料電池スタック8が設けられている。つまり、
図9(b)に示す作業車両1の重量物は、タンク7に加えて、燃料電池スタック8を含んでいる。
【0090】
図9(c)に示すタンクユニット31(駆動装置5)では、
図9(b)の場合と同様に、キャビン3の下方のスペースに、タンク7を合計で6本収容している。
図9(c)に示すタンクユニット31が
図9(b)と異なるのは、タンク7の後方に、燃料電池スタック8とバッテリ20とが設けられている点である。つまり、
図9(c)に示す作業車両1の重量物は、タンク7に加えて、燃料電池スタック8とバッテリ20とを含んでいる。
【0091】
図9(b)及び
図9(c)に示す重量物の配置は、作業車両1自体が大きく、車体2とキャビン3との間のスペースに余裕がある場合などに用いることができる。このような重量物の配置でも、車体2とキャビン3との間のスペースに複数のタンク7を水平方向に並べて集中的に配備できるので、作業車両1の重量バランスが低下することを抑制できる。
【0092】
本発明の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、を備え、タンク7は、キャビン3の下方に配備されている。キャビン3の下方には駆動モータ6やミッションケース29が配備され、作業車両1の重心が存在している可能性が高い。それゆえ、キャビン3の下方に、タンク7を配備すれば、重量のあるタンク7を作業車両1の重心に近い場所に設けることが可能となり、タンク7を車内に設ける場合でも作業車両1の重量バランスの低下を抑制することができる。
【0093】
駆動装置5は、タンク7のガスにより発電する燃料電池(燃料電池スタック)8と、燃料電池8が発電した電力を蓄電するバッテリ20と、燃料電池8が発電した電力によって駆動する駆動モータ6と、を備えているとよい。
【0094】
重量のあるタンク7をキャビン3の下方に設けて、重量バランスの低下を抑制する構成は、タンク7のガスにより発電する燃料電池8と、燃料電池8が発電した電力を蓄電するバッテリ20と、燃料電池8が発電した電力によって駆動する駆動モータ6と、を備えた駆動装置5を有する燃料電池車に好適に用いることができる。燃料電池車では水素を充填した重量のある水素タンクが使用されるため、重量バランスの低下を抑制する構成は、燃料電池式の作業車両1(燃料電池車)に効果的である。
【0095】
本発明の作業車両1では、バッテリ20は、タンク7と共にキャビン3の下方に配備されている。
【0096】
また、本発明の作業車両1では、燃料電池8は、タンク7と共にキャビン3の下方に配備されている。
【0097】
このような作業車両1であれば、タンク7に加えて、重量があるバッテリ20や燃料電池8を作業車両1の重心に近い場所に設けることが可能となり、作業車両1の重量バランスの低下をより確実に抑制することができる。
【0098】
本発明の作業車両1は、タンク7は、車体2の前後方向に沿って並ぶように複数配備されており、複数のタンク7は、車体2の幅方向に延びる筒状に形成されている。
【0099】
また、本発明の作業車両1は、タンク7は、車体2の幅方向に沿って並ぶように複数配備されており、複数のタンク7は、車体2の前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0100】
このような作業車両1であれば、複数のタンク7を作業車両1の重心に近い場所に集中して効率的に配備することが可能となり、作業車両1の重量バランスをより良好にすることができる。
【0101】
本発明の作業車両1は、駆動装置5は、複数の前記タンク7から燃料電池8に供給するガスの流量を調整するバルブユニット33を備え、バルブユニット33は、複数のタンク7の側方、且つキャビン3の下方に配備されている。
【0102】
このような作業車両1であれば、タンク7とバルブユニット33との高さがほぼ等しくなり、上下方向に高さの差がない分だけタンク7から近い距離にバルブユニット33を設置することが可能となり、ガス配管23の長さを短くすることが可能となる。また、バルブユニット33の設置位置をキャビン3の下方に設定すれば、キャビン3と車体2との間に形成されるスペースを利用してガス配管23を配設できるので、他の部材と物理的に干渉することなくガス配管23を配設でき、装置レイアウトの設計自由度が大きくなる。
【0103】
本発明の作業車両1は、駆動モータ6が発生させた駆動力を前記走行装置4に伝達するミッションケース29を備え、タンク7は、キャビン3とミッションケース29の間に配備されている。
【0104】
また、本発明の作業車両1は、駆動モータ6が発生させた駆動力を前記走行装置4に伝達するミッションケース29を備え、バッテリ20は、キャビン3とミッションケース29の間に配備されている。
【0105】
さらに、本発明の作業車両1は、駆動モータ6が発生させた駆動力を前記走行装置4に伝達するミッションケース29を備え、燃料電池8は、キャビン3とミッションケース29の間に配備されている。
【0106】
このような作業車両1であれば、駆動装置5の中でも最も重量があるミッションケース29の上部に、タンク7、バッテリ20、燃料電池8などが配備されるので、作業車両1の重量バランスを良好にすることができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
1 作業車両
2 車体
3 キャビン
4 走行装置
5 駆動装置
6 駆動モータ
6a 駆動モータの出力軸
7 タンク
8 燃料電池スタック(燃料電池)
10 運転席
20 バッテリ
29 ミッションケース
33 バルブユニット
48 収容部
49 作業装置