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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095108
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/063 20060101AFI20240703BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K15/063 B
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212147
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CB06
3D038CC18
3D038CD03
3D235AA14
3D235BB17
3D235CC12
3D235CC15
3D235CC23
3D235CC24
3D235DD33
(57)【要約】
【課題】収容スペースが必要とされるタンクをボンネット内に配備する。
【解決手段】
本発明の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、運転席10の前方に配備され且つ、タンク7を収容するボンネット9と、を備えている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を連結可能な車体と、
前記車体に設けられた運転席と、
前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を駆動させるためのガスを収容するタンクと、
前記運転席の前方に配備され且つ、前記タンクを収容するボンネットと、
を備えている作業車両。
【請求項2】
前記ボンネットは、前記タンクを収容する収容部を備え、
前記収容部は、前記車体よりも車体の幅方向外方に拡張されている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行装置は、前記車体の左前部に配備された左前輪と、前記車体の右前部に配備された右前輪とを有し、
前記収容部は、平面視において前記左前輪及び/又は前記右前輪と重複している請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記タンクは、前記左前輪及び前記右前輪の上端よりも上方に配置されている請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記タンクのガスにより発電する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックが発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池スタックが発電した電力によって駆動する駆動モータと、を備えている請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記燃料電池スタックは、前記ボンネットに収容され、
前記タンクは、前記燃料電池スタックの上部に配置されている請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記収容部は、車体幅方向の一方及び/又は他方に、当該収容部の収容容積を車体幅方向の外方に拡張する拡張収容部を有し、
前記拡張収容部は、前記左前輪又は前記右前輪の上端よりも上方に配備され、且つ前記タンクの少なくとも一部を収容している請求項3に記載の作業車両。
【請求項8】
前記拡張収容部の下端は、前記収容部の下端よりも上方であって、前記左前輪の上端又は前記右前輪の上端よりも上方に位置している請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記車体には、前記左前輪及び/又は前記右前輪を含む領域を撮像する撮像装置が設けられている請求項7に記載の作業車両。
【請求項10】
前記運転席を収容するキャビンと、
前記運転席の周辺に設けられ、且つ前記撮像装置が撮像した撮像画像を表示する表示装置と、を備えている請求項9に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに収容されたガスを用いて走行する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、トラクタは、車体の前部に、ボンネットを有している。ボンネットの内部には、エンジン、ラジエ-タ、燃料タンク及びバッテリ等が収容されている。
【0003】
一方、脱炭素化を実現するため、水素を燃料とする燃料電池、発電装置、又はバッテリなどから供給された電力で駆動する走行車両の開発が進んでいる。当該走行車両には、水素ガスを収容(貯留)するタンク(水素タンク)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-128483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池車以外の作業車両であっても、燃料を収容(貯留)するタンクが設けられる場合がある。例えば、メタンなどのガスを燃料とする作業車両には、燃料のガスを収容(貯留)するタンクが設けられる。
【0006】
このようなタンクは体積が大きく、収容する場合には大きな収容スペースが必要となる。そのため、タンクを車内のどの場所に収容するかという問題は、今後需要の増加が見込まれる燃料電池車などにおいて解決すべき喫緊の問題となっている。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、収容スペースが必要とされるタンクをボンネット内に配備することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0009】
本発明の作業車両は、作業装置を連結可能な車体と、前記車体に設けられた運転席と、前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を駆動させるためのガスを収容するタンクと、前記運転席の前方に配備され且つ、前記タンクを収容するボンネットと、を備えている。
【0010】
前記ボンネットは、前記タンクを収容する収容部を備え、前記収容部は、前記車体よりも車体の幅方向外方に拡張されてもよい。
【0011】
前記走行装置は、前記車体の左前部に配備された左前輪と、前記車体の右前部に配備された右前輪とを有し、前記収容部は、平面視において前記左前輪及び/又は前記右前輪と重複してもよい。
【0012】
前記タンクは、前記左前輪及び前記右前輪の上端よりも上方に配置されてもよい。
【0013】
前記駆動装置は、前記タンクのガスにより発電する前記燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックが発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池スタックが発電した電力によって駆動する駆動モータと、を備えてもよい。
【0014】
前記燃料電池スタックは、前記ボンネットに収容され、前記タンクは、前記燃料電池スタックの上部に配置されてもよい。
【0015】
前記収容部は、車体幅方向の一方及び/又は他方に、当該収容部の収容容積を車体幅方向の外方に拡張する拡張収容部を有し、前記拡張収容部は、前記左前輪又は前記右前輪の上端よりも上方に配備され、且つ前記タンクの少なくとも一部を収容してもよい。
【0016】
前記拡張収容部の下端は、前記収容部の下端よりも上方であって、前記左前輪の上端又は前記右前輪の上端よりも上方に位置してもよい。
【0017】
前記車体には、前記左前輪及び/又は前記右前輪を含む領域を撮像する撮像装置が設けられてもよい。
【0018】
前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記運転席の周辺に設けられ、且つ前記撮像装置が撮像した撮像画像を表示する表示装置と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る作業車両によれば、収容スペースが必要とされるタンクをボンネット内に配備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の作業車両の斜視図である。
図2】第1実施形態の作業車両の正面図である。
図3】第1実施形態の作業車両の左側面図である。
図4】第1実施形態の作業車両の平面図である。
図5】第1実施形態の撮像装置の構成を示すブロック図である。
図6】第1実施形態のタンクユニットの分解図である。
図7】第1実施形態の作業車両における撮像装置の設置位置及び照射角度を示す左側面図である。
図8】撮像装置により撮像される第1領域、第2領域、及び第3領域を比較して示した平面図である。
図9】撮像装置の配備が必要となるような、運転席と前輪とボンネットとの位置関係を示す図である。
図10】第1実施形態の作業車両における撮像装置の構成を示すブロック図である。
図11】第2実施形態の作業車両の斜視図である。
図12】第2実施形態の作業車両の正面図である。
図13】第2実施形態の作業車両の平面図である。
図14】第2実施形態の作業車両における拡張収容部と車体及びタイヤとの位置関係を示す図である。
図15】第2実施形態の作業車両における収容部及び拡張収容部へのタンクの収容例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る作業車両1の第1実施形態について説明する。
【0022】
第1実施形態の作業車両1は、タンク7をボンネット9に収容した場合に生じうる「前方視界や下方視界の悪化」に対する対応として、撮像装置50を設けたものとなっている。これにより、第1実施形態の作業車両1は、ボンネット9へ複数のタンク7を収容可能としつつも、当該ボンネット9により見えなくなってしまった視界(運転席10からみてボンネット10の前方や下方に位置する場所への視界)を撮像装置50で補うことができる。
【0023】
図1は、第1実施形態の作業車両1を示す側面図である。図1は、第1実施形態のトラクタ(作業車両1)の斜視図である。第1実施形態の作業車両1は、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7がボンネット9に配備された車両である。このようなタンク7を備える車両としては、電極反応の燃料である水素ガスをタンク7に貯留する燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)が挙げられる。そして、第1実施形態の作業車両1も、この燃料電池車となっている。
【0024】
なお、燃料電池車の燃料には水素以外のメタンなどを燃料として用いる場合もあるため、メタンなどをタンク7に貯留する燃料電池車も、本発明の作業車両1には含まれる。また、水素、メタン、又はメタンを主成分とする天然ガス、石油ガス、バイオマスガスなどをタンク7に貯留し、タンク7に貯留されたガスを燃料として内燃式のエンジン(ディーゼルエンジンなど)を駆動させる車両も、本発明の作業車両1には含まれる。
【0025】
また、第1実施形態や後述する第2実施形態では、作業車両1として、トラクタを例に挙げている。しかし、本発明に係る作業車両1はトラクタに限定されず、例えば、トラクタ以外の農業機械、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。
【0026】
以下の説明においては、図3に矢印A1方向で示す方向(作業車両1の前進方向)を前方といい、矢印A2で示す方向(作業車両1の後進方向)を後方といい、矢印A3で示す方向を前後方向として説明する。A1~A3の方向は、図3以外の図面においても、適宜
図示している。
【0027】
また、前後方向A3に直交する方向である水平方向(左右方向)を車体幅方向K1又は幅方向(図2図4参照)として説明する。車体幅方向K1は、作業車両1の幅方向である。作業車両1の幅方向の中央部から右方、或いは、左方へ向かう方向を車体幅方向K1の外方(幅方向外方)として説明する。つまり、幅方向外方は、作業車両1の幅方向の中心から車体幅方向K1に離れる方向である。幅方向外方とは反対の方向を、車体幅方向K1の内方(幅方向内方)として説明する。つまり、幅方向内方は、車体幅方向K1に作業車両1の幅方向の中心に近づく方向である。
【0028】
図1図4に示すように、第1実施形態の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、を備えている。上述した走行装置4は、車体2の左前部に配備された左前輪18Lと、車体2の右前部に配備された右前輪18Rと、を有している。また、車体2の前部(前部上方)であって、且つ、左前輪18Lと右前輪18Rとの間には、ボンネット9が配備されている。車体2の後部(後部上方)にはキャビン3が配備されており、キャビン3には運転席10が収容されている。さらに、車体2には、前方視界や前輪の接地箇所に対する視認性を確保するための撮像装置50が配備されている。
【0029】
以降では、まず第1実施形態の作業車両1に設けられる車体2、走行装置4(左前輪18L及び右前輪18R)、キャビン3、ボンネット9について説明する。
【0030】
図1図4に示すように、車体2の車体幅方向の両端には、走行装置4が配備されている。車体2の後部には、駆動装置5から走行装置4に動力を伝達するミッションケース29が設けられている。車体2の前部は、金属製のフレーム材などを組み合わせて高い剛性を発揮できるように形成されている。言い換えれば、車体2は、後部にミッションケース29が一体に設けられた支持フレームということもできる。
【0031】
具体的には、車体2の幅方向(左右方向)の両端には、走行装置4が配備されている。車体2の上部には、駆動装置5が配備されている。車体2の後部上方にはキャビン3が搭載されており、車体2の前部上方にはボンネット9が配備されている。第1実施形態の駆動装置5は、車体2の前後方向に亘って配備されている。言い換えれば、第1実施形態の駆動装置5は、キャビン3とボンネット9との双方に跨るように配備されている。そして、本実施形態の車体2は、走行装置4、駆動装置5、及びキャビン3などをすべて下方より支持している。
【0032】
図2図4に示すように、キャビン3は、車体2の後部上方に搭載された箱体であり、内部に運転席10を備えている。キャビン3は、前後左右のパネルと、隣接するパネル同士の間に配備されるピラーと、を有している。具体的には、本実施形態のキャビン3の場合であれば、キャビン3に設けられるパネルは、運転席10の前方に配備されたフロントパネル11と、運転席10の左方及び右方にそれぞれ配備されたドアパネル12L、12Rと、運転席10の後方に配備されたリアパネル13と、を含んでいる。
【0033】
また、キャビン3に設けられるピラーは、フロントパネル11と左方のドアパネル12Lとの間に設けられた左フロントピラー14と、フロントパネル11と右方のドアパネル12Rとの間に設けられた右フロントピラー15と、リアパネル13と左方のドアパネル12Lとの間に設けられた左リアピラー16と、リアパネル13と右方のドアパネル12Rとの間に設けられた右リアピラーと、を含んでいる。
【0034】
ボンネット9は、車体2の前部上方に搭載されたカバーである。ボンネット9は、金属板などを用いて、後方と下方が開放されると共に、前方、左方、右方、及び上方が閉鎖された形状に形成されている。
【0035】
なお、作業車両1は、ボンネット9の内部に、タンク7(タンク7及び燃料スタック8)を収容する収容部62を有している。このような収容部62をボンネット9の内部に設ければ、収容部62に収容される駆動装置5やタンク7がボンネット9により覆われ、ボンネット9により駆動装置5やタンク7を走行風、雨、汚泥、塵埃から保護することができる。
【0036】
走行装置4は、路面(地面)に対して車体2を支持すると共に走行させることができる。言い換えると、走行装置4は、車体2に推進力を付与する。第1実施形態の場合、走行装置4は、ゴムなどで形成された前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rである。本実施形態の走行装置4では、前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rのいずれか一方、又は前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rの双方に、駆動装置5から動力が伝達されている。なお、走行装置4には、ゴムタイヤに替えてクローラなどを用いても良い。
【0037】
本発明の作業車両1に設けられる駆動装置5は、走行装置4を駆動する駆動力を発生させる装置であり、タンク7に貯留されたガスを用いて駆動力を発生させている。第1実施形態の駆動装置5は、燃料である水素を酸素と電極反応させる燃料電池方式で電気を発生させるものであり、発生させた電気で駆動モータ6を駆動させて駆動力を発生させている。しかし、上述したように、本発明の駆動装置5には、燃料電池方式以外の方法で駆動力を発生させるものであっても良い。例えば、タンク7に貯留されたメタンなどのガスを燃料として内燃式のエンジン(ディーゼルエンジンなど)を駆動させ、駆動力を発生させるものであっても良い。
【0038】
第1実施形態の作業車両1はFCV(燃料電池車:Fuel Cell Vehicle)であり、第1実施形態の駆動装置5は、タンク7に貯留された水素を燃料として燃料電池で電気を発生させ、発生した電気によって駆動モータ6を駆動して駆動力を発生させる機構となっている。
【0039】
図5は、第1実施形態の作業車両1に設けられる駆動装置5のブロック図である。図5に示すように、第1実施形態の駆動装置5は、燃料である水素を酸素と電極反応させて電気を発生させる燃料電池スタック8と、燃料電池スタック8で発生した電力(電気)を用いて駆動する駆動モータ6と、を有している。また、第1実施形態の駆動装置5には、燃料電池スタック8から供給される電力を貯留するバッテリ20が設けられている。
【0040】
なお、第1実施形態の駆動装置5は、1基の駆動モータ6で発生させた駆動力をミッションケース29に送り、ミッションケース29で駆動力を4つに分けて、走行装置4(左右の前輪タイヤ18L、18R及び左右の後輪タイヤ19L、19R)に送る機構を採用している。しかし、本発明の駆動装置5は、内蔵される駆動モータ6の設置数などを適宜変更してもよい。
【0041】
以降、第1実施形態の駆動装置5を構成する駆動モータ6、燃料電池スタック8、バッテリ20、及び水素タンク7について説明する。
【0042】
図1図4に示すように、駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、燃料電池スタック8の後方に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸6aを備えており、出力軸6aを回転駆動させている。出力軸6aの後端は、ミッションケース29に接続されている。
【0043】
ミッションケース29には、出力軸6aに伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどが配備されている。ミッションケース29は、出力軸6aから入力された動力を減速あるいは増速し、減速あるいは増速された動力を走行装置4の前輪タイヤ18L、18R及び/又は後輪タイヤ19L、19Rに出力している。例えば、走行装置4に出力される動力は、作業車両1が後輪駆動である場合は後輪タイヤ19L、19Rのみに伝達され、四輪駆動である場合は前輪タイヤ18L、18R及び後輪タイヤ19L、19Rの両方に伝達される。
【0044】
第1実施形態の作業車両1では、ミッションケース29は、減速あるいは増速した動力を走行装置4に伝達するだけでなく、動力の一部を作業装置に伝達する。具体的には、作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、PTO軸30(パワーテイクオフ軸)を設けておき、ミッションケース29に伝達(入力)された動力を、走行装置4だけでなくPTO軸30にも出力する。このようにすれば、燃料電池で発生した電力を用いて、作業装置(インプルメント)を作動させることも可能となる。
【0045】
また、第1実施形態の作業車両1では、車体2の後部(ミッションケース29の後端)
に、PTO軸30だけでなく、連結装置(3点リンク機構)が設けられている。このような3点リンク機構を設ければ、作業車両1の後方にさまざまなインプルメント(作業装置49)を取り付けて、姿勢変更させたり駆動させたりすることが可能になり、作業車両1に多様な作業を実施させることができる。作業装置49は、耕運機、ロータリ、マルチャー、ハンマーナイフモア、畦塗り機、運搬機、播種機、ハロー、又は畝立て機などのインプルメントである。
【0046】
なお、上述したPTO軸30や3点リンク機構は、必ず設置されるものではない。コンバインや田植機のような農業機械や建設機械などの作業車両1では、設置されない場合も存在し得る。また、上述した駆動モータ6とは別に、当該駆動モータ6が出力した動力によって駆動する油圧ポンプや、駆動モータ6とは別の電動モータなどを設けておき、作業装置(インプルメント)を油圧又は電動で作動させても良い。
【0047】
図5に示すように、駆動モータ6の下流(電力伝達経路における下流)には、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧する昇圧回路25が設けられている。これにより、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧回路25が昇圧することで、駆動モータ6を起動するための電圧を確保することができる。
【0048】
昇圧回路25は、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧させる回路を備えており、昇圧された電力は駆動モータ6に送られて、駆動モータ6を駆動させる。なお、作業車両1で用いられる電装品には、駆動モータ6よりもさらに低電圧で作動するものがある。このような低電圧で作動する電装品に対しては、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27を含む降圧回路で降圧された電力が供給される。第1実施形態の場合であれば、低電圧で作動する電装品には、上述したラジエ-タ(第1ラジエ-タ22及び/又は第2ラジエ-タ24)、バッテリ20、及び空調装置28が挙げられる。バッテリ20及び空調装置28に対しては第1DC-DCコンバータ26で降圧された電力が供給され、ラジエ-タに対しては第2DC-DCコンバータ27で降圧された電力が供給される。
【0049】
燃料電池スタック8は、燃料である水素を酸素と電極反応させ、電極反応の結果として得られた電気を発生させる固体高分子形(PEFC)である。燃料電池に対して燃料として供給される水素は、タンク7に貯留(貯蔵)又は吸蔵されている。燃料電池スタック8は、電極が多層に亘って積層されている。水素ガスが燃料電池スタック8に供給されると、積層された電極において電極反応が行われる。燃料電池スタック8は、燃料電池の電極反応により取り出された電気を用いて、駆動装置5の駆動モータ6を駆動させる構造となっている。燃料電池スタック8での電極反応では、内燃機関の燃焼反応などで必ず排出される二酸化炭素が排出されない。それゆえ、燃料電池で発生する電力を用いて駆動する本発明の作業車両1は脱炭素化の実現に有望である。
【0050】
具体的には、第1実施形態の燃料電池スタック8は、箱状に形成された電池ケーシングの内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数備えている。正極及び負極は、それぞれ正極材及び負極材を用いて、シート状又は膜状に形成されている。単セルには、正極及び負極が1枚ずつ含まれており、隣り合う単セルの間はセパレータにより区切られている。正極にはタンク7の水素ガスが供給され、負極にはコンプレッサなどで圧縮された酸素ガス(酸化ガス)が供給されており、単セルごとに電池反応(発電)が行われる。燃料電池スタック8は、それぞれの単セルで発電された電力を集約することで、駆動装置5を駆動可能な電圧及び電流量の電力を発生させている。
【0051】
図5に示すように、燃料電池スタック8には、電極温度調整用の冷却液が供給されており、内部に設けられた電極温度を発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整可能とされている。冷却液は、燃料電池スタック8の内部と、車体2の前部に設けられたラジエ-タ(第1ラジエ-タ22)との間を循環しており、図示しないポンプやバルブなどを用いて流量調整を行うことで、燃料電池スタック8の内部の温度を調整可能となっている。
【0052】
図3図5に示すように、第1実施形態の場合であれば、燃料電池スタック8は、車体2の前部上方に配備されたボンネット9の内部に収容されている。燃料電池スタック8には、タンク7からガス配管23を通じて水素ガスが供給されている。ボンネット9内部に
おける燃料電池スタック8の後方には、電極温度調整用の冷却液を冷却する第1ラジエ-タ22が配備されている。
【0053】
なお、第1実施形態の作業車両1では、ボンネット9内部における燃料電池スタック8の前方にもラジエ-タが設けられている。燃料電池スタック8の前方に位置するラジエ-タは、後方に設けられた第1ラジエ-タ22とは別に設けられるものであり、第2ラジエ-タ24と呼ばれている。第1実施形態の場合、第2ラジエ-タ24は、電極温度調整の用途ではなく、燃料電池スタック8以外の温調が必要な部材(例えば、キャビン3の室内を冷却する空調装置28など)の温調に用いられている。
【0054】
バッテリ20は、燃料電池スタック8で発生した電気を蓄電するものである。第1実施形態の場合、バッテリ20には、第1DC-DCコンバータ26で降圧された電力が供給され、蓄電されている。また、バッテリ20には、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池などを用いることができる。
【0055】
なお、第1実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27と一緒に、右の前輪タイヤ18Rと、右の後輪タイヤ19Rとの間に(車両2における前後方向の中央部の右方に)、配備されている。また、空調装置28は、キャビン3における運転席10の下方に配備されている。バッテリ20及び空調装置28の設置位置は、第1実施形態の例に限られてものではない。
【0056】
図5に示すように、ガス配管23は、複数のタンク7のそれぞれに配備されており、それぞれのタンク7の水素ガスをバルブユニット33に案内する。ガス配管23には、水素ガスの透過を防止可能な合成樹脂と、可撓性を備えた金属ワイヤなどを組み合わせた複合材料のホースなどが用いられる。
【0057】
バルブユニット33は、ガス配管23を通じてそれぞれのタンク7から送られてきた水素ガスを集め、適宜混合している。バルブユニット33は、水素ガスの圧力及び流量を調整可能な電磁弁などを備えており、燃料電池スタック8で発電するのに適した圧力及び流量に水素ガスを調整して、燃料電池スタック8に水素ガスを送っている。
【0058】
バルブユニット33は、複数のタンク7の側方、且つキャビン3の下方に配備されるのが好ましい。バルブユニット33を複数のタンク7の側方に設置することで、タンク7とバルブユニット33の高さがほぼ等しくなり、バルブユニット33は、タンク7との上下方向に高さの差がない分だけ、タンク7から近い距離に設置することが可能となる。その結果、ガス配管23の長さを短くすることが可能となる。
【0059】
また、バルブユニット33の設置位置をキャビン3の下方に設定すれば、キャビン3と車体2との間に形成されるスペースを利用してガス配管23を配設できるので、他の部材と物理的に干渉することなくガス配管23を配設でき、装置レイアウトの設計自由度が大きくなる。
【0060】
なお、第1実施形態の駆動モータ6は、車体2の上部に一箇所だけ配備されており、一基の駆動モータ6で発生した動力を前輪タイヤ18及び/又は後輪タイヤ19L、19Rに分配している。
【0061】
図6に示すように、水素タンク7は、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂などを用いて長尺な円筒状に形成されたボンベが用いられている。第1実施形態の場合であれば、タンク7(ボンベ)は、いずれも前後方向に軸心を向けるように配備されており、タンクケーシング32内に幅方向に並んで4本、上下方向に2段、合計で6本収容されている。
【0062】
タンク7の前端には、ネック7aが形成されている。タンク7のネック7aには、図示しない安全弁(電磁弁)を介してガス配管23が連結されている。
【0063】
タンクケーシング32は、左右の下ケーシング54に1本ずつ、上ケーシング56に4本のタンク7を収容でき、上下ケーシング56、54に収容することで振動や熱から保護可能とされている。
【0064】
さて、第1実施形態の場合では、図2図4に示すように、ボンネット9の車体幅方向に沿った横幅W1は、左前輪18Lと右前輪18Rとの幅方向に沿った間隔W2よりも広幅となっている。なお、間隔W2は、左前輪18Lの幅方向内方の端部(右端)と、右前
輪18Rの幅方向内方の端部(左端)との水平方向に沿った距離を意味する。
【0065】
また、ボンネット9の横幅W1は車体2の横幅W3に比べて車体幅方向に広幅となるような形成されている。ボンネット9は、車体2よりも、左方と右方とに同じ距離だけ突出している。それゆえ、ボンネット9は、車体2の左端から左方に幅ΔWだけ突出すると共に、車体2の右端から右方に幅ΔWだけ突出すると表現することもできる。
【0066】
また、第1実施形態の収容部62は、車体2よりも車体幅方向外方に拡張され、左前輪18L及び/又は右前輪18Rの上方へ突出している。このため、ボンネット9の車体幅方向の端部、言い換えれば収容部62の車体幅方向の端部は、左前輪18Lの上部及び右前輪18Rの上部に重畳している(上下方向に距離をあけて立体交差している)。
【0067】
図2の正面図に示されるように、ボンネット9は、前輪タイヤ18の上端とほぼ同じ高さで、左右方向の幅が変化しており、この高さを境に上部と下部とに分かれている。つまり、ボンネット9の上部は、前輪タイヤ18の上端よりも上方に位置し、ボンネット9の下部は、前輪タイヤ18の上端よりも下方に位置している。
【0068】
このように車体幅方向外方に拡張された収容部62を設ければ、上述したボンネット9の内部にタンク7を多数収容することが可能となる。
【0069】
第1実施形態のボンネット9の上部は、上下方向の高さがタンク7を2本上下方向に沿って並べることができる寸法に形成されていてもよい。つまり、左右方向の横幅がタンク7を4本左右方向に沿って並べることができる寸法に形成されている。つまり、ボンネット9の上部には、タンク7が合計で6本収容可能とされている。なお、本発明の作業車両1に設けられるボンネット9は、タンク7を幅方向に3本並べたものでも良いし、5本以上並べたものでも良い。
【0070】
第1実施形態のボンネット9の下部は、上述した車体2と、燃料電池スタック8の下半分を収容可能な寸法に形成されている。つまり、ボンネット9の下部には、燃料電池スタック8が上半分を上方に突き出すように収容されており、ボンネット9の上部には、上方に突き出された燃料電池スタック8の上半分の周囲を囲むようにタンク7が6本配備されている。
【0071】
また、ボンネット9とキャビン3との位置関係について説明する。
【0072】
上述したように、キャビン3には、オペレータが前方を確認可能なフロントパネル11が設けられている。図4に示すように、フロントパネル11の左端をPとし、フロントパネル11の右端をPとする。この左端Pから右端Pまでの幅方向に沿った距離が、フロントパネル11の横幅W4となる。フロントパネル11の横幅W4は、左前輪18Lと右前輪18Rとの幅方向に沿った間隔W2とほぼ同じ長さである。また、ボンネット9の横幅W1は、フロントパネル11の横幅W4や、左前輪18Lと右前輪18Rとの幅方向に沿った間隔W2よりも長くなっている。
【0073】
また、オペレータは運転席10に着座しているので、オペレータの位置は運転席10の中心のPとなっている。オペレータが運転席10に着座して左前輪18L及び右前輪18Rの接地箇所を視認する場合、運転席10の中心Pから左前輪18L及び右前輪18Rの接地箇所(設置箇所の中心P)に延びる線L1及びL2が、オペレータの視線を示すものとなる。第1実施形態の作業車両1の場合、線L1及びL2の上にボンネット9の外形(図4において外形を示す2点鎖線)が重なっているので、オペレータの視線はボンネット9で遮断されることになる。つまり、運転席10に着座するオペレータには、左前輪18L及び右前輪18Rの接地箇所は見えない。
【0074】
なお、上述したようにフロントパネル11は、左端Pから右端Pまでの横幅W4を有するので、オペレータが左方か右方に身を寄せた場合の視線も考える必要がある。フロントパネル11の左端Pから左前輪18Lの接地箇所Pに延びる線L1’も、線L1と同様にボンネット9の外形に重なっている。つまり、左方か右方に身を寄せても、オペレータには、左前輪18L及び右前輪18Rの接地箇所は見えないか、見えにくい。
【0075】
さらに、運転席10の座面の高さは、左前輪18L及び右前輪18Rの高さよりも高く、フロントパネル11の下端の高さよりも高い。しかし、ボンネット9の高さは運転席10の座面の高さよりもさらに高い位置にある。図2の例であれば、フロントパネル11の面積の半分程度は、前方から見た場合、ボンネット9により隠れている。それゆえ、オペレータの体格や走行する地形によっては、ボンネット9が邪魔になって前方や下方の視界が見えにくくなる場合がある。特に、前方への視界は大きく制限を受ける。
【0076】
上述したように、ボンネット9は、オペレータからの視野を制限する外形を備えるものであるが、収容部62として大きな容積を備える。
【0077】
つまり、収容部62(ボンネット9)は、左前輪18Lから右前輪18Rまでの幅方向に沿った長さ、正確には左前輪18Lの接地箇所の中心Pから、右前輪18Rの接地箇所の中心Pまでの長さを有している。図例の収容部62の横幅は、フロントパネル11の横幅W4や、左前輪18Lの右端から、右前輪18Rの左端までの幅方向に沿った間隔W2よりも長くなっている。なお、収容部62の横幅は、左前輪18Lの左端から、右前輪18Rの右端までの幅方向に沿った間隔(タイヤ間の最大幅)と同等な寸法まで拡張することができる。つまり、収容部62は、左前輪18Lから右前輪18Rまでの空間を最大限利用してタンク7を収容している。このように左前輪18Lの左端から、右前輪18Rの右端までの幅方向に沿った間隔以下の横幅を備えた収容部62を設ければ、収容部62の左端及び右端よりも幅方向外方に左前輪18L及び右前輪18Rの幅方向外方の側面が位置するので、左前輪18L及び右前輪18Rが地面に接地して、収容部62が直接地面に接地することを抑制することができる。そのため、ガスなどが充填されたタンク7を収容部62に収容する場合でも、タンク7の破損を抑制することが可能となる。
【0078】
また、収容部62は、第2ラジエータ24の少し前から、第1ラジエータ22の少し前までの前後方向に沿った長さを備えている。この収容部62の前後方向に沿った長さは、左前輪18Lや右前輪18Rの前後方向に沿った長さよりも長く、前輪18の直径と同程度の長さのタンク7を余裕で収容可能な大きさとされている。
【0079】
タンク7は、ボンネット9の内部に、タンク7が含まれたタンクユニット31として配備されている。タンクユニット31は、複数のタンク7を収容可能なタンクケーシング32を備えており、タンクケーシング32に複数のタンク7が支持されている。第1実施形態の場合であれば、タンクケーシング32は、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。タンクケーシング32は、6本のタンク7を上下2段に積み上げた状態で収容している。
【0080】
図6に示すように、タンクケーシング32は、車体2に対して交差状に配備されたタンク支持ビーム53を備えている。タンク支持ビーム53は、左右方向に延びる板状の部材であり、タンクケーシング32の前部と後部とにそれぞれ配備されている。
【0081】
タンクケーシング32は、タンク支持ビーム53の上に、下ケーシング54と、上述した燃料電池スタック8とを備えている。具体的には、タンク支持ビーム53の上部における左右方向の中央に燃料電池スタック8が配備され、燃料電池スタック8の左部と右部とに下ケーシング54が配備されている。
【0082】
図6に示すように、下ケーシング54は、車体幅方向に比べて前後方向に長い長方形の板状に形成された底部54aと、底部54aの前縁に上下方向に沿って起立状に形成された前壁部54bと、底部54aの左縁に上下方向に沿って起立状に形成された左壁部54cと、底部54aの後縁に上下方向に沿って起立状に形成された後壁部54dと、底部54aの右縁に上下方向に沿って起立状に形成された右壁部54eと、を有している。下ケーシング54の底部54aは、タンク支持ビーム53の上面に対して、ボルトなどを用いて締結あるいは溶接などの手段で固定(リジット固定)されている。
【0083】
下ケーシング54の前壁部54b及び後壁部54dの上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部55が形成されている。切欠部55は、前壁部54b及び後壁部54dに1箇所ずつ形成されている。切欠部55は、凹んだ部分にタンク7のネック7aを嵌め込むようにして、1箇所の切欠部55につき水素タンク7を1本収容可能とされている。切欠部55の凹んだ部分にネック7aを嵌め込むことで、下ケーシング54は、タンク7に横揺れを起こさないようにタンク7を1本収容している。つまり、下ケーシング54は、燃料電池スタック8の左部の下ケーシング54にタンク7を1本、燃料電池スタック8の右部の下ケーシング54にタンク7を1本支持している。
【0084】
タンクケーシング32は、下ケーシング54及び燃料電池スタック8の上部に、上ケーシング56を備えている。
【0085】
図6に示すように、上ケーシング56は、車体幅方向に比べて前後方向に長い長方形の板状に形成された56aと、底部56aの前縁に上下方向に沿って起立状に形成された前壁部56bと、底部56aの左縁に上下方向に沿って起立状に形成された左壁部56cと、底部56aの後縁に上下方向に沿って起立状に形成された後壁部56dと、底部56aの右縁に上下方向に沿って起立状に形成された右壁部56eと、を有している。上ケーシング56の底部56aは、下ケーシング54の上部に、ボルトなどを用いて締結あるいは嵌合などの手段で固定されている。
【0086】
上ケーシング56の前壁部56b及び後壁部56dの上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部57が形成されている。切欠部57は、タンク7の収容本数に合わせて、前壁部56b及び後壁部56dに4箇所ずつ形成されている。切欠部57は、凹んだ部分にタンク7のネック7aを嵌め込むようにして、切欠部57の1箇所につきタンク7が1本収容されている。切欠部57の凹んだ部分にネック7aを嵌め込むことで、タンクケーシング32は横揺れを起こさないようにタンク7を収容している。つまり、上ケーシング56は、タンク7を左右方向に並んで4本支持している。
【0087】
なお、タンクユニット31には、図示を省略するタンク7の水素ガスを案内するガス配管や、ガス配管23を通じて導入された水素ガスを混合等し、所定の流量に調整した上で、燃料電池スタック8に送るバルブユニットなどが配備されている。
【0088】
また、第1実施形態のタンクケーシング32は箱状に形成されているが、本発明のタンクケーシング32にはタンク7を収容可能な棚やラックなどを用いても良い。
【0089】
上述したタンク7をボンネット9内に設けると、ボンネット9の外形が大きなものとなり、作業車両1の前方への視界が低下する。特に、作業車両1が農業用である場合、作業を行う際には前輪タイヤ18の接地箇所を確認することがよく行われる。つまり、作業車両1で作業を行う際には、左前輪18Lを含む領域、右前輪18Rを含む領域、又は左右前輪18L、18Rの双方を含む領域を確認することが必要となる。
【0090】
そこで、本発明の作業車両1は、左前輪18Lを含む領域、右前輪18Rを含む領域、又は左右前輪18L、18Rの双方を含む領域を撮像する撮像装置50を有している。このような撮像装置50を設ければ、左前輪18Lを含む領域、右前輪18Rを含む領域、又は左右前輪18L、18Rの双方を含む領域を撮像装置50が撮像して作業者に表示することが可能となるため、視界低下を気にすることなくボンネット9内にタンク7を複数配備する(収容部62を幅方向外方に十分に拡張する)ことができる。その結果、タンク7をボンネット9内に複数配備して、潤沢な燃料を用いて駆動装置5を十分に駆動させることが可能となる。
【0091】
図10に示すように、撮像装置50は、左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像する撮像部(カメラ)58と、撮像部58で取り込んだデータが入力されると共に表示用や報知用の信号を出力する制御部60と、制御部60から出力された表示用の信号に基づいて表示を行う表示装置61と、制御部60から出力された報知用の信号に基づいて報知を行う報知部62と、を有している。
【0092】
撮像部58は、左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像する。言い換えれば、撮像部58は、左前輪18Lを含む領域を撮像するか、右前輪18Rを含む領域を撮像するか、又は左前輪18L及び右前輪18Rの双方を含む領域を撮像している。
【0093】
トラクタなどの作業車両1で左ターンを行って耕耘などの作業をする場合、既に作業(耕耘)が済んだ地面のすぐ隣を左前輪18Lが通過するように作業車両1を運転する必要がある。つまり、左ターンを伴う作業では、作業者は左前輪18Lを含む領域を視認する。また、作業車両1を右ターンさせながら作業をする場合には、当然ながら作業者は右前輪18Rを含む領域を視認する。さらに、左ターンと右ターンとを双方行う作業の場合には、作業者は左前輪18L及び右前輪18Rの双方を含む領域を視認する。
【0094】
このようなことから、撮像部58は、前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像することによって、作業車両1の走行時の視認性を向上させることができる。
【0095】
なお、撮像部58により左前輪18Lを含む領域を撮像する場合は、左前輪18Lとボンネット9との間を含む領域が撮像できる角度に撮像部58の撮像角度を設定する。また、撮像部58により右前輪18Rを含む領域を撮像する場合は、右前輪18Rとボンネット9との間を含む領域が撮像できる角度に撮像部58の撮像角度を設定する。例えば、車体2(幅方向の中央付近)から、左前輪18Lとボンネット9との間を含む領域や、右前輪18Rとボンネット9との間を含む領域に撮像部58を向ければ、左前輪18Lや右前輪18Rの接地箇所(前輪タイヤ18の接地箇所)を確実に撮像データに含めることが可能となり、圃場での作業車両1を操舵して作業を行うのに最適かつ有利な撮像データが得られるからである。
【0096】
なお、撮像装置50(撮像部58)は、車体2を含む領域を撮像してもよい。つまり、撮像装置50(撮像部58)で撮像される撮像データは地面のみを撮像したものでなくても良い。撮像データには、地面以外の撮像物、例えば前輪タイヤ18が撮像されていても良いし、車体2が撮像されていても良い。このように撮像装置50(撮像部58)で車体2を含む領域を撮像すれば、車体2と地面との距離などのような撮像データが得られる可能性があり、より多様な情報が撮像装置50により入手できるからである。
【0097】
図7に示すように、撮像装置50は、左前輪18L及び右前輪18Rの軸心Cよりも上方の位置に設けられている。図7における左前輪18L及び右前輪18Rの軸心Cと同じ高さを水平に延びる線分Lとした場合、撮像装置50の撮像部58は線分Lよりも上方に設置される。このように線分Lよりも上方に設置された撮像部58から、下方に位置する左前輪18L及び/又は右前輪18Rの接地箇所を撮像しようとすると、得られる撮像データは接地箇所を俯瞰したものとなり、撮像データから多くの情報(車体2と地面との距離などの情報)を得ることが可能となる。また、左前輪18L及び右前輪18Rの軸心C(線分L)よりも上方に撮像部58を設置すれば、撮像部58が地面から十分に距離をあけて配備されているので、走行時に飛散する汚泥などがrンズ面などに付着することを抑制でき、撮像部58を汚れから保護することが可能となる。
【0098】
撮像部58により撮像される領域には、次のような領域を具体的に選ぶことができる。また、撮像される領域に対応して、次のような撮像部58を設けると良い。
【0099】
次に、撮像部58により撮像される領域の例として、図8に示すように、「第1領域VA1」、「第2領域VA2」、及び「第3領域VA3」を挙げると共に、これらの領域を撮像する撮像部58として、「第1撮像部63」、「第2撮像部64」、及び「第3撮像部65」を挙げて、撮像部58の具体例を説明する。
【0100】
図8に示すように、第1領域VA1は、左前輪18Lを含む領域、右前輪18Rを含む領域、又はこれら2つの領域を合わせた領域である。
【0101】
左前輪18Lを含む領域は、前後方向に長い楕円状の領域であり、左前輪18Lが地面に接地する接地点(地面に対する左前輪18Lの接地部分のほぼ中心)を基準に広がっている。左前輪18Lを含む領域の大きさ(面積)については、舵角がついていない状態(左前輪18Lが前後方向に直進する状態)の左前輪18Lを上方から見た場合に、左前輪18Lの外形が前後方向にも幅方向にも領域内に入るような面積(大きさ)に設定される。なお、左前輪18Lを含む領域は、左前輪18Lの外形が領域内に入っていれば領域の面積が大きくなっても問題はないが、撮像しようとする領域の面積が大きくなるほど撮像部58に広角なレンズを用いる必要が生じ、得られる撮像データの収差や歪みが大きくなるので、撮像データとして許容される収差や歪みの大きさを考慮して領域の面積を設定するのが好ましい。
【0102】
右前輪18Rを含む領域は、左前輪18Lを含む領域と同様に前後方向に長い楕円状の領域であり、右前輪18Rが地面に接地する接地点(地面に対する18Rの接地部分のほぼ中心)を基準に広がっている。右前輪18Rを含む領域の大きさ(面積)についても左前輪18Lと同様であり、右前輪18Rを上方から見た場合に、舵角がついていない右前輪18Rの外形が前後方向にも幅方向にも領域内に入るような面積(大きさ)に設定される。
【0103】
左前輪18Lを含む領域と右前輪18Rを含む領域とを合わせた領域は、上述した「左
前輪18Lを含む領域」と「右前輪18Rを含む領域」とを包括するような広範な領域である。
【0104】
上述した第1領域VA1に対しては第1撮像部63(第1のカメラ)を用いて撮像が行われる。第1撮像部63は、上述した左前輪18L及び右前輪18Rの軸心Cと同じ高さを水平に延びる線分Lよりも上方に配備されている。具体的には、図7に示すように、第1実施形態の作業車両1では線分Lよりも上方に車体2が位置しており、車体2の上にボンネット9が位置している。そして、第1撮像部63は、車体2(正確には車体2を構成する金属フレーム)に固定されている。つまり、第1撮像部63は、ボンネット9の下方であって、左前輪18L及び右前輪18Rの軸心Cよりも上方の位置に取り付けられて、第1領域VA1を見下ろす(俯瞰する)状態で配備されている。
【0105】
なお、第1撮像部63は、左と右とにそれぞれ用意しても良い。つまり、第1撮像部63を左右にそれぞれ用意する場合は、第1領域VA1の中でも左前輪18Lを含む領域を撮像する左第1撮像部63Lと、右前輪18Rを含む領域を撮像する右第1撮像部63Rとが、それぞれ個別に用意される。上述した車体2(車体2を構成する金属フレーム)の左側面に左第1撮像部63Lを配備し、車体2の右側面に右第1撮像部63Rを配備する。このようにすれば左第1撮像部63Lで左前輪18Lを含む領域を撮像でき、右第1撮像部63Rで右前輪18Rを含む領域を撮像でき、第1領域VA1を左右第1撮像部63L、63Rで確実に撮像することができる。
【0106】
また、第1撮像部63に、左前輪18Lを含む領域と右前輪18Rを含む領域とを一度に撮像できるような広角な視野を備えたものを用意しても良い。左前輪18Lを含む領域から、右前輪18Rを含む領域までを含む、左右方向に広範な撮像領域を備える広角な第1撮像部63をひとつ用意する。そして、車体2の下面などに第1撮像部63を配備し、左前輪18Lを含む領域と、右前輪18Rを含む領域とを一度に撮像する。このようにしても第1領域VA1を第1撮像部63で確実に撮像することができる。
【0107】
なお、上述した撮像領域の大きさ(面積)の場合と同様な理由で、広角な第1撮像部63を用いる場合は、撮像データとして許容される収差や歪みの大きさを考慮する必要がある。
【0108】
このように第1領域VA1を第1撮像部63で撮像することで、左前輪18Lや右前輪18Rが地面に接地する接地箇所を撮像することが可能になり、撮像された撮像データを用いて作業車両1を操作することが可能となる。その結果、ボンネット9(収容部62)を幅方向外方に拡張して視界の悪化が起こっても作業車両1の運転に支障が出なくなるため、タンク7を十分に収容可能なスペースをボンネット9内(収容部62)に確保することが可能となる。
【0109】
ところで、左前輪18Lや右前輪18Rの接地箇所に対して第1撮像部63を設けてまで確認しなければならない状況、言い換えれば第1撮像部63を設ける必要があるのは、ボンネット9、運転席10、左前輪18Lや右前輪18Rとの間に次のような関係がある場合である。
【0110】
図9(a)に示すように、運転席10の座面の中心を「P」とし、左前輪18Lや右前輪18Rが地面に設置する部分の中央を「P」とする。作業車両1を上方から見た平面図において、運転席10の「P」と、左前輪18Lの「P」とを結ぶ線L1を作成する。また、同じ平面図において、運転席10の「P」と、右前輪18Rの「P」とを結ぶ線L2を作成する。例えば、ボンネット9の車体幅方向の外方の端部に存在する一点を、左端部のものも右端部のものも「C」とする。
【0111】
図9(a)に示すように、「P」と「P」とを結ぶ線L1の上に、ボンネット9の車体幅方向の外方の端部「C」が存在する場合、言い換えれば前後方向に位置を変えてでも「C」が線L1の上に重畳する場合には、ボンネット9の車体幅方向の外縁が、運転席10から左前輪18Lや右前輪18Rに対する視野を邪魔する可能性があるので、左前輪18Lや右前輪18Rの接地箇所に対して第1撮像部63を設けて撮像するのが好ましい。
【0112】
図9(a)におけるボンネット9の車体幅方向の外方の端部と線L1との位置関係は、
ボンネット9が車体幅方向の外方に幅広になった場合にも成立する。
【0113】
図9(b)に示すように、ボンネット9が車体幅方向の外方に突出し、ボンネット9の車体幅方向の外縁が左前輪18Lや右前輪18Rに少しだけ重なる場合を考える。この場合でも、ボンネット9の車体幅方向の外方の端部「C」が、「P」と「P」とを結ぶ線L1の上に重畳する場合には、ボンネット9の車体幅方向の外縁が、運転席10から左前輪18Lや右前輪18Rに対する視野を邪魔する可能性がある。
【0114】
さらに、図9(c)に示すように、図9(b)よりもボンネット9が車体幅方向の外方にさらに突出し、ボンネット9の車体幅方向の外縁が左前輪18Lや右前輪18Rにほぼ完全に重なる場合を考える。この場合でも、ボンネット9の車体幅方向の外方の端部「C」が、線L1の上に重畳する場合には、運転席10から前輪18への視野が邪魔される。
【0115】
それゆえ、図9(a)~図9(c)のような場合には、左前輪18Lや右前輪18Rの接地箇所に対して第1撮像部63を設けて撮像するのが好ましい。
【0116】
なお、上述した図9(a)~図9(c)は、作業車両1を上方から見た平面図における関係(平面的な関係)を示すものである。これに対して、上下方向での位置関係としては、例えばボンネット8の上端が、運転席10の背もたれ部よりも上方に位置するようなものが考えられる。このようにボンネット8の上端が運転席10の背もたれ部よりも上方に位置すれば、ボンネット8の上端が邪魔になって下方に位置する前輪18の接地箇所を確認することは困難になる。そのため、ボンネット8の上端が運転席10の背もたれ部よりも上方に位置する場合には、第1撮像部63を設けて撮像するのが好ましい。
【0117】
第2領域VA2は、第1領域VA1とは異なる撮像目的で設定される。つまり、第1領域VA1は、左前輪18Lや右前輪18Rが接地する接地箇所を撮像することで視界の悪化を抑制するために設定されており、ひいてはボンネット9の収容能力(タンク7を収容する能力)の向上を可能とするという目的を備えている。これに対して、第2領域VA2は、車体2の下方の地面の状態を確認する目的で設けられている。つまり、車体2と地面との間に形成されるスペースを撮像することで、地面の凹凸や障害物が車体2に接触しないかどうかの確認、又はほぼ同じ高さに配備される第1撮像部63、第2撮像部64、及び第3撮像部65に対する障害物の接触などを監視する。このような第2領域VA2を第1領域VA1に加えて設定することで、前輪18の接地箇所の確認だけでなく、車体2や撮像部58への損傷の監視が可能となり、撮像装置50の性能を安定して発揮させることが可能となる。
【0118】
図8に示すように、第2領域VA2は、左前輪18Lと右前輪18Rとの間に形成される領域であり、ボンネット9の前後方向の中間位置に対して中間位置の下方の地面を中心に設定される。第2領域VA2は、第1領域VA1における左前輪を含む領域や右前輪を含む領域と同様に、前後方向に長い楕円状の領域とされている。第2領域VA2は、ボンネット9の前後方向の中間点に対して、この中間点の下方の地面を基準(中心点)に楕円状に広がっている。第2領域VA2の大きさ(面積)については、第1領域VA1における左前輪18Lを含む領域や右前輪18Rを含む領域と同様の大きさ(面積)とされている。つまり、第2領域VA2の大きさ(面積)は、左前輪18Lとボンネット9との間に位置する点、第1ラジエータ22の少し前方に位置する点、右前輪18Rとボンネット9との間に位置する点、及び第2ラジエータ24の少し後方に位置する点の4点に囲まれた範囲に設定されている。
【0119】
上述した第2領域VA2に対しては第2撮像部64(第2のカメラ)を用いて撮像が行われる。第2撮像部64は、上述した第1撮像部63と同様に線分Lよりも上方に配備されている。具体的には、図7に示すように、第2撮像部64は、ボンネット9の下方であって、左前輪18L及び右前輪18Rの軸心Cよりも上方に位置する車体2に取り付けられており、地面に形成される第2領域VA2を見下ろす(俯瞰する)状態で配備されている。
【0120】
また、第2撮像部64の前後方向に沿った取付位置は、ボンネット9の前後方向の中間点に対して、後方又は前方にオフセットした位置に設定される。第2撮像部64の取付位
置を第2領域VA2の直上に設定すると、第2撮像部64が真下を向くことになり、車体2と地面との間に形成されるスペースを確認できなくなる。そこで、第2撮像部64は、第2領域VA2を見下ろすだけでなく側方からも確認できるように、ボンネット9の前後方向の中間点に対して、後方又は前方にオフセットした位置に設定されている。
【0121】
このようにして第2領域VA2を第2撮像部64で撮像することで、車体2と地面との間に形成されるスペースを撮像することができる。その結果、地面の凹凸や障害物が車体2に接触しないかどうかの確認、又はほぼ同じ高さに配備される第1撮像部63、第2撮像部64、及び第3撮像部65に対する障害物の接触などの監視が可能となる。
【0122】
なお、上述した第1領域VA1と第2領域VA2とを含む領域、言い換えれば左前輪18Lから右前輪18Rまでを含む左右方向に長大な領域を、単一の広角な撮像部58で撮像することもできる。このように広角な撮像部58を用いる場合は、上述した場合と同様に撮像データとして許容される収差や歪みの大きさを考慮して使用の可否が決定される。
【0123】
第3領域VA3は、第1領域VA1や第2領域VA2とはさらに異なる撮像目的で設定される。つまり、第1領域VA1は左前輪18Lや右前輪18Rの接地箇所を撮像する目的で設定され、第2領域VA2は車体2と地面とのスペースを確認する目的で設けられている。これらに対して、第3領域VA3は、作業車両1の前方の地面、言い換えるなら作業車両1がこれから進もうとする先の地面を撮像する目的で設定されている。
【0124】
図8に示すように、第1実施形態の第3領域VA3は、車体2の前方、つまり作業車両1の左右方向の中間であって、作業車両1の前後方向の全長の1/3~1/2程度前方に位置する地面に設定される。本実施形態の第3領域VA3は、第1領域VA1や第2領域VA2と同様に、前後方向に長い楕円状の領域とされている。第3領域VA3の大きさ(面積)については、第1領域VA1や第2領域VA2と同様の大きさ(面積)とされている。なお、第3領域VA3の設定位置や大きさ(面積)は、上述したものには限定されない。
【0125】
例えば、第3領域VA3を左前輪18Lや右前輪18Rの前方に設定して、車輪が進行する先に存在する地面を確認するようにしても良い。また、作業車両1の全長の2、3倍前方の地面まで含むように第3領域VA3を設定して、上述したものよりさらに遠方の前方視野まで確認するようにしても良い。
【0126】
上述した第3領域VA3に対しては第3撮像部65(第3のカメラ)を用いて撮像が行われる。第3撮像部65は、上述した第1撮像部63や第2撮像部64と同様に線分Lよりも上方に配備されている。具体的には、図7に示すように、第3撮像部65は、ボンネット9の下方であって、左前輪18L及び右前輪18Rの軸心Cよりも上方に位置する車体2に取り付けられており、地面に形成される第2領域VA2を見下ろす(俯瞰する)状態で配備されている。
【0127】
また、第3撮像部65の前後方向に沿った取付位置は、ボンネット9の前部、例えば第2ラジエータ24の下方に設定される。上述した位置に第3撮像部65を設置すれば、第3領域VA3を俯瞰状態で確認できるようになり、作業車両1がこれから進もうとする先の地面を撮像することが可能となる。その結果、作業車両1が畝の終端に差しかかったことを認知して旋回の必要性をオペレータに報知したり、進路上に異物などが存在することを認知して車両停止の必要性を報知したりすることが可能となる。
【0128】
図10に示すように、制御部60は、上述した撮像部58で撮像された撮像データを処理することで、撮像データを表示装置61に表示可能な信号に変換したり、報知部62で報知可能な信号を出力したりしている。具体的には、制御部60は、携帯端末やコンピュータなどで構成されており、好適には空調可能な運転席10内に設けられている。制御部60と撮像部58(第1撮像部63、第2撮像部64、及び第3撮像部65)とは有線又は無線(例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標))などの手段でデータ通信可能とされており、制御部60には撮像部58から撮像データが入力されている。
【0129】
制御部60は、撮像データを処理し、撮像データを動画信号などに変換し、変換した信号を表示装置61に出力している。また、制御部60は、撮像データを処理し、報知部62で報知が必要と判断される場合には、報知部62に報知用の信号を出力している。この「報知部62で報知が必要と判断される場合」とは、例えば第1撮像部63で撮像された撮像データにおいて前輪18が予め定められた接地位置から外れた地面に接地していることが確認された場合、第2撮像部64で撮像された撮像データにおいて車体2の下方に位置する地面に大きな隆起や異物の存在が確認された場合、又は第3撮像部65で撮像された撮像データにおいて作業車両1の前方に位置する畝が終端に達したことが確認された場合などが挙げられる。
【0130】
表示装置61は、撮像装置58が撮像した撮像画像、正確には制御部60において変換された動画信号を表示する装置であり、好適にはキャビン3の運転席10の周辺に設けられている。第1実施形態の表示装置61は、モニターA、モニターB、及びモニターCの3つから構成されており、第1撮像部63で撮像された撮像データをモニターAで、第2撮像部64で撮像された撮像データをモニターBで、及び第3撮像部65で撮像された撮像データをモニターCで表示している。表示装置61を構成する各モニターは、撮像データのみを表示しても良いし、制御部60において撮像データの画面上に補助線、目盛などを重畳して表示しても良い。また、本発明の表示装置61は、一つのモニターの画面を複数に分割し、分割された画面の所定箇所で表示を行うものであっても良い。また、本発明の表示装置61は、キャビン3の運転席10に固定されていなくても良い。スマートホンやタブレットなどの携帯端末を表示装置61として用いて、運転席10の周辺で表示を行ってもよいし、ネットワークを経由して作業車両1から離れた場所で表示を行っても良い。
【0131】
報知部62は、制御部60から出力される報知用の信号が入力された場合に、音声、電子音、ブザー、サイレンなどの音、及び/又はフラッシュ、電球、ダイオードなどの光を用いて報知を行っている。
【0132】
例えば、第1撮像部63で撮像された撮像データにおいて前輪18が予め定められた接地位置から外れた地面に接地していることが確認された場合には、「走行位置がずれています。」などの音声を発して報知を行ってもよい。また、第2撮像部64で撮像された撮像データにおいて車体2の下方に位置する地面に大きな隆起や異物の存在が確認された場合には、「地面に障害物があります。進行を停止してください。」などの音声やブザー音を発して報知を行ってもよい。
【0133】
上述した実施形態では、第1撮像部63(63L、63R)、第2撮像部64、第3撮像部65が設けられる例を示したが、左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像できればよく、作業車両1は、第1撮像部63(63L、63R)、第2撮像部64、第3撮像部65の少なくとも1つを有すればよい。また、第1撮像部63(63L、63R)、第2撮像部64、第3撮像部65の配置位置は上述した実施形態に限定されない。
【0134】
第1実施形態の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2の左前部に配備された左前輪18Lと、車体2の右前部に配備された右前輪18Rと、を有する走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、車体2の前部で且つ、左前輪18Lと右前輪18Rとの間に配備されるボンネット9と、車体2に設けられた撮像装置50と、を備え、タンク7は、ボンネット9に収容され、撮像装置50は、左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像する。
【0135】
このように撮像装置50で左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像することで、左前輪18Lや右前輪18Rが地面に接地する接地箇所を撮像することが可能になり、撮像された撮像データを用いて作業車両1を操作することが可能となる。その結果、ボンネット9(収容部62)の幅方向外方への拡張により視界の悪化が起こっても作業車両1の運転に支障が出なくなるため、タンク7を十分に収容可能なスペースをボンネット9内(収容部62)に確保することが可能となる。
【0136】
第1実施形態の作業車両1では、撮像装置50は、左前輪18Lとボンネット9との間を含む領域を撮像してもよいし、右前輪18Rとボンネット9との間を含む領域を撮像してもよい。これらの領域に撮像装置50の向きを向ければ、左前輪18Lや右前輪18R
の接地箇所(地面への前輪タイヤ18の接地箇所)を確実に撮像データに含めることが可能となり、圃場での作業車両1を操舵して作業を行うのに最適かつ有利な撮像データが得られる。
【0137】
第1実施形態の作業車両1では、ボンネット9は、タンク7を収容する収容部62を有しており、収容部62は、車体2よりも車体幅方向外方に拡張され、左前輪18L及び/又は右前輪18Rの上方へ突出してもよい。このように車体2よりも車体幅方向外方に拡張された収容部62を設けることにより、ボンネット9へのタンク7の収容本数を増加させる(タンク7の収容能力を向上させる)ことが可能となる。
【0138】
第1実施形態の作業車両1は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、運転席10の周辺に設けられ、且つ撮像装置50が撮像した撮像画像を表示する表示装置61と、を備えてもよい。このような表示装置61を運転席10に設ければ、表示装置10に表示された左前輪18Lや右前輪18Rの接地箇所の撮像データを視認しながら作業車両1の操作が可能となる。
【0139】
第1実施形態の作業車両1では、撮像装置50は、車体2を含む領域を撮像してもよい。車体2が含まれるような撮像データを取得することで、車体2と地面との間のスペース(上下方向に沿った距離)などの情報を得ることが可能となる。その結果、地面の凹凸や障害物が車体2に接触しないかどうかの確認、又はほぼ同じ高さに配備される第1撮像部63、第2撮像部64、及び第3撮像部65に対する障害物の接触などの監視が可能となる。
【0140】
第1実施形態の作業車両1は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3を備え、キャビン3は、ボンネット9の後方に配置され、ボンネット9の車体幅方向の外方の端部は、運転席10と左前輪18Lとを結ぶ直線、及び/又は、運転席10と右前輪18Rとを結ぶ直線L1に重畳し、撮像装置50は、ボンネット9の下方且つ左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像してもよい。
【0141】
運転席10と左前輪18Lとを結ぶ線L1の上にボンネット9の車体幅方向の外方の端部が存在する場合、又は、運転席10と右前輪18Rとを結ぶ線L1の上にボンネット9の車体幅方向の外方の端部が存在する場合には、ボンネット9の車体幅方向の外縁が、運転席10から左前輪18Lや右前輪18Rに対する視野を邪魔する可能性があるので、撮像装置50を設けてボンネット9の下方且つ左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像するのが好ましい。
【0142】
第1実施形態の作業車両1では、撮像装置10は、左前輪18L及び右前輪18Rの軸心よりも上方の位置から、左前輪18L及び/又は右前輪18Rの接地箇所を撮像してもよい。上方に設けられた撮像装置10から、接地箇所を見下ろす(俯瞰する)状態で撮像すれば、接地箇所の撮像データだけでなく、車体2と地面との間のスペース(上下方向に沿った距離)などの情報を得ることも可能となる。その結果、地面の凹凸や障害物が車体2に接触しないかどうかの確認、又はほぼ同じ高さに配備される第1撮像部63、第2撮像部64、及び第3撮像部65に対する障害物の接触などの監視が可能となる。
【0143】
第1実施形態の作業車両1は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3を備え、キャビン3は、ボンネット9の後方に配置され、タンク7は、ボンネット9の内部に上下方向に並んで複数配置され、ボンネット9の上端は、運転席10の背もたれ部よりも上方に位置し、撮像装置50は、ボンネット9の下方且つ左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像する第1撮像部63と、ボンネット9の前方を含む領域を撮像する第2の撮像部(第3撮像部65)と、を含んでいてもよい。
【0144】
このようにボンネット8の上端が運転席10の背もたれ部よりも上方に位置する場合には、ボンネット8の上端が邪魔になって下方に位置する前輪18の接地箇所を確認することが困難になる。そのため、ボンネット8の上端が運転席10の背もたれ部よりも上方に位置する場合には、第1撮像部63を設けて撮像するのが好ましい。
【0145】
また、ボンネット9の前方を含む領域を撮像する第2の撮像部(第3撮像部65)を設ければ、作業車両1がこれから進もうとする先の地面を撮像することが可能となる。その結果、作業車両1が畝の終端に差しかかったことを認知して旋回の必要性をオペレータに
報知したり、進路上に異物などが存在することを認知して車両停止の必要性を報知したりすることが可能となる。
【0146】
ボンネット9に収容されたタンク7は、車体幅方向に並んで複数配置されてもよい。タンク7を車体幅方向に並んで複数配置すれば、ボンネット9のタンク収容能力を上げることができ、ボンネット9に収容された複数のタンク7の燃料を潤沢に用いて作業車両1を操作することが可能となる。
[第2実施形態]
図11図15を用いて、第2実施形態の作業車両1について説明する
上述した第1実施形態の作業車両1は、撮像装置50により撮像した撮像データを用いることで前方視界が良くない状況下でも作業車両1の操作を行えるようにしたものであり、ボンネット9をさらに拡張して、ボンネット9へのタンク7の収容能力を向上させるという作用効果を発揮するものとなっていた。
【0147】
第1実施形態に対し、第2実施形態の作業車両1は、実際にタンク7をボンネット9内にどのように収容するかという収容構造に特徴を備えている。言い換えれば、第2実施形態の作業車両1は、運転席10の前方に、タンク7を収容するボンネット8を備えることを特徴としている。
【0148】
具体的には、第2実施形態の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、運転席10の前方に配備され且つ、タンク7を収容するボンネット8と、を備えている。
【0149】
第2実施形態の作業車両1が有する車体2、運転席10、走行装置4、及び駆動装置5といった部材は、第1実施形態の作業車両1に設けられるものと同じである。そこで、以降では、これらの部材に関する説明を割愛する。
【0150】
図11図15、特に図12に示すように、第2実施形態のボンネット9は、第1実施形態と同様に、前方視で下部に比べて上部が左右方向に広幅となるような形状に形成されており、下部よりも上部の収容力が高くなっている。
【0151】
具体的には、図12の正面図に明確に示されるように、第2実施形態のボンネット9の下部は、車体2の横幅とほぼ同じ横幅に形成されている。そして、ボンネット9の下部には、車体2の上に車体2とほぼ同じ横幅の燃料電池スタック8が配置されている。また、第2実施形態のボンネット9の上部は、左方及び右方のそれぞれにおいて、タンク7の横幅の2本分だけ、幅方向外方に広幅とされている。つまり、ボンネット9の左右方向の幅は、上下方向の中途部で変化している。この左右方向の幅が変化する高さは、前輪タイヤ18の上端とほぼ同じ高さとなっている。
【0152】
第2実施形態のボンネット9の上部には、複数本のタンク7が左右方向に沿って横並びとなって配備されており、タンク7が6本収容可能とされている。なお、第2実施形態のボンネット9では、タンク7は上下に段積みされていない(1段で構成されている)。
【0153】
図14に示すように、上述した6本のタンク7は、ボンネット9の内部において、タンクユニット31として配備されている。第2実施形態のタンクユニット31は、複数のタンク7を収容可能な支持枠66を備えている。支持枠66は、金属棒材などを用いて櫓状(立体状)に組み上げられた構造であり、複数のタンク7を支持している。
【0154】
なお、第2実施形態の作業車両1における上述した点以外のボンネット9と前輪18との位置関係、寸法等は、第1実施形態と同じである。
【0155】
支持枠66は、車体2の上面に左右方向に沿って延びるように配備された第1横枠材66aと、第1横枠材66aの左端から上方に向かって延びる左縦枠材66b、第1横枠材66aの右端から上方に向かって延びる右縦枠材66c、左縦枠材66bの上下方向の中間部と、右縦枠材66cの上下方向の中間部とを左右方向に連結する第2横枠材66dと、左縦枠材66bの上端と、右縦枠材66cの上端とを左右方向に連結する第3横枠材66eと、を有している。また、第2横枠材66d及び第3横枠材66eの左端は、左縦枠材66bを超えて幅方向外方(左方)に延びており、第2横枠材66dの左端と、第3横枠材66eの左端との間には、両部材を上下方向に連結する外左縦枠材66fが設けられている。さらに、第2横枠材66d及び第3横枠材66eの右端は、右縦枠材66cを超えて幅方向外方(右方)に延びており、第2横枠材66dの右端と、第3横枠材66eの右端との間には、両部材を上下方向に連結する外右縦枠材66gが設けられている。上述した枠材66a~66gの後方には、同じ金属棒材などを組み合わせた枠材66a~66gが設けられており、枠材66a~66gの交差部分には、前後の枠材66a~66gの交差部分同士を前後方向に連結する前後枠材66hがそれぞれ配備されている。つまり、支持枠66は、金属棒材などで形成された枠材66a~66hを、上下方向、左右方向、及び前後方向に立体交差させることで、三次元格子状(櫓状)に形成されている。
【0156】
上述した支持枠66には、枠材の間にタンク7や燃料電池スタック8を差し込み可能な間隔が空けられており、複数のタンク7の重量を支持可能となっている。具体的には、左縦枠材66bと外左縦枠材66fとの間(左右間)であって、第2横枠材66dと第3横枠材66eとの間(上下間)には、タンク7が左右に並んで2本収容可能とされている。また、左縦枠材66bと右縦枠材66cとの間(左右間)であって、第2横枠材66dと第3横枠材66eとの間(上下間)にも、タンク7が左右に並んで2本収容可能とされている。さらに、右縦枠材66cと外右縦枠材66gとの間(左右間)であって、第2横枠材66dと第3横枠材66eとの間(上下間)にも、タンク7が左右に並んで2本収容可能とされている。そして、左縦枠材66bと右縦枠材66cとの間(左右間)であって、第1横枠材66aと第2横枠材66dとの間(上下間)には、燃料電池スタック8が収容可能とされている。
【0157】
上述した支持枠66を用いれば、ボンネット9の内部において、振動や衝撃が加わっても損傷が起こらないようにタンク7を安全かつ確実に支持できるようになる。
【0158】
なお、第2実施形態の作業車両1も、第1実施形態と同様に、ボンネット9の内部に、タンク7(タンク7及び燃料スタック8)を収容する収容部62を有している。第2実施形態の場合であれば、収容部62は、車体2よりも車体幅方向外方に拡張され、左前輪18L及び/又は右前輪18Rの上方へ突出している。このように車体幅方向外方に拡張された収容部62を設ければ、上述したボンネット9の内部にタンク7を多数収容することが可能となる。
【0159】
図14に示すように、第2実施形態の収容部62は、車体2の上方に配備される本体収容部67と、車体幅方向の一方及び/又は他方に配備される拡張収容部68とを有している。第2実施形態の場合、拡張収容部68は、本体収容部67の左方に配備される左拡張収容部68Lと、本体収容部67の右方に配備される右拡張収容部68Rとの2つで構成されている。しかし、本発明の収容部62では、拡張収容部68は、本体収容部67の左方か、右方のいずれか一方のみに設けられていても良い。
【0160】
本体収容部67は、左縦枠材66bと右縦枠材66cとの間に形成されており、上下方向に縦長の空間となっている。本体収容部67の上下方向の中途部には第2横枠材66dが配備されており、第2横枠材66dより上方の本体収容部67にはタンク7が左右に並んで2本収容されている。また、第2横枠材66dより下方の本体収容部67には、燃料スタック8が収容されている。
【0161】
左拡張収容部68Lは、左縦枠材66bと外左縦枠材66fとの間に形成されており、上下方向に沿った寸法はタンク7の上下方向に沿った厚み(外径)よりもやや長寸とされている。右拡張収容部68Rは、右縦枠材66cと外右縦枠材66gとの間に形成されており、上下方向に沿った寸法はタンク7の上下方向に沿った厚み(外径)よりもやや長寸とされている。左拡張収容部68L及び右拡張収容部68Rには、タンク7が左右に並んで2本ずつ、合わせて4本収容されている。
【0162】
上述した拡張収容部68(左拡張収容部68L及び右拡張収容部68R)は、収容部62の収容容積を車体幅方向の外方に拡張するものとなっている。この実施形態では、拡張収容部68の幅方向端部は、左前輪18L、右前輪18R車輪の外側の側面よりも外方に位置している。言い換えれば、拡張収容部68は、左前輪18L、右前輪18R車輪よりも外側に張り出している。拡張収容部68を設けて、収容部62の収容容積を車体幅方向の外方に拡張すれば、タンク7の収容能力を大きく向上させることができる。拡張収容部68は、左前輪18L及び右前輪18Rの上方に位置していて、左前輪18L又は右前輪18Rの上端よりも上方のスペースを有効に利用し、このスペースにタンク7の一部を収容することで、収容部62のタンク7の収容能力を大きく向上させたものということもできる。
【0163】
なお、拡張収容部68は、左前輪18L及び右前輪18Rの上方のスペースを有効に利用するものであるため、左前輪18L及び右前輪18Rと拡張収容部68とは平面上で同じ位置に配置される。つまり、第2実施形態の作業車両1では、収容部62のうち、拡張収容部68は、平面視において左前輪18L及び/又は右前輪18Rと重複している。
【0164】
また、第2実施形態の作業車両1は、ボンネット9の内部に形成される収容部62のうち、燃料電池スタック8の上部の空間をタンク7の収納に利用するものということもできる。つまり、本体収容部67のタンク7は燃料電池スタック8の上部に配置されて、燃料電池スタック8の上部の空間をタンク7の収納に用いている。
【0165】
また、拡張収容部68の下端は、収容部62の上端よりも下方であって、左前輪18Lの上端又は右前輪18Rの上端よりも上方に位置している。図14に示すように、拡張収容部68の下端と、左前輪18Lの上端又は右前輪18Rの上端との間に形成される距離Dが、左前輪18L又は右前輪18Rの外径の1/10~1/3となるような位置に、拡張収容部68の下端を配備している。
【0166】
なお、距離Dが左前輪18L又は右前輪18Rの外径の1/10~1/3となる場合には、図15(a)及び図15(b)に示すように、タンク7を上下2段に亘って積み上げて収容しても良い。このようにタンク7を上下2段に亘って積み上げて収容すれば、図15(a)に示すように、第2実施形態と同じ本数収容可能でありながら、ボンネット9の左右方向の横幅を第2実施形態よりも狭くする事が可能となる。また、図15(b)に示すように、タンク7の収容本数をさらに増加することが可能となる。
【0167】
図14に示すように、第2実施形態の作業車両1は、第1実施形態と同様に、左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像する撮像装置50を、車体2に備えているのが好ましい。また、撮像装置50を車体2に設ける場合は、運転席の周辺に、撮像装置50が撮像した撮像画像(撮像データ)を表示する表示装置61と、を備えているのが好ましい。第2実施形態の作業車両1は、拡張収容部68を配備している分だけ、ボンネット9の左右方向に沿った横幅が広幅となっており、前方や下方の視野がボンネット9により隠される可能性がある。それゆえ、第2実施形態の作業車両1でも、撮像装置50や表示装置61を設けて、前方や下方の視野を撮像データとしてオペレータが確認できるようにするのがよい。
【0168】
第2実施形態の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7と、運転席10の前方に配備され且つ、タンク7を収容するボンネット9と、を備えている。
【0169】
このような作業車両1であれば、収容スペースが必要とされるタンク7をボンネット9内に十分な量だけ収容することができ、潤沢なガスを用いて駆動装置5を余裕がある状態で駆動させることが可能となる。
【0170】
第2実施形態の作業車両1では、ボンネット9は、タンク7を収容する収容部62を備え、収容部62は、車体2よりも車体2の幅方向外方に拡張されている。このように車体2の幅方向外方に拡張された収容部62をボンネット9に設ければ、幅方向外方に拡張した分だけ収容部62の収容能力が高くなるので、タンク7をボンネット9内に十分な量だけ収容することができる。
【0171】
第2実施形態の作業車両1では、走行装置4は、車体2の左前部に配備された左前輪18Lと、車体2の右前部に配備された右前輪18Rとを有し、収容部62は、平面視において左前輪18L及び/又は右前輪18Rと重複している。このように平面視において左前輪18L及び/又は右前輪18Rと重複する位置に収容部62を配置すれば、従来は使用していなかった「左前輪18L及び/又は右前輪18Rの上方のスペース」を有効に利用することができ、ボンネット9でのタンク7の収容能力を高めることができる。
【0172】
第2実施形態の作業車両1では、タンク7は、左前輪18L及び右前輪18Rの上端よりも上方に配置されている。このように左前輪18L及び右前輪18Rの上端よりも上方にタンク7を配置すれば、従来は使用していなかった「左前輪18L及び/又は右前輪18Rの上方のスペース」を有効に利用することができ、ボンネット9でのタンク7の収容能力を高めることができる。
【0173】
第2実施形態の作業車両1では、駆動装置5は、タンク7のガスにより発電する燃料電池スタック8と、燃料電池スタック8が発電した電力を蓄電するバッテリ20と、燃料電池スタック8が発電した電力によって駆動する駆動モータ6と、を備えている。作業車両1として燃料電池スタック8で発電した電力で駆動する燃料電池車を選択することで、燃料電池式の作業車両1で課題とされたタンク7の収容場所の問題を解決でき、燃料電池式の作業車両1の利便性を高めることが可能となる。
【0174】
第2実施形態の作業車両1では、燃料電池スタック8はボンネット9に収容され、タンク7は燃料電池スタック8の上部に配置されてもよい。このように燃料電池スタック8とタンク7とを上下に並べることで、最も収容スペースを必要とする燃料電池スタック8及びタンク7をボンネット9内にすべて収容することが可能となる。
【0175】
第2実施形態の作業車両1では、収容部62は、車体幅方向の一方及び/又は他方に、当該収容部62の収容容積を車体幅方向の外方に拡張する拡張収容部68を有し、拡張収容部68は、左前輪18L又は右前輪18Rの上端よりも上方に配備され、且つタンク7の少なくとも一部を収容してもよい。このような拡張収容部68を設ければ、拡張収容部68の容積分だけ収容部62の収容能力が高くなるので、タンク7をボンネット9内に十分な量だけ収容することができる。
【0176】
第2実施形態の作業車両1では、拡張収容部58の下端は、収容部62の上端よりも下方であって、左前輪18Lの上端又は右前輪18Rの上端よりも上方に位置しているのが好ましい。拡張収容部58の下端が、収容部62の上端と、左前輪18Lの上端又は右前輪18Rの上端との上下間に位置するように、拡張収容部68の設置高さや大きさを定めることで、左前輪18L及び右前輪18Rの転向や転動を邪魔しない位置に拡張収容部58を配置することが可能となる。
【0177】
第2実施形態の作業車両1でも、第1実施形態の場合と同様に、車体2には、左前輪18L及び/又は右前輪18Rを含む領域を撮像する撮像装置50が設けられるのが好ましい。また、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、運転席10の周辺に設けられ、且つ撮像装置50が撮像した撮像画像(撮像データ)を表示する表示装置61と、を備えているのが好ましい。第2実施形態の作業車両1では、ボンネット9に多数のタンク7や燃料電池スタック8を収容するので、ボンネット9の外形が肥大化する可能性がある。つまり、第2実施形態の作業車両1でも、外形が肥大化したボンネット9により下方や前方への視界が損なわれる可能性がある。そのため、上述した撮像装置50や表示装置61により下方や前方への視野を確保する。このようにすれば、オペレータの運転や作業をアシストすることが可能となる。
【0178】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0179】
1 作業車両
2 車体
3 キャビン
4 走行装置
5 駆動装置
6 駆動モータ
7 タンク
8 燃料電池スタック
9 ボンネット
10 運転席
18L 左前輪
18R 右前輪
20 バッテリ
49 作業装置
50 撮像装置
61 表示装置
62 収容部
68 拡張収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15