(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095109
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/063 20060101AFI20240703BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20240703BHJP
B60L 50/71 20190101ALI20240703BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K15/063 B
B60K8/00
B60L50/71
B60L50/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212148
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CB06
3D038CC18
3D038CD19
3D235AA14
3D235BB17
3D235CC12
3D235CC15
3D235CC23
3D235CC24
5H125AA12
5H125AC07
5H125AC12
5H125FF08
(57)【要約】
【課題】無人の作業車両において、重量バランスを崩すことなく、タンクのような重量物を収容する。
【解決手段】
本発明の作業車両1は、外部指令によって走行し作業装置49を装着可能な走行車体2と、走行車体2の駆動力を発生させる駆動装置5と、ガスを収容する複数のタンク7と、自律又は外部指令で走行車体2を制御する制御装置70と、を備え、駆動装置5は、複数のタンク7のガスで発電する燃料電池8と、発電電力を蓄電するバッテリ20と、発電した電力により駆動する駆動モータ6を含み、走行車体2の前部及び後部のいずれか一方に燃料電池8が配備され、燃料電池8が配備されていない前部又は後部に、複数のタンク7の少なくとも一部が配備されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの指令によって走行が可能で且つ、作業装置を装着可能な走行車体と、
前記走行車体に設けられ、且つ、前記走行車体の駆動力を発生させる駆動装置と、
前記駆動力のエネルギー源であるガスを収容する複数のタンクと、
自律又は外部からの指令によって前記走行車体の走行を制御する制御装置と、
を備え、
前記駆動装置は、前記複数のタンクのガスにより発電する燃料電池と、前記燃料電池が発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池が発電した電力によって駆動する駆動モータとを含み、
前記走行車体の前部及び後部のいずれか一方に、前記燃料電池が配備され、
前記走行車体の前部及び後部のうち、前記燃料電池が配備されていない前部又は後部に、前記複数のタンクの少なくとも一部が配備されている作業車両。
【請求項2】
前記複数のタンクは、上下方向に段積みされている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記複数のタンクを水平方向に保持可能な支持部材を複数備え、
前記複数の支持部材は、上下方向に段積みされている請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記複数のタンクは、前後方向に並んで配備されている請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記複数のタンクを水平方向に保持可能な支持部材を複数備え、
前記複数の支持部材は、前後方向に並んで配備されている請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記複数のタンクは、車体幅方向に並んで配備されている請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
前記複数のタンクを水平方向に保持可能な支持部材を複数備え、
前記複数の支持部材は、車体幅方向に並んで配備されている請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記複数のタンクは、上下方向に延びる筒状に形成され、且つ車体幅方向又は前後方向に並んで配備されている請求項1に記載の作業車両。
【請求項9】
前記複数のタンクを、前後方向に仕切る第1仕切壁を備えている請求項8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記複数のタンクを、左右方向に仕切る第2仕切壁を備えている請求項8に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律又は外部からの指令に基づき、タンクに収容されたガスを用いた駆動力で走行する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、トラクタは、車体の前部に、ボンネットを有している。ボンネットの内部には、エンジン、ラジエータ、燃料タンク及びバッテリ等が収容されている。
【0003】
一方、脱炭素化の実現を目指して、水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の開発が進んでいる。当該作業車両には、水素ガスを収容(貯留)するタンク(水素タンク)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクと燃料電池とを有する作業車両においては、タンクと燃料電池との配置を最適にしたいという要望がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、自律又は外部からの指令に基づき走行する走行車体において、タンクと燃料電池との配置を最適にした作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0008】
本発明の作業車両は、外部からの指令によって走行が可能で且つ、作業装置を装着可能な走行車体と、前記走行車体に設けられ、且つ、前記走行車体の駆動力を発生させる駆動装置と、前記駆動力のエネルギー源であるガスを収容する複数のタンクと、自律又は外部からの指令によって前記走行車体の走行を制御する制御装置と、を備え、前記駆動装置は、前記複数のタンクのガスにより発電する燃料電池と、前記燃料電池が発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池が発電した電力によって駆動する駆動モータとを含み、前記走行車体の前部及び後部のいずれか一方に、前記燃料電池が配備され、前記走行車体の前部及び後部のうち、前記燃料電池が配備されていない前部又は後部に、前記複数のタンクの少なくとも一部が配備されている。
【0009】
前記複数のタンクは、上下方向に段積みされている。
【0010】
記複数のタンクを水平方向に保持可能な支持部材を複数備え、前記複数の支持部材は、上下方向に段積みされている。
【0011】
前記複数のタンクは、前後方向に並んで配備されている。
【0012】
作業車両は、前記複数のタンクを水平方向に保持可能な支持部材を複数備え、前記複数の支持部材は、前後方向に並んで配備されている。
【0013】
前記複数のタンクは、車体幅方向に並んで配備されている。
【0014】
作業車両は、前記複数のタンクを水平方向に保持可能な支持部材を複数備え、 前記複数の支持部材は、車体幅方向に並んで配備されている。
【0015】
前記複数のタンクは、上下方向に延びる筒状に形成され、且つ車体幅方向又は前後方向に並んで配備されている。
【0016】
前記複数のタンクを、前後方向に仕切る第1仕切壁を備えている。
【0017】
前記複数のタンクを、左右方向に仕切る第2仕切壁を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る自律又は外部からの指令に基づき走行する走行車体において、タンクと燃料電池との配置を最適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の配置例を採用する本実施形態の作業車両の側面図である。
【
図2】第1の配置例を採用する本実施形態の作業車両の平面図である。
【
図3】作業車両に設けられる駆動装置のブロック図である。
【
図4】第2の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図5】第2の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図6】第3の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図7】第3の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図8】第4の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図9】第4の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図10】第5の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図11】第5の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図12】第6の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図13】第6の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図14】第7の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図15】第7の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図16】第8の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図17】第8の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図18】第9の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図19】第9の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【
図20】第10の配置例を採用する作業車両の側面図である。
【
図21】第10の配置例を採用する作業車両の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る作業車両1の好適な実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の作業車両1の側面図である。
図2は、本実施形態の作業車両1の平面図である。
【0022】
作業車両1は、自律又は外部からの指令に基づき、無人で走行する車両であって、建設機械、農業車両、ユーティリティビークル等である。
【0023】
図1~
図3に示すように、本実施形態の作業車両1は、走行車体2と、駆動装置5と、タンク7と、制御装置70と、を備えている。走行車体2は、外部からの指令によって走行が可能となっている。走行車体2には、作業装置49が連結(装着)可能とされている。走行車体2には、駆動装置5が設けられている。駆動装置5は、駆動モータ6などを用いて走行車体2の駆動力を発生させる。タンク7は、駆動力のエネルギー源であるガスを収容する。制御装置70は、走行車体2の走行を制御する。制御装置70は、予め設定されたプログラムや外部からの指令によって走行装置4や駆動装置5を制御し、走行車体2を走行させることを可能とする。
【0024】
本発明の作業車両1に設けられるタンク7は、駆動力のエネルギー源であるガスを収容する。このようなガスには、PEFC(固体高分子形)の燃料電池に燃料として用いられる水素ガスが挙げられる。なお、PEFC(固体高分子形)の燃料電池には、水素以外のLNG、LPG、バイオマスガスなども燃料として用いられる場合がある。つまり、タンク7に収容されるガスには、水素ガスに限られず、メタンやメタンを主成分とするガスなどを用いてもよい。
【0025】
さらに、駆動力のエネルギー源は、燃料電池で取り出される電力(電気エネルギ)に限定されない。タンク7に貯留されたガスを燃料として内燃式のエンジン(ディーゼルエンジンなど)を駆動させる車両も、本発明の作業車両1に含まれる。このようなガスとしては、水素、メタン、又はメタンを主成分とする天然ガス、石油ガス、バイオマスガスなどが挙げられる。
【0026】
本実施形態では、作業車両1として、無人走行が可能なトラクタを例に挙げている。しかし、本発明に係る作業車両1はトラクタに限定されない。本発明に係る作業車両1は、例えばトラクタ以外の農業機械(コンバインや田植機など)、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。
【0027】
以下の説明においては、
図1に矢印A1方向で示す方向(作業車両1の前進方向)を前方とする。矢印A2で示す方向(作業車両1の後進方向)を後方とする。矢印A3で示す方向を前後方向とする。矢印A1~矢印A3で示す方向は、適宜図示している。
【0028】
また、前後方向を向く矢印A3に直交する方向である水平方向(左右方向)を車体幅方向K1又は幅方向(
図2参照)とする。車体幅方向K1は、作業車両1の幅方向である。作業車両1の幅方向の中央部から右方、或いは、中央部から左方へ向かう方向を、車体幅方向K1の外方(幅方向外方)とする。幅方向外方は、作業車両1の幅方向の中心から車体幅方向K1に離れる方向である。幅方向外方とは反対の方向を、車体幅方向K1の内方(幅方向内方)とする。幅方向内方は、車体幅方向K1に作業車両1の幅方向の中心に近づく方向である。
【0029】
以降では、まず作業車両1を構成する走行車体2、駆動装置5、タンク7、及び制御装置70について説明する。
【0030】
走行車体2は、自律又は外部からの指令によって走行する車両である。
図1及び
図2に示すように、走行車体2は、作業車両1の下部に設けられた前後方向に長い長尺のフレーム材2aと、フレーム材2aの上部を覆うカバー2bと、を有している。フレーム材2a及びカバー2bは、作業車両1の前端から後端までの前後方向の全長に亘って配備されている。フレーム材2aは、金属製のフレーム材などを組み合わせて高い剛性を発揮できるように形成されている。また、フレーム材2aとカバー2bとの間は、中空となっており、タンク7、駆動装置5、制御装置70などを収容する収容部62として形成されている。走行車体2は、車体幅方向の両端に走行装置4を有しており、走行車体2の上部に駆動装置5及び制御装置70を有している。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の走行車体2は、フレーム材2aにおける前後方向の中央下部に、駆動モータ6と、ミッションケース29と、を有している。ミッションケース29には、駆動モータ6で発生した駆動力が伝達される。
【0032】
走行車体2における駆動モータ6より前方を「前部」、駆動モータ6より後方を「後部」とした場合に、本実施形態の走行車体2は前部と後部とでタンク7などの配置状態が異なっている。
【0033】
具体的には、本実施形態の走行車体2の後部には、水素を充填したタンク7が4本収容されている。4本のタンク7の上部には燃料電池スタック(燃料電池)8が配備されている。本実施形態の走行車体2の前部には、タンク7が3本収容されている。3本のタンク7の前後に第1ラジエータ22及び第2ラジエータ24が配備されている。なお、本実施形態では、前方に配備されるラジエータが第2ラジエータ24であり、後方に配備されるラジエータが第1ラジエータ22である。
【0034】
走行装置4は、路面(地面)に対して走行車体2を支持すると共に走行させる。言い換えると、走行装置4は、走行車体2に推進力を付与する。本実施形態の場合、走行装置4は、前輪18L、18R及び後輪19L、19Rである。後輪19L、19Rは、前輪18L、18Rよりも大径なゴムタイヤで形成されており、走行車体2の後部に加わる大きな荷重を支持している。本実施形態の走行装置4では、前輪18L、18R及び後輪19L、19Rのいずれか一方、又は前輪18L、18R及び後輪19L、19Rの双方に、駆動装置5から動力が伝達されている。なお、本発明の走行装置4には、
図20及び
図21に示すようにゴムタイヤに替えてクローラなどを用いても良い。
【0035】
図3は、本実施形態の作業車両1に設けられる駆動装置5のブロック図である。なお、本発明の作業車両1に設けられる駆動装置5は、
図1及び
図2に示す例に限定されない。駆動装置5に内蔵される駆動モータ6などについては、設置数を適宜変更することが可能である。
【0036】
図3に示すように、駆動装置5は、走行装置4を走行(駆動)させたり、作業装置49を駆動させたりする駆動力を発生している。本実施形態の場合、駆動装置5には、燃料電池(燃料電池スタック8)で発生した電力が用いられる。しかし、本発明の駆動装置5は、駆動力の動力源は内燃機関などでも良い。
【0037】
具体的には、本実施形態の駆動装置5は、駆動モータ6と、燃料電池スタック8と、バッテリ20と、を有している。駆動モータ6は、走行装置4を駆動させる動力を発生する。燃料電池スタック8は、駆動モータ6に電力を供給する。バッテリ20は、燃料電池スタック8から供給される電力を貯留する。
【0038】
本実施形態の駆動装置5に用いられる燃料電池スタック8は、燃料である水素を酸素と電極反応させて電気を発生させている。燃料電池に対して燃料として供給される水素は、タンク7に吸蔵あるいは貯蔵されている。駆動装置5には、電極が多層に亘って積層された燃料電池スタック8が設けられている。タンク7の水素ガスは、燃料電池スタック8に供給され、燃料電池スタック8内において電極反応が行われる。つまり、本実施形態の駆動装置5は、燃料電池スタック8内での電極反応により取り出された電気(電力)を用いて、駆動モータ6を駆動させる構造となっている。燃料電池スタック8での電極反応では、内燃機関の燃焼反応などで必ず排出される二酸化炭素が排出されない。それゆえ、燃料電池(燃料電池スタック8)で発生する電力を用いて駆動する本実施形態の作業車両1は脱炭素化の実現に有望である。
【0039】
図1及び
図2に示すように、燃料電池スタック8は、箱状に形成された電池ケーシングの内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数備えている。
【0040】
具体的には、正極及び負極は、それぞれ正極材及び負極材を用いて、シート状又は膜状に形成されている。単セルには、正極及び負極が1枚ずつ含まれている。隣り合う単セルの間はセパレータにより区切られている。正極にはタンク7の水素ガスが供給され、負極にはコンプレッサなどで圧縮された酸素ガス(酸化ガス)が供給される。単セルごとに電池反応(発電)が行われる。燃料電池スタック8は、それぞれの単セルで発電された電力を集約することで、駆動装置5を駆動に必要な電圧及び電流の電力を発生させている。
【0041】
図3に示すように、燃料電池スタック8には、電極温度調整用の冷却液が供給されている。冷却液は、燃料電池スタック8の内部に設けられた電極温度を、発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整している。冷却液は、燃料電池スタック8の内部と、走行車体2の前後方向の中央付近に設けられたラジエータ(第1ラジエータ22)との間を循環している。冷却液は、図示しないポンプやバルブなどを用いて流量調整を行うことで、燃料電池スタック8の内部の温度を調整している。
【0042】
図1~
図3に示すように、本実施形態の場合であれば、燃料電池スタック8は、走行車体2の収容部62の後部上方に収容されている。燃料電池スタック8には、タンク7からガス配管23(
図3参照)を通じて水素ガスが供給されている。
【0043】
なお、本実施形態の作業車両1では、走行車体2の前部に第2ラジエータ24が配備されている。第2ラジエータ24は、後方に設けられた第1ラジエータ22とは別に設けられる。本実施形態の場合であれば、第1ラジエータ22は上述した燃料電池スタック8の冷却に用いられ、第2ラジエータ24は燃料電池スタック8以外の部材の冷却用途で用いられる。
【0044】
図3に示すように、駆動モータ6の下流(電力伝達経路における下流)には、昇圧回路25が設けられる。昇圧回路25は、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧する。燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧回路25が昇圧することで、駆動モータ6を起動するための電圧が確保される。
【0045】
昇圧回路25は、燃料電池スタック8で発生した電力を昇圧させる回路を備えている。昇圧回路25で昇圧された電力は、駆動モータ6に送られて、駆動モータ6を駆動させる。なお、作業車両1で用いられる電装品には、駆動モータ6よりもさらに低電圧で作動するものがある。このような低電圧で作動する電装品(弱電の電装品)に対しては、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27を含む降圧回路で降圧された電力が供給される。本実施形態の場合であれば、低電圧で作動する電装品には、上述したラジエータ(第1ラジエータ22及び/又は第2ラジエータ24)、及びバッテリ20がある。
【0046】
バッテリ20は、燃料電池スタック8で発生した電気を蓄電する。バッテリ20及び空調装置28に対しては第1DC-DCコンバータ26で降圧された電力が供給される。ラジエータ22、24に対しては第2DC-DCコンバータ27で降圧された電力が供給される。
【0047】
なお、本実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、右前輪18Rと右後輪19Rとの間に配備されている。言い換えれば、バッテリ20は、走行車体2における前後方向の中央部の右端に配備されている。バッテリ20は、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27と一緒に、カバー2b内(収容部62)内に収容されている。
【0048】
駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流又は交流の同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、走行車体2の前後方向の中央部よりやや後方であって、車体幅方向の中央に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸6aを備えており、出力軸6aを回転駆動させている。出力軸6aの後端は、ミッションケース29に接続されており、ミッションケース29内に駆動力を伝達している。
【0049】
ミッションケース29は、出力軸6aに伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどを有している。ミッションケース29には、出力軸6aから動力が入力される。ミッションケース29内では、入力された動力が減速あるいは増速される。ミッションケース29は、減速あるいは増速された動力を走行装置4の前輪18及び/又は後輪19に出力する。例えば、走行装置4に出力される動力は、作業車両1が後輪駆動である場合は、後輪19のみに伝達される。作業車両1が四輪駆動である場合は、走行装置4に出力される動力は、前輪8及び後輪19の両方に伝達される。
【0050】
なお、本実施形態の駆動モータ6は、走行車体2の上部に一基だけ配備されている。一基の駆動モータ6で発生した動力が前輪18L、18R及び/又は後輪19L、19Rに向けて複数に分配される。
【0051】
ミッションケース29で減速あるいは増速された動力は、走行装置4だけでなく、作業装置49にも伝達される。作業装置49は、本実施形態の作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に連結されている。作業装置49の連結には、連結装置(3点リンク機構71)が用いられる。3点リンク機構71を設ければ、作業車両1の後方にさまざまなインプルメント(作業装置49)を取り付けることができる。3点リンク機構71により、作業装置49の姿勢変更や駆動が可能になり、作業車両1に多様な作業を実施させることができる。作業装置49には、耕運機、ロータリ、マルチャー、ハンマーナイフモア、畦塗り機、運搬機、播種機、ハロー、又は畝立て機などのインプルメントが用いられる。
【0052】
作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、PTO軸(パワーテイクオフ軸)を設けてもよい。PTO軸には、ミッションケース29に伝達(入力)された動力が出力される。PTO軸を設ければ、燃料電池で発生した電力を用いて、作業装置49(インプルメント)を作動させることも可能となる。
【0053】
なお、上述したPTO軸や3点リンク機構71は、必ず設置されるものではない。コンバインや田植機のような農業機械や建設機械などの作業車両1では、設置されない場合もある。また、上述した駆動モータ6とは別に、当該駆動モータ6が出力した動力によって駆動する油圧ポンプや、駆動モータ6とは別の電動モータなどを設けておき、作業装置49(インプルメント)を油圧又は電動で作動させても良い。
【0054】
図26に示すように、連結装置(3点リンク機構71)は、リフトアーム400a、ロアリンク400b、トップリンク400c、リフトロッド400d、リフトシリンダ400eを有している。リフトアーム400aの前端部は、ミッションケースの後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム400aは、リフトシリンダ400eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ400eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ400eは、制御弁401を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁401は、電磁弁等であって、リフトシリンダ400eを伸縮させる。
【0055】
ロアリンク400bの前端部は、ミッションケース29の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク400cの前端部は、ロアリンク400bよりも上方において、ミッションケース29の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド400dは、リフトアーム400aとロアリンク400bとを連結している。ロアリンク400bの後部及びトップリンク400cの後部には、作業装置49が連結される。リフトシリンダ400eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム400aが昇降すると共に、リフトロッド400dを介してリフトアーム400aと連結されたロアリンク400bが昇降する。これにより、作業装置49がロアリンク400bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0056】
図26に示すように、作業車両1は、制御装置70と、操舵装置300と、測位装置301と、センシング装置302とを備えている。制御装置70は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成された装置であり、作業車両1が有する様々な機器を制御する。例えば、制御装置70は、操舵装置300の操舵制御、駆動モータ6の回転数や、走行装置4の車速の制御を行う。
【0057】
操舵装置300は、制御装置70の操舵制御によって前輪18L、18Rを操舵する装置である。操舵装置300は、油圧ポンプ333と、油圧ポンプ333から吐出した作動油が供給される制御弁334と、制御弁334により作動するステアリングシリンダ335とを含んでいる。制御弁334は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁334は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。ステアリングシリンダ335は、前輪18L、18Rの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続され、制御弁334の3位置切換弁の切り換えに応じて作動することで、前輪18L、18Rの操舵をする。
【0058】
測位装置301は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置301は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、作業車両1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。測位装置301は、受信装置341と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)342とを有している。受信装置341は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置342とは別に走行車体2に取付けられている。慣性計測装置342は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。
【0059】
センシング装置302は、作業車両1の周囲の状況を検出するセンサであって、例えば、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサを搭載したCCDカメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを搭載したCMOSカメラ、赤外線カメラ、レーザセンサ(ライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging))等である。レーザセンサ(ライダー)は、1秒間に何百万回ものパルス状の赤外線等を照射し、跳ね返って戻ってくるまでの時間を測定することで、走行車体2の周辺の物体を検出する。
【0060】
制御装置70は、作業車両1(走行車体2)が自律して走行可能なように運転の制御を行う。説明の便宜上、作業車両1(走行車体2)が自律して走行することを「自動運転」という。制御装置70は、自動運転を行う場合、センシング装置302で検出されたセンシング情報に基づいて、作業車両1(走行車体2)の周囲の環境を示すマップ(環境マップ)を作成する。制御装置70は、作業車両1(走行車体2)の行先が決められている場合は、測位装置301によって現在の位置を把握し、環境マップを参照しながら行先に向けて自動走行を行う。現在位置から行先に向かう場合、制御装置70は、作業車両1(走行車体2)が農道(道路)に沿って移動するように、操舵装置300の操舵を行うと共に、作業車両1(走行車体2)の車速を制御する。
【0061】
作業車両1(走行車体2)が圃場内で作業を行う場合は、予め設定された圃場内の作業ルート(作業経路)を参照する。制御装置70は、作業車両1(走行車体2)が作業経路に沿って移動するように、操舵装置300の操舵を行うと共に、作業車両1(走行車体2)の車速を制御する。なお、作業車両1(走行車体2)が農道(道路)を移動する場合も、制御装置70は、予め設定された道路(農道)の走行ルート(走行経路)を参照する。そして、制御装置70は、作業車両1(走行車体2)が走行経路に沿って移動するように、操舵装置300の操舵を行う。制御装置70は、駆動モータ6の回転数の制御を行うことで作業車両1(走行車体2)の車速を制御してもよい。また、作業経路及び走行経路のそれぞれは、記憶装置310に格納されていてもよいし、
図26に示すように、サーバ、携帯端末等の外部機器312と通信可能な通信装置311を作業車両1(走行車体2)に設けておき、通信装置311を介して外部機器312から取得してもよい。
【0062】
制御装置70は、自動運転を行う場合、連結装置(3点リンク機構71)も制御可能である。例えば、圃場において作業を行う場合は、制御弁401に制御信号を出力することによって、連結装置(3点リンク機構71)を作動させる。これにより、制御装置70は、作業装置49を自動的に昇降させる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、作業車両1(走行車体2)を自律的に走行させることについて説明したが、作業車両1(走行車体2)は、外部からの指令に基づき、走行する構造であってもよい。例えば、作業車両1(走行車体2)は、外部からの指令として、遠隔操縦装置からの指令に応じて走行可能である。この場合、外部機器312は、遠隔操縦装置である。遠隔操縦装置(外部機器312)は、操舵方向、車速、連結装置(3点リンクの昇降)等の指令を通信装置311に送信する。制御装置70は、操舵方向に応じて操舵装置300を制御し、車速に応じて、駆動モータ6等の制御行い、連結装置(3点リンクの昇降)の昇降に応じて、制御弁401を制御する。
【0064】
ところで、タンク7には、ボンベが用いられている。ボンベは、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂などを用いて長尺な円筒状に形成されている。タンク7の前端には、ネック7aが形成されている。タンク7のネック7aには、図示しない安全弁(電磁弁)を介してガス配管23が連結されている。ガス配管23は、水素ガスの透過を防止可能な合成樹脂と、可撓性を備えた金属ワイヤなどを組み合わせた複合材料で形成されている。
【0065】
図1に示すように、タンク7は、収容部62に収容されている。
【0066】
図3に示すように、バルブユニット33は、ガス配管23を通じてそれぞれのタンク7から送られてきた水素ガスを集め、適宜混合している。
図2に示すように、本実施形態のバルブユニット33は、走行車体2の前後方向の中間位置であって、左前輪18Lと左後輪19Lとの間(左端)に配備されている。バルブユニット33は、水素ガスの圧力及び流量を調整可能な電磁弁などを備えている。バルブユニット33は、水素ガスを燃料電池スタック8で発電するのに適した圧力及び流量に調整している。圧力及び流量が調整された水素ガスは、燃料電池スタック8に送られる。
【0067】
図1~
図2、
図4~
図21は、タンク7等の配置が異なる作業車両1を示していて、第1の配置例~第10の配置例である。第1の配置例~第10の配置例のそれぞれは、「走行車体2の前部及び後部のいずれか一方に、タンク7の少なくとも一部が配備されている」作業車両1を示している。言い換えれば、第1の配置例~第10の配置例のそれぞれの作業車両1は、走行車体2の前部か、走行車体2の後部か、走行車体2の前部と後部との双方に、少なくともタンク7が1本以上収容されている。なお、走行車体2の前部とは、走行車体2の全長の半分となる位置(前後方向の中央部)より前方、走行車体2の後部とは、走行車体2の全長の半分となる位置(前後方向の中央部)より後方である。或いは、前輪18L、18Rと後輪18L、18Rとの間のホイルベースの長さの半分となる位置より前方、走行車体2の後部とは、ホイルベースの長さの半分となる位置より後方である。
【0068】
次に、第1~第10の配置例について個別に説明をする。
[第1の配置例]
図1及び
図2に示すように、第1の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に3本のタンク7を収容し、走行車体2の後部に4本のタンク7を収容する。また、走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0069】
つまり、第1の配置例の作業車両1には、走行車体2の前部に、タンク7が少なくとも1本以上配備されている。また、走行車体2の後部に、タンク7が少なくとも1本以上配備されている。
【0070】
また、第1の配置例の作業車両1には、タンクが前後方向に並んで複数(図例では7本)配備されている。これらのタンク7は、車体幅方向に延びる筒状に形成されている。さらに、タンク7の車体幅方向の長さは、走行車体2の車体幅方向の長さに対応したものとなっている。
【0071】
なお、第1の配置例の作業車両1では、タンク7の寸法や配置に関して、次の関係が成立する。
【0072】
図2を見れば明らかなように、走行車体2の車体幅方向の長さ(W
1)は、左前輪18Lの右端から、右前輪18Rの左端までの長さ(W
2)より少し短い。そして、タンク7の車体幅方向の長さ(W
T)は、走行車体2の車体幅方向の長さ(W
1)よりも短い。つまり、走行車体2の車体幅方向の長さ(W
1)と、タンク7の車体幅方向の長さ(W
T)との間には、W
t<W
1<W
2という関係が成立する。
【0073】
また、前後方向に並ぶ7本のタンク7の中で、最も前方に位置するタンク7の前端から、最も後方に位置するタンク7の後端までの長さをLTとする。左前輪18L及び右前輪18Rの前端から、後輪19L、19R(左後輪19L及び右後輪19R)の後端までの長さをL0とする。そうすると、長さLTと長さL0はほぼ等しい。
【0074】
第1の配置例の作業車両1は、前後方向に複数のタンク7をほぼ等間隔に収容しており、走行車体2には複数のタンク7の重量が均等に加わる。そのため、第1の配置例の作業車両1では、前後方向の重量バランスが良くなるという作用効果が得られる。
[第2の配置例]
図4及び
図5に示すように、第2の配置例の作業車両1は、走行車体2の前端から後端にかけての全長(前後方向の全長)に亘る長さを有するタンク7を1本収容する。走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0075】
つまり、第2の配置例の作業車両1には、走行車体2の前部に、タンク7が少なくとも1本以上配備されている。走行車体2の後部に、タンク7が少なくとも1本以上配備されている。
【0076】
また、第2の配置例の作業車両1は、前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0077】
第2の配置例の作業車両1は、前後方向に延びる1本のタンク7を収容しており、走行車体2には1本のタンク7の重量が均等に加わる。そのため、第2の配置例の作業車両1では、前後方向の重量バランスが良くなるという作用効果を得ることができる。
[第3の配置例]
図6及び
図7に示すように、第3の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に3本のタンク7を収容する。しかし、走行車体2の後部には、タンク7は収容されていない。走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0078】
つまり、第3の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に、タンク7が少なくとも1本以上配備され、走行車体2の後部に、燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0079】
また、第3の配置例の作業車両1には、走行車体2の前部に、タンクが前後方向に並んで複数(図例では3本)配備されている。これらのタンク7は、車体幅方向に延びる筒状に形成されている。さらに、第1の配置例と同様に、タンク7の車体幅方向の長さは、走行車体2の車体幅方向の長さに対応している。
【0080】
第3の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に重量があるタンク7を複数本収容し、燃料電池スタック8を収容している。第3の配置例の作業車両1では、タンク7と燃料電池スタック8とのそれぞれにアクセスし易く、メンテナンス性などを向上させることができる。
[第4の配置例]
図8及び
図9に示すように、第4の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部に3本のタンク7を収容するが、走行車体2の前部にはタンク7を収容していない。走行車体2の前部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0081】
つまり、第4の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部にタンク7が少なくとも1本以上配備され、走行車体2の前部に燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0082】
また、第4の配置例の作業車両1には、走行車体2の後部に、タンクが前後方向に並んで複数(図例では3本)配備されている。これらのタンク7は、車体幅方向に延びる筒状に形成されている。さらに、第1の配置例と同様に、タンク7の車体幅方向の長さは、走行車体2の車体幅方向の長さに対応している。
【0083】
第4の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部にタンク7を複数本収容し、走行車体2の前部には燃料電池スタック8を収容している。第4の配置例の作業車両1では、タンク7と燃料電池スタック8とのそれぞれにアクセスし易く、メンテナンス性などを向上させることができる。
[第5の配置例]
図10及び
図11に示すように、第5の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に6本のタンク7を収容するが、走行車体2の後部にはタンク7を収容していない。走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0084】
つまり、第5の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部にタンク7が少なくとも1本以上配備され、走行車体2の後部に燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0085】
また、第5の配置例の作業車両1には、走行車体2の前部に、タンクが上下2段で積み上げられると共に前後方向に並んで3本、合計で6本配備されている。これらのタンク7は、車体幅方向に延びる筒状に形成されている。さらに、第1の配置例と同様に、タンク7の車体幅方向の長さは、走行車体2の車体幅方向の長さに対応したものとなっている。
【0086】
第5の配置例の作業車両1は、第3の配置例と同様に、走行車体2の前部に重量があるタンク7を複数本収容し、燃料電池スタック8を収容している。そのため、第5の配置例の作業車両1では、タンク7と燃料電池スタック8とのそれぞれにアクセスし易く、メンテナンス性などを向上させることができる。また、第5の配置例の作業車両1では、これらの効果に加えて、タンク7の本数が多いことから他の例に比べて長時間走行させることもできる。
[第6の配置例]
図12及び
図13に示すように、第6の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に4本のタンク7を収容するが、走行車体2の後部にはタンク7を収容していない。走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0087】
つまり、第6の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部にタンク7が少なくとも1本以上配備され、走行車体2の後部に燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0088】
また、第6の配置例の作業車両1には、走行車体2の前部に、タンク7が車体幅方向に並んで2本、前後方向に並んで2本、合計で4本配備されている。これらのタンク7は、前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0089】
第6の配置例の作業車両1は、筒状に形成されたタンク7を、前後方向に軸を向けるように配備している。そのため、第6の配置例の作業車両1では、互いに向き合ったタンク7同士を短いガス配管23で接続することができ、タンク7のネック7aへのアクセスが他の例に比べて行いやすい。また、第6の配置例の作業車両1では、これらの効果に加えて、タンク7のネック7aの部分を考慮したメンテナンス性などを向上させることもできる。
[第7の配置例]
図14及び
図15に示すように、第7の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部に4本のタンク7を収容するが、走行車体2の前部にはタンク7を収容していない。走行車体2の前部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0090】
つまり、第7の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部にタンク7が少なくとも1本以上配備されており、走行車体2の前部に燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0091】
また、第7の配置例の作業車両1には、走行車体2の後部に、タンク7が車体幅方向に並んで2本、前後方向に並んで2本、合計で4本配備されている。これらのタンク7は、前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0092】
第7の配置例の作業車両1は、筒状に形成されたタンク7を、前後方向に軸を向けるように配備している。第7の配置例の作業車両1では、第6の配置例と同様に、タンク7のネック7aの部分を考慮したメンテナンス性などを向上させることができる。また、第7の配置例の作業車両1では、これらの効果に加えて、タンク7と燃料電池スタック8とのそれぞれにアクセスし易く、この点からもさらにメンテナンス性を向上させることができる。
[第8の配置例]
図16及び
図17に示すように、第8の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部に6本のタンク7を収容するが、走行車体2の後部にはタンク7を収容していない。走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0093】
つまり、第8の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部にタンク7が少なくとも1本以上配備されており、走行車体2の後部に燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0094】
また、第8の配置例の作業車両1には、走行車体2の前部に、タンク7が車体幅方向に並んで2本、前後方向に並んで3本、合計で6本配備されている。これらのタンク7は、上下方向に延びる筒状に形成されている。
【0095】
第8の配置例の作業車両1は、筒状に形成されたタンク7を、上下方向に軸を向けるように配備しているため、走行車体2の前部に多数のタンク7を収容することができる。そのため、タンク7を車体幅方向に横置きで上下方向に複数本配置しなくても、タンク7の本数を増加させやすい。また、第8の配置例の作業車両1は、簡単にタンク7の容量を増加させることができる。さらに、タンク7と燃料電池スタック8とのそれぞれにアクセスし易く、この点からもさらにメンテナンス性を向上させることができる。
[第9の配置例]
図18及び
図19に示すように、第9の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部に6本のタンク7を収容するが、走行車体2の前部にはタンク7を収容していない。走行車体2の前部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0096】
つまり、第9の配置例の作業車両1は、走行車体2の後部にタンク7が少なくとも1本以上配備されており、走行車体2の前部に燃料電池スタック8が配備された配置例を採用している。
【0097】
また、第9の配置例の作業車両1には、走行車体2の後部に、タンク7が車体幅方向に並んで2本、前後方向に並んで3本、合計で6本配備されている。これらのタンク7は、上下方向に延びる筒状に形成されている。
【0098】
第9の配置例の作業車両1は、筒状に形成されたタンク7を、上下方向に軸を向けるように配備しているため、走行車体2の後部に多数のタンク7を収容することができる。そのため、第9の配置例では、タンク7を車体幅方向に横置きで上下方向に複数本配置しなくても、タンク7の本数を増加させやすい。また、第9の配置例では、簡単にタンク7の容量を増加させることができる。また、タンク7と燃料電池スタック8とのそれぞれにアクセスし易く、この点からもさらにメンテナンス性を向上させることができる。
[第10の配置例]
図20及び
図21に示すように、第10の配置例の作業車両1は、第1の配置例~第9の配置例の作業車両1と異なり、車輪式の前後輪18、19に替えて、クローラ式の前後輪18、19を備えたものとなっている。
【0099】
第10の配置例の作業車両1は、走行車体2の前端から後端までの間に7本のタンク7を収容する。また、走行車体2の後部には、燃料電池スタック8が配備されている。
【0100】
つまり、第10の配置例の作業車両1は、走行車体2の前部にタンク7が少なくとも1本以上配備されたものでもあるし、走行車体2の後部にタンク7が少なくとも1本以上配備された配置例を採用している。
【0101】
また、第10の配置例の作業車両1には、タンクが前後方向に並んで複数(図例では7本)配備されている。これらのタンク7は、車体幅方向に延びる筒状に形成されている。さらに、タンク7の車体幅方向の長さは、走行車体2の車体幅方向の長さに対応したものとなっている。
【0102】
第10の配置例の作業車両1は、第1の配置例と同様に、前後方向に複数のタンク7をほぼ等間隔に収容しており、走行車体2には複数のタンク7の重量が均等に加わる。そのため、第10の配置例の作業車両1では、前後方向の重量バランスが良くなるという作用効果を得ることができる。
【0103】
第1の配置例~第10の配置例において、タンク7の配置をパターン別に整理すると、以下のように、(1)~(3)に示す配置パターンになる。
(1)走行車体2の前部に、タンク7が少なくとも1本以上配備されている。
【0104】
(1)の配置パターンは、
図1及び
図2に図示する第1の配置例、
図6及び
図7に図示する第3の配置例、
図10及び
図11に図示する第5の配置例を含む。(1)の配置パターンは、
図12及び
図13に図示する第6の配置例、
図16及び
図17に図示する第7の配置例、
図20及び
図21に図示する第9の配置例を含む。
(2)走行車体2の後部に、タンク7が少なくとも1本以上配備されている。
【0105】
(2)の配置パターンは、第1の配置例、
図8及び
図9に図示する第4の配置例、
図14及び
図15に図示する第7の配置例を含む。(2)の配置パターンは第の配置例、
図20及び
図21に図示する第9の配置例である。
【0106】
(3)の配置パターンは、第1の配置例、
図4及び
図5に図示する第2の配置例、
図20及び
図21に図示する第5の配置例である。
【0107】
なお、タンク7と同様に重量が大きな燃料電池スタック8に着目して、配置パターンを整理した場合、走行車体2の前部に燃料電池スタック8が配置されている配置パターンは、
図8及び
図9に図示する第4の配置例、
図14及び
図15に図示する第7の配置例、
図18及び
図19に図示する第8の配置例である。
【0108】
また、走行車体2の後部に燃料電池スタック8が配置されている配置パターンは、第1の配置例、
図4及び
図5に図示する第2の配置例、
図6及び
図7に図示する第3の配置例、
図10及び
図11に図示する第5の配置例、
図12及び
図13に図示する第6の配置例、
図16及び
図17に図示する第7の配置例、
図20及び
図21に図示する第9の配置例である。
【0109】
なお、タンク7と同様に重量が大きな燃料電池スタック8に着目して、配置パターンを整理した場合、走行車体2の前部に燃料電池スタック8が配置されている配置パターンは、
図8及び
図9に図示する第4の配置例、
図14及び
図15に図示する第7の配置例、
図18及び
図19に図示する第8の配置例である。
【0110】
また、走行車体2の後部に燃料電池スタック8が配置されている配置パターンは、第1の配置例、
図4及び
図5に図示する第2の配置例、
図6及び
図7に図示する第3の配置例、
図10及び
図11に図示する第5の配置例、
図12及び
図13に図示する第6の配置例、
図16及び
図17に図示する第7の配置例、
図20及び
図21に図示する第9の配置例である。
【0111】
上述した第1の配置例~第10の配置例のそれぞれの作業車両1は、支持部材72を備えている。
【0112】
例えば、支持部材72は、転がりやすいタンク7を、水平方向に横倒しにして保持する部材である。支持部材72には、タンク7を収容するケースのような形状や、ラックや格子状の枠形状のように、複数のタンク7を水平方向に寝かせた状態で保持可能なものを用いることができる。
【0113】
以降では、
図22~
図25を用いて、本実施形態の作業車両1に設けられる支持部材72について説明する。
【0114】
図22に示す支持部材72(以降、
図22に示す支持部材72を第1支持部材72Aという)は、複数のタンクを水平方向に保持すると共に、複数のタンクを前後方向に並んで保持するものとなっている。第1支持部材72Aは、
図1及び
図2に示す第1の配置例の作業車両1に設けられる支持部材72となっている。
【0115】
第1支持部材72Aは、複数(図例では7本)のタンク7を収容するタンクユニット31を備えている。タンクユニット31は、1本又は複数本のタンク7を収容可能なタンクケーシング32を備えている。タンクユニット31が備えるタンクケーシング32は、単数でも複数でもよい。本実施形態の第1支持部材72A(タンクユニット31)は、走行車体2の前部に設けられる前ケーシング32Fと、走行車体2の後部に設けられる後ケーシング32Rとの2つのタンクケーシング32を備えている。
【0116】
前ケーシング32Fは、走行車体2の前部に配備されており、3本のタンク7を収容している。後ケーシング32Rは、走行車体2の後部に配備されており、4本のタンク7を収容している。後ケーシング32Rの上方には、燃料電池スタック8が設けられている。また、前ケーシング32Fと後ケーシング32Rは、設置高さが上下方向でほぼ同じ高さであり、前後方向に並んで配備されている。
【0117】
タンクユニット31には、タンク7の水素ガスを案内するガス配管23(
図22中では図示省略、
図3参照)が、タンク7ごとに設けられている。ガス配管23の先端には、ガス配管23を通じて導入された水素ガスを混合等し、所定の流量に調整した上で、燃料電池スタック8に送るバルブユニット33が配備されている。本実施形態のバルブユニット33は、タンクユニット31の外部、正確には走行車体2の前後方向の中間位置であって、左前輪18Lと左後輪19Lとの間(左端)に配備されている(
図2参照)。
【0118】
本実施形態のタンクケーシング32では、前ケーシング32F及び後ケーシング32Rは、いずれもボルト等の締結部材や溶接等により走行車体2に固定(リジット固定)されている。また、前ケーシング32F及び後ケーシング32Rは、いずれも箱状に形成されている。前ケーシング32F及び後ケーシング32Rは、厚みのある鋼材などを用いて、タンク7より大きな内寸であって、且つ、上方に向かって開口した外観に形成されている。前ケーシング32F及び後ケーシング32Rを箱状に形成することで、箱内に複数本のタンク7を並べて収容できるようになり、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能となる。
【0119】
具体的には、本実施形態の前ケーシング32Fは、車体幅方向に比べて前後方向に長い直方体の外観を備えている。前ケーシング32Fは、長方形の板状に形成された底部34Fを備えている。底部34Fは、前後左右に辺を備えた長方形状の板材で形成されている。前ケーシング32Fの前部には、底部34Fの前縁(前辺)から上下方向に沿って起立状に延びる前壁部35Fが形成されている。前ケーシング32Fの左部には、底部34Fの左縁(左辺)から上下方向に沿って起立状に延びる左壁部36Fが形成されている。前ケーシング32Fの後部には、底部34Fの後縁(後辺)から上下方向に沿って起立状に延びる後壁部37Fが形成されている。底部34Fの右部には、底部34Fの右縁(右辺)から上下方向に沿って起立状に延びる右壁部38Fが形成されている。前壁部35F、左壁部36F、後壁部37F、及び右壁部38Fは、底部34Fの周囲を囲むように配備されている。前ケーシング32Fの底部34Fは、走行車体2の上部に対して、ボルトなどを用いて締結あるいは溶接などの手段で固定されている。
【0120】
また、本実施形態の後ケーシング32Rは、前ケーシング32Fと同様に車体幅方向に比べて前後方向に長い直方体の外観を備えている。後ケーシング32Rは、長方形の板状に形成された底部34Rを備えている。底部34Rは、前後左右に辺を備えた長方形状の板材で形成されている。後ケーシング32Rの前部には、底部34Rの前縁(前辺)から上下方向に沿って起立状に延びる前壁部35Rが形成されている。後ケーシング32Rの左部には、底部34Rの左縁(左辺)から上下方向に沿って起立状に延びる左壁部36Rが形成されている。後ケーシング32Rの後部には、底部34Rの後縁(後辺)から上下方向に沿って起立状に延びる後壁部37Rが形成されている。後ケーシング32Rの右部には、底部34Rの右縁(右辺)から上下方向に沿って起立状に延びる右壁部38Rが形成されている。前壁部35R、左壁部36R、後壁部37R、及び右壁部38Rは、底部34Rの周囲を囲むように配備されている。後ケーシング32Rの底部34Rは、走行車体2の上部に対して、ボルトなどを用いて締結あるいは溶接などの手段で固定されている。
【0121】
前ケーシング32F及び後ケーシング32Rは、前後左右の側壁のいずれかには、下方に向かって凹む切欠部39が形成されている。具体的には、前ケーシング32Fの前壁部35F及び後壁部37Fの上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部39Fが形成されている。また、後ケーシング32Rの前壁部35R及び後壁部37Rの上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部39Rが形成されている。切欠部39F、39Rは、タンク7の収容本数と同じ数だけ形成されている。例えば、前ケーシング32Fの前壁部35Fや後壁部37Fの場合であれば3箇所、後ケーシング32Rの前壁部35Rや後壁部37Rの場合であれば4箇所の切欠部39が形成されている。
【0122】
このように前ケーシング32F及び後ケーシング32Rは、切欠部39にネック7aを嵌め込むことで、横揺れや転がりを起こさないようにタンク7を収容可能となる。また、複数のタンク7をタンクケーシング32に車体幅方向に並べて安定して配置することができる。
【0123】
なお、本実施形態のタンクケーシング32は箱状に形成されているが、本発明のタンクケーシング32にはタンク7を収容可能な棚やラックなどを用いても良い。また、本実施形態のタンクケーシング32では、前壁部35と後壁部37の双方に切欠部39が形成された例を挙げたが、切欠部39は前壁部35及び後壁部37のいずれか一方だけ(タンク7のネック7aが設けられる方)に形成されていても良い。さらに、本実施形態のタンクケーシング32では、切欠部39を形成する側壁は前壁部35及び後壁部37であったが、左壁部36及び右壁部38に切欠部39を形成してもよい(左右方向に沿うようにタンク7を寝かせて収容しても良い)。
【0124】
第1支持部材72Aは、上述した前ケーシング32F及び後ケーシング32Rを前後方向に並べて配置することで、7本のタンク7を前後方向に水平に配備している。このような第1支持部材72Aを設ければ、転がりやすいタンク7を、水平方向に横倒しにした状態で安定して保持可能となる。また、第1支持部材72Aが外部から加わる衝撃や熱などからタンク7を防護するので、タンク7の損傷を回避することが可能となる。さらに、前ケーシング32Fや後ケーシング32Rのように複数の部材に分かれた第1支持部材72Aを用いることで、複数のタンク7を部分毎に分割して取り外し可能となり、作業車両1のメンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0125】
図23に示す支持部材72(以降、
図23に示す支持部材72を第2支持部材72Bという)は、複数のタンクを水平方向に保持すると共に、複数のタンクを上下方向に段積みして保持するものとなっている。第2支持部材72Bは、
図10及び
図11に示す第5の配置例の作業車両1に設けられる支持部材72となっている。
【0126】
第2支持部材72Bは、複数(図例では6本)のタンク7を収容するタンクケーシング32を備えている。タンクケーシング32は、さらに走行車体2の前部の下方に設けられる下ケーシング32Dと、走行車体2の前部の上方に設けられる上ケーシング32Uとを備えている。下ケーシング32Dは3本のタンク7を収容し、上ケーシング32Uは3本のタンク7を収容する。下ケーシング32Dは、ボルト等の締結部材や溶接等により走行車体2に固定されている。下ケーシング32D及び上ケーシング32Uは、いずれも上述したタンク7より大きな内寸を備えるように形成されており、複数本のタンク7を収容可能としている。本実施形態の前ケーシング32F及び後ケーシング32Rは、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。
【0127】
上述した下ケーシング32Dと上ケーシング32Uとの間には、下ケーシング32Dの下部に、上ケーシング32Uの上端を連結固定する固定部材が設けられている。この固定部材は、上ケーシング32Uの上端を、下ケーシング32Dの下部に、固定するボルトなどを用いることができる。また、固定部材としては、上ケーシング32Uの上端を、下ケーシング32Dの下部に嵌合させる突起部などを用いても良い。
【0128】
第2支持部材72Bは、上述した下ケーシング32D及び上ケーシング32Uを上下方向に段積みで配置することで、複数のタンク7を水平方向の一箇所に集約して配備可能となっている。そのため、走行車体2の前部に第2支持部材72Bを設ければ、走行車体2の前部にタンク7を多数収容できるし、走行車体2の後部に第2支持部材72Bを設ければ、走行車体2の後部にタンク7を多数収容できる。
【0129】
このような第2支持部材72Bを設ければ、第1支持部材72Aと同様に、転がりやすいタンク7を、水平方向に横倒しにした状態で安定して保持可能となる。また、第1支持部材72Aと同様に第2支持部材72Bも外部から加わる衝撃や熱などからタンク7を防護するので、タンク7の損傷を回避することが可能となる。さらに、下ケーシング32Dや上ケーシング32Uのように複数の部材に分かれた第2支持部材72Bを用いることで、複数のタンク7を上下に分割して取り外し可能となり、作業車両1のメンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0130】
図24に示す支持部材72(以降、
図24に示す支持部材72を第3支持部材72Cという)は、複数のタンクを水平方向に保持すると共に、複数のタンクを車体幅方向に並んで保持するものとなっている。第3支持部材72Cは、
図12及び
図13に示す第6の配置例の作業車両1に設けられる支持部材72となっている。
【0131】
第3支持部材72Cは、複数(図例では4本)のタンク7を収容する。具体的には、第3支持部材72Cは、車体幅方向に2本、前後方向に2本、合計で4本のタンク7を収容する。第3支持部材72Cは、ボルト等の締結部材や溶接等により走行車体2に固定されている。第3支持部材72Cは、いずれも上述したタンク7より大きな内寸を備えるように形成されており、複数本のタンク7を収容可能としている。第3支持部材72Cは、上述した第1支持部材72A及び第2支持部材72Bと同様に、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。
【0132】
第3支持部材72Cは、タンク7を車体幅方向に並んで配置することで、複数のタンク7を前後方向の一箇所に集約して配備可能となっている。そのため、走行車体2の前部に第3支持部材72Cを設ければ、走行車体2の前部にタンク7を多数収容できるし、走行車体2の後部に第3支持部材72Cを設ければ、走行車体2の後部にタンク7を多数収容できる。
【0133】
このような第3支持部材72Cを設ければ、第1支持部材72Aや第2支持部材72Bと同様に、転がりやすいタンク7を、水平方向に横倒しにした状態で安定して保持可能となる。また、第3支持部材72Cは外部から加わる衝撃や熱などからタンク7を防護するので、タンク7の損傷を回避することが可能となる。
【0134】
なお、上述した第1支持部材72A、第2支持部材72B、第3支持部材72Cは組み合わせて用いることもできる。第1支持部材72Aと第2支持部材72Bとを組み合わせて、前後方向に並んだ複数のタンク7を上下方向に複数段に亘って段積みしてもよい。また、第2支持部材72Bと第3支持部材72Cとを組み合わせて、左右方向に並んだ複数のタンク7を上下方向に複数段に亘って段積みしてもよい。
【0135】
また、上下方向に延びる筒状に形成された複数のタンク7を、上下方向に向かって起立した状態で保持する場合は、上述した第1支持部材72A~第3支持部材72Cとは異なる第4支持部材72Dを用いることもできる。
【0136】
図25に示す第4支持部材72Dは、複数のタンクを上下方向に向かって起立した状態に保持すると共に、複数のタンクを水平方向に並んで保持するものとなっている。第4支持部材72Dは、
図16~
図19に示す第8の配置例又は第9の配置例の作業車両1に設けられる支持部材72となっている。
【0137】
第4支持部材72Dは、複数(図例では6本)のタンク7を収容する。具体的には、第4支持部材72Dは、車体幅方向に2本、前後方向に3本、合計で6本のタンク7を収容する。第4支持部材72Dは、第1支持部材72A~第3支持部材72Cと同様にボルト等の締結部材や溶接等により走行車体2に固定されている。第4支持部材72Dは、上述した第1支持部材72A~第3支持部材72Cと同様に、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。
【0138】
第4支持部材72Dは、タンク7を車体幅方向及び前後方向に並んで配置するために、複数のタンク7を前後方向に仕切る第1仕切壁73と、複数のタンク7を車体幅方向(左右方向)に仕切る第2仕切壁74と、を備えている。第1仕切壁73は、第4支持部材72Dに対して前後方向に収容しようとするタンク7の本数に対応して、タンク7の本数より1つ少ない数だけ設けられている。また、第2仕切壁74は、第4支持部材72Dに対して車体幅方向に収容しようとするタンク7の本数に対応して、タンク7の本数より1つ少ない数だけ設けられている。また、隣り合う第1仕切壁73同士の間隔、及び第1仕切壁73と第4支持部材72Dの外壁との間隔は、タンク7の外径よりもやや大きい寸法に形成される。また、隣り合う第2仕切壁74同士の間隔、及び第2仕切壁74と第4支持部材72Dの外壁との間隔は、タンク7の外径よりもやや大きい寸法に形成される。
【0139】
このような第1仕切壁73及び第2仕切壁74を設ければ、複数のタンク7を起立した状態で並べても、タンク7が転倒することがなく、複数のタンク7を安定して配置することができる。また、複数のタンク7を起立した状態で水平方向に並べれば、水平方向の一箇所に多数のタンク7を集約して配備可能となる。そのため、第4支持部材72Dを設ければ、走行車体2上部にタンク7を多数収容することが可能となる。
【0140】
上述した作業車両1は、外部からの指令によって走行が可能で且つ、作業装置49を装着可能な走行車体2と、走行車体2に設けられ、且つ、走行車体2の駆動力を発生させる駆動装置5と、駆動力のエネルギー源であるガスを収容するタンク7と、自律又は外部からの指令に基づいて走行車体2の走行を制御する制御装置70と、を備え、走行車体2の前部及び後部のいずれか一方に、タンク7の少なくとも一部が配備されている。
【0141】
このように走行車体2の前部及び後部のいずれか一方に、タンク7の少なくとも一部が配備されていれば、自律又は外部からの指令に基づき走行する場合に、重量があるタンク7を前後方向で最適な重要バランスで配置することができる。
【0142】
上述した作業車両1では、駆動装置5は、タンク7のガスにより発電する燃料電池(燃料電池スタック)8と、燃料電池8が発電した電力を蓄電するバッテリ20と、燃料電池8が発電した電力によって駆動する駆動モータ6と、を備えている。
【0143】
このように燃料電池8、バッテリ20、及び駆動モータ6を備えた燃料電池車では、タンク7が部材の中で最も重量が大きくなりやすいため、タンク7を前後方向で最適な重要バランスで配置する効果をより明確に得ることができる。
【0144】
上述した作業車両1では、タンク7は、走行車体2の前部に少なくとも1本以上配備されており、燃料電池8は、走行車体2の後部に配備されている。
【0145】
このように重量のあるタンク7を走行車体2の前部に配備すれば、作業装置49を後部に連結する場合などに、作業車両1の前後方向の重量バランスを取りやすくなる。
【0146】
上述した作業車両1では、タンク7は、前後方向に並んで複数配備されている。
【0147】
このようにタンク7を前後方向に並んで複数配備すれば、走行車体2の車体幅方向に沿った寸法を狭くすることができるため、狭隘な作業場所で作業する小型機などに最適な作業車両1を提供することができる。
【0148】
上述した作業車両1では、タンク7は、車体幅方向に延びる筒状に形成されており、タンク7の車体幅方向の長さは、走行車体2の車体幅方向の長さに対応している。
【0149】
このようにタンク7を車体幅方向に延びる筒状に形成し、タンク7の車体幅方向の長さを走行車体2の車体幅方向の長さに対応したものとすれば、タンク7を走行車体2の上部に無駄なく多数収容することが可能となる。
【0150】
上述した作業車両1では、タンク7は、前後方向に延びる筒状に形成されている。
【0151】
このようにタンク7を前後方向に延びる筒状に形成すれば、走行車体2から幅方向外方にはみ出すことなく、走行車体2の上部にタンク7を無駄なく収容することができ、コンパクトでスリムな作業車両1を得ることが可能となる。
【0152】
上述した作業車両1では、タンク7の前後方向の長さは、走行車体2の前部から後部までの長さに対応している。
【0153】
このようにタンク7の前後方向の長さを、走行車体2の前部から後部までの長さに対応したものとすれば、走行車体2から前後方向にはみ出すことなく、走行車体2の上部にタンク7を無駄なく収容することができ、タンク7を作業車両1に効率的に収容することが可能となる。
【0154】
上述した作業車両1では、タンク7は、前後方向に並んで複数配備されている。
【0155】
このようにタンク7を前後方向に並んで複数配備すれば、走行車体2から幅方向外方にはみ出すことなく、走行車体2の上部にタンク7を無駄なく収容することができ、コンパクトでスリムな作業車両1を得ることが可能となる。
【0156】
上述した作業車両1では、タンク7は、上下方向に延びる筒状に形成されている。
【0157】
このようにタンク7を上下方向に延びる筒状に形成すれば、多数のタンク7を、走行車体2の上部に、集約して収容することが可能となり、タンク7を走行車体2の上部に無駄なく多数収容することが可能となる。
【0158】
上述した作業車両1では、タンク7は、走行車体2の後部に少なくとも1本以上配備されており、燃料電池8は、走行車体2の前部に配備されてもよい。
【0159】
このように重量があるタンク7を走行車体2の後部に少なくとも1本以上配備し、燃料電池8を走行車体2の前部に配備すれば、前後方向で後方により大きな重量をかけて、前後方向での重量バランスをとることができる。
【0160】
上述した作業車両1では、タンク7は、走行車体2の後部に少なくとも1本以上配備されており、燃料電池8は、走行車体2の前部に配備されており、タンク7は、前後方向に並んで複数配備されてもよい。
【0161】
このようにタンク7を走行車体2の後部に前後方向に並んで複数配備すれば、重量があるタンク7が走行車体2の後部に多数配備可能となるので、前後方向で後方により大きな重量をかけることが可能となる。
【0162】
上述した作業車両1では、タンク7は、走行車体2の後部に少なくとも1本以上配備されており、燃料電池8は、走行車体2の前部に配備されており、タンク7は、車体幅方向に並んで複数配備されてもよい。
【0163】
このようにタンク7を走行車体2の後部に車体幅方向に並んで複数配備すれば、重量があるタンク7が走行車体2の後部に多数配備可能となるので、前後方向で後方により大きな重量をかけることが可能となる。
【0164】
上述した作業車両1では、タンク7は、走行車体2の後部に少なくとも1本以上配備されており、燃料電池8は、走行車体2の前部に配備されており、タンク7は、上下方向に延びる筒状に形成されてもよい。
【0165】
このようにタンク7を上下方向に延びる筒状に形成した上で、走行車体2の後部に配備すれば、重量があるタンク7が走行車体2の後部に多数集約して配備可能となるので、前後方向で後方により大きな重量をかけることが可能となる。
【0166】
さて、上述した10通りの配置例は、タンク7と、燃料電池8との配列でも分類することができる。
図6、
図7、
図10,
図11、
図12、
図13、
図16、
図17の作業車両1は、走行車体2の前部に燃料電池スタック8が配備され、燃料電池スタック8が配備されていない走行車体2の後部にタンク7が配備されている。
図8、
図9、
図14、
図15、
図18、
図19は、走行車体2の後部に燃料電池スタック8が配備され、燃料電池スタック8が配備されていない走行車体2の前部にタンク7が配備されている。
図6~
図19の作業車両1は、燃料電池スタック8が配備されていない前部又は後部に、複数のタンク7が配備されている。なお、
図5、
図6に示す作業車両1のように、タンク7の一部が燃料電池スタック8が配置されていない側に設けられてもよい。
【0167】
また、複数のタンク7を並べる方向によっても、類別することができる。複数のタンク7を並べる方向には、次の3つが存在する。
【0168】
すなわち、複数のタンク7を前後方向に並べる。この配置パターンを、「配置パターンA」という。複数のタンク7を上下方向に並べる(段積みする)。この配置パターンを、「配置パターンB」という。複数のタンク7を車体幅方向に並べる。この配置パターンを、「配置パターンC」という。
【0169】
次に、配置パターンA~配置パターンCについて詳細に説明する。
(配置パターンA)
配置パターンAは、第1の配置例、第3の配置例、第4の配置例、第5の配置例、第6の配置例、第7の配置例、第8の配置例、第9の配置例の作業車両1である。第1の配置例、第3の配置例、第4の配置例、第5の配置例の作業車両1では、タンク7を幅方向に横置き(タンク7の一端が走行車体3の左側又は右側に位置し、タンク7の他端が走行車体3の左側又は右側に位置している)にし、幅方向に横置きした複数のタンク7を前後方向に並べている。
【0170】
また、第6の配置例、第7の配置例の作業車両1では、タンク7を前後方向に横置き(タンク7の一端が走行車体3の前側又は後側に位置し、タンク7の他端が走行車体3の前側又は後側に位置している)にし、前後方向に横置きにしたタンク7を前後方向に並べている。
【0171】
第8の配置例、第9の配置例の作業車両1は、タンク7を上下方向に縦置き(タンク7の一端が走行車体3の上側又は下側に位置し、タンク7の他端が走行車体3の上側又は後下に位置している)にし、上下方向に縦置きにしたタンク7を前後方向に並べている。
(配置パターンB)
配置パターンBは、第5の配置例の作業車両1である。第5の配置例の作業車両1は、タンク7を幅方向に横置きにし、幅方向に横置きにしたタンク7を前後方向に並べ、さらに、横置きしたタンク7を上下方向に段済みしている。
(配置パターンC)
配置パターンCは、第6の配置例、第7の配置例、第8の配置例、第9の配置例の作業車両1である。第6の配置例、第7の配置例の作業車両1では、タンク7を前後方向に横置きにして、前後方向に横置きにした複数のタンク7を車体幅方向に並べている。第8の配置例、第9の配置例の作業車両1は、タンク7を上下方向に縦置きにして、上下方向に縦置きした複数のタンク7を車体幅方向に並べている。
【0172】
つまり、様々な仕様に応じて、配置パターンA~配置パターンCのいずれかを採用することで、様々な作業車両1を構築することができる。
【0173】
本発明の作業車両1は、外部からの指令によって走行が可能で且つ、作業装置49を装着可能な走行車体2と、走行車体2に設けられ、且つ、走行車体2の駆動力を発生させる駆動装置5と、駆動力のエネルギー源であるガスを収容する複数のタンク7と、自律又は外部からの指令によって走行車体2の走行を制御する制御装置70と、を備え、駆動装置5は、複数のタンク7のガスにより発電する燃料電池8と、燃料電池8が発電した電力を蓄電するバッテリ20と、燃料電池8が発電した電力によって駆動する駆動モータ6とを含み、走行車体2の前部及び後部のいずれか一方に、燃料電池8が配備され、走行車体2の前部及び後部のうち、燃料電池8が配備されていない前部又は後部に、複数のタンク7の少なくとも一部が配備されている。
【0174】
このような作業車両1であれば、燃料電池8が設けられていない前部又は後部に複数のタンク7を配備して、作業車両1に対して前後方向での重量の均衡を取ることが可能となる。
【0175】
複数のタンク7は、上下方向に段積みされている。複数のタンク7を上下方向に段積みする配置では、作業車両1に対して上下方向での重量の均衡を取ることが可能となる。
【0176】
また、複数のタンク7を上下方向に段積みする場合には、複数のタンク7を水平方向に保持可能な支持部材72を複数備え、複数の支持部材72は、上下方向に段積みされている。このような支持部材72を用いれば、水平方向の一箇所に多数のタンク7を集約して配備可能となる。そのため、支持部材72を設ければ、走行車体2上部にタンク7を多数収容することが可能となる。
【0177】
複数のタンク7は、前後方向に並んで配備されている。複数のタンク7を前後方向に並べる配置では、作業車両1に対して前後方向での重量の均衡を取ることが可能となる。
【0178】
また、複数のタンク7を前後方向に並べる場合には、複数のタンク7を水平方向に保持可能な支持部材72を複数備え、複数の支持部材72は、前後方向に並んで配備されている。このような支持部材72を用いれば、支持部材72ごと多数のタンク7を前後方向の所定位置に集約して配備可能となる。そのため、このような支持部材72を設ければ、前後方向に沿った走行車体2の重量の均衡を維持しやすくなる。
【0179】
複数のタンク7は、車体幅方向に並んで配備されている。複数のタンク7を車体幅方向に並べる配置では、作業車両1に対して車体幅方向での重量の均衡を取ることが可能となる。
【0180】
複数のタンク7を水平方向に保持可能な支持部材72を複数備え、複数の支持部材72は、車体幅方向に並んで配備されている。このような支持部材72を用いれば、支持部材72ごと多数のタンク7を車体幅方向の所定位置に集約して配備可能となる。そのため、このような支持部材72を設ければ、車体幅方向に沿った走行車体2の重量の均衡を維持しやすくなる。
【0181】
複数のタンク7は、上下方向に延びる筒状に形成され、且つ車体幅方向又は前後方向に並んで配備されている。複数のタンク7を上下方向に起立した状態で配備する配置では、複数のタンク7を前後方向に仕切る第1仕切壁73を備えている。又は、複数のタンク7を左右方向に仕切る第2仕切壁74を備えている。
【0182】
このような第1仕切壁及び第2仕切壁74を設ければ、複数のタンク7を起立した状態で並べても、タンク7が転倒することがなく、複数のタンク7を安定して配置することができる。また、複数のタンク7を起立した状態で水平方向に並べれば、水平方向の一箇所に多数のタンク7を集約して配備可能となる。
【0183】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0184】
1 作業車両
2 走行車体
5 駆動装置
6 駆動モータ
7 タンク
8 燃料電池スタック(燃料電池)
20 バッテリ
49 作業装置
70 制御装置
72 支持部材
73 第1仕切壁
74 第2仕切壁