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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095110
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240703BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20240703BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K11/04 B
B60K15/063 B
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212149
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
(72)【発明者】
【氏名】石原 健二
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CB06
3D038CC18
3D038CD03
3D038CD16
3D235AA14
3D235BB36
3D235CC12
3D235CC15
3D235CC23
(57)【要約】
【課題】燃料電池を適切な温度に温度調整すること。
【解決手段】
本発明の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、第1熱交換装置80と、を備え、駆動装置5は、当該駆動装置5を駆動させるための電力を発生する燃料電池8を有しており、第1熱交換装置80は、冷媒との熱交換により冷却された空気をキャビン3の内部に供給するとともに、熱交換によって温められた冷媒の熱を燃料電池8に供給する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を連結可能な車体と、
前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、
前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する駆動装置と、
第1熱交換装置と、
を備え、
前記駆動装置は、当該駆動装置を駆動させるための電力を発生する燃料電池を有しており、
前記第1熱交換装置は、冷媒との熱交換により冷却された空気を前記キャビンの内部に供給するとともに、前記熱交換によって温められた冷媒の熱を前記燃料電池に供給する作業車両。
【請求項2】
前記車体の前部にはボンネットが設けられ、
前記燃料電池は、前記ボンネットの内部に収容されている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記第1熱交換装置は、
前記冷媒の熱を放出する第1コンデンサと、
前記第1コンデンサから放出された熱を前記燃料電池に導く導熱手段と、
を有している請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記第1熱交換装置は、
前記ボンネット内で放熱を行う第1コンデンサと、
前記キャビン内で吸熱を行う第1エバポレータと、
前記第1コンデンサと前記第1エバポレータとの間で冷媒を循環させる第1配管と、
前記第1エバポレータにおいて吸熱された前記冷媒を圧縮する第1コンプレッサと、を備えている請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記第1熱交換装置は、
前記第1コンデンサから放出された熱を、前記燃料電池に温風として吹き付ける第1コンデンサファンと、
前記第1エバポレータの吸熱で冷却された空気を、冷風として前記キャビン内に送る送風ファンと、
を備えている請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記駆動装置を駆動させるためのガスを収容するタンクを複数備え、
前記走行装置は、前記車体の前部の左右両端に配備される前輪と、前記車体の後部の左右両端に配備される後輪と、を有しており、
複数の前記タンクは、前記前輪と後輪との間に配備されている
請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
前記駆動装置は、前記燃料電池が発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池が発電した電力によって駆動する駆動モータと、を備えており、
前記駆動モータは、前記車体の左右方向の中央であって、前記前輪と後輪との中間に配備されている請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記バッテリは、前記キャビンにおける前記運転席の下方に配備されている請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記ボンネット内における前記燃料電池の後方には、前記燃料電池を冷却する第2熱交換装置が配備されている
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項10】
前記第2熱交換装置は、
前記燃料電池を冷却するスタック冷却部と、
前記燃料電池の前方及び/又は後方のボンネット内で放熱を行う第2コンデンサと、
前記第2コンデンサで放熱された熱を前記ボンネット外に排熱する第2コンデンサファンと、
前記第2コンデンサと前記スタック冷却部との間で冷媒を循環させる第2配管と、
前記スタック冷却部において吸熱が行われた前記冷媒を圧縮する第2コンプレッサと、
を備えている請求項9に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに収容されたガスを用いて駆動する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、トラクタは、車体の前部に、ボンネットを有している。ボンネットの内部には、エンジン、ラジエ-タ、燃料タンク及びバッテリ等が収容されている。
【0003】
一方、脱炭素化の実現を目指して、水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の開発が進んでいる。当該作業車両には、水素ガスを収容(貯留)するタンク(水素タンク)と、タンクの水素ガスを用いて発電を行う燃料電池が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-128483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池車に設けられる燃料電池は、電極反応を行う際に最適な反応温度があり、70℃程度の温度に維持されるのが好ましいとされている。燃料電池を70℃程度の温度に維持するためには、燃料電池を冷却または加温することが必要となる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、燃料電池を適切な温度に温度調整することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0008】
本発明の作業車両は、作業装置を連結可能な車体と、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、第1熱交換装置と、を備え、前記駆動装置は、当該駆動装置を駆動させるための電力を発生する燃料電池を有しており、前記第1熱交換装置は、冷媒との熱交換により冷却された空気を前記キャビンの内部に供給するとともに、前記熱交換によって温められた冷媒の熱を前記燃料電池に供給する。
【0009】
前記車体の前部にはボンネットが設けられ、前記燃料電池は、前記ボンネットの内部に収容されていてもよい。
【0010】
前記第1熱交換装置は、前記冷媒の熱を放出する第1コンデンサと、前記第1コンデンサから放出された熱を前記燃料電池に導く導熱手段と、を有していてもよい。
【0011】
前記第1熱交換装置は、前記ボンネット内で放熱を行う第1コンデンサと、前記キャビン内で吸熱を行う第1エバポレータと、前記第1コンデンサと前記第1エバポレータとの間で冷媒を循環させる第1配管と、前記第1エバポレータにおいて吸熱された前記冷媒を圧縮する第1コンプレッサと、を備えてもよい。
【0012】
前記第1熱交換装置は、前記第1コンデンサから放出された熱を、前記燃料電池に温風として吹き付ける第1コンデンサファンと、前記第1エバポレータの吸熱で冷却された空気を、冷風として前記キャビン内に送る送風ファンと、を備えてもよい。
【0013】
作業車両は、前記駆動装置を駆動させるためのガスを収容するタンクを複数備え、前記走行装置は、前記車体の前部の左右両端に配備される前輪と、前記車体の後部の左右両端に配備される後輪と、を有しており、複数の前記タンクは、前記前輪と後輪との間に配備されてもよい。
【0014】
前記駆動装置は、前記燃料電池が発電した電力を蓄電するバッテリと、前記燃料電池が発電した電力によって駆動する駆動モータと、を備えており、前記駆動モータは、前記車体の左右方向の中央であって、前記前輪と後輪との中間に配備されてもよい。
【0015】
前記バッテリは、前記キャビンにおける前記運転席の下方に配備されてもよい。
【0016】
前記ボンネット内における前記燃料電池の後方には、前記燃料電池を冷却する第2熱交換装置が配備されてもよい。
【0017】
前記第2熱交換装置は、前記燃料電池を冷却するスタック冷却部と、前記燃料電池の前方及び/又は後方のボンネット内で放熱を行う第2コンデンサと、前記第2コンデンサで放熱された熱を前記ボンネット外に排熱する第2コンデンサファンと、前記第2コンデンサと前記スタック冷却部との間で冷媒を循環させる第2配管と、前記スタック冷却部において吸熱が行われた前記冷媒を圧縮する第2コンプレッサと、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る作業車両によれば、燃料電池を適切な温度に温度調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の作業車両の斜視図である。
図2】作業車両における燃料電池及びタンクの配置を示した斜視図である。
図3】タンクユニットを拡大して示した図である。
図4】タンクユニットの構造を示す分解図である。
図5】第1熱交換装置の構造を示す平面図である。
図6】第1熱交換装置の構造を示す側面図である。
図7】本実施形態の作業車両に設けられる電装機器のブロック図である。
図8】本実施形態の作業車両に設けられる第1熱交換装置のブロック図である。
図9】本実施形態の作業車両に設けられる第2熱交換装置のブロック図である。タンクを前後方向に並べたタンクユニットの分解図である。
図10】第1熱交換装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る作業車両1の好適な実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態のトラクタ(作業車両1)の斜視図である。本実施形態の作業車両1は、燃料である水素を電極反応させて発電を行う燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)である。作業車両1は、燃料である水素などを貯蔵するタンク7と、タンク7に貯蔵された水素ガスなどの燃料を用いて発電を行う燃料電池8が設けられている
なお、本発明の「貯留する」には、液化した水素ガスなどを貯留するだけでなく、金属化合物などに吸蔵するものも含まれる。
【0022】
また、燃料電池車の燃料には水素以外のメタンなどを燃料として用いる場合もあるため、メタンなどの燃料を用いて発電を行う燃料電池車も、本発明の作業車両1には含まれる。この場合、タンク7にはメタンなどの燃料が貯蔵され、燃料電池8ではメタンなどの燃料を用いて発電が行われる。
【0023】
また、本実施形態では、作業車両1として、トラクタを例に挙げている。しかし、本発明に係る作業車両1はトラクタに限定されず、例えば、トラクタ以外の農業機械(コンバインや田植機など)、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。
【0024】
以下の説明においては、図5及び図6に矢印A1方向で示す方向(作業車両1の前進方向)を前方という。図5及び図6に矢印A2で示す方向(作業車両1の後進方向)を後方という。図5及び図6に矢印A3で示す方向を前後方向として説明する。矢印A1~矢印A3で示す方向は、図5及び図6などの図面において適宜図示している。
【0025】
また、前後方向(矢印A3で示す方向)に直交する方向である水平方向(左右方向)を車体幅方向K1または幅方向(図5参照)として説明する。車体幅方向K1は、作業車両1の幅方向である。作業車両1の幅方向の中央部から右方、或いは、中央部から左方へ向かう方向を、車体幅方向K1の外方(幅方向外方)として説明する。つまり、幅方向外方は、作業車両1の幅方向の中心から車体幅方向K1に離れる方向である。幅方向外方とは反対の方向を、車体幅方向K1の内方(幅方向内方)として説明する。つまり、幅方向内方は、車体幅方向K1に作業車両1の幅方向の中心に近づく方向である。
【0026】
図1図6に示すように、作業車両1は、車体2と、キャビン3と、走行装置4と、駆動装置5と、を備えている。車体2は、作業装置49を連結可能となっている。キャビン3は、車体2に設けられた運転席10を収容している。キャビン3は、車体2の後部に配備されている。車体2の前部には、ボンネット9が配備されている。走行装置4は、車体2を支持すると共に走行させるものである。駆動装置5は、走行装置4を駆動するものである。
【0027】
以降では、作業車両1を構成する車体2、キャビン3、ボンネット9、走行装置4、及び駆動装置5について説明する。
【0028】
図1図4に示すように、車体2は、作業車両1の下部に設けられている。車体2の車体幅方向の両端には、走行装置4が配備されている。車体2の上部には、駆動装置5が配備されている。車体2の後部にはキャビン3が配備されており、車体2の前部にはボンネット9が配備されている。キャビン3及びボンネット9は、車体2の上に載せられた状態で、車体2に固定されている。つまり、本実施形態の車体2は、走行装置4、駆動装置5、キャビン3、及びボンネット9を支持する部材である。また、車体2の後部には、駆動装置5から走行装置4に動力を伝達するミッションケース29が設けられている。車体2の前部は、金属製のフレーム材などを組み合わせて高い剛性を発揮できるように形成されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、キャビン3は、車体2の後部上方に搭載された箱体であり、内部には運転席10が配備されている。キャビン3は、前後左右のパネルと、隣接するパネル同士の間に配備されるピラーとを有している。具体的には、キャビン3は、運転席10の前方に配備されたフロントパネル11と、運転席10の左方及び右方にそれぞれ配備されたドアパネル12L、12Rと、運転席10の後方に配備されたリアパネル13と、を含んでいる。
【0030】
また、キャビン3は、左フロントピラー14と、右フロントピラー15と、左リアピラー16と、及び右リアピラー17と、を含んでいる。左フロントピラー14は、フロントパネル11と左方のドアパネル12Lとの間に設けられている。右フロントピラー15は、フロントパネル11と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。左リアピラー16は、リアパネル13と左方のドアパネル12Lとの間に設けられている。右リアピラー17は、リアパネル13と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。
【0031】
ボンネット9は、車体2の前部に搭載されたカバーである。ボンネット9は、金属板などを用いて、後方と下方が開放されると共に、前方、左方、右方、及び上方が閉鎖された形状に形成されている。
【0032】
なお、作業車両1は、ボンネット9の内部に、燃料電池8などを収容する収容部62を有している。このような収容部62をボンネット9の内部に設ければ、燃料電池8などの被収容物がボンネット9により覆われ、ボンネット9により燃料電池8などを走行風、雨、汚泥、塵埃から保護することができる。
【0033】
走行装置4は、路面(地面)に対して車体2を支持すると共に走行させることができる。言い換えると、走行装置4は、車体2に推進力を付与する。本実施形態の場合、走行装置4は、ゴムタイヤなどで形成された前輪18及び後輪19である。後輪19は、前輪18よりも大径なゴムタイヤで形成されており、車体2の後部に加わる大きな荷重を支持可能となっている。前輪18は、車体2の前部左端に左前輪18Lと、車体2の前部右端に右前輪18Rを有している。後輪19は、車体2の後部左端に左後輪19Lと、車体2の後部右端に右後輪19Rを有している。本発明の走行装置4では、前輪18及び後輪19のいずれか一方、または前輪18及び後輪19の双方に、駆動装置5から動力が伝達されている。なお、走行装置4には、ゴムタイヤに替えてクローラなどを用いても良い。
【0034】
図1図6に示すように、本発明の駆動装置5は、走行装置4を駆動させる動力を発生している。本実施形態の駆動装置5には、燃料電池で発生した電力が用いられている。具体的には、駆動装置5は、走行装置4を駆動させる動力を発生する駆動モータ6と、駆動モータ6に電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8から供給される電力を貯留するバッテリ20と、を有している。また、作業車両1には、燃料電池8に燃料用の水素ガスを供給するタンク7が設けられている。
【0035】
以降、駆動装置5を構成する駆動モータ6、燃料電池8、バッテリ20、及びタンク7について説明する。
【0036】
図7は、本実施形態の作業車両1に設けられる駆動装置5のブロック図である。
【0037】
図1図7に示すように、駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流または交流の同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、燃料電池8の後方に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸6aを備えており、出力軸6aを回転駆動させている。出力軸6aの後端は、ミッションケース29に接続されている。
【0038】
ミッションケース29には、出力軸6aに伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどが配備されている。ミッションケース29は、出力軸6aから入力された動力を減速あるいは増速し、減速あるいは増速された動力を走行装置4の前輪18及び/又は後輪19に出力している。例えば、走行装置4に出力される動力は、作業車両1が後輪駆動である場合は後輪19のみに伝達され、四輪駆動である場合は前輪18及び後輪19の両方に伝達される。
【0039】
なお、本実施形態の駆動モータ6は、車体2の上部に一箇所だけ配備されており、一基の駆動モータ6で発生した動力が前輪18及び/又は後輪19に分配されている。しかし、本発明の駆動装置5に内蔵される駆動モータ6の設置数などは適宜変更してもよい。なお、駆動モータ6は、車体2の左右方向の中央であって、前輪18と後輪19との中間に配備されるのが好ましい。駆動モータ6を前輪18と後輪19との中間に配備すれば、前輪18と後輪19との双方に駆動モータ6の重量が均等に加わり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0040】
本実施形態の作業車両1では、ミッションケース29は、減速あるいは増速した動力を走行装置4に伝達するだけでなく、動力の一部を作業装置49に伝達する。具体的には、作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、PTO軸(パワーテイクオフ軸)を設けておき、ミッションケース29に伝達(入力)された動力を、走行装置4だけでなくPTO軸にも出力する。このようにすれば、燃料電池で発生した電力を用いて、作業装置49(インプルメント)を作動させることも可能となる。
【0041】
また、本実施形態の作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、連結装置(3点リンク機構)を設けてもよい。このような3点リンク機構を設ければ、作業車両1の後方にさまざまなインプルメント(作業装置49)を取り付けて、姿勢変更させたり駆動させたりすることが可能になり、作業車両1に多様な作業を実施させることができる。
【0042】
作業装置49は、耕運機、ロータリ、マルチャー、ハンマーナイフモア、畦塗り機、運搬機、播種機、ハロー、又は畝立て機などのインプルメントである。
【0043】
なお、上述したPTO軸や3点リンク機構は、必ず設置されるものではない。コンバインや田植機のような農業機械や建設機械などの作業車両1では、設置されない場合も存在し得る。また、上述した駆動モータ6とは別に、当該駆動モータ6が出力した動力によって駆動する油圧ポンプや、駆動モータ6とは別の電動モータなどを設けておき、作業装置49(インプルメント)を油圧または電動で作動させても良い。
【0044】
本実施形態の駆動装置5に用いられる燃料電池8は、燃料である水素を酸素と電極反応させ、電気を発生させている。燃料電池8に供給される水素は、タンク7に吸蔵されている。燃料電池8には、電極が多層に亘って積層されて収容されている。タンク7の水素ガスは、燃料電池8に供給され、燃料電池8内において電極反応が行われる。本発明の駆動装置5は、燃料電池8内での電極反応により取り出された電気を用いて、駆動モータ6を駆動させる構造となっている。燃料電池8での電極反応では、内燃機関の燃焼反応などで必ず排出される二酸化炭素が排出されない。それゆえ、燃料電池で発生する電力を用いて駆動する本発明の作業車両1は脱炭素化の実現に有望である。
【0045】
具体的には、燃料電池8は、箱状に形成された電池ケーシングの内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数備えている。正極及び負極は、それぞれ正極材及び負極材を用いて、シート状又は膜状に形成されている。単セルには、正極及び負極が1枚ずつ含まれており、隣り合う単セルの間はセパレータにより区切られている。正極にはタンク7の水素ガスが供給され、負極にはコンプレッサなどで圧縮された酸素ガス(酸化ガス)が供給されており、単セルごとに電池反応(発電)が行われる。燃料電池8は、それぞれの単セルで発電された電力を集約することで、駆動装置5を駆動可能な電圧及び電流の電力を発生させている。
【0046】
図3図5に示すように、本実施形態の場合、燃料電池8は、車体2の前部上方に配備されたボンネット9の内部に収容されている。燃料電池8には、タンク7からガス配管23(図7参照)を通じて水素ガスが供給されている。ボンネット9内部における燃料電池8の前方には、後述する第1熱交換装置80の第1コンデンサ83が配備されている。また、ボンネット9内部における燃料電池8の後方には、後述する第2熱交換装置81の第2コンデンサ84が配備されている。
【0047】
図7に示すように、駆動モータ6の下流(電力伝達経路における下流)には、燃料電池8で発生した電力を昇圧する昇圧回路25が設けられている。これにより、燃料電池8で発生した電力を昇圧回路25が昇圧することで、駆動モータ6を起動するための電圧を確保することができる。
【0048】
昇圧回路25は、燃料電池8で発生した電力を昇圧させる回路を備えており、昇圧された電力は駆動モータ6に送られて、駆動モータ6を駆動させる。なお、作業車両1で用いられる電装品には、駆動モータ6よりもさらに低電圧で作動するものがある。このような低電圧で作動する電装品(弱電の電装品)に対しては、第1DC-DCコンバータ26及び第2DC-DCコンバータ27を含む降圧回路で降圧された電力が供給される。本実施形態の場合であれば、低電圧で作動する電装品には、上述した第1熱交換装置80、第2熱交換装置81、バッテリ20が挙げられる。
【0049】
バッテリ20は、燃料電池8で発生した電気を蓄電するものである。バッテリ20に対しては第1DC-DCコンバータ26で降圧された電力が供給され、第1熱交換装置80及び第2熱交換装置81に対しては第2DC-DCコンバータ27で降圧された電力が供給される。
【0050】
なお、本実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、運転席10の下方に配備されている。バッテリ20を運転席10の下方に配備すれば、重量のあるバッテリ20が車両の中でも下方に位置するようになり、作業車両1の重心が低くなり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0051】
駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流または交流の同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、燃料電池8の後方に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸6aを備えており、出力軸6aを回転駆動させている。出力軸6aの後端は、ミッションケース29に接続されている。
【0052】
ミッションケース29には、出力軸6aに伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどが配備されている。ミッションケース29は、出力軸6aから入力された動力を減速あるいは増速し、減速あるいは増速された動力を走行装置4の前輪18及び/又は後輪19に出力している。例えば、走行装置4に出力される動力は、作業車両1が後輪駆動である場合は後輪19のみに伝達され、四輪駆動である場合は前輪18及び後輪19の両方に伝達される。
【0053】
図2及び図3に示すように、タンク7は、キャビン3の下方に、タンク7が含まれたタンクユニット31として配備されている。タンクユニット31は、複数のタンク7を収容可能なタンクケーシング32を備えている。本実施形態の場合であれば、タンクケーシング32には、6本のタンク7が収容されている。タンクユニット31の上部には、キャビン3に設けられる左フロントピラー14、右フロントピラー15、左リアピラー16、及び右リアピラー17の下端を弾性的に支持するブラケット42が設けられている。また、タンクユニット31は、タンク7の水素ガスを案内するガス配管23(図7参照)が、タンク7ごとに設けられている。ガス配管23の先端には、ガス配管23を通じて導入された水素ガスを混合等し、所定の流量に調整した上で、燃料電池8に送るバルブユニット33が配備されている。
【0054】
次に、タンク7、タンクケーシング32、ブラケット42、ガス配管23、及びバルブユニット33について説明する。
【0055】
図3及び図4に示すように、タンク7は、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂などを用いて長尺な円筒状に形成されたボンベが用いられている。本実施形態の場合であれば、タンク7(ボンベ)は、いずれも車体幅方向に軸心を向けるように配備されており、タンクケーシング32内に前後方向に並んで6本収容されている。
【0056】
タンク7の前端には、ネック7aが形成されている。タンク7のネック7aには、図示しない安全弁(電磁弁)を介してガス配管23が連結されている。
【0057】
なお、本実施形態の場合、複数のタンク7は、すべて前輪18と後輪19との間に配備されている。重量があるタンク7を前輪18と後輪19との間に配備すれば、前輪18と後輪19との双方にタンク7の重量がほぼ均等に加わり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0058】
タンクケーシング32は、複数本のタンク7を収容でき、ボルト等の締結部材や溶接等により車体2に固定(リジット固定)されている。タンクケーシング32は上述したタンク7より大きな内寸を備えた箱状に形成されており、複数本のタンク7を収容する。本実施形態のタンクケーシング32は、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などを用いて、上方に向かって開口した箱状に形成されている。
【0059】
図3に示すように、本実施形態のタンクケーシング32は、底部34、前壁部35、左壁部36、後壁部37、右壁部38を有している。底部34は、車体幅方向に比べて前後方向に長い長方形の板状に形成されている。前壁部35は、底部34の前縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。左壁部36は、底部34の左縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。後壁部37は、底部34の後縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。右壁部38は、底部34の右縁に上下方向に沿って起立状に形成されている。タンクケーシング32の底部34は、車体2の上部に対して、ボルトなどを用いて締結あるいは溶接などの手段で固定(リジット固定)されている。
【0060】
タンクケーシング32の前壁部35及び後壁部37の上縁には、下方に向かって円弧状に凹む切欠部39が形成されている。切欠部39は、タンク7の収容本数に合わせて、前壁部35及び後壁部37に4箇所ずつ形成されている。切欠部39は、凹んだ部分にネック7aを嵌め込むようにして、切欠部39の1箇所につきタンク7が1本収容される。切欠部39の凹んだ部分にネック7aを嵌め込むことで、タンクケーシング32は、タンク7に横揺れを起こさないようにタンク7を収容されている。
【0061】
図4に示すように、タンクケーシング32の上部には、ビーム材40が設けられている。ビーム材40は、車体幅方向に沿って延びる細長い板状の第1板部材40aと、前後方向に沿って延びる細長い板状の第2板部材40b及び第3板部材40cとを組み合わることで櫛歯状(ギリシャ文字のπ字状)に形成されている。第1板部材40aは、車体幅方向に延びる細長い板状に形成されている。第1板部材40aの後端には、第2板部材40b及び第3板部材40cの前端が連結されている。第2板部材40bは第1板部材40aの左端に連結されており、第3板部材40cは第1板部材40aの右端に連結されている。
【0062】
第3板部材40cは、車体幅方向に延伸するように配備されている。ビーム材40は、左壁部36の前部上端と、右壁部38の前部上端と、を車体幅方向に連結している。また、ビーム材40は、タンクケーシング32が収容するタンク7の前部の上方に位置しており、タンク7が縦揺れを起こさないよう、当該タンク7の前部を前壁部35とともに保持している。
【0063】
ビーム材40の第1板部材40aは、タンクケーシング32の車体幅方向に沿った幅寸法(外寸)よりも長く形成されており、第1板部材40aの左端及び右端はタンクケーシング32よりも幅方向外方に突出するように形成されている。タンクケーシング32よりも幅方向外方に突出した第1板部材40aの左端及び右端の上部には、ブラケット42が配備されている。また、ビーム材40の第2板部材40b及び第3板部材40cは、タンクケーシング32の車体幅方向に沿った幅寸法(外寸)と同じ長さの距離をあけて配備されている。第2板部材40b及び第3板部材40cの後端には、ブラケット42が配備されている。
【0064】
なお、本実施形態のタンクケーシング32は箱状に形成されているが、本発明のタンクケーシング32にはタンク7を収容可能な棚やラックなどを用いても良い。また、本実施形態のタンクケーシング32では、前壁部35と後壁部37の双方に切欠部39が形成された例を挙げたが、切欠部39は前壁部35及び後壁部37のいずれか一方だけ(タンク7のネック7aが設けられる方)に形成されていても良い。
【0065】
ブラケット42は、キャビン3の下端を車体2に支持する部材である。具体的には、ブラケット42は、キャビン3の左右に設けられたフロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端を支持する。ブラケット42は、フロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端と嵌合するブラケット本体43と、ブラケット本体43に対してフロントピラー14、15及びリアピラー16、17の下端を弾性的に支持するマウント部材44と、を有している。
【0066】
図7に示すように、ガス配管23は、複数のタンク7のそれぞれに配備されており、それぞれのタンク7の水素ガスをバルブユニット33に案内する。ガス配管23には、水素ガスの透過を防止可能な合成樹脂と、可撓性を備えた金属ワイヤなどを組み合わせた複合材料のホースなどが用いられる。
【0067】
バルブユニット33は、ガス配管23を通じてそれぞれのタンク7から送られてきた水素ガスを集め、適宜混合している。バルブユニット33は、水素ガスの圧力及び流量を調整可能な電磁弁などを備えており、燃料電池8で発電するのに適した圧力及び流量に水素ガスを調整して、燃料電池8に水素ガスを送っている。
【0068】
作業車両1は、燃料電池8の温度を調整可能な装置として、第1熱交換装置80を備えている。第1熱交換装置80は、燃料電池8の温度を発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整可能である。燃料電池8の温度は、当該燃料電池の内部に設けられた電極にて計測することができる。なお、第1熱交換装置80は、燃料電池8の温度を発電効率が高くなる温度に高くする装置であって、上述した温度は一例であり限定されない。
【0069】
図10は、第1熱交換装置80の概略構成を示す図である。第1熱交換装置80は、冷媒との熱交換により冷却された空気をキャビン3の内部に供給する(矢印B1参照)とともに、熱交換によって温められた冷媒の熱を燃料電池8に供給する(矢印B2参照)。
【0070】
第1熱交換装置80は、第1コンデンサ83、第1エバポレータ85、第1コンプレッサ87、第1配管86を備えている。
【0071】
第1コンデンサ83は、ボンネット9内における燃料電池8の前方に配備されている。第1コンデンサ83は、金属チューブや金属板などで表面積が大きくなるように形成された熱交換器が用いられている。第1コンデンサ83には、第1コンプレッサ87で圧縮された冷媒が供給される。第1コンデンサ83では、冷媒が、放熱により冷却される。言い換えれば、、第1コンデンサ83は、冷媒の熱を放出する。第1コンデンサ83から放出された熱は、燃料電池8に供給される。
【0072】
第1エバポレータ85は、第1コンデンサ83での放熱により冷却された冷媒を用いて、キャビン3内の空気を冷却している。第1エバポレータ85は、キャビン3内の前部に配備されている。
【0073】
図10の白抜き矢印は、第1熱交換装置80の冷媒の流れを示している。第1エバポレータ85では冷媒との熱交換により空気が冷却され、冷却された空気がキャビン3の内部に供給される(矢印B1参照)。第1エバポレータ85での熱交換によって温められた冷媒は、第1コンプレッサ87で圧縮されて第1配管86を介して、第1コンデンサ83に供給される。第1コンデンサ83では、第1エバポレータ85での熱交換によって温められた冷媒の熱が燃料電池8に供給される(矢印B2参照)。
【0074】
このように、作業車両1は、第1熱交換装置80を備えることによって、キャビン3の内部を冷却できるとともに燃料電池8を温めることができる。これにより、燃料電池8の内部に設けられた電極温度を発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整可能となる。
【0075】
作業車両1は、上記した第1熱交換装置80に加えて、第2熱交換装置81を備えていてもよい。図1は、第1熱交換装置80と第2熱交換装置81を備えた作業車両1を示している。以下、第1熱交換装置80と第2熱交換装置81を備えた作業車両1について説明する。但し、上述した構成と重複する構成については説明を一部省略する。
【0076】
図8に示すように、第1熱交換装置80は、第1コンデンサ83、第1エバポレータ85、第1配管86と、第1コンプレッサ87を備えている。
【0077】
第1熱交換装置80は、ボンネット9内とキャビン3内との間で熱交換を行う。第1熱交換装置80は、キャビン3内を冷却し、ボンネット9内を加温する。
【0078】
第1コンデンサ83は、ボンネット9内における燃料電池8の前方に配備されている。第1コンデンサ83の後方には、第1コンデンサファン88が配備されている。第1コンデンサファン88は、第1コンデンサ83で放熱された熱を、燃料電池8に温風として吹き付けている。第1コンデンサファン88は、第1コンデンサから放出された熱を燃料電池8に導く導熱手段である。但し、第1コンデンサ83をボンネット9の内部とは異なる位置に配置し、導熱手段として、第1コンデンサ83から放出された熱を燃料電池8に導くパイプを設けてもよい。
【0079】
第1エバポレータ85は、キャビン3における下部前方に配備されている。第1エバポレータ85の側方には、図示を省略する送風ファンが設けられている。送風ファンは、第1エバポレータ85で冷却された空気を冷風としてキャビン3内に送っている。
【0080】
第1コンプレッサ87は、キャビン3における第1コンデンサ83の後方に配備されている。
【0081】
図8に点線で示すように、第1配管86は、第1コンデンサ83、第1エバポレータ85、及び第1コンプレッサ87を接続している。第1配管86は、銅やアルミなどの金属管が用いられている。第1配管86は、第1コンデンサ83から第1エバポレータ85、次いで第1コンプレッサ87を経由して、第1コンデンサ83に戻る循環経路に沿って配備されている。これにより、冷媒は、第1コンデンサ83、第1エバポレータ85、第1コンプレッサ87を循環することができる。なお、第1配管86の経路上には、冷媒を貯留するレシーバタンクや膨張弁などを適宜設けても良い。
【0082】
第2熱交換装置81は、ボンネット9内における燃料電池8の後方に配置されている。第2熱交換装置81は、燃料電池8を冷却するものである。つまり、図1に示す作業車両1は、燃料電池8を加温する第1熱交換装置80と、燃料電池8を冷却する第2熱交換装置81を組み合わせて用いることで、燃料電池8を最適な温度に調整している。
【0083】
図9に示すように、第2熱交換装置81は、スタック冷却部89、第2コンデンサ84、第2コンデンサファン90、第2配管91、及び第2コンプレッサ92を備えている。
【0084】
スタック冷却部89は、冷却された冷媒を用いて、燃料電池8を冷却している。スタック冷却部89は、燃料電池8の電池ケーシングの内部又は周囲に冷媒を流通させる導管を備え、導管を通じて冷媒との間で熱交換を行うことで、スタック冷却部89を冷却している。スタック冷却部89で吸熱により加熱された冷媒は、第2コンプレッサ92に送られる。
【0085】
第2コンプレッサ92は、第1コンプレッサ87と同様に、スタック冷却部89で冷却により吸熱された冷媒を圧縮する部材である。第2コンプレッサ92で圧縮された冷媒は、第2コンデンサ84に供給される。
【0086】
第2コンデンサ84は、第2コンプレッサ92で圧縮された冷媒の熱を、ボンネット9外に排熱するものである。本実施形態の第2コンデンサ84は、ボンネット9内における燃料電池8の後方に配備されている。第2コンデンサ84には、第1コンデンサ83と同様な熱交換器が用いられている。第2コンデンサ84には、第2配管91を通じて第2コンプレッサ92で圧縮された冷媒が供給されている。第2コンデンサ84では、冷媒が、放熱により冷却される。第2コンデンサ84の前方または後方には、第2コンデンサファン90が配備されている。第2コンデンサファン90は、第2コンデンサ84で放熱された熱を、ボンネット9外に排熱風として排出している。
【0087】
図9に点線で示すように、第2配管91は、第2コンデンサ84、スタック冷却部89、及び第2コンプレッサ92の3部材を循環している。第2配管91にも、第1配管86と同様に銅やアルミなどの金属管が用いられている。第2配管91は、第2コンデンサ84からスタック冷却部89、次いで第2コンプレッサ92を経由して、第2コンデンサ84に戻る循環経路に沿って配備されている。
【0088】
なお、第2配管91の経路上には、冷媒を貯留するレシーバタンクなどを適宜設けても良い。
【0089】
本実施形態の作業車両1は、作業装置49を連結可能な車体2と、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、第1熱交換装置80と、を備え、駆動装置5は、当該駆動装置5を駆動させるための電力を発生する燃料電池8を有しており、第1熱交換装置80は、冷媒との熱交換により冷却された空気をキャビン3の内部に供給するとともに、熱交換によって温められた冷媒の熱を燃料電池8に供給する。
【0090】
この構成によれば、第1熱交換装置80によってキャビン3内を冷却することができるとともに、燃料電池8を適切な温度に温度調整することができる。
【0091】
車体2の前部にはボンネット9が設けられ、燃料電池8は、ボンネット9の内部に収容されている。
【0092】
この構成によれば、第1熱交換装置80でボンネット9内とキャビン3内との間で熱交換を行うことができるため、ボンネット9内に設けられた燃料電池8を適切な温度に温度調整することができる。
【0093】
第1熱交換装置80は、冷媒の熱を放出する第1コンデンサ83と、第1コンデンサ83から放出された熱を燃料電池8に導く導熱手段(例えば、第1コンデンサファン88)と、を有している。
【0094】
この構成によれば、第1コンデンサ83から放出された熱を確実に燃料電池8に導いて、燃料電池8を適切な温度に温度調整することができる。
【0095】
本実施形態の作業車両1では、第1熱交換装置80は、ボンネット9内で放熱を行う第1コンデンサ83と、キャビン3内で吸熱を行う第1エバポレータ85と、第1コンデンサ83と第1エバポレータ85との間で冷媒を循環させる第1配管86と、第1エバポレータ85において吸熱された冷媒を圧縮する第1コンプレッサ87と、を備えている。
【0096】
このように第1配管86上に第1コンデンサ83、第1エバポレータ85、及び第1コンプレッサ87を備えた第1熱交換装置80を用いれば、キャビン3内で吸熱した熱を、燃料電池8の加温に用いることができる。その結果、燃料電池8の温度調整を効率的に行うことが可能となる。
【0097】
第1熱交換装置80は、第1コンデンサ83から放熱された熱を、燃料電池8に温風として吹き付ける第1コンデンサファン88と、第1エバポレータ85の吸熱で冷却された空気を、冷風としてキャビン3内に送る送風ファンと、を備えている。
【0098】
第1コンデンサファン88を設ければ、第1コンデンサ83で放熱された熱を、温風の状態で燃料電池8に送ることができ、燃料電池8を効率的に加温できる。また、送風ファンを用いて第1エバポレータ85で冷却された冷風を送風すれば、キャビン3内を効率的に冷房できる。
【0099】
本実施形態の作業車両1は、駆動装置5を駆動させるためのガスを収容するタンク7を複数備え、走行装置4は、車体2の前部の左右両端に配備される前輪18と、車体2の後部の左右両端に配備される後輪19と、を有しており、複数のタンク7は、前輪18と後輪19との間に配備されている。
【0100】
重量があるタンク7を前輪18と後輪19との間に配備すれば、前輪18と後輪19との双方にタンク7の重量がほぼ均等に加わり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0101】
本実施形態の作業車両1では、駆動装置5は、燃料電池8が発電した電力を蓄電するバッテリ20と、燃料電池8が発電した電力によって駆動する駆動モータ6と、を備えており、駆動モータ6は、車体2の左右方向の中央であって、前輪18と後輪19との中間に配備されている。
【0102】
本実施形態の作業車両1では、駆動モータ6は、タンク7に次いで重量がある重量物である。そのため、重量がある駆動モータ6を前輪18と後輪19との中間に配備すれば、タンク7の場合と同様に前輪18と後輪19との双方に駆動モータ6の重量が均等に加わり、走行性能をさらに安定化することが可能となる。
【0103】
本実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、キャビン3における運転席10の下方に配備されている。
【0104】
バッテリ20も、上述したタンク7や駆動モータ6と同様に重量がある重量物である。そのため、バッテリ20を運転席10の下方に配備すれば、重量のあるバッテリ20が車両の中でも下方に位置するようになり、作業車両1の重心が低くなり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0105】
本実施形態の作業車両1では、ボンネット9内における燃料電池8の後方には、燃料電池8を冷却する第2熱交換装置81が配備されている。
【0106】
このような第2熱交換装置81を第1熱交換装置80に加えて設ければ、第1熱交換装置80で燃料電池8を加温すると共に、第2熱交換装置81で燃料電池8を冷却することが可能となる。その結果、燃料電池8の温度調整をより効率的に行うことが可能となる。
【0107】
本実施形態の作業車両1では、第2熱交換装置81は、燃料電池8を冷却するスタック冷却部89と、燃料電池8の前方及び/又は後方のボンネット9内で放熱を行う第2コンデンサ84と、第2コンデンサ84で放熱された熱をボンネット9外に排熱する第2コンデンサファン90と、第2コンデンサ84とスタック冷却部89との間で冷媒を循環させる第2配管91と、スタック冷却部89において吸熱が行われた冷媒を圧縮する第2コンプレッサ92と、を備えている。
【0108】
このように第2配管91上にスタック冷却部、第2コンデンサ84、及び第2コンプレッサ92を備えた第2熱交換装置81を用いれば、キャビン3内の燃料電池8を加温することも冷却することも可能となる。その結果、燃料電池8の温度調整をより効率的に行うことが可能となる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
1 作業車両
2 車体
3 キャビン
4 走行装置
5 駆動装置
6 駆動モータ
7 タンク
8 燃料電池
9 ボンネット
10 運転席
18 前輪
19 後輪
20 バッテリ
49 作業装置
80 第1熱交換装置
81 第2熱交換装置
83 第1コンデンサ
84 第2コンデンサ
85 第1エバポレータ
86 第1配管
87 第1コンプレッサ
88 第1コンデンサファン
89 スタック冷却部
90 第2コンデンサファン
91 第2配管
92 第2コンプレッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10