(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095111
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 8/00 20060101AFI20240703BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60K8/00
B60K15/063 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212150
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】南出 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】林 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】網谷 幸大
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲平
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】風間 勇
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙史朗
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038CA13
3D038CB06
3D038CC18
3D038CD03
3D235AA14
3D235BB24
3D235CC12
3D235CC23
3D235CC24
(57)【要約】
【課題】燃料電池及びタンクをユニット化して簡単に着脱することができる。
【解決手段】
車体2と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させる電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8で発電させるガスを収容するタンク7と、を有する燃料電池ユニット100と、を備え、燃料電池ユニット100は、車体2に対して着脱自在である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、
前記走行装置を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を駆動させる電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池で発電させるガスを収容するタンクと、を有する燃料電池ユニットと、を備え、
前記燃料電池ユニットは、前記車体に対して着脱自在である作業車両。
【請求項2】
前記車体は、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記キャビンの前方に配備されたボンネットと、を含み、
前記ボンネットの内部及び/又は前記キャビンに、前記燃料電池ユニットを着脱自在に支持する取付部材を備えている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記燃料電池ユニットは、前記燃料電池で発生した電力を外部に出力する出力コネクタを有し、
前記取付部材は、前記燃料電池ユニットを固定するブラケットと、前記駆動装置に電力を供給する電気回路に接続されており、且つ前記出力コネクタに連結されて前記燃料電池で発生した電力が入力される入力コネクタと、を有し、前記出力コネクタと前記入力コネクタとは着脱自在である請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記取付部材は、前記キャビンの上部に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記取付部材は、前記ボンネットの内部に配備されている請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記燃料電池ユニットは、前記燃料電池及び/又は前記タンクを収容するケーシングを備えており、前記ケーシングと一体に前記燃料電池及び/又は前記タンクが着脱される請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記燃料電池ユニットは、当該燃料電池ユニットを吊り下げ状態で支持する吊り下げ部材を備えている請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池で発電された電力を用いて駆動する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、トラクタは、車体の前部に、ボンネットを有している。ボンネットの内部には、エンジン、ラジエータ、燃料タンク及びバッテリ等が収容されている。
【0003】
一方、脱炭素化の実現を目指して、水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の開発が進んでいる。当該作業車両には、水素ガスを収容(貯留)するタンク(水素タンク)と、タンクの水素ガスを用いて発電を行う燃料電池が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、タンク及び燃料電池は取り外すことができない構造である。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、燃料電池及びタンクをユニット化して簡単に着脱することが可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0008】
本発明の作業車両は、車体と、前記車体を支持すると共に走行させる走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を駆動させる電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池で発電させるガスを収容するタンクと、を有する燃料電池ユニットと、を備え、前記燃料電池ユニットは、前記車体に対して着脱自在である。
【0009】
前記車体は、前記車体に設けられた運転席を収容するキャビンと、前記キャビンの前方に配備されたボンネットと、を含み、前記取付部材は、前記ボンネットの内部及び/又は前記キャビンに、前記燃料電池ユニットを着脱自在に支持している。
【0010】
前記燃料電池ユニットは、前記燃料電池で発生した電力を外部に出力する出力コネクタを有し、前記取付部材は、前記燃料電池ユニットを固定するブラケットと、前記駆動装置に電力を供給する電気回路に接続されており、且つ前記出力コネクタに連結されて前記燃料電池で発生した電力が入力される入力コネクタと、を有し、前記出力コネクタと前記入力コネクタとは着脱自在である。
【0011】
前記取付部材は、前記キャビンの上部に配備されている。
【0012】
前記取付部材は、前記ボンネットの内部に配備されている。
【0013】
前記燃料電池ユニットは、前記燃料電池及び/又は前記タンクを収容するケーシングを備えており、前記ケーシングと一体に前記燃料電池及び/又は前記タンクが着脱される。
【0014】
前記燃料電池ユニットは、当該燃料電池ユニットを吊り下げ状態で支持する吊り下げ部材を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る作業車両によれば、燃料電池及びタンクをユニット化して簡単に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】燃料電池ユニットの内部構造を示す平面図である。
【
図5】燃料電池ユニットに対する取付部材及び吊り下げ部材の配置状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態の作業車両における燃料電池ユニットの着脱手順を示した図である。
【
図9】第2実施形態の作業車両における燃料電池ユニットの着脱手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る作業車両1の好適な第1実施形態について説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態の作業車両1の一例であるトラクタの斜視図である。第1実施形態の作業車両1は、燃料である水素を電極反応させて発電を行う燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)である。作業車両1は、燃料である水素などを貯蔵するタンク7と、タンク7に貯蔵された水素ガスなどの燃料を用いて発電を行う燃料電池8が設けられている。
【0019】
なお、本発明の「貯留する」には、液化した水素ガスなどを貯留するだけでなく、金属化合物などに吸蔵するものも含まれる。
【0020】
また、燃料電池車の燃料には水素以外のメタンなどを燃料として用いる場合もあるため、メタンなどの燃料を用いて発電を行う燃料電池車も、本発明の作業車両1には含まれる。この場合、タンク7にはメタンなどの燃料が貯蔵され、燃料電池8ではメタンなどの燃料を用いて発電が行われる。
【0021】
また、第1実施形態では、作業車両1として、トラクタを例に挙げている。しかし、本発明に係る作業車両1はトラクタに限定されず、例えば、トラクタ以外の農業機械(コンバインや田植機など)、建設機械、ユーティリティビークル等であってもよい。
【0022】
以下の説明においては、
図2及び
図3に矢印A1方向で示す方向(作業車両1の前進方向)を前方という。
図2及び
図3に矢印A2で示す方向(作業車両1の後進方向)を後方という。
図2及び
図3に矢印A3で示す方向を前後方向として説明する。矢印A1~矢印A3で示す方向は、
図2及び
図3などの図面において適宜図示している。
【0023】
また、前後方向(矢印A3で示す方向)に直交する方向である水平方向(左右方向)を車体幅方向K1又は幅方向(
図3参照)として説明する。車体幅方向K1は、作業車両1の幅方向である。作業車両1の幅方向の中央部から右方、或いは、中央部から左方へ向かう方向を、車体幅方向K1の外方(幅方向外方)として説明する。つまり、幅方向外方は、作業車両1の幅方向の中心から車体幅方向K1に離れる方向である。幅方向外方とは反対の方向を、車体幅方向K1の内方(幅方向内方)として説明する。つまり、幅方向内方は、車体幅方向K1に作業車両1の幅方向の中心に近づく方向である。
【0024】
図1~
図3に示すように、作業車両1は、車体2と、走行装置4と、駆動装置5と、を備えている。車体2は、キャビン3とボンネット9とを含んでいる。車体2は、作業装置を連結可能となっている。キャビン3は、車体2に設けられた運転席10を収容している。キャビン3は、車体2の後部に配備されている。車体2の前部には、ボンネット9が配備されている。走行装置4は、車体2を支持すると共に走行させるものである。駆動装置5は、走行装置4を駆動するものである。
【0025】
以降では、作業車両1を構成する車体2、キャビン3、ボンネット9、走行装置4、及び駆動装置5について説明する。
【0026】
図1~
図3に示すように、車体2の車体幅方向の両端には、走行装置4が配備されている。車体2の上部には、駆動装置5が配備されている。車体2の後部にはキャビン3が配備されており、車体2の前部にはボンネット9が配備されている。キャビン3及びボンネット9は、車体2の上に載せられた状態で、車体2に固定されている。つまり、第1実施形態の車体2は、走行装置4、駆動装置5、キャビン3、及びボンネット9を支持する部材である。また、車体2の後部には、駆動装置5から走行装置4に動力を伝達するミッションケース29が設けられている。車体2の前部は、金属製のフレーム材などを組み合わせて高い剛性を発揮できるように形成されている。
【0027】
図1及び
図2に示すように、キャビン3は、車体2の後部上方に搭載された箱体であり
、内部には運転席10が配備されている。キャビン3は、前後左右のパネルと、隣接するパネル同士の間に配備されるピラーとを有している。具体的には、キャビン3は、運転席10の前方に配備されたフロントパネル11と、運転席10の左方及び右方にそれぞれ配備されたドアパネル12L、12Rと、運転席10の後方に配備されたリアパネル13と、を含んでいる。
【0028】
また、キャビン3は、左フロントピラー14と、右フロントピラー15と、左リアピラー16と、及び右リアピラーと、を含んでいる。左フロントピラー14は、フロントパネル11と左方のドアパネル12Lとの間に設けられている。右フロントピラー15は、フロントパネル11と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。左リアピラー16は、リアパネル13と左方のドアパネル12Lとの間に設けられている。右リアピラーは、リアパネル13と右方のドアパネル12Rとの間に設けられている。
【0029】
ボンネット9は、車体2の前部に搭載されたカバーである。ボンネット9は、金属板などを用いて、後方と下方が開放されると共に、前方、左方、右方、及び上方が閉鎖された形状に形成されている。
【0030】
なお、作業車両1は、ボンネット9の内部に、燃料電池ユニット100、パワーコントロールユニット101、駆動モータ6などを収容する収容部62を有している。このような収容部62をボンネット9の内部に設ければ、燃料電池8などの被収容物がボンネット9により覆われ、ボンネット9により燃料電池8などを走行風、雨、汚泥、塵埃から保護することができる。
【0031】
走行装置4は、路面(地面)に対して車体2を支持すると共に走行させることができる。言い換えると、走行装置4は、車体2に推進力を付与する。第1実施形態の場合、走行装置4は、ゴムタイヤなどで形成された左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び右後輪19Rである。左後輪19L及び右後輪19Rは、左前輪18L及び右前輪18Rよりも大径なゴムタイヤで形成されており、車体2の後部に加わる大きな荷重を支持している。本発明の走行装置4では、左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び右後輪19Rのいずれか、又はこれらの全てに、駆動装置5から動力が伝達されている。なお、走行装置4には、ゴムタイヤに替えてクローラなどを用いても良い。
【0032】
図1~
図6に示すように、本発明の駆動装置5は、車体2に配備されて、走行装置4を駆動させる動力を発生している。第1実施形態の駆動装置5には、燃料電池で発生した電力が用いられている。具体的には、駆動装置5は、走行装置4を駆動させる動力を発生する駆動モータ6と、駆動モータ6に電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8から供給される電力を貯留するバッテリ20と、を有している。また、作業車両1には、燃料電池8に燃料用の水素ガスを供給するタンク7が設けられている。
【0033】
以降、駆動装置5を構成する駆動モータ6、燃料電池8、バッテリ20、及びタンク7について説明する。
【0034】
図1~
図3に示すように、駆動モータ6は、例えば、永久磁石埋込式の直流又は交流の同期モータや巻線界磁型同期モータ等である。駆動モータ6は、車体2の前後方向の中央よりやや前方に1基配備されている。駆動モータ6は、後方に向かって延びる出力軸を備えており、出力軸を回転駆動させている。出力軸の後端は、ミッションケース29に接続されている。
【0035】
ミッションケース29には、駆動モータの出力軸に伝達された動力を変速するトランスミッション、クラッチ、デファレンシャルギヤなどが配備されている。ミッションケース29は、出力軸から入力された動力を減速あるいは増速し、減速あるいは増速された動力を走行装置4の左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び/又は右後輪19Rに出力している。例えば、作業車両1が後輪駆動である場合、動力は左後輪19L及び右後輪19Rのみに伝達される。また、作業車両1が四輪駆動である場合、左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び右後輪19Rの全てに伝達される。
【0036】
なお、第1実施形態の駆動モータ6は、車体2の上部に一箇所だけ配備されており、一基の駆動モータ6で発生した動力が左前輪18L、右前輪18R、左後輪19L、及び/又は右後輪19Rに分配されている。しかし、本発明の駆動装置5に内蔵される駆動モー
タ6の設置数などは適宜変更してもよい。
【0037】
第1実施形態の作業車両1では、ミッションケース29は、減速あるいは増速した動力を走行装置4に伝達するだけでなく、動力の一部を作業装置(図示略)に伝達する。具体的には、作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、PTO軸(パワーテイクオフ軸)を設けておき、ミッションケース29に伝達(入力)された動力を、走行装置4だけでなくPTO軸にも出力する。このようにすれば、燃料電池で発生した電力を用いて、作業装置(インプルメント)を作動させることも可能となる。
【0038】
また、本実施形態の作業車両1の後部(ミッションケース29の後端)に、連結装置(3点リンク機構102)を設けてもよい。このような3点リンク機構102を設ければ、作業車両1の後方にさまざまなインプルメント(作業装置)を取り付けて、姿勢変更させたり駆動させたりすることが可能になり、作業車両1に多様な作業を実施させることができる。
【0039】
作業装置は、耕運機、ロータリ、マルチャー、ハンマーナイフモア、畦塗り機、運搬機、播種機、ハロー、又は畝立て機などのインプルメントである。
【0040】
なお、上述したPTO軸や3点リンク機構102は、必ず設置されるものではない。コンバインや田植機のような農業機械や建設機械などの作業車両1では、設置されない場合も存在し得る。また、上述した駆動モータ6とは別に、当該駆動モータ6が出力した動力によって駆動する油圧ポンプや、駆動モータ6とは別の電動モータなどを設けておき、作業装置(インプルメント)を油圧又は電動で作動させても良い。
【0041】
さて、本発明の作業車両1は、燃料電池ユニット100を備えることを特徴としている。具体的には、
図4に示すように、燃料電池ユニット100は、燃料電池ユニット100とタンク7とをユニット化して一体にしたものである。燃料電池ユニット100は、ケーシング103を有している。ケーシング103には、燃料電池8及びタンク7が収容されている。また、ケーシング103には、タンク7の水素ガスを燃料電池8に送る際に、水素ガスの混合等を行うバルブユニット33が設けられている。つまり、燃料電池ユニット100は、タンク7に収容された水素ガスを用いて燃料電池8で発電を行うことで、単独で自律的に電気を発生させている。
【0042】
また、燃料電池ユニット100は、車体2に対して着脱自在である。これにより、燃料電池ユニット100は、取り換えが可能である。燃料電池ユニット100は、作業車両1の中でも、着脱が容易な場所に配備されている。燃料電池ユニット100の取り付け位置としては、第1実施形態に示すようなキャビン3の上部、又は第2実施形態に示すようなボンネット9の内部を挙げることができる。
【0043】
燃料電池ユニット100を取り付ける取り付け先には、燃料電池ユニット100を着脱自在に取り付ける取付部材104が設けられている。第1実施形態の場合であれば、取付部材104はキャビン3の上部に配備されている。また、第2実施形態の場合であれば、取付部材104はボンネット9の内部に配備されている。
【0044】
次に、燃料電池ユニット100が備えるケーシング103、燃料電池8、タンク7、バルブユニット33、及び取付部材104について説明する。
【0045】
図4に示すように、第1実施形態の燃料電池ユニット100に設けられるケーシング103は、燃料電池ユニット100の周囲(前方、後方、左方、右方、上方、下方の6方向)を覆うように配備されている。ケーシング103の内部は、複数のタンク7、燃料電池8、及びバルブユニット33を収容可能なユニット収容部105が形成されている。ケーシング103には、外部からタンク7を熱的及び物理的に保護可能な厚みのある鋼材などが用いられている。上述したケーシング103の内部に燃料電池8及び/又はタンク7を収容すれば、ケーシング103と一体に燃料電池8及び/又はタンク7の着脱が可能となる。
【0046】
燃料電池8は、駆動装置5を駆動させる電力を供給している。燃料電池8は、燃料である水素を酸素と電極反応させ、電気を発生させている。燃料電池8に供給される水素は、タンク7に吸蔵されている。燃料電池8には、電極が多層に亘って積層されて収容されている。タンク7の水素ガスは、バルブユニット33を介して燃料電池8に供給され、燃料
電池8内において電極反応が行われる。燃料電池8での電極反応では、内燃機関の燃焼反応などで必ず排出される二酸化炭素が排出されない。それゆえ、燃料電池で発生する電力を用いて駆動する本発明の作業車両1は脱炭素化の実現に有望である。
【0047】
具体的には、燃料電池8は、箱状に形成された電池ケーシングの内部に、正極及び負極の2種類の電極を備えた単セルを積層状態で複数備えている。正極及び負極は、それぞれ正極材及び負極材を用いて、シート状又は膜状に形成されている。単セルには、正極及び負極が1枚ずつ含まれており、隣り合う単セルの間はセパレータにより区切られている。正極にはタンク7の水素ガスが供給され、負極にはコンプレッサなどで圧縮された酸素ガス(酸化ガス)が供給されており、単セルごとに電池反応(発電)が行われる。燃料電池8は、それぞれの単セルで発電された電力を集約することで、駆動装置5を駆動可能な電圧及び電流の電力を発生させている。
【0048】
燃料電池8は、内部に設けられた電極温度を発電効率が高くなる温度(水素燃料電池の場合であれば70℃程度の温度)に調整可能とされている。また、燃料電池8には、タンク7からガス配管23を通じて水素ガスが供給されている。ケーシング103の内部における燃料電池8の側方には、タンク7が複数(図例では4本)配備されている。
【0049】
図4に示すように、タンク7は、燃料電池8で発電させるガスを収容している。タンク7は、炭素繊維やガラス繊維で強化された硬質合成樹脂などを用いて長尺な円筒状に形成されたボンベが用いられている。第1実施形態の場合であれば、タンク7(ボンベ)は、いずれも車体幅方向に軸心を向けるように配備されており、ケーシング103内に前後方向に並んで4本収容されている。
【0050】
タンク7の前端には、ネック7aが形成されている。タンク7のネック7aには、図示しない安全弁(電磁弁)を介してガス配管23が連結されている。
【0051】
ガス配管23は、複数のタンク7のそれぞれに配備されており、それぞれのタンク7の水素ガスをバルブユニット33に案内している。ガス配管23には、水素ガスの透過を防止可能な合成樹脂と、可撓性を備えた金属ワイヤなどを組み合わせた複合材料のホースなどが用いられる。
【0052】
バルブユニット33は、水素ガスの圧力及び流量を調整可能な電磁弁などを備えており、燃料電池8で発電するのに適した圧力及び流量に水素ガスを調整して、燃料電池8に水素ガスを送っている。
【0053】
本発明の取付部材104は、作業車両1中の所望位置に燃料電池ユニット100を取り付ける部材である。第1実施形態の場合であれば、取付部材104は、キャビン3に設けられている。
【0054】
具体的には、第1実施形態の取付部材104はキャビン3の上部に複数のブラケット107を有している。ブラケット107は、燃料電池ユニット100を固定するための金具であり、第1実施形態ではL字状に曲げられた金属ステーが用いられている。
【0055】
L字状に曲げられたブラケット107の一方には、第1締結具108を挿通する第1挿通孔109が形成されている。また、L字状に曲げられたブラケット107のもう一方には、第2締結具110を挿通する第2挿通孔111が形成されている。第1締結具108は、第1挿通孔109を挿通してケーシング103の側面にブラケット107を固定している。第2締結具110は、第2挿通孔111を挿通してキャビン3の上部(上面)にブラケット107を固定している。このようなブラケット107(取付部材104)を用いれば、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部(上面)に確実かつ堅固に取り付けることができる。また、第1締結具108又は第2締結具110の少なくとも一方を緩めれば、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部(上面)から取り外すことが可能となる。それゆえ、上述したブラケット107(取付部材104)を用いれば、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部(上面)に着脱自在とすることができる。
【0056】
図5に示すように、燃料電池ユニット100は、当該燃料電池ユニット100を吊り下げ状態で支持する吊り下げ部材112を備えている。第1実施形態の場合であれば、吊り下げ部材112には、ケーシング103の上面の四隅に取り付けられたアイボルトが用いられている。このような吊り下げ部材112を用いれば、燃料電池ユニット100がクレ
ーン等を用いて自在に昇降可能となる。その結果、ブラケット107(取付部材104)を取り外した燃料電池ユニット100を搬出、又は新たな燃料電池ユニット100をキャビン3の上部に搬入することが容易となる。
【0057】
燃料電池ユニット100は、出力コネクタ106を有している。出力コネクタ106は燃料電池8で発生した電力を外部に出力する配線部材である。出力コネクタ106には、入力コネクタ113が着脱自在である。出力コネクタ106に入力コネクタ113を接続することで、電気の導通が可能となる。入力コネクタ113から延びる配線は、車体2側に固定されていて、駆動装置5に電力を供給する電気回路(パワーコントロールユニット101)に接続されており、駆動装置5に燃料電池8で発生した電力を入力している。上述した出力コネクタ106及び入力コネクタ113には、「電源ハーネス」又は「電源取り出しハーネス」を用いることができる。
【0058】
なお、出力コネクタ106及び入力コネクタ113は、防水性を備えた場所に配備されているのが好ましい。第1実施形態の場合であれば、燃料電池ユニット100のケーシング103の側面に、配線収納ボックス115を設けている。配線収納ボックス115に出力コネクタ106及び入力コネクタ113を収容することで、出力コネクタ106及び入力コネクタ113の防水性を高めることが可能となる。
【0059】
上述した駆動装置5に電力を供給する電気回路には、第1実施形態の場合、パワーコントロールユニット101が用いられる。第1実施形態のパワーコントロールユニット101は、ボンネット9の内部に配備されている。パワーコントロールユニット101は、燃料電池8で発生した電力を、駆動装置5、バッテリ20、又は他の電装品を動作させるに適した電圧に調整している。パワーコントロールユニット101には、インバータやパワートランジスタを組み合わせることで、昇圧回路や降圧回路が設けられている。
【0060】
例えば、パワーコントロールユニット101に設けられる昇圧回路は、燃料電池8で発生した電力を昇圧することで、駆動モータ6を起動するための電圧を確保している。また、降圧回路は、駆動モータ6よりもさらに低電圧で作動する電装品(弱電の電装品)を動作させるため、昇圧後の電力を降圧させている。降圧回路には、2つのDC-DCコンバータが設けられている。また、低電圧で作動する電装品としては、第1ラジエータ22、第2ラジエータ24、バッテリ20などが挙げられる。
【0061】
バッテリ20は、燃料電池8で発生した電気をパワーコントロールユニット101経由で蓄電するものである。第1実施形態の作業車両1では、バッテリ20は、運転席10の下方に配備されている。バッテリ20を運転席10の下方に配備すれば、重量のあるバッテリ20が車両の中でも下方に位置するようになり、作業車両1の重心が低くなり、走行性能を安定化することが可能となる。
【0062】
次に、第1実施形態の燃料電池ユニット100を着脱する方法(燃料電池ユニット100の着脱方法)について説明する。
【0063】
図6に示すように、燃料電池ユニット100を、キャビン3の上部から取り外す場合は、まずケーシング103の上面の四隅に取り付けられたアイボルトに、スリングベルト114を取り付けておく。次に、燃料電池ユニット100のケーシング103の側面に設けられた配線収納ボックス115を開け、入力コネクタ113を出力コネクタ106から外す。
【0064】
図6の上部に示すように、ケーシング103の側面に取り付けられた第1締結具108を取り外す。第1挿通孔109か第1締結具108を取り外すと、第1締結具108により固定されていたブラケット107を、ケーシング103から取り外すことが可能となる。
【0065】
図6の下部に示すように、アイボルトを介して燃料電池ユニット100に固定されたスリングベルト114を、クレーンで上昇させる。そうすると、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部から取り外すことが可能となる。
【0066】
燃料電池ユニット100を、キャビン3の上部に取り付ける場合は、上述した手順と逆の手順で操作を行う。そうすると、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部に取り付けることが可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の作業車両1について説明する。
【0067】
図7及び
図8に示すように、第2実施形態の作業車両1は、第1実施形態と同様な燃料電池ユニット100を備えている。第2実施形態の作業車両1に設けられる燃料電池ユニット100の構成は、第1実施形態と同じである。第2実施形態の燃料電池ユニット100が第1実施形態と異なっているのは、燃料電池ユニット100の取り付け位置と、取り付け部分の構造である。
【0068】
具体的には、第1実施形態の燃料電池ユニット100がキャビン3の上部に取り付けられていたのに対し、第2実施形態の燃料電池ユニット100がボンネット9の内部に取り付けられている。
【0069】
第2実施形態の作業車両1に設けられるボンネット9には、第1実施形態と同様に、パワーコントロールユニット101が配備されている。パワーコントロールユニット101は、駆動モータ6の前方に配備されている。パワーコントロールユニット101の上部には、燃料電池ユニット100を支持する支持架台116が配備されている。
【0070】
支持架台116は、燃料電池ユニット100をボンネット9内で支持するために設けられている。支持架台116は、車体2に対して固定されており、燃料電池ユニット100の重量を支持できるようになっている。支持架台116の上面には、取付部材104が設けられている。取付部材104は複数のブラケット107を有している。ブラケット107は、燃料電池ユニット100を固定するための金具であり、第1実施形態と同様なL字状に曲げられた金属ステーが用いられている。ブラケット107には、第1締結具108を挿通するための第1挿通孔109と、第2締結具110を挿通するための第2挿通孔111が形成されている。第1締結具108及び第2締結具110を各挿通孔に挿通させることで、支持架台116の上部(上面)にブラケット107を介し燃料電池ユニット100が固定される。
【0071】
次に、第2実施形態の燃料電池ユニット100を着脱する方法(燃料電池ユニット100の着脱方法)について説明する。
【0072】
図9に示すように、燃料電池ユニット100を、支持架台116の上部(ボンネット9の内部)から取り外す場合は、まずボンネット9を開放させる。図例の場合であれば、ボンネット9は前端を揺動中心として、後端を跳ね上げ方向に揺動させることができる。なお、ボンネット9を開放させる方法は、車両ごとに異なるので、他の方法でボンネット9を開放させても問題はない。
【0073】
ボンネット9が開放されたら、ケーシング103の上面の四隅に取り付けられたアイボルトに、スリングベルト114を取り付ける。次に、燃料電池ユニット100のケーシング103の側面に設けられた配線収納ボックス115を開け、入力コネクタ113を出力コネクタ106から外す。
【0074】
図6の下部に示すように、ケーシング103の側面に取り付けられた第1締結具108を取り外す。第1挿通孔109か第1締結具108を取り外すと、第1締結具108により固定されていたブラケット107を、ケーシング103から取り外すことが可能となる。
【0075】
図9の下部に示すように、アイボルトを介して燃料電池ユニット100に固定されたスリングベルト114を、クレーンで上昇させる。そうすると、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部から取り外すことが可能となる。
【0076】
燃料電池ユニット100を、キャビン3の上部に取り付ける場合は、上述した手順と逆の手順で操作を行う。そうすると、燃料電池ユニット100をキャビン3の上部に取り付けることが可能となる。
【0077】
本発明の作業車両1は、車体2と、車体2を支持すると共に走行させる走行装置4と、走行装置4を駆動する駆動装置5と、駆動装置5を駆動させる電力を供給する燃料電池8と、燃料電池8で発電させるガスを収容するタンク7と、を有する燃料電池ユニット100と、を備え、燃料電池ユニット100は、車体2に対して着脱自在である。
【0078】
これによれば、燃料電池8とタンク7とを同時に車体2から取り外すことができ、燃料
電池8及びタンク7のメンテナンスを簡単にすることができる。例えば、燃料電池ユニット100を取り外した状態で、タンク7に関する部品を交換したり、燃料電池8の部品を交換した後、部品が交換された燃料電池8とタンク7とを車体2に装着することで、部品の交換などを簡単に行うことができる。
【0079】
車体2は、車体2に設けられた運転席10を収容するキャビン3と、キャビン3の前方に配備されたボンネット9と、を含み、ボンネット9の内部及び/又は前記キャビン3に、燃料電池ユニット100を着脱自在に支持する取付部材104を備えている。
【0080】
このように、燃料電池ユニット100を取付部材104を介して着脱自在に配備することによって、タンク7と燃料電池8とを備えた燃料電池ユニット100を取り外して、両者を簡単にメンテナンスすることができる。例えば、燃料電池ユニット100を取り外した状態で、タンク7に関する部品を交換したり、燃料電池8の部品を交換した後、部品が交換された燃料電池ユニット100を取付部材104に取り付けることで、簡単に、燃料電池ユニット100を車体2に装着することができる。
【0081】
燃料電池ユニット100は、燃料電池8で発生した電力を外部に出力する出力コネクタ106を有し、取付部材104は、燃料電池ユニット100を固定するブラケット107と、駆動装置5に電力を供給する電気回路に接続されており、且つ出力コネクタ106に連結されて燃料電池8で発生した電力が入力される入力コネクタ113と、を有し、出力コネクタ106と入力コネクタ113とは着脱自在である。
【0082】
このように互いに出力コネクタ106と入力コネクタ113とが着脱自在であるため、出力コネクタ106から入力コネクタ113を取り外した後に、簡単に燃料電池ユニット100を車体2に取り外すことができ、燃料電池ユニット100を車体2に装着後は、出力コネクタ106に入力コネクタ113を接続することによって、簡単に燃料電池ユニット100を装着することができる。
【0083】
本発明の作業車両では、取付部材104は、キャビン3の上部に配備されているか、ボンネット9の内部に配備されている。
【0084】
取付部材104をキャビン3の上部や、ボンネット9の内部に設ければ、燃料電池ユニット100を運転席10から離れた位置に取り付けることができ、オペレータを熱などから保護することが可能となる。
【0085】
燃料電池ユニット100は、燃料電池8及び/又はタンク7を収容するケーシング103を備えており、ケーシング103と一体に燃料電池8及び/又はタンク7が着脱される。
【0086】
燃料電池8やタンク7をケーシング103内に収容すれば、これらの部材をケーシング103と一緒に一度に着脱できる。
【0087】
燃料電池ユニット100は、当該燃料電池ユニット100を吊り下げ状態で支持する吊り下げ部材112を備えている。
【0088】
このような吊り下げ部材112を設ければ、クレーンなどを用いて燃料電池ユニット100を容易に搬出入することができる。
【0089】
上述した実施形態では、燃料電池8とタンク7とを一体化した燃料電池ユニット100をキャビン3の上部又はボンネット9の内部に着脱自在とする例を説明したが、燃料電池ユニット100は、実施形態以外に示した場所にも着脱自在であってもよく、実施形態に限定されない。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 作業車両
2 車体
3 キャビン
4 走行装置
5 駆動装置
7 タンク
8 燃料電池
9 ボンネット
10 運転席
100 燃料電池ユニット
103 ケーシング
104 取付部材
106 出力コネクタ
107 ブラケット
112 吊り下げ部材
113 入力コネクタ