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特開2024-95118蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095118
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
C23C14/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212159
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 宏和
(72)【発明者】
【氏名】寺田 玲爾
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 数馬
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029CA01
4K029HA02
4K029HA03
(57)【要約】
【課題】蒸着マスクにおける機械的な強度の低下を抑え、かつ、蒸着マスクを用いて形成した蒸着パターンの厚さにおけるばらつきを抑えることを可能とした蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着マスクの厚さ方向と長軸方向とによって規定される第1平面に沿う断面において、第2開口11Bと第3開口11Cとの間の距離が、第1高さである。蒸着マスクの厚さ方向と短軸方向とによって規定される第2平面に沿う断面において、第2開口11Bと第3開口11Cとの間の距離が、第2高さである。第1高さが第2高さよりも高く、第1高さが0μmよりも大きく3μm以下であり、第2高さが、0μmよりも大きく2μm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
複数のマスク孔であって、各マスク孔の第1開口が前記表面に位置し、かつ、各マスク孔の第2開口が前記裏面に位置する前記複数のマスク孔と、を備える蒸着マスクであって、
前記表面は、複数の未エッチング部であって、各未エッチング部は正方格子の格子点上に位置する前記複数の未エッチング部を含み、
各第1開口は、前記複数の未エッチング部に囲まれ、
各第2開口は、前記第1開口よりも小さく、前記表面と対向する視点から見て前記第1開口内に位置し、
各マスク孔は、前記蒸着マスクの厚さ方向において前記第1開口と前記第2開口との間に位置し、前記第2開口よりも小さく、かつ、前記表面と対向する視点から見て、前記第1開口内に位置する第3開口を有し、
各第3開口は、長軸方向に沿って延びる形状を有し、前記長軸方向と直交する方向が短軸方向であり、
前記蒸着マスクの前記厚さ方向と前記長軸方向とによって規定される第1平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第1高さであり、
前記蒸着マスクの前記厚さ方向と前記短軸方向とによって規定される第2平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第2高さであり、
前記第1高さが前記第2高さよりも高く、
前記第1高さが、0μmよりも大きく3μm以下であり、
前記第2高さが、0μmよりも大きく2μm以下である
蒸着マスク。
【請求項2】
前記正方格子において、第1対角線が延びる方向が第1対角方向であり、
前記正方格子において、前記第1対角線に直交する第2対角線が延びる方向が第2対角方向であり、
前記長軸方向は、前記第1対角方向に平行であり、
前記短軸方向は、前記第2対角方向に平行である
請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記長軸方向は、前記第1対角方向に沿い、
前記短軸方向は、前記第2対角方向に沿う
請求項2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
各未エッチング部は、前記第1対角線を対称軸とする線対称な形状を有する
請求項2または3に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
各マスク孔は、前記第1開口から前記第3開口に向けて先細る形状を有した大孔部を含み、
前記第1平面に沿う前記断面において、前記第1開口の縁と前記第3開口の縁とを最短距離で結ぶ第1直線と、前記第3開口を含む平面に沿う第1基準線とが形成する角度が第1角度であり、
前記第2平面に沿う前記断面において、前記第1開口の前記縁と前記第3開口の前記縁とを最短距離で結ぶ第2直線と、前記第3開口を含む前記平面に沿う第2基準線とが形成する角度が第2角度であり、
前記第1角度が43°以上52°以下であり、
前記第2角度が39°以上53°以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
前記第1角度から前記第2角度を減算した差分値の絶対値が、4°以下である
請求項5に記載の蒸着マスク。
【請求項7】
前記蒸着マスクの厚さにおける最大値が、15μm以上25μm以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項8】
1インチ当たりに含まれる前記マスク孔の個数が、400個以上600個以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項9】
金属板の表面に第1レジストパターンを形成すること、
前記金属板の裏面に第2レジストパターンを形成すること、
前記第2レジストパターンを用いて前記裏面から前記金属板をウェットエッチングすることによって、前記裏面に位置する第2開口を形成すること、および、
前記第1レジストパターンを用いて前記表面から前記金属板をウェットエッチングすることによって、正方格子の格子点上に位置する未エッチング部によって囲まれ、かつ、前記表面に位置する第1開口と、前記金属板の厚さ方向において前記第1開口と前記第2開口との間に位置する第3開口を形成し、これによって前記金属板を貫通するマスク孔を形成すること、を含み、
前記第2開口は、前記第1開口よりも小さく、かつ、前記表面と対向する視点から見て前記第1開口内に位置し、
前記第3開口は、前記第2開口よりも小さく、かつ、前記表面と対向する視点から見て、前記第1開口内に位置し、
前記第3開口は、長軸方向に沿って延びる形状を有し、前記長軸方向と直交する方向が短軸方向であり、
前記金属板の前記厚さ方向と前記長軸方向とによって規定される第1平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第1高さであり、
前記金属板の前記厚さ方向と前記短軸方向とによって規定される第2平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第2高さであり、
前記第1高さが前記第2高さよりも高く、
前記第1高さが、0μmよりも大きく3μm以下であり、
前記第2高さが、0μmよりも大きく2μm以下である
蒸着マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置が備える画素を形成する方法の一例は、真空蒸着法である。真空蒸着法では、複数の貫通孔を有した金属製の蒸着マスクが用いられる。各貫通孔は、画素の形状に応じた形状を有し、かつ、複数の貫通孔は、画素の配列に応じて配列されている。各貫通孔は、画素を形成するための蒸着材料が通る通路である。蒸着マスクを形成するための材料には、例えば鉄ニッケル系合金製の金属薄板が用いられる。
【0003】
金属薄板から蒸着マスクを製造する際には、まず、金属薄板の表面にレジスト層を形成し、次いで、レジスト層からレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンを用いたウェットエッチングによって金属薄板に複数の貫通孔が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-119260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、貫通孔に進入した蒸着材料の一部は、貫通孔を画定する壁部に付着する。貫通孔の深さが深いほど壁部に付着する蒸着材料が多くなり、かつ、蒸着対象に形成された蒸着パターンのうち、中央部の厚さと外縁部の厚さとの差が大きくなる。そのため、蒸着パターンにおける厚さのばらつきを抑える観点では、蒸着マスクの厚さが薄いことが求められる。一方で、蒸着マスクの厚さを薄くすることは蒸着マスクにおける機械的強度の低下を生じさせ、これによって貫通孔が変形しやすくなる。そのため、蒸着マスクにおける機械的な強度の低下を抑えること、および、蒸着マスクを用いて形成した蒸着パターンの厚さにおけるばらつきを抑えることの両立を可能とする蒸着マスクが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、表面と、前記表面とは反対側の面である裏面と、複数のマスク孔であって、各マスク孔の第1開口が前記表面に位置し、かつ、各マスク孔の第2開口が前記裏面に位置する前記複数のマスク孔と、を備える。前記表面は、複数の未エッチング部であって、各未エッチング部は正方格子の格子点上に位置する前記複数の未エッチング部を含む。各第1開口は、前記複数の未エッチング部に囲まれ、各第2開口は、前記第1開口よりも小さく、前記表面と対向する視点から見て前記第1開口内に位置する。各マスク孔は、前記蒸着マスクの厚さ方向において前記第1開口と前記第2開口との間に位置し、前記第2開口よりも小さく、かつ、前記表面と対向する視点から見て、前記第1開口内に位置する第3開口を有する。各第3開口は、長軸方向に沿って延びる形状を有し、前記長軸方向と直交する方向が短軸方向である。前記蒸着マスクの前記厚さ方向と前記長軸方向とによって規定される第1平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第1高さである。前記蒸着マスクの前記厚さ方向と前記短軸方向とによって規定される第2平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第2高さである。前記第1高さが前記第2高さよりも高く、前記第1高さが、0μmよりも大きく3μm以下であり、前記第2高さが、0μmよりも大きく2μm以下である。
【0007】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、金属板の表面に第1レジストパターンを形成すること、前記金属板の裏面に第2レジストパターンを形成すること、前記第2レジストパターンを用いて前記裏面から前記金属板をウェットエッチングすることによって、前記裏面に位置する第2開口を形成すること、および、前記第1レジストパターンを用いて前記表面から前記金属板をウェットエッチングすることによって、正方格子の格子点上に位置する未エッチング部によって囲まれ、かつ、前記表面に位置する第1開口と、前記金属板の厚さ方向において前記第1開口と前記第2開口との間に位置する第3開口を形成し、これによって前記金属板を貫通するマスク孔を形成すること、を含む。前記第2開口は、前記第1開口よりも小さく、かつ、前記表面と対向する視点から見て前記第1開口内に位置し、前記第3開口は、前記第2開口よりも小さく、かつ、前記表面と対向する視点から見て、前記第1開口内に位置する。前記第3開口は、長軸方向に沿って延びる形状を有し、前記長軸方向と直交する方向が短軸方向である。前記金属板の前記厚さ方向と前記長軸方向とによって規定される第1平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第1高さである。前記金属板の前記厚さ方向と前記短軸方向とによって規定される第2平面に沿う断面において、前記第2開口と前記第3開口との間の距離が、第2高さである。前記第1高さが前記第2高さよりも高く、前記第1高さが、0μmよりも大きく3μm以下であり、前記第2高さが、0μmよりも大きく2μm以下である。
【0008】
上記蒸着マスクによれば、第1高さが第2高さよりも高く、かつ、第1高さおよび第2高さが上述した範囲内に含まれるから、蒸着マスクの機械的な強度の低下が抑えられる。また、第3開口の周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることが抑えられるから、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきが抑えられる。
【0009】
上記蒸着マスクでは、前記正方格子において、第1対角線が延びる方向が第1対角方向であり、前記正方格子において、前記第1対角線に直交する第2対角線が延びる方向が第2対角方向であり、前記長軸方向は、前記第1対角方向に平行であり、前記短軸方向は、前記第2対角方向に平行であってもよい。
【0010】
上記蒸着マスクおよび蒸着マスクの製造方法によれば、第3開口の長軸と短軸とがそれぞれ正方格子の対角線に平行である。そのため、第3開口の長軸および短軸と正方格子との間に所定の規則が存在しない場合に比べて、蒸着マスクの厚さ方向に直交する平面において、マスク孔間の距離にばらつきが生じにくい。これにより、複数のマスク孔が位置する領域での機械的な強度のばらつきが生じにくい。このように、複数のマスク孔が位置する領域での機械的な強度のばらつきが抑えられるから、蒸着マスクの一部に応力が集中しにくい。
【0011】
上記蒸着マスクにおいて、前記長軸方向は、前記第1対角方向に沿い、前記短軸方向は、前記第2対角方向に沿ってもよい。
上記蒸着マスクによれば、複数のマスク孔が位置する領域において複数のマスク孔が等配されるから、蒸着マスクの厚さ方向に直交する平面において、マスク孔間の距離にばらつきがさらに生じにくい。そのため、複数のマスク孔が位置する領域での機械的な強度のばらつきがさらに抑えられるから、蒸着マスクの一部に応力がさらに集中しにくい。
【0012】
上記蒸着マスクにおいて、各未エッチング部は、前記第1対角線を対称軸とする線対称な形状を有してもよい。
上記蒸着マスクによれば、複数の第1開口によって囲まれる未エッチング部が第1対角線を対称軸とする線対称な形状を有する。そのため、未エッチング部が不規則な形状を有する場合に比べて、未エッチング部が第3開口に到達する蒸着材料の量を減らす割合が第3開口間においてばらつくことが抑えられる。結果として、蒸着対象に形成された蒸着パターン間において蒸着パターンの厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0013】
上記蒸着マスクにおいて、各マスク孔は、前記第1開口から前記第3開口に向けて先細る形状を有した大孔部を含み、前記第1平面に沿う前記断面において、前記第1開口の縁と前記第3開口の縁とを最短距離で結ぶ第1直線と、前記第3開口を含む平面に沿う第1基準線とが形成する角度が第1角度であり、前記第2平面に沿う前記断面において、前記第1開口の前記縁と前記第3開口の前記縁とを最短距離で結ぶ第2直線と、前記第3開口を含む前記平面に沿う第2基準線とが形成する角度が第2角度であり、前記第1角度が43°以上52°以下であり、前記第2角度が39°以上53°以下であってもよい。
【0014】
上記蒸着マスクによれば、第1角度と第2角度との差が13°以下であるから、第3開口の周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることが抑えられる。そのため、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきがさらに抑えられる。
【0015】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1角度から前記第2角度を減算した差分値の絶対値が、4°以下であってもよい。
上記蒸着マスクによれば、第1角度から第2角度を減算した差分値の絶対値が4°以下であるから、第3開口の周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることがさらに抑えられる。そのため、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきがさらに抑えられる。
【0016】
上記蒸着マスクにおいて、前記蒸着マスクの厚さにおける最大値が、15μm以上25μm以下であってもよい。
上記蒸着マスクによれば、蒸着マスクを貫通するマスク孔の長さが25μm以下の範囲内に含まれるから、マスク孔を画定する壁部に蒸着材料が付着しにくい。
【0017】
上記蒸着マスクにおいて、1インチ当たりに含まれる前記マスク孔の個数が、400個以上600個以下であってもよい。
上記蒸着マスクによれば、高精細な蒸着パターンを形成することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
上記蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法によれば、蒸着マスクにおける機械的な強度の低下を抑え、かつ、蒸着マスクを用いて形成した蒸着パターンの厚さにおけるばらつきを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、蒸着マスクを示す斜視図である。
図2図2は、蒸着マスクの表面と対向する視点から見た蒸着マスクを示す平面図である。
図3図3は、蒸着マスクの表面と対向する視点から見た第3開口を示す平面図である。
図4図4は、蒸着マスクの裏面と対向する視点から見た蒸着マスクを示す平面図である。
図5図5は、図2のV‐V線に沿う構造を示す断面図である。
図6図6は、図2のVI‐VI線に沿う構造を示す断面図である。
図7図7は、正方格子に対する第3開口の位置を説明するための平面図である。
図8図8は、図2が示す平面構造の一部を示す拡大図である。
図9図9は、図2のV‐V線に沿う構造を示す断面図である。
図10図10は、図2のVI‐VI線に沿う構造を示す断面図である。
図11図11は、蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状を示す平面図である。
図14図14は、第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状における第1変更例を示す平面図である。
図15図15は、第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状における第2変更例を示す平面図である。
図16図16は、蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図である。
図17図17は、蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図である。
図19図19は、蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図である。
図20図20は、各実施例および各比較例の蒸着マスクを製造するための第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状を示す平面図である。
図21図21は、各実施例および各比較例の蒸着マスクを製造するための第2レジストマスクが備える第2マスク孔の寸法を示す表である。
図22図22は、実施例4および比較例4の蒸着マスクを製造するための第2レジストマスクにおける第2マスク孔の配置を説明するための平面図である。
図23図23は、各比較例の蒸着マスクを製造するための第1レジストマスクが備える第1マスク孔の形状を示す平面図である。
図24図24は、各実施例の蒸着マスクを製造するための第1レジストマスクが備える第1マスク孔の形状を示す平面図である。
図25図25は、各実施例および各比較例の蒸着マスクを製造するための第1レジストマスクが備える第1マスク孔の寸法、および、突出部の面積を示す表である。
図26図26は、各実施例および各比較例の蒸着マスクにおいて、マスク孔の寸法を測定した位置を説明するための平面図である。
図27図27は、各実施例の蒸着マスクに対する評価結果を示す表である。
図28図28は、各比較例の蒸着マスクに対する評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図28を参照して、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法を説明する。
[蒸着マスク]
図1から図10を参照して、蒸着マスクを説明する。
【0021】
図1が示すように、蒸着マスク10は、表面10Fと、表面10Fとは反対側の面である裏面10Rと、複数のマスク孔11とを備えている。各マスク孔11は、蒸着マスク10の厚さ方向において蒸着マスク10を貫通している。各マスク孔11は、蒸着対象に蒸着パターンを形成するための蒸着材料の通路である。蒸着マスク10は、マスク領域10R1と周辺領域10R2とを備えている。マスク領域10R1には、複数のマスク孔11が位置している。一方で、周辺領域10R2には、マスク孔11が位置していない。
【0022】
蒸着マスク10の厚さTにおける最大値は、15μm以上25μm以下であってよい。蒸着マスクを貫通するマスク孔の長さが25μm以下の範囲内に含まれるから、マスク孔を画定する壁部に蒸着材料が付着しにくい。なお、周辺領域10R2の厚さにおける最大値は、15μm以上25μm以下であってよい。これに対して、マスク領域10R1の厚さにおける最大値は、15μm以上25μm以下であってもよいし、15μm未満であってもよい。
【0023】
蒸着マスク10において、1インチ当たりに含まれるマスク孔11の個数が、400個以上600個以下であってよい。これにより、蒸着マスク10を用いて蒸着対象に蒸着パターンを形成した際に、高精細な蒸着パターンを形成することが可能である。
【0024】
図2は、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見た蒸着マスク10の平面構造を示している。
図2が示すように、各マスク孔11の第1開口11Aが蒸着マスク10の表面10Fに位置し、かつ、各マスク孔11の第2開口11Bが蒸着マスク10の裏面10Rに位置している。
【0025】
蒸着マスク10の表面10Fは、複数の未エッチング部10Aを含んでいる。各未エッチング部10Aは正方格子の格子点上に位置している。各第1開口11Aは、複数の未エッチング部10Aに囲まれている。図2において、各第1開口11Aは、4つの未エッチング部10Aに囲まれている。各第2開口11Bは、第1開口11Aよりも小さい。蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、第2開口11Bは第1開口11A内に位置している。
【0026】
各マスク孔11は、第3開口11Cを有している。第3開口11Cは、蒸着マスク10の厚さ方向において第1開口11Aと第2開口11Bとの間に位置している。第3開口11Cは、第2開口11Bよりも小さく、かつ、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、第1開口11A内に位置している。そのため、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から蒸着マスク10を見た場合には、マスク孔11の第3開口11Cが視認される一方で、第2開口11Bは視認されない。各第3開口11Cは、長軸方向DL(図3参照)に沿って延びる形状を有している。長軸方向DLと直交する方向が短軸方向DS(図3参照)である。
【0027】
図3は、第3開口11Cの形状を示す平面図である。
図3が示すように、第3開口11Cは長軸ALと短軸ASとを有している。長軸ALが延びる方向が上述した長軸方向DLであり、かつ、短軸ASが延びる方向が上述した短軸方向DSである。
【0028】
第3開口11Cは、上述したように長軸方向DLに沿って延びる形状を有している。図3が示す例では、第3開口11Cは略長方形状であって、長方形が有する各角部が同一の曲率を有した形状を有している。各角部の曲率中心は、第3開口11C内に位置している。なお、第3開口11Cは、長軸方向DLに沿って延びる形状を有していればよいから、第3開口11Cは、例えば長方形状を有してもよいし、楕円形状を有してもよい。あるいは、第3開口11Cは、2n角形状を有してもよく、この場合には、nは2以上である。
【0029】
なお、本実施形態の蒸着マスク10では、図2が示すように、互いに隣り合う第3開口11Cにおいて、長軸方向DLが互いに直交し、かつ、短軸方向DSが互いに直交するように、複数の第3開口11Cが並んでいる。
【0030】
図4は、蒸着マスク10の裏面10Rと対向する視点から見た蒸着マスク10の平面構造を示している。
図4が示すように、各マスク孔11の第2開口11Bは、蒸着マスク10の裏面10Rに位置している。各第2開口11Bは、その第2開口11Bを取り囲む第2開口11Bから離れている。第2開口11Bの形状は、第3開口11Cの形状に略相似である。
【0031】
図5および図6は、蒸着マスク10の断面構造を示している。このうち、図5図2が示すV‐V線に沿う断面を示している。これに対して、図6図2が示すVI‐VI線に沿う断面を示している。
【0032】
図5が示すように、蒸着マスク10の厚さ方向DTと長軸方向DLとによって規定される平面が第1平面である。第1平面は、第3開口11Cの長軸ALを含んでいる。第1平面に沿う断面において、第2開口11Bと第3開口11Cとの間の距離が、第1高さH1である。第1高さH1は、0μmよりも大きく3μm以下である。
【0033】
図6が示すように、蒸着マスク10の厚さ方向DTと短軸方向DSとによって規定される平面が第2平面である。第2平面は、第3開口11Cの短軸ASを含んでいる。第2平面に沿う断面において、第2開口11Bと第3開口11Cとの間の距離が、第2高さH2である。第2高さH2は、0μmよりも大きく2μm以下である。上述した第1高さH1が、第2高さH2よりも高い。
【0034】
このように、本開示の蒸着マスク10では、第1高さH1および第2高さH2が以下の条件を満たす。
(条件1)第1高さH1が第2高さH2よりも高い。
(条件2)第1高さH1は、0μmよりも大きく3μm以下である。
(条件3)第2高さH2は、0μmよりも大きく2μm以下である。
【0035】
そのため、蒸着マスク10の機械的な強度の低下が抑えられる。また、第3開口11Cの周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることが抑えられる。そのため、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきが抑えられる。
【0036】
図7は、正方格子に対する第3開口11Cの位置における複数の例を模式的に示している。
図7が示すように、正方格子SGにおいて、第1対角線D1が延びる方向が第1対角方向DD1である。正方格子SGにおいて、第1対角線D1に直交する第2対角線D2が延びる方向が第2対角方向DD2である。
【0037】
第3開口11Cの長軸方向DLは、第1対角方向DD1に平行であり、かつ、第3開口11Cの短軸方向DSは、第2対角方向DD2に平行であってよい。図7には、実線で描かれた第3開口11C、破線で描かれた第3開口11C、および、一点鎖線で描かれた第3開口11Cが示されている。いずれの第3開口11Cについても、長軸方向DLは第1対角方向DD1に平行であり、かつ、短軸方向DSは第2対角方向DD2に平行である。
【0038】
第3開口11Cの長軸ALと短軸ASとが、それぞれ正方格子SGの対角線D1,D2に平行である。そのため、第3開口11Cの長軸ALおよび短軸ASと正方格子SGとの間に所定の規則が存在しない場合に比べて、蒸着マスク10の厚さ方向DTに直交する平面において、マスク孔11間の距離にばらつきが生じにくい。これにより、複数のマスク孔11が位置するマスク領域10R1での機械的な強度のばらつきが生じにくい。このように、マスク領域10R1での機械的な強度のばらつきが抑えられるから、蒸着マスク10の一部に応力が集中しにくい。
【0039】
図7が示す3つの第3開口11Cのうち、破線で描かれる第3開口11Cでは、長軸方向DLが、第1対角方向DD1に沿い、かつ、短軸方向DSは、第2対角方向DD2に沿っている。すなわち、破線で描かれる第3開口11Cでは、長軸ALが第1対角線D1の一部に一致し、かつ、短軸ASが第2対角線D2の一部に一致している。
【0040】
これにより、複数のマスク孔が位置する領域において複数のマスク孔が等配されるから、蒸着マスクの厚さ方向に直交する平面において、マスク孔間の距離にばらつきがさらに生じにくい。そのため、複数のマスク孔が位置する領域での機械的な強度のばらつきがさらに抑えられるから、蒸着マスクの一部に応力がさらに集中しにくい。
【0041】
図8は、図2が示す蒸着マスク10の平面構造における一部を拡大して示している。
図8が示すように、各未エッチング部10Aは、第1対角線D1を対称軸とする線対称な形状を有してもよい。これにより、未エッチング部10Aが不規則な形状を有する場合に比べて、未エッチング部10Aが第3開口11Cに到達する蒸着材料の量を減らす割合が第3開口11C間においてばらつくことが抑えられる。結果として、蒸着対象に形成された蒸着パターン間において蒸着パターンの厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0042】
図8が示す例では、未エッチング部10Aは、例えば略正方形状を有している。未エッチング部10Aの各辺は、曲率中心が未エッチング部10A外に位置するような曲率を有している。複数の未エッチング部10Aには、第1の大きさを有した第1の未エッチング部10Aと、第1の大きさよりも小さい第2の大きさを有した第2の未エッチング部10Aとが含まれている。正方格子において、第1の未エッチング部10Aと第2の未エッチング部10Aとが交互に並んでいる。
【0043】
図9は、図2が示すV‐V線に沿う断面構造を示している。
図9が示すように、各マスク孔11は、第1開口11Aから第3開口11Cに向けて先細る形状を有した大孔部11Lを含んでいる。各マスク孔11は、第2開口11Bから第3開口11Cに向けて先細る形状を有した小孔部11Sを含んでいる。大孔部11Lと小孔部11Sとの接続部が第3開口11Cである。
【0044】
上述した第1平面に沿う断面において、第1開口11Aの縁と第3開口11Cの縁とを最短距離で結ぶ直線が第1直線L1である。第3開口11Cを含む平面に沿う直線が、第1基準線RL1である。第1直線L1と第1基準線RL1とが形成する角度が第1角度θ1である。第1角度θ1は、43°以上52°以下であってよい。
【0045】
図10は、図2が示すVI‐VI線に沿う断面構造を示している。
図10が示すように、上述した第2平面に沿う前記断面において、第1開口11Aの縁と第3開口11Cの縁とを最短距離で結ぶ直線が、第2直線L2である。第3開口11Cを含む平面に沿う直線が、第2基準線RL2である。第2直線L2と第2基準線RL2とが形成する角度が第2角度θ2である。第2角度θ2は、39°以上53°以下であってよい。
【0046】
これにより、第1角度θ1と第2角度θ2との差が13°以下であるから、第3開口11Cの周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることが抑えられる。そのため、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきがさらに抑えられる。
【0047】
蒸着パターンの面内における厚さのばらつきをより抑える観点では、蒸着マスク10において、第1角度θ1から第2角度θ2を減算した差分値の絶対値が、4°以下であることが好ましい。
【0048】
[蒸着マスクの製造方法]
図11から図19を参照して、蒸着マスクの製造方法を説明する。
蒸着マスクの製造方法は、金属板の表面に第1レジストパターンを形成すること、金属板の裏面に第2レジストパターンを形成することを含んでいる。また、蒸着マスクの製造方法は、第2レジストパターンを用いて裏面から金属板をウェットエッチングすることによって、裏面に位置する第2開口を形成することを含んでいる。また、蒸着マスクの製造方法は、金属板を貫通するマスク孔を形成することを含んでいる。マスク孔を形成することでは、第1開口と第3開口とを形成し、これによって、金属板を貫通するマスク孔を形成する。各開口を形成することでは、第1レジストパターンを用いて表面から金属板をウェットエッチングすることによって、正方格子の格子点上に位置する未エッチング部によって囲まれ、かつ、表面に位置する第1開口を形成する。これによって、金属板の厚さ方向において第1開口と第2開口との間に位置する第3開口を形成する。以下、図面を参照して、蒸着マスクの製造方法をより詳しく説明する。
【0049】
図11が示すように、蒸着マスク10を形成する際には、まず、蒸着マスク10を形成するための金属板10Mを準備する。金属板10Mは、例えば、鉄ニッケル系合金から形成される。鉄ニッケル合金は、例えば、36質量%のニッケルを含むことが可能である。鉄ニッケル系合金は、インバーであってよい。また、金属板10Mは、鉄ニッケルコバルト系合金から形成されてもよい。鉄ニッケルコバルト系合金は、例えば、32質量%のニッケルと4質量%以上5質量%以下のコバルトを含むことが可能である。鉄ニッケルコバルト系合金合金は、スーパーインバーであってよい。金属板10Mの厚さは、例えば15μm以上25μm以下であってよい。これにより、蒸着マスク10を形成するための金属板に対するウェットエッチングが行いやすくなる。金属板10Mは、表面10MFと、表面10MFに対向する裏面10MRとを含んでいる。
【0050】
次いで、金属板10Mの表面10MFに第1レジスト層21Fを形成し、金属板10Mの裏面10MRに第2レジスト層21Rを形成する。各レジスト層21F,21Rは、例えばネガ型のレジスト材料によって形成される。なお、各レジスト層21F,21Rは、ポジ型のレジスト材料によって形成されてもよい。各レジスト層21F,21Rは、ドライフィルムレジストの貼り付けによって形成される。各レジスト層21F,21Rは、レジスト材料を含む塗液の塗布によって形成されてもよい。なお、ドライフィルムレジストの厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0051】
図12が示すように、レジスト層21F,21Rに対する露光と現像とを行うことによって、レジストマスク23F,23Rを形成する。この際に、第1レジスト層21Fの露光および現像によって、金属板10Mの表面10MFに第1レジストマスク23Fを形成する。第2レジスト層21Rの露光および現像によって、金属板10Mの裏面10MRに第2レジストマスク23Rを形成される。
【0052】
第1レジストマスク23Fは、第1マスク孔23FAを有している。第1マスク孔23FAは、蒸着マスク10のマスク孔11における大孔部11Lを形成するための孔である。第2レジストマスク23Rは、第2マスク孔23RAを有している。第2マスク孔23RAは、蒸着マスク10のマスク孔11における小孔部11Sを形成するための孔である。
【0053】
図13は、第2レジストマスク23Rと対向する視点から見た第2レジストマスク23Rの平面構造を示している。
図13が示すように、第2レジストマスク23Rにおいて、第2マスク孔23RAは、例えば1つの方向に沿って延びる8角形状を有してよい。第2マスク孔23RAの形状が8角形状であることによって、図3を用いて先に説明したように、略長方形状を有した第3開口11Cを形成することが可能である。
【0054】
なお、第2マスク孔23RAの形状は、例えば図14が示すように1つの方向に沿って延びる12角形状を有してもよい。あるいは、第2マスク孔23RAの形状は、例えば図15が示すように1つの方向に沿って延びる16角形状を有してもよい。第2マスク孔23RAの形状における角の数が多いほど、第2レジストマスク23Rを用いたウェットエッチングによって形成された第3開口11Cの形状を楕円形状に近付けることが可能である。
【0055】
図16が示すように、金属板10Mにマスク孔11を形成する際には、まず、第2レジストマスク23Rを用いて、金属板10Mの裏面10MRから金属板10Mをウェットエッチングする。金属板10Mをエッチングする前に、金属板10Mの表面10MFを覆う第1保護層24Fを形成する。これにより、金属板10Mの表面10MFが裏面10MRとともにエッチングされることがない。金属板10Mが裏面10MRからエッチングされることによって、金属板10Mの裏面10MRに第2レジストマスク23Rが有する第2マスク孔23RAに応じた形状を有する第2開口A2(図19参照)が形成される。また、金属板10Mに小孔部10MSが形成される。
【0056】
金属板10Mがインバーから形成される場合には、インバーをエッチングすることが可能なエッチング液、すなわち酸性のエッチング液を用いることができる。酸性のエッチング液は、例えば、塩化第二鉄液、過塩素酸第二鉄液、および、過塩素酸第二鉄液と塩化第二鉄液との混合液のいずれかに対して、過塩素酸、塩酸、硫酸、蟻酸、および、酢酸のいずれかを混合した溶液であってよい。金属板10Mをエッチングする方式には、ディップ式、スプレー式、および、スピン式のいずれかを用いることができる。第1保護層24Fは、エッチング液によってエッチングされない材料によって形成されていればよい。なお、金属板10Mがスーパーインバーから形成される場合にも、金属板10Mがインバーから形成される場合と同様のエッチング液を用いることが可能である。
【0057】
図17が示すように、第1レジストマスク23Fを用いて、金属板10Mの表面10MFから金属板10Mをウェットエッチングする。金属板10Mをエッチングする前に、第1保護層24Fを第1レジストマスク23Fから除去する。また、金属板10Mをエッチングする前に、第2レジストマスク23Rを除去する。次いで、金属板10Mの裏面10MRを覆う第2保護層24Rを裏面10MR上に形成する。これにより、金属板10Mの裏面10MRが表面10MFとともにエッチングされることがない。
【0058】
なお、金属板10Mの裏面10MRに形成された第2レジストマスク23Rは除去されなくてもよい。この場合には、第2保護層24Rは、第2レジストマスク23R上に形成されればよい。
【0059】
図18が示すように、金属板10Mが表面10MFからエッチングされることによって、第1レジストマスク23Fが有する第1マスク孔23FAに応じた形状を有する第1開口A1が形成される。また、金属板10Mに大孔部10MLが形成される。大孔部10MLは、金属板10Mの表面10MFから裏面10MRに向かう方向に沿って形成されることによって、金属板10Mに形成された小孔部10MSに接続される。これにより、金属板10Mの厚さ方向における第1開口A1と第2開口A2との間には、第2開口A2が有する形状に略相似な形状を有した第3開口A3が形成される。
【0060】
金属板10Mがインバーから形成される場合には、金属板10Mを裏面10MRからエッチングする場合と同様に、インバーをエッチングすることが可能なエッチング液、すなわち酸性のエッチング液を用いることができる。酸性のエッチング液は、例えば、塩化第二鉄液、過塩素酸第二鉄液、および、過塩素酸第二鉄液と塩化第二鉄液との混合液のいずれかに対して、過塩素酸、塩酸、硫酸、蟻酸、および、酢酸のいずれかを混合した溶液であってよい。金属板10Mをエッチングする方式には、ディップ式、スプレー式、および、スピン式のいずれかを用いることができる。第2保護層24Rは、エッチング液によってエッチングされない材料によって形成されていればよい。
【0061】
図19が示すように、金属板10Mの表面10MFから第1レジストマスク23Fが除去される。また、金属板10Mの裏面10MRから第2保護層24Rが除去される。金属板10Mから所定の長さを有した部分が断裁されることによって、蒸着マスク10が形成される。なお、金属板10Mの裏面10MRを覆う第2保護層24Rが形成される際に、第2レジストマスク23Rが金属板10Mの裏面10Rから取り除かれない場合には、金属板10Mの裏面10MRから第2保護層24R、および、第2レジストマスク23Rが除去される。
【0062】
なお、金属板10Mの表面10MFが蒸着マスク10の表面10Fに対応する。金属板10Mの裏面10MRが蒸着マスク10の裏面10Rに対応する。金属板10Mの大孔部10MLが、蒸着マスク10のマスク孔11が備える大孔部11Lに対応する。金属板10Mの小孔部10MSが、蒸着マスク10のマスク孔11が備える小孔部11Sに対応する。金属板10Mの第1開口A1がマスク孔11の第1開口11Aに対応し、金属板10Mの第2開口A2がマスク孔11の第2開口11Bに対応し、かつ、金属板10Mの第3開口A3がマスク孔11の第3開口11Cに対応する。
【0063】
[実施例]
図20から図28を参照して、実施例および比較例を説明する。各実施例および各比較例の製造方法を説明する前に、実施例1および比較例1の蒸着マスクを製造する際に用いたレジストマスクを説明する。
【0064】
[レジストマスク]
図20から図25を参照して、各実施例および各比較例において形成したレジストマスクを説明する。
【0065】
図20は、第2レジストマスク23Rが備える第2マスク孔23RAの形状を示している。
図20が示すように、各実施例および各比較例の蒸着マスクを製造する際には、8角形状を有した第2マスク孔23RAを第2レジスト層に形成した。この際に、各実施例および各比較例において、第2マスク孔23RAの縁における各第1辺S1から第8辺S8の長さを図21に記載のように設定した。1つの第2マスク孔23RAは、蒸着マスクが備える1つの画素Pに対応している。図21に記載の画素サイズは、画素Pにおける一辺の長さである。
【0066】
なお、実施例1から3、および、比較例1から3では、第2マスク孔の長軸が、第2レジストマスクにおいて設定される正方格子の第1対角線に一致し、かつ、第2マスク孔の短軸が、第2レジストマスクにおいて設定される正方格子の第2対角線に一致するように、複数の第2マスク孔を配置した。また、互いに隣り合う2つの第2マスク孔において、第2マスク孔の長軸が互いに直交するように、複数の第2マスク孔を配置した。なお、第2レジストマスクにおいて設定される正方格子は、蒸着マスクにおける画素Pの配列に一致する。
【0067】
これに対して、実施例4および比較例4では、図22が示すように、第2マスク孔の長軸が第1対角線に平行である一方で、第1対角線には一致せず、かつ、第2マスク孔の短軸が第2対角線に平行である一方で、第2対角線には一致しないように、複数の第2マスク孔を配置した。
【0068】
すなわち、図22が示すように、第1方向DR1と、第1方向DR1に直交する第2方向DR2とにおいて、第2マスク孔23RAを並べた。この際に、第2方向DR2における第2マスク孔23RA間の距離を一定の距離である第3距離DS3に設定した。なお、第3距離DS3を14.7μmに設定した。これに対して、第1方向DR1における第2マスク孔23RA間の距離について、第1方向DR1および第2方向DR2において、第1距離DS1と、第1距離DS1よりも小さい第2距離DS2とが交互に並ぶように、複数の第2マスク孔23RAを並べた。
【0069】
なお、第1距離DS1を16.4μmに設定し、かつ、第2距離DS2を13.0μmに設定した。すなわち、第1距離DS1から第2距離DS2を減算した差分値を3.4μmに設定した。そして、図22に示される3列の第2マスク孔23RAのうち、第2方向DR2における中央に位置する第2マスク孔23RAを、第2方向DR2における両端に位置する列に含まれる第2マスク孔23RAに対して、第1方向DR1において、1.7μmずらした。これにより、第2レジストマスク23Rにおいて、第2マスク孔の長軸と第1対角線との間の距離を1.2μmに設定し、かつ、第2マスク孔の短軸と第2対角線との間の距離を1.2μmに設定した。
【0070】
図23は、比較例の蒸着マスクを製造するための第1レジストマスク23Fが備える第1マスク孔23FAの形状を示している。
図23が示すように、第1レジストマスク23Fが備える第1マスク孔23FAの縁は、第1レジストマスク23Fが広がる平面と対向する視点から見て、正方形状を有している。第1マスク孔23FAの縁は、第1マスク孔23FAと対向する第2マスク孔23RAの縁に外接している。第1マスク孔23FAの縁における一辺の長さはLである。なお、各比較例において、一辺の長さLを図25に記載のように設定した。第1マスク孔23FAの各角部は、曲率中心が第1マスク孔23FA内に位置するような曲率を有している。角部の曲率半径は、1μm以上3μm以下の範囲内に含まれる。
【0071】
図24は、実施例の蒸着マスクを製造するための第1レジストマスク23Fが備える第1マスク孔23FAの形状を示している。
図24が示すように、第1レジストマスク23Fが備える第1マスク孔23FAの縁は、第1レジストマスク23Fが広がる平面と対向する視点から見て、本体部FA1と、4つの突出部とを備えている。本体部FA1は、比較例の蒸着マスクを製造するための第1レジストマスク23Fが備える第1マスク孔23FAと同一の形状を有している。すなわち、本体部FA1の外形は、第1レジストマスク23Fが広がる平面と対向する視点から見て、正方形状を有している。本体部FA1の外形は、第1マスク孔23FAと対向する第2マスク孔23RAの縁に外接している。本体部FA1の外形における一辺の長さはLである。なお、各実施例において、一辺の長さLを図25に記載のように設定した。本体部FA1の各角部は、曲率中心が第1マスク孔23FA内に位置するような曲率を有している。角部の曲率半径は、1μm以上3μm以下の範囲内に含まれる。
【0072】
第1マスク孔23FAは、第1突出部FA2A、第2突出部FA2B、第3突出部FA2C、および、第4突出部FA2Dを備えている。本体部FA1の1つの角部に対して1つの突出部が位置している。各突出部は、本体部FA1の外形よりも外側に向けて突出している。なお、第1突出部FA2Aおよび第3突出部FA2Cは、蒸着マスクの第3開口における長軸方向において対向するように位置する突出部である。また、第2突出部FA2Bおよび第4突出部FA2Dは、蒸着マスクの第3開口における短軸方向において対向するように位置する突出部である。
【0073】
なお、実施例1から4では、本体部FA1の長軸が、第1レジストマスクにおいて設定される正方格子の第1対角線に一致し、かつ、本体部FA1の短軸が、第1レジストマスクにおいて設定される正方格子の第2対角線に一致するように、複数の第1マスク孔23FAを配置した。また、比較例1から4では、第1マスク孔23FAの長軸が、第1レジストマスクにおいて設定される正方格子の第1対角線に一致し、かつ、第1マスク孔23FAの短軸が、第1レジストマスクにおいて設定される正方格子の第2対角線に一致するように、複数の第1マスク孔23FAを配置した。なお、第1レジストマスク23Fにおいて設定される正方格子は、蒸着マスクにおける画素Pの配列に一致する。
【0074】
[実施例1]
18μmの厚さを有したインバー製の金属板を準備した。次いで、金属板の表面に15μmの厚さを有したネガ型のドライフィルムレジストを貼り付けた。また、金属板の裏面に、5μmの厚さを有したネガ型のドライフィルムレジストを貼り付けた。次いで、各ドライフィルムレジストに対して露光および現像を行うことによって、金属板の表面に第1レジストマスクを形成し、かつ、金属板の裏面に第2レジストマスクを形成した。第1レジストマスクおよび第2レジストマスクの形状を、図21および図25に記載のように設定した。
【0075】
続いて、第1レジストマスクを覆う第1保護層を、エッチング液に対する耐性を有し、かつ、アルカリ液に対する耐性を有した粘着シートを用いて形成した。なお、粘着シートはポリプロピレン製の基材と粘着層とを含む。そして、塩化第二鉄液を用いて金属板をウェットエッチングすることによって、金属板の裏面に第2開口が位置する小孔部を金属板に形成した。次に、第2レジストマスクを金属板から除去した後に、金属板の裏面を覆い、かつ、小孔部を埋める第2保護層を、エッチング液に対する耐性を有し、かつ、アルカリ溶解性を有した紫外線硬化性樹脂を用いて形成した。第2保護層を形成する際には、金属板の裏面に紫外線硬化性樹脂を塗布した後に、紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射することによって紫外線硬化性樹脂を硬化させた。そして、第1保護層を金属板から剥がした後に塩化第二鉄液を用いて金属板をエッチングすることによって、金属板の表面に第1開口が位置し、かつ、第3開口において小孔部に接続された大孔部を金属板に形成した。その後、金属板から第2保護層を剥がすことによって、実施例1の蒸着マスクを得た。
【0076】
[実施例2]
実施例1において、金属板の厚さを20μmに変更し、第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状、および、1インチ当たりのマスク孔の数を図21に記載のように変更した。また、第1マスク孔の本体部における長さL、および、各突出部の面積を図25に記載ように変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の蒸着マスクを得た。
【0077】
[実施例3]
実施例1において、第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状、および、1インチ当たりのマスク孔の数を、図21に記載のように変更した。また、第1マスク孔の本体部における長さL、および、各突出部の面積を図25に記載のように変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の蒸着マスクを得た。
【0078】
[実施例4]
実施例1において、第2レジストマスクが備える第2マスク孔の形状、および、1インチ当たりのマスク孔の数を、図21に記載のように変更し、かつ、第2マスク孔の配置を図22に記載のように変更した。また、第1マスク孔の本体部における長さL、および、各突出部の面積を図25に記載のように変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例4の蒸着マスクを得た。
【0079】
[比較例1]
実施例1において、第1マスク孔が突出部を有しない以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の蒸着マスクを得た。
【0080】
[比較例2]
実施例2において、第1マスク孔が突出部を有しない以外は、実施例2と同様の方法によって、比較例2の蒸着マスクを得た。
【0081】
[比較例3]
実施例3において、第1マスク孔が突出部を有しない以外は、実施例3と同様の方法によって、比較例3の蒸着マスクを得た。
【0082】
[比較例4]
実施例4において、第1マスク孔が突出部を有しない以外は、実施例4と同様の方法によって、比較例4の蒸着マスクを得た。
【0083】
[評価方法]
[マスク孔の形状]
各実施例および各比較例の蒸着マスクについて、マスク孔の各部における寸法を測定した。この際に、共焦点レーザー顕微鏡(OLS‐4000、オリンパス(株)製)を用いて、蒸着マスクが備えるマスク孔において、第1高さH1、第2高さH2、第1角度θ1、および、第2角度θ2を測定した。この際に、図26が示すの第1位置PA、第2位置PB、第3位置PC、および、第4位置PDの各々においてマスク孔の寸法を測定した。第1位置PAおよび第3位置PCは、蒸着マスクの厚さ方向と第3開口11Cの長軸ALとによって規定される第1平面に含まれる。これに対して、第2位置PBおよび第4位置PDは、蒸着マスクの厚さ方向と第3開口11Cの短軸ASとによって規定される第2平面に含まれる。
【0084】
なお、実施例1から3および比較例1から3では、1つのマスク孔において、第1高さH1および第1角度θ1について第1位置PAでの測定値と第3位置PCでの測定値との平均値を算出した。そして、第1高さH1の平均値を各マスク孔での第1高さH1に設定し、かつ、第1角度θ1の平均値を各マスク孔での第1角度θ1に設定した。
【0085】
また、1つのマスク孔において、第2高さH2および第2角度θ2について、第2位置での測定値と第4位置での測定値との平均値を算出した。そして、第2高さH2の平均値を各マスク孔での第2高さH2に設定し、かつ、第2角度θ2の平均値を各マスク孔での第2角度θ2に設定した。また、各蒸着マスクが備える3つのマスク孔において第1高さH1、第2高さH2、第1角度θ1、および、第2角度θ2を上述した方法で算出した。そして、3つのマスク孔での第1高さH1の平均値を各蒸着マスクでの第1高さH1に設定し、かつ、3つのマスク孔での第2高さH2の平均値を各蒸着マスクでの第2高さH2に設定した。また、3つのマスク孔での第1角度θ1の平均値を各蒸着マスクでの第1角度θ1に設定し、かつ、3つのマスク孔での第2角度θ2の平均値を各蒸着マスクでの第2角度θ2に設定した。
【0086】
実施例4および比較例4では、1つのマスク孔において、第1位置PAおよび第3位置PCのそれぞれについて第1高さH1および第1角度θ1を測定した。また、1つのマスク孔において、第2位置PBおよび第4位置PDのそれぞれについて第2高さH2および第2角度θ2を測定した。また、各蒸着マスクが備える3つのマスク孔において第1高さH1、第2高さH2、第1角度θ1、および、第2角度θ2を測定した。そして、3つのマスク孔での第1高さH1の平均値を各蒸着マスクでの第1高さH1に設置し、かつ、3つのマスク孔での第2高さH2の平均値を各蒸着マスクでの第2高さH2に設定した。また、3つのマスク孔での第1角度θ1の平均値を各蒸着マスクでの第1角度θ1に設定し、かつ、3つのマスク孔での第2角度θ2の平均値を各蒸着マスクでの第2角度θ2に設定した。
【0087】
[蒸着マスクの機械的強度]
各実施例および各比較例の蒸着マスクの機械的強度を以下の方法で評価した。
蒸着マスクの製造工程では、蒸着マスクに対応する帯状部と、帯状部を取り囲み、かつ、帯状部を支持する枠状部とが、ウェットエッチングによって金属板に形成される。次いで、帯状部を枠状部から取り外すことによって、帯状部から蒸着マスクが得られる。その後、得られた蒸着マスクは、出荷ケースに収納される。
【0088】
本開示では、枠状部から帯状部が取り外された後、出荷ケースに収納されるまでの一連のハンドリング処理において、蒸着マスクに変形が生じるか否かによって蒸着マスクの機械的強度を判断した。この際に、前述した一連のハンドリング処理において変形が生じた水準を「×」に設定し、かつ、一連のハンドリング処理において変形が生じなかった水準を「○」に設定した。
【0089】
[膜厚のばらつき]
各実施例および各比較例の蒸着マスクについて、各蒸着マスクを用いて形成した蒸着パターンにおける膜厚のばらつきを以下の方法で評価した。なお、各蒸着パターンにおける膜厚の測定には、表面形状測定器(Dektak 6M、Veecо社製)を用いた。
【0090】
蒸着対象としてガラス基板を用い、かつ、蒸着パターンを形成するための蒸着材料として有機発光材料を用いた。各蒸着マスクを用いて、10行かつ10列で並ぶ蒸着パターンを形成した。そして、当該蒸着パターンのうち、中央に位置する6行かつ6列の蒸着パターンについて、膜厚のばらつきを算出した。この際に、各蒸着パターンの中央部における膜厚を測定し、当該膜厚を蒸着パターンの膜厚における最大値MMと見なした。また、各蒸着パターンの縁における4箇所の膜厚を測定し、4箇所の膜厚における最小値を蒸着パターンの膜厚における最小値Mmと見なした。なお、膜厚の最小値Mmを特定する際には、蒸着パターンの長軸方向に沿って延びる縁の2箇所において膜厚を測定し、かつ、蒸着パターンの短軸方向に沿って延びる縁の2箇所において膜厚を測定した。
【0091】
そして、以下の式(1)に基づき算出した膜厚のばらつきが5%以下である場合を膜厚のばらつきが抑えられた水準である「○」に設定し、かつ、膜厚のばらつきが5%を超える場合を膜厚のばらつきが抑えられていない水準である「×」に設定した。
100×{(MM-Mm)/(MM+Mm)}/2(%) …式(1)
【0092】
[評価結果]
図27および図28を参照して評価結果を説明する。
各実施例および各比較例の蒸着マスクにおいて、マスク孔の各部における寸法を測定した。なお、図27および図28において、実施例4‐1には、実施例4の蒸着マスクが備えるマスク孔の寸法のうち、第1位置PAでの測定結果および第2位置PBでの測定結果が記載されている。また、実施例4‐2には、実施例4の蒸着マスクが備えるマスク孔の寸法のうち、第3位置PCでの測定結果および第4位置PDでの測定結果が記載されている。また、比較例4‐1には、比較例4の蒸着マスクが備えるマスク孔の寸法のうち、第1位置PAでの測定結果および第2位置PBでの測定結果が記載されている。また、比較例4‐2には、比較例4の蒸着マスクが備えるマスク孔の寸法のうち、第3位置PCでの測定結果および第4位置PDでの測定結果が記載されている。
【0093】
図27が示すように、実施例1から実施例3の蒸着マスクでは、第1高さH1が3.0μm以下であることが認められた。また、実施例4の蒸着マスクでは、測定箇所に関わらず、第1高さH1が3.0μm以下であることが認められた。詳細には、実施例1から実施例4の蒸着マスクでは、第1高さH1が1.61μm以上2.93μm以下の範囲内に含まれることが認められた。
【0094】
実施例1から実施例3の蒸着マスクでは、第2高さH2が2.0μm以下であることが認められた。また、実施例4の蒸着マスクでは、測定箇所にかかわらず、第2高さH2が2.0μm以下であることが認められた。詳細には、実施例1から実施例4の蒸着マスクでは、第2高さH2が1.07μm以上1.65μm以下の範囲内に含まれることが認められた。
【0095】
実施例1から実施例4のいずれにおいても、第1高さH1が第2高さH2よりも高いことが認められた。第1高さH1から第2高さH2を減算した差分値が、0.51μm以上1.63μm以下の範囲内に含まれることが認められた。
【0096】
実施例1から実施例4の蒸着マスクでは、第1角度θ1が43°以上52°以下の範囲内に含まれることが認められた。詳細には、第1角度θ1が、43.3°以上51.5°以下の範囲内に含まれることが認められた。実施例1から実施例4の蒸着マスクでは、第2角度θ2が39°以上53°以下の範囲内に含まれることが認められた。詳細には、第2角度θ2が39.8°以上52.1°以下の範囲内に含まれることが認められた。
【0097】
また、実施例1から実施例4の蒸着マスクでは、第1角度θ1から第2角度θ2を減算した差分値の絶対値が、4°以下であることが認められた。詳細には、差分値の絶対値が、0.36°以上3.44°以下の範囲内に含まれることが認められた。
【0098】
これに対して、比較例1から比較例4の蒸着マスクでは、第1高さH1が3.0μmを超えることが認められた。比較例1から比較例4の蒸着マスクのうち、比較例1,3,4の蒸着マスクでは、第2高さH2が2.0μmを超えることが認められた。一方で、比較例2の蒸着マスクでは、第2高さH2が2.0μm以下であることが認められた。比較例1から比較例4の蒸着マスクでは、第1高さH1が第2高さよりも大きいことが認められた。
【0099】
比較例1から比較例4の蒸着マスクのうち、比較例1の蒸着マスクにおける第1角度θ1が43°以上52°以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、比較例2,3,4の蒸着マスクでは、第1角度θ1が52°を超えることが認められた。比較例1,2の蒸着マスクでは、第2角度θ2が39°以上53°以下の範囲内に含まれる一方で、比較例3,4の蒸着マスクでは、第2角度θ2が53°を超えることが認められた。
【0100】
また、比較例1,3,4の蒸着マスクでは、第1角度θ1から第2角度θ2を減算した差分値の絶対値が4°以下である一方で、比較例2の蒸着マスクでは、差分値の絶対値が4°を超えることが認められた。
【0101】
そして、実施例1から実施例4の蒸着マスクによれば、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきが5%以下であるから、膜厚のばらつきが抑えられた蒸着パターンを形成可能であることが認められた。これに対して、比較例1の蒸着マスクによれば、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきが5%を超えるから、膜厚のばらつきを有する蒸着パターンが形成されることが認められた。また、実施例1から実施例4、および、比較例1の蒸着マスクでは、上述した一連のハンドリング処理において蒸着マスクに変形が生じないことが認められた。
【0102】
これに対して、比較例2から比較例4の蒸着マスクには、一連のハンドリング処理において変形が生じたことが認められた。そのため、比較例2から比較例4の蒸着マスクでは、蒸着パターンの膜厚に関する評価を行わなかった。
【0103】
このように、蒸着マスクにおいて上述した条件1から条件3のすべてが満たされることによって、蒸着マスクにおける機械的な強度の低下が抑えられ、かつ、膜厚のばらつきが抑えられることが認められた。
【0104】
以上説明したように、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法における一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)上述した条件1から条件3を満たすから、蒸着マスク10の機械的な強度の低下が抑えられる。また、第3開口11Cの周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることが抑えられるから、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきがさらに抑えられる。
【0105】
(2)第3開口11Cの長軸ALと短軸ASとがそれぞれ正方格子SGの対角線D1,D2に平行である場合には、蒸着マスク10の厚さ方向DTに直交する平面において、マスク孔11間の距離にばらつきが生じにくい。これにより、マスク領域10R1での機械的な強度のばらつきが生じにくい。このように、マスク領域10R1での機械的な強度のばらつきが抑えられるから、蒸着マスク10の一部に応力が集中しにくい。
【0106】
(3)マスク領域10R1において複数のマスク孔11が等配される場合には、蒸着マスク10の厚さ方向DTに直交する平面において、マスク孔11間の距離にばらつきがさらに生じにくい。そのため、マスク領域10R1での機械的な強度のばらつきがさらに抑えられるから、蒸着マスク10の一部に応力がさらに集中しにくい。
【0107】
(4)複数の第1開口11Aによって囲まれる未エッチング部10Aが第1対角線D1を対称軸とする線対称な形状を有する場合には、未エッチング部10Aが第3開口11Cに到達する蒸着材料の量を減らす割合が第3開口11C間においてばらつくことが抑えられる。結果として、蒸着対象に形成された蒸着パターン間において蒸着パターンの厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0108】
(5)第1角度θ1と第2角度θ2との差が13°以下である場合には、第3開口11Cの周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることが抑えられる。そのため、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきがさらに抑えられる。
【0109】
(6)第1角度θ1から第2角度θ2を減算した差分値の絶対値が4°以下である場合には、第3開口11Cの周方向において、蒸着対象に対する蒸着材料の到達しやすさに差が生じることがさらに抑えられる。そのため、蒸着対象に形成された蒸着パターンの面内における厚さのばらつきがさらに抑えられる。
【0110】
(7)蒸着マスク10を貫通するマスク孔11の長さが25μm以下の範囲内に含まれるから、マスク孔11を画定する壁部に蒸着材料が付着しにくい。
(8)蒸着マスク10によれば、高精細な蒸着パターンを形成することが可能である。
【符号の説明】
【0111】
10…蒸着マスク
10A…未エッチング部
10F…表面
10R…裏面
11…マスク孔
11A…第1開口
11B…第2開口
11C…第3開口
SG…正方格子
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