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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095119
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】反射型投影スクリーン
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240703BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240703BHJP
   G03B 21/60 20140101ALI20240703BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
G03B21/60
G02F1/137 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212161
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】野田 里志
(72)【発明者】
【氏名】安原 寿二
【テーマコード(参考)】
2H021
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H021BA07
2H088EA32
2H088FA29
2H088GA10
2H088GA13
2H088HA02
2H088KA26
2H189AA04
2H189DA04
2H189DA07
2H189LA03
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】二重像に起因したボケを抑制する反射型投影スクリーンを提供する。
【解決手段】調光シートの裏面を貼り付けられた表面を備える透明基材11と、を備え、透明基材11の厚さは、調光シートよりも厚く、高分子分散型液晶は、少なくとも1種の二色性色素を含み、透明電極層の間に印加される電圧の変更によって、透明状態から散乱状態に可逆的に変わる反射型投影スクリーンであって、散乱状態における調光シートの表面である第1映像反射面の反射率がRsであり、透明基材11の裏面である第2映像反射面の反射率がRnであり、散乱状態における調光シートの透過率がTであり、Rd=T×Rn、(Rs+Rd)/Rs≦1.3を満たす。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの透明電極層と、前記透明電極層の間に位置する高分子分散型液晶と、を備える調光シートと、
前記調光シートの裏面を貼り付けられた表面を備える透明基材と、を備え、
前記透明基材の厚さは、前記調光シートよりも厚く、
前記高分子分散型液晶は、少なくとも1種の二色性色素を含み、
前記透明電極層の間に印加される電圧の変更によって、透明状態から散乱状態に可逆的に変わる反射型投影スクリーンであって、
前記散乱状態における前記調光シートの表面である第1映像反射面の反射率がRsであり、前記透明基材の裏面である第2映像反射面の反射率がRnであり、前記散乱状態における前記調光シートの透過率がTであり、
Rd=T×Rn、(Rs+Rd)/Rs≦1.3を満たす、
ことを特徴とする反射型投影スクリーン。
【請求項2】
前記散乱状態における前記調光シートの前記透過率が、0.1以下である
請求項1に記載の反射型投影スクリーン。
【請求項3】
前記散乱状態における前記調光シートの前記透過率が、0.05以下である
請求項2に記載の反射型投影スクリーン。
【請求項4】
前記散乱状態における前記第1映像反射面の反射率が、0.05以上である
請求項3に記載の反射型投影スクリーン。
【請求項5】
前記二色性色素は、黒色混合色素であり、
前記透明電極層は、銀電極層である
請求項3または4に記載の反射型投影スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光透過率を変更する反射型投影スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、透明樹脂のなかに分散された液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備える。一対の透明電極層間における駆動電圧の変化に応じて液晶化合物の配向状態が変わる。液晶化合物の配向状態が変わることによって、調光層が光を透過する透明状態と、調光層が光を散乱する散乱状態とに切り替わる。散乱状態の調光シートは、映像を投影される投影スクリーンに用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-184693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反射型投影スクリーンに備えられる調光シートの裏面は、ガラスや樹脂などの透明基材の表面に貼りつけられる。この場合、調光シートの表面は、反射型投影スクリーンにおいて観察者に向けて映像を反射する第1映像反射面として機能する。一方、透明基材の裏面もまた、透明基材と空気層との屈折率差に基づく第2映像反射面として機能する。結果として、上述した反射型投影スクリーンは、第1映像反射面による映像に第2映像反射面による映像を重ねた二重像を観察者に視認させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための反射型投影スクリーンは、2つの透明電極層と、前記透明電極層の間に位置する高分子分散型液晶と、を備える調光シートと、前記調光シートの裏面を貼り付けられた表面を備える透明基材と、を備え、前記透明基材の厚さは、前記調光シートよりも厚く、前記高分子分散型液晶は、少なくとも1種の二色性色素を含み、前記透明電極層の間に印加される電圧の変更によって、透明状態から散乱状態に可逆的に変わる反射型投影スクリーンである。そして、前記調光シートの表面である第1映像反射面の反射率がRsであり、前記透明基材の裏面である第2映像反射面の反射率がRnであり、前記調光シートの透過率がTであり、Rd=T×Rn、(Rs+Rd)/Rs≦1.3を満たす。
【0006】
上記反射型投影スクリーンによれば、第2映像反射面の反射による映像の視認が調光シートの吸収によって抑えられる。結果として、第1映像反射面の反射による映像が二重像に視認されることが抑えられる。
【0007】
上記反射型投影スクリーンは、前記散乱状態における前記調光シートの前記透過率が、0.1以下でもよい。この構成によれば、上述した効果が得られることの実効性が高まる。
【0008】
上記反射型投影スクリーンは、前記散乱状態における前記調光シートの前記透過率が、0.05以下でもよい。この構成によれば、上述した効果が得られることの実効性がさらに高まる。
【0009】
上記反射型投影スクリーンは、前記散乱状態における前記第1映像反射面の反射率が、0.05以上でもよい。この構成によれば、上述した効果が得られることの実効性が高まると共に、第1映像反射面の反射による映像のコントラストが高められる。
【0010】
上記反射型投影スクリーンにおいて、前記二色性色素は、黒色混合色素であり、前記透明電極層は、銀電極層でもよい。この構成によれば、二重像に起因したボケを抑え、かつコントラストを高めることが容易ともなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の反射型投影スクリーンは、二重像に起因したボケを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、反射型投影スクリーンを投影装置と共に示す構成図である。
図2図2は、反射型投影スクリーンの断面構成を示す断面図である。
図3図3は、調光シートの断面構成を示す部分断面である。
図4図4は、反射型投影スクリーンの評価形態を示す装置配置図である。
図5図5は、反射型投影スクリーンの評価映像を示す平面図である。
図6図6は、反射型投影スクリーンの光学作用を示す作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[反射型投影スクリーン10]
図1が示すように、反射型投影スクリーン10は、駆動装置51に接続される。駆動装置51は、反射型投影スクリーン10に、反射型投影スクリーン10を透明状態にするための電圧信号を入力する。駆動装置51は、反射型投影スクリーン10に、反射型投影スクリーン10を散乱状態にするための電圧信号を入力する。反射型投影スクリーン10は、駆動装置51の出力する電圧信号の変更によって、透明状態から散乱状態に可逆的に変わる。
【0014】
反射型投影スクリーン10の表面10Fは、投影装置101に面する。反射型投影スクリーン10の表面10Fは、第1映像反射面である。反射型投影スクリーン10の裏面10Rは、屋内環境や屋外環境などの空気層に面する。反射型投影スクリーン10の表面10Fは、第2映像反射面である。投影装置101は、散乱状態の反射型投影スクリーン10における表面10Fに映像10Pを投影する。観察者102は、反射型投影スクリーン10に対する投影装置101の側から映像10Pを観察する。
【0015】
図2が示すように、反射型投影スクリーン10は、透明基材11と、調光シート20Aとを備える。調光シート20Aの表面は、反射型投影スクリーン10の表面10Fである。透明基材11の裏面は、反射型投影スクリーン10の裏面10Rである。
【0016】
透明基材11は、透明ガラス基板でもよいし、透明樹脂基板でもよい。透明基材11は、車両や航空機などの移動体に搭載される窓ガラスでもよいし、建物に設置された窓ガラスでもよいし、車内や屋内に配置された間仕切りでもよい。透明基材11の表面は、平面状でもよいし、曲面状でもよい。
【0017】
透明基材11の厚さは、調光シート20Aの厚さよりも十分に厚い。透明基材11の厚さは、1mm以上20mm以下でもよい。調光シート20Aの厚さは、200μm以上500μm以下でもよい。透明基材11は、単層構造体でもよいし、積層構造体でもよい。透明基材11は、フロート板ガラスでもよいし、合わせガラスでもよいし、複層ガラスでもよいし、強化ガラスでもよい。透明基材11が積層構造体である場合、透明基材11が1つの透明構造体に見なされるように、透明基材11を構成する構造体の屈折率が1.4以上1.6以下である。
【0018】
調光シート20Aは、調光層20、第1透明電極層12F、第2透明電極層12R、第1透明支持層13F、および第2透明支持層13Rを備える。調光層20は、第1透明電極層12Fと第2透明電極層12Rとに挟まれ、第1透明電極層12Fと第2透明電極層12Rとに接している。第1透明支持層13Fは、第1透明電極層12Fに対して調光層20とは反対側で第1透明電極層12Fを支持する。第2透明支持層13Rは、第2透明電極層12Rに対して調光層20とは反対側で第2透明電極層12Rを支持する。第2透明支持層13Rは、透明接着層14を介して透明基材11に接着されている。
【0019】
第1透明電極層12F、および第2透明電極層12Rは、それぞれ導電性を有し、かつ可視光に対して透明である。第1透明電極層12F、および第2透明電極層12Rを構成する材料は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、および酸化亜鉛などの透明無機酸化物でもよい。第1透明電極層12F、および第2透明電極層12Rを構成する材料は、カーボンナノチューブでもよいし、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)などの導電性樹脂でもよいし、銀や銀合金などの金属、あるいは金属と樹脂との複合材でもよい。
【0020】
第1透明支持層13F、および第2透明支持層13Rは、それぞれ可視光に対して透明な基材である。第1透明支持層13F、および第2透明支持層13Rは、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。第1透明支持層13F、および第2透明支持層13Rを構成する材料は、合成樹脂や無機化合物である。合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステルでもよいし、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレートでもよいし、ポリカーボネートやポリオレフィンでもよい。無機化合物は、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、および窒化ケイ素などのケイ素化合物でもよい。
【0021】
[調光層20]
図3が示すように、調光層20は、透明高分子層21、液晶組成物22、およびスペーサ23を備える。調光層20は、高分子分散型液晶である。
【0022】
透明高分子層21は、光重合性化合物の硬化体である。透明高分子層21は、調光層20のなかに分散した複数の空隙21Dを区画している。空隙21Dの形状は、球形状でもよいし、楕円体状でもよいし、不定形状でもよい。液晶組成物22は、空隙21Dに充填されている。調光層20に対する透明高分子層21の割合は、30質量%以上60質量%以下でもよい。透明高分子層21の割合が上記範囲内である場合、映像に観察に要求される適度な密度の空隙21Dを得られる。なお、透明高分子層21の割合が大きいほど、調光層20の機械的な強度が高められる。透明高分子層21の割合が小さいほど、調光シート20Aの駆動に要求される電圧を低められる。
【0023】
透明高分子層21を形成するための光重合性化合物は、紫外線硬化性化合物でもよいし、電子線硬化性化合物でもよい。光重合性化合物は、液晶組成物22と相溶性を有する。光重合性化合物が紫外線硬化性化合物である場合、空隙21Dの寸法の制御性が高められる。光重合性化合物は、1種の重合性化合物であってもよいし、2種以上の重合性化合物の組み合わせであってもよい。
【0024】
紫外線硬化性化合物の一例は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、チオール化合物、スチレン化合物、これらの各化合物のオリゴマーである。アクリレート化合物は、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の一例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物を含む。メタクリレート化合物の一例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の一例は、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の一例は、スチレン、メチルスチレンである。
【0025】
液晶組成物22は、液晶化合物22L、および二色性色素22Pを含む。なお、液晶組成物22は、さらに、粘度低下剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤等を含有してもよい。耐候剤の一例は、紫外線吸収剤や光安定剤である。調光層20に対する液晶組成物22の割合は、40質量%以上70質量%以下でもよい。透明状態における調光シート20Aの透過率向上と、散乱状態における調光シート20Aのヘイズ向上とを要求される場合、液晶組成物22の割合が45質量%以上55質量%以下であることが好ましい。
【0026】
液晶化合物22Lは、非重合性の化合物である。液晶化合物22Lの長軸方向の誘電率は、液晶化合物22Lの短軸方向の誘電率よりも高い。すなわち、液晶化合物22Lは、正の誘電異方性を有する。液晶化合物22Lは、シッフ塩基系液晶化合物、アゾ系液晶化合物、アゾキシ系液晶化合物、ビフェニル系液晶化合物、ターフェニル系液晶化合物、安息香酸エステル系液晶化合物、トラン系液晶化合物、ピリミジン系液晶化合物、ピリダジン系液晶化合物、シクロヘキサンカルボン酸エステル系液晶化合物、フェニルシクロヘキサン系液晶化合物、ビフェニルシクロヘキサン系液晶化合物、シアノ系液晶化合物、ジシアノベンゼン系液晶化合物、ナフタレン系液晶化合物、ジオキサン系液晶化合物、およびフッ素系液晶化合物からなる群から選択される少なくとも一種でもよい。液晶化合物22Lは、1種の液晶化合物であってもよいし、2種以上の液晶化合物の組み合わせであってもよい。
【0027】
二色性色素22Pは、細長い分子形状を有し、分子の長軸方向における可視領域の吸光度が短軸方向における吸光度よりも大きい。二色性色素22Pは、光の入射方向に対して長軸方向が略直交する状態において、所定の色を示す。二色性色素22Pが呈する色は、例えば、黒色または黒色に近い色である。二色性色素22Pは、液晶化合物22Lをホストとしたゲストホスト型式によって駆動されて呈色する。
【0028】
二色性色素22Pは、ポリヨウ素、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アゾメチン系化合物、テトラジン系化合物、キノフタロン系化合物、メロシアニン系化合物、ペリレン系化合物、およびジオキサジン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種でもよい。二色性色素22Pは、1種の色素であってもよいし、2種以上の色素の組み合わせであってもよい。耐光性および二色比を高める観点では、二色性色素22Pは、アゾ系化合物、およびアントラキノン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、アゾ系化合物であることがより好ましい。
【0029】
調光層20に対する二色性色素22Pの割合は、0.5質量%以上10質量%以下でもよい。調光層20に対する二色性色素22Pの割合は、1質量%以上5質量%でもよい。二色性色素22Pの割合が0.5質量%以上である場合、不透明状態において、呈色が明瞭に認識されやすくなり、また光透過率を十分に低下させることができる。映像10Pの二重像に起因したボケの抑制をさらに要求される場合、二色性色素22Pの割合が2.0質量%以上であることがさらに好ましい。二色性色素22Pの割合が10質量%以下である場合、二色性色素22Pが凝集した粒子の析出を抑制できる。二色性色素22Pの凝集抑制を要求される場合、二色性色素22Pの割合が5質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
スペーサ23は、透明高分子層21の全体に渡って分散されている。スペーサ23は、スペーサ23の周辺において調光層20の厚さを定めることにより、調光層20の厚さを均一化する。スペーサ23は、ビーズスペーサでもよいし、フォトレジストの露光および現像によって形成されるフォトスペーサでもよい。スペーサ23は、透光性を有していれば、無色透明でもよいし、有色透明でもよい。有色透明のスペーサ23が呈する色は、二色性色素22Pが呈する色と同色であることが好ましい。
【0031】
調光層20の厚さは、15μm以上30μm未満でもよい。調光層20の厚さは、スペーサ23の大きさとおおよそ一致する。スペーサ23の平均粒径を変えることで調光層20の厚さを制御することができる。スペーサ23の平均粒径は、メジアン径D50で15μm以上30μm未満でもよい。
調光シート20Aは、第1透明電極層12Fと調光層20との間に、配向層をさらに備えてもよい。調光シート20Aは、第2透明電極層12Rと調光層20との間に、配向層をさらに備えてもよい。調光シート20Aの駆動型式は、リバース型でもよい。調光シート20Aの駆動型式は、ノーマル型でもよい。
リバース型の調光シート20Aは、第1透明電極層12Fと第2透明電極層12Rとの間の電圧印加によって、透明状態から散乱状態に変わる。リバース型の調光シート20Aは、電圧印加の停止に伴い、配向層の配向規制力によって散乱状態から透明状態に戻る。ノーマル型の調光シート20Aは、第1透明電極層12Fと第2透明電極層12Rとの間の電圧印加によって、散乱状態から透明状態に変わる。ノーマル型の調光シート20Aは、電圧印加の停止に伴い、透明状態から散乱状態に戻る。
【0032】
[光学特性]
反射型投影スクリーン10における第1映像反射面の反射率Rs、反射型投影スクリーン10における第2映像反射面の反射率Rn、調光シート20Aの透過率T、およびスクリーン裏面反射率Rdは、下記光学条件を満たす。
二重像評価値は、第1映像反射面の反射率Rs、調光シート20Aの透過率T、およびスクリーン裏面反射率Rdを用いて、(Rs+Rd)/Rsで表される。
(光学条件)Rd=T×Rn、(Rs+Rd)/Rs≦1.3
【0033】
第1映像反射面は、反射型投影スクリーン10の表面10Fであり、かつ調光シート20Aの表面である。第1映像反射面は、反射型投影スクリーン10において観察者102に向けて映像を反射する。第2映像反射面は、反射型投影スクリーン10の裏面10Rであり、かつ透明基材11の裏面である。第2映像反射面は、透明基材11と空気層との屈折率差に基づいて観察者102に向けて映像を反射する。
【0034】
第1映像反射面の反射率Rsは、表面10Fの可視領域における全光線反射率であり、二色性色素による色味を帯びた散乱状態の調光シート20Aを備えた反射型投影スクリーン10から得られる。第1映像反射面の反射率Rsは、反射型投影スクリーン10において裏面10Rの反射を防止するように裏面10Rに遮光シートを貼り付け、この状態の反射型投影スクリーン10の第1映像反射面における全光線反射率測定から得られる。
第2映像反射面の反射率Rnは、透明基材11の表面から入射した光の透明基材11の裏面による反射率である。第2映像反射面の反射率Rnは、二色性色素による色味を帯びた散乱状態の調光シート20Aを備えた反射型投影スクリーン10から得られる。第2映像反射面の反射率Rnは、散乱状態の調光シート20Aを備えた反射型投影スクリーン10の表面10Fにおける反射率であるスクリーン表面反射率R(=Rs+Rd)と、第1映像反射面の反射率Rsと、調光シート20Aの透過率Tとから算出される。
調光シート20Aの透過率Tは、調光シート20Aそのものの可視領域における全光線透過率であり、二色性色素による色味を帯びた散乱状態の調光シート20Aそのものから得られる。
【0035】
反射型投影スクリーン10の表面10Fに相互に隣接する白領域10Wと黒領域10Bとが形成されるとき、(i)白領域10Wのなかで黒領域10Bから離れた部分の反射率は、スクリーン表面反射率Rである。(ii)黒領域10Bのなかで白領域10Wに近い部分の反射率は、スクリーン裏面反射率Rdである。(iii)白領域10Wのなかで黒領域10Bに近い部分の反射率は、第1映像反射面の反射率Rsである。
スクリーン表面反射率Rは、反射型投影スクリーン10そのものの反射率であり、第1映像反射面の反射率Rsと、スクリーン裏面反射率Rdとの和(R=Rs+Rd)によって表される。スクリーン表面反射率Rは、表面10Fに入射した光が表面10Fで反射する度合い(Rs)、および表面10Fに入射した光が調光シート20Aと透明基材11とを透過した後に裏面10Rで反射されて再び透明基材11と調光シート20Aとを透過する度合い(Rd)を合わせて示す。
スクリーン裏面反射率Rdは、白領域10Wに入射した光が調光シート20Aと透明基材11とを通過した後に裏面10Rで反射されて黒領域10Bに向けて透明基材11と調光シート20Aとを透過する度合いを示す。
【0036】
[実施例]
以下に示す材料、配合、および方法を用いて実施例1の調光シート20Aを得た。
まず、液晶化合物22Lに、シアノ系液晶化合物とフッ素系液晶化合物とを主成分として、誘電異方性が正であるネマチック液晶化合物の混合物を用いた。透明高分子層21を形成するための光重合性化合物に、多官能アクリレート、多官能メタクリレート、単官能アクリレート、およびウレタンアクリレートの混合物を用いた。二色性色素22Pに、アゾ系化合物、およびアントラキノン系化合物からなる黒色混合色素を用いた。そして、液晶組成物22、光重合性化合物、重合開始剤、スペーサ23および二色性色素22Pを混合することによって、調光層20を形成するための塗工液を得た。
【0037】
この際、塗工液に対する光重合性化合物の割合が52質量%であるように、塗工液に光重合性化合物を配合した。また、塗工液に対する二色性色素22Pの割合が2.5質量%であるように、塗工液に二色性色素22Pを配合した。
【0038】
次に、第1透明電極層12F、および第2透明電極層12Rに、それぞれ厚さが100nmの酸化インジウムスズ膜を用いた。第1透明支持層13F、および第2透明支持層13Rに、それぞれ厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0039】
次に、第1透明支持層13Fに積層された第1透明電極層12Fに塗工液を塗布すると共に、第2透明支持層13Rに積層された第2透明電極層12Rと第1透明電極層12Fとによって塗工液からなる塗膜を挟むように、積層体を形成した。次いで、中心波長が360nmである紫外光に積層体の全体を露光することによって、光重合性化合物からなる透明高分子層21と液晶組成物22とを相分離させた。これにより、厚さが20μmの調光層20を備える調光シート20Aを得た。そして、透明基材11に厚さが3mmのフロート板ガラスを用い、この透明基材11に透明接着層14を用いて調光シート20Aを貼り付けることによって、反射型投影スクリーン10を得た。
【0040】
なお、第1透明電極層12F、および第2透明電極層12Rに、それぞれ厚さが50nmの銀インク層を用いたこと以外は、実施例1と同じくして、実施例2の調光シート20A、および反射型投影スクリーン10を得た。銀インク層は、銀ワイヤの分散したインクの塗工によって形成される。
【0041】
また、塗工液から二色性色素22Pを割愛すること以外は、実施例1と同じくして、比較例1の調光シート20A、および反射型投影スクリーン10を得た。
[評価]
実施例1、実施例2、および比較例の調光シート20A、および透明基材11を用い、散乱状態の調光シート20Aにおける全光線反射率、および全光線透過率、透明基材11の裏面反射率を測定した。また、実施例1、実施例2、および比較例の反射型投影スクリーン10を用いてコントラスト、および二重像視認性を評価した。
【0042】
調光シート20Aの全光線反射率である第1映像反射面の反射率Rs、透明基材11の裏面反射率である第2映像反射面の反射率Rn、調光シート20Aの全光線透過率である透過率T、およびスクリーン裏面反射率Rdを表1に示す。第1映像反射面の反射率Rsは、反射型投影スクリーン10の裏面10Rに遮光シートを貼り付けられた試料の表面10Fに対し、JIS K 7361-1に準拠した方法を用いて測定した。調光シート20Aの透過率T、およびスクリーン表面反射率Rは、JIS K 7361-1に準拠した方法を用いて測定した。第2映像反射面の反射率Rnは、スクリーン表面反射率R、第1映像反射面の反射率Rs、および調光シート20Aの透過率Tを用いて算出した。
【0043】
図4が示すように、コントラスト、および二重像視認性の評価は、投影装置101、および輝度計103を用いて測定した。投影装置101の高さH1に780mmを設定し、かつ投影装置101と反射型投影スクリーン10の表面10Fとの距離L1に565mmを設定した。輝度計103の高さH3に1180mmを設定し、輝度計103と反射型投影スクリーン10の表面10Fとの距離L3に1140mmを設定した。ここで、反射型投影スクリーン10が設置される空間の照度に、6lxから30lxまでの暗条件、および250lxから350lxの明条件をそれぞれ設定した。
【0044】
図5が示すように、コントラスト、および二重像視認性の評価用に、白領域10Wと黒領域10Bとを表示する映像10Pを用いた。黒領域10Bは、領域全体に黒色を設定された矩形画像である。白領域10Wは、黒領域10Bの全体を囲う矩形枠画像である。黒領域10Bの周囲は、白領域10Wによって満たされている。黒領域10Bは、反射型投影スクリーン10の表面10Fにおいて5cm×5cmの大きさを有した矩形枠画像として投影される。白領域10Wは、反射型投影スクリーン10の表面10Fのなかで投影装置101から直線光を照射される。黒領域10Bは、反射型投影スクリーン10の表面10Fのなかで投影装置101から直線光を照射されない。直線光は、表面10Fの法線方向に沿って投影装置101から出射される平行光の光軸に対して±2.5°以内の角度に進行する。
【0045】
コントラストは、輝度計103によって測定される白領域10W、および黒領域10Bのそれぞれの輝度を用い、黒領域10Bの輝度に対する白領域10Wの輝度の比率として得た。輝度計103は、直径が3cmである円を測定範囲として、当該円のなかに含まれる各測定点の輝度における平均値を測定値として算出した。黒領域10Bの輝度は、黒領域10Bにおける幾何学中心と、測定範囲の円の中心とを一致させて、黒領域10Bの中央部における測定範囲の平均値を輝度の測定値として算出した。なお、輝度計は、CS-1000(コニカミノルタ社製)を用いた。
ここで、投影装置101が設置されている空間の照度は暗条件で6lxである。反射型投影スクリーン10の設置されている空間の照度は、映像10Pの投影によって暗条件で23lxになる。反射型投影スクリーン10は、環境光による影響をほぼ受けない空間に設置される。照度計は、LX-204(カスタム社製)を用いた。二重像視認性は、反射型投影スクリーン10の表面10Fに表示される映像10Pの目視観察によって得た。表1は、映像10Pが二重に観察されなかった水準に「〇」印を示し、二重に観察された水準に「×」印を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1が示すように、比較例の反射率Rsは、0.06以上の高い値である。一方、実施例1、および実施例2の反射率Rsは、二色性色素22Pの吸収などによって、0.06を下回る。また、比較例の透過率Tは、0.7以上の高い値である。一方、実施例1の透過率Tは、0.1以下の低い値であり、実施例2ではさらに0.05を下回る。
【0048】
実施例1、および実施例2の二重像評価値は、いずれも1.3以下である。一方、比較例の二重像評価値は、1.3を超える1.7である。実施例1、および実施例2の二重像視認性の評価では、二重像が視認されず、比較例において二重像が視認された。二重像評価値である1.3は、実施例1と比較例との中間値である。また、二重像評価値である1.3は、二重像の抑制効果を得られるような視認限界の輝度比に相当する境界値である。
【0049】
実施例1の暗条件でのコントラストは、1.6以上3.5以下であり、空間の照度が下がるほどコントラストが高まるという傾向が認められた。実施例1の明条件でのコントラストは、1.6以上3.0以下であり、ここでも、空間の照度が下がるほどコントラストが高まるという傾向が認められた。なお、実施例2のコントラストは、暗条件、および明条件の両方において、実施例1よりも高い値を示した。一方、比較例の暗条件でのコントラストは、1.5以上2.0以下であり、空間の照度が相互に同じ条件であれば、実施例1よりも低いことが認められた。また、比較例の明条件でのコントラストは、1.5以上1.8以下であり、ここでも、空間の照度が相互に同じ条件であれば、実施例1よりも低いことが認められた。
【0050】
[作用]
図6が示すように、反射型投影スクリーン10の表面10Fは、調光シート20Aの表面である。調光シート20Aの表面は、反射型投影スクリーン10において観察者102に向けて映像を反射する第1映像反射面として機能する。一方、反射型投影スクリーン10の裏面10Rは、調光シート20Aの裏面である。透明基材11の裏面は、透明基材11と空気層との屈折率差に基づく第2映像反射面として機能する。
【0051】
図6の上側に示すように、反射型投影スクリーン10の表面10Fのなかで白領域10Wを形成する部分には、投影装置101から可視光LFが入射する。可視光LFのなかで調光シート20Aに反射された光は、観察者102に白領域10Wとして視認される。一方、可視光LFのなかで調光シート20A、および透明基材11を透過する透過光LCは、反射型投影スクリーン10の裏面10Rに反射されて、調光シート20Aの裏面から調光シート20Aに入射する。そして、白領域10Wのなかで図6の上側に位置する部分は、調光シート20Aを透過した透過光LRを視認される。これにより、(i)白領域10Wのなかで黒領域10Bから離れた部分には、第1映像反射面の反射率Rsとスクリーン裏面反射率Rdとの和(Rs+Rd=R)に相当する強い光が視認される。
一方、黒領域10Bのなかで白領域10Wに近い部分10B1もまた、調光シート20Aを透過した透過光LRを視認される。すなわち、(ii)黒領域10Bのなかで白領域10Wに近い部分は、黒領域10Bを形成するための光とスクリーン裏面反射率Rdに相当する光とが視認される。そして、白領域10Wを形成するための可視光LFの一部が透過光LRとして強く視認される場合、白領域10Wと黒領域10Bとの境界がぼやけると共に、映像10Pが二重像として視認されてしまう。
この点、反射型投影スクリーン10が上述した光学条件を満たす場合、第1映像反射面の反射率Rsに対するスクリーン裏面反射率Rdが十分に抑えられている。このため、(ii)黒領域10Bのなかで白領域10Wに近い部分10B1は、第1映像反射面の反射率Rsとスクリーン裏面反射率Rdとの和に相当する強い光と比べて、透過光LRを視認されがたい。結果として、透過光LRに起因した二重像の視認が抑えられる。
【0052】
図6の下側に示すように、(iii)白領域10Wのなかで黒領域10Bに近い部分10W2は、当該黒領域10Bから透過光LRを受けず、(i)白領域10Wのなかで黒領域10Bから離れた部分と比べて、透過光LRの分だけ暗く視認される。すなわち、(iii)白領域10Wのなかで黒領域10Bに近い部分10W2には、第1映像反射面の反射率Rsに相当する光のみが視認される。そして、(iii)白領域10Wのなかで黒領域10Bに近い部分10W2と、当該部分10W2よりも下側で透過光LRを視認されるような(i)白領域10Wのなかで黒領域10Bから離れた部分との相違によって、映像10Pが二重像として視認されてしまう。
この点でも、反射型投影スクリーン10が上述した光学条件を満たす場合、第1映像反射面の反射率Rsに対するスクリーン裏面反射率Rdが十分に抑えられているため、透過光LRに起因した二重像の視認が抑えられる。
【0053】
[効果]
以上、上記実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)反射型投影スクリーン10が上記光学条件を満たすため、映像10Pが二重像として表示させることを抑制できる。
(2)実施例1のように、調光シート20Aの透過率Tが0.1以下である場合、(1)に準じた効果を得ることの実効性が高まる。
【0054】
(3)実施例2のように、調光シート20Aの表面における反射率Rsが0.05以上であり、かつ調光シート20Aの透過率Tが0.05以下である場合、(1)に準じた効果を得ながらも、コントラストをさらに高めることが可能ともなる。
(4)実施例2のように、第1透明電極層12F、および第2透明電極層12Rが銀インク層である場合、透明無機酸化物層と比べて、反射率Rsを高め、かつ透過率Tを低めることが容易ともなる。これにより、(3)に準じた効果を得ることの実効性も高まる。
【0055】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・銀インク層は、スパッタリング法、あるいは真空蒸着法によって形成される銀気相成長層に変更できる。銀インク層や銀気相成長層などの銀電極層であれば、上記(3)に準じた効果が得られやすい。
【0056】
・二色性色素22Pは、黒色混合色素に限らず、黒色の単一色素でもよいし、青色混合色素でもよいし、青色の単色色素でもよい。二色性色素22Pの種類や配合比は、上述した光学条件を満たす範囲のなかで適宜変更できる。
・(Rs+Rd)/Rs≦1.3が満たされる範囲において、調光シート20Aの駆動型式は、リバース型でもよいし、ノーマル型でもよい。
【符号の説明】
【0057】
Rs,Rn…反射率
Rd…スクリーン裏面反射率
T…透過率
10…反射型投影スクリーン
10B…黒領域
10F…表面
10P…映像
10R…裏面
10W…白領域
11…透明基材
12F…第1透明電極層
12R…第2透明電極層
13F…第1透明支持層
13R…第2透明支持層
20…調光層
20A…調光シート
22…液晶組成物
22L…液晶化合物
22P…二色性色素
23…スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6