(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095125
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/083 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
F16K11/083 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212180
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能村 亮
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA22
3H067CC45
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA02
3H067EA05
3H067EA24
3H067EB12
3H067EB24
3H067EB25
3H067FF11
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】ハウジング内において複数の流路間の流体の漏れ量を低減しつつ、バルブ回転時のトルクを低減する。
【解決手段】バルブ40は、円錐形の側面に沿うように形成された側壁41を有する。ハウジング10は、円錐形の軸を回転の軸心CLとしてバルブ40を回転可能に収容し、ハウジング10の外壁14と内壁16とを貫通するポート13を有する。シール部材50は、ハウジング10の内壁16とバルブ40との間に設けられ、ハウジング10側の面51がハウジング10の内壁16のうちポート周縁部131に当接し、バルブ40側の面52がバルブ40の側壁41に摺接する。付勢部材60は、バルブ40を円錐形の頂点側に向けて付勢し、バルブ40の回転時および停止時において、バルブ40の側壁41とシール部材50とが摺接する状態を保ち、且つ、ハウジング10の内壁16とシール部材50とが当接する状態を保つ。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御弁であって、
円錐形の側面に沿うように形成された側壁(41)、および前記側壁から前記円錐形の軸側に凹む流路(44)を有するバルブ(40)と、
前記円錐形の軸を回転の軸心(CL)として前記バルブを回転可能に収容するハウジング(10)であって、前記ハウジングの外壁(14)と内壁(16)とを貫通するポート(13)を有する前記ハウジングと、
前記ハウジングの内壁と前記バルブとの間に設けられ、前記ハウジング側の面(51)が前記ハウジングの内壁のうちポート周縁部(131)に当接し、前記バルブ側の面(52)が前記バルブの前記側壁に摺接するシール部材(50)と、
前記バルブを前記円錐形の頂点側に向けて付勢し、前記バルブの回転時および停止時において、前記バルブの前記側壁と前記シール部材とが摺接する状態を保ち、且つ、前記ハウジングの内壁と前記シール部材とが当接する状態を保つ付勢部材(60)と、を備える流体制御弁。
【請求項2】
前記シール部材は、前記ハウジング側の部位の材質と前記バルブ側の部位の材質とが異なっている、請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記付勢部材は、スプリングであり、
前記バルブと前記スプリングとの間に設けられ、前記スプリングを支持すると共に前記スプリングの付勢力を前記バルブに伝えるスプリングガイド(61)をさらに備える請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記スプリングガイドの材質と前記バルブの材質とは異なっている、請求項3に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記スプリングガイドの材質は、金属の表面にポリテトラフルオロエチレンを塗布したもの、金属の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、金属の表面に高摺動材を塗布したもの、樹脂の表面にポリテトラフルオロエチレンを塗布したもの、樹脂の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、および、樹脂の表面に高摺動材を塗布したものの少なくとも1つである、請求項3に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記バルブは、前記円錐形の頂点側に形成される一方側端面(42)、前記一方側端面に対向し前記円錐形の底面側に形成される他方側端面(43)、および、前記一方側端面のうち軸心を中心とした位置から軸方向に突出する突部(47)を有し、
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、前記一方側端面に対向し前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)、および、前記突部を回転可能に支持する穴部(17)を有する、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記突部の外径(D1)、および、前記穴部の内径(D2)は、前記一方側端面の外径(D3)よりも小さい、請求項6に記載の流体制御弁。
【請求項8】
前記突部の軸方向一方側の先端面(48)と、前記穴部の軸方向一方側の底面(18)とは、非接触である、請求項6に記載の流体制御弁。
【請求項9】
前記突部と前記穴部との間に設けられる軸受(171、471)をさらに備える請求項6に記載の流体制御弁。
【請求項10】
前記バルブまたは前記ハウジングの材質と、前記軸受の材質とは、異なっている、請求項9に記載の流体制御弁。
【請求項11】
前記軸受の材質は、前記バルブまたは前記ハウジングの材質と同種のものであり、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものである、請求項9に記載の流体制御弁。
【請求項12】
前記軸受は、金属の表面に、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものである、請求項9に記載の流体制御弁。
【請求項13】
前記突部は、前記流路を形成するバルブ本体(400)にインサート成形されたシャフト(410)により形成されたものである、請求項6に記載の流体制御弁。
【請求項14】
前記バルブは、前記円錐形の頂点側に形成される一方側端面(42)、前記一方側端面に対向し前記円錐形の底面側に形成される他方側端面(43)、および、前記一方側端面のうち軸心を中心とした位置にて軸方向に凹む穴形状部(420)を有し、
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、前記一方側端面に対向し前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)、および、前記穴形状部を回転可能に支持する突形状部(110)を有する、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項15】
前記穴形状部の内径(D5)、および、前記突形状部の外径(D4)は、前記一方側端面の外径(D3)よりも小さい、請求項14に記載の流体制御弁。
【請求項16】
前記穴形状部の軸方向他方側の底面(421)と、前記突形状部の軸方向他方側の先端面(111)とは、非接触である、請求項14に記載の流体制御弁。
【請求項17】
前記穴形状部と前記突形状部との間に設けられる軸受(422、112)をさらに備える、請求項14に記載の流体制御弁。
【請求項18】
前記バルブまたは前記ハウジングの材質と、前記軸受の材質とは、異なっている、請求項17に記載の流体制御弁。
【請求項19】
前記軸受の材質は、前記バルブまたは前記ハウジングの材質と同種のものであり、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものである、請求項17に記載の流体制御弁。
【請求項20】
前記軸受は、金属の表面に、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものである、請求項17に記載の流体制御弁。
【請求項21】
前記バルブの前記側壁のうち前記シール部材に摺接する流路周縁部(441)の幅をW1、前記ハウジングの内壁のうち前記シール部材に当接するポート周縁部(131)の幅をW2とするとき、W1とW2はいずれも2mm以上である、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項22】
前記バルブの前記側壁のうち前記シール部材に摺接する流路周縁部の幅をW1、前記ハウジングの内壁のうち前記シール部材に当接するポート周縁部の幅をW2とするとき、W2≧W1の関係を有する、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項23】
前記バルブの前記側壁のうち前記シール部材に摺接する流路周縁部の曲率半径(R)は、軸心方向にて同一の位置にある前記シール部材の前記バルブ側の面の曲率半径と同一であるか、それより大きい、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項24】
前記ハウジングおよび前記シール部材に対して前記バルブを回転させるために必要なトルクは2.0N・m以下である、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項25】
前記バルブの前記側壁が沿う前記円錐形の母線(G)と前記バルブの軸心とのなす内角(θ)は5deg以上である、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項26】
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、および前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)を有し、
前記筒部の内壁は、前記バルブの前記側壁が沿う前記円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状である、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項27】
前記バルブは、前記円錐形の底面側に形成される他方側端面から軸方向に突出してトルクが入力される入力軸(45)を有し、
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、および前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)を有し、
流体制御弁は、前記筒部の他方側の開口を塞ぐと共に、前記入力軸が挿通する挿通孔(22)、および、前記挿通孔の内側に設けられて前記挿通孔の内壁と前記入力軸との隙間からの流体漏れを防ぐ軸シール部材(24)を有するカバー(20)をさらに備え、
前記バルブ、前記シール部材および前記カバーは、前記ハウジングに対し、軸方向他方側から着脱可能な構成となっている、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項28】
前記カバーは前記ハウジングに対しスナップフィット(21)で固定されている、請求項27に記載の流体制御弁。
【請求項29】
前記バルブの前記入力軸に前記トルクを入力するアクチュエータ(30)をさらに備え、
前記アクチュエータと前記カバーは、同一のねじ(31)で前記ハウジングに固定される、請求項27に記載の流体制御弁。
【請求項30】
前記バルブは、前記円錐形の頂点側に形成される一方側端面から軸心から離れた位置で軸方向一方側に突出するストッパ(49)を有し、
前記ハウジングは、前記ストッパを受けるストッパ当接部(19)を有する、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項31】
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)を有し、
前記ストッパ当接部は、前記底部に設けられている、請求項30に記載の流体制御弁。
【請求項32】
前記バルブは、軸心方向に配置される複数の前記流路を有しており、
複数の前記流路のうち軸心側の深部(441)は、前記バルブの前記側壁が沿う前記円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状である、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項33】
前記バルブは、軸心方向に配置される複数の前記流路を有しており、
複数の前記流路は、軸心側の深部と前記側壁との間の距離(D6)が揃っている、請求項1または2に記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングに設けた複数のポート間の連通および遮断を切り替えることで、流体の流れを制御する流体制御弁が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の流体制御弁は、複数のポートを有するハウジングの内側に、シール部材を挟んで円柱状のバルブを回転可能に配置した構成である。シール部材は、複数のポートが形成された部位に設けられ、ハウジングとバルブによって厚み方向(即ち、バルブの径方向)に物理的に潰されることで両者に密着し、ハウジング内において複数の流路間の流体の漏れを防いでいる。この特許文献1には、バルブを回転させるアクチュエータからバルブに入力されるトルクが3.5N・m~4.5N・mであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の流体制御弁は、ハウジング内において複数の流路間の流体の漏れを防ぐために、シール部材にバルブを押し付け、シール部材の潰し代を十分に確保する必要がある。しかし、シール部材の潰し代を大きくするほど、シール部材からバルブに対し反力が増加するので、バルブを回転する際の摺動抵抗が大きくなり、バルブを回転させるために必要なトルクが大きくなる(具体的には、3.5N・m~4.5N・m)。そのため、バルブを駆動するアクチュエータとして大出力モータや高減速比の減速機構等が必要となり、アクチュエータの大型化に加えて、バルブの回転時の作動音、消費電力および電気的ノイズの増加を招く原因となる。
【0006】
また、この流体制御弁は、バルブが停止状態から回転を開始する際、シール部材のうち周方向の端部等においてバルブの一部がシール部材にめり込むため、または、シール部材にめり込んでいるバルブの一部がそこから抜け出すために、大きなトルクが必要となる。そのため、アクチュエータに大小のトルクが波状に入力されることから、減速機構を構成するギヤへのストレス変動も大きく、ギヤの破損や摩耗の促進にもつながる。
【0007】
さらに、この流体制御弁は、経年劣化などによりバルブとシール部材との摺動面で摩耗が生じると、バルブとシール部材とのシール性が低下し、ハウジング内において複数の流路間の流体の漏れ量が増加する恐れがある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、流体制御弁において、ハウジング内において複数の流路間の流体の漏れ量を低減しつつ、バルブ回転時のトルクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、流体制御弁であって、
円錐形の側面に沿うように形成された側壁(41)、および側壁から円錐形の軸側に凹む流路(44)を有するバルブ(40)と、
円錐形の軸を回転の軸心(CL)としてバルブを回転可能に収容するハウジング(10)であって、ハウジングの外壁(14)と内壁(16)とを貫通するポート(13)を有するハウジングと、
ハウジングの内壁とバルブとの間に設けられ、ハウジング側の面(51)がハウジングの内壁のうちポート周縁部(131)に当接し、バルブ側の面(52)がバルブの側壁に摺接するシール部材(50)と、
バルブを円錐形の頂点側に向けて付勢し、バルブの回転時および停止時において、バルブの側壁とシール部材とが摺接する状態を保ち、且つ、ハウジングの内壁とシール部材とが当接する状態を保つ付勢部材(60)と、を備える。
【0010】
これによれば、流体制御弁は、バルブの側壁を円錐形の側面に沿う形状として、そのバルブを円錐形の頂点側に向けて付勢部材で付勢する構成としている。これにより、付勢部材の付勢力の調整により、バルブとシール部材との押し付け力、および、ハウジングとシール部材との押し付け力を容易に調整可能となる。そのため、バルブとシール部材との間の隙間、および、ハウジングとシール部材との間の隙間を極力小さくするか又は無くすことで、流路間の流体の漏れ量を微小とするシール性を確保できる。したがって、特許文献1の構成のようにバルブがシール部材にめり込むことが無く、又はめり込むことが抑制されるので、バルブの回転駆動時のトルクを低減し、且つ、そのトルクが波状となることを防ぐことができる。その結果、この流体制御弁は、バルブの回転時および停止時のシール性を担保しつつ、バルブを駆動するアクチュエータを小型化し、バルブの回転時の作動音、消費電力および電気的ノイズを低減できる。また、そのアクチュエータの有するギヤの破損を防ぎ信頼性を向上できる。
さらに、バルブの側壁を円錐形の側面に沿う形状として、そのバルブを円錐形の頂点側に向けて付勢部材で付勢する構成により、経年劣化などによりバルブとシール部材の摺動面で摩耗が生じても、バルブとシール部材とが摺接する状態が保たれる。そのため、この流体制御弁は、経年劣化に対し、バルブとシール部材との間のシール性を維持することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る流体制御弁の正面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線においてアクチュエータを除いた断面図である。
【
図5】流体制御弁のバルブのみを示す側面図である。
【
図6】流体制御弁のハウジングのみを示す正面図である。
【
図8】
図1のVIII-VIII線の断面図である。
【
図10】ハウジングから取り外した状態のシール部材のみを示す斜視図である。
【
図11】ハウジングに組み付けた状態のシール部材のみを示す斜視図である。
【
図12】ハウジングとシール部材とを組み付けた状態を示す平面図である。
【
図13】第2実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図16】第5実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図17】第6実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図18】第7実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図19】第8実施形態に係る流体制御弁の正面図である。
【
図22】第9実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図24】第10実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図25】第11実施形態に係る流体制御弁の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の流体制御弁は、図示しない複数の流体通路を流れる性質の異なる流体(例えば温度の異なる冷却水など)の流れを制御するものである。
【0015】
図1~
図4に示すように、流体制御弁は、ハウジング10、カバー20、アクチュエータ30、バルブ40、シール部材50、及び、付勢部材としてのスプリング60などを備えている。
【0016】
ハウジング10は、筒状に形成された筒部11、及び、筒部11の一方側を塞ぐ底部12を有している。ハウジング10は、筒部11の一部に複数のポート13を有している。ポート13は、筒部11の内壁16と外壁14とを貫通している。なお、各ポート13は、筒部11の軸心CLが延びる方向(以下、「軸方向」という)に平行な距離Hが、例えば10mmである。
【0017】
ハウジング10は、例えば、ポリアミド66(以下、「PA66」という)の強化材、ポリフタルアミド(以下、「PPA」という)の強化材、および、ポリフェニレンサルファイド(以下、「PPS」という)の強化材の少なくとも1つにより形成されている。なお、強化材とは、例えばガラス繊維等である。以下、筒部11の軸方向の底部12側を一方側、筒部11の軸方向の底部12とは反対側を他方側として説明する。
【0018】
カバー20は、ハウジング10の筒部11の他方側の開口を塞いでいる。カバー20は、筒部11の外壁14に設けられた係止部15に対しスナップフィット21により固定されている。カバー20の他方側にアクチュエータ30がねじ31により固定されている。アクチュエータ30は、ケース32の内側に不図示の電動モータおよび減速機構などを有している。
【0019】
図4に示すように、バルブ40は、ハウジング10の内側に、所定の軸心CLを中心として回転可能に設けられている。ここで、バルブ40の回転の軸心CLと同一の軸を有する円錐形を定義する。
図5では、その円錐形の軸の一部と母線Gの一部のみが一点鎖線で示されている。円錐形の軸とバルブ40の軸心CLとは一致している。なお、円錐形の定義として、母線Gを軸のまわりに回転させた面を側面といい、母線Gと軸との接点を頂点といい、頂点に対向し軸に垂直な面を底面という。
図4および
図5に示すように、バルブ40は、その円錐形の側面に沿うように形成された側壁41と、円錐形の頂点側(即ち、一方側)に形成された一方側端面42と、その一方側端面42に対向し円錐形の底面側(即ち、他方側)に形成された他方側端面43とを有している。バルブ40の側壁41が沿う円錐形の母線Gと、バルブ40の軸心CLとのなす内角θは、5deg以上に設定されている。一方側端面42と他方側端面43は、バルブ40の軸心CLに対して垂直に形成されている。
【0020】
バルブ40は、一方側端面42がハウジング10の底部12と対向するように配置され、ハウジング10の内側に円錐形の軸を回転の軸心CLとして回転可能に収容される。なお、ハウジング10の筒部11の内壁16は、バルブ40の側壁41が沿う円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状となっている。即ち、ハウジング10の筒部11の内壁16と、バルブ40の側壁41とは平行に形成されている。
【0021】
バルブ40は、側壁41から軸心CL側に凹む複数の流路44を有している。バルブ40が回転位相を変化させ、バルブ40の有する複数の流路44がそれぞれハウジング10の有する複数のポート13に連通することで、複数のポート13間の連通および遮断が切り替えられる。
【0022】
バルブ40は、他方側端面43のうち軸心CLを中心とした位置から軸方向他方側に突出する入力軸45を有している。入力軸45は、カバー20に設けられた挿通孔22を挿通している。挿通孔22の内壁と入力軸45と間には、軸受23、及び、軸シール部材24が設けられている。軸受23は、例えば、玉軸受、転がり軸受等であり、カバー20に対し入力軸45を回転可能に支持している。軸シール部材24は、例えばOリング、オイルシール等であり、挿通孔22の内壁と入力軸45との隙間からの流体の漏れを防いでいる。カバー20から突出する入力軸45の先端にはギヤ46が設けられており、アクチュエータ30からバルブ40を回転するためのトルクが入力される。ハウジング10およびシール部材50に対してバルブ40を回転させるためにアクチュエータ30から入力軸45に入力されるトルクは、2.0N・m以下に設定されている。
【0023】
さらに、バルブ40は、一方側端面42のうち軸心CLを中心とした位置から軸方向一方側に突出する突部47と、一方側端面42のうち軸心CLから離れた位置から軸方向一方側に突出するストッパ49を有している。
【0024】
バルブ40の有する突部47は、ハウジング10の底部12に設けられた穴部17の内側に挿入され、穴部17の内壁により回転可能に支持されている。バルブ40の有する突部47の外径をD1、ハウジング10の穴部17の内径をD2、バルブ40の一方側端面42の外径をD3とすると、D1<D3、D2<D3の関係を有する。なお、D1はD2より僅かに小さい(即ち、D1<D2<D3)。これにより、バルブ40の突部47とハウジング10の穴部17とが摺動する摺動部の半径(即ち、D1、D2)を小さくすることで、摺動部の摺動抵抗を小さくし、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。なお、穴部17の内壁は軸心CLに平行に形成されており、バルブ40の突部47の軸方向の移動を許容している。また、バルブ40の突部47の軸方向一方側の先端面48と、ハウジング10の穴部17の軸方向一方側の底面18とは非接触となっている。
【0025】
図4および
図7に示すように、ハウジング10の底部12には、バルブ40のストッパ49が当接可能なストッパ当接部19が設けられている。バルブ40のストッパ49とハウジング10のストッパ当接部19とが当接することで、バルブ40の回転におけるデフォルトの位置が定められる。
【0026】
バルブ40は、例えば、PA66の強化材、PPAの強化材、PPSの強化材、および、フェノール(以下「PF」という)の強化材の少なくとも1つにより形成されている。
【0027】
図4に示すように、ハウジング10の内壁16とバルブ40との間には、シール部材50が設けられている。シール部材50は、板状に形成され、ハウジング10側の面51がハウジング10の内壁16のうちポート13の周縁の部位(以下、「ポート周縁部131」という)に当接し、バルブ40側の面52がバルブ40の側壁41のうちシール部材50に摺接する部位(以下、「流路周縁部441」という)に摺接している。シール部材50は、板厚方向に貫通する複数の開口53を有している。シール部材50の有する複数の開口53は、ハウジング10の有する複数のポート13に対応する位置に設けられている。
【0028】
ここで、バルブ40の外壁14のうち流路周縁部441の幅をW1、ハウジング10の内壁16のうちポート周縁部131の幅をW2とする。このとき、W1≦W2の関係を有している。これにより、ハウジング10のポート13からバルブ40の流路44に流入する流体の圧力損失を低減できる。なお、シール部材50において開口53を形成する部位の幅は、ハウジング10のポート周縁部131の幅W2とほぼ同じに形成されている。
【0029】
流路周縁部441の幅W1とポート周縁部131の幅W2はいずれも2mm以上である。そして、
図8および
図9に示すように、バルブ40の流路周縁部441の曲率半径Rは、軸方向にて同一の位置にあるシール部材50のバルブ40側の面52の曲率半径と同一であるか、それより大きい。なお、同一とは、実質同一を含んでいる。言い換えれば、バルブ40の流路周縁部441は、バルブ40の外壁14が沿う円錐形と同一曲率半径以上の曲面又は平面が好ましく、径方向外側に凸のR先端は比較的好ましくない。これにより、バルブ40の流路周縁部441とシール部材50との面接触が実現される。そのため、バルブ40とシール部材50との間の隙間、および、ハウジング10とシール部材50との間の隙間を極力小さくするか又は無くすことで、流路44間の流体の漏れ量を微小とするシール性を確保できる。このように、比較的長い距離(例えば約2mm以上)を有する微小隙間により流体の漏れを防ぐ方法を「隙間シール」と呼ぶことがある。
【0030】
シール部材50は、ハウジング10側の部位の材質と、バルブ40側の部位の材質とが異なっている。具体的には、シール部材50の材質は、ゴムとポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)との組み合わせ、ゴムとフッ素樹脂との組み合わせ、および、ゴムと高摺動材との組み合わせの少なくとも1つである。より具体的には、シール部材50の材質は、ハウジング10側がゴム材であり、バルブ40側がPTFE、フッ素樹脂または高摺動材である。シール部材50の製造方法として、例えば、ゴム材の表面にPTFE等を塗布、ゴム材とPTFE等とを一体組付、インサート成形、接着または焼付等がある。
【0031】
図10に示すように、シール部材50は、ハウジング10に組み付け前又はハウジング10から取り外した状態で、平面状となるか、又は、ハウジング10に組み付けられている状態よりも平面に近い形状となるものである。即ち、シール部材50は、ハウジング10に組み付け前の状態において、平面状の部材である。
【0032】
図4および
図7に示すように、ハウジング10の内側には、シール部材50の移動を規制するハウジング側規制部70および周方向規制部71が設けられている。ハウジング側規制部70は、ハウジング10の底部12から軸方向他方側に突出している。また、
図7に示すように、ハウジング側規制部70は、軸方向他方側から視て、ハウジング10の筒部11のうち底部12側の部位の内壁16に平行な湾曲形状となっている。ハウジング側規制部70とハウジング10の筒部11の内壁16との間に、シール部材50のうち底部12側に配置される部位が嵌め込まれる。ハウジング側規制部70は、シール部材50が筒部11の径方向内側および軸方向一方側に移動することを規制する。また、ハウジング側規制部70は、シール部材50がハウジング10の筒部11の内壁16またはバルブ40の側壁41に沿った曲面形状から変形することを規制する。
【0033】
周方向規制部71は、ハウジング10の筒部11の内壁16から径方向内側に突出している。周方向規制部71がハウジング10の筒部11の内壁16から径方向内側に突出する高さは、シール部材50の厚みより小さい。周方向規制部71は、ハウジング10の内側に配置されたシール部材50の周方向の一方側と他方側にそれぞれ設けられ、シール部材50が筒部11の周方向の一方側および他方側に移動することを規制する。これにより、
図11および
図12に示すように、シール部材50は、ハウジング10に組み付けられた状態で、ハウジング10の筒部11の内壁16に沿った曲面形状が維持され、軸方向および周方向の移動が規制される。
【0034】
図4に示すように、付勢部材としてのスプリング60は、バルブ40の他方側端面43とカバー20との間に設けられる。スプリング60は、圧縮コイルスプリングであり、バルブ40を円錐形の頂点側に向けて付勢する。上述したように、バルブ40の側壁41が沿う円錐形の母線Gと、バルブ40の軸心CLとのなす内角θは、5deg以上に設定されている。これにより、スプリング60がバルブ40の軸方向に印加する荷重に対し、バルブ40の側壁41からシール部材50及びハウジング10に作用する分力が発生する。そのため、スプリング60の付勢力の一部は、バルブ40とシール部材50とを押し付ける分力として作用し、さらに、シール部材50とハウジング10の内壁16とを押し付ける分力としても作用する。したがって、スプリング60のばね力の調整により、バルブ40の回転時および停止時において、バルブ40の側壁41とシール部材50とが小さい摺動抵抗にて摺接する状態を保ち、且つ、ハウジング10の内壁16とシール部材50とが当接する状態を保つことが可能である。言い換えれば、スプリング60のばね力は、バルブ40の側壁41とシール部材50とが小さい摺動抵抗にて摺接し、且つ、ハウジング10の内壁16とシール部材50とが当接するように調整されている。さらに、スプリング60のばね力は、シール部材50に対するバルブ40の流路周縁部441のめり込みが無く、又はめり込むことが抑制されるように調整されている。その結果、バルブ40とシール部材50との間、及び、ハウジング10とシール部材50との間に上述した隙間シールが実現でき、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。また、バルブ40の回転時においてスプリング60の軸長が一定に保たれるので、スプリング60の付勢力も一定に保たれる。そのため、バルブ40の回転駆動時のトルク変動を抑制できる。
【0035】
バルブ40の他方側端面43とスプリング60との間には、スプリングガイド61が設けられている。スプリングガイド61は、スプリング60のうちバルブ40側の端部を支持している。スプリングガイド61は、軸心CLに平行な断面がL字状に形成されており、径方向内側の面がカバー20の挿通孔22を形成する凸部29に摺接し、軸方向一方側の面がバルブ40の他方側端面43に摺接している。スプリングガイド61は、スプリング60の軸ずれを防ぐと共に、スプリング60の付勢力をバルブ40に伝えることが可能である。
【0036】
スプリングガイド61の材質とバルブ40の材質とは異なっている。具体的には、スプリングガイド61の材質は、金属のみのもの、金属の表面にPTFEを塗布したもの、金属の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、金属の表面に高摺動材を塗布したもの、樹脂のみのもの、樹脂の表面にPTFEを塗布したもの、樹脂の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、および、樹脂の表面に高摺動材を塗布したものの少なくとも1つである。
【0037】
上述した流体制御弁の各構成において、バルブ40、シール部材50およびカバー20は、ハウジング10に対し、軸方向他方側から着脱可能な構成となっている。そのため、流体制御弁の製造方法として次の工程を採用できる。まず、ハウジング10に対し、平面状のシール部材50を湾曲状態に変形させてハウジング側規制部70および周方向規制部71に組み付ける。次に、ハウジング10に対し、軸方向他方側からバルブ40を組み付ける。このとき、バルブ40の突部47をハウジング10の穴部17に挿入する。続いて、スプリング60およびスプリングガイド61を配置し、バルブ40の有する入力軸45のギヤ46とカバー20の有する軸シール部材24とが接触しないよう軸心CLを合わせた状態で、ハウジング10にカバー20を組み付ける。最後に、カバー20にアクチュエータ30をねじ31により組み付け、流体制御弁の組付けが完了する。
【0038】
以上説明した第1実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態では、バルブ40の側壁41を円錐形の側面に沿う形状として、そのバルブ40を円錐形の頂点側に向けてスプリング60で付勢する構成としている。これにより、スプリング60のばね力の調整により、バルブ40とシール部材50との押し付け力、および、ハウジング10とシール部材50との押し付け力を容易に調整可能となる。そのため、バルブ40とシール部材50との間の隙間、および、ハウジング10とシール部材50との間の隙間を極力小さくするか又は無くすことで、流路44間の流体の漏れ量を微小とするシール性を確保できる。したがって、上記特許文献1に記載の流体制御弁の構成のようにバルブ40がシール部材50にめり込むことが無く、又はめり込むことが抑制されるので、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減し、且つ、そのトルクが波状となることを防ぐことができる。その結果、第1実施形態の流体制御弁は、バルブ40の回転時および停止時のシール性を担保しつつ、バルブ40を駆動するアクチュエータ30を小型化し、バルブ40の回転時の作動音、消費電力および電気的ノイズを低減できる。また、そのアクチュエータ30の有するギヤの破損を防ぎ信頼性を向上できる。
さらに、第1実施形態の流体制御弁は、バルブ40の側壁41を円錐形の側面に沿う形状として、そのバルブ40をスプリング60で付勢する構成により、経年劣化などによりバルブ40とシール部材50の摺動面で摩耗が生じても、バルブ40とシール部材50とが摺接する状態が保たれる。そのため、この流体制御弁は、経年劣化に対し、バルブ40とシール部材50との間のシール性を維持することができる。
【0039】
(2)第1実施形態では、シール部材50は、ハウジング10側の部位の材質とバルブ40側の部位の材質とが異なっている。
これによれば、シール部材50の材質として、ハウジング10への当接およびバルブ40への摺接に適した材質を選択できる。
【0040】
(3)具体的には、シール部材50の材質は、ハウジング10側がゴム材であり、バルブ40側がPTFE、フッ素樹脂または高摺動材である。
これによれば、シール部材50の材質として、ゴム材、シリコーン、PTFE、フッ素樹脂、弾性を有する樹脂材の少なくとも1つを採用することで、スプリング60のばね力により、ハウジング10の内壁16の形状に合わせて、シール部材50を変形させ、馴染ませることが可能となる。そのため、シール部材50の組み付け性を向上すると共に、バルブ40とシール部材50との間の隙間、およびハウジング10とシール部材50との間の隙間を極力小さくするか又は無くすことで、流路44間の流体の漏れ量を微小とするシール性を確保できる。
さらに、シール部材50のうちバルブ40側の材質をPTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つとすることで、流路44間の流体の漏れ量を微小とするシール性を確保すると共に、バルブ40とシール部材50との摺動抵抗を小さくすることが可能である。
【0041】
(4)第1実施形態では、流体制御弁は、バルブ40とスプリング60との間に設けられるスプリングガイド61を備えている。
これによれば、スプリング60のエッジがバルブ40の表面に引っ掛かることや、スプリング60のエッジがバルブ40の表面を引っ掻くことでスプリング60とバルブ40との摺動抵抗が増加することが防がれる。そのため、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。
【0042】
(5)第1実施形態では、スプリングガイド61の材質とバルブ40の材質とは異なっている。
これによれば、スプリングガイド61とバルブ40との摺動抵抗を低減可能な材質を選択できる。
【0043】
(6)第1実施形態では、スプリングガイド61の材質は、金属の表面にPTFEを塗布したもの、金属の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、金属の表面に高摺動材を塗布したもの、樹脂の表面にPTFEを塗布したもの、樹脂の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、および、樹脂の表面に高摺動材を塗布したものの少なくとも1つである。
これによれば、スプリングガイド61とバルブ40との摺動抵抗を低減できる。
なお、スプリングガイド61の材質は、上記例示したものに限らず、金属のみ、または、樹脂のみであってもよい。
【0044】
(7)第1実施形態では、バルブ40は、一方側端面42のうち軸心CLを中心とした位置から軸方向に突出する突部47を有する。ハウジング10は、バルブ40の突部47を回転可能に支持する穴部17を有する。
これによれば、ハウジング10の穴部17がバルブ40の突部47を回転可能に支持することで、バルブ40の軸心CLの位置ずれが防がれる。そのため、バルブ40とシールとの押付状態を安定させて、バルブ40の側壁41とシール部材50とが小さい摺動抵抗にて摺接する状態を保ち、バルブ40の回転時および停止時のシール性を担保できる。
【0045】
(8)第1実施形態では、バルブ40の突部47の外径D1、および、ハウジング10の穴部17の内径D2は、バルブ40の一方側端面42の外径D3よりも小さい。
これによれば、バルブ40の突部47とハウジング10の穴部17との摺動部の半径を小さくすることで、摺動部の摺動抵抗を小さくし、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。
【0046】
(9)第1実施形態では、バルブ40の突部47の軸方向一方側の先端面48と、ハウジング10の穴部17の軸方向一方側の底面18とは、非接触である。
これによれば、ハウジング10の穴部17とバルブ40の突部47においてバルブ40の軸心CLの位置ずれ防止機能とは関係ない箇所での摺動を無くし、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。
【0047】
(10)第1実施形態では、バルブ40の側壁41の流路周縁部441の幅W1、ハウジング10のポート周縁部131の幅W2はいずれも2mm以上である。
これによれば、ハウジング10のポート周縁部131とシール部材50とを面接触させる構成において、ポート周縁部131の幅W2を大きくし、面接触の幅を広くすることで、ポート13間の流体の漏れ量をより微小としてシール性を向上できる。
同様に、バルブ40の流路周縁部441とシール部材50とを面接触させる構成において、流路周縁部441の幅W1を大きくし、面接触の幅を広くすることで、流路44間の流体の漏れ量をより微小としてシール性を向上できる。
また、バルブ40の流路周縁部441とシール部材50との面接触の幅を広くすることで、シール部材50に対するバルブ40の流路周縁部441のめり込みが無く、又はめり込むことが抑制される。そのため、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減し、且つ、そのトルクが波状となることを防ぐことができる。したがって、バルブ40を駆動するアクチュエータ30へのストレスを低減できる。
【0048】
(11)第1実施形態では、バルブ40の側壁41の流路周縁部441の幅W1と、ハウジング10のポート周縁部131の幅W2は、W2≧W1の関係を有する。
これによれば、ハウジング10のポート周縁部131の幅W2に対しバルブ40の流路周縁部441の幅W1を同じか小さくすることで、ハウジング10のポート13からバルブ40の流路44に流入する流体の圧力損失を低減できる。
【0049】
(12)第1実施形態では、バルブ40の流路周縁部441の曲率半径Rは、軸方向にて同一の位置にあるシール部材50のバルブ40側の面52の曲率半径と同一であるか、それより大きい。
これによれば、バルブ40の流路周縁部441とシール部材50との間の隙間を極力小さくするか又は無くすことでシール性を確保する構成において、バルブ40の流路周縁部441とシール部材50との面接触が実現される。したがって、ハウジング10内で流路44間の流体の漏れ量をより微小としてシール性を向上できる。
また、流路周縁部441の曲率半径Rを大きくすることで、シール部材50に対するバルブ40の流路周縁部441のめり込みが無く、又はめり込むことが抑制される。そのため、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減し、且つ、そのトルクが波状となることを防ぐことができる。したがって、バルブ40を駆動するアクチュエータ30へのストレスを低減できる。
【0050】
(13)第1実施形態では、ハウジング10およびシール部材50に対してバルブ40を回転させるために必要なトルクは2.0N・m以下である。
これによれば、バルブ40を駆動するアクチュエータ30を小型化し、バルブ40回転時の作動音、消費電力および電気的ノイズの低減を実現できる。
【0051】
(14)第1実施形態では、バルブ40の側壁41が沿う円錐形の母線Gとバルブ40の軸心CLとのなす内角θは5deg以上である。
これによれば、スプリング60がバルブ40の軸方向に印加する荷重に対し、バルブ40の側壁41とシール部材50との摺接状態、および、ハウジング10の内壁16とシール部材50との当接状態を保つことの可能な所望の分力を得ることが可能である。したがって、バルブ40とシール部材50との間の隙間、および、ハウジング10とシール部材50との間の隙間を極力小さくするか又は無くすことで、流路44間の流体の漏れ量を微小とするシール性を確保できる。それに対し、仮に、バルブ40の側壁41が沿う円錐形の母線Gとバルブ40の軸心CLとのなす内角θを5deg未満とすると、所望の分力を得ることができず、シール性を確保することが困難となる。
なお、バルブ40の側壁41が沿う円錐形の母線Gとバルブ40の軸心CLとのなす内角θの上限は、バルブ40の流路44内の容積およびハウジング10の径方向体格などに応じて適宜設定される。
【0052】
(15)第1実施形態では、ハウジング10の筒部11の内壁16は、バルブ40の側壁41が沿う円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状である。
これによれば、スプリング60がバルブ40の軸方向に印加する荷重に対して発生する分力(即ち、バルブ40の側壁41からシール部材50及びハウジング10に作用する分力)により、ハウジング10の内壁16とシール部材50との当接状態を保ち、シール性を確保できる。
【0053】
(16)第1実施形態では、ハウジング10の材質は、PA66の強化材、PPAの強化材、および、PPSの強化材の少なくとも1つである。
これによれば、ハウジング10の成形寸法精度と強度を両立させることができる。
【0054】
(17)第1実施形態では、バルブ40の材質は、PA66の強化材、PPAの強化材、PPSの強化材、および、PFの強化材の少なくとも1つである。
これによれば、バルブ40の成形寸法精度と強度を確保しつつ、バルブ40の側壁41とシール部材50との摺動抵抗を低減できる。
【0055】
(18)第1実施形態では、バルブ40、シール部材50およびカバー20は、ハウジング10に対し、軸方向他方側から着脱可能な構成となっている。
これによれば、仮に、第1実施形態の構成とは逆に、バルブ40の一方側端面42に入力軸45がある場合、その入力軸45が挿通する挿通孔22と軸シール部材24は、ハウジング10の底部12に設けられることになる。その場合、流体制御弁の製造時においてハウジング10に対しバルブ40を組み付ける際に、入力軸45のギヤ46と軸シール部材24とが接触して軸シール部材24が傷付くことがないように注意して組み付ける必要が有り、困難である。具体的には、組付ストローク全域でハウジング10の軸心CLとバルブ40の軸心CLとを合わせた状態で、ハウジング10にバルブ40を組み付ける必要がある。
それに対し、第1実施形態では、バルブ40の他方側端面43に入力軸45があり、カバー20が挿通孔22と軸シール部材24を有している。そのため、流体制御弁の製造時においてハウジング10に対しバルブ40を組み付ける際に、入力軸45と軸シール部材24とが接触するリスクが低減されるので、組み付けが容易である。
【0056】
(19)第1実施形態では、カバー20はハウジング10に対しスナップフィット21で固定されている。
これによれば、ハウジング10に対するカバー20の組付け、固定に必要な部品点数を低減できる。
【0057】
(20)第1実施形態では、バルブ40は、一方側端面42にストッパ49を有する。ハウジング10は、バルブ40のストッパ49を受けるストッパ当接部19を有する。
これによれば、バルブ40の一方側端面42にストッパ49を設け、側壁41に設けないことで、シール面を確実に確保できる。
【0058】
(21)第1実施形態では、ストッパ当接部19は、ハウジング10の底部12に設けられており、カバー20に設けられていない。
これによれば、ストッパ当接部19をハウジング10に設け、カバー20に設けないことで、ハウジング10とカバー20との締結部(例えば、スナップフィット21)への負荷要因を低減できる。
【0059】
(第2~第7実施形態)
第2~第7実施形態は、第1実施形態に対してバルブ40の一方側端面42とハウジング10の底部12との摺動部の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
(第2実施形態)
図13に示すように、第2実施形態の流体制御弁は、バルブ40の一方側端面42から突出する突部47と、ハウジング10の底部12に設けられた穴部17との間に軸受171を備えている。軸受171は、例えば、すべり軸受けであり、ハウジング10の穴部17の内側に固定され、バルブ40の突部47と摺動する。軸受171とハウジング10とは、インサート成形または2色成形により、一体成形される。或いは、軸受171は、ハウジング10の穴部17の内側に、アウトサートまたは圧入などにより後組付けしてもよい。
【0061】
軸受171の材質は、例えば金属など、バルブ40またはハウジング10の材質と異なるものを使用してもよい。或いは、軸受171の材質として、バルブ40またはハウジング10の材質と同種のものを使用する場合、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものとする。或いは、軸受171は、金属または樹脂の表面に、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものであってもよい。
【0062】
以上説明した第2実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第2実施形態の流体制御弁は、バルブ40の突部47とハウジング10の穴部17との間に設けられる軸受171を備える。
これによれば、バルブ40の突部47とハウジング10の穴部17との摺動抵抗をより小さくできる。
【0063】
(2)第2実施形態では、バルブ40またはハウジング10の材質と、軸受171の材質とは、異なっている。
これによれば、軸受171の材質として、バルブ40またはハウジング10とは異なる任意の材料を選択できる。
【0064】
(3)第2実施形態では、軸受171の材質を、バルブ40またはハウジング10の材質と同種のものとする場合、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものとする。
これによれば、軸受171(具体的にはすべり軸受け)とバルブ40の突部47との摺動抵抗をより小さくできる。
【0065】
(4)第2実施形態では、軸受171は、金属の表面に、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものであってもよい。
これによっても、軸受171(具体的にはすべり軸受け)とバルブ40の突部47との摺動抵抗をより小さくできる。
【0066】
(第3実施形態)
図14に示すように、第3実施形態の流体制御弁も、バルブ40の一方側端面42から突出する突部47と、ハウジング10の底部12に設けられた穴部17との間に軸受471を備えている。軸受471は、例えば、すべり軸受けであり、バルブ40の突部47の外側に固定され、ハウジング10の穴部17の内壁と摺動する。軸受471とバルブ40とは、インサート成形または2色成形により、一体成形される。或いは、軸受471は、バルブ40の突部47の外側に、アウトサートまたは圧入などにより後組付けしてもよい。
【0067】
軸受471の材質については、第2実施形態で説明したものと同様のものを使用することが可能である。
【0068】
以上説明した第3実施形態の流体制御弁も、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0069】
(第4実施形態)
図15に示すように、第4実施形態の流体制御弁は、バルブ本体400にインサート成形されたシャフト410を備えている。
シャフト410のうちバルブ40の一方側端面42から一方側に突出する部位は、バルブ40の突部47を構成している。バルブ40の突部47は、ハウジング10の穴部17に回転可能に支持されている。なお、シャフト410のうちバルブ40の他方側端面43から他方側に突出する部位は、入力軸45を構成している。
【0070】
以上説明した第4実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
第4実施形態では、バルブ40の突部47は、バルブ本体400にインサート成形されたシャフト410により形成されたものである。
これによれば、バルブ40における突部47の寸法精度を向上し、バルブ40の軸心CLの位置ずれ量をより低減できる。
【0071】
(第5実施形態)
図16に示すように、第5実施形態の流体制御弁は、第1~第4実施形態で説明したバルブ40の一方側端面42から突出する突部47と、ハウジング10の底部12に設けられた穴部17を備えていない。その代り、第5実施形態の流体制御弁のハウジング10は、底部12のうち軸心CLを中心とした位置にて軸方向他方側に突出する突形状部110を有する。また、バルブ40は、一方側端面42のうち軸心CLを中心とした位置にて軸方向他方側に凹む穴形状部420を有する。
【0072】
ハウジング10の有する突形状部110は、バルブ40の一方側端面42に設けられた穴形状部420の内側に挿入され、穴形状部420の内壁により回転可能に支持されている。ハウジング10の有する突形状部110の外径をD4、バルブ40の穴形状部420の内径をD5、バルブ40の一方側端面42の外径をD3とすると、D4<D3、D5<D3の関係を有する。なお、D4はD5より僅かに小さい(即ち、D4<D5<D3)。これにより、ハウジング10の突形状部110とバルブ40の穴形状部420とが摺動する摺動部の半径(即ち、D4、D5)を小さくすることで、摺動部の摺動抵抗を小さくし、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。なお、穴形状部420の内壁は軸心CLに平行に形成されており、突形状部110の軸方向の相対移動を許容している。また、ハウジング10の突形状部110の軸方向他方側の先端面111と、バルブ40の穴形状部420の軸方向他方側の底面421とは非接触となっている。
【0073】
以上説明した第5実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第5実施形態では、バルブ40は、一方側端面42のうち軸心CLを中心とした位置にて軸方向に凹む穴形状部420を有する。ハウジング10は、バルブ40の穴形状部420を回転可能に支持する突形状部110を有する。
これによれば、ハウジング10の突形状部110がバルブ40の穴形状部420を回転可能に支持することで、バルブ40の軸心CLの位置ずれが防がれる。そのため、バルブ40とシールとの押付状態を安定させて、バルブ40の側壁41とシール部材50とが小さい摺動抵抗にて摺接する状態を保ち、バルブ40の回転時および停止時のシール性を担保できる。
【0074】
(2)第5実施形態では、バルブ40の穴形状部420の内径D5、および、ハウジング10の突形状部110の外径D4は、バルブ40の一方側端面42の外径D3よりも小さい。
これによれば、バルブ40の穴形状部420とハウジング10の突形状部110との摺動部の半径を小さくすることで、摺動部の摺動抵抗を小さくし、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。
【0075】
(3)第5実施形態では、バルブ40の穴形状部420の軸方向他方側の底面421と、ハウジング10の突形状部110の軸方向他方側の先端面111とは、非接触である。
これによれば、バルブ40の穴形状部420とハウジング10の突形状部110においてバルブ40の軸心CLの位置ずれを防止機能とは関係ない箇所での摺動を無くし、バルブ40の回転駆動時のトルクを低減できる。
【0076】
(第6実施形態)
図17に示すように、第6実施形態の流体制御弁は、バルブ40の穴形状部420とハウジング10の突形状部110との間に軸受422を備えている。軸受422は、例えば、すべり軸受けであり、バルブ40の穴形状部420の内側に固定され、ハウジング10の突形状部110と摺動する。軸受422とバルブ40とは、インサート成形または2色成形により、一体成形される。或いは、軸受422は、バルブ40の穴形状部420の内側に、アウトサートまたは圧入などにより後組付けしてもよい。
【0077】
軸受422の材質は、第2実施形態で説明したものと同じく、例えば金属など、バルブ40またはハウジング10の材質と異なるものを使用してもよい。或いは、軸受422の材質として、バルブ40またはハウジング10の材質と同種のものを使用する場合、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものとする。或いは、軸受422は、金属または樹脂の表面に、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものであってもよい。
【0078】
以上説明した第6実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第6実施形態の流体制御弁は、バルブ40の穴形状部420とハウジング10の突形状部110との間に設けられる軸受422を備える。
これによれば、バルブ40の穴形状部420とハウジング10の突形状部110との摺動抵抗をより小さくできる。
【0079】
(2)第6実施形態では、バルブ40またはハウジング10の材質と、軸受422の材質とは、異なっている。
これによれば、軸受422の材質として、バルブ40またはハウジング10とは異なる任意の材料を選択できる。
【0080】
(3)第6実施形態では、軸受422の材質を、バルブ40またはハウジング10の材質と同種のものとする場合、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものとする。
これによれば、軸受422(具体的にはすべり軸受け)とハウジング10の突形状部110との摺動抵抗をより小さくできる。
【0081】
(4)第6実施形態では、軸受422は、金属の表面に、PTFE、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものであってもよい。
これによっても、軸受422(具体的にはすべり軸受け)とハウジング10の突形状部110との摺動抵抗をより小さくできる。
【0082】
(第7実施形態)
図18に示すように、第7実施形態の流体制御弁も、バルブ40の穴形状部420とハウジング10の突形状部110との間に軸受112を備えている。軸受112は、例えば、すべり軸受けであり、ハウジング10の突形状部110の外側に固定され、バルブ40の穴形状部420の内壁と摺動する。軸受112とハウジング10とは、インサート成形または2色成形により、一体成形される。或いは、軸受112は、ハウジング10の突形状部110の外側に、アウトサートまたは圧入などにより後組付けしてもよい。
【0083】
軸受112の材質については、第2、第6実施形態で説明したものと同様のものを使用することが可能である。
【0084】
以上説明した第7実施形態の流体制御弁も、第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。第8実施形態は、第1実施形態等に対して、アクチュエータ30とカバー20とハウジング10の固定方法を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
図19~
図21に示すように、第8実施形態では、アクチュエータ30とカバー20は、同一のねじ31でハウジング10に固定される。ねじ31として、例えばタッピングねじが用いられる。ハウジング10は、筒部11の内壁16よりも径方向外側の位置に、ねじ31を取り付けるためのハウジング側ねじ受部130を有している。カバー20は、ハウジング側ねじ受部130に対して軸方向に重なる位置に、カバー側ねじ受部25を有している。アクチュエータ30も、ハウジング側ねじ受部130とカバー側ねじ受部25に対して軸方向に重なる位置にアクチュエータ側ねじ受部33を有している。なお、アクチュエータ30のケース32とアクチュエータ側ねじ受部33とはアーム34により接続されている。このような構成において、ハウジング側ねじ受部130とカバー側ねじ受部25とアクチュエータ側ねじ受部33とが軸方向に重なり、ねじ31により共締めされて固定される。
【0087】
以上説明した第8実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
第8実施形態では、アクチュエータ30とカバー20とハウジング10とは、同一のねじ31で固定される。
これによれば、ハウジング10に対するアクチュエータ30とカバー20の組付け、固定に必要な部品点数を低減できる。
【0088】
(第9実施形態)
第9実施形態は、第1実施形態等に対してバルブ40の流路44の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0089】
図22および
図23に示すように、第9実施形態では、バルブ40の有する複数の流路44のうち軸心CL側の深部440は、バルブ40の側壁41が沿う円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状となっている。
図22では、バルブ40の側壁41が沿う円錐形の母線Gの一部を一点鎖線で示し、複数の流路44のうち軸心CL側の深部440が沿う円錐形の母線Gsを破線で示している。これにより、バルブ40の有する複数の流路44の深部440と、バルブ40の側壁41とは平行に形成されている。そのため、軸方向に配置される複数の流路44はいずれも、流路44の軸心CL側の深部440と側壁41との間の距離D6が揃っている。
【0090】
以上説明した第9実施形態の流体制御弁は、次の作用効果を奏するものである。
第9実施形態では、バルブ40の軸方向一方側に向かいバルブ40の外径が減少することに伴い流路44の奥行幅が減少するといった円錐形状バルブ特有の現象を抑制し、バルブ40の有する複数の流路44において、流路44の軸心CL側の深部440と側壁41との間の距離D6を揃えることができる。そのため、複数の流路44を流れる流体の圧力損失を揃え、通水性を確保できる。
【0091】
(第10実施形態)
第10実施形態は、第1実施形態等に対してスプリングガイド61の設置方法を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0092】
図24に示すように、第10実施形態では、バルブ40の他方側端面43には、軸方向他方側に突出する凸部460が設けられている。凸部460は、スプリングガイド61の径方向内側に設けられている。
【0093】
スプリングガイド61は、軸心CLに平行な断面がL字状に形成されており、その径方向内側の面が、バルブ40の他方側端面43に設けられた凸部460に摺接し、軸方向一方側の面がバルブ40の他方側端面43に摺接している。このような構成でも、スプリングガイド61は、スプリング60の軸ずれを防ぐと共に、スプリング60の付勢力をバルブ40に伝えることが可能である。
【0094】
以上説明した第10実施形態の流体制御弁も、第1~第9実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0095】
(第11実施形態)
第11実施形態について説明する。第11実施形態は、第1および第8実施形態等に対して、アクチュエータ30とカバー20とハウジング10の固定方法を変更したものであり、その他については第1および第8実施形態等と同様であるため、第1および第8実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0096】
図25および
図26に示すように、第11実施形態では、アクチュエータ30とカバー20は、第8実施形態と同じく、同一のねじ31でハウジング10に固定される。即ち、ハウジング側ねじ受部130とカバー側ねじ受部25とアクチュエータ側ねじ受部33とが軸方向に重なり、ねじ31により共締めされて固定される。
【0097】
ここで、第11実施形態では、第1および第8実施形態等で説明したカバー20とハウジング10とを固定するスナップフィットが廃止されている。このように、アクチュエータ30とカバー20とが同一のねじ31でハウジング10に固定される場合、カバー20とハウジング10とを固定するスナップフィットは無くてもよい。
【0098】
以上説明した第11実施形態の流体制御弁は、アクチュエータ30とカバー20とハウジング10との固定を簡素にできる。
【0099】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、付勢部材を圧縮コイルスプリングとして説明したが、これに限らず、例えば、付勢部材はゴムまたは皿バネ等であってもよい。
【0100】
(2)上記各実施形態では、ポート13の数を8個として説明したが、これに限らず、ポート13の数は任意に設定できる。また、バルブ40の流路44の形状も任意に設定できる。
【0101】
(3)上記各実施形態では、スプリングガイド61の材質とバルブ40の材質とが異なるものとして説明したが、これに限らず、例えば、スプリングガイド61の材質とバルブ40の材質とは同一または同種のものであってもよい。
【0102】
(4)上記各実施形態では、シール部材50は、ハウジング10側の部位の材質とバルブ40側の部位の材質とが異なるものとして説明したが、これに限らず、例えば、シール部材50は、ハウジング10側の部位の材質とバルブ40側の部位の材質とが同一または同種のものであってもよい。
【0103】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0104】
本発明の特徴は次のとおりである。
[観点1]
流体制御弁であって、
円錐形の側面に沿うように形成された側壁(41)、および前記側壁から前記円錐形の軸側に凹む流路(44)を有するバルブ(40)と、
前記円錐形の軸を回転の軸心(CL)として前記バルブを回転可能に収容するハウジング(10)であって、前記ハウジングの外壁(14)と内壁(16)とを貫通するポート(13)を有する前記ハウジングと、
前記ハウジングの内壁と前記バルブとの間に設けられ、前記ハウジング側の面(51)が前記ハウジングの内壁のうちポート周縁部(131)に当接し、前記バルブ側の面(52)が前記バルブの前記側壁に摺接するシール部材(50)と、
前記バルブを前記円錐形の頂点側に向けて付勢し、前記バルブの回転時および停止時において、前記バルブの前記側壁と前記シール部材とが摺接する状態を保ち、且つ、前記ハウジングの内壁と前記シール部材とが当接する状態を保つ付勢部材(60)と、を備える流体制御弁。
[観点2]
前記シール部材は、前記ハウジング側の部位の材質と前記バルブ側の部位の材質とが異なっている、観点1に記載の流体制御弁。
[観点3]
前記付勢部材は、スプリングであり、
前記バルブと前記スプリングとの間に設けられ、前記スプリングを支持すると共に前記スプリングの付勢力を前記バルブに伝えるスプリングガイド(61)をさらに備える観点1または2に記載の流体制御弁。
[観点4]
前記スプリングガイドの材質と前記バルブの材質とは異なっている、観点3に記載の流体制御弁。
[観点5]
前記スプリングガイドの材質は、金属の表面にポリテトラフルオロエチレンを塗布したもの、金属の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、金属の表面に高摺動材を塗布したもの、樹脂の表面にポリテトラフルオロエチレンを塗布したもの、樹脂の表面にフッ素樹脂を塗布したもの、および、樹脂の表面に高摺動材を塗布したものの少なくとも1つである、観点3または4に記載の流体制御弁。
[観点6]
前記バルブは、前記円錐形の頂点側に形成される一方側端面(42)、前記一方側端面に対向し前記円錐形の底面側に形成される他方側端面(43)、および、前記一方側端面のうち軸心を中心とした位置から軸方向に突出する突部(47)を有し、
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、前記一方側端面に対向し前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)、および、前記突部を回転可能に支持する穴部(17)を有する、観点1ないし5のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点7]
前記突部の外径(D1)、および、前記穴部の内径(D2)は、前記一方側端面の外径(D3)よりも小さい、観点6に記載の流体制御弁。
[観点8]
前記突部の軸方向一方側の先端面(48)と、前記穴部の軸方向一方側の底面(18)とは、非接触である、観点6または7に記載の流体制御弁。
[観点9]
前記突部と前記穴部との間に設けられる軸受(171、471)をさらに備える観点6ないし8のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点10]
前記バルブまたは前記ハウジングの材質と、前記軸受の材質とは、異なっている、観点9に記載の流体制御弁。
[観点11]
前記軸受の材質は、前記バルブまたは前記ハウジングの材質と同種のものであり、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものである、観点9に記載の流体制御弁。
[観点12]
前記軸受は、金属の表面に、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものである、観点9または10に記載の流体制御弁。
[観点13]
前記突部は、前記流路を形成するバルブ本体(400)にインサート成形されたシャフト(410)により形成されたものである、観点6ないし12のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点14]
前記バルブは、前記円錐形の頂点側に形成される一方側端面(42)、前記一方側端面に対向し前記円錐形の底面側に形成される他方側端面(43)、および、前記一方側端面のうち軸心を中心とした位置にて軸方向に凹む穴形状部(420)を有し、
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、前記一方側端面に対向し前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)、および、前記穴形状部を回転可能に支持する突形状部(110)を有する、観点1ないし5のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点15]
前記穴形状部の内径(D5)、および、前記突形状部の外径(D4)は、前記一方側端面の外径(D3)よりも小さい、観点14に記載の流体制御弁。
[観点16]
前記穴形状部の軸方向他方側の底面(421)と、前記突形状部の軸方向他方側の先端面(111)とは、非接触である、観点14または15に記載の流体制御弁。
[観点17]
前記穴形状部と前記突形状部との間に設けられる軸受(422、112)をさらに備える、観点14ないし16のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点18]
前記バルブまたは前記ハウジングの材質と、前記軸受の材質とは、異なっている、観点17に記載の流体制御弁。
[観点19]
前記軸受の材質は、前記バルブまたは前記ハウジングの材質と同種のものであり、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを配合したものである、観点17に記載の流体制御弁。
[観点20]
前記軸受は、金属の表面に、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂および高摺動材の少なくとも1つを塗布したものである、観点17または18に記載の流体制御弁。
[観点21]
前記バルブの前記側壁のうち前記シール部材に摺接する流路周縁部(441)の幅をW1、前記ハウジングの内壁のうち前記シール部材に当接するポート周縁部(131)の幅をW2とするとき、W1とW2はいずれも2mm以上である、観点1ないし20のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点22]
前記バルブの前記側壁のうち前記シール部材に摺接する流路周縁部の幅をW1、前記ハウジングの内壁のうち前記シール部材に当接するポート周縁部の幅をW2とするとき、W2≧W1の関係を有する、観点1ないし21のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点23]
前記バルブの前記側壁のうち前記シール部材に摺接する流路周縁部の曲率半径(R)は、軸心方向にて同一の位置にある前記シール部材の前記バルブ側の面の曲率半径と同一であるか、それより大きい、観点1ないし22のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点24]
前記ハウジングおよび前記シール部材に対して前記バルブを回転させるために必要なトルクは2.0N・m以下である、観点1ないし23のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点25]
前記バルブの前記側壁が沿う前記円錐形の母線(G)と前記バルブの軸心とのなす内角(θ)は5deg以上である、観点1ないし24のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点26]
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、および前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)を有し、
前記筒部の内壁は、前記バルブの前記側壁が沿う前記円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状である、観点1ないし25のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点27]
前記バルブは、前記円錐形の底面側に形成される他方側端面から軸方向に突出してトルクが入力される入力軸(45)を有し、
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、および前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)を有し、
流体制御弁は、前記筒部の他方側の開口を塞ぐと共に、前記入力軸が挿通する挿通孔(22)、および、前記挿通孔の内側に設けられて前記挿通孔の内壁と前記入力軸との隙間からの流体漏れを防ぐ軸シール部材(24)を有するカバー(20)をさらに備え、
前記バルブ、前記シール部材および前記カバーは、前記ハウジングに対し、軸方向他方側から着脱可能な構成となっている、観点1ないし26のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点28]
前記カバーは前記ハウジングに対しスナップフィット(21)で固定されている、観点27に記載の流体制御弁。
[観点29]
前記バルブの前記入力軸に前記トルクを入力するアクチュエータ(30)をさらに備え、
前記アクチュエータと前記カバーは、同一のねじ(31)で前記ハウジングに固定される、観点27または28に記載の流体制御弁。
[観点30]
前記バルブは、前記円錐形の頂点側に形成される一方側端面から軸心から離れた位置で軸方向一方側に突出するストッパ(49)を有し、
前記ハウジングは、前記ストッパを受けるストッパ当接部(19)を有する、観点1ないし29のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点31]
前記ハウジングは、前記バルブの径方向外側に設けられる筒部(11)、前記筒部の一方側の端部を塞ぐ底部(12)を有し、
前記ストッパ当接部は、前記底部に設けられている、観点1ないし30のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点32]
前記バルブは、軸心方向に配置される複数の前記流路を有しており、
複数の前記流路のうち軸心側の深部(440)は、前記バルブの前記側壁が沿う前記円錐形に対し相似かつ同軸の円錐形の側面に沿った形状である、観点1ないし31のいずれか1つに記載の流体制御弁。
[観点33]
前記バルブは、軸心方向に配置される複数の前記流路を有しており、
複数の前記流路は、軸心側の深部と前記側壁との間の距離(D6)が揃っている、観点1ないし32のいずれか1つに記載の流体制御弁。
【符号の説明】
【0105】
10:ハウジング、13:ポート、14:外壁、16:内壁、40:バルブ、41:側壁、44:流路、51:シール部材のハウジング側の面、52:シール部材のバルブ側の面、60:スプリング、131:ポート周縁部、CL:軸心