IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095141
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240703BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240703BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/78 652T
H01L29/78 657D
H01L29/78 652F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/91 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212203
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 正和
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セルピッチを広げることなくショットキーバリアダイオードを内蔵し、寄生pnダイオードのバイポーラ動作による経年劣化を防止する炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、トランジスタ部70及びダイオード部80を備え、半導体基板10と、半導体基板のおもて面に設けられた複数のトレンチ部40と、半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域18と、ダイオード部におけるトレンチ部の側壁および底部を覆う第2導電型の第1トレンチボディ部63と、を備える。トランジスタ部およびダイオード部は、複数のトレンチ部に挟まれたメサ部において、トレンチ部の延伸方向に沿って交互に配列される。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタ部およびダイオード部を備える炭化珪素半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた複数のトレンチ部と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記ダイオード部におけるトレンチ部の側壁および底部を覆う第2導電型領域と
を備え、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記複数のトレンチ部に挟まれたメサ部において、前記トレンチ部の延伸方向に沿って交互に配列される、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記トランジスタ部は、前記半導体基板のおもて面において、第1導電型のソース領域および第2導電型のコンタクト領域を有する、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の深さ方向において、前記ソース領域の厚さは、前記コンタクト領域の厚さよりも薄い、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ドリフト領域の上方であって、前記ソース領域および前記コンタクト領域の下方に設けられた第2導電型のベース領域を備える、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ベース領域の前記トレンチ部の延伸方向における幅は、前記コンタクト領域の前記トレンチ部の延伸方向における幅および前記ソース領域の前記トレンチ部の延伸方向における幅の合計よりも小さい、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
上面視において、前記ベース領域の面積は、前記コンタクト領域の面積および前記ソース領域の面積の合計よりも小さい、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ベース領域は、前記半導体基板の前記おもて面において、前記ダイオード部における前記トレンチ部の側壁と接して設けられる、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記トレンチ部の延伸方向において、前記第2導電型領域と前記コンタクト領域とは直接接触している、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記メサ部において、前記トレンチ部の延伸方向に沿い、前記ベース領域の下端に接するように設けられた第2導電型のメサボディ領域を備える、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記メサボディ領域は、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部に設けられた第1メサボディ部と、
前記トランジスタ部において前記第1メサボディ部の上方に設けられ、上端が前記ベース領域の下端と接する第2メサボディ部とを含み、
前記第1メサボディ部の上端は、前記トランジスタ部において前記第2メサボディ部の下端と接している、請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記第1メサボディ部および前記第2メサボディ部のドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度以上であり、前記コンタクト領域のドーピング濃度以下である、請求項10に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記第1メサボディ部および前記第2メサボディ部のドーピング濃度は、1×1018cm-3以上、4×1018cm-3以下である、請求項10に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記複数のトレンチ部の底部および側部を覆うように設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のトレンチボディ領域を備える、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項14】
前記トレンチボディ領域は、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部に設けられた第1トレンチボディ部と、
前記ダイオード部において前記第1トレンチボディ部の上方に設けられ、上端が前記ベース領域の下端と接する第2トレンチボディ部とを含み、
前記第1トレンチボディ部の上端は、前記ダイオード部において前記第2トレンチボディ部の下端と接するように設けられる、請求項13に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項15】
前記第2導電型領域は、前記第1トレンチボディ部、前記第2トレンチボディ部、および前記ベース領域を含む、請求項14に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項16】
前記第2導電型領域は、前記第1トレンチボディ部、前記第2トレンチボディ部、前記ベース領域、および前記コンタクト領域を含む、請求項14に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項17】
前記トレンチ部の側壁において、前記第2導電型領域の厚さは0.1μm以上、0.3μm以下である、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項18】
前記ベース領域は、前記半導体基板の前記おもて面において、前記ソース領域と前記トレンチ部との間に設けられる、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項19】
前記トランジスタ部は、前記トレンチ部を挟んで前記ダイオード部と対向し、
前記ダイオード部は、前記トレンチ部を挟んで前記トランジスタ部と対向する、
請求項2から18のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項20】
上面視において、前記トランジスタ部の面積は、前記ダイオード部の面積よりも大きい、請求項19に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ソース・ドレイン間に寄生pnダイオードに並列に寄生ショットキーダイオードを設け、MOSFETのオフ時に寄生pnダイオードがオンする前に寄生ショットキーダイオードがオンするようにできる」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2018-107168号公報
[特許文献2] 特開2019-160898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セルピッチを広げることなくMOSFETにショットキーバリアダイオードを内蔵し、寄生pnダイオードのバイポーラ動作による経年劣化を防止しつつ、炭化珪素半導体装置の特性劣化を抑制することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、トランジスタ部およびダイオード部を備える炭化珪素半導体装置であって、半導体基板と、前記半導体基板のおもて面に設けられた複数のトレンチ部と、前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記ダイオード部におけるトレンチ部の側壁および底部を覆う第2導電型領域とを備え、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記複数のトレンチ部に挟まれたメサ部において、前記トレンチ部の延伸方向に沿って交互に配列される、炭化珪素半導体装置を提供する。
【0005】
上記炭化珪素半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記半導体基板のおもて面において、第1導電型のソース領域および第2導電型のコンタクト領域を有してよい。
【0006】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記半導体基板の深さ方向において、前記ソース領域の厚さは、前記コンタクト領域の厚さよりも薄くてよい。
【0007】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ドリフト領域の上方であって、前記ソース領域および前記コンタクト領域の下方に設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。
【0008】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ベース領域の前記トレンチ部の延伸方向における幅は、前記コンタクト領域の前記トレンチ部の延伸方向における幅および前記ソース領域の前記トレンチ部の延伸方向における幅の合計よりも小さくてよい。
【0009】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、上面視において、前記ベース領域の面積は、前記コンタクト領域の面積および前記ソース領域の面積の合計よりも小さくてよい。
【0010】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ベース領域は、前記半導体基板の前記おもて面において、前記ダイオード部における前記トレンチ部の側壁と接して設けられてよい。
【0011】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記トレンチ部の延伸方向において、前記第2導電型領域と前記コンタクト領域とは直接接触していてよい。
【0012】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記メサ部において、前記トレンチ部の延伸方向に沿い、前記ベース領域の下端に接するように設けられた第2導電型のメサボディ領域を備えてよい。
【0013】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記メサボディ領域は、前記トランジスタ部および前記ダイオード部に設けられた第1メサボディ部と、前記トランジスタ部において前記第1メサボディ部の上方に設けられ、上端が前記ベース領域と接する第2メサボディ部とを含み、前記第1メサボディ部の上端は、前記トランジスタ部において前記第2メサボディ部の下端と接してよい。
【0014】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第1ボディ部および前記第2ボディ部のドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度以上であってよく、前記コンタクト領域のドーピング濃度以下であってよい。
【0015】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第1ボディ部および前記第2ボディ部のドーピング濃度は、1×1018cm-3以上であってよく、4×1018cm-3以下であってよい。
【0016】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記複数のトレンチ部の底部および側部を覆うように設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のトレンチボディ領域を備えてよい。
【0017】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記トレンチボディ領域は、前記トランジスタ部および前記ダイオード部に設けられた第1トレンチボディ部と、前記ダイオード部において前記第1トレンチボディ部の上方に設けられ、前記ベース領域の下端と接する第2トレンチボディ部とを含み、前記第1トレンチボディ部の上端は、前記ダイオード部において前記第2トレンチボディ部の下端と接してよい。
【0018】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第2導電型領域は、前記第1トレンチボディ部、前記第2トレンチボディ部、および前記ベース領域を含んでよい。
【0019】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記トレンチ部の側壁において、前記第2導電型領域の厚さは0.1μm以上であってよく、0.3μm以下であってよい。
【0020】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ベース領域は、前記半導体基板の前記おもて面において、前記ソース領域と前記トレンチ部との間に設けられてよい。
【0021】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記トレンチ部を挟んで前記ダイオード部と対向してよく、前記ダイオード部は、前記トレンチ部を挟んで前記トランジスタ部と対向してよい。
【0022】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、上面視において、前記トランジスタ部の面積は、前記ダイオード部の面積よりも大きくてよい。
【0023】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】炭化珪素半導体装置100の上面の一例を表す図である。
図2A】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
図2B】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
図2C】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
図2D】炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。
図2E】炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。
図2F】炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。
図3A】炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。
図3B】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の変形例を表す図である。
図4】炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」、「おもて」、「裏」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0027】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
【0028】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
【0029】
本明細書では、NまたはPを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NやPに付す+および-は、それぞれ、それが付されていない層や領域よりも高ドーピング濃度および低ドーピング濃度であることを意味する。
【0030】
図1は、炭化珪素半導体装置100の上面の一例を表す図である。炭化珪素半導体装置100は、高電圧および/または大電流を制御するパワー半導体装置であってよい。一例として、炭化珪素半導体装置100は、MOSFETである。
【0031】
炭化珪素半導体装置100は、半導体基板10を有し、半導体基板10において、活性部と、耐圧構造部(非図示)とを備える。本例の炭化珪素半導体装置100は、活性部において、トランジスタ部70と、ダイオード部80とを備える。本例の炭化珪素半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21において、ソース領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ドリフト領域18と、ゲートトレンチ部40とを備える。
【0032】
半導体基板10は、炭化珪素からなり、おもて面21を有する。半導体基板10は、エピタキシャル成長によって形成されてよい。一例として、半導体基板10の結晶構造は、4H-SiCである。図1において、X軸は炭化珪素からなる半導体基板10の[11-20]方向であってよく、Y軸は半導体基板10の[1-100]方向であってよく、Z軸は半導体基板10の[000-1]方向であってよい。
【0033】
活性部は、半導体基板10に設けられる。活性部は、炭化珪素半導体装置100の動作時に、主電流が流れる領域であってよい。一例として、活性部は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)構造を有するが、これに限定されない。
【0034】
耐圧構造部は、半導体基板10において、活性部の外周に設けられる。耐圧構造部は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和してよい。一例として、耐圧構造部は、接合終端(Junction Termination Extension、JTE)構造を有する。変形例として、耐圧構造部は、ガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有してよい。
【0035】
炭化珪素半導体装置100の上面側には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、半導体基板10のおもて面21において、複数のゲートトレンチ部40が形成されている。
【0036】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN型である。ドリフト領域18は、N型のドーパントをドーピングしながら、炭化珪素をエピタキシャル成長させることによって設けられてよい。N型のドーパントは、一例として窒素原子である。本例のドリフト領域18のドーピング濃度は、後述するバッファ領域24のドーピング濃度よりも低くてよい。
【0037】
ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21において、半導体基板10の深さ方向に延伸して設けられた第2導電型の領域である。本例のベース領域14は、一例としてP型である。ベース領域14は、ダイオード部80における半導体基板10のおもて面21において、ゲートトレンチ部40の側壁と接して設けられる。ベース領域14は、トランジスタ部70において、ドリフト領域18の上方であって、ソース領域12およびコンタクト領域15の下方に設けられる。
【0038】
ベース領域14は、P型のドーパントをドーピングしながら、ドリフト領域18の上方に炭化珪素をエピタキシャル成長させることによって設けられてよい。P型のドーパントは、一例としてアルミニウム原子である。本例のベース領域14のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよい。一例において、ベース領域14のドーピング濃度は2×1016cm-3以上であってよく、2×1017cm-3以下であってよい。
【0039】
ソース領域12は、半導体基板10のおもて面21に設けられた第1導電型の領域である。本例のソース領域12は、一例としてN+型である。ソース領域12は、ゲートトレンチ部40の側壁と接してよい。本例のソース領域12は、ゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられる。ソース領域12は、ゲートトレンチ部40を挟んでソース領域12と対向して設けられてもよい。即ち、ソース領域12は、上面視において、ゲートトレンチ部40の配列方向にストライプ状に設けられてよい。一例では、ソース領域12とゲートトレンチ部40の側壁との間に、ベース領域14が設けられてもよい。
【0040】
ソース領域12は、半導体基板10のおもて面21にフォトレジスト等のマスクを形成し、半導体基板10のおもて面21からイオン注入を行うことで形成されてよい。ソース領域12は、半導体基板10のエピタキシャル層に形成されてよい。一例として、ソース領域12を形成するためのドーパントは、リンまたは窒素であってよい。ソース領域12は、1段階のイオン注入で形成されてよく、2段階以上のイオン注入で形成されてよい。
【0041】
本例のソース領域12のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよい。一例において、ソース領域12のドーピング濃度は1×1018cm-3以上であってよく、1×1021cm-3以下であってよい。
【0042】
コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面21に設けられた第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40を挟んでコンタクト領域15と対向して設けられてもよい。即ち、コンタクト領域15は、上面視において、ゲートトレンチ部40の配列方向にストライプ状に設けられてよい。
【0043】
コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面21にフォトレジスト等のマスクを形成し、半導体基板10のおもて面21からイオン注入を行うことで形成されてよい。コンタクト領域15は、半導体基板10のエピタキシャル層に形成されてよい。コンタクト領域15を形成するためのドーパントは、アルミニウムまたはボロンであってよい。コンタクト領域15は、1段階のイオン注入で形成されてよく、2段階以上のイオン注入で形成されてよい。
【0044】
本例のコンタクト領域15のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよく、ベース領域14のドーピング濃度よりも高くてよい。一例において、コンタクト領域15のドーピング濃度は1×1019cm-3以上であってよく、1×1020cm-3以下であってよい。
【0045】
図1に示したように、トランジスタ部70において、ソース領域12とコンタクト領域15とが接していてよい。一例では、トランジスタ部70において、ベース領域14がソース領域12とコンタクト領域15との間に設けられることにより、ソース領域12とコンタクト領域15とが分離されていてよい。一例では、ソース領域12とコンタクト領域15とは、ゲートトレンチ部40の延伸方向において、0μmよりも大きく、0.2μm以下の幅で分離されていてよい。
【0046】
トランジスタ部70は、半導体基板10のおもて面21にソース領域12またはコンタクト領域15が設けられた領域である。本例では、トランジスタ部70はMOSFETである。
【0047】
ダイオード部80は、半導体基板10のおもて面21にソース領域12またはコンタクト領域15が設けられていない領域である。本例のダイオード部80は、半導体基板10のおもて面21にショットキー接続を構成できる第1導電型の領域が設けられている。ショットキー接続を構成できる第1導電型の領域は、ドリフト領域18であってよく、ドーパントをイオン注入して形成できる他の領域であってよい。ダイオード部80において、半導体基板10のおもて面21にはベース領域14が設けられてもよい。本例のダイオード部80は、ショットキーバリアダイオード(SBD)であってよい。
【0048】
図1の例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、複数のゲートトレンチ部40に挟まれたメサ部において、トレンチ延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って、交互に配置されている。他の例では、活性部には、トランジスタ部70およびダイオード部80の一方だけが設けられていてもよい。
【0049】
トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ配列方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、ゲートトレンチ部40の配列方向とは同一であってよい。
【0050】
図1のように、トランジスタ部70およびダイオード部80を隣接して配置することで、逆導通時にトランジスタ部70にかかる電圧がダイオード部80にクランプされ、トランジスタ部70における寄生ダイオードがオンとなることを防ぐことができる。これにより、コンタクト領域15およびベース領域14からドリフト領域18への正孔注入が低減され、再結合による積層欠陥の拡張が抑制されるので、積層欠陥拡張による炭化珪素半導体装置100の特性劣化を抑制することができる。
【0051】
また、図1のようにトランジスタ部70およびダイオード部80をトレンチ延伸方向に沿って交互に配置することで、セルピッチ(隣接するゲートトレンチ部40の間隔)を変更せずに、ダイオード部80を内蔵することが可能になる。これにより、炭化珪素半導体装置100におけるトランジスタ部70とダイオード部80との比率を細かく調節することができる。
【0052】
図2Aは、図1におけるa-a'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。図2Aは、炭化珪素半導体装置100の、上面視においてソース領域12が設けられた領域のYZ断面図である。本例の炭化珪素半導体装置100は、ソース領域12と、ベース領域14と、ドリフト領域18と、バッファ領域24と、絶縁膜38と、ゲートトレンチ部40と、ソース電極52と、ドレイン電極54と、メサボディ領域60と、第1トレンチボディ部63とを備える。
【0053】
バッファ領域24は、半導体基板10の裏面23に設けられた第1導電型の領域である。バッファ領域24は、ドリフト領域18の下方に設けられる。本例のバッファ領域24は、一例としてN+型である。バッファ領域24は、N+型の炭化珪素からなる炭化珪素基板であってよい。
【0054】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21に設けられる。ゲートトレンチ部40は、ベース領域14を貫通してドリフト領域18に達して設けられてよい。ゲートトレンチ部40がベース領域14を貫通するとは、ベース領域14を形成してからゲートトレンチ部40を形成する順序で製造されたものに限定されない。ゲートトレンチ部40を形成した後に、ゲートトレンチ部40の側壁にベース領域14を形成したものも、ゲートトレンチ部40がベース領域14を貫通したものに含まれる。ゲートトレンチ部40の底部は、後述する第1トレンチボディ部63によって覆われていてよい。
【0055】
ゲートトレンチ部40は、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチ部40の内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチ部40の内壁の半導体を酸化することで形成されてよい。
【0056】
ゲート導電部44は、ゲートトレンチ部40の内部において、ゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21において絶縁膜38によって覆われる。
【0057】
ソース電極52は、ソース電位に設定され、絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上方に設けられる。ソース電極52は、金属を含む材料で形成される。ソース電極52は、バリアメタルを含んでよい。ソース電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。
【0058】
ドレイン電極54は、半導体基板10の裏面23に形成される。ドレイン電極54は、金属等の導電材料で形成される。
【0059】
第1トレンチボディ部63は、ゲートトレンチ部40の底部および側面の一部を覆うように、ゲートトレンチ部40の下端に設けられた第2導電型の領域である。本例の第1トレンチボディ部63は、一例としてP+型である。第1トレンチボディ部63を設けることで、炭化珪素半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0060】
メサボディ領域60は、隣接するゲートトレンチ部40の間のメサ部において、ベース領域14の下端と接するように設けられた第2導電型の領域である。本例のメサボディ領域60は、一例としてP+型である。本例のメサボディ領域60は、第1メサボディ部61および第2メサボディ部62を含む。メサボディ領域60は、半導体基板10のおもて面21からの2段階のイオン注入を経て形成されてよく、1段階のイオン注入を経て形成されてよい。
【0061】
第1メサボディ部61は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、ベース領域14の下端よりも下方に設けられる。第1メサボディ部61は、上端が第2メサボディ部62の下端と接するように設けられてよい。第1メサボディ部61は、第1トレンチボディ部63を形成する際、同時に形成されてよい。半導体基板10の深さ方向において、第1メサボディ部61は、第1トレンチボディ部63と同一の深さに形成されてよく、異なる深さで形成されてもよい。第1メサボディ部61の下端は、第1トレンチボディ部63の下端より上方に設けられてよい。
【0062】
第2メサボディ部62は、トランジスタ部70において、ベース領域14および第1メサボディ部61の間に設けられる。第2メサボディ部62は、上端がベース領域14の下端と接するように設けられる。
【0063】
第1メサボディ部61および第2メサボディ部62のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度以上であってよくコンタクト領域15のドーピング濃度以下であってよい。一例において、第1メサボディ部61および第2メサボディ部62のドーピング濃度は、1×1018cm-3以上であってよく、4×1018cm-3以下であってよい。
【0064】
炭化珪素半導体装置100においてアバランシェが発生した際、動作電流よりも大きなアバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れ込む場合がある。本例では、メサボディ領域60を設けることで、アバランシェ電流がメサボディ領域60を通っておもて面21に流れることができ、アバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れることを抑制できる。
【0065】
図2Bは、図1におけるb-b'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。図2Bは、炭化珪素半導体装置100の、上面視においてコンタクト領域15が設けられた領域のYZ断面図である。図2Bを用いて、図2Aとの相違点について説明する。
【0066】
図2Bにおいては、半導体基板10のおもて面21の全面にコンタクト領域15が形成されている。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。
【0067】
図2Bにおいては、コンタクト領域15の下方の全面にベース領域14が形成されているが、一例において、ベース領域14は、ゲートトレンチ部40の近傍にのみ設けられていればよい。ベース領域14がコンタクト領域15の下方の全面に設けられていなくても、後述する第2導電型領域19とコンタクト領域15とが接していれば、ダイオード部80におけるアバランシェ電流が流れる経路を制限でき、ゲート絶縁膜42の破損を防ぐことができる。
【0068】
接続領域66は、トランジスタ部70において、コンタクト領域15の下方に設けられた第2導電型の領域である。本例の接続領域66は、一例としてP+型である。接続領域66は、第1メサボディ部61と、第1トレンチボディ部63とを任意の箇所で接続してよい。接続領域は第1メサボディ部61と同一の深さに形成されてよく、第1メサボディ部61を形成する際、同時に形成されてよい。
【0069】
接続領域66を設けることで、第1メサボディ部63からメサボディ領域60、ベース領域14および、コンタクト領域15を経由した電流経路を形成することができる。接続領域66はトランジスタ部70の任意の箇所で形成されてよく、例えばソース領域12の下方に形成されてもよい。
【0070】
図2Cは、図1におけるc-c'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。図2Cは、炭化珪素半導体装置100の、ダイオード部80におけるYZ断面図である。本例の炭化珪素半導体装置100は、ベース領域14と、ドリフト領域18と、バッファ領域24と、絶縁膜38と、ゲートトレンチ部40と、ソース電極52と、ドレイン電極54と、第1メサボディ部61と、トレンチボディ領域65とを備える。
【0071】
第2導電型領域19は、ダイオード部80において、ゲートトレンチ部40の側壁および底面を覆うように設けられた第2導電型の領域である。第2導電型領域は、ベース領域14と、トレンチボディ領域65とを含む。第2導電型領域19は、半導体基板10のおもて面21に露出するように設けられてよい。第2導電型領域19は、半導体基板10のおもて面21において、絶縁膜38と接してよい。第2導電型領域19は、ベース領域14の上方に接するように設けられたコンタクト領域15を備えてもよい。即ち、第2導電型領域19は、トランジスタ部70において、ゲートトレンチ部40の側壁および底面を覆うように設けられてもよい。コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面21において、絶縁膜38と接してよい。
【0072】
トレンチボディ領域65は、ゲートトレンチ部40の底部および側面の一部を覆うように、ゲートトレンチ部40の下端に設けられた第2導電型の領域である。本例のトレンチボディ領域65は、一例としてP+型である。本例のトレンチボディ領域65は、第1トレンチボディ部63および第2トレンチボディ部64を含む。トレンチボディ領域65は、半導体基板10のおもて面21からの2段階のイオン注入を経て形成されてよく、1段階のイオン注入を経て形成されてよい。
【0073】
第1トレンチボディ部63は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、ベース領域14の下端よりも下方に設けられる。第1トレンチボディ部63は、第1メサボディ部61を形成する際、同時に形成されてよい。第1トレンチボディ部63はダイオード部80において、上端が第2トレンチボディ部64の下端と接するように設けられる。半導体基板10の深さ方向において、第1トレンチボディ部63は、第1メサボディ部61と同一の深さに形成されてよく、異なる深さで形成されてもよい。
【0074】
第2トレンチボディ部64は、ダイオード部80において、ベース領域14および第1トレンチボディ部63の間に設けられる。第2トレンチボディ部64は、上端がベース領域14の下端と接するように設けられる。
【0075】
炭化珪素半導体装置100においてアバランシェが発生した際、動作電流よりも大きなアバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れ込む場合がある。本例では、第2導電型領域19を設けることで、アバランシェ電流が第2導電型領域19およびコンタクト領域15を通っておもて面21に流れることができ、アバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れることを抑制できるので、ゲート導電部44の破損を防ぐことができる。
【0076】
本例のダイオード部80には、第1メサボディ部61が設けられる。ダイオード部80に第1メサボディ部61が設けられることで、炭化珪素半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0077】
本例のダイオード部80には、第2メサボディ部62が設けられなくてよい。ダイオード部80に第2メサボディ部62が設けられないことで、ダイオード部80における抵抗を低減させることができる。
【0078】
ゲートトレンチ部40の側壁において、第2導電型領域19のトレンチ配列方向における幅W19は、半導体基板10の深さ方向において均一であってよい。W19は、ゲート絶縁膜42の幅と同一であってよく、ゲート絶縁膜42の幅よりも厚くてよい。一例では、W19は0.1μm以上であってよく、0.3μm以下であってよい。
【0079】
図2Dは、図1におけるd-d'線における炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。図2Dは、炭化珪素半導体装置100の、隣接するゲートトレンチ部40の中央を通る領域のXZ断面図である。
【0080】
半導体基板10の深さ方向において、ソース領域12の厚さは、コンタクト領域15の厚さよりも薄くてよい。半導体基板10の深さ方向において、コンタクト領域15の下端は、ソース領域12の下端よりも深い位置に設けられてよい。ソース領域12の厚さをコンタクト領域15の厚さよりも薄くすることにより、ゲートトレンチ40の側壁においてソース領域12とドリフト領域18の間にチャネルが形成されることを防ぐことができる。
【0081】
ベース領域14のトレンチ延伸方向における幅は、コンタクト領域15のトレンチ伸方向における幅およびソース領域12のトレンチ延伸方向における幅の合計よりも小さくてよい。即ち、トレンチ延伸方向におけるベース領域14の幅W14と、コンタクト領域15の幅W15と、ソース領域12の幅W12との間には、W14<W12+2×W15の関係が成立してよい。これにより、半導体基板10のおもて面21近傍における電界集中を緩和することができる。また、上面視において、ベース領域14の面積は、コンタクト領域15の面積およびソース領域12の面積の合計よりも小さくてよい。
【0082】
図2Eは、図1におけるe-e'線における炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。図2Eは、炭化珪素半導体装置100の、第2導電型領域19を通る領域のXZ断面図である。
【0083】
図2Eにおいて一点鎖線で表したように、炭化珪素半導体装置100は、ダイオード部80において第2導電型領域19を備える。第2導電型領域19は、ベース領域14と、トレンチボディ領域65とを含む。第2導電型領域19は、ゲートトレンチ部40の近傍において、ダイオード部80の全面に設けられてよい。
【0084】
第2導電型領域19は、トレンチ延伸方向において、隣接するコンタクト領域15の両方と直接接触していてよい。第2導電型領域19は、隣接するトランジスタ部70の間に設けられたダイオード部80のゲートトレンチ部40の近傍において、一方のコンタクト領域15から他方のコンタクト領域15まで延伸して設けられてよい。これによりアバランシェ電流が第2導電型領域19およびコンタクト領域15を通っておもて面21に流れることができ、アバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れることを抑制できるので、ゲート導電部44の破損を防ぐことができる。
【0085】
図2Fは、図1におけるf-f'線における炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。図2Fは、炭化珪素半導体装置100の、メサボディ領域60およびトレンチボディ領域65を通らない領域のXZ断面図である。
【0086】
図2Fに示したように、ゲートトレンチ部40の近傍におけるダイオード部80およびMOSFETとして動作するソース領域12の下方では、高濃度の第2導電型の領域が設けられていない。このように、チャネルとなる領域に高濃度の第2導電型領域が設けられないよう設計することで、炭化珪素半導体装置100の性質を損なうことなく、アバランシェ時におけるゲート導電部44の破損回避や、ドレイン電極54からソース電極52への電流のリークを抑制するなどの効果を得ることができる。
【0087】
図2Fに示したように、接続領域66がコンタクト領域15の下方に設けられてもよい。この場合、MOSFETとして動作する領域のチャネルとなる領域に高濃度の第2導電型領域が形成されるが、接続領域66の形成箇所を限定することで炭化珪素半導体装置100の性質を損なうことを防ぐことができる。
【0088】
図3Aは、炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。図3Aの実施例では、トランジスタ部70が、ゲートトレンチ部40を挟んでダイオード部80と対向しており、ダイオード部80が、ゲートトレンチ部40を挟んでトランジスタ部70と対向している構成となっている点で、図1の実施例と相違する。即ち、図3Aのように、トランジスタ部70とダイオード部80とが千鳥構造で設けられてよい。
【0089】
トランジスタ部70とダイオード部80とを千鳥構造で設けることにより、トランジスタ部70において寄生ダイオードがオンとなることを更に抑制することができる。これにより、より効率的に積層欠陥の拡張による炭化珪素半導体装置100の特性劣化を抑制することができる。
【0090】
図3Bは、図3Aのg-g'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。図3Bは、図3Aにおいて、トランジスタ部70における半導体基板10のおもて面21にソース領域12が設けられた領域のYZ断面図である。
【0091】
図3Bの例では、すべてのメサ部において第1メサボディ部61が設けられており、すべてのゲートトレンチ部40において第1トレンチボディ部63が設けられている。一方で、第2メサボディ部62はトランジスタ部70においてのみ設けられており、ダイオード部80では設けられていない。また、第2トレンチボディ部64はダイオード部80においてのみ設けられており、トランジスタ部70では設けられていない。また、ダイオード部80の第2導電型領域19は、トランジスタ部70のコンタクト領域15と接してよい。また、トランジスタ部70、もしくはダイオード部80の任意の箇所で、接続領域66を設けてもよい。これにより、効率的に積層欠陥の拡張による炭化珪素半導体装置100の特性劣化を抑制しつつ、先に述べたアバランシェ電流の引き抜きなどを行う事ができる。
【0092】
図4は、炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。図4の例では、トランジスタ部70とダイオード部80とが千鳥構造で設けられつつ、上面視において、トランジスタ部70の面積が、ダイオード部80の面積よりも大きくなっている点で、図3Aと相違する。
【0093】
一例では、上面視におけるトランジスタ部70の面積とダイオード部80の面積との比率は2:1であってよく、3:1であってよく、4:1であってよい。トランジスタ部70の面積をダイオード部80の面積よりも大きくすることで、炭化珪素半導体装置100のオン抵抗を低減させることができる。一例では、トランジスタ部70の面積は、ダイオード部80の面積よりも小さくてよい。
【0094】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0095】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0096】
10・・・半導体基板、12・・・ソース領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、18・・・ドリフト領域、19・・・第2導電型領域、21・・・おもて面、23・・・裏面、24・・・バッファ領域、38・・・絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・ソース電極、54・・・ドレイン電極、60・・・メサボディ領域、61・・・第1メサボディ部、62・・・第2メサボディ部、63・・・第1トレンチボディ部、64・・・第2トレンチボディ部、65・・・トレンチボディ領域、66・・・接続領域、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、100・・・炭化珪素半導体装置
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4