(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095149
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】光学積層体および表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240703BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240703BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20240703BHJP
H10K 50/856 20230101ALI20240703BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240703BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240703BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240703BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240703BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240703BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240703BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
H10K50/858
H10K50/856
H10K59/10
G02B27/02 Z
C09J7/38
C09J133/00
H04N5/64 511A
H10K50/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212221
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2K009
3K107
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
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2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA87
2K009AA15
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2K009CC24
3K107AA01
3K107BB01
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4J004AA10
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4J040HD32
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
(57)【要約】
【課題】過酷な環境下でも光学特性が安定した光学積層体を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの光学部材と少なくとも1つの粘着剤層とを含む、光学積層体であって、前記光学積層体に含まれる前記粘着剤層の総数をNとしたときに、N/2以上の粘着剤層が、20℃から30℃まで昇温した際の線膨張係数α1と30℃から20℃まで降温した際の線膨張係数α2とが0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層Aである、光学積層体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光学部材と少なくとも1つの粘着剤層とを含む、光学積層体であって、
前記光学積層体に含まれる前記粘着剤層の総数をNとしたときに、N/2以上の粘着剤層が、20℃から30℃まで昇温した際の線膨張係数α1と30℃から20℃まで降温した際の線膨張係数α2とが0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層Aである、光学積層体。
【請求項2】
前記粘着剤層Aの厚みが、1μm以上15μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
厚みが、100μm以上300μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記光学積層体が、第一粘着剤層と、偏光部材と、第二粘着剤層と、第一位相差部材と、第三粘着剤層と、保護部材と、を、この順に有し、
前記第一、第二、および第三粘着剤層から選択される2つ以上が、前記粘着剤層Aである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第一位相差部材が、λ/4部材を含む、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記保護部材が、表面処理層を有する、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記粘着剤層Aを構成する粘着剤組成物が、150万以上の重量平均分子量を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光学積層体を含む、表示システム。
【請求項9】
偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、
前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、
前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、
前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、
前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、
を備え、
請求項5に記載の光学積層体が、前記表示素子と前記第1のλ/4板とが一体に設けられるように、前記ハーフミラーの前記表示素子側に配置されている、請求項8に記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および当該光学積層体を用いた表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、高温および/または高湿環境等の過酷な環境下での安定性の点においても、従来の画像表示装置に適用される光学積層体よりも高い要求がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、過酷な環境下でも光学特性が安定した光学積層体を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、少なくとも1つの光学部材と少なくとも1つの粘着剤層とを含む、光学積層体であって、上記光学積層体に含まれる上記粘着剤層の総数をNとしたときに、N/2以上の粘着剤層が、20℃から30℃まで昇温した際の線膨張係数α1と30℃から20℃まで降温した際の線膨張係数α2とが0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層Aである。
[2]上記[1]に記載の光学積層体において、上記粘着剤層Aの厚みが、1μm以上15μm以下であってよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の光学積層体の厚みが、100μm以上300μm以下であってよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の光学積層体が、第一粘着剤層と、偏光部材と、第二粘着剤層と、第一位相差部材と、第三粘着剤層と、保護部材と、を、この順に有し、上記第一、第二、および第三粘着剤層から選択される2つ以上が、上記粘着剤層Aであってよい。
[5]上記[4]に記載の光学積層体において、上記第一位相差部材が、λ/4部材を含んでよい。
[6]上記[4]または[5]に記載の光学積層体において、上記保護部材が、表面処理層を有してよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の光学積層体において、上記粘着剤層Aを構成する粘着剤組成物が、150万以上の重量平均分子量を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含んでよい。
[8]本発明の実施形態による表示システムは、上記[1]から[7]のいずれかに記載の光学積層体を含む。
[9]上記[8]に記載の表示システムは、偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、上記表示素子の前方に配置され、上記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、上記表示素子と上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、上記表示素子と上記第一レンズ部との間に配置され、上記表示素子から出射された光を透過させ、上記反射型偏光部材で反射された光を上記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、上記表示素子と上記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、上記ハーフミラーと上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、を備え、上記[5]に記載の光学積層体が、上記表示素子と上記第1のλ/4板とが一体に設けられるように、上記ハーフミラーの上記表示素子側に配置されてよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態においては、20℃~30℃の範囲で昇温した際の線膨張係数α1と降温した際の線膨張係数α2とが0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層Aを、光学積層体に含まれる粘着剤層の半数以上に用いる。これにより、過酷な環境下でも光学特性が安定した光学積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【
図1B】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による表示システムの概略の構成を示す模式図である。
【
図3】実施例および比較例で得られた光学積層体の湿熱試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書中で、数値範囲を表す「~」は、その上限および下限の数値を含み、「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は時計回りまたは反時計回りに45°を意味する。また、本明細書において、「略平行」は、0°±10°の範囲内である場合を包含し、例えば0°±5°、好ましくは0°±3°、より好ましくは0°±1°の範囲内であり、「略直交」は、90°±10°の範囲内である場合を包含し、例えば90°±5°、好ましくは90°±3°、より好ましくは90°±1°の範囲内である。
【0011】
A.光学積層体
本発明の実施形態による光学積層体は、少なくとも1つの光学部材と少なくとも1つの粘着剤層とを含む。上記光学積層体に含まれる粘着剤層の総数をNとしたときに、N/2以上の粘着剤層が、20℃から30℃まで昇温した際の線膨張係数α1と30℃から20℃まで降温した際の線膨張係数α2とが0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層Aである。α1/α2が0.8未満または1.2超である粘着剤層は、昇温時と降温時とで変形率の差が大きい傾向にあり、温度変化を繰り返すことで変形量が大きくなる結果、光学積層体の光学特性が変化する場合があり、結果として、ディスプレイ付きゴーグルの構成部材として適用された場合に、その表示特性に影響を及ぼす場合がある。これに対し、0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層を所定の割合以上で用いることにより、粘着剤層の変形に起因する光学積層体の光学特性の変化を抑制することができる。
【0012】
光学積層体に含まれる光学部材としては、例えば、吸収型偏光部材、反射型偏光部材、位相差部材等が挙げられる。
【0013】
光学積層体に含まれる粘着剤層の総数Nは、1以上であり、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、例えば6以下である。1つの実施形態において、光学積層体に含まれる粘着剤層の総数Nは、2以上5以下であり、好ましくは3または4である。光学積層体は、例えば、最外層に粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して隣接する部材に貼着可能とされている。
【0014】
光学積層体に含まれる粘着剤層の総数に対する粘着剤層Aの数の比率は、1/2以上であり、好ましくは2/3以上であり、より好ましくは3/4以上であり、1であってもよい。
【0015】
言うまでもないが、粘着剤層Aの数は整数であることから、粘着剤層の総数Nが奇数のときの粘着剤層Aの数は、N/2以上N以下の整数である。具体的には、Nが3のとき、粘着剤層Aの数は2以上3以下の整数、すなわち、2または3であり、Nが4のとき、粘着剤層Aの数は2以上4以下の整数、すなわち、2、3、または4である。なお、本明細書においては、20℃から30℃まで昇温した際の線膨張係数α1と30℃から20℃まで降温した際の線膨張係数α2とが0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす粘着剤層全般を粘着剤層Aと称する。よって、光学積層体に含まれる複数の粘着剤層が粘着剤層Aである場合、当該複数の粘着剤層は、0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす限りにおいて、同一の組成を有する粘着剤組成物で同一の厚みに形成されている必要はなく、異なる組成を有する粘着剤組成物で同一または異なる厚みに形成されていてもよい。
【0016】
光学積層体の厚みは、例えば100μm以上300μm以下であり、好ましくは110μm以上250μm以下であり、より好ましくは120μm以上200μm以下である。このように全体としての厚みが小さい光学積層体においては、粘着剤層の変形の影響が大きいことから、昇温時と降温時とにおける変形率の差が小さい粘着剤層を用いることによる本発明の効果が好適に得られ得る。
【0017】
1つの実施形態において、粘着剤層Aの厚みは、例えば1μm以上15μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm未満、より好ましくは3μm以上8μm以下である。昇温時と降温時の変形率の差が小さく、かつ、厚みが小さい粘着剤層を用いることにより、光学特性等の安定性に優れた光学積層体を好適に得ることができる。
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による光学積層体について具体的に説明する。
【0019】
A-1.実施形態1
図1Aは、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
図1Aに示す光学積層体100aは、第一粘着剤層a1と、偏光部材10と、第二粘着剤層a2と、第一位相差部材20と、第三粘着剤層a3と、保護部材30と、を、この順に有する。具体的には、偏光部材10と第一位相差部材20とが第二粘着剤層a2を介して貼り合わせられ、第一位相差部材20と保護部材30とが第三粘着剤層a3を介して貼り合わせられている。第一粘着剤層a1は、光学積層体100a自身を隣接する部材(例えば、ディスプレイ付きゴーグルを構成する他の部材)と貼り合わせるための粘着剤層であり、その表面は、使用に供されるまでの間、はく離ライナーによって保護されていてもよい。光学積層体100aにおいて、粘着剤層の総数は3であり、その中の2つ以上が上記粘着剤層Aである。
【0020】
光学積層体100aの厚みは、例えば100μm以上300μm以下であり、好ましくは110μm以上250μm以下であり、より好ましくは120μm以上200μm以下である。
【0021】
<粘着剤層>
光学積層体100aは、合計で3つの粘着剤層(第一粘着剤層a1、第二粘着剤層a2、および第三粘着剤層a3)を有し、そのうちの少なくとも2つが粘着剤層Aであり、好ましくはすべてが粘着剤層Aである。
【0022】
3つの粘着剤層のうち2つが粘着剤層Aである場合、第一粘着剤層a1および第二粘着剤層a2が粘着剤層Aであることが好ましい。光学積層体をVRゴーグルに適用した際に温度変化に対する形状安定性が高い粘着剤層Aを、表示素子および第一位相差部材20の近くに配置することにより、本発明の効果を好適に得ることができる。
【0023】
粘着剤層Aは、上述のとおり、20℃から30℃まで昇温した際の線膨張係数α1と30℃から20℃まで降温した際の線膨張係数α2とが代表的には0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たし、好ましくは0.85≦α1/α2≦1.15、より好ましくは0.9≦α1/α2≦1.1の関係を満たす。このような粘着剤層Aを用いることにより、過酷な環境下であっても光学特性の安定性に優れた光学積層体が得られ得る。粘着剤層Aのα1およびα2はそれぞれ、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、任意の値であってよい。粘着剤層Aのα1は、例えば5.0×10-4/℃以上7.0×10-4/℃以下であり得る。粘着剤層Aのα2は、例えば5.0×10-4/℃以上7.0×10-4/℃以下、また例えば6.0×10-4/℃以上7.0×10-4/℃以下であり得る。
【0024】
粘着剤層Aは、60℃から70℃まで昇温した際の線膨張係数β1と70℃から60℃まで降温した際の線膨張係数β2とが例えば1.0≦β1/β2≦1.5の関係を満たし、好ましくは1.05≦β1/β2≦1.45、より好ましくは1.1≦β1/β2≦1.4の関係を満たす。このような粘着剤層を用いることにより、過酷な環境下であっても光学特性の安定性に優れた光学積層体が得られ得る。粘着剤層Aのβ1およびβ2はそれぞれ、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、任意の値であってよい。粘着剤層Aのβ1は、例えば8.0×10-4/℃以上9.0×10-4/℃以下であり得る。粘着剤層Aのβ2は、例えば6.0×10-4/℃以上7.0×10-4/℃以下であり得る。
【0025】
粘着剤層Aの25℃での貯蔵弾性率は、例えば5×104Pa以上、好ましくは10×104Pa以上、より好ましくは12×104Pa以上であり、例えば20×104Pa以下、好ましくは15×104Pa以下である。昇温時と降温時の変形率の差が小さく、かつ、このような貯蔵弾性率を有する粘着剤層を用いることにより、過酷な環境下であっても光学特性の安定性に優れた光学積層体が得られ得る。貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定測定装置(「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」、Rheometric Scientific社製)を用いた、動的粘弾性測定(例えば、パラレルプレート(8.0mmφ)、ねじりモード、周波数範囲1Hzの測定条件)により求めることができる。
【0026】
粘着剤層Aは、任意の適切な粘着剤組成物によって形成され得る。粘着剤層Aを形成する粘着剤組成物としては、アクリル系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、エポキシ系粘着剤組成物、およびポリエーテル系粘着剤組成物が挙げられる。粘着剤組成物のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤組成物を調製することができる。粘着剤組成物のベースポリマーは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層は、好ましくはベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤組成物で構成される。
【0027】
1つの実施形態において、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、一般式CH2=C(R1)COOR2(ただし、R1は水素またはメチル基であり、R2は炭素数2~14、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~9のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを主成分として含む。
【0028】
一般式CH2=C(R1)COOR2で表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。一般式CH2=C(R1)COOR2で表される(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分において、一般式CH2=C(R1)COOR2で表される(メタ)アクリル系モノマーの含有割合は、例えば50重量%~98重量%であり、好ましくは60重量%~90重量%であり、より好ましくは70重量%~80重量%である。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、好ましくは窒素含有モノマーをさらに含む。上記モノマー成分において、窒素含有モノマーの含有割合は、例えば0.1重量%~35重量%であり、好ましくは3重量%~30重量%であり、より好ましくは5重量%~25重量%である。窒素含有モノマーの含有割合が上記範囲内であれば、加熱環境下および/または高湿環境下での耐久性に優れる粘着剤層が得られ得る。
【0031】
窒素含有モノマーは、モノマー構造中に1以上の窒素原子を含有する重合性モノマーであり、イミド基含有モノマー、アミド基含有モノマー等を好ましく例示できる。なかでも、アミド基含有モノマーがより好ましい。上記モノマー成分において、アミド基含有モノマーの含有割合は、例えば3重量%~15重量%、好ましくは5重量%~10重量%である。窒素含有モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
イミド基含有モノマーとしては、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、イタコンイミド等が挙げられる。
【0033】
アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0034】
その他の窒素含有モノマーとしては、アミノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリル、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0035】
モノマー成分は、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するためのその他の重合性モノマーを、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。
【0036】
その他の重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー等が挙げられ、これらは凝集力、耐熱性等の向上に寄与し得る。また例えば、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマー等が挙げられ、これらは接着力の向上に寄与し得るとともに、架橋化基点として働く官能基を有する。また例えば、炭素数1または炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー等を用いることができる。これらの重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0038】
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0039】
リン酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。
【0040】
ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0041】
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0042】
酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0044】
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0045】
ビニルエーテルモノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0046】
炭素数1または炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
上記モノマー成分において、上記その他の重合性モノマーの含有割合は、例えば0.1重量%~10重量%であり、好ましくは0.2重量%~7重量%であり、より好ましくは0.5重量%~5重量%である。
【0048】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマー等が挙げられる。シラン系モノマーとしては、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。シラン系モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
上記シラン系モノマーの配合量は(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1重量部~3重量部であることが好ましく、0.5重量部~2重量部であることがより好ましい。シラン系モノマーを共重合させることは、耐久性の向上に好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば60万以上であり、好ましくは150万以上であり、より好ましくは160万以上であり、さらに好ましくは180万以上である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば300万以下であり、好ましくは250万以下である。重量平均分子量が上記範囲内であると、上記α1/α2の関係を満たし、耐久性および作業性に優れる粘着剤層が好適に得られ得る。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0051】
上記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着性能のバランスが取りやすいことから、例えば-5℃以下、好ましくは-10℃以下である。ガラス転移温度が-5℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、層間に発生するフクレの原因となる場合がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0052】
(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01~0.2重量部加え、通常、50~70℃程度で、8~30時間程度行われる。得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0053】
重合においては、任意の適切な重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等を、必要に応じて適宜選択して用いることができる。
【0054】
アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含み、好ましくは過酸化物およびイソシアネート系架橋剤をさらに含む。
【0055】
過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。1分間半減期温度が低すぎると、塗布乾燥する前の保存時に反応が進行し、粘度が高くなり塗布不能となる場合があり、一方、1分間半減期温度が高すぎると、架橋反応時の温度が高くなるため副反応が起こり、また未反応の過酸化物が多く残存して経時での架橋が進行する場合がある。
【0056】
過酸化物としては、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)等が挙げられる。なかでも、架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)等が好ましく用いられる。過酸化物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」等に記載されている。
【0058】
過酸化物の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.02重量部~2重量部であり、好ましく0.04重量部~1.5重量部であり、より好ましくは0.05重量部~1重量部である。過酸化物の配合量が上記範囲内であると、耐久性および接着性に優れた粘着剤層が得られ得る。
【0059】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
より具体的には、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)等のイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0061】
イソシアネート系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.02重量部~2重量部であり、好ましくは0.04重量部~1.5重量部であり、より好ましくは0.05重量部~1重量部である。イソシアネート系架橋剤の配合量が上記範囲内であると、凝集力および接着性に優れた粘着剤層が得られ得る。
【0062】
架橋剤(過酸化物およびイソシアネート系架橋剤)の配合量は、架橋された粘着剤層のゲル分率が、例えば45重量%~95重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%となるように調整される。ゲル分率が上記範囲内である粘着剤層は、耐久性および接着性に優れる。
【0063】
粘着剤層のゲル分率(重量%)は、粘着剤層の乾燥重量W1(g)を酢酸エチルに約23℃下で7日間浸漬した後、上記粘着剤層の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100として計算される値であり得る。
【0064】
過酸化物およびイソシアネート系架橋剤の配合量、架橋処理温度、架橋処理時間等を調整することにより、上記ゲル分率を所望の範囲に調整することができる。
【0065】
架橋処理温度や架橋処理時間は、粘着剤組成物に含まれる過酸化物の分解量が50重量%以上になるように設定することが好ましく、60重量%以上になるように設定することがより好ましく、70重量%以上になるように設定することがさらに好ましい。
【0066】
例えば、架橋処理温度が1分間半減期温度では、1分間で過酸化物の分解量は50重量%であり、2分間で過酸化物の分解量は75重量%であり、1分間以上の架橋処理時間が必要となる。また、例えば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が30秒であれば、30秒以上の架橋処理時間が必要となり、また、例えば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が5分であれば、5分間以上の架橋処理時間が必要となる。
【0067】
このように、使用する過酸化物によって架橋処理温度や架橋処理時間は、過酸化物が一次比例すると仮定して半減期(半減時間)から理論計算により算出することが可能であり、添加量を適宜調節することができる。一方、より高温にするほど、副反応が生じる可能性が高くなることから、架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0068】
架橋処理時間は、通常0.2分~20分程度であり、好ましくは0.5分~10分程度である。
【0069】
架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0070】
粘着剤組成物には、接着力、耐久力を上げる目的でシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のインシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
シランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.01重量部~1重量部、好ましくは0.02重量部~0.6重量部、より好ましくは0.05重量部~0.3重量部である。
【0072】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等が挙げられる。制御できる範囲内で、還元剤を加えてもよい。
【0073】
上記粘着剤組成物を架橋することによって粘着剤層Aが好適に得られ得る。上記粘着剤組成物を架橋して得られる粘着剤層Aは、昇温時と降温時の変形率の差が小さく、また、薄層化した場合であっても、高温高湿下での耐久性に優れる。粘着剤組成物は、所望の部材(
図1Aの構成においては、偏光部材、第一位相差部材、または保護部材)の表面に塗布された後に架橋されてもよく、はく離ライナー等の支持体上に塗布され、架橋された後に所望の部材に転写されてもよい。
【0074】
粘着剤層Aの厚みは、上述のとおり、例えば1μm以上15μm以下、好ましくは2μm以上10μm未満、より好ましくは3μm以上8μm以下である。
【0075】
光学積層体は、上記粘着剤層A以外の粘着剤層を含むことができる。このような粘着剤層もまた、任意の適切な粘着剤組成物によって形成され得る。粘着剤層A以外の粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、アクリル系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、エポキシ系粘着剤組成物、およびポリエーテル系粘着剤組成物が挙げられる。透明性、耐熱性等に優れることから、アクリル系粘着剤組成物が好ましく用いられる。
【0076】
粘着剤層A以外の粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、例えば5×104Pa以上、好ましくは10×104Pa以上、より好ましくは14×104Pa以上であり、例えば20×104Pa以下、好ましくは15×104Pa以下である。
【0077】
粘着剤層A以外の粘着剤層の厚みは、例えば12μm以上100μm以下、好ましくは12μm以上80μm以下である。
【0078】
<偏光部材>
偏光部材10は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含む吸収型偏光部材であり、必要に応じて、その片側又は両側に保護層をさらに含み得る。保護層は、代表的には、任意の適切な接着剤層を介して吸収型偏光膜に貼り合わされている。接着剤層を形成する接着剤として、代表的には紫外線硬化型接着剤が挙げられる。
【0079】
偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0080】
上記直交透過率、単体透過率および偏光度は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて、単体透過率Ts、平行透過率Tpおよび直交透過率Tcを測定し、得られたTpおよびTcから、下記式により求めることができる。なお、Ts、TpおよびTcは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0081】
吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0082】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0083】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0084】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0085】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解等の問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理等、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0086】
保護層は、吸収型偏光膜の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、ポリノルボルネン系等のシクロオレフィン(COP)系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系等のポリエステル系、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)系、(メタ)アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、アセテート系等の透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0087】
保護層の厚みは、代表的には100μm以下であり、例えば5μm~80μm、好ましくは10μm~50μm、より好ましくは15μm~35μmである。
【0088】
<第一位相差部材>
第一位相差部材20は、第1のλ/4部材20aを含む。第1のλ/4部材20aは、偏光部材10(吸収型偏光膜)の吸収軸と第1のλ/4部材20aの遅相軸とのなす角度が、好ましくは40°~50°、より好ましくは42°~48°、例えば約45°となるように配置されている。
【0089】
第1のλ/4部材20aの面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0090】
第1のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第1のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0091】
第1のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第1のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0092】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第1のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0093】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0094】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0095】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0096】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0097】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0098】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0099】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0100】
液晶配向固化層で構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0101】
<保護部材>
保護部材30は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。
【0102】
保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。表面処理層は、光学積層体100aの最表面に位置し得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、アンチグレア層が挙げられる。保護部材は、2以上の表面処理層を有していてもよい。
【0103】
反射防止層は、外光等の反射を防止するために設けられる。反射防止層としては、例えば、フッ素樹脂層、ナノ粒子(代表的には中空ナノ粒子、例えば中空ナノシリカ粒子)を含む樹脂層、または、ナノ構造(例えばモスアイ構造)を有する反射防止層が挙げられる。反射防止層の厚みは、好ましくは0.05μm~1μmである。上記樹脂層の形成方法としては、例えば、ゾルゲル法、イソシアネートを用いた熱硬化法、架橋性モノマー(例えば多官能アクリレート)と光重合開始剤とを用いた電離放射線硬化法(代表的には光硬化法)が挙げられる。
【0104】
ハードコート層は、好ましくは、十分な表面硬度、優れた機械的強度、および優れた光透過性を有する。ハードコート層は、任意の適切な樹脂から形成され得る。ハードコート層は、代表的には紫外線硬化型樹脂から形成される。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系が挙げられる。ハードコート層の厚みは、例えば0.5μm以上、好ましくは1μm以上、例えば20μm以下、好ましくは15μm以下である。
【0105】
A-2.実施形態2
図1Bは、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
図1Bに示す光学積層体100bは、第一粘着剤層a1と、偏光部材10と、第二粘着剤層a2と、第1のλ/4部材20aを含む第一位相差部材20と、第三粘着剤層a3と、保護部材30と、を、この順に有し、第一位相差部材20が第1のλ/4部材20aに加えて屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート)20bを含んでいる点において光学積層体100aと異なっている。偏光部材10の吸収軸と第1のλ/4部材20aの遅相軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°、より好ましくは42°~48°、例えば約45°となるように配置されている。
【0106】
第一位相差部材20は、第1のλ/4部材20aとポジティブCプレート20bとの積層構造を有している。具体的には、第1のλ/4部材20aとポジティブCプレート20bとは、接着層b1を介して積層されている。図示例のように、第1のλ/4部材20aがポジティブCプレート20bよりも偏光部材10側に位置していることが好ましいが、これらの配置が逆であってもよい。接着層b1は、代表的には粘着剤層または接着剤層である。接着層b1が接着剤層である場合、光学積層体100bにおける粘着剤層の総数は3であり、そのうちの2つ以上の粘着剤層が粘着剤層Aであり、好ましくは3つ全てが粘着剤層Aである。接着層b1が粘着剤層である場合、光学積層体100bにおける粘着剤層の総数は4であり、この場合も2つ以上の粘着剤層が上記粘着剤層Aであり、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ全ての粘着剤層が粘着剤層Aである。接着剤層は、例えば紫外線硬化型接着剤で形成され、その厚みは、例えば0.05μm~30μmである。
【0107】
光学積層体100bの厚みは、例えば100μm以上300μm以下であり、好ましくは110μm以上250μm以下であり、より好ましくは120μm以上200μm以下である。
【0108】
粘着剤層、偏光部材、第1のλ/4部材、および保護部材については、A-1項において記載したとおりである。
【0109】
<ポジティブCプレート>
ポジティブCプレート20bの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0110】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得る。ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0111】
B.表示システム
図2は、A項に記載の光学積層体を含む表示システム(ディスプレイ付きゴーグル)の一例の概略構成を示す模式図である。
図2(a)では、表示システム2の主要な構成要素の配置および形状等を模式的に図示しており、
図2(b)は、
図2(a)に示す表示システム2が液晶表示システムである場合における上記光学積層体の配置を説明する模式図である。
【0112】
図2(a)に示されるとおり、表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12’側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。図示しないが、表示システム2は、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に吸収型偏光部材をさらに備えることができる。
【0113】
ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0114】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12’を有している。表示面12’から出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材10を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0115】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。なお、図示例では、説明のため、第一位相差部材20と表示素子12との間に空間が介在しているが、後述のとおり、本発明の実施形態による表示システムにおいては、A項に記載されるような偏光部材と第一位相差部材(第1のλ/4部材)とを含む光学積層体を用いることにより、第一位相差部材20と表示素子12とが一体に設けられている。
【0116】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0117】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0118】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0119】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0120】
上述のとおり、表示システム2は、反射型偏光部材14の前方(目に近い側)に吸収型偏光部材(代表的には、吸収型偏光フィルム)を含んでいてもよい。反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材の透過軸と吸収型偏光部材の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。これにより、反射型偏光部材14を透過した第3の直線偏光は、そのまま吸収型偏光部材を透過することができる。反射型偏光部材と吸収型偏光部材とは、例えば、接着層を介して積層されていてもよい。
【0121】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0122】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材10の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材10の吸収軸と第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材10の吸収軸と第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。偏光部材10および第1のλ/4部材を含む第一位相差部材20はそれぞれ、A項に記載のとおりである。
【0123】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0124】
図2(b)は、表示システム2が液晶表示システムである場合における光学積層体の配置を示す。光学積層体100としては、
図1Aまたは
図1Bに記載の光学積層体100a、100bが好ましく用いられる。図示例において、表示素子12は、バックライトユニット12aと、バックライト側偏光部材12bと、液晶セル12cと、偏光部材10と、を含む。バックライト側偏光部材12bと偏光部材10とは、代表的には、吸収軸方向が互いに略直交となるように配置され、液晶セル12cとともに液晶パネルを構成している。光学積層体100は、ハーフミラー18の表示素子12側に配置されており、ここで、偏光部材10は粘着剤層a1を介して液晶セル12cに貼り合わせられており、また、第一位相差部材20(第1のλ/4部材)は粘着剤層a2を介して偏光部材10と貼り合わせられており、結果として、表示素子12と第一位相差部材20(第1のλ/4部材)とが一体に設けられた構成となる。また、表面処理層を有する保護部材30の当該表面処理層が最表面となるように配置されることにより、ハーフミラー18と第一位相差部材20(保護部材30)との間に空間が形成されている表示システムにおいて、優れた反射防止効果を得ることができる。なお、図示例の実施形態では、光学積層体100は液晶セルに貼り合わせられているが、本発明の実施形態による光学積層体は有機ELパネルと共に有機EL表示システムを構成することもできる。この場合、光学積層体100と有機ELパネルとの間には第3のλ/4部材を含む第三位相差部材が配置され得る。第三位相差部材は、本発明の実施形態による光学積層体に含まれていてもよい。例えば、本発明の実施形態による光学積層体は、第三位相差部材、偏光部材、第一位相差部材、および保護部材を接着層を介してこの順に有していてもよい。具体的には、光学積層体は、[粘着剤層/第三位相差部材/粘着剤層/偏光部材/粘着剤層/第一位相差部材/粘着剤層/保護部材]の構成を有することができ、当該構成においては、少なくとも4つの粘着剤層を含み得る。粘着剤層の総数が4である場合、そのうちの2つ以上、好ましくは3つまたは4つの粘着剤層に粘着剤層Aが用いられる。第3のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第3のλ/4部材としては、第1のλ/4部材と同様の説明を適用することができる。第三位相差部材は、第3のλ/4部材の遅相軸が偏光部材10の吸収軸と、例えば40°~50°、42°~48°、または約45°の角度をなすように配置され得る。
【実施例0125】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚みは下記の測定方法により測定した値である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<面内位相差>
王子計測機器社製「KOBRA-WPR」を用いて、23℃における面内位相差を測定した。
<線膨張係数>
粘着剤層(厚み1mm)を約5mm角に切削したものを測定試料として用いた。測定試料を測定装置の試料台に設置して下記条件でTMA測定を行った。
・測定装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「TMA/SS6000」
・測定モード:圧縮膨張法
・測定荷重:9.8mN
・プローブ径:3.5mmφ(圧縮膨張法)
・温度プログラム:-60℃→210℃→-70℃→200℃
・昇温/降温速度:10℃/min
・測定雰囲気:N2(流量:200ml/min)
<分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・データ処理装置:東ソー社製、GPC-8020
・カラム:東ソー社製、G7000HXL-H+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm(計90cm)
・流量:0.8ml/min
・注入試料濃度:約0.1重量%
・注入量:100μl
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
【0126】
[製造例1A:粘着剤層1の作製]
<アクリル系ポリマー1>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート92重量部、N-アクリロイルモルフォリン(ACMO)5重量部、アクリル酸2.9重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル100重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー1の溶液を調製した。アクリル系ポリマー1の重量平均分子量は200万であった。
【0127】
<粘着剤溶液1>
アクリル系ポリマー1の溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期:130℃)0.15重量部、およびトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.6重量部を混合してアクリル系粘着剤溶液1を調製した。
【0128】
<粘着剤層1>
アクリル系粘着剤溶液1を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、150℃で3分間乾燥・架橋処理を行い、乾燥後の厚さが5μmの粘着剤層1を形成した。
【0129】
[製造例1B:粘着剤層2の作製]
<アクリル系ポリマー2>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9重量部、アクリル酸5重量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤としてジベンゾイルパーオキシド0.3重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃に保って7時間重合反応を行った。次いで、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度30重量%に調整して、アクリル系ポリマー2の溶液を得た。アクリル系ポリマー2の重量平均分子量は220万であった。
【0130】
<粘着剤溶液2>
アクリル系ポリマー2の溶液の固形分100重量部に対して、ポリイソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物、日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.6重量部およびシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM403)0.075重量部を混合してアクリル系粘着剤溶液2を調製した。
【0131】
<粘着剤層2>
アクリル系粘着剤溶液2を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、所定の温度で乾燥させて、厚み12μm、15μm、または20μmの粘着剤層2を形成した。
【0132】
[製造例2:偏光フィルム1の作製]
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ社製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの吸収型偏光膜を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる吸収型偏光膜の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて吸収型偏光膜を得た。
得られた吸収型偏光膜の両面に、保護層としてのトリアセチルセルロース(TAC)系樹脂フィルム(厚み:22μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせた。具体的には、紫外線硬化型接着剤の総厚みが約1μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をTACフィルム側から照射して接着剤を硬化させた。
これにより、[TACフィルム(保護層)/吸収型偏光膜/TACフィルム(保護層)]の構成を有する偏光フィルム1(厚み57μm)を得た。
【0133】
[製造例3:λ/4部材1の作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0134】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸した。これにより、厚み51μmの延伸フィルム(λ/4部材1)を得た。λ/4部材1のRe(590)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0135】
[製造例4:保護部材1の作製]
ラクトン環構造を有するアクリルフィルムに、下記に示すハードコート層形成用材料を塗布し、塗布層を乾燥させて厚み0.5μmのハードコート層を形成した。次いで、ハードコート層表面に下記に示す反射防止層形成材料を塗布して80℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み0.1μmの反射防止層を形成した。これにより、[アクリルフィルム/ハードコート層/反射防止層]の構成を有する保護部材1(厚み44μm)を得た。
【0136】
(ハードコート層形成用材料)
アクリル系樹脂原料(大日本インキ社製、商品名:GRANDIC PC1071)に、レベリング剤0.5重量%を加え、さらに、固形分濃度が50重量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、ハードコート層形成用材料を調製した。なお、レベリング剤は、ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6-イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比で共重合させた共重合物である。
【0137】
(反射防止層形成材料)
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)100重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)、フッ素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、ターシャリーブチルアルコール、メチルイソブチルケトンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加し、全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成材料を調製した。
【0138】
[実施例1]
偏光フィルム1の一方の面に粘着剤層1(厚み5μm)をPETフィルムごと貼り合わせ、他方の面に別の粘着剤層1(厚み5μm)をPETフィルムから転写し、その上にλ/4部材1を貼り合わせた。このとき、吸収型偏光膜の吸収軸とλ/4部材1の遅相軸とのなす角度が45°となるように配置した。
次いで、λ/4部材1の表面に別の粘着剤層1(厚み5μm)をPETフィルムから転写し、その上に保護部材1を貼り合わせた。このとき、保護部材1のアクリルフィルム側表面がλ/4部材1側になるように(換言すると、表面処理層が最表面となるように)貼り合わせた。
以上のようにして、[はく離ライナー(PETフィルム)/粘着剤層1/偏光フィルム1/粘着剤層1/λ/4部材1/粘着剤層1/保護部材1]の構成を有する光学積層体を得た。
【0139】
[実施例2、比較例1-2]
3つの粘着剤層1の1つ以上を粘着剤層2に変えたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を得た。各光学積層体の構成を表1に示す。また、粘着剤層1および2の線膨張係数(N=2の平均値)を表2に示す。
【0140】
<湿熱試験>
実施例および比較例で得た光学積層体からはく離ライナーを剥離し、露出した粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせて試験サンプルを得た。試験サンプルを65℃90RH%の湿熱オーブン内に240時間放置した。試験前、120時間または240時間放置した光学積層体の面内位相差を測定した。面内位相差の測定は、オーブンから試験サンプルを取り出し、ガラス板側から測定光を照射して行った。結果を表1および
図3に示す。なお、表1中、位相差変化は、試験前の光学積層体のRe(590)
beforeと240時間放置後の光学積層体のRe(590)
afterとの差(Re(590)
before-Re(590)
after)を表す。
【0141】
【0142】
【0143】
表1および表2に示されるとおり、合計3つの粘着剤層のうち2つ以上の粘着剤層が0.8≦α1/α2≦1.2の関係を満たす実施例の光学積層体は、湿熱条件下での光学特性の安定性に優れる。
【0144】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。