(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009515
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】試料採取装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/24 20060101AFI20240116BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240116BHJP
G01N 30/18 20060101ALI20240116BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01N30/24 E
G01N1/00 101N
G01N30/18 G
G01N35/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111097
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大部 達也
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA18
2G052FC05
2G052FC11
2G052GA27
2G052HA08
2G052HB04
2G052HC07
2G052HC32
2G052JA07
2G058FB05
2G058FB12
2G058GB02
(57)【要約】
【課題】試料採取装置におけるニードル洗浄に要する時間を短縮する。
【解決手段】試料容器12内に挿入され、該試料容器内の試料液を採取するサンプリングニードル21と、サンプリングニードルを移動させるニードル移動機構23と、試料容器へのサンプリングニードルの挿入深さに関する情報である挿入深さ情報を取得する深さ情報取得部52と、上面が開口したリンス液貯留槽30と、前記挿入深さ情報に基づいて、リンス液貯留槽へのサンプリングニードルの挿入長さであるニードルリンス長を設定するニードルリンス長設定部54と、サンプリングニードルの先端から前記ニードルリンス長に亘る領域をリンス液貯留槽に挿入するようにニードル移動機構を制御する制御部51と、を備え、ニードルリンス長設定部が、試料容器へのサンプリングニードルの挿入深さが小さいほど前記ニードルリンス長を短く設定する試料採取装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器内に挿入され、該試料容器内の試料液を採取するサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルを移動させるニードル移動機構と、
前記試料容器への前記サンプリングニードルの挿入深さに関する情報である挿入深さ情報を取得する深さ情報取得部と、
上面が開口したリンス液貯留槽と、
前記挿入深さ情報に基づいて、前記リンス液貯留槽への前記サンプリングニードルの挿入長さであるニードルリンス長を設定するニードルリンス長設定部と、
前記サンプリングニードルの先端から前記ニードルリンス長に亘る領域を前記リンス液貯留槽に挿入するように前記ニードル移動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記ニードルリンス長設定部が、前記試料容器への前記サンプリングニードルの挿入深さが小さいほど前記ニードルリンス長を短く設定する試料採取装置。
【請求項2】
前記挿入深さ情報が、前記試料容器の深さの値、又は前記試料容器の上端からの前記サンプリングニードルの先端の下降量の値である請求項1に記載の試料採取装置。
【請求項3】
前記ニードルリンス長設定部が、前記ニードルリンス長を、前記試料容器の深さの値、又は前記試料容器の上端からの前記サンプリングニードルの先端の下降量の値の、100%~110%の長さに設定する請求項2に記載の試料採取装置。
【請求項4】
更に、
複数種類の前記試料容器の各々について、各試料容器の識別情報である容器識別情報と、該試料容器についての前記挿入深さ情報とを対応付けて記憶する深さ情報記憶部と、
ユーザからの、前記容器識別情報の入力を受け付ける容器識別情報入力受付部と、
を有し、
前記深さ情報取得部が、前記容器識別情報入力受付部で受け付けた前記容器識別情報に対応する前記挿入深さ情報を、前記深さ情報記憶部から読み出すものである、
請求項1~3のいずれかに記載の試料採取装置。
【請求項5】
更に、
前記試料容器を搭載した容器ラックを収容するラック収容部と、
複数種類の前記容器ラックの各々について、該容器ラックの識別情報であるラック識別情報と、該容器ラックに搭載される前記試料容器についての前記挿入深さ情報とを対応付けて記憶する深さ情報記憶部と、
前記サンプリングニードルによる前記試料液の採取対象とする前記試料容器が搭載された前記容器ラックに関する前記ラック識別情報を取得するラック識別情報取得部と、
を有し、
前記サンプリングニードルが、前記ラック収容部内の前記容器ラックに搭載されている前記試料容器から前記試料液を採取するものであって、
前記深さ情報取得部が、前記ラック識別情報取得部によって取得された前記ラック識別情報に対応する前記挿入深さ情報を、前記深さ情報記憶部から読み出すものである、
請求項1~3のいずれかに記載の試料採取装置。
【請求項6】
前記ラック識別情報取得部が、前記ラック収容部に収容された前記容器ラックが保持している前記ラック識別情報を読み取るものである、
請求項5に記載の試料採取装置。
【請求項7】
更に、
前記サンプリングニードルが前記試料液の液面に触れたことを検知する液面検知部、
を有し、
前記ニードルリンス長決定部が、前記挿入深さ情報と、前記液面検知部からの出力信号とに基づいて前記ニードルリンス長を設定するものである、
請求項1に記載の試料採取装置。
【請求項8】
前記ニードルリンス長設定部が、前記挿入深さ情報と、前記液面検知部からの出力信号とに基づいて、前記サンプリングニードルのうち前記試料液に浸漬される領域の長さである試料液浸漬長を特定し、前記ニードルリンス長を該試料液浸漬長の100%~110%の長さに設定する請求項7に記載の試料採取装置。
【請求項9】
前記試料採取装置が、液体クロマトグラフに試料を導入するオートサンプラの機能と、該液体クロマトグラフからの溶出液を分取するフラクションコレクターの機能とを兼ね備えたリキッドハンドラーである請求項1に記載の試料採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料採取装置は、液状の試料を試料容器から採取して分析装置又は別の容器等に注入する装置であり、例えば、オートサンプラ又はリキッドハンドラーなどが知られている。なお、リキッドハンドラーは、液体クロマトグラフに付設して用いられる装置であって、試料液を液体クロマトグラフのカラムに至る流路へと導入するオートサンプラとしての機能と、前記カラムからの溶出液を分取するフラクションコレクターとしての機能を兼ね備えたものである。
【0003】
試料採取装置は、試料液を吸引するためのニードルを備えており、該ニードルは所定の駆動機構によって前後、左右、及び上下に移動可能となっている。前記ニードルによって試料液を採取する際には、前記駆動機構によって、まずニードルを前後左右に移動させて試料容器の直上に移動させる。続いて、該ニードルを下降させて前記試料容器の内部に挿入し、該ニードルの先端を該試料容器の内底部付近に位置させた状態で、該ニードルの先端から試料液を吸引する。吸引された試料液は、ニードルの基端に接続されたサンプルループに一旦保持され、その後、流路の切り替えによって該サンプルループを液体クロマトグラフなどの分析装置に至る流路に介挿することによって、該分析装置に試料液が導入される。あるいは、試料吸引後のニードルを所定の注入箇所(例えば、試料注入ポート又は別の容器)へと移動させ、該ニードルの先端から前記試料液を吐出することによって当該注入箇所に注入する。
【0004】
このような試料採取装置には、通常、複数の試料容器がセットされ、一本のニードルを用いて各試料容器内の試料液が順次採取される。そのため、試料容器間でのクロスコンタミネーションを防止するために、1つの試料容器から試料採取を行う毎にニードルの洗浄工程が実行される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記洗浄工程では、ニードルの外周面に付着している試料液を除去するために、所定のリンス液を貯留したリンスポートにニードルが浸漬される。具体的には、前記所定の駆動機構によってニードルをリンスポートの直上に移動させ、その後、該ニードルを下降させることによって、その先端から一定の長さに亘る領域をリンスポート内のリンス液に浸漬する。しかしながら、上記の通り、試料採取装置には多数の試料容器がセットされ、各試料容器から試料液を採取する毎にニードルの洗浄が行われるため、上記のようなニードルの洗浄に要する時間が、試料採取のスループットを低下させる一因となっていた。
【0007】
なお、上述のリキッドハンドラーでは、カラムからの溶出液を試験管等の比較的深さの大きい容器に分取した後、該容器中の溶出液を試料として採取してカラムに再導入する場合がある。こうしたリキッドハンドラーでは、バイアルなどの比較的深さの小さい試料容器のみを使用する装置に比べて長いニードルが用いられることが多いため、上記のようなニードル洗浄によるスループット低下が特に顕著であった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、試料採取装置におけるニードル洗浄に要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る試料採取装置は、
試料容器内に挿入され、該試料容器内の試料液を採取するサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルを移動させるニードル移動機構と、
前記試料容器への前記サンプリングニードルの挿入深さに関する情報である挿入深さ情報を取得する情報取得部と、
上面が開口したリンス液貯留槽と、
前記挿入深さ情報に基づいて、前記リンス液貯留槽への前記サンプリングニードルの挿入長さであるニードルリンス長を設定するニードルリンス長設定部と、
前記サンプリングニードルの先端から前記ニードルリンス長に亘る領域を前記リンス液貯留槽に挿入するように前記ニードル移動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記ニードルリンス長設定部が、前記試料容器への前記ニードルの挿入深さが小さいほど前記ニードルリンス長を短く設定するものである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明に係る試料採取装置によれば、ニードルの洗浄に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るリキッドハンドラーの概略構成図。
【
図2】前記リキッドハンドラーにおける、ラックレイアウト情報の登録手順を示すフローチャート。
【
図3】前記リキッドハンドラーにおける、ニードルリンス長の設定手順、及びその後の試料採取から試料注入までの手順を示すフローチャート。
【
図4】前記リキッドハンドラーにおいて深さの大きい試料容器から試料を採取する様子を示す模式図。
【
図5】前記試料容器からの試料採取後におけるニードルの洗浄工程を示す模式図。
【
図6】前記リキッドハンドラーにおいて深さの小さい試料容器から試料を採取する様子を示す模式図。
【
図7】前記試料容器からの試料採取後におけるニードルの洗浄工程を示す模式図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るリキッドハンドラーの概略構成図。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るリキッドハンドラーの概略構成図。
【
図10】第3の実施形態に係るリキッドハンドラーにおける、ニードルリンス長の設定手順、及びその後の試料採取から試料注入までの手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るリキッドハンドラーの概略構成図である。
【0013】
本実施形態に係るリキッドハンドラーは、図示しない液体クロマトグラフに付設され、該液体クロマトグラフのカラムに至る流路に試料を導入するオートサンプラとしての機能と、前記カラムからの溶出液を分取するフラクションコレクターとしての機能を兼ね備えたものである。このリキッドハンドラーは、容器ラック11が収容されるラック収容部10と、容器ラック11上に搭載された試験管又はバイアル等の試料容器12から試料液を採取するためのサンプリングニードル(以下単に「ニードル」とよぶ)21と、容器ラック11に搭載された試験管等の分取容器(図示略)にカラム(図示略)からの溶出液を吐出するノズル22と、ニードル21の外周面を洗浄するためのリンスポート(本発明における「リンス液貯留槽」に相当)30と、ニードル21によって採取した試料が注入される注入ポート40と、制御部50と、を備えている。
【0014】
ニードル21(及びノズル22)は、モータ等を備えた駆動機構23(本発明における「ニードル移動機構」に相当)によって水平方向、すなわち
図1中のX軸方向及びY軸方向と、垂直方向、すなわち同Z軸方向に移動させることができ、容器ラック11上の各試料容器12(又は分取容器)、リンスポート30、及び注入ポート40の各々の上に移動させると共に、それらに挿入可能となっている。ニードル21の基端側には図示しない配管を介して計量ポンプ(図示略)が接続されており、該計量ポンプを動作させることによって、ニードル21による液体の吸引及び吐出を行うことができる。なお、カラムからの溶出液を分取する機能(すなわちフラクションコレクターとしての機能)については、本発明と直接関係がないため、以下では詳しい説明を省略する。
【0015】
リンスポート30は、上部が開口したカップ状の形状を有しており、その底部にはリンス液導入口31が設けられ、その側面上部にはリンス液排出口32が設けられている。リンス液導入口31には図示しないポンプによってリンス液(洗浄液)が供給されるようになっており、リンス液導入口31からリンスポート30内に導入されたリンス液を、リンス液排出口32からオーバーフローさせることによって、リンスポート30内のリンス液が交換されると共に、リンスポート30内の液面が常に一定レベルに維持される。リンス液としては、典型的には、上述の液体クロマトグラフで用いられる移動相と同一組成の液体が用いられるが、これに限らず、例えば、メタノール又はアセトニトリル等の有機溶媒、水、又はそれらの混合物など、適宜の液体を用いることができる。なお、リンスポート30には、上記のようなリンス液導入口31を設けず、ニードル21によって、所定のリンス液容器に貯留されているリンス液を採取すると共に該リンス液をリンスポート30に吐出することによって、リンスポート30内にリンス液が供給される構成としてもよい。
【0016】
制御部50は、駆動機構23の動作を制御する駆動機構制御部51(本発明における「制御部」に相当)と、深さ情報取得部52と、ニードルリンス長設定部54と、表示制御部55と、を機能ブロックとして備えると共に、記憶部56を備えている。なお、記憶部56には、深さ情報記憶部53が設けられている。また、制御部50には、マウス等のポインティングデバイス又はキーボード等から成る入力部61と、液晶ディスプレイ等から成る表示部62とが接続されている。これらの入力部61及び表示部62、並びに上記の表示制御部55が、協同して本発明における「ラック識別情報取得部」として機能する。制御部50は、専用のコンピュータ、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータ、又はそれらの組み合わせによって具現化されており、前記機能ブロックの各々の機能は、制御部50を構成するコンピュータに設けられたCPUが、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置にインストールされた専用のプログラムを該コンピュータのメモリに読み出して実行することによってソフトウェア的に実現される。なお、前記専用プログラムは、必ずしも単体のプログラムである必要はなく、例えば、液体クロマトグラフを制御するプログラムの一部に組み込まれた機能であってもよく、その形態は特に問わない。
【0017】
ラック収容部10には、搭載可能な試料容器12の数や配置が異なる様々な容器ラック11をセットすることができる。また、ある試料容器12を搭載可能な容器ラック11が、当該試料容器12と外径が同じで長さ(深さ)が異なる別の試料容器12を搭載するのに用いられる場合もある。そのため、容器ラック11にセットされた各試料容器12から適切に試料を採取するためには、容器ラック11上における試料容器12の数や配置、及び該容器ラック11上にセットされる試料容器12の深さ等の情報(以下、これらを「ラックレイアウト情報」とよぶ)を予め制御部50に登録しておく必要がある。このようなラックレイアウト情報の登録手順について、
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0018】
まず、ユーザが入力部61で所定の操作を行うと、表示制御部55の制御の下に、表示部62に所定の入力画面が表示される。該入力画面は、ユーザによる、容器ラック11上における試料容器12の配置に関する情報(例えば、X軸方向とY軸方向の各々に配列される試料容器12の数)、及び試料容器12の深さ(すなわち試料容器12の上端から内底面までの距離(
図4及び
図6中の長さA))に関する情報等を含むラックレイアウト情報の入力を受け付け可能に構成されている。ここでは、前記試料容器12の深さの情報(以下「容器深さ情報」とよぶ)が、本発明における「挿入深さ情報」に相当する。
【0019】
ユーザが前記入力画面上でラックレイアウト情報を入力し(ステップ101)、更に、該ラックレイアウト情報に付与する名称(以下「ラックレイアウト名」とよぶ)を入力した上で、入力部61で所定の操作を行うと、前記ラックレイアウト情報が、前記ラックレイアウト名に対応付けられた状態で深さ情報記憶部53に記憶される(ステップ102)。ここでは、前記ラックレイアウト名が本発明における「ラック識別情報」に相当する。
【0020】
なお、前記入力画面では、試料容器12の深さをユーザに数値で入力させるほか、例えば、ユーザに試料容器12の種類を表す識別情報(例えば、試料容器12の名称、型番、又は任意の文字列等)を入力させ、制御部50において当該試料容器12の深さを特定して深さ情報記憶部に記憶させるようにしてもよい。この場合、予め本実施形態に係るリキッドハンドラーのメーカ又はユーザが、該リキッドハンドラーで用いられる複数種類の試料容器12の各々について、その識別情報と容器深さ情報とを対応付けて記憶部56に記憶させておく。
【0021】
なお、記憶部56には、上述のラックレイアウト情報の他に、容器ラック11上の各試料容器12から、どのような順序で、各々どれだけの量の試料液を採取するか等について記述したバッチテーブルと、容器ラック11上にセットされた多数の試料容器12のうちの特定の試料容器12について、当該試料容器12の上部開口中央のX、Y、Z座標(又はニードル21の先端を初期位置から前記上部開口中央に移動させるために必要な駆動機構23の駆動量)を記述したティーチング情報とが記憶される。これらのバッチテーブル及びティーチング情報は、予めユーザの指示に基づいて制御部50で作成されるが、本発明には直接関係しないため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0022】
リキッドハンドラーでは、一般に、試料容器12から試料液を採取した後に、ニードル21を、その先端から予め定められた所定の長さ(以下「ニードルリンス長」とよぶ)だけリンスポート30に挿入することによってニードル21の外周面が洗浄される。このとき、従来のリキッドハンドラーでは、同一のニードル21に対して常に一定のニードルリンス長(例えば、該ニードル21の大部分がリンス液に浸かる程度の長さ)を適用していた。これに対し、本実施形態に係るリキッドハンドラーは、試料容器12の深さに応じて異なるニードルリンス長を適用するものとなっている。以下、本実施形態におけるニードルリンス長の設定手順、及びその後の試料採取から試料注入までの実行手順について、
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0023】
まず、ユーザが、それぞれ試料液が収容された複数の試料容器12を容器ラック11にセットし、該容器ラック11をラック収容部10に収容する。続いて、入力部61でユーザが所定の操作を行うと、表示制御部55の制御の下に、深さ情報記憶部53に記憶されているラックレイアウト名の一覧が表示部62に表示される。ユーザは、前記一覧の中から、これから使用する容器ラック11と試料容器12との組み合わせ(すなわち、ラック収容部10に収容されている容器ラック11と試料容器12との組み合わせ)に対応するラックレイアウト名を選択する(ステップ201)。すると、深さ情報取得部52によって、前記ラックレイアウト名に対応付けて深さ情報記憶部53に記憶されているラックレイアウト情報が特定され、該ラックレイアウト情報に含まれる容器深さ情報が読み出される(ステップ202)。そして、ニードルリンス長設定部54が、該容器深さ情報に基づいてニードルリンス長を決定し、その値を記憶部56に記憶させる(ステップ203)。
【0024】
このステップ203では、試料容器12への挿入によってニードル21の外周面に付着した試料液を除去するのに必要最低限な長さとなるよう、ニードルリンス長が設定される。すなわち、
図4及び
図5に示すように、試料容器12の深さAが相対的に大きい場合は、それに合わせてニードルリンス長Bも大きくし、
図6及び
図7に示すように試料容器12の深さAが相対的に小さい場合には、それに合わせてニードルリンス長Bも小さくする。
【0025】
ここで、ニードルリンス長Bは、例えば、試料容器12の深さAと等しい値とする。通常、試料容器12の上端から該試料容器12に収容されている試料液の液面までの距離(以下「距離D1」とよぶ)は、リンスポート30の上端からリンスポート30内のリンス液の液面までの距離(以下「距離D2」とよぶ)よりも十分に大きいため、ニードルリンス長Bを試料容器12の深さAと等しくすることにより、ニードル21のうち試料液が付着する可能性がある領域を確実にリンス液に浸漬することができる。なお、上記の距離D1が距離D2よりも小さい場合は、両者の差に相当する長さ(すなわち「距離D2-距離D1」の値)を試料容器12の深さAに足した値をニードルリンス長Bとする。また、より確実なニードル洗浄を行うために、ニードルリンス長Bを試料容器12の深さA(又は深さAに「距離D2-距離D1」を足した値)よりも大きくしてもよい。その場合も、ニードルリンス長Bは、試料容器12の深さA(又は深さAに「距離D2-距離D1」を足した値)の110%以下の長さとすることが望ましい。
【0026】
その後、ユーザが、入力部61で所定の操作を行うことにより、制御部50の制御の下に、試料容器12からの試料液の採取が実行される(ステップ204)。具体的には、駆動機構制御部51が、上述のバッチテーブル、ティーチング情報、及びステップ202で読み出されたラックレイアウト情報に基づいて駆動機構23を制御することにより、ニードル21をバッチテーブルで指定された試料容器12の直上に移動させ、その後、ニードル21を下降させて試料容器12内に進入させる。そして、ニードル21の先端を試料容器12の内底面近傍に位置させた状態(
図4)で、上述の計量ポンプを動作させて、試料容器12内の試料液を前記バッチテーブルで指定された量だけニードル21(及びその基端側に接続されている配管)の内部に吸引する。
【0027】
続いて、ニードル21の外周面に付着した試料液を除去するため、ニードル21の洗浄が実行される(ステップ205)。具体的には、駆動機構制御部51が駆動機構23を制御することによって、まず、ニードル21をリンスポート30の直上に移動させる。そして、ニードルの先端をリンスポート30の上部開口の中央に位置させた状態から、ステップ203で設定されたニードルリンス長Bだけニードル21を下降させる。これにより、該ニードル21のうち、その先端から前記ニードルリンス長Bまでの領域がリンスポート30に挿入された状態となる(
図5)。
【0028】
その後、予め定められた時間が経過した時点で、制御部50の制御の下に、注入ポート40への試料注入が実行される(ステップ206)。具体的には、駆動機構23がニードル21を注入ポート40の直上に移動させ、その後、ニードル21を下降させて該ニードル21の先端を注入ポート40に刺入させる。そして、上述の計量ポンプの作用によって、ニードル21(及びその基端に接続された配管)内の試料液を注入ポート40に注入する。注入ポート40には試料導入流路41が接続されており、注入ポート40に注入された試料液は、この試料導入流路41を介して液体クロマトグラフの分析流路(カラムに至る流路)へと導かれる。
【0029】
その後、制御部50が前記バッチテーブルを参照し、該バッチテーブル上で指定された全ての試料容器12からの試料採取が完了したかどうかを判定する(ステップ207)。このステップ207がNoであった場合は、ステップ204に戻って前記バッチテーブル上で指定された次の試料容器12からの試料採取を行う。その後は、ステップ204~207を繰り返し実行し、ステップ207がYesとなった時点でリキッドハンドラーによる一連の動作を終了する。
【0030】
以上の通り、本実施形態に係るリキッドハンドラーでは、ニードルリンス長が試料容器12の深さに応じた値に自動的に設定される。そのため、試料容器12の深さが相対的に小さい場合には、試料容器12の深さが相対的に大きい場合に比べて、リンスポート30へのニードル21の挿入に要する時間及びリンスポート30からのニードル21の引き抜きに要する時間を短縮することができる。その結果、試料容器12の深さに拘わらず常にニードル21の大部分をリンス液に浸漬して洗浄を行うような場合に比べて、試料採取のスループットを向上することができる。
【0031】
なお、上記の例では、ステップ101において、ユーザに試料容器12の深さを入力させるものとしたが、これに代えて、試料採取時における、試料容器12の上端位置(すなわち上部開口の中心座標)からのニードル21の先端の下降量の情報をユーザに入力させ、その値に基づいてニードルリンス長を設定するようにしてもよい。この場合、前記「試料容器12の上端位置からのニードル21の先端の下降量」の情報が、本発明における「挿入深さ情報」に相当する。なお、この場合も、ニードルリンス長は、ニードル21の外周面に付着した試料液を除去するために必要最低限な長さ、例えば、前記「試料容器12の上端位置からのニードル21の先端の下降量」の値の100%~110%の長さとする。なお、前記「試料容器12の上端位置からのニードル21の先端の下降量」に代えて、所定の基準位置からのニードル21の下降量を、ユーザに入力させるようにしてもよい。その場合には、前記「所定の基準位置からのニードルの下降量」の値と、該基準位置から試料容器12の上端までの距離とに基づいて、前記「試料容器12の上端位置からのニードル21の先端の下降量」の値を求めることができる。
【0032】
[実施形態2]
図8は、本発明の第2の実施形態に係るリキッドハンドラーの概略構成図である。なお、実施形態1と同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付して適宜説明を省略する。
【0033】
本実施形態に係るリキッドハンドラーは、容器ラック211に付された識別情報を読み取るためのラック情報読み取り部271(本発明における「ラック識別情報取得部」に相当)を備えている。ラック情報読み取り部271は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)のような非接触型のICタグの情報を読み取るための読み取り器で構成することができる。この場合、容器ラック211には予め該容器ラック211の識別情報であるラック識別情報を記憶したICタグ272を貼付しておく。また、深さ情報記憶部253には、本実施形態に係るリキッドハンドラーにおいて用いられる複数種類の容器ラック211の各々について、その容器ラック211に付されたICタグ272に記憶されているラック識別情報と、その容器ラック211に搭載される試料容器212に関する前記「挿入深さ情報」とを対応付けて記憶させておく。ここで、ラック識別情報とは、容器ラックの種類を特定するための情報であって、例えば、容器ラック211の名称若しくは型番、又はユーザ若しくはリキッドハンドラーのメーカが任意に設定した文字列などとすることができる。なお、本実施形態においては、容器ラック211の種類に応じて、該容器ラック211に搭載される試料容器212の長さ(深さ)が一意に定まっているものとする。なお、深さ情報記憶部253に記憶される情報は、予め本実施形態に係るリキッドハンドラーのメーカによって設定されたものであってもよく、ユーザが入力部261を介して入力したものであってもよい。
【0034】
本実施形態に係るリキッドハンドラーでは、容器ラック211がラック収容部210に収容された時点、又はユーザが入力部261で所定の指示を入力した時点で、ラック情報読み取り部271によって、ICタグ272に記録されている情報(すなわちラック識別情報)が読み取られる。そして、深さ情報取得部252が、前記ラック識別情報に対応する挿入深さ情報を深さ情報記憶部253から読み出し、ニードルリンス長設定部254が、該挿入深さ情報に基づいてニードルリンス長を設定する。このときのニードルリンス長の設定方法、及びその後の動作については実施形態1と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0035】
上記の通り、本実施形態に係るリキッドハンドラーによれば、ラック収容部210内の容器ラック211から自動的にラック識別情報が読み取られるため、ラック識別情報をユーザが入力する手間を省くことができる。
【0036】
なお、上記の例では、容器ラック211にICタグ272を貼付し、これをICタグ読み取り器から成るラック情報読み取り部271で読み取るものとしたが、これに限らず、例えば、容器ラック211にラック識別情報を表す三次元形状を有する部位を単数又は複数設け、前記部位を単数又は複数のフォトセンサー(本発明における「ラック識別情報取得部」に相当)で読み取ることによってラック識別情報を取得するものとしてもよい。あるいは、容器ラック211にバーコードを貼付し、これをバーコードリーダ(本発明における「ラック識別情報取得部」に相当)で読み取ることによってラック識別情報を取得するものとしてもよい。また、容器ラック211に二次元コードを貼付したり、容器ラック211の種類を表す数字や文字などの識別子を直接貼付したりし、これをカメラ(本発明における「ラック識別情報取得部」に相当)で撮影することによってラック識別情報を取得するものとしてもよい。
【0037】
[実施形態3]
図9は、本発明の第3の実施形態に係るリキッドハンドラーの概略構成図である。なお、実施形態1と同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付して適宜説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係るリキッドハンドラーは、ニードル321の先端が試料液の液面に触れたか否かを検知するための液面検知部381を備えている。液面検知部381は、ニードル321の先端が液面に接触することによってニードル321を含む電気回路の静電容量が変化することを利用して液面の検知を行うものである。ただし、液面検知部381は、このような静電容量方式のセンサに限定されるものではなく、例えば、ニードル321の先端が液面に接触することによってニードル321内の圧力が変化することを利用して液面の検出を行う空気圧検知方式のセンサであってもよい。
【0039】
以下、本実施形態におけるニードルリンス長の設定手順、及びその後の試料採取から試料注入までの実行手順について、
図10のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0040】
まず、試料採取の対象とする試料容器312が搭載された容器ラック311について、そのラック識別情報を制御部350が取得する(ステップ401)。ここで、ラック識別情報は、例えば、実施形態1のようにユーザに入力させるか、あるいは実施形態2のように容器ラック311に付された情報を読み取ることによって取得することができる。そして、深さ情報取得部352が、ステップ401で取得されたラック識別情報に対応付けて深さ情報記憶部353に記憶されている挿入深さ情報を、該深さ情報記憶部353から読み出す(ステップ402)。
【0041】
その後、ラック収容部310に前記容器ラック311が収容されている状態において、駆動機構23がニードル321を下降させていく。このときの液面検知部381からの出力信号をニードルリンス長設定部354が監視し、該出力信号が予め定められた閾値に達したときにニードル321の先端が試料液の液面に触れた(すなわち液面を検知した)と判断する(ステップ403)。ニードルリンス長設定部354は、このときのニードル321の先端の高さを、前記試料液の液面高さとし、その高さとステップ402で取得された挿入深さ情報とに基づいて、ニードル321のうち前記試料液に浸漬される領域の長さ(以下「試料液浸漬長」とよぶ)を特定する。そして、ニードル321の先端から該試料液浸漬長に亘る領域を洗浄するために必要最小限の長さ(例えば試料液浸漬長の100~110%の長さ)をニードルリンス長として設定する(ステップ404)。なお、前記試料液浸漬長は、例えば、試料容器312の上端位置から前記液面高さまでの距離を求めて、その値を、前記挿入深さ情報である「試料容器の深さの値」又は「試料容器の上端からのニードルの先端の下降量の値」から引くことによって求めることができる。
【0042】
続いて、実施形態1と同様に、試料容器312からの試料液の採取(ステップ405)を行い、その後、ニードル321の先端から前記ニードルリンス長に亘る領域をリンスポート330に挿入することによってニードル321の洗浄を行う(ステップ406)。そして、ニードル321を注入ポート340に刺入して試料液を注入する(ステップ407)。その後は、予め設定された全ての試料容器312からの試料液の採取及び該試料液の注入ポート340への注入を完了するまで(すなわち
図10のステップ408でYesになるまで)、ステップ403~407を繰り返し実行する。
【0043】
上記の通り、本実施形態に係るリキッドハンドラーによれば、挿入深さ情報に加えて、試料容器内における試料液の液面の高さを考慮したニードルリンス長の設定が可能となる。これにより、同じ深さの試料容器であっても、容器内の液量が少ない場合(すなわち液面高さが低い場合)ほど、ニードルリンス長が短く設定されることとなるため、試料採取のスループットを一層向上することができる。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記の実施形態1~3に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、実施形態1~3では、オートサンプラとフラクションコレクターの機能を兼ね備えたリキッドハンドラーに本発明を適用した例を示したが、これに限らず、例えば、通常のオートサンプラにも本発明を同様に適用することができる。
【0045】
また、
図3のステップ201~202(又は
図10のステップ401~402)では、ユーザからラック識別情報の入力を受け付け(又はラック情報読取り部271によってラック識別情報を読み取り)、該ラック識別情報に対応する挿入深さ情報を、深さ情報記憶部53、353から読み出すものとしたが、これに代えて、ユーザから試料容器12、312の種類を表す容器識別情報(例えば、試料容器12、312の名称、型番、又は任意の文字列等)の入力を受け付け、該容器識別情報に対応する挿入深さ情報を、深さ情報記憶部53、353から読み出す構成としてもよい。この場合、入力部61、361、表示部62、362、及び表示制御部55、355が、協同して本発明における「容器識別情報入力受付部」として機能する。このような構成とする場合、予め本実施形態に係るリキッドハンドラーのメーカ又はユーザが、該リキッドハンドラーで用いられる複数種類の試料容器12、312の各々について、その容器識別情報と挿入深さ情報とを対応付けて深さ情報記憶部53、353に記憶させておく。
【0046】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0047】
(第1項)本発明の一態様に係る試料採取装置は、
試料容器内に挿入され、該試料容器内の試料液を採取するサンプリングニードルと、
前記サンプリングニードルを移動させるニードル移動機構と、
前記試料容器への前記サンプリングニードルの挿入深さに関する情報である挿入深さ情報を取得する深さ情報取得部と、
上面が開口したリンス液貯留槽と、
前記挿入深さ情報に基づいて、前記リンス液貯留槽への前記サンプリングニードルの挿入長さであるニードルリンス長を設定するニードルリンス長設定部と、
前記サンプリングニードルの先端から前記ニードルリンス長に亘る領域を前記リンス液貯留槽に挿入するように前記ニードル移動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記ニードルリンス長設定部が、前記試料容器への前記サンプリングニードルの挿入深さが小さいほど前記ニードルリンス長を短く設定するものである。
【0048】
第1項に係る試料採取装置によれば、試料容器へのサンプリングニードルの挿入深さが相対的に小さい場合には、該挿入深さが相対的に大きい場合に比べて、リンス液貯留槽へのサンプリングニードルの挿入に要する時間及びリンス液貯留槽からのサンプリングニードルの引き抜きに要する時間が短くなる。その結果、試料容器へのサンプリングニードルの挿入深さに拘わらず常にサンプリングニードルの大部分をリンス液貯留槽に挿入して洗浄を行うような場合に比べて、試料採取のスループットを向上することができる。
【0049】
(第2項)第2項に係る試料採取装置は、第1項に係る試料採取装置において、
前記挿入深さ情報を、前記試料容器の深さの値、又は前記試料容器の上端からの前記サンプリングニードルの先端の下降量の値としたものである。
【0050】
(第3項)第3項に係る試料採取装置は、第2項に係る試料採取装置において、
前記ニードルリンス長設定部が、前記ニードルリンス長を、前記試料容器の深さの値、又は前記試料容器の上端からの前記サンプリングニードルの先端の下降量の値の、100%~110%の長さに設定するものである。
【0051】
第3項に係る試料採取装置によれば、ニードルリンス長を、試料容器から試料を採取する際にサンプリングニードルの外周面に付着した試料液を除去するために必要最低限な長さとすることができ、リンス液貯留槽へのサンプリングニードルの抜き差しに要する時間を最小限に抑えることができる。
【0052】
(第4項)第4項に係る試料採取装置は、第1項~第3項のいずれか1項に係る試料採取装置において、
複数種類の前記試料容器の各々について、各試料容器の識別情報である容器識別情報と、該試料容器についての前記挿入深さ情報とを対応付けて記憶する深さ情報記憶部と、
ユーザからの、前記容器識別情報の入力を受け付ける容器識別情報入力受付部と、
を更に有し、
前記深さ情報取得部が、前記容器識別情報入力受付部で受け付けた前記容器識別情報に対応する前記挿入深さ情報を、前記深さ情報記憶部から読み出すものである。
【0053】
(第5項)第5項に係る試料採取装置は、第1項~第3項のいずれか1項に係る試料採取装置において、
前記試料容器を搭載した容器ラックを収容するラック収容部と、
複数種類の前記容器ラックの各々について、該容器ラックの識別情報であるラック識別情報と、該容器ラックに搭載される前記試料容器についての前記挿入深さ情報とを対応付けて記憶する深さ情報記憶部と、
前記サンプリングニードルによる前記試料液の採取対象とする前記試料容器が搭載された前記容器ラックに関する前記ラック識別情報を取得するラック識別情報取得部と、
を更に有し、
前記サンプリングニードルが、前記ラック収容部内の前記容器ラックに搭載されている前記試料容器から前記試料液を採取するものであって、
前記深さ情報取得部が、前記ラック識別情報取得部によって取得された前記ラック識別情報に対応する前記挿入深さ情報を、前記深さ情報記憶部から読み出すものである。
【0054】
(第6項)第6項に係る試料採取装置は、第5項に係る試料採取装置において、
前記ラック識別情報取得部を、前記ラック収容部に収容された前記容器ラックが保持している前記ラック識別情報を読み取るものとしたものである。
【0055】
第6項に係る試料採取装置によれば、ラック収容部内の容器ラックから自動的にラック識別情報が読み取られるため、ラック識別情報をユーザが入力する手間を省くことができる。
【0056】
(第7項)第7項に係る試料採取装置は、第1項~第6項のいずれか1項に係る試料採取装置において、
前記サンプリングニードルが前記試料液の液面に触れたことを検知する液面検知部、
を更に有し、
前記ニードルリンス長決定部が、前記挿入深さ情報と、前記液面検知部からの出力信号とに基づいて前記ニードルリンス長を設定するものである。
【0057】
第7項に係る試料採取装置によれば、前記挿入深さに加えて、試料容器内における試料液の深さを考慮することにより、ニードルリンス長をより適切に設定することができる。
【0058】
(第8項)第8項に係る試料採取装置は、第7項に係る試料採取装置において、
前記ニードルリンス長設定部が、前記挿入深さ情報と、前記液面検知部からの出力信号とに基づいて、前記サンプリングニードルのうち前記試料液に浸漬される領域の長さである試料液浸漬長を特定し、前記ニードルリンス長を該試料液浸漬長の100%~110%の長さに設定するものである。
【0059】
第8項に係る試料採取装置によれば、ニードルリンス長を、試料容器から試料を採取する際にサンプリングニードルの外周面に付着した試料液を除去するために必要最低限な長さとすることができ、リンス液貯留槽へのサンプリングニードルの抜き差しに要する時間を最小限に抑えることができる。
【0060】
(第9項)第9項に係る試料採取装置は、第1項~第8項のいずれか1項に係る試料採取装置において、
前記試料採取装置が、液体クロマトグラフに試料を導入するオートサンプラの機能と、該液体クロマトグラフからの溶出液を分取するフラクションコレクターの機能とを兼ね備えたリキッドハンドラーである。
【0061】
リキッドハンドラーでは、カラムからの溶出液を試験管等の比較的深さの大きい容器に分取した後、該容器中の溶出液を試料として採取してカラムに再導入する場合があるため、バイアルなどの比較的深さの小さい試料容器のみを使用する装置に比べて長いサンプリングニードルが用いられることが多い。第9項に係る試料採取装置によれば、本発明をこのようなリキッドハンドラーに適用することにより、サンプリングニードルの抜き差しに要する時間を効果的に短縮することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…ラック収容部
11…容器ラック
12…試料容器
21…ニードル
23…駆動機構
30…リンスポート
40…注入ポート
50…制御部
51…駆動機構制御部
52…深さ情報取得部
53…深さ情報記憶部
54…ニードルリンス長設定部
55…表示制御部
61…入力部
62…表示部
271…ラック情報読み取り部
272…ICタグ
381…液面検知部