(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095153
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20240703BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240703BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20240703BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/293
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212229
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 圭司
(72)【発明者】
【氏名】井戸 貴彦
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA27
5H040AS07
5H040AT06
5H040CC23
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】弾性シートがその厚さ方向に押圧された場合であっても、厚さ方向に平行な端面が外方に過度に膨出することを抑制することができるとともに、厚さの減少による断熱性の低下を抑制することができる熱伝達抑制シートを提供する。
【解決手段】熱伝達抑制シート10は、厚さ方向に直交する一対の主面11a及び厚さ方向に略平行な端面11bを有する弾性シート11と、少なくとも端面11bに沿って連続して配置された膨出抑制シート12と、を有する。膨出抑制シート12の引張強度は20MPa以上であり、150MPa以下であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に直交する一対の主面及び前記厚さ方向に略平行な端面を有する弾性シートと、
少なくとも前記端面に沿って連続して配置された膨出抑制シートと、を有し、
前記膨出抑制シートの引張強度は20MPa以上であることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項2】
前記膨出抑制シートの引張強度は150MPa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記膨出抑制シートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及び塩化ビニルから選択された少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記膨出抑制シートは、熱伝達抑制シートにおける厚さ方向に直交する外主面側を被覆する外主面側部と、熱伝達抑制シートにおける厚さ方向に略平行な外端面側を被覆する外端面側部と、を有し、少なくとも前記弾性シートを内包していることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記膨出抑制シートは、前記外端面側部における少なくとも一部の領域に、前記弾性シートの前記主面に略平行な方向に沿って延びる線状の肉厚部を有することを特徴とする、請求項4に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記肉厚部の少なくとも一部は、湾曲又は蛇行していることを特徴とする、請求項5に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記弾性シートにおける一対の主面の少なくとも一方に積層された断熱材を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
前記断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることを特徴とする、請求項7に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
前記断熱材は、無機繊維、有機繊維、無機粒子及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項7に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項10】
複数の電池セルと、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達抑制シート及び該熱伝達抑制シートを有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられており、充放電時や繰り返しの使用により膨張することがある。したがって、電池セルと電池セルとの間には、電池セルの膨張を吸収できるような仕切り部材が配置されることが好ましい。
【0004】
例えば、特許文献1には、断熱シートと、断熱シートの表面に積層してなる弾性層を備えるセパレータであって、弾性層は、電池セルのケース表面に部分的に密着して、前記電池セルの膨張で変形する弾性突出部を有するセパレータが開示されている。また、電池セルとセパレータの間には、電池セルに押圧されて弾性突出部が押圧方向と直行する外周方向に移動するための変形スペースが形成されている。
【0005】
上記特許文献1によると、セパレータが膨張する電池セルに押圧されると、弾性突出部が変形スペースに押し出されて薄くなる。このとき、弾性突出部は、変形スペースに移動して薄くなるので、電池セルの膨張を無理なく吸収することができる。
【0006】
また、特許文献2には、電池に含まれる表面を覆うように配置される電池用断熱材であって、電池の前記表面に対向して配置される断熱部と、断熱部より圧縮変形しやすい緩衝部と、を含む断熱材が提案されている。この緩衝部の少なくとも一部は、断熱部より電池の表面に近い位置に配置されている。なお、上記特許文献2には、海部分を形成する断熱部と島部分を形成する緩衝部とを有し、緩衝部の方が断熱部よりも小さいサイズで形成された例が記載されている。
【0007】
上記特許文献2においても、一方のセルの表面と、断熱材の断熱部の表面との間に、隙間が形成されている。したがって、一方のセルが膨張してその表面が、緩衝部を押圧する場合に、緩衝部の一部が隙間に張り出すことにより、容易に圧縮変形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/262080号
【特許文献2】特開2021-140968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、弾性層や緩衝部の厚さ方向に押圧された場合に、変形スペースや隙間に張り出させるために、弾性層や緩衝部を小さく設計すると、電池セルの主面側に印加される弾性層等による反発力が、場所によって大きく異なることになる。上述のとおり、電池セルは、充放電時や繰り返しの使用により膨張することがある。したがって、電池セルが膨張及び収縮を繰り返す度に、反発力が大きい領域と小さい領域とが発生し、その結果、電池の寿命が低下することが懸念される。
【0010】
また、特許文献2には、電池セルの主面のサイズと同等のサイズで緩衝部が配置された例も記載されているが、緩衝部の圧縮変形が容易であればあるほど、緩衝部は断熱材の端面から膨出する。その結果、電池セルと断熱材との間でずれやがたつきが発生することがあり、組電池の性能が低下するおそれがある。また、緩衝部が大きく圧縮変形して、その厚さが薄くなると、断熱性の低下を招く。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、弾性シートを有する熱伝達抑制シートにおいて、弾性シートがその厚さ方向に押圧された場合であっても、厚さ方向に平行な端面が外方に過度に膨出することを抑制することができるとともに、厚さの減少による断熱性の低下を抑制することができる熱伝達抑制シート及び組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0013】
[1] 厚さ方向に直交する一対の主面及び前記厚さ方向に略平行な端面を有する弾性シートと、
少なくとも前記端面に沿って連続して配置された膨出抑制シートと、を有し、
前記膨出抑制シートの引張強度は20MPa以上であることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【0014】
また、熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[9]に関する。
【0015】
[2] 前記膨出抑制シートの引張強度は150MPa以下であることを特徴とする、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
【0016】
[3] 前記膨出抑制シートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及び塩化ビニルから選択された少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の熱伝達抑制シート。
【0017】
[4] 前記膨出抑制シートは、熱伝達抑制シートにおける厚さ方向に直交する外主面側を被覆する外主面側部と、熱伝達抑制シートにおける厚さ方向に略平行な外端面側を被覆する外端面側部と、を有し、少なくとも前記弾性シートを内包していることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0018】
[5] 前記膨出抑制シートは、前記外端面側部における少なくとも一部の領域に、前記弾性シートの前記主面に略平行な方向に沿って延びる線状の肉厚部を有することを特徴とする、[4]に記載の熱伝達抑制シート。
【0019】
[6] 前記肉厚部の少なくとも一部は、湾曲又は蛇行していることを特徴とする、[5]に記載の熱伝達抑制シート。
【0020】
[7] 前記弾性シートにおける一対の主面の少なくとも一方に積層された断熱材を有することを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0021】
[8] 前記断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることを特徴とする、[7]に記載の熱伝達抑制シート。
【0022】
[9] 前記断熱材は、無機繊維、有機繊維、無機粒子及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする、[7]又は[8]に記載の熱伝達抑制シート。
【0023】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[10]の構成により達成される。
【0024】
[10] 複数の電池セルと、[1]~[9]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱伝達抑制シートは、弾性シートを有するため、熱伝達を抑制することができる。また、弾性シートの端面に沿って膨出抑制シートが配置されているため、弾性シートがその厚さ方向に押圧された場合であっても、厚さ方向に平行な端面が外方に過度に膨出することを抑制することができるとともに、厚さの減少による断熱性の低下を抑制することができる。
【0026】
本発明の組電池は、上記の熱伝達抑制シートを有するため、ある場所で発生した熱が他の場所に伝達されることを抑制することができるとともに、通常の充放電に伴なう電池セルの膨張に対応でき、電池の性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示し、(a)は、厚さ方向の断面図であり、(b)はその主面側から見た上面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る熱伝達抑制シートを適用した組電池を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示し、(a)は、厚さ方向の断面図であり、(b)はその主面側から見た上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す厚さ方向の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者らは、電池セルの膨張により熱伝達抑制シートが押圧された場合に、適正量で弾性シートが変形することにより電池セルへの反発力を抑制することができるとともに、断熱性の低下を抑制することができる熱伝達抑制シートを得るため、鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、少なくとも弾性シートの端面に沿って膨出抑制シートを配置することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0030】
〔1.熱伝達抑制シート〕
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示し、(a)は、厚さ方向の断面図であり、(b)はその主面側から見た上面図である。また、
図2は、第1の実施形態に係る熱伝達抑制シートを適用した組電池を模式的に示す断面図である。
第1の実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、弾性シート11と、膨出抑制シート12とを有する。弾性シート11は、その厚さ方向に直交する一対の主面11aと、厚さ方向に略平行な端面11bとを有する。本実施形態において、膨出抑制シート12は、弾性シート11の端面11bを覆うように、端面11bに沿って連続して形成されている。なお、後述するように、膨出抑制シート12は特定の物性を有するものであり、弾性シート11の端面11bが外方に膨出することを抑制する効果を有する。
【0031】
図2に示すように、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、例えば組電池に使用される。組電池100は、電池ケース30と、電池ケース30の内部に格納された複数の電池セル20a、20b、20cを有する。また、熱伝達抑制シート10は、電池セル20aと電池セル20bとの間、及び電池セル20bと電池セル20cとの間に介在されている。複数の電池セル20a、20b、20cは、不図示のバスバー等により、直列又は並列に接続されている。
【0032】
なお、電池セル20a、20b、20cは、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
【0033】
このように構成された組電池100において、電池セル20a、20b、20cの少なくとも1つの温度が上昇した場合に、隣り合う電池セルとの間には弾性シート11が介在されているため、電池セル間で熱が伝達されることを抑制することができる。また、組電池100において、充放電等により電池セル20a、20b、20cが膨張すると、
図1(a)に示すように、弾性シート11の主面11aに向かって押圧力F1が印加される。弾性シート11は弾性体により構成されているため、主面11aが押圧して弾性シート11の厚さが減少するとともに、その体積分の一部が押圧されていない領域に逃げようとし、膨出力F2が生じる。第1の実施形態では、膨出抑制シート12が弾性シート11の端面11bを被覆しており、膨出抑制シート12が押圧力F3で弾性シート11の端面11bを内方に押圧するため、弾性シート11の端面11bが外方に膨出することを抑制することができる。
【0034】
その結果、電池セル20a、20b、20cと熱伝達抑制シート10との間でずれやがたつきが発生することを抑制することができ、組電池の性能の低下を防止することができる。また、弾性シート11の主面11aが高い押圧力F1で押圧された場合であっても、弾性シート11が大きく圧縮変形して、厚さが減少しすぎることを防止することができ、各電池セル20a、20b、20c間の断熱性を保持することができる。
【0035】
なお、弾性シート11の材質を適切に選択して弾性率を制御すれば、端面11bの膨出を抑制することが可能であるが、本実施形態によると、弾性シート11の材質にかかわらず、膨出抑制シート12を取り付けるのみで膨出を抑制することができる。したがって、弾性シート11の選択の裕度が増加し、弾性率以外の所望の特性を有する弾性シート11を自由に選択することができる。
【0036】
膨出抑制シート12は、弾性シート11の端面11bに密着していても密着していなくてもよいが、密着していると、弾性シート11から膨出抑制シート12が離脱することを抑制することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示し、(a)は、厚さ方向の断面図であり、(b)はその主面側から見た上面図である。
図3に示す第2の実施形態において、
図1に示す第1の実施形態と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0038】
図3に示すように、第2の実施形態に係る熱伝達抑制シート40において、膨出抑制シート13は、弾性シート11の主面11a及び端面11bを被覆しており、弾性シート11を内包している。すなわち、膨出抑制シート13は、弾性シート11の主面11a側を被覆する外主面側部13aと、弾性シート11の端面11bを被覆する外端面側部13bとにより構成されており、外主面側部13aと外端面側部13bとは連続して形成されている。
【0039】
このように構成された第2の実施形態においても、電池セル間の熱の伝達を抑制することができる。また、膨出抑制シート13の外端面側部13bが弾性シート11の端面11b側に配置されており、外端面側部13bが弾性シート11の端面11bを内方に押圧する。したがって、弾性シート11の端面11bが外方に膨出することを抑制することができる。その結果、
図2に示す組電池100に第2の実施形態に係る熱伝達抑制シート40を適用した場合に、電池セル20a、20b、20cと熱伝達抑制シート40との間のずれやがたつきに起因した組電池の性能の低下を防止することができる。また、弾性シート11の厚さが減少することによる断熱性の低下を抑制することができる。
【0040】
なお、弾性シート11の主面11aと膨出抑制シート13の外主面側部13aとは、接触していても接触していなくてもよく、弾性シート11の主面11aと膨出抑制シート13の外主面側部13aとの間に他の機能性部材が介在されていてもよい。同様に、弾性シート11の端面11bと膨出抑制シート13の外端面側部13bとは、直接接触していても接触していなくてもよい。具体的には、膨出抑制シート13が配置されることにより弾性シート11の端面の膨出を抑制することができる効果が得られればよく、弾性シート11の端面11bと膨出抑制シート13の外端面側部13bとの間に他の機能性シートが介在されていてもよい。
【0041】
<第3の実施形態>
図4は、本発明の第3の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す厚さ方向の断面図である。
図4に示す第3の実施形態において、
図1に示す第1の実施形態と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0042】
図4に示すように、第3の実施形態に係る熱伝達抑制シート50において、弾性シート11の一対の主面11aに、断熱材15が積層されている。具体的には、断熱材15の厚さ方向に直交する一対の主面15a、15cのうち一方の主面15cと弾性シート11の主面11aとが接するように配置されている。膨出抑制シート14は、弾性シート11及び一対の断熱材15を内包している。したがって、膨出抑制シート14は、断熱材15の一方の主面11c側を被覆する外主面側部14aと、弾性シート11の端面11b及び断熱材15の端面15bを被覆する外端面側部13bとにより構成されている。
【0043】
このように構成された第3の実施形態においては、弾性シート11の主面11a側に一対の断熱材15が配置されている。したがって、熱伝達抑制シート50を
図2に示す組電池100に適用した場合に、電池セル20a、20b、20c間の断熱性をより一層向上させることができる。また、膨出抑制シート14の外端面側部14bが弾性シート11の端面11b側に配置されているため、弾性シート11の端面11bが外方に膨出することを抑制することができる。その結果、組電池100の性能の低下を防止することができる。
【0044】
さらに、第3の実施形態において、膨出抑制シート14は、弾性シート11及び一対の断熱材15を内包しており、例えば断熱材15が無機粒子や有機粒子等を含む場合に、膨出抑制シート14により粒子等の脱落を防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、弾性シート11の主面11aの両方に一対の断熱材15を配置したが、例えば、弾性シート11の一方の主面11aにのみ、断熱材15を配置してもよい。
【0046】
<第4の実施形態>
図5は、本発明の第4の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す斜視図である。
図5に示す第4の実施形態において、
図3に示す第2の実施形態と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0047】
図5に示すように、第4の実施形態に係る熱伝達抑制シート60は、膨出抑制シート13の外端面側部13bに、弾性シート11の主面11aに略平行な方向に沿って延びる線状の肉厚部16を有する。
【0048】
このように構成された第4の実施形態においては、膨出抑制シート13の外端面側部13bに肉厚部16を有するため、弾性シート11の端面11bの外方への膨出を抑制する効果をより一層向上させることができる。なお、肉厚部16の少なくとも一部は湾曲しているか、又は蛇行していることが好ましい。肉厚部16に蛇行している領域が存在すると、弾性シート11の端面11bが膨出した場合に、膨出に応じて外端面側部13bは膨出に応じて若干伸長し、これに伴って蛇行した肉厚部16も伸長する。その後、電池セル20a、20b、20cによる熱伝達抑制シート60への押圧が小さくなり、弾性シート11が収縮すると、弾性シート11の端面11bが内方に向けて後退する。このとき、肉厚部16が蛇行した形状に戻ろうとし、膨出抑制シート13の外端面側部13bに端面11bの後退に追従する力が発生するため、膨出抑制シート13による膨出抑制効果を長期間維持することができる。
【0049】
なお、肉厚部16は、膨出抑制シート13の外端面側部13bに周回するように形成されていれば膨出抑制に効果的であるが、必ずしも周回するように形成されている必要はなく、外端面側部13bの少なくとも一部の領域に形成されていれば、上記効果を得ることができる。同様に、肉厚部16の全域にわたって湾曲又は蛇行している必要はなく、肉厚部の少なくとも一部において、湾曲又は蛇行していれば、上記効果を得ることができる。
【0050】
次に、上記第1~第4の実施形態に係る熱伝達抑制シートを構成する材料について、詳細に説明する。
【0051】
[弾性シート]
弾性シートとしては、公知のものを使用することができ、電池セル20a、20b、20cの変形に対して柔軟に変形する弾性を有するゴムや熱可塑性エラストマーにより形成されたシートを用いることができる。なお、公知の材料からなる弾性シートは、一般的に一定の断熱機能を有するため、上記第1及び第2の実施形態に示すように、弾性シートに断熱材が積層されていない場合であっても、電池セル間の熱伝達を抑制する効果を得ることができる。
【0052】
ゴムは合成ゴム及び天然ゴムのいずれでもよく、合成ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ふっ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、エビクロルヒドリンゴム及び発泡シリコーンなどを挙げることができる。
【0053】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系の各熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。また、エラストマーは、多孔性及び非多孔性のいずれでもよい。なお、多孔性の場合、気泡構造は独立気泡型及び連通気泡型のいずれでもよい。
【0054】
(弾性シートのサイズ)
弾性シート11の厚さは特に限定されないが、弾性シート11についての効果を効果的に得るために、1mm以上10mm以下とすることが好ましい。また、弾性シート11の厚さ方向に直交する主面11aの大きさは、電池セル20a、20b、20cにおける弾性シート11に対向する面の大きさと略同一であることが好ましいが、特に限定されない。ただし、弾性シート11が電池セルよりも著しく小さいと、上述のとおり、電池セルに不均一に圧力が印加されることになり、電池セルの寿命を低下させるおそれがある。したがって、本発明による効果を損ねない範囲で、弾性シート11の主面11aの大きさは、電池セルにおける弾性シート11に対向する面よりも大きいことも好ましい。
【0055】
[膨出抑制シート]
膨出抑制シートを構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルスルフィド、ポリカーボネート及びアラミドから選択された少なくとも1種の樹脂を選択することができる。
【0056】
なお、
図3~
図5に示すように、弾性シート11や、弾性シート11及び断熱材15の表面全面を膨出抑制シートで被覆する場合に、シュリンク包装を利用することが好ましい。したがって、シュリンク包装に好適な材料の膨出抑制シートを使用することがより好ましい。このような材料としては、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニルが挙げられる。
【0057】
(膨出抑制シートの特性)
本実施形態において、膨出抑制シートは、弾性シート11の端面11bに密着し、端面11bにおける膨出を防止する効果を有するため、適切な引張強度を有することが好ましい。さらに、膨出抑制シートが、弾性シート11の端面11bに沿って膨出を抑制する効果を十分に得るためには、適切な引張伸びを有することも好ましい。
【0058】
(膨出抑制シートの引張強度)
膨出抑制シートの引張強度が20MPa未満であると、弾性シート11の端面11bが外方に膨出した場合に、すぐに破壊されてしまうため、膨出を抑制する効果を十分に得ることができない。したがって、膨出抑制シートの引張強度は、20MPa以上とし、30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることがより好ましい。
一方、膨出抑制シートの引張強度が150MPa以下であれば、端面11bの膨出を防止する効果を適切に制御することができ、弾性シート11による電池セル20a、20b、20cの変形を吸収する効果を十分に得ることができる。したがって、膨出抑制シートの引張強度は、150MPa以下であることが好ましく、130MPa以下であることがより好ましく、100MPa以下であることがさらに好ましい。
【0059】
(膨出抑制シートの厚さ)
膨出抑制シートの厚さが1mmを超えると、弾性シート11の形状に追従させることが困難となり、ひびや割れが発生するおそれがある。したがって、膨出抑制シートの厚さは、1mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましく、0.05mm以下であることがさらに好ましい。
一方、膨出抑制シートの厚さの下限は特に限定されないが、所望の引張強度を得るために、0.005mm以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。
【0060】
<膨出抑制シートに含まれる他の材料>
また、膨出抑制シートは、電池セル20a、20b、20cに接するため、難燃性を有することが好ましく、具体的には、無機物又は難燃材を含むことが好ましい。膨出抑制シートを構成する材料として、無機物としては、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、バーミキュライト、ゼオライト、合成シリカ、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナが挙げられ、難燃材としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ホウ系難燃剤、シリコーン系難燃剤及び、窒素含有化合物が挙げられる。
【0061】
[断熱材]
本実施形態に係る熱伝達抑制シートに用いられる断熱材としては、断熱効果を有するものであれば、特に限定されない。断熱効果を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
なお、断熱材の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0062】
(断熱材のサイズ)
弾性シートに断熱材を積層する場合に、これらの厚さに直交する面における弾性シートと断熱材のサイズは略同一であることが好ましい。ただし、弾性シートが断熱材よりも著しく小さい場合に、電池セルに不均一に圧力が印加されることがあり、電池セルの寿命を低下させるおそれがある。したがって、本発明による効果を損ねない範囲で、断熱材15の主面15aのサイズは、弾性シート11の主面11aのサイズよりも大きいことも好ましい。
【0063】
このような断熱材として、例えば、無機繊維、有機繊維、無機粒子及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有するものを用いることができる。それぞれの具体例を下記に示す。
【0064】
<無機繊維>
無機繊維として、単一の無機繊維を使用してもよいし、2種以上の無機繊維を組み合わせて使用してもよい。無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミック繊維、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト、ムライト繊維等の鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0065】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面又は多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0066】
(無機繊維の平均繊維長)
無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、断熱材の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより断熱性の低下を招くおそれがある。
【0067】
無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、熱伝達抑制シートの成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0068】
(無機繊維の含有量)
本実施形態において、断熱材が無機繊維を含む場合に、無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0069】
また、無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、無機繊維による保形性や押圧力耐性、抗風圧性や、無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。また、無機繊維の含有量を適切に制御することにより、有機繊維及び無機繊維が互いに絡み合って3次元ネットワークを形成するため、無機粒子、及び後述する他の配合材料を保持する効果をより一層向上させることができる。
【0070】
<有機繊維>
有機繊維は、断熱材に柔軟性を与える効果を有するとともに、有機繊維が骨格を形成することにより、断熱材の強度を高める効果を有する。また、有機繊維の表面に無機粒子及び他の有機繊維が溶着されていると、シートの強度を向上させる効果及び形状を保持する効果をより一層向上させることができる。また、断熱材に適切な含有量で有機繊維が含まれていると、断熱材の内部に複数の空隙部が形成され、断熱材が加熱された際に、空気や水分を、空隙部を介して外部に放出することができる。
【0071】
断熱材における有機繊維の材料として、セルロースファイバ等の単成分の有機繊維を使用することもできるが、芯鞘構造のバインダ繊維を使用することが好ましい。芯鞘構造のバインダ繊維は、繊維の長手方向に延びる芯部と、芯部の外周面を被覆するように形成された鞘部とを有するものである。この場合に、芯部は第1の有機材料からなり、鞘部は第2の有機材料からなり、第1の有機材料の融点は、第2の有機材料の融点よりも高いものとする。
【0072】
(第1の有機材料)
本実施形態において、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、芯部を構成する第1の有機材料は、芯部の外周面に存在する鞘部、すなわち第2の有機材料の融点よりも高いものであれば、特に限定されない。第1の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0073】
(第2の有機材料)
第2の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、特に限定されない。第2の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
なお、第2の有機材料の融点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、第2の有機材料の融点は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。
【0074】
(有機繊維の含有量)
断熱材における有機繊維の含有量が適切に制御されていると、骨格の補強効果を十分に得ることができる。
有機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、有機繊維の含有量が多くなりすぎると、無機粒子の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、有機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
(有機繊維の繊維長)
有機繊維の繊維長については特に限定されないが、成形性や加工性を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は10mm以下とすることが好ましい。
一方、有機繊維を骨格として機能させ、熱伝達抑制シートの圧縮強度を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は0.5mm以上とすることが好ましい。
【0076】
<無機粒子>
無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。無機粒子の種類としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、形状についても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、具体的には、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。
【0077】
無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0078】
なお、2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。具体的には、大径粒子と小径粒子とを混合使用することが好ましい。例えば、一方の無機粒子として、ナノ粒子を使用する場合に、他方の無機粒子として、金属酸化物からなる無機粒子を含むことが好ましい。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0079】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、第1の無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0080】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において熱伝達抑制シート内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0081】
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0082】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用すると、さらに細かい空隙部が分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって熱伝達抑制シートが圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、熱伝達抑制シートの伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙部ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0083】
なお、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm3)程度であるため、例えば、熱伝達抑制シートの両側に配置された電池セルが熱膨張し、熱伝達抑制シートに対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等が挙げられるが、本実施形態に特に好適であるシリカナノ粒子について、以下に説明する。
【0084】
一般的に、湿式シリカは粒子が凝集しているのに対し、乾式シリカは粒子を分散させることができる。90℃以下の温度範囲において、熱の伝導は伝導伝熱が支配的であるため、粒子を分散させることができる乾式シリカの方が、湿式シリカと比較して、優れた断熱性能を得ることができる。
なお、本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、材料を含む混合物を、乾式法によりシート状に加工する製造方法を用いることが好ましい。したがって、無機粒子としては、熱伝導率が低い乾式シリカ、シリカエアロゲル等を使用することが好ましい。
【0085】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、熱伝達抑制シート内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙部と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、熱伝達抑制シートの断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0086】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)等が挙げられる。
【0087】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al2O3)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O
【0088】
なお、上述のとおり、熱伝達抑制シート10は、例えば、電池セル間に介在されることが好適であるが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、断熱材に含まれる無機粒子としては、熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0089】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱材の中心付近にある第1の無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材の中心付近の第1の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0090】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0091】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0092】
(無機バルーン)
本発明に用いる断熱材は、第1の無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱又は伝導伝熱を抑制することができ、断熱材の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0093】
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0094】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0095】
<第2の無機粒子>
熱伝達抑制シート10に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0096】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、熱伝達抑制シートに圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、例えばナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、熱伝達抑制シートに含有させることが好ましい。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることがでる。特に、酸化チタン(チタニア)は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0097】
第1の無機粒子として、乾式シリカ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を使用し、第2の無機粒子として、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用する場合に、90℃以下の温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
一方、90℃を超える温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0099】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子を熱伝達抑制シートに含有させる場合に、第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0100】
(無機粒子の含有量)
本実施形態において、断熱材中の無機粒子の合計の含有量が適切に制御されていると、断熱材の断熱性を十分に確保することができる。
無機粒子の合計の含有量は、断熱材の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子の合計の含有量が多くなりすぎると、有機繊維の含有量が相対的に減少するため、骨格の補強効果及び無機粒子の保持効果を十分に得るためには、無機粒子の合計の含有量は、断熱材の全質量に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0101】
なお、断熱材中の無機粒子の含有量は、例えば、断熱材を800℃で加熱し、有機分を分解後、残部の質量を測定することにより、算出することができる。
【0102】
<他の配合材料>
(ホットメルトパウダー)
熱伝達抑制シートには、上記バインダ繊維、無機粒子の他に、混合物中にホットメルトパウダーを含有させてもよい。ホットメルトパウダーは、例えば上記第1の有機材料及び第2の有機材料とは異なる第3の有機材料を含有し、加熱により溶融する性質を有する粉体である。混合物中にホットメルトパウダーを含有させ、加熱することにより、ホットメルトパウダーは溶融し、その後冷却すると、周囲の無機粒子を含んだ状態で硬化する。したがって、断熱材の無機粒子の脱落をより一層抑制することができる。
【0103】
ホットメルトパウダーとしては、種々の融点を有するものが挙げられるが、使用するバインダ繊維の芯部及び鞘部の融点を考慮して、適切な融点を有するホットメルトパウダーを選択すればよい。有機繊維として芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、ホットメルトパウダーを構成する成分である第3の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、芯部を残して、鞘部及びホットメルトパウダーを溶融させるための加熱温度を設定することができる。例えば、ホットメルトパウダーの融点が、鞘部の融点以下であると、製造時の加熱温度は、芯部の融点と鞘部の融点との間で設定すればよいため、より一層容易に加熱温度を設定することができる。
【0104】
一方、ホットメルトパウダーの融点が、芯部の融点と鞘部の融点との間となるように、使用するホットメルトパウダーの種類を選択することもできる。このような融点を有するホットメルトパウダーを使用すると、鞘部及びホットメルトパウダーがともに溶融した後、冷却されて硬化する際に、先に有機繊維(芯部)とその周囲の溶融した鞘部、及び無機粒子の隙間に存在するホットメルトパウダーが硬化する。その結果、有機繊維の位置を固定することができ、その後、溶融していた鞘部が有機繊維に溶着することにより、立体的な骨格が形成されやすくなる。したがって、シート全体の強度をより一層向上させることができる。
【0105】
ホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点が、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも十分に低いと、加熱する工程における加熱温度の設定裕度を広げることができ、より一層所望の構造を得るための温度設定を容易にすることができる。例えば、第1の有機材料の融点は、第3の有機材料の融点よりも60℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましく、80℃以上高いことがさらに好ましい。
【0106】
なお、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。ホットメルトパウダーを構成する成分としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル等が挙げられる。
【0107】
(ホットメルトパウダーの含有量)
無機粒子の脱落を抑制するために、断熱材の材料中にホットメルトパウダーを含有させる場合に、その含有量は微量でも粉落ち抑制の効果を得ることができる。したがって、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材の材料全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
一方、ホットメルトパウダーの含有量を増加させると、無機粒子等の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材の材料全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0108】
断熱材の材料としてホットメルトパウダーを含む場合に、加熱する工程における加熱温度は、鞘部を構成する第2の有機材料の融点、及びホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点のいずれか高い方よりも10℃以上高く設定することが好ましく、20℃以上高く設定することがより好ましい。一方、加熱温度は、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも10℃以上低く設定することが好ましく、20℃以上低く設定することがより好ましい。このような加熱温度に設定することにより、強固な骨格を形成することができ、シートの強度をより一層向上させることができるとともに、無機粒子の脱落を防止することができる。
【0109】
なお、断熱材は、さらに、必要に応じて、他の結合材、着色剤等を含有させることができる。これらはいずれも断熱材の補強や成形性の向上等を目的とする上で有用であり、断熱材の全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0110】
次に、本実施形態に係る熱伝達抑制シートの製造方法について説明する。
【0111】
〔2.熱伝達抑制シートの製造方法〕
上記第1の実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、所望のサイズを有する弾性シート11と膨出抑制シート12とを準備し、弾性シート11の端面11bに膨出抑制シート12を巻回するように配置する。次に、膨出抑制シート12同士を接着することにより、熱伝達抑制シート10を得ることができる。
また、膨出抑制シート12として、加熱により収縮する環状に成型された樹脂フィルムを使用し、このフィルムを弾性シート11の端面11bに周回するように配置した後、加熱することによっても、熱伝達抑制シート10を得ることができる。
【0112】
さらに、上記第2及び第3の実施形態に係る熱伝達抑制シート40、50は、例えば以下の方法により製造することができる。
まず、弾性シート11又は弾性シート11と断熱材15との積層体を平面状の樹脂フィルムの上に載置した後、樹脂フィルムを折り曲げて、積層体の上面にも樹脂フィルムを被せる。その後、積層体の下面における樹脂フィルムと、上面における樹脂フィルムとを、積層体の周囲で加圧しつつ加熱して接着する。その後、積層体の周囲における樹脂フィルムを加熱により収縮させて、積層体の外表面に樹脂フィルムを密着させる。これにより、外主面側が膨出抑制シートの外主面側部に被覆され、外端面側が膨出抑制シートの外端面側部に被覆された、熱伝達抑制シート40、50を得ることができる。樹脂フィルムを収縮させる前の任意のタイミングで、樹脂フィルムにおける任意の領域に、内包される空気を外部に排出させる複数の孔を形成してもよい。
【0113】
なお、上記第4の実施形態に係る熱伝達抑制シート60は、上記第2及び第3の実施形態に係る熱伝達抑制シート40、50の製造方法と同様にして製造することができる。この場合に、積層体の下面における樹脂フィルムと上面における樹脂フィルムとを加圧しつつ加熱した際に形成される融着部を、熱伝達抑制シート60における肉厚部16とすることができる。
【0114】
〔3.組電池〕
本発明の実施形態に係る組電池は、上記の〔1.熱伝達抑制シート〕に記載の熱伝達抑制シートを有する。すなわち、
図2に示すように、組電池100は、複数の電池セル20a、20b、20cと、例えば上記の熱伝達抑制シート10と、を有し、各電池セル20a、20b、20cが直列又は並列に接続されたものである。そして、熱伝達抑制シート10は、電池セル20aと電池セル20bとの間、及び電池セル20bと電池セル20cとの間に介在されている。また、電池セル20a、20b、20c及び熱伝達抑制シート10は、電池ケース30に収容されている。
【0115】
このように構成された組電池100においては、電池セル20a、20b、20cの膨張により、弾性シート11の主面11aに向かって押圧力が印加された場合でも、膨出抑制シート12が弾性シート11の端面11bを内方に押圧するため、弾性シート11の端面11bが外方に膨出することを抑制することができる。その結果、電池セル20a、20b、20cと熱伝達抑制シート10との間でずれやがたつきが発生することを抑制することができ、組電池の性能の低下を防止することができる。また、弾性シート11の主面11aが高い押圧力で押圧された場合であっても、弾性シート11が大きく圧縮変形して、厚さが減少しすぎることを防止することができ、各電池セル20a、20b、20c間の断熱性を保持することができる。
【0116】
なお、図示は省略するが、上記〔1.熱伝達抑制シート〕に記載の熱伝達抑制シートは、複数の電池セル間のみでなく、例えば、電池セルと電池ケースとの間の狭隘な領域に配設することができる。このように、熱伝達抑制シートを電池セルと電池ケースとの間に配設した場合であっても、電池セルに不要な圧力が印加されることを抑制することができ、電池セルの寿命を向上させることができる。
【0117】
また、例えば
図4に示すように、断熱材15を有する熱伝達抑制シート50は、より一層優れた断熱性を有するものとなる。したがって、熱伝達抑制シート50を適用した組電池100が、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置された場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
さらにこの場合に、熱伝達抑制シート50等を、電池セルと電池ケースとの間に配置すると、新たに防炎材等を作製する必要がなく、低コストで安全な組電池を構成することができる。
【符号の説明】
【0118】
10,40,50,60 熱伝達抑制シート
11a,15a,15c 主面
11b,15b 端面
11 弾性シート
12,13,14 膨出抑制シート
13a,14a 外主面側部
13b,14b 外端面側部
15 断熱材
16 肉厚部
20a,20b,20c 電池セル
30 電池ケース
100 組電池