(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095157
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】枠体施工システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240703BHJP
E04B 9/06 20060101ALI20240703BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20240703BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E04G21/16
E04B9/06 A
E04B9/18 B
E04B9/18 P
B25J5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212235
(22)【出願日】2022-12-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月9日に,鹿島建設株式会社が「枠体施工システム」を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月12日に,鹿島建設株式会社が「枠体施工システム」を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500539561
【氏名又は名称】株式会社テムザック
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義秀
(72)【発明者】
【氏名】手島 則夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勇次
(72)【発明者】
【氏名】清水 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
【テーマコード(参考)】
2E174
3C707
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA04
2E174CA24
2E174DA17
2E174DA52
3C707AS21
3C707CS08
3C707CT04
3C707ES03
3C707ET02
3C707HS26
3C707HS27
3C707KS12
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT04
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】高所作業である枠体の設置作業を枠体施工システムによって行う。
【解決手段】枠体施工システムは、メインバー7を保持する保持作業部140と、メインバー7の位置を調整する位置調整部145と、連結部材8を介してメインバー7を既設メインバー6に連結する作業を行う連結作業部40,60,70と、メインバー7を吊りボルト4aに固定する作業を行う固定作業部150,160,180,210と、各部を移動可能な移動部10と、各部の作動を制御する制御部80,220と、を備え、制御部80,220は、位置調整部145を制御し、メインバー7を既設メインバー6に接近させた後、連結作業部40,60,70を制御し、連結部材8を介してメインバー7と既設メインバー6とを連結し、固定作業部150,160,180,210を制御し、ハンガ5を介してメインバー7を吊りボルト4aに固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スラブに取り付けられた支持部材に枠体のメインバーを取り付ける枠体施工システムであって、
前記メインバーを保持する保持作業部と、
前記保持作業部により保持された前記メインバーの位置を調整する位置調整部と、
前記保持作業部により保持された前記メインバーを、連結部材を介して既設メインバーに連結する作業を行う連結作業部と、
前記保持作業部により保持された前記メインバーを、取付金具を介して、前記支持部材に固定する作業を行う固定作業部と、
前記保持作業部、前記位置調整部、前記連結作業部及び前記固定作業部をそれぞれ移動可能な移動部と、
前記保持作業部、前記位置調整部、前記連結作業部、前記固定作業部及び前記移動部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記移動部を制御し、前記保持作業部、前記位置調整部、前記連結作業部及び前記固定作業部を所定の位置へとそれぞれ移動させ、前記位置調整部を制御し、前記メインバーを前記既設メインバーに接近させた後、前記連結作業部を制御し、前記連結部材を介して前記メインバーと前記既設メインバーとを連結し、前記固定作業部を制御し、前記取付金具を介して前記メインバーを前記支持部材に固定する、
枠体施工システム。
【請求項2】
前記連結作業部は、
前記既設メインバーの端部を把持する第1把持部と、
前記メインバーの端部を把持する第2把持部と、
前記既設メインバーの端部及び前記メインバーの端部の位置を検知可能な端部位置検知部と、
前記既設メインバーと前記メインバーとを前記連結部材によって連結する連結部と、を有し、
前記制御部は、前記端部位置検知部の検知結果に基づいて前記連結部を制御し、前記既設メインバーと前記メインバーとを連結させる、
請求項1に記載の枠体施工システム。
【請求項3】
前記連結部は、
前記既設メインバー及び前記メインバーに前記連結部材を取り付ける連結部材取付部と、
前記既設メインバー及び前記メインバーに取り付けられた前記連結部材を押圧することによって前記連結部材の差込部を前記既設メインバー及び前記メインバーの差込口に差し込む連結部材押圧部と、を有する、
請求項2に記載の枠体施工システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2把持部により把持された前記メインバーの端部を前記連結部材押圧部によって把持させた後、前記第1把持部により把持された前記既設メインバーの端部に、前記メインバーの端部が近づくように、前記連結部材押圧部の位置を調整することによって前記保持作業部により保持された前記メインバーの位置を調整する、
請求項3に記載の枠体施工システム。
【請求項5】
前記固定作業部は、
前記支持部材に前記取付金具を取り付ける金具取付部と、
前記取付金具に設けられた締結部材を締め付ける締付部と、を有し、
前記制御部は、前記金具取付部を制御し、前記支持部材に前記取付金具を取り付けた後、前記締付部を制御し、前記締結部材を締め付ける、
請求項1から4の何れか1つに記載の枠体施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井部分に設けられた枠体に対して天井ボードを取り付ける施工システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された施工システムは、天井部分に設けられた枠体に天井ボードを取り付けるという高所作業を行う機構(ロボット)を備えているものの、枠体を設置する機構については備えていない。つまり、天井部分へ枠体を設置するという高所作業については作業員が予め行わなければならず、作業員の作業負担を十分に軽減するには至っていない。
【0005】
本発明は、高所作業である枠体の設置作業を行うことが可能な枠体施工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井スラブに取り付けられた支持部材に枠体のメインバーを取り付ける枠体施工システムであって、メインバーを保持する保持作業部と、保持作業部により保持されたメインバーの位置を調整する位置調整部と、保持作業部により保持されたメインバーを、連結部材を介して既設メインバーに連結する作業を行う連結作業部と、保持作業部により保持されたメインバーを、取付金具を介して、支持部材に固定する作業を行う固定作業部と、保持作業部、位置調整部、連結作業部及び固定作業部をそれぞれ移動可能な移動部と、保持作業部、位置調整部、連結作業部、固定作業部及び移動部の作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、移動部を制御し、保持作業部、位置調整部、連結作業部及び固定作業部を所定の位置へとそれぞれ移動させ、位置調整部を制御し、メインバーを既設メインバーに接近させた後、連結作業部を制御し、連結部材を介してメインバーと既設メインバーとを連結し、固定作業部を制御し、取付金具を介してメインバーを支持部材に固定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枠体施工システムによって、高所作業である枠体の設置作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る枠体施工システムによって行われる枠体設置作業のイメージを示したイメージ図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿う断面において第1ロボットを見たときの第1ロボットの把持部を示す図である。
【
図3】
図2に示される把持部の作動を説明するための図である。
【
図4】
図1のB-B線に沿う断面において第1ロボットを見たときの第1ロボットの連結部材取付部を示す図である。
【
図5】
図4に示される連結部材取付部の作動を説明するための図である。
【
図6】
図1のC-C線に沿う断面において第1ロボットを見たときの第1ロボットの連結部材押圧部を示す図である。
【
図7】
図6に示される連結部材押圧部の作動を説明するための図である。
【
図8】
図7の矢印Dで示される部分を拡大して示した拡大図であり、連結部材押圧部の作動を説明するための図である。
【
図9】
図8と同じ部分の拡大図であり、連結部材押圧部により押圧された連結部材の状態を示す図である。
【
図10】
図1に示される第2ロボットを上方から見た上面図である。
【
図11】
図10に示されるボルト把持部を拡大して示した拡大図である。
【
図12】
図11に示されるボルト把持部の作動を説明するための図である。
【
図13】
図10のE-E線に沿う断面において第2ロボットを見たときの第2ロボットのナット取付部を示す図である。
【
図14】
図13に示されるナット取付部の作動を説明するための図である。
【
図15】ナット取付部の作動を説明するための図であり、
図14に続く状態を示す図である。
【
図16】ナット取付部の作動を説明するための図であり、
図15に続く状態を示す図である。
【
図17】
図1に示される第2ロボットのハンガ取付部を拡大して示した拡大図であり、ハンガ取付部の作動を説明するための図である。
【
図18】ハンガ取付部の作動を説明するための図であり、
図17に続く状態を示す図である。
【
図19】ハンガ取付部の作動を説明するための図であり、
図18のF-F線に沿う断面において取付金具を見た状態を示す図である。
【
図20】ハンガ取付部の作動を説明するための図であり、
図19に続く状態を示す図である。
【
図21】ハンガ取付部の作動を説明するための図であり、ハンガ取付部内でのハンガの補充について説明するための図である。
【
図22】
図1のG-G線に沿う断面において第2ロボットを見たときの第2ロボットのハンガ貯留部を示す図である。
【
図23】ハンガ貯留部の作動を説明するための図であり、
図22に続く状態を示す図である。
【
図24】
図1に示される第2ロボットの締付部を上方から見た上面図を拡大して示した拡大上面図である。
【
図25】締付部の作動を説明するための図であり、
図24のH-H線に沿う断面において取付金具を締結した状態を示す図である。
【
図26】枠体施工システム全体の構成を示すブロック図である。
【
図27】枠体施工システムが実行する作業の手順を示したフローチャートである。
【
図28】第2ロボットによるメインバーの取得について説明するための概略図である。
【
図29】メインバーの位置調整について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る枠体施工システムについて説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る枠体施工システムは、
図1に示すように、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4a(支持部材)にハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を取り付ける作業を行うシステムであり、外部からの操作を必要としない複数の自律型ロボットによって構成される。
【0011】
図1には、2台のロボット100,200によって行われるメインバー7の取り付け作業をメインバー7の長手方向に対して直交する方向から見た状態が示されている。以下では、
図1に示される互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が略水平方向であってメインバー7の長手方向に沿った方向であり、Y軸が略水平方向であってメインバー7の長手方向に直交する方向であり、Z軸が略鉛直方向であるものとして、各ロボット100,200の構成及び作動を説明する。なお、
図1は、各ロボット100,200とメインバー7や予め設置されたメインバーである既設メインバー6との関係性をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
【0012】
図1に示される天井スラブ1は、コンクリートが流し込まれたデッキプレートであり、デッキプレートには、コンクリートが流し込まれる前に、予め複数のインサート3が所定の位置に取り付けられる。インサート3は、メインバー6,7や図示しないサブバーといった枠体を構成する部材を、ハンガ5を介して吊り下げ支持する吊りボルト4aを取り付けるために設けられる部材である。なお、天井スラブ1は、合板型枠に打設されて形成されたコンクリートスラブであってもよい。
【0013】
メインバー6,7は、規格化された既製品であって、例えば、後述する
図8に示すように、ハンガ5が取り付けられる取付部6aと、図示しない天井ボードが載置されるフランジ部6bと、取付部6aとフランジ部6bとの間に設けられる平板部6cと、を有する断面が略T字状のバー部材(Tバー)である。
【0014】
サブバーは、メインバー6,7と同様に、断面が略T字状のバー部材(Tバー)であり、その両端には、サブバーをメインバー6,7に取り付けるための差込部が設けられる。
【0015】
上記形状のメインバー6,7とサブバーとを格子状に結合することによって、天井ボードが載置される枠体が形成され、このように形成された枠体と天井ボードとにより、いわゆるグリッドタイプのシステム天井が構成される。
【0016】
ハンガ5は、吊りボルト4a(支持部材)に対してメインバー6,7を取り付けるために用いられる取付金具であり、メインバー6,7に固定される際に締め付けられるネジ5a(締結部材)を有するとともに、後述する
図17及び
図18に示されるように、吊りボルト4aが挿通する挿通孔5cが形成されたフランジ5bを有する。吊りボルト4aに対するハンガ5の移動は、上方に取り付けられたナット4bと下方に取り付けられたナット4bとにより制限される。
【0017】
本実施形態に係る枠体施工システムは、システム天井の枠体を設置するという比較的高所で行われる作業のうち、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4a(支持部材)にナット4bとハンガ5(取付金具)を取り付けるとともに、ハンガ5を介してメインバー7を吊りボルト4aに取り付けるという高所作業を実行可能な構成を備える。
【0018】
次に、
図1~26を参照し、枠体施工システムの構成について説明する。
【0019】
枠体施工システムは、新たに設置されるメインバー7を保持する保持作業部140と、保持作業部140により保持されたメインバー7の位置を調整する作業を行う位置調整部145と、吊りボルト4a(支持部材)にハンガ5(取付金具)を取り付けるとともにハンガ5を介して保持作業部140により保持されたメインバー7を吊りボルト4aに対して固定する作業を行う固定作業部150,160,180,210と、を備えた第2ロボット200と、第2ロボット200の保持作業部140により保持されたメインバー7を予め設置されたメインバーである既設メインバー6に連結部材8を介して連結する作業を行う連結作業部40,60,70を備えた第1ロボット100と、の2台の自律型ロボットにより構成される。なお、第2ロボット200は、後述のように、メインバー7を取得し運搬する機能を併せ持っている。
【0020】
まず、第1ロボット100の構成及び作動について、
図1~9及び
図26を参照して説明する。
【0021】
第1ロボット100は、
図1に示すように、床面2を移動可能な移動部10と、移動部10上に載置される昇降部20と、昇降部20上に載置される連結作業部40,60,70と、移動部10、昇降部20及び連結作業部40,60,70の作動を制御する図示しない制御部80と、を備える。
【0022】
移動部10は、床面2を全方向に自走可能な走行装置であり、本体部11と、本体部11に取り付けられた一対の車輪14と、一対の車輪14を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の車輪14を別々に駆動することによって、移動部10は、その場で旋回することが可能である。なお、移動部10に設けられたバッテリは、昇降部20及び連結作業部40,60,70へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
【0023】
移動部10を、その場で旋回させる構成としては、一対の車輪14に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよいし、全方向に回転可能な複数の球状体が床面2に接する駆動輪として機能する構成が採用されてもよい。なお、移動部10は、作業効率の観点からは、その場での旋回が可能であることが好ましいが、床面2を前後左右に自走可能であって所定の位置へと移動することが可能な一般的な走行装置であってもよい。
【0024】
また、移動部10には、移動部10周辺の情報を取得可能な情報取得器15が設けられる。情報取得器15は、移動部10の周囲や移動部10の上方を撮像可能な全天球型または半天球型のカメラである。情報取得器15によって撮像された画像は制御部80へと送られ、移動部10の自己位置の特定や障害物を検知するために用いられる。情報取得器15としては、カメラに代えて、または、カメラに加えて、全方位の距離を検出可能なレーザスキャナ等の三次元測域センサ、いわゆる、3D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよい。
【0025】
移動部10上に取り付けられる昇降部20は、多段型の電動ジャッキであり、上下方向(Z軸方向)に沿って伸縮可能な構成を有する。昇降部20の上端には、連結作業部40,60,70を設置するための設置プレート21が設けられる。
【0026】
連結作業部40,60,70は、既設メインバー6とメインバー7とを連結部材8によって連結する作業を行うための各機構を備えた部分であり、既設メインバー6及びメインバー7を把持可能な把持部40と、既設メインバー6及びメインバー7に連結部材8を取り付ける連結部材取付部60と、既設メインバー6及びメインバー7に取り付けられた連結部材8を押圧する連結部材押圧部70と、を有する。連結部材取付部60及び連結部材押圧部70は、既設メインバー6とメインバー7とを連結部材8によって連結する連結部として機能する。
【0027】
連結作業部40,60,70は、昇降部20の設置プレート21上に電動スライダ32を介して設けられたテーブル31に設置される。電動スライダ32は、
図1においてY軸方向に伸縮するように設置されている。このため、電動スライダ32を伸縮させることにより、テーブル31及びテーブル31に設置された連結作業部40,60,70を設置プレート21に対して水平方向に沿って移動させることが可能である。
【0028】
把持部40は、
図1においてX軸方向に所定の間隔をあけて配置された第1把持部41と第2把持部42との2つの把持機構を有する。なお、
図1には、第1把持部41が既設メインバー6の端部を把持し、第2把持部42がメインバー7の端部を把持している状態が示されている。
【0029】
第1把持部41は、平行開閉型の把持機構であり、
図2に示すように、第1把持片43と、第2把持片44と、第1把持片43と第2把持片44とを互いに近付けたり離したりすることが可能な把持シリンダ46と、により構成される。なお、
図2は、
図1のA-A線に沿う断面において第1ロボット100を見たときの第1把持部41を示す図であり、第1把持部41以外の機構については図示を省略している。
【0030】
第1把持片43と第2把持片44とは、一端部において連結軸45を介して互いに回動可能に連結されており、第1把持片43は、把持シリンダ46の第1可動片47に連結軸43bを介して連結され、第2把持片44は、把持シリンダ46の第2可動片48に連結軸44bを介して連結される。
【0031】
また、Y軸方向において互いに対向する第1把持片43の側面と第2把持片44の側面とには、メインバー6,7の外形形状に合わせて形成された把持面43a,44aがそれぞれ設けられる。これら第1把持片43及び第2把持片44は、
図1に示すように、把持シリンダ46を挟んで一対設けられる。
【0032】
第1可動片47及び第2可動片48は、
図2に示されるようにY軸方向において互いに接近した第1位置と、
図3に示されるようにY軸方向において互いに離れた第2位置と、の2つの位置の間で移動可能であり、その位置は把持シリンダ46により調整される。
【0033】
第1可動片47及び第2可動片48が第1位置にあるとき、
図2に示されるように第1把持片43の把持面43a及び第2把持片44の把持面44aがメインバー6,7に当接し、メインバー6,7は、第1把持片43及び第2把持片44により把持された状態となる。
【0034】
一方、第1可動片47及び第2可動片48が第2位置にあるとき、
図3に示されるように、メインバー6,7は第1把持片43及び第2把持片44により把持されない状態となる。
【0035】
なお、第1可動片47及び第2可動片48を第1位置から第2位置へと僅かに移動させることで、第1把持片43及び第2把持片44により僅かな隙間を介してメインバー6,7を把持させること、すなわち、比較的小さい力によってメインバー6,7をX軸方向に移動させることが可能な状態とすることも可能である。
【0036】
第1把持片43及び第2把持片44によるメインバー6,7の把持を補助するために、把持シリンダ46の上面には、メインバー6,7のフランジ部6bが載置される支持プレート49が設けられる。第1可動片47及び第2可動片48には、支持プレート49との干渉を避けるための溝や段差が適宜設けられる。
【0037】
第2把持部42は、第1把持部41と同じ構成であるため、その説明を省略する。なお、第1把持部41と第2把持部42とは、それぞれ独立して制御され、一方を把持状態とし、他方を開放状態とすることも可能である。
【0038】
連結部材取付部60は、
図4に示すように、連結部材8を保持可能な保持部61と、保持部61の位置を変化させる電動シリンダ62及び回動モータ65と、メインバー6,7の平板部6cに取り付けられた連結部材8を支える支持シリンダ67と、を有する。なお、
図4は、
図1のB-B線に沿う断面において第1ロボット100を見たときの連結部材取付部60を示す図であり、連結部材取付部60以外の機構については図示を省略している。
【0039】
保持部61は、図示しないバキュームポンプで生じた負圧によって連結部材8を吸引保持し、負圧の供給が遮断されることにより連結部材8を解放する構造を有する。なお、保持部61による連結部材8の保持は、電磁力によるものであってもよく、この場合、電磁力のオンオフによって連結部材8の保持及び解放が行われる。
【0040】
電動シリンダ62は、回動モータ65の回動部66に固定されるシリンダ部63と、シリンダ部63から突出するロッド部64と、を有するリニアアクチュエータであり、ロッド部64の先端には、上述の保持部61が取り付けられている。保持部61及び電動シリンダ62は、回動モータ65が回動することによって、Y-Z平面に沿って回動する。
【0041】
回動モータ65は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心C1がX軸方向と平行となるように、テーブル31に立設された支柱35に固定される。
【0042】
支持シリンダ67は、支柱35から延びるブラケット68に固定されるシリンダ部67aと、シリンダ部67aから突出するロッド部67bと、を有するリニアアクチュエータであり、ロッド部67bの先端には、連結部材8に押し当てられる当接部67cが取り付けられている。
【0043】
上記構成の連結部材取付部60によれば、電動シリンダ62の伸縮中心C2の延長線上にメインバー6,7の平板部6cが位置するように、電動シリンダ62の向きが回動モータ65によって調整された状態において、電動シリンダ62を伸長させることにより、
図4に示すように、保持部61で保持された連結部材8をメインバー6,7の平板部6cに取り付けることが可能である。なお、連結部材8は、
図1に示すように、既設メインバー6の平板部6cとメインバー7の平板部とに架け渡されるようにして取り付けられる。
【0044】
また、上記構成の連結部材取付部60によれば、電動シリンダ62の伸縮中心C2の延長線上にテーブル31上に積載された連結部材8が位置するように、電動シリンダ62の向きが回動モータ65によって調整された状態において、電動シリンダ62を伸長させることにより、
図5に示すように、保持部61により新たな連結部材8を保持させることが可能である。なお、テーブル31には、複数の連結部材8を保管可能な図示しない連結部材ホルダが設けられる。
【0045】
このように連結部材取付部60によってメインバー6,7に取り付けられた連結部材8は、メインバー6,7に対して完全に固定された状態ではない。このため、連結部材8をメインバー6,7に固定させるための機構として、連結部材押圧部70が設けられる。
【0046】
なお、連結部材押圧部70によって連結部材8がメインバー6,7に固定されるまでの間に連結部材8が落下することを防止するために、連結部材8には、
図4に示されるように、伸長した支持シリンダ67の当接部67cが押し当てられる。連結部材8の落下を確実に防止するためには、上記構成の支持シリンダ67を、電動シリンダ62を挟んで一対設けておくことが好ましい。
【0047】
連結部材押圧部70は、
図6に示すように、押圧用シリンダ72と、押圧用シリンダ72の伸縮に応じて変位する第1押圧レバー75と、第1押圧レバー75の変位に連動して変位する第2押圧レバー76と、押圧用シリンダ72、第1押圧レバー75及び第2押圧レバー76が取り付けられる平板状のベースプレート71と、を有する。なお、
図6は、
図1のC-C線に沿う断面において第1ロボット100を見たときの連結部材押圧部70を示す図であり、連結部材押圧部70以外の機構については図示を省略している。
【0048】
押圧用シリンダ72は、ベースプレート71に支持軸73aを介して回動可能に固定されるシリンダ部73と、シリンダ部73から突出するロッド部74と、を有する電動リニアアクチュエータである。
【0049】
第1押圧レバー75は、一端に第1押圧部75cが設けられ他端に長孔75dが形成された本体部75aと、本体部75aから分岐し連結ピン77aを介して押圧用シリンダ72のロッド部74と連結される分岐部75bと、を有する平板状部材であり、本体部75aの中間部において支持軸75eを介してベースプレート71に回動可能に固定される。
【0050】
第2押圧レバー76は、一端に第2押圧部76cが設けられ他端において支持軸76dを介してベースプレート71に回動可能に固定される本体部76aと、本体部76aから分岐する分岐部76bと、を有する平板状部材であり、第1押圧レバー75の長孔75dを挿通する連結ピン77bを介して分岐部76bが第1押圧レバー75の本体部75aに連結されている。
【0051】
第1押圧部75cと第2押圧部76cとは、互いに対向するように配置されており、第1押圧レバー75及び第2押圧レバー76は、押圧用シリンダ72が収縮すると、
図7に示すように、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに離れるように変位し、押圧用シリンダ72が伸長すると、
図6に示すように、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに近づくように変位する。
【0052】
また、連結部材押圧部70は、テーブル31に対してベースプレート71をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させることが可能な図示しない移動機構を有する。
図7には、連結部材押圧部70によって連結部材8の押圧を行うために、移動機構によって、
図6に示されるベースプレート71よりもZ軸方向に沿って上方へとベースプレート71が動かされた状態が示されている。
【0053】
また、移動機構は、例えば、上述の連結部材取付部60によってメインバー6,7への連結部材8の取り付けが行われる際に、第2押圧レバー76が作業の妨げとならないように、第2押圧レバー76をベースプレート71とともに、
図6に示されるように、下方へ移動させるために用いられる。また、移動機構は、後述のように、距離センサ81によりメインバー6,7までの距離の計測が行われる際に、第1押圧レバー75や第2押圧レバー76、ベースプレート71が計測の障害物とならないように、第1押圧レバー75や第2押圧レバー76をベースプレート71とともに、X軸方向へ移動させるために用いられる。
【0054】
なお、連結部材押圧部70の移動機構は、3軸方向に移動可能な構成であればどのような構成であってもよく、例えば、X軸方向に伸縮するアクチュエータ、Y軸方向に伸縮するアクチュエータ及びZ軸方向に伸縮するアクチュエータを組み合わせることにより構成されてもよい。また、テーブル31には、移動機構によって3軸方向に移動する連結部材押圧部70の移動範囲を確保するために、所定の大きさの切り欠き部31aが形成される。
【0055】
続いて、
図8及び
図9を参照し、連結部材押圧部70によって行われる連結部材8の押圧について説明する。
図8及び
図9は、
図7の矢印Dで示された部分を拡大して示した図である。
【0056】
連結部材8は、一般的に、
図8に示されるように、下端部8aと、上端部8c(差込部)と、下端部8aと上端部8cとの間に設けられる湾曲部8bと、を有し、下端部8aがメインバー6のフランジ部6bの上面に形成された溝6dに入り込むことによって、メインバー6に対して仮に取り付けられた状態となる。
【0057】
連結部材8が取り付けられたメインバー6の平板部6cを挟み込むように配置された第1押圧レバー75と第2押圧レバー76とを、
図9に示されるように、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに近づくように押圧用シリンダ72によって変位させると、連結部材8の湾曲部8bが平坦状に塑性変形し、結果として、連結部材8の上端部8cがメインバー6の取付部6aの下面に形成された溝6e(差込口)に入り込むことになる。これにより、連結部材8は、メインバー6に対して固定された状態となる。
【0058】
なお、湾曲部8bは、連結部材8に複数設けられており、例えば、既設メインバー6の平板部6cとメインバー7の平板部とに架け渡される連結部材8には、既設メインバー6側に2つの湾曲部8bが設けられ、メインバー7側に2つの湾曲部8bが設けられる。したがって、連結部材8を介して既設メインバー6とメインバー7とを連結させるには、押圧用シリンダ72を伸長させて何れか1つの湾曲部8bを押圧した後、押圧用シリンダ72を収縮させるとともにベースプレート71を移動機構によってX軸方向に移動させて、すべての湾曲部8bを順次押圧する必要がある。
【0059】
このように既設メインバー6及びメインバー7に取り付けられた連結部材8の複数の湾曲部8bが連結部材押圧部70によって押圧されることによって、連結部材8の上端部8c(差込部)が既設メインバー6及びメインバー7に設けられた溝6e(差込口)に差し込まれ、結果として、既設メインバー6とメインバー7とは、連結部材8を介して連結されることになる。
【0060】
第1ロボット100は、上記各機構に加えて、第1把持部41によって把持される既設メインバー6の端部の位置及び第2把持部42によって把持されるメインバー7の端部の位置を検知可能な距離センサ81(端部位置検知部)をさらに備える。
【0061】
距離センサ81は、計測対象物までの距離をスキャン計測可能な三次元測域センサ(3D-LiDAR)であり、検出方向が既設メインバー6及びメインバー7の各端部を向くように、例えば、
図1及び
図2に示されるように、検出方向がテーブル31の切り欠き部31aを通り上方(Z軸方向)を向くように、テーブル31の下面側にブラケット34を介して固定される。なお、距離センサ81は、検出方向が既設メインバー6及びメインバー7の平板部6cを指向するように、例えば、検出方向がY軸方向と平行となるように、テーブル31の上方に支柱を介して固定されていてもよい。
【0062】
また、距離センサ81は、例えば、比較的測定精度が高いポイント式レーザ距離センサであってもよく、この場合、距離センサ81は、検出方向が、連結部材取付部60によって既設メインバー6及びメインバー7に取り付けられる連結部材8の中心位置、すなわち、既設メインバー6とメインバー7とが当接ないし最も接近する位置よりも所定の距離(例えば数mm程度)だけ第2把持部42寄りの箇所においてメインバー6,7のフランジ部6bを指向するように設置される。なお、距離センサ81は、連結部材8の中心位置から第1把持部41寄りの箇所において、既設メインバー6のフランジ部6bを指向するセンサと、連結部材8の中心位置から第2把持部42寄りの箇所において、メインバー7のフランジ部を指向するセンサと、の二つのセンサで構成されていてもよい。
【0063】
距離センサ81の検出値(距離)は、制御部80へと送られ、後述のように主に第1把持部41によって把持される既設メインバー6の端部に向けて第2把持部42によって把持されるメインバー7の端部を接近させる際に用いられる。
【0064】
制御部80は、
図26に示すように、距離センサ81及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、移動部10、昇降部20、第1把持部41、第2把持部42、連結部材取付部60及び連結部材押圧部70の作動を制御する。制御部80が行う具体的な制御については、メインバー7の取り付け方法(後述)の説明において詳述する。
【0065】
制御部80は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部80に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部80は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0066】
また、制御部80には、
図26に示すように、第1ロボット100及び第2ロボット200に対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバ300とデータの送受信を行うための通信部80aが設けられる。通信部80aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。通信部80aは、第2ロボット200の制御部220と通信を行う際にも用いられる。
【0067】
次に、第2ロボット200の構成及び作動について、
図1及び
図10~26を参照して説明する。
【0068】
第2ロボット200は、
図1に示すように、床面2を移動可能な移動部10と、移動部10上に載置される昇降部20と、昇降部20上に載置される保持作業部140,位置調整部145及び固定作業部150,160,180,210と、移動部10、昇降部20、保持作業部140,位置調整部145及び固定作業部150,160,180,210の作動を制御する図示しない制御部220と、を備える。
【0069】
移動部10及び昇降部20は、第1ロボット100の移動部10及び昇降部20と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0070】
保持作業部140は、
図1においてX軸方向に所定の間隔をあけて配置された第1保持部141及び第2保持部142を有する。なお、第1保持部141及び第2保持部142の構造は、第1ロボット100の把持部40と同じ構造であるため、その説明を省略する。
【0071】
位置調整部145は、昇降部20の設置プレート21と第1保持部141との間に設置された電動スライダであり、X軸方向に沿って伸縮するように設置される。具体的には、位置調整部145は、
図1に示される状態において、設置プレート21に対して第1保持部141を第1ロボット100側に向かって移動可能な状態で設置されている。
【0072】
このため、位置調整部145の伸長量を制御し、第1保持部141により保持されたメインバー7の位置をX軸方向に沿って微調整することによって、メインバー7を既設メインバー6に対して徐々に近付けることが可能である。
【0073】
このように、位置調整部145は、既設メインバー6に対するメインバー7の位置をX軸方向において調整するために設けられる。なお、第1保持部141により保持されたメインバー7を既設メインバー6に近付ける際、第2保持部142によるメインバー7の保持は解除ないし緩められる。
【0074】
固定作業部150,160,180,210は、保持作業部140により保持されたメインバー7を、ハンガ5を介して吊りボルト4aに対して固定する作業を行うための各機構を備えた部分であり、吊りボルト4a(支持部材)にハンガ5(取付金具)を取り付ける金具取付部150,160,180と、ハンガ5に設けられたネジ5a(締結部材)を締め付ける締付部210と、を有する。
【0075】
金具取付部150,160,180は、
図1及び
図10に示されるように、吊りボルト4a(支持部材)を把持するボルト把持部150と、吊りボルト4aにナット4bを取り付けるナット取付部160と、吊りボルト4aにハンガ5(取付金具)を取り付けるハンガ取付部180と、で構成される。
【0076】
ボルト把持部150は、
図11及び
図12に示すように、支持プレート152に設けられた支持ピン153を中心に回動する一対の把持片151a,151bと、支持プレート152に形成されたスリット152aに沿って移動ピン154を移動させるシリンダ装置156と、により主に構成される。
【0077】
移動ピン154と各把持片151a,151bとは、一対の連結部材155a,155bを介してそれぞれ連結されており、各把持片151a,151bは、
図11に示されるように、移動ピン154がシリンダ装置156の近くに位置するとき、すなわち、シリンダ装置156が収縮したとき、互いに最も離れた状態となり、
図12に示されるように、移動ピン154がシリンダ装置156から離れた場所に位置するとき、すなわち、シリンダ装置156が伸長したとき、互いに最も近づくことによって吊りボルト4aを把持可能な状態となる。
【0078】
このようにボルト把持部150は、シリンダ装置156が伸縮することに応じて吊りボルト4aを把持したり、把持を解除したりすることが可能な構成となっている。
【0079】
また、ボルト把持部150は、
図1及び
図10に示されるように、支持プレート152の位置を、Y軸方向に沿って変化させる電動シリンダ157と、Z軸方向に沿って変化させる電動シリンダ158と、を有する。これにより、任意の高さで各把持片151a,151bにより吊りボルト4aを把持することができるとともに、各把持片151a,151bによって把持された吊りボルト4aのY軸方向における位置を変えることができる。
【0080】
ナット取付部160は、
図13に示すように、保持したナット4bを回転させて吊りボルト4aに取り付けるナット取付ユニット161と、ナット取付ユニット161にナット4bを補充するナット補充ユニット166と、を有する。なお、
図13は、
図10のE-E線に沿う断面において第2ロボット200を見たときのナット取付部160を示す図であり、ナット取付部160以外の機構については図示を省略している。
【0081】
ナット取付ユニット161は、ナット4bを保持可能な形状に形成されたソケット162と、ソケット162を回転駆動させる駆動モータ163と、ソケット162及び駆動モータ163の位置を、X軸方向に沿って変化させる電動シリンダ164と、Z軸方向に沿って変化させる図示しない電動シリンダと、を有する。
【0082】
ソケット162には、ナット4bの外周形状(例えば、六角形)に合わせて形成された凹部162aが設けられているとともに、吊りボルト4aが挿通可能な挿通孔162bがZ軸方向に沿って貫通して形成されている。また、ソケット162の外周面には、駆動モータ163のピニオンギア163aが噛み合うギア162cが円環状に形成されている。
【0083】
このようにソケット162には、吊りボルト4aが挿通可能な挿通孔162bが貫通して設けられていることから、駆動モータ163によってソケット162を回転させながら、図示しない電動シリンダによって、ナット取付ユニット161を吊りボルト4aに沿って上昇させることにより、吊りボルト4aの所定の位置にナット4bを取り付けることができる。
【0084】
また、ナット取付ユニット161は、吊りボルト4aに対してナット4bを確実に取り付けるために、吊りボルト4aの端部をソケット162に向かってガイドするガイド機構を備えていてもよい。なお、ガイド機構が必要となるのは、吊りボルト4aにナット4bを最初に噛み合わせるときだけであることから、吊りボルト4aとナット4bとが噛み合った状態となった後は、ソケット162の移動の妨げとならない位置に移動する構造となっていることが好ましい。
【0085】
ナット補充ユニット166は、複数のナット4bを貯留する貯留部167と、貯留部167に貯留されたナット4bを押し上げる押上シリンダ168と、押上シリンダ168によって押し上げられたナット4bを保持する保持部170と、保持部170の位置をZ軸方向に沿って変化させるシリンダ171と、Z軸方向に延びる支持軸C3を中心に保持部170及びシリンダ171を回動させる回動モータ172と、回動モータ172を支持するために設置プレート21に立設された支柱174と、を有する。
【0086】
貯留部167は、支持軸C3から所定の距離だけ離れた位置において、設置プレート21に立設された棒状部材であり、ナット4bの内径よりも径が小さい外径を有する。このため、貯留部167には、複数のナット4bが、貫通する棒状部材により内周面が支持された状態で貯留される。
【0087】
押上シリンダ168は、設置プレート21に固定されるシリンダ部168aと、シリンダ部168aから上方に突出するロッド部168bと、を有するリニアアクチュエータであり、Z軸方向に伸縮するように設置されている。また、押上シリンダ168は、ロッド部168bの先端面が、貯留部167の最も下方に貯留されたナット4bに接するように配置される。このため、押上シリンダ168を伸長させることにより、貯留部167に貯留された複数のナット4bを上方へと移動させることができる。
【0088】
保持部170は、いわゆる平行開閉グリッパであり、対向して配置される一対の可動片170aを有する。一対の可動片170aには、互いに接近したときにナット4bの雌ねじ孔に挿通可能な突起部がそれぞれ設けられており、突起部がナット4bに挿入された状態で一対の可動片170aを互いに離れる方向に移動させることによってナット4bを保持することが可能な構成となっている。
【0089】
シリンダ171は、回動モータ172により回動される回動プレート173に固定されるシリンダ部171aと、シリンダ部171aから下方に突出するロッド部171bと、を有するリニアアクチュエータであり、Z軸方向に伸縮するように設置されている。シリンダ171のロッド部171bの先端には保持部170が固定されているため、シリンダ171を伸縮させることによって、保持部170のZ軸方向における位置を変えることができる。
【0090】
回動モータ172は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心がZ軸方向と平行となるように、支柱174の先端部に固定される。回動モータ172は、保持部170の位置を、貯留部167からナット4bを受け取る第1位置と、ソケット162にナット4bを受け渡す第2位置と、の2つの位置に切り替えるように作動する。
【0091】
上記構成のナット取付部160において、ナット補充ユニット166によって、ナット取付ユニット161へとナット4bが補充される際の作動について、
図13から
図16を参照して説明する。
【0092】
まず、
図13に示すように、貯留部167の上方に保持部170が位置するように、回動モータ172は回動プレート173を回動させる。この状態において、保持部170は、一対の可動片170aを互いに接近させることによって、貯留部167の延長線上に一対の可動片170aの突起部を位置させる。
【0093】
続いて、
図14に示すように、押上シリンダ168を伸長させることにより複数のナット4bを上方へと移動させる。そして、上方へと移動した複数のナット4bのうち、最も上方に位置するナット4bは、一対の可動片170aの突起部が挿入された状態となる。この状態で一対の可動片170aを互いに離すことにより、1つのナット4bが保持部170により保持される。
【0094】
保持部170によって1つのナット4bが保持されると、シリンダ171が収縮し、保持部170は、貯留部167から離れるように上方へと移動する。
【0095】
そして、シリンダ171が収縮した状態で、回動モータ172は、
図15に示されるように、ソケット162の上方に保持部170が位置するように、支持軸C3を中心に回動プレート173を回動させる。
【0096】
続いて、
図16に示されるように、シリンダ171を伸長させることにより、保持部170をソケット162へと近付ける。これにより、保持部170によって保持されたナット4bは、ソケット162の凹部162a内に挿入される。この際、凹部162a内にナット4bがスムーズに収容されるようにするために、駆動モータ163は、ソケット162をゆっくりと回転させる一方、保持部170は、一対の可動片170aをゆっくりと近付けることでナット4bを保持する力を徐々に低減させる。
【0097】
以上のような工程を経て、ナット取付ユニット161には、1つのナット4bがナット補充ユニット166によって補充される。なお、ナット補充ユニット166には、貯留部167が1つだけ設けられているが、複数の貯留部167を設けておき、押上シリンダ168によってナット4bが押し上げられる貯留部167に貯留されたナット4bが無くなると、押上シリンダ168によってナット4bが押し上げられる貯留部167を別の貯留部167に順次切り替える構成としてもよい。
【0098】
ハンガ取付部180は、吊りボルト4aに取り付けられるハンガ5(取付金具)を保持するハンガ保持ユニット181と、ハンガ保持ユニット181にハンガ5を補充するハンガ補充ユニット190と、を有する。
【0099】
ハンガ保持ユニット181は、
図1及び
図10に示されるように、ハンガ5を保持する保持部182と、X軸方向に延びる支持軸C4を中心に保持部182を回動自在に支持する一対の支持モータ183と、一対の支持モータ183が固定される円弧状のプレート184と、プレート184の中心軸C5を中心にプレート184を回動可能な回動モータ185と、回動モータ185が一端に固定される回動プレート186と、X軸方向に延びる支持軸C6を中心に回動プレート186を回動可能な回動アクチュエータ187と、回動アクチュエータ187が固定されるベースプレート188と、設置プレート21に対してベースプレート188をY軸方向及びZ軸方向に移動させることが可能な図示しない移動機構と、を有する。
【0100】
保持部182には、図示しないバキュームポンプで生じた負圧によってハンガ5を吸引保持し、負圧の供給が遮断されることによりハンガ5を解放する吸引保持部182aが設けられる。ハンガ5は、後述する
図17及び
図18に示されるように、吸引保持部182aによってフランジ5b寄りの側面が保持される。なお、保持部182によるハンガ5の保持は、電磁力によるものであってもよく、この場合、電磁力のオンオフによってハンガ5の保持及び解放が行われる。
【0101】
保持部182は、
図1に示されるように、円環状部材の一部を切り欠くことによって形成された円弧状のプレート184の内周円の略中央に配置される。換言すれば、保持部182を支持する一対の支持モータ183は、プレート184の内周円の略中央に保持部182が位置するように、プレート184に固定されている。
【0102】
支持モータ183は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心がX軸方向と平行となるように、プレート184の一方の側面に固定される。
【0103】
プレート184の他方の側面には、後述する
図17及び
図18に示されるように、回動モータ185のピニオンギア185aが噛み合うギア184aが円弧状に形成されている。
【0104】
回動モータ185は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心が中心軸C5方向と平行となるように、回動プレート186に固定される。なお、回動モータ185が固定される回動プレート186には、回動モータ185が回転することに伴ってプレート184が円弧状の軌道に沿って移動することをガイドするとともに、プレート184が落下することを防止する図示しないプレート支持部が設けられている。
【0105】
回動アクチュエータ187は、回動モータ185が一端に取り付けられた回動プレート186を、回動プレート186の他端側において支持軸C6を中心に回動させるアクチュエータである。回動アクチュエータ187は、駆動軸が支持軸C6と平行となるように設置されたサーボモータまたはステッピングモータといったモータであってもよいし、伸縮することによって回動プレート186を、支持軸C6を中心に回動させることが可能な直動シリンダ機構であってもよい。
【0106】
上記構成のハンガ保持ユニット181において、保持部182は、ハンガ5のフランジ5bに形成された挿通孔5cの中心軸がプレート184の回動中心である中心軸C5と一致するように、ハンガ5を保持する。このため、保持部182によって保持されたハンガ5は、回動モータ185が回転することによって、挿通孔5cの中心軸を中心として回動することとなる。
【0107】
続いて、
図17から
図20を参照し、吊りボルト4aにハンガ5が取り付けられる際の上記構成のハンガ保持ユニット181の作動について説明する。
【0108】
まず、
図17に示すように、回動アクチュエータ187は、保持部182により保持されたハンガ5のフランジ5bが上方に位置するように、すなわち、挿通孔5cが吊りボルト4aに対向した状態となるように、回動プレート186を回動させる。これによりハンガ保持ユニット181の状態は、
図1及び
図10に示される待機状態から、吊りボルト4aにハンガ5を装着させることが可能な装着状態へと移行する。
【0109】
そして、図示しない移動機構によりハンガ保持ユニット181を吊りボルト4aに沿って上方へと移動させ、ハンガ5の挿通孔5cに吊りボルト4aを挿入させる。
【0110】
なお、
図17では図示されていないが、ハンガ5の挿通孔5cに吊りボルト4aを挿入させるにあたって、吊りボルト4aは、上述のボルト把持部150によって予め把持される。ボルト把持部150には、保持部182に設けられた図示しないガイド孔に挿入可能な図示しないガイドピンが設けられているため、ガイド孔にガイドピンが挿入されるようにハンガ保持ユニット181を上昇させることによって、吊りボルト4aを挿通孔5cへとスムーズに挿入させることができる。
【0111】
吊りボルト4aが挿通孔5cに挿入されると、
図18に示されるように、プレート184は中心軸C5を中心に180°回動される。
【0112】
図18に示される状態では、吊りボルト4aの下方に、上述のナット取付ユニット161が進入するスペースがないことから、下側のナット4bを吊りボルト4aに取り付けることができない。このため、支持モータ183を所定の角度(例えば、20~30°)だけ回転させることによって、保持部182を回動させ、
図19に示されるように、保持部182に保持されたハンガ5を吊りボルト4aに対して支持軸C4を中心として傾ける。これによりナット取付ユニット161が進入するスペースが確保され、ナット取付ユニット161によって、吊りボルト4aに下側のナット4bを取り付けることが可能となる。なお、
図19では、ハンガ5の状態をわかりやすくするために、吊りボルト4a及びハンガ5以外の部材については図示を省略している。
【0113】
吊りボルト4aへの下側のナット4bの取り付けが完了すると、一対の支持モータ183は、ハンガ5の状態がメインバー7の取付部6aに装着可能な状態、すなわち、ハンガ5のフランジ5bが略水平な状態となるように、保持部182を元の位置へと戻す。
【0114】
そして、ハンガ5がメインバー7の上方に位置するように、図示しない移動機構によりハンガ保持ユニット181をY軸方向に沿って移動させた後、
図20に示されるように、Z軸方向下方へと移動させる。なお、メインバー7にハンガ5が装着される際、メインバー7は第1保持部141及び第2保持部142によって保持された状態となっているため、図示しない移動機構によって、予め設定された位置にハンガ保持ユニット181を移動させることで、ハンガ5をメインバー7の上方に容易に位置させることができる。
【0115】
メインバー7へのハンガ5の固定は、後述の締付部210によりハンガ5に設けられたネジ5aを締め付けることによって行われる。
【0116】
メインバー7へのハンガ5の固定が完了すると、吸引保持部182aによるハンガ5の保持が解除され、ハンガ保持ユニット181の状態は、装着状態から
図1及び
図10に示される待機状態へと移行する。
【0117】
なお、メインバー7へハンガ5を装着する方向については、
図20に示される方向に限定されず、ハンガ5をメインバー7に装着する前に、中心軸C5を中心にプレート184を180°回動させ、ハンガ5のネジ5aがY軸方向において
図20に示される位置とは反対側に位置するように、ハンガ5をメインバー7に対して装着するようにしてもよい。このように、メインバー7に対してハンガ5が装着される方向を、Z軸を中心に反転できるようにしておくことで、ハンガ5の取付方向が指定される場合、例えば、ハンガ5に隣接して取り付けられる照明機器等とハンガ5のネジ5aとが干渉するような場合に対しても対応することができる。
【0118】
続いて、ハンガ保持ユニット181にハンガ5を補充するハンガ補充ユニット190について説明する。
【0119】
ハンガ補充ユニット190は、
図1及び
図10に示されるように、ハンガ5のフランジ5bを把持可能な把持部191と、把持部191の向きを、水平方向に延びる支持軸C7を中心に変更可能な回動モータ192と、把持部191及び回動モータ192の位置をX軸方向に沿って変位可能なスライド部193と、Z軸方向に延びる支持軸C8を中心に把持部191,回動モータ192及びスライド部193を回動させる回動モータ195と、複数のハンガ5を貯留するハンガ貯留部196と、を有する。
【0120】
把持部191は、対向して配置される一対の可動片191aを有する、いわゆる平行開閉グリッパであり、一対の可動片191aを互いに接近させることによってハンガ5のフランジ5bを把持することが可能な構成となっている。
【0121】
回動モータ192は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心が水平方向と平行となるように、スライド部193の図示しない可動子に固定されている。
【0122】
スライド部193は、スライド式の電動アクチュエータであり、その本体部は、回動モータ195により回動される回動プレート194の一端に固定される。上述のようにスライド部193の可動子には、把持部191が回動モータ192を介して取り付けられているため、スライド部193を伸縮させることによって、スライド部193の伸縮方向における把持部191の位置を変えることができる。
【0123】
回動モータ195は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心がZ軸方向と平行となるように、設置プレート21に固定される。回動モータ195は、把持部191の位置を、ハンガ貯留部196からハンガ5を受け取る第1位置と、ハンガ保持ユニット181にハンガ5を受け渡す第2位置と、の2つの位置に切り替えるように作動する。
【0124】
次に、上記構成のハンガ補充ユニット190によって、ハンガ保持ユニット181へとハンガ5が補充される際の作動について、
図1,
図10及び
図21を参照して説明する。
【0125】
まず、把持部191は、スライド部193の作動によって、
図1及び
図10に示される位置からX軸方向に沿ってハンガ貯留部196側へと移動し、ハンガ貯留部196において予め所定の位置に置かれたハンガ5のフランジ5bを把持する。
【0126】
なお、図示されていないが、ハンガ貯留部196には、把持部191に設けられた図示しないガイドピンが挿入可能な図示しないガイド孔が設けられている。このため、ガイドピンがガイド孔に挿入されるように把持部191をハンガ貯留部196に向かって移動させることによって、一対の可動片191aをハンガ5のフランジ5bを把持可能な位置へとスムーズに誘導することができる。
【0127】
ハンガ5を把持した把持部191は、スライド部193の作動によってハンガ貯留部196から引き離されるとともに、回動モータ195の回動によって、ハンガ保持ユニット181にハンガ5を受け渡す第2位置(
図21参照)へと移動する。
【0128】
そして、第2位置へと移動した把持部191は、
図21に示されるように、回動モータ192の回動によって、可動片191aが上方を向いた状態、すなわち、把持部191によって把持されたハンガ5が上方に持ち上げられた状態となる。
【0129】
一方で、ハンガ保持ユニット181は、上述の待機状態から、
図21に示されるように、ハンガ5を受け取り可能な受取状態へと予め移行される。具体的には、ハンガ保持ユニット181は、吸引保持部182aの吸引面が下方を向き、プレート184の切り欠き部を通じて把持部191により把持されたハンガ5を受け取ることができるように、プレート184が回動モータ185により回動される。また、受取状態においてハンガ保持ユニット181は、把持部191により把持されたハンガ5のZ軸方向における位置に合わせて、図示しない移動機構によって予め上方へと移動した状態となっている。
【0130】
そして、ハンガ保持ユニット181は、図示しない移動機構により、保持部182の吸引保持部182aに、把持部191によって把持されたハンガ5がほぼ接した状態となるまで徐々に下方へと移動する。吸引保持部182aによってハンガ5が吸引保持されたことが確認されると、把持部191によるハンガ5の把持が解除される。吸引保持部182aによりハンガ5が吸引保持されたか否かは、例えば、吸引保持部182aに供給される負圧の大きさが所定の大きさを超えたか否かにより判定される。
【0131】
なお、把持部191に設けられた上述の図示しないガイドピンは、保持部182に設けられた上述の図示しないガイド孔に挿入可能である。このため、ガイド孔にガイドピンが挿入されるように保持部182を把持部191に向かって降下させることによって、把持部191に把持されたハンガ5を吸引保持部182aへとスムーズに誘導することができる。
【0132】
ハンガ5をハンガ保持ユニット181へと受け渡した把持部191は、ハンガ貯留部196からハンガ5を受け取る第1位置へと戻り、ハンガ5を受け取ったハンガ保持ユニット181は、待機状態へと戻る。
【0133】
以上のような工程を経て、ハンガ保持ユニット181にはハンガ補充ユニット190によって1つのハンガ5が補充される。
【0134】
続いて、
図1,
図10,
図22及び
図23を参照し、ハンガ補充ユニット190のハンガ貯留部196の構成及び作動について説明する。なお、
図22は、
図1のG-G線に沿う断面において第2ロボット200を見たときのハンガ貯留部196を示す図であり、ハンガ貯留部196以外の機構については図示を省略している。
【0135】
ハンガ貯留部196は、
図1及び
図10に示されるように、設置プレート21に固定されたベース部197に立設されるハンガ置き場197aと、ハンガ置き場197aの最も下方に置かれたハンガ5を所定の位置へと押し出す押出シリンダ198と、を有する。
【0136】
ハンガ置き場197aは、ネジ5aが水平方向を向くようにしてZ軸方向に積み重ねられた複数のハンガ5をX軸方向において挟み込むように立設された板状部材である。また、ハンガ置き場197aには、ハンガ5のフランジ5bの突起部が差し込まれる隙間がZ軸方向に沿って設けられており、ハンガ置き場197aに置かれたハンガ5は、この隙間にフランジ5bが差し込まれることによって、Y軸方向に移動することが規制される。
【0137】
このようにハンガ置き場197aに積み重ねられたハンガ5は、X軸方向及びY軸方向に移動することが制限されることから、第2ロボット200が走行する際に振動等によってハンガ置き場197aからハンガ5が落下することが防止される。
【0138】
押出シリンダ198は、ベース部197に固定されるシリンダ部198aと、シリンダ部198aから突出するロッド部198bと、を有するリニアアクチュエータであり、Y軸方向に沿って伸縮するように設置される。なお、
図22には押出シリンダ198が伸長した状態が示されており、
図23には押出シリンダ198が収縮した状態が示されている。
【0139】
ロッド部198bの先端には、
図22及び
図23に示されるように、ハンガ5のフランジ5bを押圧するための押圧部199が取り付けられている。押圧部199には、X軸方向においてハンガ5に吸着可能な磁石部199aと、ロッド部198bに沿って伸びるプレート部199bと、が設けられる。
【0140】
磁石部199aは、磁力によりハンガ5を保持可能な電磁石または永久磁石であり、把持部191によって把持されるハンガ5の位置を一定にするために設けられている。
【0141】
プレート部199bは、ロッド部198b及びシリンダ部198aよりも上方側に配置された板状部材であり、押出シリンダ198が伸長した際に、ハンガ置き場197a内のハンガ5が降りてくることを抑制するために設けられる。
【0142】
押出シリンダ198が伸長することにより、押圧部199によってフランジ5bが押圧されたハンガ5は、
図22に示されるように、ベース部197に立設された規制部197bに当接するまで移動する。このように規制部197bによって規定されるハンガ5の位置が、上述のように把持部191によってハンガ5が把持される際の所定位置である。
【0143】
また、ハンガ貯留部196は、
図23に示されるように、押出シリンダ198が収縮することによって、ハンガ置き場197aから降下したハンガ5を磁石部199aに向けて移動させる補助シリンダ205をさらに有する。
【0144】
補助シリンダ205は、ベース部197に固定されるシリンダ部205aと、シリンダ部205aから突出するロッド部205bと、を有するリニアアクチュエータであり、X軸方向に沿って伸縮するように設置される。
【0145】
補助シリンダ205が伸長することにより、押圧部199の前に降下したハンガ5は、X軸方向に沿って僅かに移動し、磁石部199aにくっつきやすい状態になるとともに、ハンガ置き場197aによるフランジ5bの移動制限が解除された状態となる。
【0146】
このように補助シリンダ205によって、ハンガ5を、押出シリンダ198により確実に押圧される位置へと移動させることにより、把持部191によりハンガ5が把持される位置へと滞りなくハンガ5を供給することが可能となる。
【0147】
なお、
図22に示されるように、押出シリンダ198が伸長した状態から、
図23に示されるように、押出シリンダ198を収縮させると、ハンガ置き場197aに積み重ねられたハンガ5は、通常、押圧部199により押圧される位置へと自重によって降下するが、ハンガ置き場197a内においてハンガ5が傾くことによって、降下しにくくなる場合がある。このため、ハンガ置き場197a内でのハンガ5の降下を促すために、ハンガ置き場197aに対して振動や衝撃を付与するアクチュエータが別途設けられてもよい。
【0148】
以上のような押出シリンダ198及び補助シリンダ205の伸縮作動によって、ハンガ5は、把持部191によって把持される所定位置へと順次装填される。なお、ハンガ貯留部196には、ハンガ置き場197aが1つだけ設けられているが、複数のハンガ置き場197aを設けておき、押出シリンダ198によってハンガ5が押圧されるハンガ置き場197a内に貯留されたハンガ5が無くなると、押出シリンダ198によってハンガ5が押圧されるハンガ置き場197aを別のハンガ置き場197aに順次切り替える構成としてもよい。
【0149】
締付部210は、いわゆる平行開閉グリッパであり、
図24及び
図25に示すように、対向して配置される第1可動片212及び第2可動片213と、これら可動片212,213を、Y軸方向に沿って、互いに近付けたり離したりすることが可能なシリンダ部211と、第1可動片212に設けられ、ハンガ5のネジ5a(締結部材)を締め付け可能な締付モータ214と、設置プレート21に対してシリンダ部211をY軸方向及びZ軸方向に移動させることが可能であるとともにZ軸を中心にシリンダ部211を180°回転させることが可能な図示しない移動機構と、により構成される。
図24は、
図1に示される締付部210を上方から見た上面図であり、
図25は、
図24のH-H線に沿う断面図であって、ハンガ5及びハンガ5が取付部6aに装着されたメインバー7が第1可動片212及び第2可動片213によって把持された状態が示されている。
【0150】
締付モータ214は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回転中心がY軸方向と平行となるように、第1可動片212に固定されている。締付モータ214の回転軸には交換可能なソケット215が取り付けられており、ソケット215は、ハンガ5に設けられるネジ5aの頭部形状に応じて、締め付けに適した形状のソケットが適宜選定される。
【0151】
第1可動片212には、第2可動片213に向かって突出して形成された第1突出部212aが設けられ、第2可動片213には、第1可動片212に向かって突出して形成された第2突出部213aが設けられる。これら突出部212a,213aは、上下方向(Z軸方向)において互い違いに設けられ、これらの形状はハンガ5の外形に沿った形状となっている。このため、第1可動片212と第2可動片213とを近づけることによって、ハンガ5をY軸方向において確実に把持することが可能である。
【0152】
上記構成の締付部210によるハンガ5のネジ5a(締結部材)の締め付けは、上述のように、ハンガ保持ユニット181によってハンガ5がメインバー7に装着された状態で行われる(
図20参照)。この際、締付部210は、図示しない移動機構によって、メインバー7の下方に移動した後、メインバー7のフランジ部6bがシリンダ部211の上面に当接するまで上昇する。
【0153】
このように第1可動片212と第2可動片213とによりハンガ5を把持する際には、メインバー7のフランジ部6bがシリンダ部211の上面に当接した状態となり、第1突出部212a及び第2突出部213aの形状は、上述のように、ハンガ5の外形に沿った形状となっていることから、ハンガ5のネジ5aの位置とソケット215の位置とを毎回安定して一致させることが可能である。
【0154】
なお、締付部210によりハンガ5のネジ5aを締め付けるにあたって、ハンガ5のネジ5aが、Y軸方向において
図20に示される位置とは反対側に位置した状態でハンガ5がメインバー7に装着されている場合には、メインバー7に向けて締付部210を上昇させる前に、締付モータ214を有する第1可動片212がネジ5a側に位置するように、図示しない移動機構によってZ軸を中心にシリンダ部211を180°回転させる。このように、締付部210は、ハンガ5のネジ5aが、Y軸方向においてメインバー7の何れの側面に位置している場合であってもネジ5aを締め付けることが可能な構成となっている。
【0155】
第2ロボット200は、上記各機構に加えて、吊りボルト4aの位置を検知可能な距離センサ221をさらに備える。距離センサ221は、計測対象物までの距離をスキャン計測可能な測域センサ、例えば、2D-LiDAR(light detection and ranging)センサ、または、3D-LiDARセンサである。
【0156】
距離センサ221は、
図1に示されるように、水平面における距離計測が行われるように配置されており、吊りボルト4aの位置を検出する。なお、
図1では、距離センサ221は、電動シリンダ158の本体部の上端に固定されているが、距離センサ221の固定位置は、これに限定されず、設置プレート21に別途立設された支柱に固定されていてもよい。
【0157】
距離センサ221の検出値(距離)は、制御部220へと送られ、後述のように主に第2ロボット200を所定の位置へと移動させる際に用いられる。
【0158】
第2ロボット200の制御部220は、距離センサ221及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM等の作業エリアに関するデータとに基づいて、移動部10、昇降部20、保持作業部140、位置調整部145及び固定作業部150,160,180,210の作動を制御する。制御部220が行う具体的な制御については、メインバー7の取り付け方法(後述)の説明において詳述する。なお、第2ロボット200は、距離センサ221以外に複数の距離センサを備えていてもよい。
【0159】
また、制御部220には、第1ロボット100の制御部80と同様に、通信部220aが設けられる。なお、制御部220の具体的な構成は、第1ロボット100の制御部80と同じであるため、その説明を省略する。
【0160】
続いて、
図1~29を参照し、上記構成の枠体施工システムによって、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4a(支持部材)にハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を取り付ける方法について説明する。
図27は、枠体施工システムが実行する作業、すなわち、各ロボット100,200が行う作業の手順を示したフローチャートであり、
図28及び
図29は、各作業手順における各ロボット100,200の作動を説明するための概略図である。
【0161】
各ロボット100,200が起動されると、まず、各制御部80,220において、作業エリアに関するデータがそれぞれ読み込まれ、記憶される(ステップS11,S31)。具体的には、各通信部80a,220aを介してサーバ300からBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、既設メインバー6の位置や新たにメインバー7を取り付ける位置や取り付け順序などが含まれる。
【0162】
次に、ステップS12,S32において、各制御部80,220は、移動部10の情報取得器15によって、ロボット100,200の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、ロボット100,200の自己位置、すなわち、図面上での座標を認識する。各制御部80,220は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
【0163】
続くステップS13において、第1ロボット100の制御部80は、メインバー7と既設メインバー6とを連結する位置である作業予定場所へと第1ロボット100を移動させる。具体的には、制御部80は、メインバー7と既設メインバー6とを連結する位置の座標をステップS11で読み込まれたデータから抽出し、移動部10を制御することによって第1ロボット100を抽出された座標に向けて移動させる。第1ロボット100の移動は、距離センサ81によって既設メインバー6の位置が認識されることにより完了する。
【0164】
一方、第2ロボット200の制御部220は、ステップS33において、メインバー7を取得するために、メインバー7が保管されている地点へと第2ロボット200を移動させ、
図28に示すように、保持作業部140により1本のメインバー7を把持させる。
【0165】
メインバー7は、例えば、一対の支持部材9間に架け渡された状態で保管されており、第2ロボット200は、一対の支持部材9間の下方に入り込み、保持作業部140を上昇させつつ、第1保持部141及び第2保持部142により1本のメインバー7を把持する。この際、制御部220は、把持されるメインバー7の位置を距離センサ221、情報取得器15、または、別途設けられる距離センサの検出値に基づいて把握し、移動部10、昇降部20及び保持作業部140の作動を制御する。
【0166】
メインバー7の取得が完了した第2ロボット200の制御部220は、新たにメインバー7を取り付ける位置である作業予定場所へと第2ロボット200を移動させる。具体的には、制御部220は、最初にハンガ5を介してメインバー7が取り付けられる吊りボルト4aの座標をステップS31で読み込まれたデータから抽出し、移動部10を制御することによって第2ロボット200を抽出された座標に向けて移動させる。第2ロボット200の移動は、距離センサ221によって吊りボルト4aの位置が認識されることにより完了する。
【0167】
制御部220は、続くステップS34において、昇降部20を制御し、保持作業部140により保持されたメインバー7の高さを、所定の高さ(既設メインバー6の高さと同じ高さ)とすることにより、メインバー7を仮配置する。そして、メインバー7の仮配置が完了したことを第1ロボット100の制御部80へと送信する。
【0168】
メインバー7の仮配置の完了を受信した第1ロボット100の制御部80は、ステップS14に進み、
図29に示すように、既設メインバー6の端部を第1把持部41によって把持するとともに、仮配置されたメインバー7の端部を第2把持部42によって把持する。この状態において、メインバー7の端部と既設メインバー6の端部との間の間隔は、距離センサ81により検知可能であり、制御部80は、距離センサ81の検出値に基づいてメインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近したか否かを判定することが可能である。
【0169】
このようにメインバー7と既設メインバー6との間隔が検出可能な状態となると、制御部80は、第2ロボット200の制御部220に対して、メインバー7を既設メインバー6に近付けるよう指示する。
【0170】
また、このとき、第1把持部41は、既設メインバー6の端部を隙間なく当接把持するように、すなわち、第1把持部41に対して既設メインバー6が比較的小さい力で移動してしまうことがないように制御される一方、第2把持部42は、僅かな隙間を介してメインバー7を把持した状態に維持される。
【0171】
上述の指示を受けた第2ロボット200の制御部220は、ステップS35に進み、メインバー7を既設メインバー6に近付けるように位置調整部145を制御する。具体的には電動スライダである位置調整部145を徐々に伸長し、設置プレート21に対してメインバー7を保持する第1保持部141を第1ロボット100側に向かって移動させる。なお、このとき、第1保持部141は、メインバー7を隙間なく当接把持するように、すなわち、第1保持部141に対してメインバー7が比較的小さい力で移動してしまうことがないように制御される一方、第2保持部142は、僅かな隙間を介してメインバー7を把持した状態とされる。
【0172】
メインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近したか否かは、第1ロボット100の制御部80によりステップS15において判定され、判定結果は、第2ロボット200の制御部220へと送信される。これにより、メインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近または当接したと判定されるまでは、制御部220による位置調整部145の制御が継続される。
【0173】
なお、メインバー7の位置の調整は、第2ロボット200の位置調整部145に代えて、または、第2ロボット200の位置調整部145に加えて、第1ロボット100の連結部材押圧部70によって行われてもよい。具体的には、メインバー7の端部を連結部材押圧部70の第1押圧レバー75と第2押圧レバー76とによって把持し、この状態で図示しない移動機構により連結部材押圧部70をX軸方向に沿って既設メインバー6に近付けるように移動させて、メインバー7の端部を既設メインバー6の端部に接近または当接させる。このとき、第2ロボット200の第1保持部141及び第2保持部142は、僅かな隙間を介してメインバー7を把持した状態とされる。このように連結部材押圧部70は、メインバー7の位置の調整する作業を行う位置調整部としても機能する。
【0174】
但し、連結部材押圧部70をX軸方向に沿って移動させる図示しない移動機構による移動長さは比較的短いことから、連結部材押圧部70によるメインバー7の位置の調整は、第2ロボット200の位置調整部145によってメインバー7の端部が既設メインバー6の端部にある程度接近した後に行われることが好ましい。換言すれば、ステップS34において、第2ロボット200によりメインバー7が仮配置された時点で、メインバー7と既設メインバー6との間隔が比較的小さい場合には、連結部材押圧部70のみによってメインバー7の位置を調整することが可能である。
【0175】
ステップS15においてメインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近または当接したと判定されると、第1ロボット100の制御部80は、第2把持部42を、第1把持部41と同様に、メインバー7の端部を隙間なく当接把持するように制御した後、ステップS16に進み、メインバー7と既設メインバー6とを連結する作業を開始する。
【0176】
一方、第2ロボット200の制御部220は、ステップS36に進み、位置調整部145の制御を終了し、第1ロボット100により行われるメインバー7と既設メインバー6との連結作業が完了するまで待機する。
【0177】
ステップS16において、第1ロボット100の制御部80は、まず、電動シリンダ62及び回動モータ65を制御し、
図4に示すように、メインバー7及び既設メインバー6に対して、保持部61により保持された連結部材8を取り付ける。なお、連結部材8の取り付けが完了すると、電動シリンダ62及び回動モータ65は、保持部61に新たな連結部材8を保持させるために、
図5に示すように制御される。
【0178】
次に、制御部80は、連結部材押圧部70の移動機構及び押圧用シリンダ72を制御し、
図7に示すように、連結部材8が取り付けられたメインバー7及び既設メインバー6の平板部を挟み込むように第1押圧レバー75及び第2押圧レバー76を配置させる。そして、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに近付くように押圧用シリンダ72を制御し、連結部材8の湾曲部8bを押圧する。
【0179】
既設メインバー6側に位置する複数の湾曲部8bと、メインバー7側に位置する複数の湾曲部8bとが、第1押圧部75c及び第2押圧部76cによって順次押圧されることにより、連結部材8を介したメインバー7と既設メインバー6との連結が完了する。
【0180】
メインバー7と既設メインバー6とを連結する作業が完了すると、ステップS17に進み、制御部80は、把持部40を制御し、第1把持部41による既設メインバー6の把持を解除し、既設メインバー6を解放するとともに、第2把持部42によるメインバー7の把持を解除し、メインバー7を解放する。また、制御部80は、連結作業の完了を記憶するとともに、連結作業の完了を第2ロボット200の制御部220及びサーバ300へと送信する。
【0181】
続くステップS18において、制御部80は、予定されている連結作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0182】
予定されていた連結作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバ300から受信するまで第1ロボット100は待機状態となり、予定されていた連結作業がまだ完了していない場合、ステップS13へと戻り、制御部80は、新たな作業予定場所へと第1ロボット100を移動させる。それ以降、上述のような工程を経て第1ロボット100による作業が繰り返される。
【0183】
一方、第1ロボット100から連結作業の完了を受信した第2ロボット200の制御部220は、ステップS37に進み、吊りボルト4aにナット4b及びハンガ5を取り付ける作業を開始する。
【0184】
ステップS37において、第2ロボット200の制御部220は、まず、ボルト把持部150を制御し、所定の高さにおいて吊りボルト4aを一対の把持片151a,151bにより把持させる。具体的には、制御部220は、距離センサ221の検出値に基づいて吊りボルト4aの位置を把握した後、ボルト把持部150の移動機構を制御し、ボルト把持部150を、吊りボルト4aを把持可能な位置へと移動させる。吊りボルト4aを把持可能な位置へとボルト把持部150が移動した後、制御部220は、シリンダ装置156を伸長させることによって、
図12に示されるように、一対の把持片151a,151bにより吊りボルト4aを把持させる。
【0185】
ボルト把持部150によって吊りボルト4aが把持されると、制御部220は、ナット取付ユニット161の移動機構を制御し、ボルト把持部150の位置から推定される吊りボルト4aの位置の下方にソケット162が位置するようにナット取付ユニット161を移動させる。その後、駆動モータ163によりソケット162を回転させながら、ナット取付ユニット161を上昇させて、ソケット162の凹部162a内に収容されたナット4bを吊りボルト4aに取り付ける。
【0186】
吊りボルト4aに対するナット4bの位置がある程度の高さに達すると、制御部220は、ボルト把持部150による吊りボルト4aの把持を解除し、ナット取付ユニット161の上方への移動の妨げとならない位置にボルト把持部150を移動させる。
【0187】
そして、ナット取付ユニット161の上方への移動量に基づいてナット4bの位置が予め設定された高さに到達したことが判定されると、制御部220は、駆動モータ163の回転を停止するとともに、ナット取付ユニット161の移動機構を制御し、ナット取付ユニット161を初期位置へと戻す。初期位置へと戻されたナット取付ユニット161には、上述のように、ナット補充ユニット166からナット4bが補充される(
図13から
図16参照)。なお、ナット4bの位置が予め設定された高さに到達したか否かは、距離センサ221により検出されるナット取付ユニット161の位置に基づいて判定されてもよい。
【0188】
吊りボルト4aへの1つ目のナット4bの取り付けが完了すると、続いて、吊りボルト4aにハンガ5を取り付けるために、制御部220は、再度、ボルト把持部150により吊りボルト4aを把持させる。そして、ハンガ保持ユニット181の回動アクチュエータ187を制御し、上述のように、保持部182により保持されたハンガ5の挿通孔5cが吊りボルト4aに対向した状態となるように、回動プレート186を回動させる(
図17参照)。
【0189】
その後、制御部220は、ハンガ保持ユニット181の移動機構を制御して、ハンガ保持ユニット181を上昇させる。これにより、吊りボルト4aは、ハンガ5の挿通孔5cに挿通した状態となる。
【0190】
ハンガ5の挿通孔5cに吊りボルト4aが挿通した後、制御部220は、回動モータ185を制御し、
図19に示されるように、プレート184を中心軸C5を中心に180°回動させるとともに、吊りボルト4aの下方にナット取付ユニット161が進入するスペースを確保するために、支持モータ183を制御し、
図19に示されるように、支持軸C4を中心にハンガ5を傾ける。
【0191】
このようにナット取付ユニット161が進入するスペースが確保されると、制御部220は、再度、ナット取付ユニット161の移動機構及び駆動モータ163を制御し、吊りボルト4aに2つ目のナット4bを取り付ける。
【0192】
吊りボルト4aへの2つ目のナット4bの取り付けが完了し、吊りボルト4aへのナット4b及びハンガ5の取り付け作業が完了すると、制御部220は、ステップS38に進み、メインバー7にハンガ5を取り付ける作業を開始する。
【0193】
ステップS38において、制御部220は、支持モータ183を制御し、ハンガ5の状態をメインバー7の取付部6aに装着できる状態にした後、ハンガ保持ユニット181の移動機構を制御して、ハンガ保持ユニット181を下降させて、ハンガ5をメインバー7の取付部6aに装着させる(
図20参照)。
【0194】
メインバー7の取付部6aにハンガ5が装着されると、制御部220は、メインバー7に対してハンガ5を固定するために、締付部210の移動機構を制御し、締付部210をハンガ5の下方へと移動させた後、メインバー7のフランジ部6bがシリンダ部211の上面に当接するまで締付部210を上昇させる。
【0195】
その後、制御部220は、締付部210のシリンダ部211を制御し、第1可動片212と第2可動片213とによりハンガ5を把持させる。このとき、ソケット215内にハンガ5のネジ5aの頭部が収容されるように、制御部220は、締付モータ214を僅かに回転させる。
【0196】
第1可動片212と第2可動片213とによりハンガ5を把持させた状態で、制御部220は、締付モータ214をネジ5aの締め付け方向に回転させる。
【0197】
締付モータ214への供給電流値等に基づいて、締付モータ214による締め付けトルクが所定の大きさになったことが検知されると、制御部220は、締付モータ214の回転を停止するとともに、シリンダ部211を制御し、第1可動片212と第2可動片213とによるハンガ5の把持を解除する。
【0198】
このようにハンガ5がメインバー7に固定されることによって、ハンガ5(取付金具)を介してメインバー7が吊りボルト4a(支持部材)に取り付けられた状態となる。また、メインバー7にハンガ5が固定される度に、ハンガ保持ユニット181には、上述のように、ハンガ補充ユニット190からハンガ5が補充される(
図21から
図23参照)。
【0199】
なお、1本のメインバー7は、少なくとも2本の吊りボルト4aによって支持されることから、ステップS37及びステップS38における取り付け作業は、吊りボルト4aの数だけ行われる。
【0200】
例えば、メインバー7が3本の吊りボルト4aによって支持される場合には、中央の吊りボルト4aにナット4b及びハンガ5を取り付け、取り付けられたハンガ5をメインバー7に固定した後、同様にして残り2つの吊りボルト4aにナット4b及びハンガ5を取り付け、取り付けられたハンガ5をメインバー7に固定することになる。
【0201】
ここで、第1ロボット100は、メインバー7と既設メインバー6とを連結する作業が完了すると、新たな作業地点へ移動する一方、第2ロボット200は、吊りボルト4aの数だけ上述の取付作業を行ってから新たな作業地点へ移動することになるため、新たな作業地点において、第1ロボット100は、第2ロボット200の到着を待つ間、作業を開始することができない。
【0202】
このため、作業効率の向上の観点からは、1台の第1ロボット100に対して、2台以上の第2ロボット200を組み合わせることが好ましい。
【0203】
具体的には、例えば、メイン第2ロボット200Aとサブ第2ロボット200Bとの2台の第2ロボット200のうち、メイン第2ロボット200Aを第1ロボット100とペアとし、メイン第2ロボット200Aは、1つの吊りボルト4aに対して上述の取付作業を行った後、第1ロボット100と共に新たな作業地点へ移動する一方、残りの吊りボルト4aに対する上述の取付作業は、サブ第2ロボット200Bにより行わせるようにしてもよい。
【0204】
また、第1ロボット100のペアを定めることなく、第1ロボット100は、作業地点毎に異なる第2ロボット200と作業を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、第1ロボット100は、メイン第2ロボット200Aと作業を行った後、新たな作業地点において、メイン第2ロボット200Aとは別のサブ第2ロボット200Bと作業を行い、さらに次の作業地点において、サブ第2ロボット200Bとは別のメイン第2ロボット200Aと作業を行う。この場合、メイン第2ロボット200A及びサブ第2ロボット200Bは、吊りボルト4aの数だけ上述の取付作業を行ってから新たな作業地点へと移動する。
【0205】
ハンガ5を介してメインバー7を吊りボルト4aに取り付ける作業が完了すると、制御部220は、取り付け作業の完了を記憶するとともに、取り付け作業の完了をサーバ300へと送信する。
【0206】
続くステップS39において、制御部220は、予定されているメインバー7の取り付け作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0207】
予定されていた取り付け作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバ300から受信するまで第2ロボット200は待機状態となる。
【0208】
一方、予定されていた取り付け作業がまだ完了していない場合、ステップS33へと戻り、制御部220は、第2ロボット200にメインバー7を取得させた後、次にメインバー7を取り付ける地点へと第2ロボット200を移動させる。それ以降、上述のような工程を経て第2ロボット200による作業が繰り返される。
【0209】
このように第1ロボット100と第2ロボット200とが協働することによって、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4aにハンガ5を介してメインバー7が順次固定される。
【0210】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0211】
上記構成の枠体施工システムの制御部80,220は、移動部10を制御して、保持作業部140、位置調整部145、連結作業部40,60,70及び固定作業部150,160,180,210を所定の位置へとそれぞれ移動させてから、位置調整部145または連結部材押圧部70(位置調整部)を制御し、メインバー7を既設メインバー6に接近させた後、連結作業部40,60,70を制御し、連結部材8を介してメインバー7と既設メインバー6とを連結させ、固定作業部150,160,180,210を制御し、ハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を吊りボルト4a(支持部材)に固定している。
【0212】
このように、メインバー7を既設メインバー6に接近させた後、メインバー7と既設メインバー6とを連結するとともに、ハンガ5を介してメインバー7を吊りボルト4aに固定することによって、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4aに対してメインバー7を円滑に、且つ、自動的に取り付けることができる。また、高所作業であるメインバー7の取り付け作業を、作業員に代えて枠体施工システムが行うことによって、作業員の作業負担を軽減するとともに安全性を確保することができる。
【0213】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0214】
上記実施形態では、枠体施工システムは、保持作業部140、位置調整部145及び固定作業部150,160,180,210を備えた第2ロボット200と、連結作業部40,60,70を備えた第1ロボット100と、の2台の自律型ロボットにより構成されている。これに代えて、枠体施工システムは、例えば、保持作業部140、位置調整部145、固定作業部150,160,180,210及び連結作業部40,60,70のすべてを備えた同一形態の2台以上のロボットにより構成されていてもよし、保持作業部140のみを備えたロボットと位置調整部145のみを備えたロボットと固定作業部150,160,180,210のみを備えたロボットと連結作業部40,60,70のみを備えたロボットとにより構成されてもよいし、さらに複数のロボットにより構成されるものであってもよい。
【0215】
また、上記実施形態において、第1ロボット100は、
図1に示されるように、既設メインバー6の端部を第1把持部41によって把持し、仮配置されたメインバー7の端部を第2把持部42によって把持している。これに代えて、例えば、連結部材取付部60と干渉する位置に空調装置等が配置されている場合には、Z軸を中心に第1ロボット100を反転させ、既設メインバー6の端部を第2把持部42によって把持し、仮配置されたメインバー7の端部を第1把持部41によって把持するようにしてもよい。
【0216】
また、上記実施形態において、第2ロボット200は、
図1に示されるように、第1保持部141を第1ロボット100側に位置させた状態で、第1保持部141及び第2保持部142によって保持されたメインバー7を仮配置している。これに代えて、例えば、ボルト把持部150と干渉する位置に空調装置等が配置されている場合には、Z軸を中心に第2ロボット200を反転させて、第2保持部142を第1ロボット100側に位置させた状態でメインバー7を仮配置するようにしてもよい。
【0217】
また、上記実施形態では、金具取付部150,160,180によってナット4b及びハンガ5を吊りボルト4aに取り付けている。これに代えて、ナット4b及びハンガ5は予め吊りボルト4aに取り付けられていてもよい。
【0218】
また、上記実施形態では、電動式のシリンダやスライダ、モータが用いられている。これに代えて、シリンダやスライダ、モータは、エア駆動式や油圧駆動式であってもよい。
【0219】
また、上記実施形態では、各ロボット100,200は、移動部10の情報取得器15によって取得された周辺の情報に基づいて自己位置を認識している。各ロボット100,200は、自己位置の認識精度を向上させるために、情報取得器15に加えて、ジャイロセンサや方位センサ、加速度センサを備えていてもよい。
【0220】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0221】
100・・・第1ロボット(枠体施工システム)
200・・・第2ロボット(枠体施工システム)
1・・・天井スラブ
4a・・・吊りボルト(支持部材)
4b・・・ナット
5・・・ハンガ(取付金具)
5a・・・ネジ(締付部材)
6・・・既設メインバー
6e・・・溝(差込口)
7・・・メインバー
8・・・連結部材
8c・・・上端部(差込部)
10・・・移動部
40・・・把持部(連結作業部)
41・・・第1把持部
42・・・第2把持部
60・・・連結部材取付部(連結作業部)
70・・・連結部材押圧部(連結作業部、位置調整部)
80,220・・・制御部
81・・・距離センサ(端部位置検知部)
140・・・保持作業部
145・・・位置調整部
150・・・ボルト把持部(固定作業部、金具取付部)
160・・・ナット取付部(固定作業部、金具取付部)
180・・・ハンガ取付部(固定作業部、金具取付部)
210・・・締付部(固定作業部)
221・・・距離センサ