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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095162
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240703BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240703BHJP
   G02B 26/12 20060101ALN20240703BHJP
   G02B 27/10 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
G01S7/497
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G02B26/12
G02B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212242
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】関根 久通
【テーマコード(参考)】
2F112
2H045
5J084
【Fターム(参考)】
2F112BA06
2F112CA04
2F112CA12
2F112DA04
2F112DA09
2F112DA11
2F112DA15
2F112DA21
2F112DA25
2F112DA26
2F112DA28
2F112EA03
2F112EA05
2F112FA09
2F112FA19
2F112GA01
2H045AA01
2H045AA02
2H045AA13
5J084AA05
5J084AC02
5J084AC04
5J084AC07
5J084AD01
5J084BA04
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB25
5J084BB26
5J084BB28
5J084CA03
(57)【要約】
【課題】測距精度に優れた測距装置を提供すること。
【解決手段】本測距装置(100)は、光を照射する照射部(120)と、照射部(120)からの光が物体により反射または散乱された光である戻り光を受光し、戻り光の光強度に応じた第1信号(S)を出力する受光部(8)と、受光部(8)からの第1信号(S)に所定の処理を実行した後の第2信号(U)を出力する処理回路(411)と、第1信号(S)および第2信号(U)の少なくとも一方から得られる第1時間差(Δt)と第2時間差(τps)とに基づいて、物体までの距離に関する情報を出力する制御部(140)と、を有し、第1時間差(Δt)は、第1信号(S)の立上りにおいて第1信号(S)の強度が閾値(th)に到達する第1の時刻(t1)と、照射部(120)による光の照射時刻(t0)と、の時間差であり、第2時間差(τps)は、第1の時刻(t1)と、第1信号(S)の立下りにおいて第1信号(S)の強度が閾値(th)に到達する第2の時刻(t2)と、の時間差である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する照射部と、
前記照射部からの光が物体により反射または散乱された光である戻り光を受光し、前記戻り光の光強度に応じた第1信号を出力する受光部と、
前記受光部からの前記第1信号に所定の処理を実行した後の第2信号を出力する処理回路と、
前記第1信号および前記第2信号の少なくとも一方から得られる第1時間差と第2時間差とに基づいて、前記物体までの距離に関する情報を出力する制御部と、を有し、
前記第1時間差は、前記第1信号の立上りにおいて前記第1信号の強度が閾値に到達する第1の時刻と、前記照射部による前記光の照射時刻と、の時間差であり、
前記第2時間差は、前記第1の時刻と、前記第1信号の立下りにおいて前記第1信号の強度が前記閾値に到達する第2の時刻と、の時間差である、測距装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記戻り光の光強度の差に応じた前記第1時間差に基づく測距値の差を、前記第2時間差を用いて補正することにより得られた前記物体までの距離に関する情報を出力する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記処理回路は、過負荷回復機能を有し、
前記第2の時刻は、前記第1の時刻から前記処理回路の過負荷回復時間が経過した後の時刻であり、
前記制御部は、前記処理回路の過負荷回復時間に基づき、前記第2時間差に関する情報を取得する、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1時間差に基づいて得られる前記物体までの距離の測定誤差と、前記第2時間差と、の関係に関する予め定められた対応情報に基づいて、前記物体までの距離の測定誤差を補正する、請求項1または請求項2に記載の測距装置。
【請求項5】
前記対応情報は、前記物体までの距離の測定誤差と、前記第2時間差と、の関係を表す数式を含む、請求項4に記載の測距装置。
【請求項6】
前記数式は、前記第2時間差の予め定められた複数の範囲ごとで異なる、請求項5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記数式は、対数関数を含む、請求項6に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス状の光の照射時刻と、該光に由来する物体からの戻り光の受光信号である第1信号の強度が閾値に到達する時刻と、の時間差に基づき、物体までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式の測距装置が知られている。この測距装置は、ロボットや、自動車、飛行体等の移動体に搭載され、移動体の周囲に存在する物体を認識する用途等において使用される。
【0003】
また、レーザ光の反射光の計測信号における立ち上がり時間と立ち下がり時間とを取得する時間取得部と、立ち上がり時間に第1重み係数で重み付けした第1時間、及び立ち下がり時間に第2重み係数で重み付けした第2時間に基づくタイミングと、レーザ光の照射タイミングと、の時間差に基づいて、物体までの距離を計測する距離計測部と、を備える測距装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-046247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の測距装置では、計測信号等の第1信号における立ち上がりの傾斜角度が戻り光の光強度によって異なり、この傾斜角度に応じて第1信号の強度が閾値に到達する時刻が変動することで、測距精度が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、測距精度に優れた測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本測距装置(100)は、光を照射する照射部(120)と、照射部(120)からの光が物体により反射または散乱された光である戻り光を受光し、戻り光の光強度に応じた第1信号(S)を出力する受光部(8)と、受光部(8)からの第1信号(S)に所定の処理を実行した後の第2信号(U)を出力する処理回路(411)と、第1信号(S)および第2信号(U)の少なくとも一方から得られる第1時間差(Δt)と第2時間差(τps)とに基づいて、物体までの距離に関する情報を出力する制御部(140)と、を有し、第1時間差(Δt)は、第1信号(S)の立上りにおいて第1信号(S)の強度が閾値(th)に到達する第1の時刻(t1)と、照射部(120)による光の照射時刻(t0)と、の時間差であり、第2時間差(τps)は、第1の時刻(t1)と、第1信号(S)の立下りにおいて第1信号(S)の強度が閾値(th)に到達する第2の時刻(t2)と、の時間差である。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測距精度に優れた測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】参考例に係る測距装置の照射信号と第1信号の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る測距装置の照射信号と第1信号の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る測距装置の一例を示す斜視図である。
図4図3の測距装置における発光部および受光部周辺の一例の斜視図である。
図5】光分割部材による光分割の一例を示す図であり、図5(a)は光分割部材の側面図、図5(b)は光の入射方向側から視た光分割部材の斜視図、図5(c)は光分割部材の正面図である。
図6図3の測距装置における照射部の一例を示す斜視図である。
図7図3の測距装置の構成例を示すブロック図である。
図8図3の測距装置における同期検出部の一例を示す図である。
図9図3の測距装置における制御部の構成例を示すブロック図である。
図10図3の測距装置における受光部基板の構成例を示すブロック図である。
図11図3の測距装置における制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図12図3の測距装置の制御部による処理例を示すフロー図である。
図13】第2時間差と測定誤差との関係の一例を示す図である。
図14】戻り光の光強度に応じた測定誤差の一例を示す図である。
図15図3の測距装置による測定誤差の補正結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための測距装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0013】
以下に示す図でX軸、Y軸およびZ軸により方向を示す場合があるが、Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る測距装置が備える第2駆動体の回転軸である第2軸に沿う方向を示す。X軸に沿うX方向は、Z方向に交差する方向を示す。Y軸に沿うY方向は、X軸およびZ軸の両方に交差する方向を示す。
【0014】
また、X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これらは測距装置の使用時における向きを制限するものではなく、測距装置は任意の向きに配置可能である。
【0015】
実施形態に係る測距装置は、パルス状の光の照射時刻と、該光に由来する物体からの戻り光の受光信号である第1信号の強度が閾値に到達する時刻と、の時間差に基づき、物体までの距離を測定するTOF方式の測距装置である。なお、実施形態に係る測距装置は、1つの物体に限らず、2以上の物体それぞれまでの距離も測定できる。また、測距装置から照射される光は、必ずしもパルス状の光でなくてもよく、CW(Continuous Wave)光であっても、本実施形態の効果を得ることができる。
【0016】
まず、図1および図2を参照して、実施形態に係る測距装置の主な特徴について説明する。図1は、参考例に係る測距装置100Xにおける照射信号MXと第1信号SXの一例を示す図である。図2は、実施形態に係る測距装置100における照射信号Mと第1信号Sの一例を示す図である。
【0017】
図1において、グラフGX1は、照射信号MXを示すタイミングチャートである。グラフGX2は、第1信号SX1を示すタイミングチャートである。グラフGX3は、第1信号SX2を示すタイミングチャートである。グラフGX1~グラフGX3における時間軸(横軸)は共通である。
【0018】
照射信号MXは、測距装置100Xからの照射光に関する信号である。第1信号SX1および第1信号SX2のそれぞれは、測距装置100Xからの照射光が物体により反射または散乱された光であるパルス状の戻り光を受光することで得られる信号である。但し、戻り光は、必ずしもパルス状の戻り光でなくてもよく、CW光であっても、本実施形態の効果を得ることができる。第1信号SX1における戻り光の光強度は、第1信号SX2における戻り光の光強度よりも大きい。なお、第1信号SXは、第1信号SX1と第1信号SX2を区別しない場合の総称表記である。
【0019】
照射時刻tX0は、測距装置100Xから光が照射される時刻である。第1の時刻tX1は、第1信号SX1の立上りにおいて第1信号SX1の強度が閾値thに到達する時刻である。第1の時刻tX2は、第1信号SX2の立上りにおいて第1信号SX2の強度が閾値thに到達する時刻である。時間差ΔtX1は、照射時刻tX0と第1の時刻tX1との時間差である。時間差ΔtX2は、照射時刻tX0と第1の時刻tX2との時間差である。
【0020】
第1信号SX1における戻り光の光強度は第1信号SX2における戻り光の光強度よりも大きく、単位時間当たりの光強度の増加率が高いため、第1信号SX1の立上り角度は、第1信号SX2の立上り角度よりも急峻になる。これにより、第1の時刻tX1は第1の時刻tX2よりも早くなり、時間差ΔtX1は時間差ΔtX2よりも短くなる。この時間差ΔtX1と時間差ΔtX2の差δtXは、測距装置100Xによる測距値の差となる。このように、測距装置100Xでは、戻り光の光強度差に応じて測距値が変動し、測距精度が低下する場合がある。
【0021】
一方、図2において、グラフG1は、照射信号Mを示すタイミングチャートである。グラフG2は、第1信号S1を示すタイミングチャートである。グラフG3は、第2信号U1を示すタイミングチャートである。グラフG4は、第1信号S2を示すタイミングチャートである。グラフG5は、第2信号U2を示すタイミングチャートである。グラフG1~グラフG5における時間軸(横軸)は共通である。
【0022】
照射信号Mは、測距装置100からの照射光に関する信号である。第1信号S1および第1信号S2のそれぞれは、測距装置100からの照射光が物体により反射または散乱された光であるパルス状の戻り光を受光することで得られる信号である。第1信号S1における戻り光の光強度は、第1信号S2における戻り光の光強度よりも大きい。なお、第1信号Sは、第1信号S1と第1信号S2を区別しない場合の総称表記である。
【0023】
本実施形態では、測距装置100は、過負荷回復機能を有し、第1信号S1に基づく第2信号U1を出力する処理回路を有する。ここで、過負荷回復機能とは、上記の処理回路等の電気回路において、出力電圧が飽和した状態から出力電圧が変化可能な状態に回復させる機能をいう。
【0024】
第2信号U1は、上記処理回路により、第1信号S1に所定の処理を実行した後の信号である。第2信号U2は、上記処理回路により、第1信号S2に所定の処理を実行した後の信号である。所定の処理には、電流信号である第1信号Sを電圧信号に変換する処理、第1信号Sまたは電圧変換された信号を増幅する処理、あるいは、第1信号S、電圧変換された信号または増幅された信号を閾値thで二値化する処理等が含まれる。但し、所定の処理は、これらに限らず、測距装置100の仕様等に応じて適宜変更できる。なお、第2信号Uは、第2信号U1と第2信号U2を区別しない場合の総称表記である。
【0025】
照射時刻t0は、測距装置100から光が照射される時刻である。第1の時刻t1は、第1信号S1の立上りにおいて第1信号S1の強度が閾値thに到達する時刻である。第1の時刻t3は、第1信号S2の立上りにおいて第1信号S2の強度が閾値thに到達する時刻である。第2の時刻t2は、第1信号S1の立下りにおいて第1信号S1の強度が閾値thに到達する時刻である。第2の時刻t4は、第1信号S2の立下りにおいて第1信号S2の強度が閾値thに到達する時刻である。
【0026】
第2の時刻t2は、第1信号S1が閾値thに到達してから、処理回路の過負荷回復時間が経過した後、第1信号S1が閾値thに到達する時刻ということもできる。第2の時刻t4は、第1信号S2が閾値thに到達してから、処理回路の過負荷回復時間が経過した後、第1信号S2が閾値thに到達する時刻ということもできる。ここで、過負荷回復時間とは、入力電圧の変化後、出力電圧が飽和状態から変化し始めるまでにかかる時間をいう。
【0027】
第1時間差Δt1は、照射時刻t0と第1の時刻t1との時間差である。第1時間差Δt2は、照射時刻t0と第1の時刻t3との時間差である。なお、第1時間差Δtは、第1時間差Δt1と第1時間差Δt2を区別しない場合の総称表記である。第2時間差τps1は、第1の時刻t1と第2の時刻t2との時間差である。第2時間差τps2は、第1の時刻t3と第2の時刻t4との時間差である。なお、第2時間差τpsは、第2時間差τps1と第2時間差τps2を区別しない場合の総称表記である。
【0028】
本明細書に示す例では、第1の時刻t1、第2の時刻t2、第1の時刻t3、第2の時刻t4、第1時間差Δtおよび第2時間差τpsのそれぞれは、第2信号Uに基づいて得られる。但し、測距装置100は、第1信号Sに基づいて第1時間差Δtおよび第2時間差τpsを取得してもよいし、第1信号Sおよび第2信号Uの両方から第1時間差Δtおよび第2時間差τpsを取得してもよい。換言すると、測距装置100は、第1信号Sおよび第2信号Uの少なくとも一方から第1時間差Δtおよび第2時間差τpsを取得してもよい。
【0029】
第1信号S1における戻り光の光強度は第1信号S2における戻り光の光強度よりも大きく、単位時間当たりの光強度の増大率が高いため、第1信号S1の立上り角度は、第1信号S2の立上り角度よりも急峻になる。これにより、第1の時刻t1は第1の時刻t3よりも早くなるため、第1時間差Δt1は第1時間差Δt2よりも短くなる。この第1時間差Δt1と第1時間差Δt2の差δtは、測距装置100による測距値の差となる。
【0030】
一方、第1信号S1における戻り光の光強度は、第1信号S2における戻り光の光強度よりも大きいため、処理回路の過負荷回復時間は長くなる。これにより、第2時間差τps1は第2時間差τps2よりも長くなる。
【0031】
本実施形態では、第1時間差Δtと第2時間差τpsとに基づいて、物体までの距離に関する情報を出力する。例えば本実施形態では、戻り光の光強度の差に応じた第1時間差Δtに基づく測距値の差を、第2時間差τpsを用いて補正することにより得られた物体までの距離に関する情報を出力する。これにより、本実施形態では、戻り光の光強度に応じた測距値の変動を低減し、測距精度に優れた測距装置100を提供することができる。
【0032】
以下、サービスロボットに搭載され、サービスロボットの進行方向または周囲に存在する物体との間の距離を測定する測距装置を、実施形態に係る測距装置100の一例として詳細に説明する。ここで、サービスロボットとは、工場内での資材運搬、接客施設での商品運搬および案内業務、施設内警備、或いは清掃等の主に役務の目的で使用される自律移動型の移動体をいう。サービスロボットに搭載される測距装置は、サービスロボットの進行方向または周囲に存在する物体を検出したり、サービスロボットが動作する施設の施設内地図等を作成したりするために使用される。
【0033】
<測距装置100の構成例>
(全体構成)
図3図6を参照して、実施形態に係る測距装置100の構成の一例を説明する。図3は、測距装置100の全体構成を例示する斜視図である。図4は、測距装置100における光源および受光部の周辺を例示する斜視図である。図5は、光分割部材41による光分割の一例を示す図であり、図5(a)は光分割部材41の側面図、図5(b)は光の入射方向側から視た光分割部材41の斜視図、図5(c)は光分割部材41の正面図である。図6は測距装置100における照射部120を例示する斜視図である。
【0034】
図3図6に示すように、測距装置100は、台部1と、保持部2と、光源3と、第1レンズ4と、穴あきミラー6と、第2レンズ7と、5つの受光部8と、イケール9と、光分割部材41と、照射部120と、を有する。なお、台部1、保持部2、第1レンズ4、第2レンズ7、イケール9および照射部120のそれぞれは、必須の構成部ではない。
【0035】
図3に示すように、台部1は、保持部2と回転ステージ10が設けられた平板状の部材である。台部1は、-Z方向側の面上における相互に異なる領域に、保持部2と回転ステージ10とを固定している。回転ステージ10は、台部1の+Y方向側の領域にネジ部材等により固定されている。保持部2は、台部1における回転ステージ10の-Y方向側の領域に、結合部材11を介してネジ部材等により固定されている。
【0036】
台部1は、回転ステージ10は重量が大きい場合があるため、金属材料等の剛性が高い材料を含んで構成されることが好ましい。台部1は、平板状の部材に限られず、回転ステージ10と保持部2を設置可能であれば如何なるものであってもよい。例えばサービスロボットの筐体に保持部2と回転ステージ10が設置される場合には、サービスロボットの筐体が台部に対応する。
【0037】
保持部2は、天井パネル21と背面パネル22とが結合して構成された部材である。天井パネル21および背面パネル22は、それぞれ平板状の部材である。天井パネル21および背面パネル22は、その材質に特段の制限はなく、例えば金属材料または樹脂材料等を適用可能である。
【0038】
図3および図4に示すように、天井パネル21の+Z方向側の面には、光源3、第1レンズ4および穴あきミラー6が設けられている。背面パネル22の+Y方向側の面には、第2レンズ7および5つの受光部8が設けられている。
【0039】
光源3は、光L0を発する。光源3は、例えばLD(Laser Diode:半導体レーザ)である。光L0は、パルス状のレーザ光である。光源3は、光L0を+Z方向側に発する。但し、光源3は、LED(light emitting diode:発光ダイオード)等であってもよい。光L0の波長は、近赤外波長領域等の非可視の波長領域のレーザ光であると、人間にレーザ光を視認させずに測距可能な点において好適である。
【0040】
第1レンズ4は、ガラス材料または樹脂材料を含んで構成される。第1レンズ4は、光L0を略コリメート(略平行化)する。測距装置100は、第1レンズ4を有することにより、光源3から発せられた光L0の広がりを抑制でき、光利用効率を向上させることができる。第1レンズ4によりコリメートされた光L0は、光分割部材41に入射する。
【0041】
光分割部材41は、光源3からの光L0を複数の光に分割する。図5に示すように、光分割部材41は、平面視において略円形の形状を有し、光L0の波長に対して光透過性を有する平板状の部材である。なお、ここでの平面視は、光分割部材41をZ方向に沿って視ることをいう。光分割部材41は、ガラス、樹脂等の材料を含んで構成される。光分割部材41は、例えば回折素子である。但し、光分割部材41は、回折素子に限定されず、プリズム等であってもよい。
【0042】
光分割部材41の-Z方向側の面、+Z方向の面、またはその両方には、周期構造が形成されている。光分割部材41は、入射される光L0を、周期構造を用いて回折させることにより5つの光L1に分割する。5つの光L1は、分割光L11~L15を含む。分割光L11は、光分割部材41の0次光(透過光)である。分割光L12~L15は、光分割部材41の1次回折光である。但し、光L0が光分割部材41により分割される数は、5つに限らず、要求される空間分解能等に応じて適宜選択可能である。
【0043】
分割光L11~L15は、伝搬方向が相互に異なる平行光束である。分割光L11~L15は、照射部120により走査される。分割光L11~L15のそれぞれが走査された光である5つの走査光L2は、それぞれ照射領域における異なる位置に照射される。
【0044】
図5(a)に示す光分割部材41による分割角度θLは、2.1度以上であってもよい。分割角度θLとは、光分割部材41により分割された5つの光L1それぞれの、伝搬方向に沿う中心軸同士がなす角度をいう。光分割部材41として回折素子を用いた場合には、分割角度θLは、回折素子による回折光の、伝搬方向に沿う中心軸同士がなす角度である回折角に対応する。
【0045】
ここで、規格であるIEC60825-1では、レーザ光出射する機器から100mm離れた位置において、直径7mmの受光面を有するセンサにより検出した場合の光強度によってレーザ光に対する安全性を規定している。分割角度θLを2.1度以上とすると、測距装置100から100mm離れた位置の直径7mmの受光面内に、光分割部材41により分割した5つの光L1のうち3つ以下が入射する状態になる。これにより、測距装置100は、IEC60825-1の規定に準拠しやすくなる。
【0046】
人の目の瞳径および焦点距離に基づくと、5つの光L1のうちの同一直線上に並ぶ3つが並行して人の目に入射し得る角度は、±2.0度よりも小さい角度である。本実施形態では、光分割部材41による分割角度θLを2.1度以上とすることにより、5つの光L1のうちの同一直線上の3つ以上が並行して人の目に入射することを防止し、人の目に対する安全性を意味するアイセーフを実現できる。また、本実施形態では、2.1度以上において分割角度θLをできるだけ小さくすることにより、アイセーフを実現しつつ、測距の空間分解能を向上させることができる。
【0047】
平面視における光分割部材41の外形形状は、略円形に限らず、略矩形、略楕円形、略多角形等であってもよい。また、光分割部材41の中央を透過する分割光L11と、4つの対角方向に分割される分割光L12~L15が得られる構成を例示したが、光L0が分割される方向は対角方向に限定されず、適宜選択可能である。
【0048】
図3および図4に示すように、穴あきミラー6は、光分割部材41と照射部120との間に配置される。穴あきミラー6は、光分割部材41により分割された複数の光L1のそれぞれに由来する戻り光を反射するミラー面62を含む。ミラー面62には、光源3からの光L0を通過させる貫通孔61が形成されている。穴あきミラー6は、金属、ガラス、樹脂等の材料を含んで構成される。ミラー面62には、アルミニウム等の金属からなる反射膜が蒸着等により形成される。
【0049】
光源3からの光L0は、光分割部材41により5つの光L1に分割され、穴あきミラー6の貫通孔61を通過する。貫通孔61を通過した5つの光L1は、照射部120により走査される。照射部120による5つの走査光L2に由来する5つの戻り光は、ミラー面62により反射された後、第2レンズ7により集光され、5つの受光部8に入射する。
【0050】
図3および図6において、照射部120は、パルス状の光を照射する。パルス状の光は、第2時間差τpsに対応する期間に照射される光である。第2時間差τpsに対応する期間以外の期間には、照射部120から光が照射されない。パルス状の光が照射される期間であるという観点では、第2時間差τpsは、パルス時間幅と言い換えることもできる。
【0051】
照射部120は、回転反射体5と、回転ステージ10と、を含む。照射部120は、第1方向および第1方向と交差する第2方向へ走査される5つの走査光L2を照射する。測距装置100は、照射部120により走査光L2を照射することにより、広い範囲に存在する1以上の物体に対し、1以上の物体それぞれまでの距離を測定することができる。なお、照射部120は、回転反射体5に代えて揺動ミラー(往復ミラー)により、5つの光L1のそれぞれを走査してもよい。
【0052】
回転反射体5は、6つの光反射面51を有する。回転反射体5は、回転により光反射面51の角度を変化させることによって、5つの光L1のそれぞれを走査し、走査される5つの走査光L2を物体に照射する。
【0053】
図3では、図を簡素化するため、5つの光L1のうちの1つのみと、5つの走査光L2のうちの1つのみと、を表示している。また図3では、5つの走査光L2のうちの1つを、任意のタイミングに+Y方向側に照射される1つのレーザビームとして表示している。
【0054】
回転反射体5は、例えばポリゴンミラーである。第1軸A1に沿う方向から視た回転反射体5の形状は略正六角形である。回転反射体5は、正六角形の各辺に対応する外周面に6つの光反射面51を有する。回転反射体5は、アルミニウム等の金属材料で形成した略正六角柱状の部材の外周面を、切削または鏡面研磨することにより製作できる。但し、回転反射体5は、金属材料または樹脂材料等で形成された回転体の外周面にアルミニウム等を鏡面蒸着することにより製作されてもよい。
【0055】
光反射面51の数は、6つに限定されず、1以上であればよい。光反射面51の数に応じて、回転反射体5による光の走査角度範囲が異なる。例えば、光反射面51の数が多いほど走査角度範囲は狭くなり、光反射面51の数が少ないほど走査角度範囲は広くなる。光反射面51の数は、要求される走査角度範囲に応じて適宜決定可能である。
【0056】
回転反射体5には、回転反射体5の中心軸と回転軸が略一致するように第1軸モータが取り付けられている。回転反射体5は、第1軸モータを駆動源にして第1軸A1周りに回転する。5つの光L1は、第1軸A1を中心にした円の円周方向に走査されるということもできる。回転反射体5の回転方向は一定である。例えば、回転反射体5は図3における第1軸回転方向A11に沿って連続回転する。但し、回転反射体5は、第1軸回転方向A11とは反対方向に連続回転してもよい。
【0057】
図3において、ある時刻における、測距装置100の+Y方向側に物体が存在すると、5つの走査光L2が物体で反射または散乱された戻り光が測距装置100に向けて-Y方向側に戻される。戻り光は、再び回転反射体5の光反射面51に入射し、光反射面51により-Z方向側に反射される。-Z方向側に反射された戻り光のうち、穴あきミラー6のミラー面62に入射した戻り光は、ミラー面62により-Y方向側に反射され、5つの受光部8に到達する。本明細書に示す例では、5つの光L1が反射される光反射面51と戻り光が反射される光反射面51は同じ面である。なお、図3の状態における時刻とは別の時刻における照射部120のA2軸周りの回転位置よび回転反射体5のA1周りの回転位置によっては、走査光L2が物体を照射する方向は、+Y方向に限らない。しかしながら、照射光が物体で反射されて測距装置100に向けて戻され、光反射面51に入射し、-Z方向に反射される点は、図3の状態における時刻とは別の時刻においても同様である。
【0058】
5つの受光部8のそれぞれは、照射部120からの光が物体により反射または散乱された光であるパルス状の戻り光を受光し、該戻り光の光強度に応じた第1信号Sを出力する。光分割部材41により分割された5つの光L1が照射され、この照射光の物体からの5つの戻り光が穴あきミラー6のミラー面62により5つの受光部8に向けて反射される。5つの受光部8は、ミラー面62により反射されたこの5つの戻り光を受光する。5つの受光部8は、照射部120から照射された5つの走査光L2に由来する戻り光に基づいて、5つの走査光L2それぞれの走査角度ごとでの第1信号Sを出力する。「走査角度ごと」は、「単位時間当たりに走査光が走査される角度ごと」を意味する。
【0059】
5つの受光部8は、受光部81~受光部85を含む。5つの受光部8は、5つの走査光L2それぞれの走査角度ごとでの第1信号Sを出力する。なお、受光部8の数は5つに限定されず、光分割部材41による分割数に合わせて適宜変更可能である。
【0060】
受光部81~受光部85のそれぞれは、例えばAPD(Avalanche Photodiode:アバランシェフォトダイオード)である。APDは、アバランシェ増倍と呼ばれる現象を利用して受光感度を向上させたフォトダイオードの一種である。但し、受光部81~受光部85のそれぞれは、フォトダイオード(Photodiode)や光電子増倍管等であってもよい。
【0061】
図6において、イケール9は、屈曲部を含み、回転反射体5を支持する。イケール9は、-Z方向側の面が回転ステージ10の載置面101に接触し、ネジ部材等により載置面101上に固定されている。イケール9は、基板91を介し、底面に交差する+X方向側の面に回転反射体5を支持する。イケール9の材質に特段の制限はないが、剛性を高く確保するために、金属等の高剛性の材料を含んで構成されることが好ましい。
【0062】
回転ステージ10は、回転反射体5を支持しつつ、自身が回転可能である。回転ステージ10は、イケール9を第2軸A2周りに回転させることにより、回転反射体5を第2軸A2周りに回転させる。回転反射体5による5つの走査光L2は、回転ステージ10の回転によって、第2方向に走査される。5つの走査光L2は、第2軸A2を中心にした円の円周方向に走査されるということもできる。
【0063】
回転ステージ10は、台部1上において、保持部2が設けられた領域とは異なる領域に設けられている。従って回転ステージ10が回転しても、保持部2、並びに保持部2が保持する光源3および5つの受光部8はそれぞれ不動であり、台部1に固定された状態が維持される。回転ステージ10は、載置面101と、ベアリング102と、マグネット103と、モータコア104と、を有する。
【0064】
載置面101は、第2軸A2に略直交し、第2軸A2周りに回転可能な面である。載置面101はイケール9を載置する。ベアリング102は、載置面101の回転を滑らかにする部材である。ベアリング102には、ボールベアリングまたはクロスローラベアリング等を適用してもよい。
【0065】
マグネット103は永久磁石からなる。モータコア104はモータを構成するステータの鉄心に該当する部材である。マグネット103とモータコア104とを含んでモータが構成されている。電流に応じてマグネット103が回転することにより、ベアリング102を介して載置面101が回転する。
【0066】
回転ステージ10の回転方向は、一定であり、例えば図3における第2軸回転方向A21に対応する。但し、回転ステージ10は、第2軸回転方向A21とは反対方向に連続回転してもよい。
【0067】
測距装置100は、光L0の光軸と第2軸A2とが同軸になるように構成されている。光L0の光軸は、光L0の伝搬方向に沿う光L0の中心を通る軸を意味する。また同軸とは、複数の軸が略一致していることを意味する。
【0068】
走査光L2は、回転反射体5の回転により第1軸A1と交差する方向に走査されるとともに、回転ステージ10の回転により第2軸A2と交差する方向に走査される。第2軸A2と交差する方向は、例えば重力方向に略直交する水平方向である。第1軸A1は、第2軸A2に対して傾いて配置されればよい。
【0069】
測距装置100は、光源3、回転反射体5、5つの受光部8、回転ステージ10等の構成部の一部または全部を覆うための外装カバーを備えてもよい。外装カバーを備えると、測距装置100の内部へのゴミや埃等の侵入を防ぎ、回転反射体5等にゴミや埃等が付着することを防止できる。また回転反射体5や回転ステージ10が高速回転すると、回転に伴う風切り音が大きくなる場合がある。外装カバーを設けることにより音が周囲に伝わることを抑制できる。外装カバーの材質には、金属または樹脂材料等を適用可能である。
【0070】
一方、外装カバーを設けると、外装カバーにおける走査光L2が出射する出射窓以外の部分が走査光L2を遮るため、走査角度範囲が制限され、測距装置100による物体200の検出範囲または測距範囲が制限される場合がある。走査光L2の波長に対して光透過性を有する透明な樹脂材料で外装カバーを構成すると、このような走査角度範囲の制限を緩和できる。
【0071】
図7は、測距装置100の構成を例示するブロック図である。なお、図7における実線で示した矢印は光の流れを示し、破線で示した矢印は電気信号の流れを示している。測距装置100は、受発光部110と、出射窓130と、制御部140と、を有する。
【0072】
駆動制御部150により、回転反射体5および回転ステージ10それぞれの回転を制御する。駆動制御部150は、第1軸モータ151と、第2軸モータ152と、同期検出部153と、回転制御部402と、給電部155と、を有する。駆動制御部150は、同期検出部153から出力される回転反射体5の回転周期に対応する同期信号Snに基づき、回転制御部402により、第2軸モータ152による回転を制御する。
【0073】
同期検出部153は、第1軸エンコーダ531と、周期光発光部532と、周期光受光部533と、を有する。同期検出部153は、第1軸エンコーダ531から出力される第1角度検出信号En1に基づいて周期光発光部532に発光させ、周期光発光部532からの光を受光した周期光受光部533により同期信号Snを出力させる。第1角度検出信号En1は、回転反射体5の回転角度の検出信号である。
【0074】
周期光発光部532は、LED等を含んで構成される。周期光発光部532は、第1角度検出信号En1に基づき、例えば第1軸エンコーダ531が回転反射体5の回転原点に対応する角度を検出したタイミングにパルス光Opを発する。
【0075】
周期光受光部533は、フォトダイオード(Photo Diode)等を含んで構成され、周期光発光部532により発生されたパルス光Opを受光したタイミングに、第2軸ドライバ基板173を介して同期信号Snを回転制御部402に出力する。
【0076】
給電部155は、発電コイル551と、給電コイル552と、を有する。給電部155は、電磁誘導により第1軸モータ151等に非接触で給電する。
【0077】
発電コイル551は、電磁誘導により逆起電力を発生し、第1軸モータ151、第1軸エンコーダ531および第1軸ドライバ基板163のそれぞれに給電可能なコイルである。給電コイル552は、発電コイル551に対向配置され、第2軸ドライバ基板173から流れる電流に応じて、電磁誘導により発電コイル551に逆起電力を発生させるコイルである。給電コイル552に電流を流すと、電磁誘導により非接触で発電コイル551に逆起電力が発生する。
【0078】
給電部155は、電磁誘導による非接触給電に限定されず、回転接点等により、外部から第1軸モータ151等に給電することもできる。回転接点とは、回転体に配置された金属製リングとブラシを介して、回転体に電気的に接続する構成をいう。
【0079】
基板91には、回転反射体5、第1軸モータ151、第1軸エンコーダ531、第1軸ドライバ基板163、周期光発光部532および発電コイル551等が設けられている。回転ステージ10には、第2軸モータ152、第2軸エンコーダ172、第2軸ドライバ基板173、周期光受光部533、給電コイル552等が設けられている。
【0080】
第1軸モータ151は、回転反射体5を第1軸A1周りに回転させる。第1軸モータ151には、DC(Direct Current)モータまたはAC(Alternating Current)モータ等を適用できる。
【0081】
第1軸エンコーダ531は、第1角度検出信号En1を出力する。第1軸エンコーダ531は、例えばロータリエンコーダである。
【0082】
第1軸ドライバ基板163は、第1軸モータ151に駆動信号を供給する電気回路等を含む基板である。第1軸ドライバ基板163は、第1角度検出信号En1に基づき、回転反射体5が所定の第1周波数(回転数)により回転するように制御できる。なお、第1周波数は、第1軸ドライバ基板163により制御されるため、回転制御部402の制御対象ではない。
【0083】
第1軸ドライバ基板163は、給電部155による給電が開始された場合に、第1軸モータ151により回転反射体5の回転を開始させ、給電部155による給電が停止された場合に、第1軸モータ151により回転反射体5の回転を停止させる。
【0084】
第2軸モータ152は、DCモータ、ACモータまたはステッピングモータ等の各種モータにより構成できる。第2軸エンコーダ172は、ロータリエンコーダ等により構成され、回転ステージ10の回転角度を検出する。
【0085】
第2軸ドライバ基板173は、第2軸モータ152に駆動信号を供給する電気回路等を含む実装基板である。第2軸ドライバ基板173は、回転制御部402からの第2軸制御信号Dr2に基づき、回転ステージ10を回転させる。また、第2軸ドライバ基板173は、第2軸エンコーダ172により検出された回転ステージ10の第2角度検出信号En2を回転制御部402に出力する。
【0086】
回転制御部402は、第2角度検出信号En2に基づき、回転ステージ10の回転を制御する。ここで、回転ステージ10の回転数である第2周波数は、回転制御部402の制御対象である。
【0087】
受発光部110は、発光部基板111と、発光ブロック112と、穴あきミラー6と、支持部材63と、受光ブロック113と、受光部基板114と、を含む。
【0088】
発光部基板111は、制御部140からの発光制御信号Dr1に応じて光源3を発光させる電気回路を含む実装基板である。
【0089】
発光ブロック112は、光源3と、発光部ホルダ31と、第1レンズ4と、第1レンズホルダ40と、を含む。発光部ホルダ31は光源3を保持する部材である。第1レンズホルダ40は第1レンズ4を保持する部材である。支持部材63は、穴あきミラー6を保持する部材である。
【0090】
受光ブロック113は、第2レンズ7と、第2レンズホルダ71と、5つの受光部8と、受光部ホルダ80と、を含む。第2レンズホルダ71は第2レンズ7を保持する部材である。受光部ホルダ80は5つの受光部8を保持する部材である。
【0091】
受光部基板114は、5つの受光部8から得られる第1信号Sに所定の処理を実行した後の第2信号Uを制御部140に出力する電気回路を含む実装基板である。第1信号Sは、例えば受光部8が受光した光強度に応じた電気信号である。受光部基板114は、第1信号Sに所定の処理を実行することにより、第1信号Sから後段の制御部140によるデータ処理が可能な第2信号Uを得ることができる。
【0092】
制御部140は、測距装置100全体の動作を制御する。本実施形態では、制御部140は、第1信号Sおよび第2信号Uの少なくとも一方から得られる第1時間差Δtと第2時間差τpsとに基づいて、物体200までの距離に関する情報を出力する。
【0093】
制御部140は、電気回路または電子回路等を有する制御回路基板を含む。制御部140は、例えば背面パネル22等に設置される。この制御回路基板は、回転反射体5および回転ステージ10が回転しても動かない。
【0094】
制御部140は、受発光部110および照射部120のそれぞれに電気的に接続しており、信号およびデータを相互に送受可能である。また制御部140は、サービスロボットを制御可能な外部装置300に通信可能に接続している。本実施形態では、回転制御部402は、制御部140内に設けられているが、制御部140の外部に設けられていてもよい。
【0095】
制御部140は、例えば外部装置300からの測距制御信号Ctに応じて発光制御信号Dr1を出力し、発光部基板111に実装された光源3を発光させる。5つの光L1それぞれが走査される5つの走査光L2は、出射窓130を透過して、測距装置100から外部に向けて照射される。
【0096】
出射窓130は、光L0の波長に対して光透過性を有するガラス材料または樹脂材料を含んで構成されている。出射窓130は、測距装置100が装置全体を覆う不透明な外装カバーを備える場合に、走査光L2を透過して出射させる窓として機能する。
【0097】
走査光L2が物体200により反射または散乱された5つの戻り光Rは、出射窓130を透過して回転反射体5の光反射面51に入射する。5つの戻り光Rは、光反射面51により反射され、穴あきミラー6のミラー面により5つの受光部8に向けて反射される。
【0098】
5つの戻り光Rは、第2レンズ7により集光されながら5つの受光部8にそれぞれ入射する。5つの受光部8は、5つの戻り光Rに基づいて、5つの走査光L2の走査角度ごとでの第1信号Sを出力する。受光部基板114は、5つの受光部8から入力した5つの第1信号Sに所定の処理を実行した後の第2信号Uを制御部140に出力する。
【0099】
測距装置100は、例えば、サービスロボットが搭載するバッテリから供給される電力により駆動される。但し、測距装置100は、測距装置100自身が搭載するバッテリから電力供給されてもよい。またサービスロボットの動作範囲が広くない場合等には、商用電源からケーブルを用いて給電されるようにしてもよい。
【0100】
(同期検出部153の構成例)
図8は、同期検出部153の構成を例示する図である。図8は、回転ステージ10をYZ平面により切断した状態を模式的に示している。
【0101】
図8に示すように、回転ステージ10は、回転可能な回転部10aと、回転しない固定部10bと、を含んで構成される。周期光発光部532は、回転部10aにおける載置面101に設けられた発光基板532aに実装される。周期光受光部533は、固定部10bに設けられた受光基板533aに実装される。
【0102】
周期光発光部532は、発光基板532aに入力される第1角度検出信号En1に応じて、周期光発光部532に対向配置された周期光受光部533に向けてパルス光Opを発する。周期光受光部533によるパルス光Opの受光信号は、受光基板533aにより二値信号に変換され、同期信号Snとして回転制御部402に出力される。
【0103】
(制御部140のハードウェア構成例)
図9は、制御部140のハードウェア構成を例示するブロック図である。なお、図9において、破線のブロックで示した構成部は、アナログ電気回路を含むPWB(Printed Wired Board)を表している。
【0104】
図9に示すように、制御部140は、CPU(Central Processing Unit)141と、Digipot(Digital potentiometer)142と、FPGA(Field Programmable Gate Array)143と、電力生成回路144と、Wireless Tx145と、回転角検出回路146と、メモリ147と、を有する。これらは、システムバスを介して相互に通信可能に接続している。
【0105】
CPU141は、測距装置100全体の動作を制御するプロセッサである。CPU141は、Digipot142を介して、受光部基板114へのバイアス電圧供給と、PLD(Programmable Logic Device)115への電力供給と、をそれぞれ制御する。CPU141は、発光部基板111から入力されるAPC(Automatic Power Control)信号APC Sig.に基づいて制御信号S/H/Resetを、FPGA143を介して発光部基板111に出力する。CPU141は、制御信号S/H/Resetを出力することで、発光部基板111に実装された光源3の発光を制御する。
【0106】
Digipot142は、デジタル制御のポテンショメータである。
【0107】
FPGA143は、主に、受光部基板114から入力される5つの第2信号Uに基づき、物体までの距離情報を演算により取得する。また、FPGA143は、制御信号FIREをPLD115に出力することにより、PLD115の動作を制御できる。
【0108】
電力生成回路144は、外部電源からPOWER I/F(Interface)301を介して入力される電力から発電コイル551に供給するための一次電力を生成する電気回路である。電力生成回路144により生成された一次電力は、Wireless Tx145を介して発電コイル551に供給される。
【0109】
Wireless Tx145は、発電コイル551に一次電力を無線供給する送信器である。Wireless Tx145から供給される一次電力に応じて発電コイル551および給電コイル552で発生される電力は、受信器であるWireless Tx145を介して第1軸モータ151に供給される。
【0110】
回転角検出回路146は、第1軸エンコーダ531から出力される第1角度検出信号En1から第1軸モータ151の回転角度を検出する。また回転角検出回路146は、第2軸エンコーダ172から出力される第2角度検出信号En2から第2軸モータ152の回転角度を検出する。
【0111】
メモリ147は、ROM(Read Only Memor)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリ、またはRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含む。メモリ147は、プログラム、データ等を格納できる。
【0112】
(受光部基板114のハードウェア構成例)
図10は、受光部基板114のハードウェア構成を例示するブロック図である。受光部基板114には、受光部8と、処理回路411と、温度センサ412と、が実装されている。
【0113】
受光部8には、電力生成回路144から駆動電圧が供給される。電力生成回路144は、DCDC(Direct Current to Direct Current)ブーストコンバータ441と、Digipot442と、を含む。電力生成回路144は、外部電源から供給される例えば12Vの直流電圧をDCDCブーストコンバータ441により所定の直流電圧に変換し、Digipot442を介して受光部8に供給する。
【0114】
処理回路411は、過負荷回復機能を有し、受光部8からの第1信号Sに所定の処理を実行した後の第2信号Uを出力する電気回路である。但し、処理回路411は、必ずしも過負荷回復機能を有さなくても、本実施形態の効果を得ることができる。処理回路411は、T/Iアンプ(Transimpedance Amplifier)811と、ゲインアンプ812と、コンパレータ813と、を含む。
【0115】
T/Iアンプ811は、受光部8が受光した戻り光の光強度に応じた電流信号である第1信号Sを電圧信号に変換し、ゲインアンプ812に出力する。ゲインアンプ812は、T/Iアンプ811から入力される電圧信号を所定の電圧に増幅し、コンパレータ813に出力する。コンパレータ813は、ゲインアンプ812から入力される電圧信号を閾値thと比較することで二値化処理し、二値化処理結果に対応する第2信号UをFPGA143に出力する。T/Iアンプ811、ゲインアンプ812およびコンパレータ813それぞれにより実行される処理、並びにこれらの2以上の組合せにより実行される処理は、第1信号Sから第2信号Uを得るための所定の処理に対応する。但し、所定の処理は、これらに限定されるものではなく、T/Iアンプ811、ゲインアンプ812およびコンパレータ813による処理以外の処理が追加または置換されてもよい。
【0116】
温度センサ412は、受光部基板114上の温度を検出し、検出値をFPGA143に出力する。温度センサ412による温度の検出値は、測距装置100による測距結果の補正等に用いられる。
【0117】
FPGA143は、TDC(Time-to-Digital Converter)コントローラ431を含む。TDCコントローラ431は、第2信号Uを受光時刻に関するデジタル信号に変換する電気回路を含む。FPGA143は、TDCコントローラ431による第2信号Uの変換値と、照射部120による走査光L2の照射時刻に関する照射信号Mと、TDCコントローラ431から入力される受光時刻に関するデジタル信号と、を用いて、物体までの距離情報を演算により取得できる。
【0118】
(制御部140の機能構成例)
図11は、制御部140の機能構成の一例を説明するブロック図である。制御部140は、可変部401と、回転制御部402と、発光制御部403と、距離情報取得部404と、補正部405と、格納部406と、出力部407と、を有する。回転制御部402は、第1軸回転制御部421と、第2軸回転制御部422と、停止制御部423と、を有する。
【0119】
可変部401、回転制御部402、発光制御部403、距離情報取得部404、補正部405および出力部407の各機能は、図9に示したFPGA143等により実現される。あるいは、これら各機能の少なくとも一部は、図9に示したCPU141がメモリ147に格納されたプログラムに規定された処理を実行することにより実現されてもよい。また、これら各機能の少なくとも一部は、複数の回路または複数のソフトウェアによって実現されてもよい。これら各機能の少なくとも一部は、外部装置300等の制御部140以外の構成部により実現されてもよいし、制御部140と制御部140以外の構成部との分散処理により実現されてもよい。格納部406の機能は、図9に示したメモリ147等により実現される。
【0120】
可変部401は、以下の式(1)および式(2)における定数αを変更することにより、回転ステージ10の第2周波数fhを変化させる。
fh=M×fv/(N+α) ・・・(1)
0<|α|<1 ・・・(2)
【0121】
式(1)において、Nは、回転ステージ10の1回転中に第1軸A1と交差する方向に走査される5つの走査光L2によって形成される走査線の数を表す。fvは第1周波数を表す。Mは、回転反射体5の一回転周期中に、第1方向に走査される5つの走査光L2によって形成される走査線の数を表す。m面の回転反射体5であればM=mである。回転反射体5に代えて揺動ミラー(往復ミラー)を用いる場合にはM=2となる。
【0122】
可変部401は、測距装置100に設けられた操作部等の外部からの設定入力情報Seに応じて定数αを変更することができる。
【0123】
第1軸回転制御部421は、給電部155に給電制御信号Stを出力し、給電部155から第1軸モータ151への給電を開始させることにより、第1軸モータ151に回転を開始させる。また第1軸回転制御部421は、給電部155に給電制御信号Stを出力し、給電部155から第1軸モータ151への給電を停止させることにより、第1軸モータ151に回転を停止させる。第1軸回転制御部421は、第1軸モータ151の回転の開始および停止のみを制御し、第1軸モータ151の回転速度等の制御は行わない。
【0124】
第2軸回転制御部422は、同期検出部153からの同期信号Snと、第2軸エンコーダ172からの第2角度検出信号En2と、に基づき、第2軸ドライバ基板173を用いて回転ステージ10の回転を制御する。
【0125】
停止制御部423は、同期検出部153から所定期間、同期信号Snが出力されない場合に、第2軸モータ152による回転ステージ10の回転を停止させる。
【0126】
発光制御部403は、発光部基板111を用いて光源3に発光制御信号Dr1を出力することにより、光源3の発光を制御する。また発光制御部403は、光源3が発光し、照射部120が走査光L2を照射した時刻に対応する照射信号Mを、補正部405および距離情報取得部404のそれぞれに出力する。
【0127】
距離情報取得部404は、5つの受光部8により受光される5つの戻り光Rから得られる5つの第2信号Uに基づいて、物体200との間の距離に関する情報である5つの距離情報Dtを演算により取得する。具体的には、距離情報取得部404は、光源3により光L0が発せられた照射信号Mを発光制御部403から入力し、この照射信号Mから照射時刻t0を取得する。また距離情報取得部404は、受光部基板114から入力した5つの第2信号Uから5つの第1の時刻t1を取得する。距離情報取得部404は、照射時刻t0と第1の時刻t1を用いて5つの第1時間差Δtを演算により取得する。距離情報取得部404は、以下の式(3)を演算することによって5つの距離情報Dbを取得できる。
Db(n)=c×Δt(n)/2 ・・・(3)
【0128】
(3)式において、nは、分割光L11~L15それぞれに対応する自然数である。例えば、Db(1)は分割光L11に基づき得られる距離情報、Db(2)は分割光L12に基づき得られる距離情報、Db(3)は分割光L13に基づき得られる距離情報、Db(4)は分割光L14に基づき得られる距離情報、Db(5)は分割光L15に基づき得られる距離情報である。cは光速(約3×10m/s)を表す。第1時間差Δt(n)は、分割光L11~L15それぞれに対応する第1時間差を表している。
【0129】
分割光L11~L15は、光源3から同時に発せられた光L0を分割したものであるため、照射時刻t0はいずれも等しい。一方、分割光L11~L15に基づく5つの戻り光Rそれぞれの第1の時刻t1は異なる。距離情報取得部404は、分割光L11~L15それぞれに基づく距離情報Dbを並行して演算により取得できる。距離情報取得部404は、5つの距離情報Dbを補正部405に出力する。
【0130】
格納部406は、対応情報408を格納する。対応情報408は、図2に示した第1時間差Δtに基づいて得られる物体までの距離の測定誤差ΔLと、図2に示した第2時間差τpsと、の関係に関する予め定められた情報である。
【0131】
補正部405は、格納部406に格納された対応情報408に基づいて、物体までの距離の測定誤差ΔLを補正する。例えば、補正部405は、受光部基板114から入力した5つの第2信号Uに基づいて取得される第1の時刻t1と第2の時刻t2の差分を計算することで、5つの第2時間差τpsを取得する。第2の時刻t2は、処理回路411の過負荷回復時間に応じて得られるため、補正部405は、処理回路411の過負荷回復時間に基づいて、第2時間差τpsに関する情報を取得できる。
【0132】
補正部405は、取得した5つの第2時間差τpsのそれぞれに基づき、対応情報408を参照して、5つの距離情報Dbそれぞれの測定誤差ΔLを取得する。補正部405は、5つの測定誤差ΔLを、対応する距離情報Dbから引き算することで、補正後の5つの距離情報Dtを取得する。
【0133】
出力部407は、補正部405により取得された補正後の距離情報Dtを外部装置300に出力する。
【0134】
<制御部140による処理例>
図12は、制御部140による処理の一例を示すフローチャートである。制御部140は、測距装置100に電源が投入され、測距装置100が起動したタイミングで図12の処理を開始する。
【0135】
まず、ステップS121において、制御部140は、可変部401により走査線間隔またはリフレッシュレートを変更するか否かを判定する。例えば可変部401は、測距装置100の操作部を用いた測距装置100の操作者による設定入力に基づき、走査線間隔またはリフレッシュレートを変更するか否かを判定できる。
【0136】
ステップS121において、変更しないと判定された場合には(ステップS121、NO)、制御部140は、ステップS124に処理を移行する。一方、変更すると判定された場合には(ステップS121、YES)、制御部140は、ステップS122において、可変部401により、設定入力情報Seを受け付ける。
【0137】
続いて、ステップS123において、制御部140は、可変部401により設定入力情報Seに応じて定数αを変更する。これにより、上記(1)式に応じて、第2周波数fhが変化し、走査線間隔およびリフレッシュレートが変更される。
【0138】
続いて、ステップS124において、制御部140は、第1軸回転制御部421により、給電部155から第1軸モータ151への給電を開始する。第1軸モータ151は、給電部155による給電開始に応じて回転を開始することにより、回転反射体5の回転を開始させる。
【0139】
続いて、ステップS125において、制御部140は、第2軸回転制御部422により、同期検出部153からの同期信号Snと、第2軸エンコーダ172からの第2角度検出信号En2と、に基づき、回転ステージ10の回転を開始させる。以降、回転ステージ10は、第2軸回転制御部422による制御下において回転を続ける。
【0140】
続いて、ステップS126において、制御部140は、発光制御部403により、光源3に発光制御信号Dr1を出力することによって、光源3に光L0を発光させる。
【0141】
続いて、ステップS127において、制御部140は、受光部基板114から出力される5つの第2信号Uを入力する。
【0142】
続いて、ステップS128において、制御部140は、距離情報取得部404により、光源3により光L0が発せられた照射信号Mを発光制御部403から入力し、照射信号Mから照射時刻t0を取得する。また制御部140は、距離情報取得部404により、受光部基板114から入力した5つの第2信号Uから5つの第1の時刻t1を取得する。距離情報取得部404は、照射時刻t0と第1の時刻t1を用いて5つの第1時間差Δtを演算により取得する。
【0143】
続いて、ステップS129において、制御部140は、距離情報取得部404により、5つの第1時間差Δtを用いて上記の式(3)を演算することによって、5つの補正前の距離情報Dbを取得する。
【0144】
続いて、ステップS130において、制御部140は、補正部405により、受光部基板114から入力した5つの第2信号Uに基づいて取得される第1の時刻t1と第2の時刻t2の差分を計算することで、5つの第2時間差τpsを取得する。
【0145】
続いて、ステップS131において、制御部140は、補正部405により、5つの第2時間差τpsのそれぞれに基づき、対応情報408を参照して、第1時間差Δtに基づいて得られる5つの距離情報Dbそれぞれの測定誤差ΔLを取得する。
【0146】
続いて、ステップS132において、制御部140は、補正部405により、5つの測定誤差ΔLを、対応する距離情報Dbから引き算することで、補正後の5つの距離情報Dtを取得する。
【0147】
なお、ステップS128およびステップS129の処理と、ステップS130およびステップS131の処理は、適宜順番を変更してもよい。また、ステップS128およびステップS129の処理と、ステップS130およびステップS131の処理が、並行に行われてもよい。
【0148】
続いて、ステップS133において、制御部140は、出力部407により、補正部405により取得された補正後の距離情報Dtを外部装置300に出力する。
【0149】
続いて、ステップS134において、制御部140は、停止制御部423により、同期検出部153からの同期信号Snが出力されない期間が所定の期間閾値以下であるか否かを判定する。
【0150】
ステップS134において、期間閾値以下ではないと判定された場合には(ステップS134、NO)、制御部140は、ステップS136に処理を移行する。一方、期間閾値以下であると判定された場合には(ステップS134、YES)、制御部140は、ステップS135において、測距装置100による測距を終了するか否かを判定する。例えば、制御部140は、測距装置100の操作部を用いた操作者の操作入力に基づき測距を終了するか否かを判定できる。
【0151】
ステップS135において、終了しないと判定した場合には(ステップS135、NO)、制御部140は、ステップS126以降の処理を再度行う。一方、終了すると判定した場合には(ステップS135、YES)、制御部140は、ステップS136において、第2軸回転制御部422により回転ステージ10の回転を停止させるとともに、発光制御部403により光源3の発光を停止させる。
【0152】
続いて、ステップS137において、制御部140は、第1軸回転制御部421により、給電部155から第1軸モータ151への給電を停止させることにより、第1軸モータ151に回転を停止させる。第1軸モータ151は、給電部155による給電停止に応答して回転を停止し、回転反射体5の回転を停止させる。
【0153】
以上のようにして、制御部140は、測距装置100を制御し、測距処理を行うことができる。
【0154】
<測定データ例>
図13は、第2時間差τpsと測距装置100による物体までの距離の測定誤差ΔLとの関係の一例を示す図である。図13に示す第2時間差τpsと測距装置100による距離の測定誤差ΔLとの関係は、図11で示した対応情報408の一例に対応する。
【0155】
本実施形態では、対応情報408は、測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係を表す数式を含んでもよい。また本実施形態では、上記数式は、第2時間差τpsの予め定められた複数の範囲ごとで異なってもよい。また本実施形態では、上記数式は、対数関数を含んでもよい。
【0156】
図13において、範囲Ra1は、第2時間差τps0以上第2時間差τps1未満の範囲を表している。範囲Ra2は、第2時間差τps1以上第2時間差τps2未満の範囲を表している。対応情報4081は、範囲Ra1における第2時間差τpsと測定誤差ΔLとの関係に関する情報である。対応情報4082は、範囲Ra2における第2時間差τpsと測定誤差ΔLとの関係に関する情報である。範囲Ra1および範囲Ra2からなる2つの範囲は、第2時間差τpsの予め定められた複数の範囲の一例である。対応情報4081および対応情報4082は、第2時間差τpsの予め定められた複数の範囲ごとで異なる対応情報の一例である。但し、上記の複数の範囲は2つに限らず、3以上であってもよい。対応情報408の数も2つに限らず、複数の範囲の数に応じて増減可能である。
【0157】
近似グラフAp1は、測定誤差ΔL11を対数関数で近似した数式に対応するグラフである。近似グラフAp2は、測定誤差ΔL12を対数関数で近似した数式に対応するグラフである。
【0158】
近似グラフAp1に対応する数式は、例えば、対数関数を用いた次の式(4)により表すことができる。なお、ここでの対数関数は、自然対数関数である。
ΔL1=-α1×log(τps1)+β1 ・・・(4)
【0159】
近似グラフAp2に対応する数式は、例えば、対数関数を用いた次の式(5)により表すことができる。なお、ここでの対数関数は、自然対数関数である
ΔL2=-α2×log(τps2)+β2 ・・・(5)
【0160】
図11に示した補正部405は、第2時間差τpsが範囲Ra1内にある場合には、式(4)に第2時間差τps1を代入し、式(4)を計算することで測定誤差ΔL1を取得する。補正部405は、距離情報Dbから測定誤差ΔL1を引き算することで、補正後の距離情報Dtを取得できる。また、補正部405は、第2時間差τpsが範囲Ra2内にある場合には、式(5)に第2時間差τps2を代入し、式(5)を計算することで測定誤差ΔL2を取得する。補正部405は、距離情報Dbから測定誤差ΔL2を引き算することで、補正後の距離情報Dtを取得できる。
【0161】
対応情報408が測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係を表す数式を含むと、測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係を表す全てのデータ(例えば図13に示すグラフにおける全プロットに対応するデータ)を格納部406に格納せず、数式のみを格納すればよい。これにより、格納部406における記憶容量を低減することができる。
【0162】
一方で、対応情報408に数式を用いると、第2時間差τpsの範囲の広さに応じて、数式における近似誤差が増大する場合がある。例えば第2時間差τpsの範囲を複数に分けた範囲ごとで、測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係が大きく異なる場合には、第2時間差τpsの範囲全体における測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係を1つの数式で近似すると、近似誤差が大きくなる場合がある。これに対し、本実施形態では、第2時間差τpsの予め定められた複数の範囲ごとで、測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係を表す数式を異ならせる。これにより、本実施形態では、近似誤差を低減し、測距装置100による測定誤差を低減することができる。
【0163】
また、対応情報408が数式を含む場合、多項式を用いると係数の数が多くなるため、格納部406における記憶容量が増大したり、数式による測定誤差ΔLの演算処理の負荷が増大したりする場合がある。一方、項数の少ない数式を用いると近似誤差が大きくなり、測定誤差が増大する場合がある。これに対し、本実施形態では、測定誤差ΔLと第2時間差τpsとの関係を表す数式に対数関数を用いる。測定誤差ΔLと第2時間差τpsの間には凡そ対数関数で表される関係があるため、項数の少ない対数関数の数式を用いることで、近似誤差を低減できる。特に、第2時間差τpsを分けた複数の範囲ごとで異なる対数関数を用いると、近似誤差を低減できるため、より好適である。
【0164】
図14は、戻り光の光強度に応じた測定誤差Δの一例を示す図である。図14は、測定誤差Δの実測値を示している。図14において、測定誤差ΔL11、測定誤差ΔL12および測定誤差ΔL13は、戻り光の光強度に応じた測定誤差ΔLを示している。測定誤差ΔL12における戻り光の光強度は、測定誤差ΔL11における戻り光の光強度よりも小さい。測定誤差ΔL13における戻り光の光強度は、測定誤差ΔL12における戻り光の光強度よりも小さい。図14に示すように、戻り光の光強度が小さいほど、測定誤差ΔLは大きくなる。また、測定される距離Lが長くなるほど、測定誤差ΔLは大きくなる。図14に示す例では、測定誤差ΔL11、測定誤差ΔL12および測定誤差ΔL13とも、所定の公差Toの範囲を超えている。
【0165】
図15は、測距装置100による測定誤差ΔLの補正結果の一例を示す図である。図15は、測定誤差Δの実測値を示している。図15において、測定誤差ΔL21、測定誤差ΔL22および測定誤差ΔL23は、戻り光の光強度に応じた測定誤差ΔLを示している。測定誤差ΔL22における戻り光の光強度は、測定誤差ΔL21における戻り光の光強度よりも小さい。測定誤差ΔL23における戻り光の光強度は、測定誤差ΔL22における戻り光の光強度よりも小さい。また、測定誤差ΔL21における戻り光の光強度は、図14における測定誤差ΔL11における戻り光の光強度とほぼ等しい。測定誤差ΔL22における戻り光の光強度は、図14における測定誤差ΔL12における戻り光の光強度とほぼ等しい。測定誤差ΔL23における戻り光の光強度は、図14における測定誤差ΔL13における戻り光の光強度とほぼ等しい。
【0166】
図15に示すように、戻り光の光強度にほぼ依存せず、また測定される距離Lの長さにほぼ依存せず、測定誤差ΔLが補正されて小さくなっている。図15に示す例では、測定誤差ΔL21、測定誤差ΔL22および測定誤差ΔL23とも、所定の公差Toの範囲内に収まっている。
【0167】
以上のように、測距装置100は、測距誤差ΔLを低減し、測距を行うことができる。換言すると、本実施形態では、測距精度に優れた測距装置100を提供することができる。
【0168】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形または変更が可能である。
【0169】
測距装置100は、光分割部材41により分割された5つの光L1を必ずしも用いなくてもよく、分割されていない1つの光を照射する構成においても、上述した作用効果とほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0170】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0171】
実施形態に係る測距装置および測距システムは、サービスロボットに限らず、自動車、飛行体等の移動体に搭載され、移動体の周囲に存在する物体を認識する用途等において使用可能である。
【0172】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 光を照射する照射部と、前記照射部からの光が物体により反射または散乱された光である戻り光を受光し、前記戻り光の光強度に応じた第1信号を出力する受光部と、前記受光部からの前記第1信号に所定の処理を実行した後の第2信号を出力する処理回路と、前記第1信号および前記第2信号の少なくとも一方から得られる第1時間差と第2時間差とに基づいて、前記物体までの距離に関する情報を出力する制御部と、を有し、前記第1時間差は、前記第2信号の立上りにおいて前記第2信号の強度が閾値に到達する第1の時刻と、前記照射部による前記光の照射時刻と、の時間差であり、前記第2時間差は、前記第1の時刻と、前記第2信号の立下りにおいて前記第2信号の強度が前記閾値に到達する第2の時刻と、の時間差である、測距装置である。
<2> 前記制御部は、前記戻り光の光強度の差に応じた前記第1時間差に基づく測距値の差を、前記第2時間差を用いて補正することにより得られた前記物体までの距離に関する情報を出力する、前記<1>に記載の測距装置である。
<3> 前記制御部は、前記処理回路の過負荷回復時間に基づき、前記第2時間差に関する情報を取得する、前記<1>または前記<2>に記載の測距装置である。
<4> 前記制御部は、前記第1時間差に基づいて得られる前記物体までの距離の測定誤差と、前記第2時間差と、の関係に関する予め定められた対応情報に基づいて、前記物体までの距離の測定誤差を補正する、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の測距装置である。
<5> 前記対応情報は、前記物体までの距離の測定誤差と、前記第2時間差と、の関係を表す数式を含む、前記<4>に記載の測距装置である。
<6> 前記数式は、前記第2時間差の予め定められた複数の範囲ごとで異なる、前記<5>に記載の測距装置である。
<7> 前記数式は、対数関数を含む、前記<6>に記載の測距装置である。
【符号の説明】
【0173】
1…台部、2…保持部、3…光源、4…第1レンズ、5…回転反射体、6…穴あきミラー、7…第2レンズ、8…5つの受光部、81、82、83、84、85…受光部、9…イケール、10…回転ステージ、10a…回転部、10b…固定部、11…結合部材、21…天井パネル、22…背面パネル、31…発光部ホルダ、40…第1レンズホルダ、41…光分割部材、51…光反射面、61…貫通孔、62…ミラー面、63…支持部材、71…第2レンズホルダ、90…第1方向、91…基板、100…測距装置、101…載置面、102…ベアリング、103…マグネット、104…モータコア、110…受発光部、111…発光部基板、112…発光ブロック、113…受光ブロック、114…受光部基板、115…PLD、120…照射部、130…出射窓、140…制御部、141…CPU、142…Digipot、143…FPGA、144…電力生成回路、145…Wirwless Tx、146…回転角検出回路、147…メモリ、301…POWER I/F、401…可変部、402…回転制御部、403…発光制御部、404…距離情報取得部、405…補正部、406…格納部、407…出力部、408…対応情報、411…処理回路、412…温度センサ、421…第1軸回転制御部、422…第2軸回転制御部、423…停止制御部、431…TDCコントローラ、441…DCDCブーストコンバータ、442…Digipot、150…駆動制御部、151…第1軸モータ、152…第2軸モータ、153…同期検出部、155…給電部、163…第1軸ドライバ基板、172…第2軸エンコーダ、173…第2軸ドライバ基板、200…物体、300…外部装置、531…第1軸エンコーダ、532…周期光発光部、532a…発光基板、533…周期光受光部、533a…受光基板、551…発電コイル、552…給電コイル、553…Wireless、811…T/Iアンプ、812…ゲインアンプ、813…コンパレータ、Rx、A1…第1軸、A11…第1軸回転方向、A2…第2軸、A21…第2軸回転方向、L0…光、L1…5つの光、L11、L12、L13、L14、L15…分割光、L2…走査光、R…戻り光、Dr1…発光制御信号、Dr2…第2軸制御信号、Ct…測距制御信号、Db…補正前の距離情報、Dt…補正後の距離情報、G1~G5…グラフ、M…照射信号、S…第1信号、U…第2信号、Sn…同期信号、St…給電制御信号、En1…第1角度検出信号、En2…第2角度検出信号、Op…パルス光、t0…照射時刻、t1、t3…第1の時刻、t2、t4…第2の時刻、th…閾値、Δt…第1時間差、τps…第2時間差、ΔL…測定誤差、δt…差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15