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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095164
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ユニットの取付構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
F02M25/08 311H
F02M25/08 311B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212246
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 珠未
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA39
3G144DA04
3G144GA24
(57)【要約】
【課題】蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造において、ユニットをケース部に組み付ける際の作業性を向上できるようにする。
【解決手段】本開示の一態様は、蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造である。ユニットの取付構造は、ケース部における開口部、一対のスリット、及び第1係合部と、ユニットにおける凸部、及び第2係合部と、を備える。第1係合部は、一対のスリットの間に配置される。第2係合部は、対向面にて第1係合部と係合可能に構成される。ユニットのケース部への挿入方向に沿う軸を回転軸とし、該回転軸周りの方向を周方向として、一対のスリット及び凸部の少なくとも一方は、周方向に沿うように構成された面である傾斜面、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造であって、
ケース部と、前記ケース部内に装着されるユニットとを備え、
前記ケース部は、
底部とは反対側の端面にて開口するように構成された開口部と、
前記端面から前記底部側に向かって延びる一対のスリットと、
前記一対のスリットの間に配置された第1係合部と、
を備え、
前記ユニットは、
当該ユニットの外周面のうちの前記一対のスリットに対向する外周面を対向面として、
前記対向面から突出するように構成された凸部と、
前記対向面にて前記第1係合部と係合可能に構成された第2係合部と、
を備え、
前記ユニットの前記ケース部への挿入方向に沿う軸を回転軸とし、該回転軸周りの方向を周方向として、
前記一対のスリット及び前記凸部の少なくとも1つは、前記周方向に沿うように構成された面である傾斜面、
を備えるユニットの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のユニットの取付構造であって、
前記ユニットが前記ケース部内に装着された際に、前記ケース部における前記スリットが設けられた内面と前記対向面とが平行な状態を正規状態とし、前記正規状態から前記ユニットが前記周方向に回転し、前記凸部が前記スリットに嵌った状態を嵌合状態として、
前記傾斜面は、前記スリットにおいて、前記凸部が前記嵌合状態から前記正規状態に遷移する際に通過する領域に設けられる
ユニットの取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載のユニットの取付構造であって、
前記ケース部は、
前記底部側から前記開口側に向けて延び、前記ケース部の内面から突出するように構成された突出部、をさらに備える
ユニットの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のユニットの取付構造であって、
前記突出部における前記内面からの突出量は、前記凸部における前記外周面からの突出量よりも小さく設定されている
ユニットの取付構造。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のユニットの取付構造であって、
前記突出部は、前記開口部側に向かうにつれて前記内面からの突出量が小さくなる
ように構成されたユニットの取付構造。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のユニットの取付構造であって、
前記ユニットが前記ケース部内に装着された際に、前記対向面と直交する方向から前記凸部及び前記スリットを見たときに、前記凸部と前記傾斜面とは、少なくとも一部が重ならないように配置される
ユニットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、上記のユニットの取付構造として、スナップフィット構造を採用した構成が開示されている。このスナップフィット構造では、ユニットが装着されるケース部に、スリット及び被係合部が形成され、ユニットに、被係合部と係合する係合部が備えられる。また、ユニットには、ケース部に対するぐらつき(いわゆるガタ)を抑制するための凸部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-106712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、ユニットをケース部に組み付ける際に、ユニットがケース部への挿入方向に対して回転した状態になると、ユニットの凸部がケース部のスリットに誤って嵌り込み、抜けにくくなる。つまり、ユニットをケース部に組み付ける際の作業性が悪いという問題があった。
【0005】
本開示の一側面は、蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造において、ユニットをケース部に組み付ける際の作業性を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造である。ユニットの取付構造は、ケース部と、ユニットとを含む。ユニットは、ケース部内に装着される。ケース部は、開口部と、一対のスリットと、第1係合部と、を備える。開口部は、底部とは反対側の端面にて開口するように構成される。一対のスリットは、端面から底部側に向かって延びる。第1係合部は、一対のスリットの間に配置される。ユニットは、当該ユニットの外周面のうちの一対のスリットに対向する外周面を対向面として、凸部と、第2係合部と、を備える。凸部は、対向面から突出するように構成される。第2係合部は、対向面にて第1係合部と係合可能に構成される。ユニットのケース部への挿入方向に沿う軸を回転軸とし、該回転軸周りの方向を周方向として、一対のスリット及び凸部の少なくとも一方は、周方向に沿うように構成された面である傾斜面、を備える。
【0007】
このような構成によれば、ユニットをケース部に組み付ける際に、凸部がスリットに誤って嵌り込んだとしても、傾斜面が凸部とスリットとの引っ掛かりを解除するように機能するので、凸部がスリットから抜けやすくなる。よって、ユニットをケース部に組み付ける際の作業性を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様では、傾斜面は、スリットにおいて、凸部が嵌合状態から正規状態に遷移する際に通過する領域に設けられてもよい。なお、ユニットがケース部内に装着された際に、ケース部におけるスリットが設けられた内面と対向面とが平行な状態を正規状態とし、正規状態からユニットが周方向に回転し、凸部がスリットに嵌った状態を嵌合状態とする。
【0009】
このような構成によれば、スリットにおいて凸部が嵌合状態から正規状態に遷移する際に通過する領域に傾斜面が設けられるので、凸部がスリットから抜けやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、ケース部は、底部側から開口側に向けて延び、ケース部の内面から突出するように構成された突出部、をさらに備えてもよい。
このような構成によれば、突出部がユニットの回転を抑制するので、ユニットのケース部に対するがたつきを抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、突出部における内面からの突出量は、凸部における外周面からの突出量よりも小さく設定されていてもよい。
このような構成によれば、突出部の突出量が凸部の突出量よりも小さいので、突出部がユニットをケース部に挿入する際の作業性に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0012】
本開示の一態様では、突出部は、開口部側に向かうにつれて内面からの突出量が小さくなるように構成されてもよい。
このような構成によれば、突出部が開口部側に向かうにつれて内面からの突出量が小さくなるので、ユニットをケース部に挿入する際に、ユニットの端部が突出部に引っ掛かりにくくすることができる。
【0013】
本開示の一態様では、ユニットがケース部内に装着された際に、対向面と直交する方向から凸部及びスリットを見たときに、凸部と傾斜面とは、少なくとも一部が重ならないように配置されてもよい。
【0014】
このような構成によれば、ユニットがケース部内に装着された際(すなわち正規状態のとき)に、凸部が傾斜面に嵌り込みにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の蒸発燃料処理装置を示す斜視図である。
図2】ユニットを取り外した状態の蒸発燃料処理装置を示す斜視図である。
図3】ユニット及び継手部を取り外した状態の蒸発燃料処理装置を示す斜視図である。
図4図4Aはユニットとユニットケースとを組み付けた状態の斜視図、図4Bはユニットケースの斜視図、図4Cはユニットの斜視図である。
図5図5Aは左回転時におけるユニットとユニットケースとの位置ずれ例を示す平面図、図5Bは右回転時におけるユニットとユニットケースとの位置ずれ例を示す平面図である。
図6】ユニットとユニットケースとの位置ずれ例を示す拡大図である。
図7】傾斜部及び凸部の位置を示すVII-VII断面図である。
図8】傾斜部及び凸部の位置を示すVIII-VIII断面図である。
図9】突出部付近の拡大図である。
図10】変形例の凸部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一態様の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.概略構成]
図1図3に示す蒸発燃料処理装置1は、周知のキャニスタとしての機能を備える。すなわち、車両の燃料タンク(図示省略)で発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する機能を備える。蒸発燃料処理装置1は、本体ケース2と、ユニットケース30(本開示のケース部の一例に相当)と、継手部50と、ユニット60と、を備える。ユニット60はユニットケース30に取り付けられる。なお、図2に示す蒸発燃料処理装置1は、ユニット60をユニットケース30から取り外した状態を示し、図3に示す蒸発燃料処理装置1は、ユニット60、ユニットケース30、及び継手部50を、本体ケース2から取り外した状態を示す。
【0017】
本体ケース2は、内部空間を形成するケースである。本体ケース2は、例えば、合成樹脂製のケースである。なお、本体ケース2の材質はこれに限定されるものではない。本体ケース2の内部には、活性炭等から構成される吸着材(図示省略)が配置される。
【0018】
本体ケース2は、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23と、を備える。これらのポートは同一の方向を向くように、本体ケース2における同じ側に配置されている。以後、本体ケース2におけるチャージポート21、パージポート22、及び、大気ポート23が設けられた側を、ポート側と記載する。また、本体ケース2は、ポート側の反対側に開口26を有している。当該開口26は、蓋部材27により閉鎖されている。
【0019】
チャージポート21は、配管によって車両の燃料タンクに接続される。チャージポート21は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を蒸発燃料処理装置1内に取り込むように構成されている。
【0020】
パージポート22は、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管(図示省略)に接続される。パージポート22は、蒸発燃料処理装置1内の蒸発燃料を蒸発燃料処理装置1から排出し、エンジンに供給するように構成されている。
【0021】
大気ポート23は、配管を介して車両の給油口(図示省略)に接続され、大気に開放される。大気ポート23は、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート23は、外部空気(つまりパージ空気)を取り込むことで、蒸発燃料処理装置1が吸着した蒸発燃料を脱離(つまりパージ)させる。
【0022】
ユニットケース30は、大気ポート23に対して継手部50を介して気密を確保しつつ接続されている。継手部50は、大気ポート23とユニットケース30とを接続する配管である。
【0023】
ユニットケース30は、図2に示すように、有底筒状に構成される。ユニットケース30は、略直方体形状の内周面30Aを備え、継手部50側を底部41とする内部空間が形成されている。内周面30Aは、装着されるユニット60の外周面に沿う形状を備えている。
【0024】
底部41には、継手部50と連通する孔部42が設けられている。ユニットケース30には、継手部50とは反対側の端面に、開口部31が形成されている。開口部31からは、ユニット60が挿入され、ユニットケース30に対してユニット60が正しく装着された状態を表す正規状態では、ユニット60と孔部42とが隙間なく密接して配置される。
【0025】
ユニット60は、挿入方向に平行な複数の外周面を有する多面構造に構成される。本実施形態のユニット60は、概ね4つの外周面を有する略4面構造に構成される。ユニット60は、例えば、ELCM(すなわち、Evaporative Leak Check Module)として構成される。ELCMは、蒸発燃料処理装置1の漏れ検査を行うためのモジュールである。ELCMは、少なくとも本体ケース2の内部を負圧にするためのポンプを備える。
【0026】
蒸発燃料処理装置1の漏れ検査では、エンジンの停止中における予め定められたタイミングで、ユニット60に備えられたポンプが駆動されて、本体ケース2の内部の空気が大気中に排出される。これにより、本体ケース2の内部が負圧になる。そして、このときの本体ケース2の内部の圧力変化を所定時間監視することで、蒸発燃料処理装置1の漏れの有無が確認される。
【0027】
なお、ユニット60は、ELCMに限られない。例えば、本体ケース2内の吸着材とは別に、同種又は異なる吸着材をユニット60の内部に備えるサブキャニスタとして構成されてもよい。或いはその他のユニットとして構成されてもよい。
【0028】
[1-2.ユニットの取付構造]
ユニット60は、図4A以下に示すユニットの取付構造5を用いてユニットケース30に装着される。取付構造5は、スナップフィット構造でユニットケース30とユニット60とを結合する。すなわち、取付構造5は、ユニットケース30における一対のスリット32A,32B、及び第1係合部34A,34Bと、ユニット60における第2係合部64A,64Bと、を備える。第1係合部34A,34B及び第2係合部64A,64Bは、互いに係合可能に構成される。取付構造5は、ユニットケース30における開口部31及びユニット60における凸部62A~62Cをさらに備えてもよい。
【0029】
開口部31は、図4Bに示すように、ユニットケース30において、底部41とは反対側の端面にて開口するように構成された部位である。
一対のスリット32A,32Bは、それぞれ一対のスリット32A,32Bを構成する。つまり、一対のスリット32Aは第1のスリットと第2のスリットとを備え、同様に、一対のスリット32Bは第1のスリットと第2のスリットとを備える。一対のスリット32Aが備える第1のスリット及び第2のスリットと、一対のスリット32Bが備える第1のスリット及び第2のスリットとは、別途設けられる異なるスリットである。以下では、「一対のスリット32A,32Bのうちの第1のスリット又は第2のスリット」を表す場合、及び、「一対のスリット32A,32Bを構成する第1のスリット及び第2のスリットのうちの少なくとも1つ」を表す場合に、単にスリット32A,32Bと表記する。
【0030】
一対のスリット32Aは、ユニットケース30の底部41を取り囲んで立設された外壁のうちの第1外壁36Aに形成される。また、一対のスリット32Bは、第1外壁36Aと対向する第2外壁36Bに形成される。それぞれのスリット32A,32Bは、開口部31側の端部から底部41側に向かって延びるように構成される。
【0031】
第1係合部34A,34Bは、第1外壁36A及び第2外壁36Bにおいて、それぞれの一対のスリット32A,32Bの間(すなわち、第1のスリット及び第2のスリットの間)に配置される。第1係合部34A,34Bは、内周面30A側から外側に向けて凹む凹部(ここでは孔)として形成される。
【0032】
ユニット60における第2係合部64A,64Bは、図4C図5A、及び図5Bに示すように、対向面61A,61Bにて第1係合部34A,34Bと係合可能に構成される。なお、対向面61A,61Bは、ユニット60がユニットケース30に装着された状態で、ユニット60の外周面60Aのうちのスリット32A,32Bに対向する外周面、換言すれば、外壁36A,36Bに対向する外周面である。第2係合部64A,64Bは、第1係合部34A,34Bに係合可能な凸部として構成される。
【0033】
凸部62A~62Cは、第2係合部64A,64Bとは別の構成であり、対向面61から突出するように構成された部位である。
このような構成によって、ユニット60をユニットケース30に挿入すると、外壁36A,36Bにおける一対のスリット32A,32Bの間の部位が第2係合部64A,64Bに押されてユニットケース30の外側に向けて撓む。そして、第2係合部64A,64Bが第1係合部34A,34Bに嵌り込むと、該部位の撓みが解消され、第1係合部34A,34Bと第2係合部64A,64Bとの係合状態が維持される。つまり、ユニット60がユニットケース30に対して固定される。
【0034】
このとき、ユニット60の対向面61A,61Bと、ユニットケース30の外壁36A,36Bとは、互いに平行な状態である。この状態を正規状態と呼ぶ。
ここで、図4A及び図5Bに示すように、ユニット60のユニットケース30への挿入方向に沿う軸を回転軸Pとし、回転軸P周りの方向を周方向Rとする。ユニット60は、図5A図5Bに示すように、周方向に回転した状態でユニットケース30に挿入されると、図5A図6に示すように、凸部62A~62Cがスリット32A,32Bに嵌り込んで抜けにくくなることがある。この状態を嵌合状態と呼ぶ。なお、嵌合状態に至らないとしても、ユニット60が正規状態よりも周方向Rに回転した状態を非正規状態と呼ぶ。
【0035】
また、本実施形態の構成の場合、凸部62A~62Cの高さ(すなわち対向面61A,61Bからの突出量)は、凸部62Aの高さ>凸部62Bの高さ、凸部62Cの高さ>凸部62Bの高さ、となるように構成される。よって、凸部62A~62Cのうち、凸部62A及び62Cがスリット32A,32Bに引っ掛かりやすい。
【0036】
ユニット60とユニットケース30との間には所定のクリアランスが設けられている。ユニット60は、ユニット60の挿入方向におけるユニットケース30の中心付近の領域(中心領域O)を回転軸Pとして、ユニットケース30に対して周方向Rに沿ってクリアランスの大きさに応じて回転した状態になりうる。なお、中心領域Oは、ユニット60が回転する際の回転軸Pが存在し得る領域を示し、中心領域Oの範囲は、ユニット60の形状及びクリアランスの大きさによって決まる。図5A図5Bに示す例では、ユニット60を挿入方向に見て、中心領域Oは、ユニットケース30の図心(例えば対角線の交点)付近の領域である。
【0037】
ここで、嵌合状態及び非正規状態では、正規状態に対してユニット60が周方向Rに回転し、ユニット60の対向面61A,61Bと、ユニットケース30の外壁36A,36Bとが、互いに非平行な状態である。
【0038】
本実施形態では、嵌合状態及び非正規状態を解消し、正規状態に遷移させるための工夫が施されている。
まず、図6等に示すように、スリット32Aには傾斜面33を備える。傾斜面33は、周方向に沿うように構成された面である。傾斜面33は、凸部62A~62Cが嵌り込む可能性が高いスリット32A,32Bのみに設けられていればよく、本実施形態では1つのスリット32Aのみに平面である傾斜面33が配置される。なお、傾斜面33は平面に限らず、曲面であってもよい。
【0039】
また、傾斜面33は、スリット32A,32Bにおいて、凸部62A~62Cが嵌合状態から正規状態に遷移する際に通過する領域に設けられる。例えば、図5Aの例では、ユニット60が正規状態から左回転した結果、凸部62Aがスリット32Aに嵌り込んでいる。このユニット60を正規状態に遷移させるには、ユニット60を右回転させる必要があり、この際、凸部62Aは左側に移動する。このため、凸部62Aが通過する領域であるスリット32Aの左側に、傾斜面33が備えられる。この構成によれば、傾斜面33によって凸部62Aのスリット32Aへの引っ掛かりが抑制されるので、凸部62Aがスリット32Aから抜けやすくすることができる。
【0040】
また、ユニットケース30は、突出部36をさらに備える。突出部36は、底部41側から開口部31側に向けて延び、換言すれば、開口部31側から底部41側に向けて延び、ユニットケース30の内周面30Aから突出するように構成される。また、突出部36は、ユニットケース30の内周面30Aのうちの、非正規状態のときにユニット60の外周面60Aと衝突しうる部位に備えられる。ただし、本実施形態では、突出部36が1つのみ備えられる例を図示する。なお、突出部36は、開口部31に到達する位置まで延びている必要はない。
【0041】
ここで、例えば、ユニット60が正規状態よりも左回転することを想定した場合、外周面60Aと衝突しうる部位とは、図5Aに示す領域38A,38B,38C,38Dの4つの領域である。領域38A~38Dは、ユニットケース30の内周面30Aにおける4つの角部が周方向Rに沿ってやや左回転したときの領域である。また例えば、ユニット60が正規状態よりも右回転することを想定した場合、外周面60Aと衝突しうる部位とは、図5Bに示す領域38E,38F,38G,38Hの4つの領域である。領域38E~38Hは、ユニットケース30の内周面30Aにおける4つの角部が周方向Rに沿ってやや右回転したときの領域である。突出部36は、これらの領域の全部又は一部に備えられうる。
【0042】
また、凸部62A~62Cとスリット32A,32Bとは、所定の方向から見たときに、少なくとも一部が重ならないように配置される。所定の方向とは、例えば図7に示すように、スリット32Aに沿う断面から凸部62A及びスリット32Aを見る方向、或いは、図8に示すように、回転軸Pに沿って対向面61と直交する方向から凸部62A及びスリット32Aを見る方向である。
【0043】
傾斜面33が配置された領域LAと、凸部62Aが配置された領域LBとは、少なくとも一部が重複しないように配置されていればよい。図7に示すように、領域LAと領域LBとは、一部が重複するが一部が重複しないように構成される。また、図8に示すように、傾斜面33が配置された領域LCと、凸部62Aが配置された領域LDとは、全部が重複しないように構成される。
【0044】
また、突出部36における内周面30Aからの突出量H2(図9参照)は、凸部62A~62Cにおける外周面60Aからの突出量H1(図6参照)よりも小さく設定されている。また、突出部36は、図9に示すように、開口部31側に向かうにつれて内周面30Aからの突出量H2が小さくなるようなテーパ面37を備える。ユニット60をユニットケース30に挿入する際に、ユニット60の端部が突出部36に引っ掛かりにくくすることで挿入性を向上させるためである。
【0045】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0046】
(1a)上記の取付構造5において、スリット32A,32Bは、周方向Rに沿うように構成された面である傾斜面33を備える。
このような構成によれば、ユニット60をユニットケース30に組み付ける際に、凸部62A~62Cがスリット32A,32Bに誤って嵌り込んだとしても、傾斜面33が凸部62A~62Cとスリット32A,32Bとの引っ掛かりを解除するように機能する。このため、凸部62A~62Cがスリット32A,32Bから抜けやすくなる。よって、ユニット60をユニットケース30に組み付ける際の作業性を向上させることができる。
【0047】
(1b)本開示の一態様では、傾斜面33は、スリット32A,32Bにおいて、凸部62A~62Cが嵌合状態から正規状態に遷移する際に通過する領域に設けられる。
このような構成によれば、スリット32A,32Bにおいて凸部62A~62Cが嵌合状態から正規状態に遷移する際に通過する領域に傾斜面33が設けられるので、凸部62A~62Cがスリット32A,32Bから抜けやすくすることができる。
【0048】
(1c)本開示の一態様では、ユニットケース30は、底部41側から開口部31側に向けて延び、ユニットケース30の内面から突出するように構成された突出部36、をさらに備える。
このような構成によれば、突出部36がユニットの回転を抑制するので、ユニットのケース部に対するがたつきを抑制することができる。
【0049】
(1d)本開示の一態様では、ユニット60は、挿入方向に平行な複数の外周面を有する多面構造に構成され、ユニットケース30は、複数の外周面に沿う内周面を備えてもよい。突出部36は、内周面のうちの、非正規状態のときにユニット60の外周面と衝突しうる部位に備えられる。
【0050】
このような構成によれば、突出部36は、内周面のうちの、非正規状態のときにユニット60外周面と衝突しうる部位に備えられるので、より確実に、ユニット60のユニットケース30に対するがたつきを抑制することができる。
【0051】
(1e)本開示の一態様では、突出部36における内面からの突出量H2は、凸部62A~62Cにおける外周面からの突出量H1よりも小さく設定されている。
このような構成によれば、突出部36の突出量H2が凸部62A~62Cの突出量H1よりも小さいので、突出部36がユニット60をユニットケース30に挿入する際の作業性に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0052】
(1f)本開示の一態様では、突出部36は、開口部31側に向かうにつれて内面からの突出量が小さくなるように構成されてもよい。
このような構成によれば、突出部36が開口部31側に向かうにつれて内面からの突出量が小さくなるので、ユニット60をユニットケース30に挿入する際に、ユニット60の端部が突出部36に引っ掛かりにくくすることができる。
【0053】
(1g)本開示の一態様では、ユニット60がユニットケース30に装着され、対向面61A,61Bと直交する方向から凸部62A~62C及びスリット32A,32Bを見たときに、凸部62A~62Cと傾斜面33とは、少なくとも一部が重ならないように配置される。
【0054】
このような構成によれば、ユニット60がユニットケース30内に装着された際(すなわち正規状態のとき)に、凸部62A~62Cが傾斜面33に嵌り込みにくくすることができる。
【0055】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0056】
(2a)上記実施形態では、ユニットケース30のスリット32Aが傾斜面33を備えたが、これに限定されるものではない。傾斜面33は、一対のスリット32A,32B及び凸部62A~62Cの少なくとも1つに備えられてもよい。なお、「一対のスリット及び凸部の少なくとも1つ」とは、「第1のスリット、第2のスリット、及び凸部、のうちの少なくとも1つ」を意味する。つまり、傾斜面33は、第1のスリット、第2のスリット、及び凸部62A~62Cの少なくとも1つに備えられてもよい。
【0057】
例えば、傾斜面33に換えて、或いは、傾斜面33に加えて、図10Aに示すように、ユニット60の凸部62Cの一部が切り欠かれて構成された傾斜面62Dを備えてもよい。また或いは、図10Bに示すように、凸部62Aの一部が切り欠かれて構成された傾斜面62Eを備えてもよい。
【0058】
(2b)上記実施形態では、本体ケース2とユニットケース30とを別体に構成したが、これに限定されるものではない。例えば、本体ケース2の一部がユニットケース30の全部として機能してもよいし、本体ケース2の一部がユニットケース30の一部として機能してもよい。つまり、本体ケース2とユニットケース30とが一体に構成されてもよい。
【0059】
(2c)蒸発燃料処理装置1が備える取付構造5は、1つでも複数でもよい。また、1つの取付構造5が備えるスナップフィット構造(すなわち、一対のスリット32A,32B及び第1係合部34Aと第2係合部64Aとの組み合わせ)は1つでも複数でもよい。
【0060】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、本開示に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0061】
(2e)上述した取付構造5の他、当該取付構造5を構成要素とする蒸発燃料処理装置1、取付構造5を含むシステム、ユニット60のユニットケース30への取付方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0062】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
蒸発燃料処理装置に装着されるユニットの取付構造であって、
ケース部と、前記ケース部内に装着されるユニットとを備え、
前記ケース部は、
底部とは反対側の端面にて開口するように構成された開口部と、
前記端面から前記底部側に向かって延びる一対のスリットと、
前記一対のスリットの間に配置された第1係合部と、
を備え、
前記ユニットは、
当該ユニットの外周面のうちの前記一対のスリットに対向する外周面を対向面として、
前記対向面から突出するように構成された凸部と、
前記対向面にて前記第1係合部と係合可能に構成された第2係合部と、
を備え、
前記ユニットの前記ケース部への挿入方向に沿う軸を回転軸とし、該回転軸周りの方向を周方向として、
前記一対のスリット及び前記凸部の少なくとも一方は、前記周方向に沿うように構成された面である傾斜面、
を備えるユニットの取付構造。
[項目2]
項目1に記載のユニットの取付構造であって、
前記ユニットが前記ケース部内に装着された際に、前記ケース部における前記スリットが設けられた内面と前記対向面とが平行な状態を正規状態とし、前記正規状態から前記ユニットが前記周方向に回転し、前記凸部が前記スリットに嵌った状態を嵌合状態として、
前記傾斜面は、前記スリットにおいて、前記凸部が前記嵌合状態から前記正規状態に遷移する際に通過する領域に設けられる
ユニットの取付構造。
[項目3]
項目1又は項目2に記載のユニットの取付構造であって、
前記ケース部は、
前記底部側から前記開口側に向けて延び、前記ケース部の内面から突出するように構成された突出部、をさらに備える
ユニットの取付構造。
[項目4]
項目3に記載のユニットの取付構造であって、
前記突出部における前記内面からの突出量は、前記凸部における前記外周面からの突出量よりも小さく設定されている
ユニットの取付構造。
[項目5]
項目3又は項目4に記載のユニットの取付構造であって、
前記突出部は、前記開口部側に向かうにつれて前記内面からの突出量が小さくなる
ように構成されたユニットの取付構造。
[項目6]
項目1から項目5までのいずれか1項に記載のユニットの取付構造であって、
前記ユニットが前記ケース部内に装着された際に、前記対向面と直交する方向から前記凸部及び前記スリットを見たときに、前記凸部と前記傾斜面とは、少なくとも一部が重ならないように配置される
ユニットの取付構造。
【符号の説明】
【0063】
1…蒸発燃料処理装置、2…本体ケース、5…取付構造、21…チャージポート、22…パージポート、23…大気ポート、30…ユニットケース、30A…内周面、31…開口部、32A,32B…一対のスリット、33…傾斜面、34A…第1係合部、36…突出部、36A…第1外壁、36B…第2外壁、37…テーパ面、41…底部、42…孔部、50…継手部、60…ユニット、60A…外周面、61A,61B…対向面、62A~62C…凸部、62D,62E…傾斜面、64A…第2係合部、O…中心領域、P…回転軸、R…回転方向。
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10