(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095180
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電子装置及び電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240703BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L23/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212278
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 慎司
(57)【要約】
【課題】ケースの成形性が改善される。
【解決手段】P端子17a~17cは、端子本体部に接する配線部と、端子本体部から少なくとも一部が露出し、配線部から延伸して屈曲する外部接続部と、配線部から延伸して外部接続部に対して反対方向に屈曲する内部接続部とを含む。N端子18a~18cは、配線部に対向配置され、端子本体部に接する配線部と、端子本体部から少なくとも一部が露出し、配線部から延伸し、外部接続部と同方向に屈曲する外端接続部と、配線部から延伸して外端接続部に対して反対方向に屈曲する内部接続部と、を含む。絶縁シートは、配線部の間に配置されている。枠部11は、端子本体部と配線部と絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂部と、
前記第1樹脂部に接する第1中央部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第1中央部から延伸して屈曲する第1外端部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第1中央部から延伸する第1内端部とを含む第1端子と、
前記第1中央部に対向配置され、前記第1樹脂部に接する第2中央部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第2中央部から延伸して前記第1外端部と同方向または反対方向に屈曲する第2外端部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第2中央部から延伸する第2内端部と、を含む第2端子と、
前記第1中央部及び前記第2中央部との間に配置された絶縁シートと、
前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持する第2樹脂部と、
を備えるケース、
を含む電子装置。
【請求項2】
第1樹脂部と、
前記第1樹脂部に接する第1中央部と、前記第1樹脂部から少なくとも一部が露出し、前記第1中央部から延伸して屈曲する第1外端部と、前記第1中央部から延伸して前記第1外端部に対して反対方向に屈曲する第1内端部とを含む第1端子と、
前記第1中央部に対向配置され、前記第1樹脂部に接する第2中央部と、前記第1樹脂部から少なくとも一部が露出し、前記第2中央部から延伸し、前記第1外端部と同方向に屈曲する第2外端部と、前記第2中央部から延伸して前記第2外端部に対して反対方向に屈曲する第2内端部と、を含む第2端子と、
前記第1中央部及び前記第2中央部との間に配置された絶縁シートと、
前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持する第2樹脂部と、
を備えるケース、
を含む電子装置。
【請求項3】
前記第1端子は、平板状を成し、前記第1中央部は、第1方向に延伸する矩形状を成し、前記第2中央部に対向する第1対向面に前記絶縁シートが設けられ、前記第1外端部は、前記第1中央部の一方の長辺の前記第1方向の一端部から前記第1対向面の反対側に屈曲し、前記第1内端部は、前記第1中央部の他方の長辺の前記一端部の反対側の他端部から前記第1対向面側に屈曲し、
前記第2端子は、平板状を成し、前記第2中央部は、前記第1方向に延伸する矩形状を成し、前記第1中央部に対向する第2対向面と前記第1対向面とで前記絶縁シートを挟持し、前記第2外端部は、前記第2中央部の一方の長辺の前記第1方向の反対側の他端部から前記第2対向面側に屈曲し、前記第2内端部は、前記第2中央部の他方の長辺の前記他端部の反対側の一端部から前記第2対向面の反対側に屈曲している、
請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第1樹脂部は、前記第1外端部及び前記第2外端部と前記第1内端部及び前記第2内端部とを露出して、前記第1端子と前記絶縁シートと前記第2端子との全体を封止する、
請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第1樹脂部は、ナットを含むナット成形体と、前記ナット成形体と前記第1端子と前記絶縁シートと前記第2端子とを保持する端子成形体とを有し、
前記ナット成形体は、前記ナットの締結孔を露出して前記ナットを封止し、前記第1端子に含まれる前記第1中央部の前記第1対向面の反対側の第1外面に設けられ、前記締結孔が前記第1外端部及び前記第2外端部に対向し、
前記端子成形体は、前記第1外端部及び前記第2外端部と前記第1内端部及び前記第2内端部とを露出して、前記ナット成形体を収納し、前記第1端子と前記絶縁シートと前記第2端子とを封止する、
請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記第1樹脂部は、平面視で、前記第1内端部及び前記第2内端部の間であって、前記第1端子に含まれる前記第1中央部の前記第1対向面の反対側の第1外面と前記第2端子に含まれる前記第2中央部の前記第2対向面の反対側の第2外面とを前記絶縁シートに向けて押圧するように挟持する挟持部を含む、
請求項3に記載の電子装置。
【請求項7】
前記第1樹脂部は、さらに、ナットを含むナット成形体を含み、
前記ナット成形体は、前記ナットの締結孔を露出して前記ナットを封止し、前記第1端子の前記第1中央部の前記第1外面に設けられ、前記第1外面に対向する背面に前記挟持部が設けられ、前記締結孔が前記第1外端部及び前記第2外端部に対向している、
請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記第1内端部及び前記第2内端部は、平面視で、前記挟持部よりも外側に突出している、
請求項6に記載の電子装置。
【請求項9】
前記第2樹脂部は、平面視で、矩形状の収納領域を取り囲む枠状を成しており、
前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとが前記第2樹脂部の長手方向の辺部に含まれて、前記第1内端部及び前記第2内端部は前記収納領域側に露出されている、
請求項2に記載の電子装置。
【請求項10】
第1樹脂部と、
第1中央部と前記第1中央部から延伸して屈曲する第1外端部と前記第1中央部から延伸して前記第1外端部に対して反対方向に屈曲する第1内端部とを含む第1端子と、
第2中央部と前記第2中央部から延伸し、前記第1外端部と同方向に屈曲する第2外端部と前記第2中央部から延伸して前記第2外端部に対して反対方向に屈曲する第2内端部と、を含む第2端子と、
絶縁シートと、
第2樹脂部と、
を用意する工程と、
前記第1端子の前記第1中央部と前記絶縁シートと前記第2端子の前記第2中央部と重ね合わせる組み立て工程と、
前記第1樹脂部を、前記第1外端部の少なくとも一部及び前記第2外端部の少なくとも一部を露出させて、前記第1中央部及び前記第2中央部に接する第1成形工程と、
前記第2樹脂部により、前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持させてケースを成形する第2成形工程と、
を含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及び電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、封止樹脂で封止される正極配線及び負極配線が封止樹脂から突出しており、さらに、封止樹脂の正極配線及び負極配線の突出口が別の封止樹脂で封止されて、正極配線及び負極配線が別の封止樹脂から突出している(例えば、特許文献1,2を参照)。また、半導体装置は、リードフレームとリードフレームを含み、リードフレームの一端部の端子が外部に突出するケースとを含んでいる。当該ケースは、複数の部品が組み合わさって構成されている(例えば、特許文献3を参照)。また、別の半導体装置は、ブロック状の主端子の上面が筐体から露出されており、上面に外部接続面が表出されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0003】
半導体装置が有する正極及び負極の主電流の端子はそれぞれケースから延伸する端部が逆方向を向いている(例えば、特許文献5,6,7を参照)。また、半導体装置の正極及び負極の端子は絶縁紙を間に挟んでケースの端部から露出している(例えば、特許文献8,9,10,11,12,13,14を参照)。または、半導体装置は、ケース上に、絶縁層が間に積層された正極端子及び負極端子が設けられている(例えば、特許文献15を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-071784号公報
【特許文献2】特開2013-009501号公報
【特許文献3】特開2021-150423号公報
【特許文献4】特開2020-009834号公報
【特許文献5】特開2016-066974号公報
【特許文献6】特開2009-081993号公報
【特許文献7】特開2008-029117号公報
【特許文献8】特開2006-086438号公報
【特許文献9】国際公開第2022/091288号
【特許文献10】特開2021-106235号公報
【特許文献11】特開2022-006876号公報
【特許文献12】国際公開第2019/098368号
【特許文献13】特開2010-157565号公報
【特許文献14】国際公開第2020/035931号
【特許文献15】特開2016-006834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケースの成形性が改善された電子部品及び電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1樹脂部と、前記第1樹脂部に接する第1中央部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第1中央部から延伸して屈曲する第1外端部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第1中央部から延伸する第1内端部とを含む第1端子と、前記第1中央部に対向配置され、前記第1樹脂部に接する第2中央部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第2中央部から延伸して前記第1外端部と同方向または反対方向に屈曲する第2外端部と、前記第1樹脂部から露出し、前記第2中央部から延伸する第2内端部と、を含む第2端子と、前記第1中央部及び前記第2中央部との間に配置された絶縁シートと、前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持する第2樹脂部と、を備えるケース、を含む電子装置を提供する。
【0007】
また、本発明の一観点によれば、第1樹脂部と、前記第1樹脂部に接する第1中央部と、前記第1樹脂部から少なくとも一部が露出し、前記第1中央部から延伸して屈曲する第1外端部と、前記第1中央部から延伸して前記第1外端部に対して反対方向に屈曲する第1内端部とを含む第1端子と、前記第1中央部に対向配置され、前記第1樹脂部に接する第2中央部と、前記第1樹脂部から少なくとも一部が露出し、前記第2中央部から延伸し、前記第1外端部と同方向に屈曲する第2外端部と、前記第2中央部から延伸して前記第2外端部に対して反対方向に屈曲する第2内端部と、を含む第2端子と、前記第1中央部及び前記第2中央部との間に配置された絶縁シートと、前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持する第2樹脂部と、を備えるケース、を含む電子装置を提供する。
【0008】
前記第1端子は、平板状を成し、前記第1中央部は、第1方向に延伸する矩形状を成し、前記第2中央部に対向する第1対向面に前記絶縁シートが設けられ、前記第1外端部は、前記第1中央部の一方の長辺の前記第1方向の一端部から前記第1対向面の反対側に屈曲し、前記第1内端部は、前記第1中央部の他方の長辺の前記一端部の反対側の他端部から前記第1対向面側に屈曲し、前記第2端子は、平板状を成し、前記第2中央部は、前記第1方向に延伸する矩形状を成し、前記第1中央部に対向する第2対向面と前記第1対向面とで前記絶縁シートを挟持し、前記第2外端部は、前記第2中央部の一方の長辺の前記第1方向の反対側の他端部から前記第2対向面側に屈曲し、前記第2内端部は、前記第2中央部の他方の長辺の前記他端部の反対側の一端部から前記第2対向面の反対側に屈曲してよい。
【0009】
前記第1樹脂部は、前記第1外端部及び前記第2外端部と前記第1内端部及び前記第2内端部とを露出して、前記第1端子と前記絶縁シートと前記第2端子との全体を封止してよい。
【0010】
前記第1樹脂部は、ナットを含むナット成形体と、前記ナット成形体と前記第1端子と前記絶縁シートと前記第2端子とを保持する端子成形体とを有し、前記ナット成形体は、前記ナットの締結孔を露出して前記ナットを封止し、前記第1端子に含まれる前記第1中央部の前記第1対向面の反対側の第1外面に設けられ、前記締結孔が前記第1外端部及び前記第2外端部に対向し、前記端子成形体は、前記第1外端部及び前記第2外端部と前記第1内端部及び前記第2内端部とを露出して、前記ナット成形体を収納し、前記第1端子と前記絶縁シートと前記第2端子とを封止してよい。
【0011】
前記第1樹脂部は、平面視で、前記第1内端部及び前記第2内端部の間であって、前記第1端子に含まれる前記第1中央部の前記第1対向面の反対側の第1外面と前記第2端子に含まれる前記第2中央部の前記第2対向面の反対側の第2外面とを前記絶縁シートに向けて押圧するように挟持する挟持部を含んでよい。
【0012】
前記第1樹脂部は、さらに、ナットを含むナット成形体を含み、前記ナット成形体は、前記ナットの締結孔を露出して前記ナットを封止し、前記第1端子の前記第1中央部の前記第1外面に設けられ、前記第1外面に対向する背面に前記挟持部が設けられ、前記締結孔が前記第1外端部及び前記第2外端部に対向してよい。
【0013】
前記第1内端部及び前記第2内端部は、平面視で、前記挟持部よりも外側に突出してよい。
【0014】
前記第2樹脂部は、平面視で、矩形状の収納領域を取り囲む枠状を成しており、前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとが前記第2樹脂部の長手方向の辺部に含まれて、前記第1内端部及び前記第2内端部は前記収納領域側に露出されてよい。
【0015】
また、本発明の一観点によれば、第1樹脂部と、第1中央部と前記第1中央部から延伸して屈曲する第1外端部と前記第1中央部から延伸して前記第1外端部に対して反対方向に屈曲する第1内端部とを含む第1端子と、第2中央部と前記第2中央部から延伸し、前記第1外端部と同方向に屈曲する第2外端部と前記第2中央部から延伸して前記第2外端部に対して反対方向に屈曲する第2内端部と、を含む第2端子と、絶縁シートと、第2樹脂部と、を用意する工程と、前記第1端子の前記第1中央部と前記絶縁シートと前記第2端子の前記第2中央部と重ね合わせる組み立て工程と、前記第1樹脂部を、前記第1外端部の少なくとも一部及び前記第2外端部の少なくとも一部を露出させて、前記第1中央部及び前記第2中央部に接する第1成形工程と、前記第2樹脂部により、前記第1樹脂部と前記第1中央部と前記第2中央部と前記絶縁シートとのうち、少なくとも一部を保持させてケースを成形する第2成形工程と、を含む電子装置の製造方法を提供する。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0017】
上記構成の電子装置及び電子装置の製造方法は、ケースの成形性が改善されて、ケースの製造コストを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態の半導体装置の平面図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施の形態の半導体装置のケースの用意工程を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図である。
【
図7】第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子成形体の成形を示す図である。
【
図8】第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料によるナット成形体の成形を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれる成形体の組み合わせを示す図である。
【
図10】第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれる第2成形工程を示す図である。
【
図11】第2の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料によるナット成形体の成形を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態のケースの用意工程に含まれる成形体の組み合わせを示す図(その1)である。
【
図13】第2の実施の形態のケースの用意工程に含まれる成形体の組み合わせを示す図(その2)である。
【
図14】第2の実施の形態のケースの用意工程に含まれる成形体の組み合わせを示す図(その3)である。
【
図15】第3の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの斜視図である。
【
図16】第3の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図である。
【
図17】第3の実施の形態の端子体に含まれる端子を示す図である。
【
図18】第3の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子ユニットの成形を示す図である。
【
図19】第4の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの斜視図である。
【
図20】第4の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図(その1)である。
【
図21】第4の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図(その2)である。
【
図22】第4の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子ユニットの成形を示す図(その1)である。
【
図23】第4の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子ユニットの成形を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも上記と同様の方向性を意味する。「高位」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の位置を表す。同様に、「低位」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の位置を表す。「おもて面」、「上面」、「上」と「裏面」、「下面」、「下」と「側面」とは、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。また、「略同一」とは、±10%以内の範囲であればよい。また、「垂直」並びに「直交」、「平行」とは、±10°以内の範囲であればよい。また、以下では、電子装置の一例として半導体装置1を挙げて説明する。半導体装置1は電子装置の一例に過ぎず、電子装置は半導体装置1に限らない。
【0020】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の半導体装置について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の平面図である。
図2は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
図3は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの斜視図である。
【0021】
電子装置の一例である半導体装置1は、
図1に示されるように、半導体ユニット2と半導体ユニット2を収納するケース10とを含む。なお、
図1では、ケース10の3つの収納部11a~11cに半導体ユニット2がそれぞれ収納されている場合を例示している。また、半導体ユニット2をそれぞれ収納する収納部11a~11cを封止する封止部材の図示を省略している。
【0022】
半導体ユニット2は、
図2に示されるように、絶縁回路基板20と半導体チップ24a~24dとリードフレーム25a~25dとを含んでいる。絶縁回路基板20は、平面視で矩形状である。絶縁回路基板20は、絶縁板21と絶縁板21のおもて面に形成された複数の回路パターン層と絶縁板21の裏面に形成された金属板(図示を省略)と、を有している。複数の回路パターン層は、正極回路パターン層22a、負極回路パターン層22b、出力回路パターン層22cを含む。以降、これらを特に区別しない場合には、回路パターン層と称する。複数の回路パターン層及び金属板の外形は、平面視で、絶縁板21の外形より小さく、絶縁板21の内側に形成されている。
図2に示す複数の回路パターン層の形状、個数、大きさは一例である。
【0023】
絶縁板21は、平面視で矩形状を成す。また、絶縁板21は、角部が面取りされていてよい。例えば、C面取りあるいはR面取りされていてもよい。絶縁板21は、外周辺である短側面21a、長側面21b、短側面21c、長側面21dにより四方が順に囲まれている。このような絶縁板21は、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。
【0024】
金属板は、平面視で矩形状を成す。また、角部が、例えば、C面取りあるいはR面取りされていてよい。金属板は、絶縁板21のサイズより小さく、絶縁板21の縁部を除いた裏面全面に形成されている。金属板は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0025】
複数の回路パターン層は、既述の通り、正極回路パターン層22a、負極回路パターン層22b、出力回路パターン層22cを含む。複数の回路パターン層は、絶縁板21の縁部を除いた全面に形成されている。好ましくは、平面視で、複数の回路パターン層の絶縁板21の外周に面する端部は、金属板の絶縁板21の外周側の端部と重畳する。
【0026】
複数の回路パターン層は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、複数の回路パターン層の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。複数の回路パターン層の厚さは、金属板の厚さと略等しくてよい。
【0027】
複数の回路パターン層に含まれる正極回路パターン層22aは、平面視で、逆L字状を成して、絶縁板21の長側面21dに寄って、絶縁板21の長側面21d及び短側面21aに面して形成されている。なお、正極回路パターン層22aには、半導体チップ24d,24cが+Y方向に沿って一直線状にそれぞれ接合されている。
【0028】
複数の回路パターン層に含まれる負極回路パターン層22bは、平面視で、逆L字状を成して、絶縁板21の短側面21aに面して正極回路パターン層22aの-X方向側の隣に形成されている。
【0029】
複数の回路パターン層に含まれる出力回路パターン層22cは、平面視で、略U字状を成して、絶縁板21の長側面21b及び短側面21cに面すると共に、負極回路パターン層22bを取り囲んで形成されている。なお、出力回路パターン層22cには、半導体チップ24a,24bが+Y方向に沿って一直線状にそれぞれ接合されている。
【0030】
このような構成を有する絶縁回路基板20として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いてよい。絶縁回路基板20は、半導体チップ24a~24dで発生した熱を出力回路パターン層22c及び正極回路パターン層22a、絶縁板21、金属板を介して、絶縁回路基板20の裏面側に伝導させて放熱する。
【0031】
半導体チップ24a~24dは、炭化シリコンにより構成されるパワーデバイスである。このパワーデバイスの一例として、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が挙げられる。このような半導体チップ24a~24dは裏面に入力電極としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてソース電極をそれぞれ備えている。
【0032】
また、半導体チップ24a~24dは、シリコンにより構成されるパワーデバイスであってもよい。この場合のパワーデバイスは、例えば、RC(Reverse Conducting)-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。RC-IGBTは、スイッチング素子であるIGBT及びダイオード素子であるFWD(Free Wheeling Diode)が1チップ内に構成されたものである。このような半導体チップ24a,24b,24c,24dは、例えば、裏面に入力電極としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び出力電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。
【0033】
また、上記のいずれの場合でも、半導体チップ24a,24b及び半導体チップ24c,24dは、図示を省略する制御電極がそれぞれ長側面21b,21dを向いてそれぞれ出力回路パターン層22c及び正極回路パターン層22aに接合されている。
【0034】
半導体チップ24a~24dは、本実施の形態では、出力回路パターン層22c及び正極回路パターン層22aに、接合部材(図示を省略)を介してそれぞれ接合されている。接合部材は、はんだまたは焼結体であってよい。はんだは、所定の合金を主成分とする鉛フリーはんだにより構成される。また、焼結により接合させる場合の焼結材は、例えば、銀、鉄、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タングステン、モリブデンの粉末である。
【0035】
リードフレーム25a~25dは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、リードフレーム25a~25dの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。リードフレーム25a~25dの厚さは、全体的に均一の厚さであってよい。
【0036】
リードフレーム25c,25dは、半導体チップ24c,24dの出力電極と出力回路パターン層22cとを電気的に接続している。リードフレーム25a,25bは、半導体チップ24a,24bの出力電極と負極回路パターン層22bとを電気的に接続している。このようなリードフレーム25a~25dは、半導体チップ24a~24dの出力電極に対して既述の接合部材のはんだにより接合される。リードフレーム25a~25dは、回路パターン層に対して既述の接合部材により接合される。または、リードフレーム25a~25dは、回路パターン層に対して超音波接合により接合されてよい。
【0037】
ケース10は、
図1に示されるように、枠部11と、枠部11に一体成形されたP端子17a~17cと、N端子18a~18cと、U,V,W端子19a~19cとを含んでいる。
【0038】
枠部11は、平面視で矩形状であって、枠状を成している。枠部11は、四方が順に長側部12と短側部13と長側部14と短側部15とによりに構成されている。枠部11は、長側部12と短側部13と長側部14と短側部15とにより順に囲まれる中央部が3つの収納部11a,11b,11cに画定されている。
【0039】
収納部11a~11cは、長側部12,14に沿って一列に配列されている。収納部11a~11cは、平面視でそれぞれ矩形状を成している。収納部11a~11cには、半導体ユニット2がそれぞれ収納されている。収納部11a~11cに収納された半導体ユニット2は、半導体チップ24a,24cが長側部14側に、半導体チップ24b,24dが長側部12側に位置する。
【0040】
収納部11a~11cには、封止部材が充填されて、半導体ユニット2が封止部材により封止される。封止部材は、熱硬化性樹脂であってよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、ポリエステル樹脂である。好ましくは、エポキシ樹脂である。さらに、封止部材は、フィラーが添加されていてもよい。フィラーは、絶縁性で高熱伝導を有するセラミックスである。このようなフィラーは、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化ホウ素または窒化アルミニウムである。フィラー含有量は、封止部材の全体に対して10vol%以上、70vol%以下であってよい。
【0041】
ケース10は、長側部12に入力端子が配置される。入力端子は、長側部12に沿ってそれぞれ備えられたP端子17a~17cとN端子18a~18cとである。P端子17a~17cとN端子18a~18cとの外端部(外部接続部)は長側部12のおもて面にそれぞれ+X方向に沿って設けられている。P端子17a~17cとN端子18a~18cとの内端部(内部接続部)は収納部11a~11cの長側部14側の内壁から長側部14に向けて露出している。なお、P端子17a~17cとN端子18a~18cとの詳細については後述する。
【0042】
また、ケース10は、既述の入力端子に対して収納部11a~11cを挟んで逆側の長側部14に出力端子が配置される。出力端子は、具体的には、長側部14に沿ってそれぞれ備えられたU,V,W端子19a~19cである。U,V,W端子19a~19cの外端部(外部接続部)は長側部14のおもて面にそれぞれ+X方向に沿って設けられている。U,V,W端子19a~19cの内端部である内部接続部19a1~19c1は収納部11a~11cの長側部12側の内壁から長側部12に向けて露出している。
【0043】
さらに、ケース10は、長側部14の収納部11a~11c側の内壁に、制御端子16a~16cと制御配線板16a1~16c1がそれぞれ設けられている。例えば、制御端子16a及び制御配線板16a1は、長側部14の収納部11a側の内壁にU端子19aの内部接続部19a1を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。制御端子16aの上端は+Z方向に延伸している。制御配線板16a1は、制御端子16aに電気的に接続される配線板と配線板が設けられた絶縁板とを含む。制御配線板16a1は、長側部14の収納部11a側の内壁に垂直に設けられている。制御端子16aの下端は長側部14内で制御配線板16a1に接続されている。制御配線板16a1の配線板は、収納部11aに収納された半導体ユニット2に含まれる半導体チップ24a,24b,24c,24dの制御電極にワイヤにより直接接続される。制御端子16aに入力された制御信号は、制御配線板16a1及びワイヤを経由して半導体チップ24a,24b,24c,24dの制御電極にそれぞれ入力される。
【0044】
制御端子16b,16c及び制御配線板16b1,16c1も同様に、長側部14の収納部11b,11c側の内壁にV,W端子19b,19cの内部接続部19b1,19c1を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。
【0045】
このようなP端子17a~17cとN端子18a~18cとU,V,W端子19a~19cと制御端子16a~16cとは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、これらの端子の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。また、制御配線板16a1~16c1の配線板もまた導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。
【0046】
ケース10の長側部12は、収納部11a~11cに対して端子ユニット3(
図3の長側部12の破線の領域)をそれぞれ一体的に含んでいる。端子ユニット3は、P端子17a~17cとN端子18a~18cとをそれぞれ含んでいる。端子ユニット3の詳細については後述する。同様に、ケース10の長側部14は、収納部11a~11cに対して端子ユニット(符号を省略)(
図3の長側部14の破線の領域)をそれぞれ一体的に含んでいる。端子ユニットは、U,V,W端子19a~19cをそれぞれ含んでいる。
【0047】
なお、図示を省略するものの、ケース10の裏面にはケース10のサイズと同程度の放熱板が設けられている。放熱板は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。当該放熱板上には、半導体ユニット2がそれぞれ設けられ、さらに、ケース10が収納部11a,11b,11cに半導体ユニット2が収納されるように配置される。
【0048】
次に、このような半導体装置1の製造方法について、
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。まず、半導体装置1の構成部品を用意する用意工程を行う(ステップS1)。この際、用意される構成部品とは、例えば、絶縁回路基板20、ケース10、半導体チップ24a~24d、リードフレーム25a~25dである。これら以外でも半導体装置1の構成部品として必要なものが用意される。また、半導体装置1の製造に用いられる製造装置も用意してよい。
【0049】
次いで、半導体ユニット2を組み立てる組み立て工程を行う(ステップS2)。絶縁回路基板20の正極回路パターン層22aに接合部材を介して半導体チップ24c,24dを配置し、出力回路パターン層22cに接合部材を介して半導体チップ24a,24bを配置する。加熱して、接合部材を溶融して、正極回路パターン層22aに半導体チップ24c,24dを接合し、出力回路パターン層22cに半導体チップ24a,24bを接合する。さらに、リードフレーム25a~25dの一端部を半導体チップ24a~24dの出力電極に接合部材を介して配置する。リードフレーム25a,25bの他端部を負極回路パターン層22bに接合部材を介して配置し、リードフレーム25c,25dの他端部を出力回路パターン層22cに接合部材を介して配置する。加熱して、接合部材を溶融して、リードフレーム25a,25bが半導体チップ24a,24b及び負極回路パターン層22bを接合し、リードフレーム25c,25dが半導体チップ24c,24d及び出力回路パターン層22cをそれぞれ接合する。
【0050】
次いで、ケース10の収納部11a~11cに半導体ユニット2を収納する収納工程を行う(ステップS3)。放熱板の所定の位置に半導体ユニット2をそれぞれ配置し、さらに、ケース10の収納部11a,11b,11cで半導体ユニット2を収納するようにケース10を配置する。
【0051】
半導体ユニット2に対して配線する配線工程を行う(ステップS4)。配線は、例えば、それぞれ後述する、P端子17aの内部接続部17a3及びN端子18aの内部接続部18a3を収納部11aに収納されている半導体ユニット2の正極回路パターン層22a及び負極回路パターン層22bに接合する。また、U端子19aの内部接続部19a1を半導体ユニット2の出力回路パターン層22cに接合する。この際の接合は、例えば、超音波接合を用いてよい。P端子17b,17c、N端子18b,18c及びV,W端子19b,19cも同様に収納部11b,11cにそれぞれ収納されている半導体ユニット2に接合する。また、制御配線板16a1~16c1と半導体チップ24a~24dの制御電極とをワイヤで接続する。
【0052】
次いで、半導体ユニット2を封止部材で封止する封止工程を行う(ステップS5)。半導体ユニット2がそれぞれ収納された収納部11a~11cに封止部材を充填する。この際、半導体ユニット2と制御電極に接続されたワイヤとが完全に埋まるまで封止部材が充填される。充填された封止部材が固化することで収納部11a~11c内の半導体ユニット2の封止が完了する。以上により、
図1に示される半導体装置1が製造される。
【0053】
ここで、さらに、用意工程で用意されるケース10の用意工程について、
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態の半導体装置のケースの用意工程を示すフローチャートである。半導体装置1のケース10は、以下の工程を経て用意(製造)される。
【0054】
まず、ケース10の構成部品を用意する用意工程を行う(ステップS10)。ケース10の構成部品は、例えば、ケース10のケース材料、P端子17a~17cとN端子18a~18cとU,V,W端子19a~19cと制御端子16a~16cが挙げられる。これら以外でもケース10の製造に必要な構成部品が用意される。また、ケース10の製造に用いられる製造装置も用意してよい。また、後述する端子ユニット3を成形する金型、ケース10を成形する金型も用意する。
【0055】
また、ここで用意されるケース材料は、熱可塑性樹脂を主成分として構成されている。また、離型剤としてフィラーを含んでもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂である。フィラーは、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化ホウ素または窒化アルミニウムである。すなわち、このケース材料は、端子ユニット3を含む枠部11の主成分である。
【0056】
次いで、端子ユニット3を成形する第1成形工程を行う(ステップS11)。第1成形工程は、以下の4つの工程が行われる。まず、被成形体の組み立てを行う(ステップS11a)。組み立てられた被成形体である端子体について
図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図である。また、
図6では、N端子18a及びP端子17aを含む端子体3aを例示している。
図6(A)及び
図6(B)は、端子体3aをそれぞれ反対側から見た斜視図である。端子体3aは、N端子18b,18c、絶縁シート17d、P端子17b,17cをそれぞれ含む場合でも、
図6と同様である。
【0057】
端子体3aは、P端子17aと絶縁シート17dとN端子18aとを含んでいる。P端子17a(第1端子)は、外部接続部17a1(第1外端部)と配線部17a2(第1中央部)と内部接続部17a3(第1内端部)とを含んでいる。外部接続部17a1は、平面視で矩形状であって平板状を成している。外部接続部17a1は、貫通する締結孔17hが形成されている。
【0058】
配線部17a2は、平面視で矩形状であって平板状を成しており、外面17s1と外面17s1の反対側の対向面17s2とを含む。配線部17a2は+X方向に沿って延伸している。このような配線部17a2の+Z方向側の長辺の+X方向の端部に外部接続部17a1が一体的に設けられている。この際、外部接続部17a1は、配線部17a2の外面17s1側に屈曲している。
【0059】
内部接続部17a3は、平面視で矩形状であって、平板状を成している。内部接続部17a3は途中に段差を設けてよい。内部接続部17a3は、半導体ユニット2の回路パターン層に接合される部分である。内部接続部17a3は、配線部17a2の-Z方向側の長辺の-X方向の端部に一体的に設けられている。内部接続部17a3は、配線部17a2の外面17s1の反対側の対向面17s2側に屈曲している。すなわち、内部接続部17a3は外部接続部17a1の反対側に屈曲している。
【0060】
N端子18a(第2端子)は、外部接続部18a1(第2外端部)と配線部18a2(第2中央部)と内部接続部18a3(第2内端部)とを含んでいる。外部接続部18a1は、平面視で矩形状であって平板状を成している。外部接続部18a1は、貫通する締結孔18hが形成されている。
【0061】
配線部18a2は、平面視で矩形状であって平板状を成しており、外面18s1と外面18s1の反対側の対向面18s2とを含む。配線部18a2は+X方向に沿って延伸している。このような配線部18a2の+Z方向側の長辺の-X方向の端部に外部接続部18a1が一体的に設けられている。この際、外部接続部18a1は、配線部18a2の対向面18s2側に屈曲している。
【0062】
内部接続部18a3は、平面視で矩形状であって、平板状を成している。内部接続部18a3は途中に段差を設けてよい。内部接続部18a3は、半導体ユニット2の回路パターン層に接合される部分である。内部接続部18a3は、配線部18a2の-Z方向側の長辺の+X方向の端部に一体的に設けられている。内部接続部18a3は、配線部18a2の対向面18s2の反対側の外面18s1側に屈曲している。すなわち、内部接続部18a3は外部接続部18a1の反対側に屈曲している。
【0063】
絶縁シート17dは平面視で矩形状を成している。絶縁シート17dの面積は、配線部17a2,18a2よりも十分大きい。絶縁シート17dは、P端子17aに含まれる配線部17a2の対向面17s2及びN端子18aに含まれる配線部18a2の対向面18s2に挟持されている。すなわち、絶縁シート17dは、P端子17aに含まれる配線部17a2の対向面17s2及びN端子18aに含まれる配線部18a2の対向面18s2に挟持された際に、P端子17a及びN端子18aの絶縁が維持される面積であればよい。このような絶縁シート17dは、シート状の絶縁性を有する部材であればよく、例えば、絶縁紙、フィルムが挙げられる。
【0064】
このような端子体3aは、P端子17b,17c及びN端子18b,18cでも絶縁シート17dを用いて同様に組み立てられる。すなわち、P端子17b,17cも同様に外部接続部17a1(第1外端部)と配線部17a2(第1中央部)と内部接続部17a3(第1内端部)とを含んでいる。N端子18b,18cも同様に外部接続部18a1(第2外端部)と配線部18a2(第2中央部)と内部接続部18a3(第2内端部)とを含んでいる。
【0065】
次いで、このように組み立てられた3つの被成形体である端子体3aを所定の金型にセットする(ステップS11b)。続けて、金型内にケース材料を充填して成形体を成形する(ステップS11c)。成形体である端子成形体3bについて
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子成形体の成形を示す図である。なお、
図7(A)は、端子成形体3bを+Y方向に見た側面図であり、
図7(B)は、
図7(A)の一点鎖線X-Xにおける断面図である。
【0066】
端子成形体3bは、端子体3aと端子体3aを封止する端子本体部3cとを含んでいる。端子本体部3cは、第1樹脂部の具体例であって、立方体状を成している。すなわち、端子本体部3cは、平面視で矩形状の上面3c5と底面3c3とを含んでいる。底面3c3は、上面3c5に形状、サイズが対応し上面3c5の反対側に位置している。さらに、端子本体部3cは、上面3c5及び底面3c3を平面視で順に取り囲む前面3c1と側面3c4と背面3c2と側面3c6とを含んでいる。前面3c1と背面3c2とは対向しており、それぞれ同じサイズである。側面3c4,3c6はそれぞれ対向しており、それぞれ同じサイズである。また、前面3c1及び背面3c2の±X方向の長さは、端子体3aの同方向の長さよりも長い。すなわち、端子体3aの±X方向の端部は端子本体部3cにより完全に封止されている。
【0067】
端子本体部3cの上面3c5からP,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1が+Z方向に突出して、前面3c1側に折れ曲がっている。したがって、P,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1は、上面3c5に対向している。端子本体部3cの上面3c5は、P,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1の締結孔17h,18hに対向する箇所に当該締結孔17h,18hの形状、サイズ、位置に対応して貫通している。端子本体部3cの背面3c2から端子体3aに含まれるP,N端子17a,18aの内部接続部17a3,18a3が+Y方向に突出している。
【0068】
また、端子本体部3cの前面3c1に収納部3c7が形成されている。収納部3c7は立方体状を成している。なお、収納部3c7は、後述するナット成形体3dが収納される形状、サイズであればよい。収納部3c7は、前面3c1から、封止されている端子体3aのP端子17aの外面17s1の全体が露出している。
【0069】
第1の実施の形態では、さらに、もう一種類の成形体であるナット成形体を成形する。すなわち、この場合には、被成形体であるナット30を所定の別の金型にセットする(ステップS11b)。続けて、金型内にケース材料を充填してナット成形体を成形する(ステップS11c)。成形体であるナット端子体について
図8を用いて説明する。
図8は、第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料によるナット成形体の成形を示す図である。
【0070】
ナット成形体3dは、ナット30とナット30を封止するナット本体部3eとを含んでいる。ナット30は、螺合されるねじに対応した径の締結孔が形成されている。なお、P,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1の締結孔17h,18hは、この締結孔に対応した径である。
【0071】
ナット本体部3eを構成するケース材料は、端子本体部3cと同様である。ナット本体部3eは、端子本体部3cの収納部3c7と同様の立方体状を成している。すなわち、ナット本体部3eは、平面視で矩形状の上面3e5と底面3e3とを含んでいる。底面3e3は、上面3e5に形状、サイズが対応し上面3e5の反対側に位置している。さらに、ナット本体部3eは、上面3e5及び底面3e3を平面視で順に取り囲む前面3e1と側面3e4と背面3e2と側面3e6とを含んでいる。前面3e1と背面3e2とは対向しており、それぞれ同じサイズである。側面3e4,3e6はそれぞれ対向しており、それぞれ同じサイズである。ナット本体部3eの上面3e5にはナット30が埋設されている。この際、ナット30の主面は、上面3e5と同一平面を成し、または、上面3e5よりも下位に位置してよい。
【0072】
なお、ここでは、詳細な説明は省略するものの、
図3のケース10に対して破線で囲まれたU,V,W端子19a,19b,19cを含む端子ユニットもステップS11b,11cと同様に成形してよい。
【0073】
次いで、このように成形した2つの成形体(端子成形体3b及びナット成形体3d)を組み合わせる(ステップS11d)。2つの成形体(端子成形体3b及びナット成形体3d)の組み合わせを、
図9を用いて説明する。
図9は、第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれる成形体の組み合わせを示す図である。なお、
図9(A)は、端子成形体3bに対するナット成形体3dの取り付けの側断面図を示している。
図9(B)は、
図9(C)の一点鎖線X-Xにおける断面図を、
図9(C)は、端子ユニット3の正面図をそれぞれ示している。
【0074】
端子成形体3bの収納部3c7に、
図9(A)に示されるように、ナット成形体3dを、上面3e5を上向きにして挿入する。端子成形体3bの収納部3c7にナット成形体3dが挿入されて端子ユニット3が組み立てられる。
【0075】
端子ユニット3では、
図9(B)に示されるように、収納部3c7に収納されたナット成形体3dの背面3e2がP端子17aの配線部17a2の外面17s1に当接する。この際、P,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1の締結孔17h,18hがナット成形体3dに含まれるナット30にそれぞれ一致する。また、
図9(C)に示されるように、ナット成形体3dの前面3e1が端子成形体3bの前面3c1に同一平面を成す。
【0076】
次いで、ケース10を成形する第2成形工程を行う(ステップS12)。第2成形工程は、以下の2つの工程が行われる。まず、ケース10を成形するに当たり、端子ユニット3を所定の金型にセットする(ステップS12a)。第1成形工程で成形された端子ユニット3を、ケース10を成形する所定の金型にセットする。この際、制御端子16a~16c及び制御配線板16a1~16c1とU,V,W端子19a~19cと共に、端子ユニット3が、金型の
図3の各端子ユニット3に対応する位置にセットされる。なお、U,V,W端子19a~19cを含む端子ユニットを成形している場合は、端子ユニット3と共に、この端子ユニットも金型にセットする。
【0077】
次いで、端子ユニット3を含む金型内にケース材料を充填してケース10を成形する(ステップS12b)。ケース材料により成形された、第2樹脂部の具体例であるケース10の要部について
図10を用いて説明する。
図10は、第1の実施の形態のケースの用意工程に含まれる第2成形工程を示す図である。なお、
図10では、ケース10のP,N端子17a,18aに対応する要部を+Y方向に見た側面図を示している。
【0078】
端子ユニット3等がセットされた金型内にケース材料を充填すると、金型内をケース材料が流動する。この際、端子ユニット3は立方体状を成しているため、ケース材料は端子ユニット3の周囲を隙間なく回り込みやすい。したがって、金型内を流動するケース材料は、空孔の発生を抑制しつつ、端子ユニット3の全体に回り込むことができる。
【0079】
このようにして形成されたケース10は、
図10に示されるように長側部12内に充填されたケース材料によりP,N端子17a,18aを含む端子ユニット3が一体的に含まれる。なお、ケース材料は、必要に応じて、端子ユニット3の上面3c5を封止してよい。同様にして、ケース10の長側部12内に、P,N端子17b,18b及びP,N端子17c,18cをそれぞれ含む端子ユニット3が一体的に含まれる。さらに、同様にして、ケース10の長側部14内にU,V,W端子19a,19b,19cをそれぞれ含む端子ユニットが一体的に含まれる。
【0080】
以上により、ケース10が成形される。このように用意されたケース10が
図4のフローチャートのステップS1で用意され、ステップS2~S5の工程を経て、半導体装置1が製造される。
【0081】
ここで、ケース10を製造するに当たり、端子ユニット3を成形せずに、ケース10を直接成形する場合について説明する。この場合、金型に、それぞれの端子体3aとU,V,W端子19a~19cと制御端子16a~16cと制御配線板16a1~16c1とをセットする。これらの構成部品がセットされた金型内にケース材料を充填する。金型内に充填されたケース材料は金型内の構成部品を封止する。しかし、例えば、端子体3aは、
図6に示したように、P端子17aと絶縁シート17dとN端子18aとを含んでいる。特に、絶縁シート17dはP端子17aの配線部17a2とN端子18aの配線部18a2とで挟持されている。すなわち、端子体3aは、例えば、P端子17aと絶縁シート17dとN端子18aとにより段差、角部、溝部、隙間が構成されている。このような構成を成す端子体3aを金型内でケース材料が封止する場合、ケース材料の粘性、流動性も影響して、ケース材料は端子体3aを十分に回り込むことが難しい。このため、端子体3aがケース材料により封止されても、内部にボイドを含んでしまうことがある。また、金型内に、このような端子体3aがセットされている場合、注入口から充填されたケース材料が金型内を流動して、合流する箇所でウェルド(空気だまり)が発生しやすくなる。こうして成形されたケース10に含まれる空孔はケース10の強度並びに絶縁耐圧の低下を引き起こしてしまう。このようなケース10を含む半導体装置は信頼性が低下してしまう。
【0082】
また、大きいサイズのケース10を成形する場合には金型も大きくなる。このような金型内に充填されたケース材料の温度は金型の位置により差が生じる。このため、成形されたケース10が反ってしまう。また、ケース10は厚さにより反ってしまうことがある。ケース10の反りは、ケース10の寸法不良に繋がってしまう。
【0083】
ケース10の上記のような成形性並びに品質の低下を抑制するために、金型に対するケース材料の流動解析を行うことがある。解析結果に基づき、ボイド、ウェルド、反りの発生ができる限り抑制されるケース10が得られる金型を製造することができる。実際、このような金型を製造するには、金型の試作品に対するケース材料の流動解析を行い、流動解析の結果を、試作品を作成するごとにフィードバックを行うことで精度良い金型が製造される。このようにして、品質の低下が抑制されたケース10を成形する金型を製造することができるものの、このような金型の製造には大きなコストを要する。
【0084】
上記の半導体装置1は、ケース10を含む。ケース10は、さらに、端子本体部3cとP端子17a~17cとN端子18a~18cと絶縁シート17dと枠部11とを含む。P端子17a~17cは、端子本体部3cに接する配線部17a2と、端子本体部3cから少なくとも一部が露出し、配線部17a2から延伸して屈曲する外部接続部17a1と、配線部17a2から延伸して外部接続部17a1に対して反対方向に屈曲する内部接続部17a3とを含む。N端子18a~18cは、配線部17a2に対向配置され、端子本体部3cに接する配線部18a2と、端子本体部3cから少なくとも一部が露出し、配線部18a2から延伸し、外部接続部17a1と同方向に屈曲する外部接続部18a1と、配線部18a2から延伸して外部接続部18a1に対して反対方向に屈曲する内部接続部18a3と、を含む。絶縁シート17dは、配線部17a2,18a2の間に配置されている。枠部11は、端子本体部3cと配線部17a2,18a2と絶縁シート17dとのうち、少なくとも一部を保持する。このため、枠部11内にボイド、ウェルドの発生が抑制されており、また、反りの発生も抑制される。したがって、ケース10は成形性が改善されて、品質の低下が抑制された枠部11を備える。さらに、このようなケース10を含む半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。
【0085】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは別の端子ユニット3について、
図11~
図14を用いて説明する。
図11は、第2の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料によるナット成形体の成形を示す図である。
図12~
図14は、第2の実施の形態のケースの用意工程に含まれる成形体の組み合わせを示す図である。なお、
図11(B)は、
図11(A)のY-Z面におけるX方向に見た断面図である。
図12(A)及び
図12(B)は、端子体3aに対するナット成形体3dの取り付け並びに取り付け後の+Y方向に見た側面図である。
図13(A)及び
図13(B)は、端子体3aに対するナット成形体3dの取り付け並びに取り付け後の+X方向に見た側面図である。
図14(A)は、成形治具40に収納されたナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの平面図を、
図14(B)は、
図14(A)の一点鎖線Y-Yの断面図を、
図14(C)は、
図14(B)の一点鎖線X-Xの断面図をそれぞれ示している。
【0086】
まず、第2の実施の形態のナット成形体3dについて説明する。ナット成形体3dは、
図11に示されるように、ナット30とナット30を封止するナット本体部3eとを含んでいる。なお、
図11に示すナット成形体3dは、ナット30が露出されている上面3e5を下向きにして図示されている。また、ナット30とナット本体部3eを構成するケース材料とは第1の実施の形態と同様である。
【0087】
ナット本体部3eは、第1の実施の形態のナット本体部3eと同様の構成を成している。すなわち、ナット本体部3eは、平面視で矩形状の上面3e5と底面3e3とを含んでいる。底面3e3は、上面3e5に形状、サイズが対応し上面3e5の反対側に位置する。さらに、ナット本体部3eは、上面3e5及び底面3e3を平面視で順に取り囲む前面3e1と側面3e4と背面3e2と側面3e6とを含んでいる。前面3e1と背面3e2とは対向しており、それぞれ同じサイズである。側面3e4,3e6はそれぞれ対向しており、それぞれ同じサイズである。ナット本体部3eの上面3e5にはナット30が埋設されている。この際、ナット30の主面は、上面3e5と同一平面を成し、または、上面3e5よりも下位に位置してよい。
【0088】
さらに、ナット本体部3eの背面3e2には、挟持部3e8が設けられている。挟持部3e8は、2つ平板が直角を成して接続されて、側面視でL字状を成している。なお、挟持部3e8の±X方向の幅は、後述するように端子体3aの内部接続部17a3,18a3の間隔の長さ未満であってよい。また、挟持部3e8の背面3e2に対向する面と背面3e2とはそれぞれ対向する凸部3e9が形成されている。このようなナット成形体3dは、第1の実施の形態のナット成形体3dに対して挟持部3e8に対応する領域を含む金型が用いられて成形される。
【0089】
次いで、ナット成形体3dの端子体3aに対する取り付けについて説明する。
図12及び
図13に示されるように、ナット成形体3dの挟持部3e8を端子体3aの内部接続部17a3,18a3側から、内部接続部17a3,18a3の隙間から、P,N端子17a,18aの配線部17a2,18a2及び絶縁シート17dを挟持しながら、端子体3aの外部接続部17a1,18a1に向けて移動させる。
【0090】
これにより、P,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1にナット成形体3dの上面3e5が当接する。すると、P,N端子17a,18aの配線部17a2,18a2及び絶縁シート17dがナット成形体3dの背面3e2及び挟持部3e8(第1樹脂部)で挟持される。この際、ナット成形体3dのナット30がP,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1の締結孔17h,18hにそれぞれ対向する。なお、この際、P端子17aの配線部17a2の外面17s1及びナット成形体3dの背面3e2の少なくも一方に接着剤を塗布しておく。
【0091】
次いで、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの組み立てについて説明する。
図14に示されるように、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aを成形治具40にセットする。
【0092】
成形治具40は、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aが収納される収納領域41を囲んで構成されている。収納領域41の底面43に突起部43aが形成されている。収納領域41の±X方向の長さは、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの同方向の長さに対応する。収納領域41の±Y方向の長さは、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの同方向において一番長い箇所の長さに対応する。一番長い箇所の長さとは、例えば、平面視で、ナット成形体3dの前面3e1とP,N端子17a,18aの内部接続部17a3,18a3との距離である。収納領域41の深さは、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの同方向において一番長い箇所の深さに対応する。
【0093】
このような成形治具40の収納領域41に対して、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aを取り付ける。ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの上面3e5及び外部接続部17a1,18a1が成形治具40の底面43に当接する。また、底面43の突起部43aが外部接続部17a1,18a1の締結孔17h,18hを通過して、ナット30にそれぞれ挿入する。この突起部43aにより、成形治具40の収納領域41内で、ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aの位置ずれが防止される。
【0094】
さらに、この際、平面視で、内部接続部17a3,18a3と挟持部3e8と収納領域41の内壁とにより隙間42が構成される。隙間42は収納領域41の底面43まで続いている。この隙間42は、ナット成形体3dの挟持部3e8が撓んだ際の逃げとして機能する。
【0095】
ナット成形体3dが取り付けられた端子体3aがこのような成形治具40に取り付けられることで、端子体3aがナット成形体3dの背面3e2と挟持部3e8とで挟持されると共に、ナット成形体3dが端子体3aに接着される。成形治具40からナット成形体3dが接着された端子体3aが取り出されると、端子ユニット3が得られる。
【0096】
このようにして形成された端子ユニット3が第1の実施の形態と同様に、金型にセットされてケース材料が当該金型に充填されることで、第1の実施の形態と同様の効果を奏するケース10が形成される。
【0097】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる端子体を例に挙げて説明する。まず、第3の実施の形態の半導体装置の含まれるケース10について
図15を用いて説明する。
図15は、第3の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの斜視図である。
【0098】
第3の実施の形態のケース10もまた、第1の実施の形態と実質的に同様に、枠部11と枠部11に一体成形されたP端子17a~17cとN端子18a~18cとU,V,W端子19a~19cとを含んでいる。また、枠部11の長側部12には、P端子17a~17cとN端子18a~18cとを含む端子ユニット3を、長側部14には、U,V,W端子19a~19cを含む端子ユニット(符号を省略)をそれぞれ一体的に含んでいる。但し、P端子17a~17cとN端子18a~18cとの外部接続部17a1,18a1は、長側部12の(X-Z面に平行な)側部に露出されている。
【0099】
このようなケース10を、第1の実施の形態の半導体ユニット2が接合された放熱板に、半導体ユニット2が収納部11a~11cで覆われるように配置することで、半導体装置1が得られる。
【0100】
次に、端子体3aと端子体3aを封止する端子本体部3cとを含む端子ユニット3について説明する。まず、端子体3aについて
図16及び
図17を用いて説明する。
図16は、第3の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図である。
図17は、第3の実施の形態の端子体に含まれる端子を示す図である。なお、
図17(A)は、N端子18aを、
図17(B)は、P端子17aをそれぞれ示している。
【0101】
P端子17aは、外部接続部17a1と配線部17a2と内部接続部17a3とを含んでいる。外部接続部17a1と配線部17a2と内部接続部17a3とはそれぞれ平板状を成している。
【0102】
外部接続部17a1は、締結孔17hが形成されており、後述するように枠部11の長側部12から-Y方向を向いている。すなわち、外部接続部17a1は、X-Z面に平行である。
【0103】
配線部17a2は、外部接続部17a1に直交して接続されている。すなわち、外部接続部17a1は配線部17a2から屈曲して形成されている。配線部17a2は、外部接続部17a1の-X方向の端部に一体的に接続されて、外部接続部17a1に対して直交して+Y方向に延伸している。すなわち、配線部17a2は、Y-Z面に平行である。
【0104】
内部接続部17a3は、配線部17a2の+Y方向の端部に接続されて、配線部17a2に直交する平板部分と当該平板部分に接続されて、当該平板部分に直交して+Y方向に延伸する部分とを含んでいる。したがって、外部接続部17a1と配線部17a2と内部接続部17a3とは平面視でU字状を成す部分を構成する。このU字状を成す部分にナット30が設けられる。外部接続部17a1の締結孔17hとナット30とが一致している。
【0105】
N端子18aもまた、外部接続部18a1と配線部18a2と内部接続部18a3とを含んでいる。外部接続部18a1と配線部18a2と内部接続部18a3とはそれぞれ平板状を成している。
【0106】
外部接続部18a1は、締結孔18hが形成されており、後述するように枠部11の長側部12から-Y方向を向いている。すなわち、外部接続部18a1は、X-Z面に平行である。
【0107】
配線部18a2は、外部接続部18a1に直交して接続されている。すなわち、外部接続部18a1は配線部18a2から外部接続部17a1とは反対方向に屈曲して形成されている。配線部18a2は、外部接続部17a1の+X方向の端部に一体的に接続されて、外部接続部18a1に対して直交して+Y方向に延伸している。すなわち、配線部18a2は、Y-Z面に平行である。また、このような配線部18a2は、配線部17a2に対向している。
【0108】
内部接続部18a3は、配線部18a2の+Y方向の端部に接続されて、配線部18a2に直交する平板部分と当該平板部分に接続されて、当該平板部分に直交して+Y方向に延伸する部分とを含んでいる。したがって、外部接続部18a1と配線部18a2と内部接続部18a3とは平面視でU字状を成す部分を構成する。このU字状を成す部分にナット30が設けられる。外部接続部17a1の締結孔17hとナット30とが一致している。
【0109】
絶縁シート17dの平面視の形状は、矩形状を成しており、配線部17a2,18a2と重複する領域を含んでいる。このような絶縁シート17dは、P,N端子17a,18aの配線部17a2,18a2の間に挟持されている。絶縁シート17dは、この間から外部接続部17a1,18a1よりも±Y方向に突出している部分を含んでよい。
【0110】
なお、
図16では、N端子18aの外部接続部18a1がP端子17aの外部接続部17a1よりも、平面視で、-Y方向に位置ずれしている場合を示している。N端子18aの外部接続部18a1とP端子17aの外部接続部17a1とは、平面視で同一平面を成してもよく、また、N端子18aの外部接続部18a1がP端子17aの外部接続部17a1よりも、平面視で、+Y方向に位置ずれしてもよい。
【0111】
次に、このような端子体3aを端子本体部3cで封止された端子ユニット3について
図18を用いて説明する。
図18は、第3の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子ユニットの成形を示す図である。なお、
図18では平面視の端子ユニット3であって、端子本体部3cで覆われた部分は破線で示している。
【0112】
図16で示した端子体3aを所定の金型にセットしてケース材料を当該金型に充填することで、
図18に示される端子ユニット3が得られる。端子ユニット3は、端子体3aと端子体3aを封止する端子本体部3cとを含む。
【0113】
端子本体部3cは、略立方体状を成して、配線部17a2,18a2、絶縁シート17d及びナット30を封止している。端子本体部3cは、X-Z面に面してP,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1が露出している。端子本体部3cの+Y方向側から、P,N端子17a,18aの内部接続部17a3,18a3が+Y方向に延伸している。また、端子本体部3cの平面視で-X方向の側面は、外部接続部18a1よりも外側に位置する。端子本体部3cの平面視で+X方向の側面は、外部接続部17a1よりも外側に位置する。
【0114】
このようにして形成された端子ユニット3が第1の実施の形態と同様に、金型にセットされてケース材料が当該金型に充填されることで、第1の実施の形態と同様の効果を奏する
図15に示したケース10が形成される。
【0115】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる端子体を例に挙げて、半導体装置の含まれるケース10について
図19を用いて説明する。
図19は、第4の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの斜視図である。
【0116】
第4の実施の形態の半導体装置1の含まれるケース10もまた、第1の実施の形態と実質的に同様であり、枠部11と枠部11に一体成形された端子ユニット3とU,V,W端子19a~19cとを含む端子ユニットとを含んでいる。なお、
図19の半導体装置1では収納部11a~11cが封止部材で封止されている場合を示している。
【0117】
但し、端子ユニット3の含まれるN端子18a~18cと絶縁シート17dとP端子17a~17cとは順に積層して、長側部12の側部から±X方向に沿ってそれぞれ露出されている。
【0118】
次に、このような端子ユニット3に含まれる端子体3aについて
図20及び
図21を用いて説明する。
図20及び
図21は、第4の実施の形態のケースの用意工程に含まれる端子体の組み立てを示す図である。なお、
図21は、
図20の一点鎖線X-Xにおける断面図である。
【0119】
端子体3aは、
図20及び
図21に示されるように、N端子18aと絶縁シート17dとP端子17aとが順に+Y方向に位置ずれしつつ積層されて構成されている。N端子18aは、平板状を成し、外部接続部18a1と配線部18a2と内部接続部18a3とを含んでいる。
【0120】
外部接続部18a1は、絶縁シート17dの(-Y方向の)端部よりも-Y方向に突出している部分である。配線部18a2は、絶縁シート17dに重複する部分であり、P端子17aと共に絶縁シート17dを挟む。内部接続部18a3は、配線部18a2から+Y方向に延伸した部分である。
【0121】
P端子17aは、平板状を成し、外部接続部17a1と配線部17a2と内部接続部17a3とを含んでいる。外部接続部17a1は、絶縁シート17dの(-Y方向の)端部よりも+Y方向に位置ずれしている部分である。外部接続部17a1は、端子体3aが後述する端子本体部3cに封止された際に、端子本体部3cから露出する部分でもある。配線部17a2は、N端子18aと共に絶縁シート17dを挟む部分である。内部接続部17a3は、配線部17a2から+Y方向に延伸した部分である。
【0122】
絶縁シート17dは、N端子18a及びP端子17aに挟持されている。なお、絶縁シート17dは、N端子18aの内部接続部18a3とP端子17aの内部接続部17a3とには挟持されていない。絶縁シート17dの-Y方向の端部は、平面視で、N端子18aの外部接続部18a1とP端子17aの外部接続部17a1との-Y方向の端部の間に位置している。また、絶縁シート17dの±X方向の両端部は、N端子18a及びP端子17aの±X方向の両端部よりも外側に位置している。
【0123】
次に、このような端子体3aを端子本体部3cで封止された端子ユニット3について
図22及び
図23を用いて説明する。
図22及び
図23は、第4の実施の形態のケースの用意工程に含まれるケース材料による端子ユニットの成形を示す図である。なお、
図23は、
図22の一点鎖線X-Xの断面図である。また、
図22では平面視の端子ユニット3であって、端子本体部3cで覆われた部分は破線で示している。
【0124】
図20及び
図21で示した端子体3aを所定の金型にセットしてケース材料を当該金型に充填することで、
図22及び
図23に示される端子ユニット3が得られる。端子ユニット3は、端子体3aと端子体3aを封止する端子本体部3cとを含む。
【0125】
端子本体部3cは、略立方体状を成して、外部接続部17a1,18a1及び配線部17a2,18a2、絶縁シート17dを封止している。端子本体部3cは、X-Y面に対向する箇所であって、-Y方向側において、階段状に積層するP,N端子17a,18aの外部接続部17a1,18a1及び絶縁シート17dの部分が露出している。端子本体部3cの+Y方向側から、P,N端子17a,18aの内部接続部17a3,18a3が+Y方向に延伸している。また、端子本体部3cの平面視で-X方向の側面は、絶縁シート17dよりも外側に位置する。端子本体部3cの平面視で+X方向の側面は、絶縁シート17dよりも外側に位置する。
【0126】
このようにして形成された端子ユニット3が第1の実施の形態と同様に、金型にセットされてケース材料が当該金型に充填されることで、第1の実施の形態と同様の効果を奏する
図19に示したケース10が形成される。
【符号の説明】
【0127】
1 半導体装置
2 半導体ユニット
3 端子ユニット
3a 端子体
3b 端子成形体
3c 端子本体部
3c1 前面
3c2 背面
3c3 底面
3c4,3c6 側面
3c5 上面
3c7 収納部
3d ナット成形体
3e ナット本体部
3e1 前面
3e2 背面
3e3 底面
3e4,3e6 側面
3e5 上面
3e8 挟持部
3e9 凸部
10 ケース
11 枠部
11a,11b,11c 収納部
12,14 長側部
13,15 短側部
16a,16b,16c 制御端子
16a1,16b1,16c1 制御配線板
17a,17b,17c P端子
17a1 外部接続部
17a2 配線部
17a3 内部接続部
17d 絶縁シート
17h 締結孔
17s1 外面
17s2 対向面
18a,18b,18c N端子
18a1 外部接続部
18a2 配線部
18a3 内部接続部
18h 締結孔
18s1 外面
18s2 対向面
19a U端子
19a1 内部接続部
19b V端子
19b1 内部接続部
19c W端子
19c1 内部接続部
20 絶縁回路基板
21 絶縁板
21a,21c 短側面
21b,21d 長側面
22a 正極回路パターン層
22b 負極回路パターン層
22c 出力回路パターン層
24a~24d 半導体チップ
25a~25d リードフレーム
30 ナット
40 成形治具
41 収納領域
42 隙間
43 底面
43a 突起部