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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095181
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240703BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240703BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/54
C08L83/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212280
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 陸人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
(72)【発明者】
【氏名】山口 壮介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP043
4J002CP04X
4J002CP13W
4J002CP14W
4J002DE077
4J002DE097
4J002DE127
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DF017
4J002DG047
4J002DK007
4J002DL007
4J002EA018
4J002EC038
4J002EX016
4J002EX036
4J002EX038
4J002FA107
4J002FD097
4J002FD146
4J002FD208
4J002GQ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低いRI及び高い硬度を有する硬化物を提供でき、かつ低温短時間での硬化が可能な硬化性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、(A-1)アリール含有基の量が0~10モル%未満で、2個以上のSi結合アルケニル基を有するレジン状オルガノポリシロキサンと、(B-1)アリール含有基の量が10モル%以上であり、2個以上のSi結合Hを有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)ヒドロシリル化反応用触媒を含み、組成物中の(A-2)2個以上のSi結合アルケニル基有する直鎖状オルガノポリシロキサンの量は、組成物中の全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして0~3質量%であり、(組成物中のSi結合Hの合計モル数)/(組成物中のSi結合アルケニル基の合計モル数)>0.5となる硬化性シリコーン組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物であって、
(A-1)平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、
は、アルケニル基であり、
は、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、
ケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして0モル%以上及び10モル%未満であり、
Xは、水素原子又はアルキル基であり、
a、b、c及びdは、それぞれの単位のモル比を表し、0<a≦0.7、0<b≦0.8、0<c≦0.7、0≦d≦0.2、a+b+c=1.0である)
で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有するレジン状オルガノポリシロキサン、
(B-1)ケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして10モル%以上であり、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しないレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)ヒドロシリル化反応用触媒
を含み、
組成物中の(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサンの量が、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして、0~3質量%であり、
(組成物に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の合計モル数)/(組成物に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計モル数)>0.5である
硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A-3)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有し、分子量が500未満のシラン化合物又はシロキサン化合物を、[(A-1)成分の質量/((A-3)成分の質量+(A-1)成分の質量)]が0.3以上及び1以下となる量でさらに含む請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(B-2)ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しない直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを、[(B-1)成分の質量/((B-2)成分の質量+(B-1)成分の質量)]が0.1以上及び1以下となる量でさらに含む請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(D)ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含む請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(E)白色顔料をさらに含む請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射材。
【請求項8】
請求項7に記載の光半導体装置用反射材を備える光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性シリコーン組成物、その硬化物、当該硬化物からなる光半導体装置用反射材、及び当該反射材を備える光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性シリコーン組成物の硬化物は優れた耐熱性、耐低温性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性など様々な特性を有することが知られている。このため、様々な硬化性シリコーン組成物が様々な産業界で広く使用されており、光学材料としても使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、メチル系オルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物が光半導体素子の封止材として使用されることが記載されている。
【0004】
特許文献2の実施例6には、100質量部の平均単位式:(ViMeSiO1/20.06(MeSiO1/20.36(Si4/20.58のメチル系シリコーンレジン、41.33質量部の平均構造式:(HMeSiO1/2(MeSiO2/2104(MePhSiO1/24.3(HSi3/24.3の分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、20質量部の平均構造式:(ViMeSiO1/2(PhSiO2/2(MeSiO2/2104のシリコーンオイル、及び13.8質量部の式:(HMeSiO1/2(PhSiO3/2の分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン組成物が記載されている。
【0005】
特許文献3の実施例4には、40gの化学式A:(ViMeSiO1/2)(MeSiO1/2)(MeSiO2/2(SiO4/2の化合物、60gの化学式B:(ViMeSiO1/2)(MeSiO1/2(MeSiO2/2)(SiO4/2の化合物、20gの化学式E:(HMeSiO1/2(PhSiO2/2)の化合物、2gの化学式G:(HMeSiO1/2(PhSiO3/2)の化合物、及び1gの化学式D:(ViMeSiO1/2(MeSiO1/2(EpSiO3/22.5(SiO4/2)の化合物を含む組成物が記載されている。
【0006】
上記特許文献において使用されるようなメチル系オルガノポリシロキサンは、通常、フェニル系オルガノポリシロキサンよりも低い屈折率(RI)を有する。このため、メチル系オルガノポリシロキサンは、光半導体素子の白色反射材のためのマトリックス材料として有望な候補物質となっている。
【0007】
しかし、メチル系オルガノポリシロキサンは、硬度及び靱性(クラック耐性)の点でフェニル系オルガノポリシロキサンに劣っている。この欠点を回避するためにメチル系オルガノポリシロキサンの架橋密度を上げると、硬化物の硬度が高くなるが、典型的な用途のためには脆すぎる場合がある。メチル系オルガノポリシロキサンの硬度を高める別の方法として、無機フィラーなどの強化剤を添加することが考えられる。しかし、無機フィラーの添加は、通常、硬化物の光学特性の減衰、透過率の低下、又は反射率の低下、及びシリコーン組成物の粘度の増大を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-012433号公報
【特許文献2】特開2016-204423号公報
【特許文献3】特開2016-520679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低いRI及び高い硬度を有する硬化物を提供すること、並びに低温かつ短時間で硬化することが可能な硬化性シリコーン組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、低いRI、高い硬度、及び高い反射率を有する硬化物を提供すること、並びに低温かつ短時間で硬化することが可能な硬化性シリコーン組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、当該組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射材、及び当該光半導体装置用反射材を備える光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の硬化性シリコーン組成物を提供する。
硬化性シリコーン組成物であって、
(A-1)平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、
は、アルケニル基であり、
は、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、
ケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして0モル%以上及び10モル%未満であり、
Xは、水素原子又はアルキル基であり、
a、b、c及びdは、それぞれの単位のモル比を表し、0<a≦0.7、0<b≦0.8、0<c≦0.7、0≦d≦0.2、a+b+c=1.0である)
で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有するレジン状オルガノポリシロキサン、
(B-1)ケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして10モル%以上であり、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しないレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)ヒドロシリル化反応用触媒
を含み、
組成物中の(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサンの量が、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして0~3質量%であり、
(組成物に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の合計モル数)/(組成物に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計モル数)>0.5である、
硬化性シリコーン組成物。
本発明は、上記硬化性シリコーン組成物の硬化物を提供する。
本発明は、上記硬化物からなる光半導体装置用反射材を提供する。
本発明は、上記光半導体装置用反射材を備える光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る硬化性シリコーン組成物は、低温かつ短時間で硬化することができ、その硬化物が低いRI及び高い硬度を有するという効果を奏する。本発明の別の実施形態に係る硬化性シリコーン組成物は、低温かつ短時間で硬化することができ、その硬化物が低いRI、高い硬度、及び高い反射率を有するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[(A-1)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有するレジン状オルガノポリシロキサン]
(A-1)成分は、以下の平均単位式で表される、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有するレジン状オルガノポリシロキサンである。
(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(XO1/2
式中、Rは、アルケニル基であり、Rは、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして0モル%以上及び10モル%未満であり、Xは、水素原子又はアルキル基であり、a、b、c及びdは、それぞれの単位のモル比を表し、0<a≦0.7、0<b≦0.8、0<c<0.7、0≦d≦0.2、a+b+c=1.0である。
本発明の硬化性シリコーン組成物は、1種類の(A-1)成分を含んでもよいし、2種類以上の(A-1)成分を含んでいてもよい。
【0013】
本明細書において、「レジン状オルガノポリシロキサン」とは、分子構造中にT単位(RSiO3/2)(式中、Rは一価炭化水素基または水素原子である)およびQ単位(SiO4/2)から選択される単位を少なくとも1つ含むオルガノポリシロキサンを意味する。レジン状オルガノポリシロキサンは、分岐鎖状構造、三次元網状構造、又はこれらの組み合わせを有しうる。
【0014】
本明細書において、「アリール含有基」とは、アリール基、アリール基を一部に有する炭化水素基、又は前記アリール基及び前記炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基を意味し、本明細書において、「ケイ素原子に結合したアリール含有基」とは、ケイ素原子に直接結合している前記「アリール含有基」を意味する。アリール含有基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「有機基」とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。また、「ケイ素原子に結合した有機基」とは、シロキサン結合(-O-Si-)を介さずにケイ素原子に直接結合している有機基を意味する。
【0016】
(A-1)成分の平均単位式におけるRのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0017】
(A-1)成分の平均単位式におけるRの脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、一実施形態において、Rは、アリール含有基以外の一価炭化水素基である。
【0018】
(A-1)成分においてケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして0モル%以上及び10モル%未満である。すなわち、(A-1)成分において、ケイ素原子に結合したアリール含有基は存在しないか、又はケイ素原子に結合したアリール含有基が存在する場合でも、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量はケイ素原子に結合した全有機基の10モル%未満である。上記平均単位式において、(A-1)成分におけるR及びRの全てがケイ素原子に結合した全有機基に該当する。(A-1)成分におけるケイ素原子に結合したアリール基の量は、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、0モル%以上及び10モル%未満であり、好ましくは、0モル%以上及び5モル%以下であり、より好ましくは、0モル%以上及び1モル%以下であり、さらにより好ましくは、0モル%である。(A-1)成分において、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量が、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、0モル%以上及び10モル%未満であることにより、硬化性シリコーン組成物から形成された硬化物が低い屈折率(RI)を有しうる。
【0019】
(A-1)成分の平均単位式において、Xは水素原子又はアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、及びプロピル基が例示される。
【0020】
(A-1)成分の平均単位式において、aは、0<a≦0.7の範囲であり、好ましくは、0.01≦a≦0.7の範囲であり、より好ましくは、0.05≦a≦0.6の範囲であり、さらにより好ましくは、0.1≦a≦0.5の範囲である。bは、0<b≦0.8の範囲であり、好ましくは、0.01≦b≦0.6の範囲であり、より好ましくは、0.05≦b≦0.5の範囲であり、さらにより好ましくは、0.1≦b≦0.4の範囲である。cは、0<c<0.7の範囲であり、好ましくは、0.2≦c≦0.6の範囲であり、より好ましくは、0.3≦c≦0.5の範囲であり、さらにより好ましくは、0.35≦c≦0.45の範囲である。dは、0≦d≦0.2の範囲であり、好ましくは、0≦d≦0.15の範囲であり、より好ましくは、0≦d≦0.1の範囲であり、さらにより好ましくは、0≦d≦0.05の範囲である。
【0021】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物中に含まれる(A-1)成分の量は、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、さらにより好ましくは、40質量%以上であり、及び好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらにより好ましくは、60質量%以下、特により好ましくは、50質量%以下である。
【0022】
本発明の一実施形態において、(A-1)成分は、500以上の分子量を有する。(A-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは、1000以上であり、より好ましくは、1500以上であり、さらに好ましくは、2000以上であり、および好ましくは、100000以下であり、より好ましくは、70000以下であり、さらにより好ましくは、50000以下である。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレンに換算した値である。
【0023】
[(A-2)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサン]
本発明の硬化性シリコーン組成物においては、(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサンの量が、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして0~3質量%である。即ち、本発明の硬化性シリコーン組成物において、(A-2)成分は、任意成分であり、組成物に含まれていても含まれていなくてもよい。ただし、組成物に(A-2)成分が含まれる場合には、(A-2)成分の量は、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして、3質量%以下でなければならない。本明細書において、「組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分」とは、オルガノポリシロキサンであれば特に限定されず、例えば、直鎖状であってもレジン状であってもよいアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、直鎖状であってもレジン状であってもよいオルガノハイドロジェンポリシロキサン、およびその他のオルガノポリシロキサン、例えばケイ素結合水素原子及びケイ素結合アルケニル基を含まないオルガノポリシロキサンなどを含みうる。硬化性シリコーン組成物は、1種のみの(A-2)成分を含んでいてもよいし、2種以上の(A-2)成分を含んでいてもよい。
【0024】
(A-2)成分は、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基に加えて、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基を有する。(A-2)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0025】
(A-2)成分中の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。(A-2)成分中の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基は、好ましくは、炭素原子数1~6の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基、より好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基である。一実施形態において、(A-2)成分中の一価炭化水素基は、アリール含有基ではない。
【0026】
(A-2)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、オルガノポリシロキサン分子の末端(すなわち、(RSiO1/2)単位(M単位)、Rは一価炭化水素基)だけに有していてもよいし、分子のジオルガノシロキサン繰り返し単位(すなわち、(RSiO2/2)単位(D単位)、Rは一価炭化水素基)中だけに有していてもよいし、又は分子の末端(M単位)及びジオルガノシロキサン繰り返し単位(D単位)の双方に有していてもよい。
【0027】
(A-2)成分は、以下の一般式で表されうる。
SiO(R SiO)SiR
式中、Rは、一価炭化水素基であり、少なくとも2個のRは、アルケニル基であり、nは、5以上の整数である。
【0028】
上記式において、Rの一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6の一価の炭化水素基、より好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基である。また、一実施形態において、Rは、アリール含有基以外の一価炭化水素基である。
【0029】
上記式において、Rの少なくとも2個のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、特に好ましくは、ビニル基である。
【0030】
本発明の一実施形態においては、(A-2)成分は、以下の一般式で表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖構造を有する直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンでありうる。
SiO(R SiO)SiR
式中、Rは、アルケニル基であり、Rは、各々独立に、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、nは、5以上の整数である。
【0031】
上記式中、Rは、アルケニル基である。このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、特に好ましくは、ビニル基である。
【0032】
上記式中、Rは、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基、より好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基である。また、一実施形態において、Rは、アリール含有基以外の一価炭化水素基である。
【0033】
上記式中、nは、5以上であり、好ましくは、10以上であり、より好ましくは、20以上であり、さらに好ましくは、30以上である。一実施形態において、nは、3,000以下であり、より好ましくは、2,000以下、さらにより好ましくは、1,000以下である。
【0034】
本発明の一実施形態において、(A-2)成分は、500以上の分子量を有する。(A-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは、1,000以上であり、より好ましくは、2,000以上であり、さらに好ましくは、3,000以上である。一実施形態において、(A-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、200,000以下であり、好ましくは、160,000以下であり、より好ましくは、120,000以下である。
【0035】
[(A-3)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有し、分子量が500未満のシラン化合物又はシロキサン化合物]
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、(A-3)成分、すなわち、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個有し、分子量が500未満のシラン化合物又はシロキサン化合物を含んでいてもよい。(A-3)成分としては、例えば、式:(ViMeSiO1/2(SiO4/2)、式:(ViMeSiO2/2又は式:(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2)を有する化合物が挙げられる。
【0036】
(A-3)成分が硬化性シリコーン組成物に含まれる場合、組成物中の(A-3)成分の量は、好ましくは、[(A-1)成分の質量/((A-3)成分の質量+(A-1)成分の質量)]が0.3以上及び1以下となる量であり、より好ましくは、0.4以上及び0.9以下となる量であり、さらにより好ましくは、0.5以上及び0.8以下となる量である。
【0037】
[(B-1)成分:レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(B-1)成分、すなわち、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量がケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして10モル%以上であり、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しないレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む。(B-1)成分は、硬化性シリコーン組成物において架橋剤として機能する。硬化性シリコーン組成物は、1種のみの(B-1)成分を含んでいてもよいし、2種以上の(B-1)成分を含んでいてもよい。(B-1)成分は、分岐状又は三次元網状構造を有しうる。(B-1)成分において、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量は、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、10モル%以上であり、好ましくは、15モル%以上、より好ましくは、18モル%以上である。
【0038】
(B-1)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しない。(B-1)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B-1)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が結合していてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態においては、(B-1)成分は、以下の平均単位式で表されるレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
式中、各Rは、互いに同じであっても異なっていてもよい、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基、又は水素原子であり、但し、一分子中、少なくとも2個のRは、水素原子であり、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量が、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして10モル%以上であり、Xは、水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、u、v、w、x及びyは、それぞれの単位のモル比を表し、0≦u≦0.8、0≦v≦0.6、0≦w≦0.8、0≦x≦0.9、0≦y≦0.10、但し、w+x>0、かつu+v+w+x+y=1である。上記式中、好ましくは、0.1≦u≦0.8、0≦v≦0.5、0≦w≦0.8、0≦x≦0.8、0≦y≦0.1、0.1≦w+x≦0.8、かつu+v+w+x+y=1である。より好ましくは、0.2≦w+x≦0.6、さらにより好ましくは、w+xが0.3以上、特に好ましくは、0.35以上である。
【0040】
の一価炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数6~12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数7~12のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基、例えば3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基が例示される。Rの一価炭化水素基は、好ましくは、メチル基及びフェニル基である。Xは、好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0041】
本発明の一実施形態においては、(B-1)成分は、以下の平均単位式で表されるレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンでありうる。
(R SiO1/2u1(R SiO2/2v1(R6'SiO3/2w1
式中、Rは、それぞれ独立して上述の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基又は水素原子であり、少なくとも2個のRが水素原子であり、R6'は、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量が、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、10モル%以上であり、u1、v1、及びw1は、それぞれの単位のモル比を表し、0.1≦u1≦0.8、0≦v1≦0.5、0.1≦w1≦0.8かつu1+v1+w1=1を満たす数を示す。R6'の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基としては、Rの一価炭化水素基として例示した基が挙げられる。一実施形態においては、上記平均単位式において、v1=0である。一実施形態においては、上記平均単位式において、v1=0であり、Rは、アルキル基又は水素原子であり、好ましくは、メチル基又は水素原子であり、R6'は、アリール基であり、好ましくは、フェニル基である。
【0042】
本発明の一実施形態においては、(B-1)成分は、以下の平均単位式で表される。
(R SiO1/2u2(SiO4/2x2
式中、Rは、上述の一価炭化水素基又は水素原子であり、少なくとも2個のRが水素原子であり、ケイ素原子に結合したアリール含有基の量が、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、10モル%以上であり、u2およびx2は、それぞれの単位のモル比を表し、u2+x2=1であり、好ましくは、0.1≦u2≦0.8かつ0.2≦x2≦0.9であり、より好ましくは、0.5≦u2≦0.7かつ0.3≦x2≦0.5である。
【0043】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物中に含まれる(B-1)成分の量は、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらにより好ましくは、10質量%以上であり、及び好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらにより好ましくは、25質量%以下である。
【0044】
(B-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは、300以上であり、より好ましくは、500以上であり、さらに好ましくは、1000以上であり、および好ましくは、100000以下であり、より好ましくは、50000以下であり、さらにより好ましくは、30000以下である。
【0045】
[(B-2)成分:直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、(B-2)成分、すなわち、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しない直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでいてもよい。(B-2)成分は、硬化性シリコーン組成物において、架橋剤として機能する。硬化性シリコーン組成物は、1種のみの(B-2)成分を含んでいてもよいし、2種以上の(B-2)成分を含んでいてもよい。
【0046】
(B-2)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有しない。(B-2)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子に加えて、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基を有する。本発明の一実施形態において、(B-2)成分は、前記一価炭化水素基としてケイ素原子に結合したアリール含有基を有しうる。ケイ素原子に結合したアリール含有基の量は、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上であり、さらにより好ましくは、15モル%以上でありうる。
【0047】
(B-2)成分中の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。(B-2)成分中の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基は、好ましくは、炭素原子数1~6の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基のいずれか1種以上およびフェニル基であり、さらにより好ましくは、メチル基及びフェニル基である。
【0048】
(B-2)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を、オルガノポリシロキサン分子の末端(すなわち、(RSiO1/2)単位(M単位)、Rは一価炭化水素基又は水素原子)だけに有していてもよいし、分子のジオルガノシロキサン繰り返し単位(すなわち、(RSiO2/2)単位(D単位)、Rは一価炭化水素基又は水素原子)中だけに有していてもよいし、又は分子の末端(M単位)及びジオルガノシロキサン繰り返し単位(D単位)の双方に有していてもよい。
【0049】
(B-2)成分は、以下の一般式で表されうる。
SiO(R SiO)SiR
式中、Rは、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基、又は水素原子であり、少なくとも2個のRは、水素原子であり、nは、1以上の整数である。上記式においてRはアリール含有基でありうる。
【0050】
上記式において、Rの一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rの一価炭化水素基は、好ましくは、メチル及びフェニルである。
【0051】
本発明の一実施形態においては、(B-2)成分は、以下の一般式で表される、ケイ素原子に結合したアリール含有基を有し、分子鎖両末端にケイ素原子に結合した水素原子を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンでありうる。
SiO(R9' SiO)SiR
式中、Rは、水素原子であり、R及びR9’は、各々独立に、脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基であり、nは、1以上の整数である。上記式においてR及びR9’は、それぞれ独立にアリール含有基でありうる。ケイ素原子に結合したアリール含有基の量は、ケイ素原子に結合した全有機基の合計モル数を基準にして、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上であり、さらにより好ましくは、15モル%以上でありうる。
【0052】
上記式中、R及びR9’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基、並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R及びR9’は、好ましくは、炭素原子数1~6の脂肪族不飽和炭素結合を有さない一価炭化水素基、より好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基である。より好ましくは、R及びR9’は、メチル及びフェニルからなる群から選択される。一実施形態においては、Rは、アルキル基、好ましくは、メチル基であり、及びR9’は、アリール基、好ましくは、フェニル基でありうる。
【0053】
上記式において、nは、2000以下であり、より好ましくは、1500以下、さらにより好ましくは、1000以下である。
【0054】
(B-2)成分が硬化性シリコーン組成物に含まれる場合、組成物中の(B-2)成分の量は、好ましくは、[(B-1)成分の質量/((B-2)成分の質量+(B-1)成分の質量)]が0.1以上及び1以下となる量であり、より好ましくは、0.2以上及び0.9以下となる量であり、さらにより好ましくは、0.5以上及び0.8以下となる量である。
【0055】
(B-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは、300以上であり、より好ましくは、500以上であり、および好ましくは、200000以下であり、より好ましくは、150000以下であり、さらにより好ましくは、100000以下である。
【0056】
本発明の硬化性シリコーン組成物においては、[(組成物に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の合計モル数)/(組成物に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計モル数)]>0.5となる量である。なお、本明細書において、上記式は、[水素/アルケニル基]とも称されうる。[水素/アルケニル基]の値は、好ましくは、0.5を超え1.5以下であり、より好ましくは、0.7以上及び1.5以下であり、さらにより好ましくは、0.7以上及び1.2以下である。水素/アルケニル基の値を0.5超とすることにより、硬化物の硬度が高くなる。
【0057】
本発明の硬化性シリコーン組成物の成分中のアルケニル基の量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を以下に述べる。
【0058】
まず、シリコーン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。
式(1) CH=CH- + 2ICl → CHI-CHCl- + ICl(過剰)
次に、式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。
式(2) ICl+KI → I + KCl
次に、遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基濃度(モル%)を定量することができる。質量%を求める場合には、モル%に式量(ビニル基の場合、CH=CH-のため式量27)を掛けることで質量%を計算することができる。
【0059】
[(C)成分:ヒドロシリル化反応用触媒]
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(C)成分、すなわち、ヒドロシリル化反応用触媒を含む。硬化性シリコーン組成物は、1種のみの(C)成分を含んでいてもよいし、2種以上の(C)成分を含んでいてもよい。(C)成分は、オルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合したアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に結合した水素原子との付加反応(すなわち、ヒドロシリル化反応)を促進させるための触媒として使用される成分である。このような(C)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒、さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0060】
(C)成分の配合量は、硬化性シリコーン組成物中に含まれる成分の硬化に必要な触媒量であり、特に制限されるものではない。例えば、(C)成分として白金系触媒が使用される場合、この白金系触媒に含まれる白金金属量は、硬化性シリコーン組成物中に重量基準で0.01~1000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1~500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0061】
[(D)成分:ヒドロシリル化反応抑制剤]
一実施形態においては、本発明の硬化性シリコーン組成物は、任意成分として、(D)成分、すなわち、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいてもよい。(D)成分であるヒドロシリル化反応抑制剤は、シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分である。(D)成分の具体例としては、メチルトリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、トリメチル(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)シラン等のシリル化アセチレン化合物、1-エチニルシクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル環状シロキサン化合物、及びベンゾトリアゾールなどが挙げられる。硬化性シリコーン組成物における(D)成分の含有量は、限定されないが、通常、硬化性シリコーン組成物全体の0.001~5質量%である。
【0062】
[(E)成分:白色顔料]
一実施形態においては、本発明の硬化性シリコーン組成物は、(E)成分、すなわち、白色顔料を含んでいてもよい。(E)成分(白色顔料)としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー、その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましい。また、UV領域の光反射率が高いことから、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが好ましい。硬化性シリコーン組成物は、1種のみの(E)成分を含んでいてもよいし、2種以上の(E)成分を含んでいてもよい。本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物が(E)成分を含む場合には、実施例において示される条件下で(30μmの硬化物厚さ、450nmの波長の光)、91%以上、好ましくは、93%以上の光反射率を示しうる。
【0063】
(E)成分は、反射率・白色度・耐光性を高める目的で、表面処理された白色顔料であってもよい。表面処理の種類としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、有機化合物、シロキサンでの処理など、公知の表面処理が挙げられる。有機化合物としては、特に限定されないが、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。表面処理の方法としては、公知の方法であれば特に限定されず、(1)あらかじめ表面処理された白色顔料をシリコーン組成物中に混合させる方法、(2)白色顔料とは別に表面処理剤をシリコーン組成物中に添加し、組成物中で白色顔料とを反応させる方法、などを用いることができる。
【0064】
(E)成分の表面処理は、公知の種類のものであれば、特に限定されないが、シリカを含まないものが、得られる白色硬化物の耐光性が特に優れる点で、特に好ましい。さらに、有機物処理を含まないものの方が、得られる白色硬化物の耐熱試験後の反射率を高く維持できる点で、特に好ましい。白色顔料の表面処理は、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)や誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)などの分析方法を用いて分析することができる。
【0065】
(E)成分の平均粒径や形状は、限定されないが、平均粒径は、0.05~10μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.1~2μmの範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0066】
本発明の硬化性シリコーン組成物において、(E)成分は、任意成分であり、組成物に(E)成分が含まれる場合のその含有量は、特に限定されない。硬化性シリコーン組成物が(E)成分を含む場合には、硬化性シリコーン組成物中の(E)成分の量は、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して、好ましくは、50質量部以上であり、より好ましくは、75質量部以上であり、さらにより好ましくは、100質量部以上である。これは、(E)成分の含有量が上記下限以上であると、得られる硬化物の光反射率が良好であるからである。また、好適な実施形態において、硬化性シリコーン組成物中の(E)成分の量は、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して、好ましくは、200質量部以下であり、より好ましくは、150質量部以下であり、さらにより好ましくは、120質量部以下である。
【0067】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で上述の成分以外の任意成分を含んでいてもよい。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、白色顔料以外の無機充填剤、又は、無機充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填剤、粉体の表面処理剤又は界面活性剤、ケイ素原子結合水素原子及びケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、粘着性付与剤、離型剤、金属石鹸、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、溶剤等が挙げられる。
【0068】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的に反しない限り、上記(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分、(B-1)成分および(B-2)成分以外のオルガノポリシロキサン成分を含んでいてもよいが、上記(A-1)成分、(A-2)成分、(A-3)成分、(B-1)成分および(B-2)成分以外のオルガノポリシロキサン成分の量は、組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量を基準にして、好ましくは、0~20質量%であり、より好ましくは、0~10質量%であり、さらにより好ましくは、0~5質量%でありうる。
【0069】
無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、シルセスキオキサン、酸化マグネシウム、酸化鉄、タルク、マイカ、ケイ藻土、ガラスビーズ等の金属酸化物粒子、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の無機充填剤、ガラス繊維等の繊維状充填剤、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、無機充填剤の配合量は、本組成物の40質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0070】
粉体の表面処理剤としては、特に限定されないが、オルガノシラザン類、オルガノシクロシロキサン類、オルガノクロロシラン類、オルガノアルコキシシラン類、低分子量の直鎖状シロキサン類、有機化合物などが挙げられる。ここで、有機化合物としては、例えば、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物、有機金属錯体、フッ素系有機化合物、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0071】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基、3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基、3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基、水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は、組成物中のアルケニル基又はケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子又はアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、及びケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物又はシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は、低粘度液状であることが好ましく、その粘度は、限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は、限定されないが、組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0072】
離型剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸系離型剤、エステル系離型剤、エーテル系離型剤、ケトン系離型剤、アルコール系離型剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記離型剤としては、ケイ素原子を含まないもの、ケイ素原子を含むもの、又はこれらの混合物を使用することができる。より具体的には、離型剤としてカルナウバワックス、モンタンワックス、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、エステル系ワックス、オレフィン系ワックス等が例示される。
【0073】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては、特に限定がなく、一軸又は二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0074】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには、加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50~200℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、50~90℃である。本発明の硬化性シリコーン組成物は、低温度かつ短時間で硬化可能であり、例えば、実施例に記載の方法で硬化を判断する場合、90℃で20分以内に硬化可能である。
【0075】
[硬化物]
本発明の一実施形態は、硬化性シリコーン組成物の硬化物に関する。本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物は、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化することにより得られる。硬化物の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、フィルム状が挙げられる。硬化物が光半導体装置用反射材として使用される場合には、硬化物は、反射材としての使用に適した形状であり得る。硬化物は、これを単体で取り扱うこともできるが、基材に組み込まれた状態で取り扱うことも可能である。本発明の硬化性シリコーン組成物が白色顔料を含む場合、その硬化物は、実施例に示される鉛筆硬度試験において、好ましくは、2B以上、より好ましくは、B以上、さらにより好ましくは、F以上の鉛筆硬度を有しうる。本発明の硬化物が顔料を含まない透明な硬化物の場合には、ショアD硬度(JIS K 6253-1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」で規定されるタイプDデュロメータにより、このシート状硬化物の25℃での硬さを測定した)は、好ましくは、30以上、より好ましくは、40以上でありうる。
【0076】
[光半導体装置用反射材]
本発明の一実施形態は、硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射材に関する。本発明の光半導体装置用反射材は、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる。光半導体装置としては、特に限定されず、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0077】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、本発明の光半導体装置用反射材を備える。光半導体装置としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【実施例0078】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明されるが、実施例の記載に限定されるものではない。
【0079】
実施例及び比較例において使用された成分が以下に示される。なお、下記式において、Meは、メチル基を表し、Viは、ビニル基を表し、Phは、フェニル基を表す。下記平均単位式における各単位に添付された数値は、その単位のモル比を表す。表中、Mは、(MeSiO1/2)のM単位を表し、M(Vi)は、(ViMeSiO1/2)のM単位を表し、M(H)は、(HMeSiO1/2)のM単位を表し、Dは、(MeSiO2/2)のD単位を表し、D(Ph)は、(PhSiO2/2)のD単位を表し、T(Ph)は、(PhSiO3/2)のT単位を表し、Qは、(SiO4/2)のQ単位を表す。実施例において、ビニル基含有量(質量%)は、前述した滴定法により定量した値である。
【0080】
成分A-1-1:平均単位式(ViMeSiO1/20.066(MeSiO1/20.409(SiO4/20.521(OH)0.045で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ビニル基含有量2.6質量%、重量平均分子量(Mw)5000
成分A-1-2:平均単位式(ViMeSiO1/20.15(MeSiO1/20.45(SiO4/20.40で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ビニル基含有量5.44質量%
成分A-1-3:平均単位式(ViMeSiO1/20.55(MeSiO1/20.05(SiO4/20.40で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ビニル基含有量18.8質量%
成分A-2-1:平均構造式ViMeSiO(MeSiO)195SiMeViで表されるアルケニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、ビニル基含有量0.38質量%
成分A-3-1:構造式(ViMeSiO1/2(SiO4/2)で表される低分子量シロキサン化合物、ビニル基含有量25.0質量%、分子量432
成分B-1-1:平均単位式(HMeSiO1/20.6(PhSiO3/20.4で表されるフェニル基含有レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量0.65質量%
成分B-2-1:構造式(HMeSiO1/2(PhSiO2/2)で表されるフェニル基含有直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量0.60質量%、分子量332
成分B-3-1:平均単位式(HMeSiO1/20.600(MeSiO1/20.002(SiO4/20.398で表されるフェニル基非含有レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量0.95質量%、重量平均分子量(Mw)1600
成分B-3-2:平均構造式(HMeSiO1/2)(MeSiO2/220(HMeSiO1/2)で表されるフェニル基非含有直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量0.14質量%
成分C-1:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体
成分D-1:1-エチニル-1-シクロヘキサノール
成分E-1:二酸化チタン
OE7660:フェニル系LED照明用シリコーン(ダウコーニング社製)
JCR-6122:メチル系LED照明用シリコーン(ダウコーニング社製)
【0081】
各成分を表1~表3に示す組成(質量部)で混合し、硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、表1~表3中、H/Viは、(組成物に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の合計モル数)/(組成物に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基(すなわち、ビニル基)の合計モル数)を表す。
【0082】
[評価]
実施例又は比較例の各組成物について、組成物の硬化速度、硬化物の鉛筆硬度、硬化物の反射率、および硬化物の屈折率(RI)が以下の方法に従って測定され、結果が表1~3に示される。
【0083】
[組成物の硬化速度]
硬化性シリコーン組成物5.56gをMDR(Moving Die rheometer)にて、90℃でのトルクがプラトーに達するまでの時間を、組成物全体が硬化した時間と判断し、硬化時間と特定した。硬化時間が20分以内の場合に合格とした。
【0084】
[鉛筆硬度]
硬化性シリコーン組成物をガラス板上に塗布し、90℃で20分加熱して硬化させ、ガラス板上に乾燥膜厚30~50μmの硬化物を有する試験片を得た。JIS K 5400に準拠し、荷重1000g、移動速度0.5mm/sの条件で鉛筆を用いて試験片上の硬化物を引っ掻いた際に、硬化物膜が界面破壊した場合の鉛筆濃度の一段階下位の濃度番号を記録した。
【0085】
[反射率]
硬化性シリコーン組成物をガラス基板上に塗布し、90~150℃で0.5~2時間加熱して硬化させ、厚さ30μmの硬化物を得た。得られた硬化物に(分光測色計CM-5、コニカミノルタ社製)を使用して光(波長450nm)の反射率(%)を測定した。
【0086】
[屈折率(RI)]
硬化性シリコーン組成物をガラス基板上に塗布し、150℃で2時間加熱して硬化させ、厚さ30μmの硬化物を得た。得られた硬化物の屈折率を、アッベ式屈折率計を用いて25℃で測定した。なお、光源として、可視光(589nm)を用いた。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
実施例1~8及び比較例2~3は、本発明の硬化性シリコーン組成物が市販のLED照明用シリコーン組成物と比べて、硬化物の硬度、硬化物の反射率および低温硬化性の点で総合的に優れていることを示す。実施例1~8及び比較例1、4~8は、充分な硬度の硬化物を得るためにはフェニル基を含有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが必要であることを示す。実施例1~8および比較例5は、H/Viが0.5の場合には、組成物がフェニル基を含有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでいるとしても硬化物の充分な硬度が得られないことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、光半導体装置用の材料を形成するために使用可能であり、特に、光半導体装置用反射材、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体等の光半導体装置用の反射材を製造する材料として有用である。