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特開2024-95183積層体、包装容器、積層体の製造方法、包装容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095183
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】積層体、包装容器、積層体の製造方法、包装容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20240703BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240703BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240703BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B27/10
B32B27/00 D
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212284
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 訓
(72)【発明者】
【氏名】杉山 守広
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB05
3E086BB23
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA06
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AK07E
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100AK42C
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AT00A
4F100BA05
4F100CA02B
4F100CA02D
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100CB03E
4F100DG10A
4F100EH66C
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK08
4F100JL11
4F100JL12E
(57)【要約】
【課題】開封時の手切れ性に優れた包装容器を形成できる積層体を提供する。
【解決手段】積層体1は、紙製の基材11と、基材11の一面に第一の接着剤層14を介して固定されている中間層12と、中間層12の基材11とは反対側の面に第二の接着剤層15を介して固定されているシーラント層13と、を含み、第二の接着剤層15は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含み、
前記第二の接着剤層は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる積層体。
【請求項2】
紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含み、前記第二の接着剤層は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる積層体を、包装体用紙として含み、
前記積層体からなる包装体用紙同士は、
前記シーラント層を内側にして当該シーラント層の糊代同士がシールされている包装容器。
【請求項3】
紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含む積層体を製造する方法であって、
前記第二の接着剤層を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を使用する積層体の製造方法。
【請求項4】
紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含む積層体を形成する第一の工程と、
前記積層体の前記シーラント層を内側にして当該シーラント層の糊代同士をシールする第二の工程と、
を備え、
前記第一の工程において、前記第二の接着剤層を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を使用する包装容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、包装容器、積層体の製造方法、包装容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長期保存が可能なレディーミール、例えばベビーフードや介護食、カレーや魚などの煮込み料理の包装容器として、従来は、缶詰や瓶詰、そして、アルミニウム箔を各種プラスチックフィルムで挟み込んだ積層シートからなるレトルトパウチが使われてきた。また、近年では、積層シートの基材として、電子レンジで調理可能なアルミナやシリカが蒸着されたプラスチックフィルムを用いたレトルトパウチも多く流通している。さらに、近年の防災意識の高まりから、災害時の備蓄食の機能として、保存容器のまま直接飲食が可能である点も重要視されるようになってきた。
【0003】
しかし、基材がプラスチックフィルムである場合、掌の上で安定して自立する包装容器を得ようとすると、厚いプラスチックフィルムを用いる必要があるため、廃棄の困難性が高まるとともに、環境への負荷がより大きくなる。基材として紙を用いれば環境への負荷を軽減できるが、安定して自立させるという点で課題がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、基材として紙を用いながら、安定して自立することが可能な包装容器が開示されている。また、特許文献1には、この包装容器の製造方法として、少なくとも基材と、バリア層と、シーラント層とがこの順で積層された積層シートを所定形状に切断し、切断された積層シートを、シーラント層を内側にして折り曲げた後、シーラント層の糊代同士をシールする方法が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、基材フィルム層、接着剤層、シーラント層を含む積層体であり、接着剤層はポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の反応生成物を含み、ポリオール化合物の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比が1:3~1:18である接着剤により形成され、接着剤層が所定量となるように形成されている易引き裂き性積層体が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、食品、医療品、化粧品等の内容物を包装する軟包装材料用の積層体について、各種プラスチックフィルム同士や、プラスチックフィルムと金属蒸着フィルムや金属箔とを、特定のポリオール成分と二種類以上の脂肪族系ポリイソシアネート成分とを含有する接着剤を用いて、貼り合わせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2018/230621パンフレット
【特許文献2】特開2018-8422号公報
【特許文献3】特開2019-112567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、基材として紙を用いることにより、プラスチックフィルムを用いた場合には生じていなかった問題が生じた。具体的には、紙基材を使用した積層体で形成された包装容器では、開封時にシーラント層が伸び切れてしまい、手切れ性が良くないということが分かった。つまり、紙基材を使用した積層体で形成された包装容器には、開封時の手切れ性に改善の余地がある。
【0009】
本発明の課題は、開封時の手切れ性に優れた包装容器を形成できる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様は、紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含み、前記第二の接着剤層は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる積層体を提供する。
なお、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる第二の接着剤層は、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を硬化させて形成することができるが、市販の硬化剤のようにイソホロンジイソシアネート以外の成分が添加剤として多少含まれている硬化剤を使用して第二の接着剤層を形成した場合、第二の接着剤層には、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物以外に、この添加剤に起因する成分も多少含まれることになる。よって、第一態様の積層体を構成する第二の接着剤層は、この添加剤に起因する成分をポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物以外に多少含んでいてもよい。
【0011】
本発明の第二態様は、紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含み、前記第二の接着剤層は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる積層体を、包装体用紙として含み、前記積層体からなる包装体用紙同士は、前記シーラント層を内側にして当該シーラント層の糊代同士がシールされている包装容器を提供する。
【0012】
本発明の第三態様は、紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含む積層体を製造する方法であって、前記第二の接着剤層を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を使用する積層体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第四態様は、紙製の基材と、前記基材の一面に第一の接着剤層を介して固定されている中間層と、前記中間層の前記基材とは反対側の面に第二の接着剤層を介して固定されているシーラント層と、を含む積層体を形成する第一の工程と、前記積層体の前記シーラント層を内側にして当該シーラント層の糊代同士をシールする第二の工程と、を備え、前記第一の工程において、前記第二の接着剤層を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を使用する包装容器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開封時の手切れ性に優れた包装容器を形成できる積層体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態である積層体を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態である包装容器の正面図である。
図3】本発明の実施形態である包装容器の背面図である。
図4】本発明の実施形態である包装容器の組立方法を示す斜視図である。
図5図2のII-II断面図である。
図6図2のIII-III断面図である。
図7】本発明の実施形態である包装容器の製造方法を説明する図である。
図8】本発明の実施形態である包装容器の製造方法を説明する図である。
図9】実施例で行った引張試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
【0017】
[実施形態の積層体および包装容器の構成]
図1に示すように、本実施形態の積層体1は、紙製の基材11と、中間層12と、シーラント層13と、第一の接着剤層14と、第二の接着剤層15とで構成されている。中間層12は、基材11の一面に第一の接着剤層14を介して固定されている。シーラント層13は、中間層12の基材11とは反対側の面に第二の接着剤層15を介して固定されている。
【0018】
基材11は、積層体1に剛性を付与するものである。基材11としては、例えば、坪量が60~140g/m2で、厚さが120~220μmの紙を使用する。なお、積層体1を用いてレトルトパウチを作製する場合は、レトルト(加熱処理)に耐え得る紙を使用する。
中間層12としては、例えば、酸素や紫外線などの各種バリア性に優れたバリア層を使用する。バリア層として、例えば、厚さが12μm程度のプラスチック(PET、PP、PE、またはナイロン)製フィルムに、バリアコート層として無機化合物(アルミナまたはシリカ)の蒸着膜を有するバリアフィルムを使用する。
シーラント層13は、積層体1に熱圧着性や密封性などを付与するものであり、例えば、ポリオレフィン系のフィルムを用いることができる。より具体的な例としては、厚さが60μm以上の無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)が挙げられる。
【0019】
第一の接着剤層14は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる層である。第一の接着剤層14は、基材11と中間層12との間に、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を配置して硬化させることにより形成される。つまり、第一の接着剤層14を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤が使用されている。ただし、第一の接着剤層14を形成する接着剤はこれに限定されず、例えば、主剤がポリオールで硬化剤がヘキサメチレンジイソシアネート等である二液混合型接着剤を使用してもよい。
【0020】
第二の接着剤層15は、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物からなる層である。第二の接着剤層15は、中間層12とシーラント層13との間に、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を配置して硬化させることにより形成される。つまり、第二の接着剤層15を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤が使用されている。
主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を構成するポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオールとポリウレタンポリオールとの混合物が挙げられる。
【0021】
図2および図3に示すように、本実施形態の包装容器10は、正面部21及び背面部22と、正面部21及び背面部22の第1の方向(X方向)の一端側から他端側に向かって正面部21及び背面部22の内側に折り込まれた底面部23と、を備えている。正面部21及び背面部22の各々は、同一平面内において、第1の方向(X方向)に高さを有し、第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に幅を有する。
本実施形態では、第1の方向であるX方向を高さ方向と呼び、第2の方向であるY方向を幅方向と呼ぶこともある。従って、底面部23は、正面部21及び背面部22の各々の高さ方向(X方向)において、互いに反対側に位置する一端側(一辺側)及び他端側(他辺側)のうちの一端側(一辺側)に設けられている。底面部23は、正面部21及び背面部22の各々の内側に第1部分23a及び第2部分23bが互いに向かい合うように、二つ折りで折り込まれている(図4(c)参照)。
【0022】
また、包装容器10は、正面部21及び背面部22の各々の幅方向の縁(以下、縁と単にいうことがある)を2重に重ねてシールした側面シール部24と、正面部21及び背面部22の縁及び底面部23の幅方向の縁(以下、単に「縁」と言うことがある)を4重に重ねてシールした底面シール部25とを備えている。なお、図2及び図3においては、側面シール部24、底面シール部25、及び後述する補強シール部25aが網掛けで表示されている。
【0023】
側面シール部24及び底面シール部25は、正面部21及び背面部22の幅方向(Y方向)において反対側に位置する2つの縁にそれぞれ設けられている。底面シール部25は正面部21及び背面部22の一端側(一辺側)から他端側(他辺側)に向かって延伸し、側面シール部24は底面シール部25に連結されて底面シール部25から正面部21及び背面部22の他端側に向かって延伸している。
底面部23が折り込まれた底折込み深さh23、つまり底面シール部25の長さは、正面部21及び背面部22の高さh22の10~40%とすることが好ましい。この範囲より狭い10%未満の場合、開いたときの底面部23が狭くなるため、包装容器10は安定して自立できない。また、この範囲より広い40%を超える場合、折り込まれた底面部23を開くと、底面部23が開ききらないため、包装容器10は安定して自立できない。更に好ましい範囲は、15~25%である。この範囲であれば更に自立性が向上する。
【0024】
また、包装容器10は、底面部23の第1部分23aと正面部21とを2重に重ねてシールした補強シール部25aと、底面部23の第2部分23bと背面部22とを2重に重ねてシールした補強シール部25bとを備えている。
補強シール部25a,25bの各々は、正面部21及び背面部22の幅方向において反対側に位置する2つの縁側にそれぞれ設けられている。正面部21及び背面部22の一方の縁側に設けられた補強シール部25a,25bは、正面部21及び背面部22の一端側から一方の底面シール部25に亘って延伸し、一方の底面シール部25と連結されている。
正面部21及び背面部22の他方の縁側に設けられた補強シール部25a,25bは、正面部21及び背面部22の一端側から他方の底面シール部25に亘って延伸し、他方の底面シール部25と連結されている。
【0025】
また、包装容器10は、正面部21、背面部22及び底面部23で囲まれ、正面部21、背面部22及び底面部23を側面シール部24及び底面シール部25でシールすることによって形成された収容部30を備えている。側面シール部24、底面シール部25、補強シール部25a,25bは、熱圧着又は超音波溶着などによって形成される。
底面シール部25と側面シール部24との境界部には、シール性を高めるためのポイントシール部26が底面シール部25及び側面シール部24に亘って設けられている。このポイントシール部26は、底面シール部25及び側面シール部24のシール幅に対して40~90%の幅で形成することが好ましい。このポイントシール部26は、正面部21及び背面部22の幅方向の2つの縁側にそれぞれ設けられている。
【0026】
また、ポイントシール部26は、側面シール部24及び底面シール部25に亘って設けられるX方向の全体長さに対して、底面シール部25に掛かるX方向の長さの割合が10%以上であることが好ましい。10%未満の場合は、強度不足となり、包装容器10を落としたときに収容部30内の飲食物(内容物)が洩れる可能性が高くなる。
なお、熱圧着、超音波溶着でシールを行うと、図5に示すように、シーラント層13同士が融着するため、包装容器10の外側表面(包装体用紙2の基材11側表面)からはシールした線が明確には見えない。このため、包装容器10の外側表面の意匠性が損なわれない。
【0027】
図2及び図3に示すように、2つの底面シール部25の各々には、抜き部27が設けられている。底面部23は、図6に示すように、基材11同士を張り合わせる必要があり、抜き部27によって、底面シール部25のシーラント層13を底面部23側に露出することができる。すなわち、底面シール部25において、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々に設けられた抜き部27,27を通して正面部21及び背面部22の各々のシーラント層13同士を融着することができる。
【0028】
抜き部27は、底面シール部25の下端から底折込み深さh23の5~50%の位置に設けられていることが好ましい。この範囲より下側にある場合、抜き部の面積を十分に確保できないだけでなく、落下試験において落下の衝撃が集中し、破袋強度が弱くなる。また、この範囲より上側にある場合、シールされていない底面部の下側が、内容物の重みで開いてしまい、安定して自立できない。より好ましい範囲は、5~30%、更に好ましい範囲は10~20%である。この範囲であれば、落下試験での破袋強度と、自立安定性の両方が更に向上する。
本実施形態において、抜き部27は底面シール部25の縁から内側に所定の幅を有して切り込まれた幅広スリット(帯状の切欠き領域)で構成されているが、平面形状が円形や楕円などの貫通孔で構成してもよい。
【0029】
正面部21及び背面部22の他端側には、収容部30に食品を入れた後、正面部21及び背面部22を2重に重ねてシールして収容部30を密閉する密閉シール部28が設けられている。また、2つの側面シール部24の少なくとも何れか一方には、レトルト(加熱処理)後の食品を収容部30から取り出すときに正面部21及び背面部22の上部側を切り取って収容部の上部側を開放するための切欠き部29が設けられている。
【0030】
図4に示すように、本実施形態の包装容器10は、積層体1から切り出した1枚の包装体用紙2を用いて、シーラント層13を内側にした折り曲げ工程とシール工程を行うことにより形成されている。
図4(a)に示すように、包装体用紙2は、正面部21、底面部23(第1部分23a、第2部分23b)、及び背面部22を長手方向(第1の方向)にこの順に有する。なお、正面部21及び背面部22には、包装体用紙2の長手方向の両端となる位置に密閉シール部28が設けられている。また、第1部分23aおよび第2部分23bのそれぞれの幅方向(第2の方向)の両端側に、底面シール部25が設けられている。また、正面部21及び背面部22のそれぞれの幅方向両端側に、側面シール部24及び底面シール部25が設けられている。
【0031】
これらのうち、側面シール部24は、包装体用紙2の長手方向(第1の方向)の両端側に位置する。すなわち、包装体用紙2の長手方向に沿って、側面シール部24、底面シール部25、底面シール部25、底面シール部25、底面シール部25、側面シール部24の順で設けられている。
底面シール部25の長手方向(第1の方向)の寸法は、包装体用紙2の長手方向(第1の方向)に沿った第1部分23a、第2部分23bの寸法にほぼ等しく設定されている。正面部21及び背面部22に設けられる底面シール部25の長手方向(第1の方向)の寸法は、底面部23に設けられる底面シール部25の長手方向(第1の方向)の寸法にほぼ等しいことが好ましい。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、第1部分23aと第2部分23bとを山折りし、正面部21および背面部22と底面部23とを谷折りすることで、側面視でW字状として、正面部21と背面部22とが対向するように包装体用紙2を折り曲げる。
次に、図4(c)に示すように、包装体用紙2の幅方向の一端の側面シール部24同士、正面部21および背面部22の底面シール部25と底面部23の底面シール部25とを密着させ、例えば、熱圧着又は超音波溶着で固定する。続いて、包装体用紙2の幅方向の他端の側面シール部24及び底面シール部25も同様に固定することで、図4(d)に示す形態の包装容器10が得られる。
【0033】
[実施形態の積層体および包装容器の作用、効果]
本実施形態の積層体1は、紙製の基材11を備えているが、第二の接着剤層15がポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物で構成されているため、これを用いて得られた包装容器10は、開封時にシーラント層13が伸び切ることが抑制される。つまり、本実施形態の積層体1によれば、開封時の手切れ性に優れた包装容器10を形成することができる。そして、本実施形態の包装容器10は、開封時の手切れ性に優れたものとなることが期待できる。
なお、レトルトパウチは通常の包装容器よりも、シーラント層が伸び易いものとなっているとともに、レトルト処理の際に素材が変性することにより、開封し難いものとなっている。よって、包装容器10がレトルトパウチである場合には、そうでない場合と比較してより大きな効果が得られる。
【0034】
さらに、包装容器10は、包装体用紙2の長手方向(第1の方向)の両端部を開口部とした収容部30を備えた袋形状をなす。そして、この包装容器10は、図4(e)に示すように、上記開口部を拡げると共に、第1部分23a,第2部分23bを収容部30内から押圧することで、第1部分23a,第2部分23bの大部分が包装容器10を設置する面に接し、包装容器10の自立性を援助する。なお、この包装容器10は、収容部30内に食品を収容した後、例えば、収容部30を減圧のうえ、図4(a)に示す密閉シール部28同士を、側面シール部24、底面シール部25と同様に固定して密閉する。
【0035】
包装容器10は、流動性の食品を収容部30に収容しているとき、底面部23を下にして立てた状態で置くと、食品が底面部23側に移動する。そして、食品の移動により収容部30の底面部23側の内圧が高くなり、正面部21及び背面部22の内側に折り込まれていた底面部23が開いて収容部30の一端側(底面部23側)が膨らむ。これにより、包装容器10は底面部23を下にして自立する。
また、包装容器10を作製するために、紙製の基材11を備えた積層体1から切り出した包装体用紙2を使用している。紙製の基材を用いることによってプラスチックフィルムの総量を減らすことができるため、本実施形態の包装容器10は環境への負荷がより小さい。
また、包装容器10は、底面部23が正面部21及び背面部22から正面部21及び背面部22の内側に折り込まれているため、正面部21及び背面部22と底面部23とを重ねてシールしたシール部が正面部21及び背面部22の一端側に存在しない。
【0036】
正面部21及び背面部22の一端側にシール部が存在する場合、底面部23を下にして包装容器を立てた状態で置くと、包装容器10の底面部23と、例えば電子レンジのターンテーブルとが接する設置面から底面部が底上げされた状態となる。すなわち、底面部23の一部がターンテーブルから離れた(浮いた)状態となる。電子レンジでは、設置面側での加熱力が高いため、設置面から底面部が底上げされた包装容器では食品の加熱に影響する。
【0037】
これに対し、本実施形態の包装容器10は、正面部21及び背面部22の一端側にシール部が存在せず、設置面から底面部23が底上げされた状態とはならないので、正面部21及び背面部22の一端側にシール部が存在する場合と比較して電子レンジでの加熱を効率良く行うことができる。
ここで、本実施形態の包装容器10は、積層体1の基材11として紙基材を用いている。この場合、電子レンジでの加熱が可能である。従来、アルミニウム箔を各種プラスチックフィルムで挟み込んだ積層シートを用いたものが知られているが、これは電子レンジでの加熱が不可である。また、電子レンジでの加熱が可能なアルミナやシリカ蒸着フィルムを用いたものが知られているが、このアルミナやシリカ蒸着フィルムは薄いため、腰が弱く、特に掌の上での包装容器の自立性が低い。一方、本実施形態の包装容器10は、腰が強く、非常時や災害時において、保存容器のまま直接飲食が可能である。
【0038】
また、本実施形態の包装容器10は、積層体1の基材11として紙基材を用いているので、熱処理しても正面部21や背面部22に描かれた図柄などの変化がない。また、正面部21や背面部22に名前や文章などを書き込むことが可能である。また、環境にも優しく、過剰な包装も不用である。また、軽量であり、環境面においても、輸送コスト、廃棄のし易さから、缶や瓶の代替として有用である。
【0039】
[実施形態の積層体および包装容器の製造方法]
次に、積層体1および包装容器10の製造方法について、図7及び図8を参照しながら更に説明する。
包装容器10の製造方法は、図1に示す積層体1を形成する工程(工程A)と、積層体1を切り出して包装体用紙2を得る工程(工程B)と、包装体用紙2から包装容器10を形成する工程(工程C)とを備える。工程Aは積層体1の製造方法である。つまり、包装容器10の製造方法は積層体1の製造方法を含む。
【0040】
工程A(第一の工程)では、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を用い、ドライラミネート加工を行うことにより積層体1を得る。具体的には、先ず、上記二液混合型接着剤を基材11の上に塗布して中間層(バリア層)12をラミネートした後、得られたラミネート品の中間層12側に上記二液混合型接着剤を塗布して、シーラント層13をラミネートする。
工程Bでは、積層体1を切り出して、図7(a)に示す包装体用紙2を得る。この包装体用紙2の平面形状は、前述のX方向(高さ方向)の寸法がY方向(幅方向)の寸法より長い長方形である。そして、包装体用紙2には、X方向に沿って正面部21、底面部23の第1部分23a及び第2部分23b、並びに背面部22がこの順に区分されるように、折り曲げ線が設定されている。
【0041】
工程C(第二の工程)では、先ず、図7(b)に示すように、正面部21と背面部22、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとが互いに重なるように、包装体用紙2を2つに折り曲げる。この包装体用紙2の折り曲げは、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとの間の折り曲げ線を境にして、一方の片部と他方の片部の各々のシーラント層13が互いに向かい合うように行う。
すなわち、2つに折り曲げられた包装体用紙2は、正面部21及び背面部22の各々のシーラント層13同士が向かい合い(図5参照)、同様に底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々のシーラント層13同士が向かい合う。そして、正面部21及び背面部22の各々の基材11が外側に位置し(図5参照)、同様に底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々の基材11が外側に位置する。
【0042】
次に、図7(c)に示すように、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとが重なった状態で、第1部分23a及び第2部分23bのY方向の両側の各々の縁に、第1部分23a及び第2部分23bの各々の一部を除去した抜き部27を形成する。この抜き部27は、例えば第1部分23a及び第2部分23bを重ね合わせた状態で打ち抜き加工(パンチ加工)を施すことによって形成される。
次に、図7(d)に示すように、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々の抜き部27が互いに向かい合い、かつ第1部分23aと第2部分23bとが互いに重なるように、第1部分23a及び第2部分23bを正面部21と背面部22との間に折り込む。この工程において、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bの各々の基材11側が向かい合う。そして、正面部21及び第1部分23aの各々のシーラント層13側が向かい合い、背面部22及び第2部分23bの各々のシーラント層13側が向かい合う。
【0043】
次に、正面部21及び背面部22のY方向の両側において、底面部23の第1部分23aと第2部分23bとが互いに重なった状態で正面部21及び第1部分23aの各々のシーラント層13同士をシールすると共に、背面部22及び第2部分23bの各々のシーラント層13同士をシールする。これらのシールは、例えば熱圧着又は超音波溶着による融着によって行う。
【0044】
この工程により、図8(a)に示すように、正面部21及び第1部分23aの各々のシーラント層13同士をシールした補強シール部25aが形成されると共に、背面部22及び第2部分23bの各々のシーラント層13同士をシールした補強シール部25bが形成される。この補強シール部25aは、正面部21のX方向に伸びる両縁側から、それぞれ正面部21の下端21a(正面部21と底面部23の第1部分23aとの間の折り曲げ部、図7(d)参照)に向かって斜め方向に形成される。
また、補強シール部25bにおいても、背面部22のX方向に伸びる両縁側から、それぞれ背面部22の下端22a(背面部22と底面部23の第2部分23bとの間の折り曲げ部、図7(d)参照)に向かって斜め方向に形成される。
【0045】
次に、正面部21及び背面部22のY方向の両側の縁において、正面部21及び背面部22が重なった2重領域と、正面部21、背面部22、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bが重なった4重領域とに亘って、シーラント層13同士を部分的にシールする。これらのシールは、例えば熱圧着又は超音波溶着による融着によって行う。この工程により、図8(b)に示すように、2重領域と4重領域とに亘ってシーラント層13同士をシールしたポイントシール部26が形成される。
【0046】
次に、正面部21及び背面部22のY方向の両側の縁において、正面部21及び背面部22の各々のシーラント層13同士、正面部21及び底面部23の第1部分23aの各々のシーラント層13同士、背面部22及び底面部23の第2部分23bの各々のシーラント層13同士、並びに、第1部分23a及び第2部分23bの各々の抜き部27を通して正面部21及び背面部22の各々のシーラント層13同士をシールする。これらのシールは、例えば熱圧着又は超音波溶着による融着によって行う。
【0047】
この工程により、図8(c)に示すように、正面部21及び背面部22のY方向の縁を2重に重ねてシーラント層13同士をシールした側面シール部24が形成されると共に、正面部21、背面部22、底面部23の第1部分23a及び第2部分23bのY方向の縁を4重に重ねてシーラント層13同士をシールした底面シール部25が形成される。
つまり、工程C(第二の工程)では、シーラント層を内側にしてシーラント層の糊代同士をシールすることで包装容器10を形成する。
【0048】
このように、包装容器10は、図1に示す積層体1を用い、シーラント層13を内側にして、糊代である側面シール部24および底面シール部25のシーラント層13同士(つまり、シーラント層の糊代同士)がシールされて形成されている。
この後、側面シール部24、底面シール部25、補強シール部25a,25b及びポイントシール部が形成された包装体用紙2を、所定の形状に断裁し、側面シール部24に切欠き部29を形成することにより、包装容器10を図2及び図3に示す形状とする。
【0049】
[実施形態の積層体および包装容器の製造方法の作用、効果]
本実施形態の積層体の製造方法によれば、第二の接着剤層15を形成する接着剤として、主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤を使用しているため、紙製の基材11を備えているが、開封時の手切れ性に優れた(シーラント層13が伸び切ることが抑制された)包装容器10を形成可能な積層体1が製造できる。そして、本実施形態の包装容器の製造方法によれば、本実施形態の積層体の製造方法を含むことにより、開封時の手切れ性に優れた包装容器10を製造することができる。
【0050】
なお、本実施形態の積層体の製造方法では、第一の接着剤層14を形成する接着剤として、第二の接着剤層15を形成する接着剤と同じもの(主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤)を使用している。これにより、接着剤を変更する手間が省けるため、製造コストの低減効果が得られるが、第一の接着剤層14を形成する接着剤はこれ以外のものであってもよい。
【0051】
また、第二の接着剤層15を形成する接着剤が「主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤」であることで、第一の接着剤層14が比較的硬いものとなることにより包装容器10の手切れ性能が良好になると考えられるため、第二の接着剤層15のみでなく第一の接着剤層14を形成する接着剤も「主剤がポリオールで硬化剤がイソホロンジイソシアネートである二液混合型接着剤」とすることで、手切れ性能のより高い包装容器10を得ることができると考えられる。
【0052】
また、本実施形態の包装容器の製造方法によれば、安定して自立することが可能な包装容器10を製造することができる。
また、本実施形態の包装容器の製造方法によれば、側面シール部24、底面シール部25、補強シール部25a,25b及びポイントシール部26において、包装体用紙2のシーラント層13同士をシールすることができるので、シール性に優れた包装容器10を製造することができる。
【0053】
なお、本実施形態の積層体1は、紙製の基材11と、基材11の一面に第一の接着剤層14を介して固定されている中間層(バリア層)12と、中間層12の基材11とは反対側の面に第二の接着剤層15を介して固定されているシーラント層13と、からなるものであるが、本発明の積層体は、その全面又は一部分に、これら以外の層、例えば、印刷層や第二の中間層(バリア層以外の中間層等)などを更に有するものであってもよい。
【0054】
また、本実施形態の包装容器10は、一枚の包装体用紙2のみで形成され、包装体用紙2の底面部23を下にして自立することが可能なものであるが、本発明の包装容器はこれに限定されず、例えば以下に示すものであってもよい。
第一の例は、正面部21、背面部22、底面部23が別々の包装体用紙で形成され、正面部21と背面部22は本発明の実施形態である積層体1で構成されているが、底面部23として積層体1とは異なる構成の積層体(積層体1のシーラント層13とシール可能な層を有するもの)を用いて製造されたものである。
第二の例は、同一形状の二枚の包装体用紙のみで形成され、開口部とする部分以外の縁部がシールされた包装容器である。この包装容器は自立できないものである。
第三の例は、一枚の帯状の包装体用紙のみで形成され、包装体用紙を折り返した後に、二辺の縁部がシールされた包装容器である。この包装容器は自立できないものである。
【実施例0055】
以下、具体的な実施例を示して、本発明を詳細に説明する。
積層体1の基材11として、坪量が80g/m2で、厚さが約90μmの紙基材を用意した。中間層12としては、厚さが12μmで、PET製フィルムにバリアコート層として無機物の蒸着膜を有するバリアフィルム(凸版印刷株式会社製の透明バリアフィルム「GL-ARH-F」)を用意した。シーラント層13としては、厚さが50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を用意した。
二液混合型の接着剤の主剤および硬化剤として、以下のものを用意した。
【0056】
・主剤
主剤1:ポリエステルポリオール、三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A-626」
主剤2:ポリエステルポリオールとポリウレタンポリオールとの混合物(1)、三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A-525」
主剤3:ポリエステルポリオールとポリウレタンポリオールとの混合物(2)、DICグラフィックス株式会社製「ディックドライ(登録商標)LX500」
【0057】
・硬化剤
IPDI(1):イソホロンジイソシアネート、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)A-52」
IPDI(2):イソホロンジイソシアネート、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)A-50」
HDI(1):ヘキサメチレンジイソシアネート、三井化学株式会社製「タケネート(登録商標)A-65」
HDI(2):ヘキサメチレンジイソシアネート、DICグラフィックス株式会社製「KR90S」
【0058】
[No.1]
サンプルNo.1では、先ず、主剤1とIPDI(1)を質量比で主剤1:IPDI(1)=8:1の割合で配合した接着剤を用い、基材11と中間層12との間の接着強度、中間層12とシーラント層13の間の接着強度を測定した。
具体的には、基材11、中間層12、シーラント層13を、それぞれT形剥離試験用の試験片(15mm幅)に切り出して、基材11の試験片と中間層12の試験片との間に、上記接着剤を塗布量3.3g/m2で塗布し、積層体1を作製する際のドライラミネート加工と同じ加圧状態となるようにして、試験片同士の接着を行った。得られた試験体(基材/中間層)を用い、温度24℃、引張速度300mm/minでT形剥離試験を行った。
【0059】
中間層12の試験片とシーラント層13の試験片との間に、上記接着剤を塗布量3.3g/m2で塗布し、積層体1を作製する際のドライラミネート加工と同じ加圧状態となるようにして、試験片同士の接着を行った。得られた試験体(中間層/シーラント層)を用い、温度24℃、引張速度300mm/minでT形剥離試験を行った。
【0060】
次に、同じ接着剤を用い、上記接着剤を基材11の上に塗布量3.3g/m2で塗布して中間層12をラミネートした後、得られたラミネート品の中間層12側に上記接着剤を同じ塗布量で塗布して、シーラント層13をラミネートすることで積層体1を得た。次に、得られた積層体1を切り出して、図7(a)に示す包装体用紙2を得、実施形態に記載した方法で包装容器10を三体得た。得られた三体の包装容器10の手切れ性能を以下の方法で調べた。
【0061】
(手切れ性能の評価方法)
得られた包装容器10にカッターで切れ目を入れた後、手で引き裂いた際の引き裂き易さをMD方向とTD方向でそれぞれ調べ、以下のように評価した。
〇:引っ掛かりがなく、スムーズに切れる。
△:スムーズに切れる部分と引っ掛かりがある部分がある。
×:シーラント層が伸び切れて、うまく引き裂けない。
さらに、MD方向およびTD方向の少なくともいずれかの方向において、「×」評価がなく、かつ、三体の評価のうち二体以上で「〇」評価が得られたサンプルを、所望の性能を有する「合格」と評価し、それ以外を所望の性能を有さない「不合格」と評価した。
【0062】
[No.2]
サンプルNo.2では、先ず、主剤1とIPDI(2)を質量比で主剤1:IPDI(1)=8:1の割合で配合した接着剤を用い、No.1と同じ方法で、基材11と中間層12との間の接着強度、中間層12とシーラント層13の間の接着強度を測定した。
次に、この接着剤を用い、No.1と同じ方法で、得られた積層体1を用いて包装容器10を三体作製し、得られた三体の包装容器10の手切れ性能をNo.1と同じ方法で調べた。
【0063】
[No.3]
サンプルNo.3では、先ず、主剤2とIPDI(1)を質量比で主剤2:IPDI(1)=9:1の割合で配合した接着剤を用い、No.1と同じ方法で、基材11と中間層12との間の接着強度、中間層12とシーラント層13の間の接着強度を測定した。
次に、この接着剤を用い、No.1と同じ方法で、得られた積層体1を用いて包装容器10を三体作製し、得られた三体の包装容器10の手切れ性能をNo.1と同じ方法で調べた。
【0064】
[No.4]
サンプルNo.4では、先ず、主剤1とHDI(1)を質量比で主剤1:HDI(1)=16:1の割合で配合した接着剤を用い、No.1と同じ方法で、基材11と中間層12との間の接着強度、中間層12とシーラント層13の間の接着強度を測定した。
次に、この接着剤を用い、No.1と同じ方法で、得られた積層体1を用いて包装容器10を三体作製し、得られた三体の包装容器10の手切れ性能をNo.1と同じ方法で調べた。
【0065】
[No.5]
サンプルNo.5では、先ず、主剤3とHDI(2)を質量比で主剤3:HDI(2)=15:1の割合で配合した接着剤を用い、No.1と同じ方法で、基材11と中間層12との間の接着強度、中間層12とシーラント層13の間の接着強度を測定した。
次に、この接着剤を用い、No.1と同じ方法で、得られた積層体1を用いて包装容器10を三体作製し、得られた三体の包装容器10の手切れ性能をNo.1と同じ方法で調べた。
【0066】
サンプルNo.1~No.5の第二の接着剤層の構成と、接着強度および手切れ性能の結果を表1に示す。
【表1】
【0067】
表1の結果から分かるように、本発明の実施例に相当するNo.1~No.3のうち、No.1とNo.2では、「基材/中間層」および「中間層/シーラント層」のいずれの接着強度も十分で、手切れ性能についても、MD方向では三体とも良好であった。No.3では、「基材/中間層」および「中間層/シーラント層」のいずれの接着強度も十分で、手切れ性能については、TD方向で二体が良好であった。この違いは、主剤の種類の違いによるものと考えられる。また、上述の合格不合格の評価基準に基づき、本発明の実施例に相当するNo.1~No.3は、所望の性能を有する「合格」と評価した。
【0068】
これに対して、本発明の比較例に相当するNo.4とNo.5のうち、No.4では、「基材/中間層」および「中間層/シーラント層」のいずれの接着強度も十分であったが、手切れ性能については、MD方向およびTD方向の両方で評価が「×」のものがあった。No.5では、「中間層/シーラント層」の接着強度が低いとともに、手切れ性能についてもNo.1とNo.2より劣るものであった。また、上述の合格不合格の評価基準に基づき、本発明の比較例に相当するNo.4とNo.5は、所望の性能を有さない「不合格」と評価した。
【0069】
次に、No.1~No.3,No.5で使用した各接着剤を用い、幅5mmの短冊状の接着剤硬化膜(膜厚20~30μm程度)を作製し、温度24℃の環境下、引張速度300mm/minで引張試験を行った。その結果を表2と図9に示す。
【表2】
【0070】
この結果から分かるように、本発明の実施例に相当するNo.1~No.3で使用した接着剤は、比較例に相当するNo.5で使用した接着剤と比べて伸び率が抑制されている。よって、No.1~No.3で使用した接着剤を用いて中間層12とシーラント層13との接着を行って得られた積層体1を用いることで、開封時の手切れ性に優れた包装容器を製造することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 積層体
2 包装体用紙
10 包装容器
11 基材
14 第一の接着剤層
12 中間層
13 シーラント層
15 第二の接着剤層
24 側面シール部(糊代)
25 底面シール部(糊代)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9