(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095185
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20240703BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/06
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212286
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】小門 佳奈子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC402
4C083AC472
4C083AC532
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD632
4C083AD642
4C083BB51
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD33
4C083DD38
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】塗布中の肌なじみの早さが向上されており、また塗布後のハリ感も優れている新規な化粧料組成物を提供する。
【解決手段】化粧料組成物であって、水、保湿剤、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテル、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料組成物であって、
水、保湿剤、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテル、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR1の少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記保湿剤の含有量が、3.0質量%以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
水系化粧料組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
可溶化系化粧料組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
水中油型乳化化粧料組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
保湿感を担保するために、通常、化粧料組成物中に保湿剤を配合する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、次の成分(A)、(B)及び(C):(A)親水性界面活性剤、(B)溶解度パラメータが16~19の液体油、(C)保湿剤を含有し、成分(A)と成分(B)の含有重量比が1:0.01~1:10である半透明又は透明な化粧水が開示されている。
【0004】
なお、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルは、親水性界面活性剤として知られている。例えば、特許文献2では、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルを含む親水性界面活性剤として配合している液状化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-301818号公報
【特許文献2】特開2011-136936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保湿剤を配合した化粧料組成物は、使用中に肌なじみの早さが劣ってしまう場合があり、その使用感について、依然として、改善する余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、塗布中の肌なじみが早く、また塗布後のハリ感も優れている新規な化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0009】
〈態様1〉
化粧料組成物であって、
水、保湿剤、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテル、
及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
【化1】
前記式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、R
4は、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつR
1の少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R
2及びR
3の少なくとも一方が、メチル基である、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記保湿剤の含有量が、3.0質量%以上である、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
水系化粧料組成物である、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
可溶化系化粧料組成物である、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様9〉
水中油型乳化化粧料組成物である、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布中の肌なじみの早さが向上されており、また塗布後のハリ感も優れている新規な化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
《化粧料組成物》
本発明の化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
水、保湿剤、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテル、及び下記式(1)で表される構造を有するポリマーを含み、
【化3】
式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物
である。
【0013】
本発明の組成物は、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルと上述した式(1)に示されている本発明のポリマーとを併用することによって、保湿剤を配合していても、塗布中の肌なじみの早さが向上されており、しかも塗布後のハリ感も優れている。
【0014】
理論に限定されるものではないが、これは、主に、本発明のポリマーの特性、すなわち式(1)で示す特有の構造、特定の範囲の数平均分子量(10,000以下)、及び特定の範囲のIOB(Inorganic Organic Balance)値(0.4~1.8)に由来するものと推測する。
【0015】
また、特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、保湿剤と油性である肌とのなじみを改善し、それによって本発明の組成物の塗布中における肌なじみの早さを向上できると考えられる。
【0016】
更に、本発明者の鋭意研究により、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルは、肌なじみの早さへ悪影響を及ぼさずに、むしろ、本発明のポリマーとともに本発明の組成物の塗布中における肌なじみの早さの向上に寄与していると推測される。しかも、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルを配合することで、本発明の組成物のハリ感を向上できることが分かった。
【0017】
なお、本発明において、「ハリ感」とは、化粧料組成物を塗布した後の肌の表面に薄膜感があって、また、その肌を触ると滑らかですべすべな感触を有することを指す。
【0018】
〈水〉
本発明の組成物は、水を含む。本発明の組成物に用いられる水として、特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水であってよい。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0019】
本発明の組成物において、水の含有量は特に限定されず、組成物全体に対して、例えば50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、また90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。なお、水の含有量は、目的とする化粧料組成物の用途に合わせて、適宜調整してよい。
【0020】
〈保湿剤〉
本発明の組成物は、保湿剤を含む。保湿剤は、本発明の組成物に保湿効果を付与することができる。
【0021】
保湿剤として、特に限定されず、例えばグリセリン、ジグリセリン、ジグリセリン(EO)PO付加物、メチルグルセス、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチルグリシン、ヘキサメチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルビトール、及びマルチトール等が挙げられる。これらの保湿剤は、1種類単独で使用されてもよく、2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0022】
本発明の組成物において、保湿剤の含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、9.0質量%以上、又は10質量%以上であってよく、また、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0023】
〈ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテル〉
本発明の組成物は、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルを含む。ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルは、親水性界面活性剤として知られているが、本発明の組成物にハリ感を付与することができる。
【0024】
ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルとしては、特に限定されず、特に、PEG/ポリブチレングリコール-44/15メチルエーテル水添ダイマージリノレイルを含むことが好ましい。
【0025】
本発明の組成物において、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよく、また、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
【0026】
本発明の組成物において、ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルと後述する本発明のポリマーの含有量の比(ポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテル:本発明のポリマー)は、特に限定されず、例えば、1:500~500:1、1:100~100:1、1:50~50:1、1:10~10:1、又は1:10~1:1であってよい。
【0027】
〈本発明のポリマー〉
本発明の組成物は、以下に説明する本発明のポリマーを含む。本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化4】
【0028】
式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のR1が存在する場合、各々のR1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、R1の少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。R1の少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R1は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R1の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2は、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、R2の一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R3は、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R2及びR3の少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0036】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化5】
【0037】
式(2)において、R4は、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、R4は、メチル基又はエチル基であってよい。
【0038】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0039】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0042】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0044】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0045】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0046】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0047】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0048】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0049】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0050】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0051】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0052】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を更に含んでよい。以下では、本発明の組成物に含み得るその他の成分について説明する。なお、これらのその他の成分は、目的の剤型や化粧料の用途等に基づき、適宜選択することができ、本発明は、これらの成分に限定されることはない。
【0053】
〈その他の成分〉
その他の成分として、例えば、炭化水素油、シリコーン油、ロウ類、脂肪酸エステル類、高級アルコール類、紫外線吸収剤、その他の界面活性剤、水溶性高分子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
更には、その他の成分として、例えば、エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、δ-トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、ε-ポリリジン等の防腐剤;クエン酸、乳酸、ヘキサメタリン酸等の有機又は無機酸よびその塩;ビタミンA、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート等のビタミンA誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、アルブチン、セファランチン等の各種薬剤、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、オウゴン、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サクラリーフ等の植物の抽出物、β-カロチン等の色素等も配合することができる。
【0055】
〈本発明の組成物の剤型及び用途〉
本発明の組成物の剤型は、目的に合わせて任意に調整することができる。例えば、本発明の組成物は、水系(水分散系を含む)、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン、若しくはスティック等であってもよく、又は不織布等のシートに含浸あるいは塗布した製剤等であってもよい。また、乳化系として、例えば水中油型乳化組成物であってもよく、油中水型乳化組成物であってもよいが、水中油型乳化組成物であることが好ましい。
【0056】
〈本発明の組成物の製造方法〉
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、常法により製造することができる。
【0057】
例えば、本発明の組成物が水系又は可溶化系化粧料組成物である場合、水に、水溶性成分を順次に混合させ、溶解することによって、本発明の組成物を製造することができる。また、本発明の組成物が水不溶性成分が含む可溶化系である場合には、まず、水に、水溶性成分を順次に混合させ、溶解させて水相を調製する。次に、水不溶性成分を界面活性剤(可溶化剤)等と混合した後に水相に添加することによって、本発明の組成物を製造することもできる。
【実施例0058】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化6】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0060】
〈合成例1〉
合成例1:R1=H、R2=H、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0061】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0062】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0063】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0064】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0065】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0066】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0067】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0068】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0069】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0070】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0071】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0072】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0073】
〈合成例2〉
合成例2:R1=H及びCH3、R2=H及びCH3、R3=CH3、R4=CH3、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0074】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、R2とR3におけるメチル基と水素原子の割合(CH3/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0075】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0076】
【0077】
《実施例1~6及び比較例1》
以下の表2に示す処方に基づき、実施例1~12及び比較例1~2の組成物(可溶化系液状化粧料)を、それぞれ調製した。調製された各組成物に対して、下記の評価方法に基づき、各種使用性を評価し、結果は表2に示す。なお、特に断りのない限り、表2及び表3の数値は、配合量を表し、単位は質量%である。
【0078】
(塗布中の肌なじみの早さの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌へのなじみが早いと感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「AA」:パネル10名全員が感じると回答;
「A」:パネル10名中8名以上9名以下が感じると回答;
「B」:パネル10名中5名以上7名以下が感じると回答;
「C」:パネル10名中2名以上4名以下が感じると回答;
「D」:パネル10名中1名以下が感じると回答。
【0079】
(塗布後の肌のハリ感の評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「塗布後肌のハリ感(薄膜感)があると感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「AA」:パネル10名全員が感じると回答;
「A」:パネル10名中8名以上9名以下が感じると回答;
「B」:パネル10名中5名以上7名以下が感じると回答;
「C」:パネル10名中2名以上4名以下が感じると回答;
「D」:パネル10名中1名以下が感じると回答。
【0080】
(塗布中のみずみずしさの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「塗布中にみずみずしさがあると感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「AA」:パネル10名全員が感じると回答;
「A」:パネル10名中8名以上9名以下が感じると回答;
「B」:パネル10名中5名以上7名以下が感じると回答;
「C」:パネル10名中2名以上4名以下が感じると回答;
「D」:パネル10名中1名以下が感じると回答。
【0081】
(塗布後のべたつきのなさの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「塗布後に肌におけるべたつきがないと感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「AA」:パネル10名全員が感じると回答;
「A」:パネル10名中8名以上9名以下が感じると回答;
「B」:パネル10名中5名以上7名以下が感じると回答;
「C」:パネル10名中2名以上4名以下が感じると回答;
「D」:パネル10名中1名以下が感じると回答。
【0082】
(塗布後のしっとりさの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「塗布後に肌にしっとりさを感じる」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「AA」:パネル10名全員が感じると回答;
「A」:パネル10名中8名以上9名以下が感じると回答;
「B」:パネル10名中5名以上7名以下が感じると回答;
「C」:パネル10名中2名以上4名以下が感じると回答;
「D」:パネル10名中1名以下が感じると回答。
【0083】
【0084】
表2から明らかなように、実施例1~6の組成物は、いずれも、比較例1の組成物に比べて、塗布中の肌なじみの早さが向上されており、また塗布後のハリ感もより優れていることが分かった。
【0085】
また、「塗布中のみずみずしさ」、「塗布後のべたつきのなさ」、「塗布後のしっとりさ」及び「安定性」の評価において、実施例1~6の組成物は、比較例1の組成物と同程度に優れているか、又は比較例1の組成物に比べてより良い評価結果が得られていることが分かった。
【0086】
《比較例2~4》
以下の表3に示す処方に基づき、比較例2~4(可溶化系液状化粧料)を、それぞれ調製した。調製された各組成物に対して、上記と同様に各種使用性を評価し、結果は表3に示す。
【0087】
【0088】
表3から明らかなように、表2の実施例に比べて、比較例2及び比較例3では、本発明のポリマーを含まないことにより塗布後の「塗布後のハリ感」の評価は下がっていることが分かった。また、比較例4ではポリオキシアルキレンジアルキルダイマージオールエーテルを含まないことから「塗布中のなじみの早さ」「塗布後のハリ感」「塗布後のべたつきのなさ」の評価が下がっていることが分かった。
【0089】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。また、表4中の数値は、各成分の配合量を表し、単位は質量%である。
【0090】