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  • 特開-水中油型乳化組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095186
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/06
A61K8/34
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212287
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海原 悠可
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC792
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB05
4C083BB12
4C083CC05
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】塗布後長時間経過しても結晶化が抑制され、塗布後の肌がなめらかで、きしみがなく、塗布時にはしっとり感が得られ、皮膚浸透性にも優れた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)コレステロール、フィトステロールから選ばれる1種以上、
(B)成分(A)以外の25℃で固体の油剤、
(C)3価以上の多価アルコール、
(D)オキシエチレン基の平均付加モル数が2~18のポリオキシエチレンフィトステロール及びポリオキシエチレンコレステロールから選ばれる1種以上、
(E)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)コレステロール、フィトステロールから選ばれる1種以上、
(B)成分(A)以外の25℃で固体の油剤、
(C)3価以上の多価アルコール、
(D)オキシエチレン基の平均付加モル数が2~18のポリオキシエチレンフィトステロール及びポリオキシエチレンコレステロールから選ばれる1種以上、
(E)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(D)に対する成分(B)の質量割合(B)/(D)が、0.01~50である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(D)に対する成分(C)の質量割合(C)/(D)が、0.1~150である請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
さらに、(F)イオン性界面活性剤を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
成分(B)が、セラミド類、リン脂質から選ばれる1種以上を含む請求項1~4のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールやセラミドなどの固体又は半固体の油剤を含有する乳化組成物は、高い保湿効果が期待されるが、結晶析出や分離などの安定性に課題があり、これらを改善した組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、セラミド、メドウフォームエストリド、コレステロール又はフィトステロール、非イオン性界面活性剤を含有する乳化化粧料が、セラミドを結晶化させることなく、安定に含有できることが記載されている。
特許文献2には、セラミド類及び/又はフィトステロールと、HLB4~8の非イオン性界面活性剤、HLB13~16.5のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、水、ジプロピレングリコール等を含有する化粧料用組成物が、セラミド類の結晶が析出せず、安定であることが記載されている。
特許文献3には、セラミド類、フィトステロール、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、モノステアリルグリセリンエーテル、ジプロピレングリコール及び/又はトリプロピレングリコール、水を含有するベシクル組成物が、セラミドを多く配合しながらも結晶析出がなく、セラミドの安定配合に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-108243号公報
【特許文献2】特開2021-113155号公報
【特許文献3】特開2021-50200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の高融点の固体脂を含有する乳化組成物は、製造後の結晶析出や分離などの安定性は改善されるものの、塗布後に結晶化したり、塗布後の肌のなめらかさに劣るなど、使用感において課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、コレステロールや固体の油剤とともに、3価以上の多価アルコールと、特定のポリオキシエチレンフィトステロール又はポリオキシエチレンコレステロールを組合わせて用いることにより、塗布後長時間経過しても、コレステロール等の固体油剤の結晶化が抑制され、塗布後の肌がなめらかで、きしみがなく、塗布時にはしっとり感が得られ、皮膚浸透性にも優れた水中油型乳化組成物が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)コレステロール、フィトステロールから選ばれる1種以上、
(B)成分(A)以外の25℃で固体の油剤、
(C)3価以上の多価アルコール、
(D)オキシエチレン基の平均付加モル数が2~18のポリオキシエチレンフィトステロール及びポリオキシエチレンコレステロールから選ばれる1種以上、
(E)水
を含有する水中油型乳化組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物は、塗布後長時間経過しても、コレステロール等の固体油剤の結晶化が抑制され、塗布後の肌がなめらかで、きしみがなく、塗布時にはしっとり感が得られ、皮膚浸透性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例における、人工膜を用いた皮膚浸透性評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)は、コレステロール、フィトステロールから選ばれる1種以上である。
成分(A)の含有量は、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、全組成中に0.05~4質量%であるのが好ましく、0.15~3.5質量%がより好ましく、0.5~2.5質量%がさらに好ましい。
【0010】
成分(B)は、成分(A)以外の25℃で固体の油剤である。
ここで、25℃で固体とは半固体も含まれ、25℃における粘度が10000mPa・sより大きいことをいう。粘度は、B型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)、ローターNo.4、12rpm、1分で測定するものである。
【0011】
成分(B)の油剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば制限されず、脂肪酸、脂肪族アルコール、コレステロール類誘導体、フィトステロール類誘導体、セラミド類、リン脂質、炭化水素油等を用いることができる。
より具体的には、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数12~22の脂肪酸が挙げられ、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる1種以上を含むのがより好ましく、ステアリン酸を含むのがさらに好ましい。
【0012】
脂肪族アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、キミルアルコール等の炭素数12~30の脂肪族アルコールなどが挙げられ、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、セチルアルコール、ステアリルアルコール、バチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、セチルアルコール、ステアリルアルコールから選ばれる1種以上を含むのがより好ましい。
【0013】
コレステロール類誘導体としては、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等が挙げられ、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、イソステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)から選れば1種又は2種以上を含むのが好ましく、イソステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリルから選ばれる1種以上を含むのがより好ましく、イソステアリン酸コレステリルを含むのがさらに好ましい。
【0014】
フィトステロール類誘導体としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル等が挙げられ、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)、イソステアリン酸フィトステリルから選ばれる1種以上を含むのが好ましく、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)を含むのがより好ましい。
【0015】
セラミド類としては、セラミド1、2、3、4、5、6、7等の天然セラミド、フィトスフィンゴシン等のスフィンゴシン誘導体などの他、特開昭62-228048号公報、特開昭63-216812号公報、特開昭63-227513号公報、特開昭64-29347号公報、特開昭64-31752号公報、特開平8-319263号公報などに記載のセラミド類似構造物質が挙げられる。セラミド類似構造物質としては、具体的には、塗布後の肌のべたつきを低減させ、保湿効果を向上させる観点から、次の一般式(1)及び(2)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
〔式中、R1bは炭素数10~26の炭化水素基、R2bは炭素数9~25の炭化水素基を示し、Xは-(CH2)n-(ここでnは2~6の整数を示す)を示す。〕
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって炭素数1~40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R3は炭素数1~6のアルキレン基又は単結合を示し、R4は水素原子、炭素数1~12のアルコキシ基又は2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R3が単結合のとき、R4は水素原子である。)
【0020】
なお、前記一般式(1)及び(2)中、炭化水素基としてはアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
一般式(1)の化合物の例としては、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが挙げられ、一般式(2)の化合物の例としては長鎖二塩基酸 ビス3-メトキシプロピルアミドが挙げられる。
【0021】
セラミド類としては、塗布中のしっとり感を向上させ、保湿効果を向上させる観点から、天然セラミド、スフィンゴシン類、前記一般式(1)及び(2)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、天然セラミド、スフィンゴシン類、前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、天然セラミド、フィトスフィンゴシン、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドから選ばれる1種又は2種以上を含むのがさらに好ましく、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドを含むのがよりさらに好ましい。
【0022】
リン脂質としては、塗布中のしっとり感を向上させ、保湿効果を向上させる観点から、ホスファチジルコリン含有量が60質量%以上であるのが好ましく、64質量%以上がより好ましく、68質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がよりさらに好ましい。ホスファチジルコリン以外のリン脂質成分としては、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等が挙げられる。
【0023】
リン脂質は、動植物から抽出、精製した天然物であっても、化学合成したものであってもよく、水素添加、水酸化処理などの加工を施したものであってもよい。天然物としては、塗布中のしっとり感を向上させ、保湿効果を向上させる観点から、大豆又は卵黄からの抽出物又はその精製物であるリン脂質が好ましく、水素添加又は水酸化処理されたリン脂質がより好ましい。具体的には、大豆レシチン水素添加物、卵黄レシチン水素添加物から選ばれる1種以上が好ましく、大豆レシチン水素添加物がより好ましい。
炭化水素油としては、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0024】
成分(B)としては、塗布中のしっとり感を向上させ、保湿効果を向上させる観点から、脂肪酸、脂肪族アルコール、コレステロール類誘導体、フィトステロール類誘導体、セラミド類、リン脂質から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、コレステロール類誘導体、フィトステロール類誘導体、セラミド類、リン脂質から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、セラミド類、リン脂質から選ばれる1種上を含むのがさらに好ましく、セラミド類を含むのがよりさらに好ましい。
【0025】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.05~4質量%であるのが好ましく、0.15~3.5質量%がより好ましく、0.5~2.5質量%がさらに好ましい。
【0026】
成分(C)の3価以上の多価アルコールは、分子内に3個以上の水酸基をもつ化合物であり、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良い。
3価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。4価アルコールとしては、ジグリセリン、エリスリトール等が挙げられる。5価以上の多価アルコールとしては、トリグリセリン等のポリグリセリン;グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、キシリトール、ソルビトール、マルビトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンエチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピレングルコシド等の糖類及び糖アルコールが挙げられる。
【0027】
成分(C)の多価アルコールとしては、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトールが好ましく、グリセリン、ソルビトールがより好ましい。
【0028】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.5~25質量%であるのが好ましく、1.5~22質量%がより好ましく、3~18質量%がさらに好ましく、5~14質量%がよりさらに好ましい。
【0029】
成分(D)は、オキシエチレン基の平均付加モル数が2~18のポリオキシエチレンフィトステロール及びポリオキシエチレンコレステロールから選ばれる1種以上である。
ポリオキシエチレンフィトステロールとしては、ポリオキシエチレンフィトステロールを構成するオキシエチレン基の平均付加モル数は、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点から3~12が好ましく、4~8がより好ましい。
ポリオキシエチレンフィトステロールとしては、オキシエチレン基の平均付加モル数が5であるPEG-5フィトステロール、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるPEG-10フィトステロール等が挙げられる。
ポリオキシエチレンフィトステロールは市販品を用いることができ、例えば、日光ケミカルズ社製のPEG-5フィトステロールであるNIKKOL BPS-5、PEG-10フィトステロールであるNIKKOL BPS-10等が挙げられる。
【0030】
ポリオキシエチレンコレステロールとしては、ポリオキシエチレンコレステロールを構成するオキシエチレン基の平均付加モル数が、3~15であるのが好ましく、4~10がより好ましい。
ポリオキシエチレンコレステロールとしては、オキシエチレン基の平均付加モル数が5であるコレス-5、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるコレス-10、オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるコレス-15等が挙げられる。
ポリオキシエチレンコレステロールは市販品を用いることができ、例えば、日本エマルジョン社製の、コレス-5であるEMALEX CS-5、コレス-10であるEMALEX CS-10、コレス-15であるEMALEX CS-15等が挙げられる。
【0031】
成分(D)としては、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点から、PEG-5フィトステロール、PEG-10フィトステロール、コレス-5、コレス-10から選ればれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、PEG-5フィトステロール、コレス-5から選ればれる1種以上を含むのがより好ましく、PEG-5フィトステロールを含むのがさらに好ましい。
【0032】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.05~12質量%であるのが好ましく、0.08~5質量%がより好ましく、0.15~3.5質量%がさらに好ましく、0.5~2.5質量%がよりさらに好ましく、0.6~1.4質量%がことさらに好ましい。
【0033】
本発明において、成分(D)に対する成分(A)の質量割合(A)/(D)は、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、0.01~50であるのが好ましく、0.05~20であるのがより好ましく、0.08~15がさらに好ましく、0.5~8がよりさらに好ましく、0.8~5がことさらに好ましい。
【0034】
本発明において、成分(D)に対する成分(B)の質量割合(B)/(D)は、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点、塗布後の肌のなめらかさを向上させ、肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、0.01~50であるのが好ましく、0.05~20であるのがより好ましく、0.12~15がさらに好ましく、0.8~3がよりさらに好ましい。
【0035】
本発明において、成分(D)に対する成分(C)の質量割合(C)/(D)は、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点、塗布後の肌の有効成分の皮膚浸透性を向上させる観点から、0.1~150であるのが好ましく、1~100がより好ましく、1.5~20がさらに好ましく、1.8~15がよりさらに好ましく、7~13がことさらに好ましい。
【0036】
本発明において、成分(E)の水の含有量は、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、全組成中に20~90質量%であるのが好ましく、30~80質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0037】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、(F)イオン性界面活性剤を含有することができ、塗布後の肌のなめらかさを向上させることができる。
成分(F)のイオン性界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるもので、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、N-ステアロイル-L-グルタミン酸、N-ミリストイル-L-グルタミン酸等のN-アシルグルタミン酸等のN-アシルアミノ酸、脂肪酸、アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、アシル乳酸、N-アシルメチルアラニン、N-アシルサルコシン、ジアシルアミノ酸及びそれらの塩等のカルボン酸塩型、アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アシルイセチオン酸、アルキルスルホコハク酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリン、N-ラウロイル-N-メチルタウリン、N-ステアロイル-N-メチルタウリン等のN-アシルメチルタウリン及びそれらの塩等のスルホン酸塩型、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル及びそれらの塩等の硫酸塩型、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩等のリン酸塩型などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点から、N-アシルアミノ酸、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩を含むのがより好ましく、N-ステアロイル-N-メチルタウリン及びそれらの塩を含むのがさらに好ましい。
【0038】
アニオン性界面活性剤を構成する塩構造としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩や、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-リジン等の塩基性アミノ酸塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
なお、N-ステアロイル-N-メチルタウリンのナトリウム塩は、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウムであり、ステアロイルメチルタウリンNaとも表記する。
【0039】
また、カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩類;塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩類;トリアルキルメチルアンモニウム塩類などが挙げられる。
これらのうち、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類から選ばれる1種以上を含むのが好ましく、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類を含むのがより好ましい。また、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムから選ばれる1種以上を含むのが好ましく、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを含むのがより好ましい。なお、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムは、ジステアリルジモニウムクロリドとも表記する。
【0040】
成分(F)としては、塗布後長時間経過しても、固体油剤の結晶化を抑制する観点、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点、塗布後の肌のきしみ感を抑制させる観点、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類から選ばれる1種以上を含むのが好ましく、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムから選ばれる1種以上を含むのがより好ましく、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウムを含むのがさらに好ましい。
【0041】
成分(F)のイオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~5質量%であるのが好ましく、0.05~3質量%がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、成分(D)を除く非イオン性界面活性剤を含有することができ、保存安定性を向上させることができる。なお、非イオン性界面活性剤は、成分(B)には含まれない。
非イオン性界面活性剤としては、ステアリン酸グリセリル、グリセリンモノベヘン酸エステル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、塗布後の肌のなめらかさを向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~5質量%であるのが好ましく、0.05~3質量%がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、水溶性増粘剤を含有することができ、塗布中のしっとり感を向上させることができる。
水溶性増粘剤としては、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のアクリル酸系ポリマー、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の多糖類系ポリマー、ウレタン系ポリマー等が挙げられ、保存安定性を向上させる観点からアクリル酸系ポリマーを含むのが好ましく、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーから選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、カルボキシビニルポリマーを含むのがさらに好ましい。
【0044】
水溶性増粘剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、塗布中のしっとり感を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~1質量%であるのが好ましく、0.05~0.8質量%がより好ましく、0.1~0.5質量%がよりさらに好ましい。
【0045】
本発明の水中油型乳化組成物は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油成分、前記以外の界面活性剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤、着色剤等を含有することができる。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物は、通常の方法に従って製造することができる。
例えば、成分(A)、(B)及び(D)を含む油性成分を85℃以上で加熱混合して、油性成分溶解相を調製し、成分(C)及び(E)を含む水性成分65℃以上で加熱混合し、水性成分溶解相を調製する。85℃以上に加熱した前記油性成分溶解相を撹拌しながら、65℃以上に加熱した前記水性成分溶解相を加え、25℃まで冷却して、水中油型乳化組成物を製造することができる。
【0047】
本発明の水中油型乳化組成物は、水中油型乳化化粧料として好適であり、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料;スキンケア乳液、スキンケアクリーム、BBクリーム、美容液等のスキンケア化粧料などの皮膚化粧料として適用することができる。なかでも、スキンケア化粧料が好ましい。
【実施例0048】
実施例1~15、比較例1~5
表1及び表2に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、塗布後の結晶化抑制、塗布後の肌のなめらかさ、塗布後の肌のきしみのなさ、塗布時のしっとり感を評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。
【0049】
(製造方法)
成分(E)の一部にカルボキシビニルポリマーを分散させ、成分(E)の一部に溶解させた水酸化カリウム水溶液を撹拌しながら加え、ポリマー相を得た。
成分(C)以外の多価アルコール、成分(A)、(B)及び(D)を85℃以上で加熱混合し、油性成分溶解相を得た。
成分(C)、(F)及び残りの成分(E)を65℃以上で加熱混合し、水性成分溶解相を得た。
85℃以上に加熱した前記油性成分溶解相を撹拌しながら、65℃以上に加熱した前記水性成分溶解相を加え、25℃まで冷却し、さらにポリマー相を加えて撹拌し、水中油型乳化組成物を得た。
【0050】
(評価方法)
(1)塗布後の結晶化抑制:
スライドガラスに、各水中油型乳化組成物2μL/cm2を指で塗布し、室温で静置した。4時間後、6時間後に顕微鏡で表面を観察し、結晶化の有無から、下記の通り3段階で評価した。
◎;塗布6時間後まで結晶化なし。
〇;塗布4時間後まで結晶化せず、6時間後に一部結晶化。
×;塗布4時間後で結晶化あり。
【0051】
(2)塗布後の肌のなめらかさ:
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を手の甲に0.1g塗布し、5秒間なじませた。その後、なじませた肌を触り、なめらかさを以下の基準で官能評価した。結果は、専門評価者3名の合計点で示した。
5;非常になめらかである。
4;なめらかである。
3;ややなめらかである。
2;あまりなめらかではない。
1;なめらかではない。
【0052】
(3)塗布後の肌のきしみのなさ:
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を手の甲に0.1g塗布し、5秒間なじませた。その後、なじませた肌を触り、きしみ感を以下の基準で官能評価した。結果は、専門評価者3名の合計点で示した。
5;きしみ感を全く感じない。
4;きしみ感を感じない。
3;ややきしみ感を感じる。
2;きしみ感を感じる。
1;とてもきしみ感を感じる。
【0053】
(4)塗布時のしっとり感:
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を手の甲に0.1g塗布し、5秒間なじませたとき、塗布中の肌のしっとり感を以下の基準で官能評価した。結果は、専門評価者3名の合計点で示した。
5;非常にしっとり感がある。
4;しっとり感がある。
3;ややしっとり感がある。
2;あまりしっとり感がない。
1;しっとり感がない。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
実施例16、比較例6、7
実施例1~15と同様にして、表3に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、塗布後の結晶化抑制、塗布後の肌のなめらかさ、塗布後の肌のきしみのなさ、塗布時のしっとり感を評価した。結果を表3に併せて示す。
また、人工膜を用いた皮膚浸透性を評価した。結果を図1に示す。
【0057】
(評価方法)
(5)人工膜を用いた皮膚浸透性:
フランツ型拡散セル(適用面積:1cm2、パーメギア社製)にStrat-M(メルク社製)を、非光沢側がレセプター液に接するようにセットした(N=5)。このとき、精製水をレセプター側に満たした。Strat-Mに推奨塗布量(0.002g/cm2)の水中油型乳化組成物を塗布した後、インキュベーター(温度32±1℃、湿度50±2%)に静置した。4時間後、ラウリル硫酸ナトリウム0.5%水溶液を含侵させたコットンで表面を拭き取り、Strat-Mとレセプター液を回収した。メタノールでN-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドを抽出し、超高速液体クロマトグラフィー(Nexera-i(Shimazu社製)、カラム(Inertsil ODS-HL HP (150×2.1mm、3μm))によって定量した。
【0058】
【表3】
【0059】
処方例1~4
表4~7に示す組成の水中油型乳化組成物は、実施例1~15と同様にして製造され、塗布後長時間経過しても結晶化が抑制され、塗布後の肌がなめらかで、きしみがなく、塗布時にはしっとり感が得られ、皮膚浸透性にも優れたものである。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
図1