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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095187
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/015 20060101AFI20240703BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20240703BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240703BHJP
   H01S 5/0222 20210101ALI20240703BHJP
   H01S 5/024 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G02F1/015 505
H01L31/02 B
H01L31/02 D
H01L31/02 E
H01S5/0222
H01S5/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212288
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】上村 浩
【テーマコード(参考)】
2K102
5F149
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
2K102BA03
2K102CA06
2K102CA18
2K102DA04
2K102DD03
2K102EA03
2K102EA07
2K102EA08
2K102EB25
2K102EB28
2K102EB30
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5F849KA20
5F849XB02
5F849XB05
5F849XB07
(57)【要約】
【課題】電気素子と光素子の間の高速の信号伝送を可能とする光モジュールを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光モジュールは、第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、を有するガラス製の基板を備える。光モジュールは、第1面に実装され、電気信号を処理する電気素子と、第2面に実装されるとともにビアを介して電気素子と熱的に接続される熱伝導部材と、第1面に実装され、電気信号と光信号との間の変換を行う光素子とを備える。光モジュールは、第2面に実装されるとともにビアを介して光素子に熱的に接続され、光素子の温度を調整するための温調素子と、電気素子を光素子に電気的に接続し、電気信号を伝送するための伝送線路を構成する電気配線と、第1面に接続され、電気素子および光素子を気密封止する第1リッドと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面と前記第2面との間を貫通するビアと、を有するガラス製の基板と、
前記第1面に実装され、電気信号を処理する電気素子と、
前記第2面に実装されるとともに前記ビアを介して前記電気素子と熱的に接続される熱伝導部材と、
前記第1面に実装され、前記電気信号と光信号との間の変換を行う光素子と、
前記第2面に実装されるとともに前記ビアを介して前記光素子に熱的に接続され、前記光素子の温度を調整するための温調素子と、
前記電気素子を前記光素子に電気的に接続し、前記電気信号を伝送するための伝送線路を構成する電気配線と、
前記第1面に接続され、前記電気素子および前記光素子を気密封止する第1リッドと、
を備える、
光モジュール。
【請求項2】
前記電気配線は、前記基板の前記第1面に形成されている、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記電気素子と前記光素子との間に充填された樹脂層をさらに備え、
前記電気配線は、前記樹脂層上に形成された金属膜である、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記基板の前記第1面は、凹部を有し、
前記凹部に充填された樹脂層をさらに備え、
前記電気配線は、前記基板の前記第1面に形成された第1部分と、前記樹脂層上に形成された第2部分と、を有する、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第1部分は、前記第1面に形成された第1配線であり、
前記第2部分は、前記樹脂層上に形成された第2配線であり、
前記第1配線と前記第2配線とが互いに直列に接続されている、
請求項4に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記基板の前記第1面は、凹部を有し、
前記電気素子および前記光素子は、前記凹部の中に実装されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記凹部は、互いに独立な第1凹部と第2凹部とを含み、
前記電気素子は、前記第1凹部の中に実装され、
前記光素子は、前記第2凹部の中に実装されている、
請求項6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記基板の前記第1面は、凹部を有し、
前記電気素子は前記凹部の中に実装され、前記光素子は前記凹部の外に実装されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記基板の前記第1面は、凹部を有し、
前記光素子は前記凹部の中に実装され、前記電気素子は前記凹部の外に実装されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記ビアは、前記基板の熱伝導率より大きい熱伝導率を有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記第2面に実装され、前記第2面と反対に放熱部材を有する第2リッドをさらに備え、
前記第2リッドは、前記熱伝導部材および前記温調素子を気密封止し、
前記熱伝導部材および前記温調素子は、前記放熱部材に熱的に接続されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光モジュールが記載されている。光モジュールは、内部空間を有する筐体と、筐体の内部空間に収容される光部品と、筐体の内部空間を封止する蓋とを備える。筐体は、その開口が蓋で閉塞されることによって気密封止される。光部品は、光源と、光送信回路と、光受信回路と、高速LSI(Large-Scale Integration)と、ヒートシンクブロックと、ペルチェ素子とを含む。ヒートシンクブロックは、高速LSIを冷却する冷却部品である。ペルチェ素子は、光源、光送信回路、および光受信回路を冷却する冷却部品である。ペルチェ素子は、光送信回路および光受信回路と共に筐体の内部において気密封止されている。
【0003】
特許文献2には、光部品が記載されている。光部品は、筐体と、筐体に形成された配線と、筐体の内部に配置された光回路素子と、光回路素子を搭載するマウントと、配線基板と、蓋とを有する。光部品は、外部の配線基板にフリップチップ実装されている。光回路素子は、光導波路で形成された光回路を有する。光回路のうち、光電気変換と電気光変換を担う部分は、ボンディングワイヤ等の接続手段によって配線に接続されている。筐体は、蓋によって密封されるので、筐体の内部への水分等の侵入が防止される。マウントに代えて温度制御素子が配置される場合があり、この場合、温度制御素子は光回路と共に密封される。
【0004】
非特許文献1には、BGA(Ball Grid Array)基板と、BGA基板に搭載されたチップと、チップに搭載されたTEC(Thermo Electric Cooler)と、チップおよびTECを収容する筐体とを備える。チップの上面(回路面)は、BGA基板上にフリップチップ実装されている。チップの下面(基板面)は、TECを介してIHS(Integrated Heat Spreader)に接続されている。チップは、BGA基板およびTECによって上下から押さえられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-173875号公報
【特許文献2】特開2020-086389号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0389532号明細書
【特許文献4】米国特許第6320257号明細書
【特許文献5】米国特許第6502999号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“A thermoelectric cooler integrated with IHS on a FC-PBGA package”, Chih-Kuang Yu,Chun-Kai Liu, Ming-Ji Dai, Sheng-Liang Kuo, and Chung-Yen Hsu, 2007 26thInternational Conference on Thermoelectrics.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電気素子および光素子は、その信頼性を向上させるために、より確実に保護することが求められる。例えば、電気素子および光素子は、筐体内に気密封止されている状態において、温度変化による膨張あるいは収縮によって応力の影響を受ける場合がある。よって、気密封止される電気素子および光素子を応力の影響等から保護するとともに電気素子と光素子の間の高速の信号伝送を可能とすることが求められうる。
【0008】
本開示は、電気素子と光素子の間の高速の信号伝送を可能とする光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る光モジュールは、第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、を有するガラス製の基板を備える。光モジュールは、第1面に実装され、電気信号を処理する電気素子と、第2面に実装されるとともにビアを介して電気素子と熱的に接続される熱伝導部材と、第1面に実装され、電気信号と光信号との間の変換を行う光素子とを備える。光モジュールは、第2面に実装されるとともにビアを介して光素子に熱的に接続され、光素子の温度を調整するための温調素子と、電気素子を光素子に電気的に接続し、電気信号を伝送するための伝送線路を構成する電気配線と、第1面に接続され、電気素子および光素子を気密封止する第1リッドと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電気素子と光素子の間の高速の信号伝送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る光モジュールを模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、図2の光モジュールの電気配線を示す図である。
図4図4は、第1変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図5図5は、図4の光モジュールの樹脂層を示す断面図である。
図6図6は、第2変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図7図7は、第3変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図8図8は、図7の光モジュールの分離部を示す図である。
図9図9は、図8のB-B線断面図である。
図10図10は、第4変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図11図11は、図10の光モジュールの分離部を示す図である。
図12図12は、第5変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図13図13は、第6変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図14図14は、第7変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図15図15は、第8変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図16図16は、第9変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図17図17は、第10変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図18図18は、第11変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図19図19は、第12変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図20図20は、第13変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光モジュールの実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光モジュールは、(1)第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、を有するガラス製の基板を備える。光モジュールは、第1面に実装され、電気信号を処理する電気素子と、第2面に実装されるとともにビアを介して電気素子と熱的に接続される熱伝導部材と、第1面に実装され、電気信号と光信号との間の変換を行う光素子とを備える。光モジュールは、第2面に実装されるとともにビアを介して光素子に熱的に接続され、光素子の温度を調整するための温調素子と、電気素子を光素子に電気的に接続し、電気信号を伝送するための伝送線路を構成する電気配線と、第1面に接続され、電気素子および光素子を気密封止する第1リッドと、を備える。
【0013】
この光モジュールは、第1面、第2面およびビアを有するガラス製の基板と、光素子と、電気素子と、熱伝導部材と、温調素子とを備える。電気素子および光素子は、基板の第1面に実装される。光モジュールは、第1面に接続され、電気素子および光素子を気密封止する第1リッドを備える。したがって、基板の第1面に実装された電気素子および光素子が第1リッドによって気密封止されるので、気密封止される電気素子および光素子を保護することができる。基板は、第1面と第2面との間を貫通するビアを有する。ビアを介して、電気素子および熱伝導部材を互いに熱的に接続するとともに、光素子および温調素子を互いに熱的に接続することができる。光モジュールでは、電気素子および光素子は、ガラス製の基板から見て熱伝導部材および温調素子とは反対側に実装される。よって、断熱性が良好なガラス製の基板によって、温度変化による応力の影響から電気素子および光素子を保護することができる。さらに、光モジュールは、気密封止された電気素子および光素子を互いに電気的に接続する電気配線を備える。電気配線は、電気素子と光素子との間で電気信号を伝送するための伝送線路を構成する。したがって、気密封止された空間に位置する伝送線路を介して電気素子と光素子との間において電気信号が伝送されるので、電気素子と光素子の間の高速の信号伝送が可能となる。
【0014】
(2)上記(1)において、電気配線は、基板の前記第1面に形成されていてもよい。この場合、第1面に形成された電気配線は第1リッドによって気密封止されるので、電気配線を保護することができる。
【0015】
(3)上記(1)において、光モジュールは、電気素子と光素子との間に充填された樹脂層をさらに備えてもよく、電気配線は、樹脂層上に形成された金属膜であってもよい。
【0016】
(4)上記(1)において、基板の第1面は、凹部を有してもよい。光モジュールは、凹部に充填された樹脂層をさらに備えてもよく、電気配線は、基板の第1面に形成された第1部分と、樹脂層上に形成された第2部分と、を有してもよい。
【0017】
(5)上記(4)において、第1部分は、第1面に形成された第1配線であってもよく、第2部分は、樹脂層上に形成された第2配線であってもよい。第1配線と第2配線とが互いに直列に接続されていてもよい。
【0018】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、基板の第1面は、凹部を有してもよく、電気素子および光素子は、凹部の中に実装されていてもよい。この場合、第1面に対する電気素子および光素子の突出量を抑えることができる。
【0019】
(7)上記(6)において、凹部は、互いに独立な第1凹部と第2凹部とを含んでもよい。電気素子は、第1凹部の中に実装され、光素子は、第2凹部の中に実装されていてもよい。
【0020】
(8)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、基板の第1面は、凹部を有してもよい。電気素子は凹部の中に実装され、光素子は凹部の外に実装されていてもよい。
【0021】
(9)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、基板の第1面は、凹部を有してもよい。光素子は凹部の中に実装され、電気素子は凹部の外に実装されていてもよい。
【0022】
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、ビアは、基板の熱伝導率より大きい熱伝導率を有してもよい。この場合、ビアを介して、熱伝導部材と電気素子との間の熱伝達、および温調素子と光素子との間の熱伝達を一層効率よく行うことができる。
【0023】
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、光モジュールは、第2面に実装され、第2面と反対に放熱部材を有する第2リッドをさらに備えてもよい。第2リッドは、熱伝導部材および温調素子を気密封止してもよく、熱伝導部材および温調素子は、放熱部材に熱的に接続されていてもよい。この場合、第2リッドによって熱伝導部材および温調素子が気密封止されるので、熱伝導部材および温調素子を保護することができる。第2リッドは、放熱部材を有する。したがって、第2リッドの放熱部材を介して熱伝導部材および温調素子の熱を放熱させることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
実施形態に係る光モジュールの種々の例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る光モジュール1を模式的に示す平面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図1および図2に示されるように、光モジュール1は、基板2と、第1リッド3と、第2リッド4と、光素子5と、温調素子6と、電気素子7と、熱伝導部材8とを備える。光モジュール1は、例えば、電気信号を光信号に変換して外部に送信する光送信モジュールである。例えば、光モジュール1は、デジタルコヒーレント光伝送に用いられるコヒーレント光送信モジュールである。
【0026】
基板2は、ガラス製である。例えば、基板2はガラスインターポーザーである。基板2は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向D2に延在している。基板2は、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に厚みを有する。一例として、基板2の第1方向D1の長さL1は12mmであり、基板2の第2方向D2の長さW1(基板2の幅)は7mmである。基板2の第3方向D3の長さ(基板2の厚さ)T1は、例えば、0.5mmである。
【0027】
基板2は、例えば、ソーダ石灰ガラス(ソーダライムガラス)、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、および、石英ガラスのいずれかによって構成されている。例えば、基板2を構成するガラスの主成分は二酸化ケイ素(SiO)である。基板2は、ナトリウム(Na)およびカルシウム(Ca)の少なくともいずれかを含む組成物であってもよい。基板2の線膨張係数は、例えば、3~5[ppm/K]である。しかしながら、基板2の線膨張係数は、ガラスを構成する材料の組成を調整することにより、1[ppm/K]以下、または10[ppm/K]程度にすることができる。基板2の線膨張係数は、後述する光素子5の線膨張係数、温調素子6の線膨張係数、電気素子7の線膨張係数、および熱伝導部材8の線膨張係数との差が小さいことが望ましい。この線膨張係数の差が小さいことにより、温度変化による膨張・収縮に起因する応力を低減し、光素子5および電気素子7の信頼性を向上することができる。
【0028】
基板2は、第1面2bと、第1面2bと反対の第2面2cと、第1面2bおよび第2面2cの間を貫通するビア2dとを有する。基板2は、例えば、微細孔(TGV:Through Glass Via)であるビア2dを有するガラス基板である。ビア2dは、スルービアとも称される。ビア2dは、例えば、サーマルビアとして機能する。ビア2dは、例えば第3方向D3に沿って延在する円柱状の形状を有する。第3方向D3に沿って見たとき(基板2の平面視)におけるビア2dの直径は、例えば、100μmである。ビア2dの第3方向D3に沿った断面において、ビア2dとビア2dの周囲のガラス(基板2のビア2d以外の部分)との境界線の角度は第1面2bに対して垂直とは限らず、第1面2bに対して傾斜していてもよい。このように、ビア2dは、第1面2bに対して第1方向D1または第2方向D2に傾斜して延在していてもよい。
【0029】
ビア2dの第1面2bに垂直な断面での形状は、第1面2bから第2面2cに向かって細くなっていてもよいし、太くなっていてもよい。また、第1面2bから基板2の第3方向D3の中心に向かって細くなり、その後、当該中心から第2面2cに向かって太くなっていてもよい。ビア2dの直径は、ビア2dの断面形状が円形となる断面における直径の最大値を表すものとする。
【0030】
基板2は、複数のビア2dを有する。複数のビア2dは、光素子5および温調素子6の間に位置する複数の第1ビア2d1と、電気素子7および熱伝導部材8の間に位置する複数の第2ビア2d2とを含む。複数の第1ビア2d1、および複数の第2ビア2d2のそれぞれは、例えば、第1方向D1および第2方向D2のそれぞれに沿って並んでいる。例えば、基板2の平面視において、第1ビア2d1および第2ビア2d2のそれぞれは、一定のピッチで2次元に配列されている。第1ビア2d1のピッチ(1つの第1ビア2d1の中心軸から当該第1ビア2d1に隣接する第1ビア2d1の中心軸までの距離)は、例えば、250μmである。第2ビア2d2についても同様である。
【0031】
第1面2bは光素子5および電気素子7が実装される面であり、第2面2cは温調素子6および熱伝導部材8が実装される面である。第1面2bは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在している。第2面2cは、第1面2bとは反対側を向いており、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在している。ビア2dは、第1面2bから第2面2cまで第3方向D3に沿って延在している。ビア2dには、例えば、金属が充填されている(フィルドビアとも称される)。
【0032】
具体例として、ビア2dには銅(Cu)が充填されている。ビア2dに充填された銅が周囲のガラス部分(基板2のビア2d以外の部分)に密着することにより、第1面2bと第2面2cとの間で基板2の気密性が確保される。例えば、ビア2dが形成された基板2のファインリーク試験によるリーク量は1.0×10-9[Pa・m/s]未満である。銅は熱伝導性が良好であるため、ビア2dに銅が充填されている場合、ビア2dをサーマルビアとして機能させることができる。ビア2dは、第1面2bと第2面2cとの間において、少なくとも電気伝導および熱伝導のいずれか一つを目的として使用される。ビア2dは、特に第1面2bおよび第2面2cの間の熱伝導を目的として使用される場合にサーマルビアと称される。
【0033】
銅(Cu)の熱伝導率は約400[W/(m・K)]である。よって、ビア2dの面内密度(第3方向D3に沿って見たときにおける基板2のガラス部分に対する複数のビア2dの銅の割合)が10%となるようにビア2dの個々の面積および密度が調整される場合、当該ガラス部分の熱伝導率をほぼゼロと実際より小さく見積もっても、ビア2dの部分(後述するサーマルパッドに相当する)の熱伝導率は平均で約40[W/(m・K)]となる。
【0034】
上記では、ビア2dが銅によって構成されている例について説明した。しかしながら、ビア2dには、半導体が充填されていてもよい。具体例として、ビア2dにシリコン(Si)が充填されていてもよい。Siの線膨張係数は約4[ppm/K]、Cuの線膨張係数は約18[ppm/K]、ガラスの線膨張係数は例えば約3~5[ppm/K]であるため、ビア2dをSiで充填した場合、ビア2dをCuで充填した場合に比べてビア2dの周囲のガラス部分との線膨張係数差が小さい。このため、例えば温度変化によって生じる応力を低減することができる。応力を低減することにより、ビア2dの直径をより大きくすることが可能となる。
【0035】
なお、ビア2dは、後述のサーマルパッドとして機能する電極2g,2fと同様の形状と同程度の面積を有する単一のビアとして形成されてもよい。当該単一のビアの内部は、Siで充填されていてもよい。基板2の平面視において当該単一のビアの形状は長方形状であってもよい。Siの熱伝導率は約160[W/(m・K)]であり、Cuの熱伝導率よりも小さい。しかしながら、ビアの面積を大きくすることで基板2のガラス部分の面積に対するビアの総面積の割合を大きくし、ビア2dの部分の熱伝導率を向上することができる。例えば、ビア2dは、基板2の熱伝導率(基板2のビア2d以外のガラス部分の熱伝導率)より大きい熱伝導率を有する。
【0036】
複数のビア2dのうち、第1ビア2d1は光素子5および温調素子6に熱的に接続されており、第2ビア2d2は電気素子7および熱伝導部材8に熱的に接続されている。第1ビア2d1は基板2のガラス部分よりも光素子5に生じる熱を温調素子6に効率よく伝導し、第2ビア2d2は基板2のガラス部分よりも電気素子7に生じる熱を熱伝導部材8に効率よく伝導する。
【0037】
第1リッド3は凹部3bを有し、凹部3bの中に基板2の第1面2bに実装された光素子5および電気素子7が収容されている。第1リッド3は、例えば、ガラス製である。この場合、第1リッド3の材料が基板2のガラス部分の材料と同一であるため、熱膨張または熱収縮による光素子5および電気素子7への応力を低減させることができる。しかしながら、第1リッド3は、ガラス以外の材料によって構成されていてもよい。ただし、第1リッド3の材料は、気密性および断熱性を有する材料であることが好ましい。
【0038】
例えば、光素子5は、第1リッド3を介して光モジュール1の外部と光信号Lの送受信を行う。光素子5は光信号Lと電気信号Sとの間の変換を行い、電気素子7は電気信号Sを処理する。具体的には、光信号Lを送信する場合、電気素子7が電気信号Sを増幅して光素子5を駆動するための駆動信号を生成し、光素子5が駆動信号に応じて光信号Lを外部に出力する。光信号Lを受信する場合、光素子5が外部から受信した光信号Lを電流信号に変換し、電気素子7が電流信号を電圧信号に変換するとともに増幅して電気信号Sを出力する。光素子5に入出力される光信号Lは、例えば、第1リッド3を透過する。第1リッド3は、例えば、光素子5に入出力する光信号Lの波長において透過性を有する。光信号Lの波長帯域は、一例として、1.2μm以上且つ1.7μm以下である。第1リッド3の光信号Lの透過率は高いことが好ましい。例えば、当該透過率は80%以上であってもよい。
【0039】
第1リッド3の凹部3bは第3方向D3に窪んでいる。第1リッド3は、凹部3bとしてガラス板に空洞(キャビティ)が形成されたものであってもよい。基板2の平面視(第3方向D3に沿って見た場合)において凹部3bを取り囲む接続面3cが基板2の第1面2bに接続されることによって、第1リッド3の凹部3bと基板2の第1面2bとによって画成される第1気密空間K1が形成される。
【0040】
第1気密空間K1には、第1面2bに実装された光素子5および電気素子7が収容されている。第1リッド3の線膨張係数は、基板2の線膨張係数との差が小さいことが望ましい。この線膨張係数の差が小さいことにより、光モジュール1の温度変化に伴い発生する応力を低減することが可能となる。第1リッド3の第1方向D1の長さL2は、基板2の第1方向D1の長さL1よりも小さい。第1リッド3の第2方向D2の長さは、基板2の第2方向D2の長さW1よりも小さい。
【0041】
例えば、第1リッド3は、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在する底部3dと、底部3dから第3方向D3に延びる側壁部3fとを有する。一例として、第1リッド3の第1方向D1の長さL2は10mmであり、第1リッド3の第2方向D2の長さは5mmである。第1リッド3の高さ(第3方向D3の長さ)H2は、例えば、0.3mmである。例えば、底部3dおよび側壁部3fは一体とされている。しかしながら、底部3dおよび側壁部3fは別体であってもよく、空洞を有する底部3dに側壁部3fが接合されて第1リッド3が構成されてもよい。基板2の平面視において、側壁部3fは、凹部3bの周囲を取り囲む形状を有する。すなわち、凹部3bは、側壁部3fの内側に形成される。側壁部3fに表面が光学研磨されたガラスを使用することにより、上述した第1リッド3を介した光結合が容易に実現可能となる。この場合、底部3dは光信号Lについて不透明であってもよい。
【0042】
第1リッド3は、例えば、接着剤(封止剤ともいう)を介して基板2に接合(シール)されている。この接着剤は、例えば、金属によって構成されている。具体例として、当該接着剤は金錫(AuSn)によって構成されている。この場合、第1リッド3は、接続面3cに塗布された金錫が加熱溶融されて基板2に接合される。このとき、第1リッド3の接続面3c、および接続面3cと接続される基板2の接続部分は、例えば、金属によってメタライズされている。例えば、接続面3c、および基板2の当該接続部分のガラス表面は、金(Au)によってメタライズされている。金属接合により、高気密な第1気密空間K1が形成される。例えば、第1気密空間K1のファインリーク試験によるリーク量は、1.0×10-9[Pa・m3/s]未満である。これにより、光素子5および電気素子7の信頼性をより高めることが可能である。加熱溶融は、例えばレーザ照射またはヒータ加熱によって行われる。
【0043】
第1リッド3は、加熱用のレーザ光の波長において透過性を有していてもよい。例えば、第1リッド3は、当該レーザ光の波長において80%以上の透過率を有していてもよい。この場合、基板2の反対側から第1リッド3を透過するようにレーザ光を照射して上記の接着剤を加熱することができる。これにより、高気密な第1気密空間K1を形成することができる。第1リッド3と基板2の接合には、接着剤として上述の金錫以外にも半田、ガラスフリット、またはエポキシ樹脂が使用されてもよい。また、接着剤を使用せず、例えば、第1リッド3の表面酸化膜(SiO)と基板2の表面酸化膜とが直接接合されてもよい。また、酸化膜および金属が形成された表面同士が直接接合されてもよい(ハイブリッドボンディングとも称される)。接着剤として絶縁体が使用された場合、および、ハイブリッドボンディングで接合が行われる場合、第1気密空間K1の気密封止を行うとともに、第1気密空間K1と第1リッド3の外部とを接続する電気配線(フィードスルー)を形成することができる。
【0044】
第2リッド4は基板2の第2面2cに接続される。第2リッド4は、基板2の第2面2cに実装された温調素子6および熱伝導部材8を収容する。第2リッド4は、第2面2cに接続されて温調素子6および熱伝導部材8を気密封止する。第2リッド4は、例えば、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在する放熱部材4bと、放熱部材4bから第3方向D3に延びる側壁部4cとを有する。
【0045】
放熱部材4bは、基板2の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する。放熱部材4bは板状を呈する。放熱部材4bは、例えば、シリコン(Si)によって構成されている。側壁部4cは、例えば、ガラスによって構成されている。しかしながら、放熱部材4bの材料、および側壁部4cの材料は、上記の例に限られない。例えば、放熱部材4bは金属製であってもよい。また、側壁部4cはセラミック製であってもよい。
【0046】
放熱部材4bは、温調素子6および熱伝導部材8のそれぞれと光モジュール1の外部との間に位置する熱伝達経路として機能する。例えば、放熱部材4bは、接着剤を介して側壁部4cに接合されている。例えば、第2リッド4では、シリコン(Si)製の放熱部材4bとガラス製の側壁部4cとが接着剤を介して一体化されている。放熱部材4bの線膨張係数は、基板2の線膨張係数との差が小さいことが望ましい。この線膨張係数の差が小さいことにより、光モジュール1の温度変化に伴う応力を低減することができる。
【0047】
例えば、第2リッド4の第1方向D1の長さL3は、基板2の第1方向D1の長さL1よりも小さい。第2リッド4の第2方向D2の長さW3は、基板2の第2方向D2の長さW1よりも小さい。一例として、第2リッド4の第1方向D1の長さL3は第1リッド3の第1方向D1の長さL2と同一であり、第2リッド4の第2方向D2の長さW3は第1リッド3の第2方向D2の長さと同一である。この場合、第2リッド4の第1方向D1の長さL3は10mmであり、第2リッド4の第2方向D2の長さW3は5mmである。例えば、第2リッド4の高さ(第3方向D3の長さ)H3は、第1リッド3の高さH2よりも大きい。一例として、第2リッド4の高さH3は1.5mmである。
【0048】
基板2および第2リッド4の間には第2気密空間K2が形成される。基板2の第2面2cと、第2リッド4の側壁部4cおよび放熱部材4bとが第2気密空間K2を画成する。例えば、第1リッド3の第1気密空間K1の容積は、第2リッド4の第2気密空間K2の容積よりも小さい。例えば、第1気密空間K1は第2気密空間K2よりも高気密である。例えば、第1リッド3からのリーク量は、第2リッド4からのリーク量より小さい。
【0049】
第2リッド4は、例えば、接着剤を介して基板2に接合されている。一例として、第1リッド3は金錫(AuSn)を介して基板2に接合され、第2リッド4は樹脂接着剤を介して基板2に接合される。例えば、第2リッド4は紫外線硬化樹脂を介して基板2に接合される。この場合、第2気密空間K2は、第1気密空間K1よりも低気密になりうる。しかしながら、第2気密空間K2の気密度は第1気密空間K1の気密度より低くてもよい。一例として、第2気密空間K2のファインリーク試験によるリーク量は、1.0×10-9[Pa・m3/s]未満であってもよい。この場合、第2気密空間K2に収容される温調素子6および熱伝導部材8での結露の発生を抑制でき、温調素子6および熱伝導部材8の信頼性を向上できる。
【0050】
第2リッド4と基板2の接合には、接着剤として半田、ガラスフリット、またはエポキシ樹脂が用いられてもよい。また、接着剤を使用せず、例えば側壁部4cの接合面の表面酸化膜(SiO)と基板2の第2面2cの表面酸化膜とが直接接合されてもよいし、酸化膜および金属が形成された表面同士がハイブリッドボンディングで接合されてもよい。接着剤として絶縁体が用いられた場合、および、ハイブリッドボンディングで接合された場合、第2気密空間K2を気密封止をするとともに、第2気密空間K2と第2リッド4の外とを接続する電気配線を形成できる。なお、第2気密空間K2に水分を吸着する吸湿材、または水分を分解する分解剤が配置されてもよい。第2気密空間K2において基板2、第2リッド4、温調素子6および熱伝導部材8の表面は、第2気密空間K2が低気密の場合に結露してもそれぞれの内部に水分が浸透しないように、樹脂等の絶縁膜で保護(被覆)されていてもよい。
【0051】
例えば、光素子5は光変調器である。一例として、光素子5は、IQ光変調器である。光素子5は、例えば、リン化インジウム(InP)によって構成されている。この場合、光素子5の線膨張係数は約4.6[ppm/K]である。一例として、光素子5の第1方向D1の長さL4は4mmであり、光素子5の第2方向D2の長さは4mmである。光素子5の厚さ(第3方向D3の長さ)H4は、例えば、0.1mmである。光素子5は、第1気密空間K1において基板2に対して回路面(第1面)5bが基板2を向くようにフリップチップ実装(あるいはフェイスダウン実装ともいう)される。このフリップチップ実装では、例えば、熱圧着または超音波接合が用いられる。回路面は回路層が形成されている面を示しており、回路面と反対の面は基板面と称される。
【0052】
なお、光素子5は、光変調器以外の光学素子であってもよい。例えば、光素子5は、半導体レーザまたは受光素子であってもよい。一例として、半導体レーザはレーザダイオードによって構成されており、受光素子はフォトダイオードによって構成されている。例えば、光素子5は、基板2に対向する第1面5b(回路面)、および第1面5bとは反対側を向く第2面5c(基板面)を有する。回路面は、光導波路、光スプリッタまたは光カプラ等の光回路の構成要素が形成されている面である。回路面にはエピタキシャル層が形成されていてもよいし、アクティブ素子が形成されていてもよい。基板面には、通常は光回路の構成要素は形成されていない。ただし、基板面に電極またはレンズ等のパッシブ素子が形成されていてもよい。
【0053】
例えば、光素子5は第1面5bに形成された電極(パッド)を有し、当該電極はバンプ9を介して基板2の第1面2bに形成された電極2fおよびビア2dに電気的および熱的に接続される。例えば、第1面5bに形成された電極は、金(Au)によって構成されたパッドであってもよい。例えば、バンプ9は、半田バンプ、Auスタッドバンプ、またはCuピラー上に半田キャップが載せられたマイクロバンプである。基板2と光素子5との間にアンダーフィル樹脂が充填されていてもよい。
【0054】
例えば、光素子5の基板2とは反対側(第2面5c)は気体に囲まれているため熱的にフローティング(周囲との熱の流出入が遮断されている状態)になっている。一方、光素子5は基板2のビア2dを介して温調素子6に熱的に接続されている。したがって、光素子5は、第1リッド3からの熱の影響を受けにくく、かつ温調素子6によって効率的に温度制御される。例えば、光素子5と温調素子6との間の熱抵抗は、光素子5と第1リッド3との間の熱抵抗よりも1桁以上低い。基板2に第2リッド4が接合された状態において、放熱部材4bは温調素子6から見て第2面2cとは反対側に位置する。
【0055】
温調素子6は、放熱部材4bと基板2との間に挟まれている。放熱部材4bには温調素子6が熱的に接続されている。温調素子6は、例えば、熱電クーラーである。例えば、温調素子6は、複数のペルチェ素子6bと、複数のペルチェ素子6bを第3方向D3に挟む第1基板6cおよび第2基板6dとを有する。第1基板6cおよび第2基板6dは、例えば、セラミック基板である。第1基板6cは放熱部材4bに接触する。第2基板6dは、基板2の第2面2cに形成された電極2gを介してビア2dに接続される。
【0056】
なお、基板2の第2面2cに電極2gとは別の電極が形成され、当該電極に例えばワイヤボンディングで温調素子6の電気端子が電気接続されることにより、温調素子6に電力を供給することが可能である。また、基板2の第2面2cまたは第1面2bに例えばサーミスタが配置され、このサーミスタが温度測定用のモニタとして用いられてもよい。光素子5の回路面は、基板2に固定され、基板2を介して温調素子6に接続されている。これに対し、光素子5の基板面は他の構成要素(固体)に接触していない。よって、回路面および基板面の両方が固定された構成と比較して、温度変化による光素子5に対する応力の影響等を抑えることができる。
【0057】
より具体的には、仮に、光素子5が第2気密空間K2の中で温調素子6と基板2の間に挟まれる場合(回路面が基板2の第2面2cを向くように光素子5が基板2に搭載され、光素子5の基板面に温調素子6が搭載される場合)、温度変化に伴って、第2リッド4、温調素子6、光素子5および基板2がそれぞれの線膨張係数に従って膨張または収縮するため、光素子5に大きな応力が加わる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、光素子5の回路面のみが固定されるため、光素子5に加わる熱応力を低減することができる。これにより光素子5の信頼性が向上する。
【0058】
基板2の電極2f,2gは、例えば、銅(Cu)の表面が金(Au)によってメッキされて形成されている。電極2f,2gは金メッキと銅の間に例えばニッケル(Ni)またはパラジウム(Pd)がメッキされて形成されていてもよい。電極2f,2gは、複数のビア2dを覆うパッド(サーマルパッド)であってもよい。すなわち、電極2f,2gは、基板2の平面視においてビア2dを含むサーマルパッドであってもよい。このサーマルパッドは、例えば、銅によって構成された薄膜である。第1基板6cと放熱部材4bの間、または第2基板6dと電極2gの間に熱伝導材(TIM:Thermal Interface Material)が介在していてもよい。この熱伝導材は、例えば、金属ペースト、半田または樹脂によって構成されている。一例として、温調素子6の第1方向D1の長さL5は4mmであり、温調素子6の第2方向D2の長さは4mmである。例えば、温調素子6の厚さH5(第3方向D3の長さ)は1mmである。
【0059】
電気素子7は、例えば、光素子5を駆動するドライバICである。電気素子7は、フォトダイオードである光素子5における光信号Lの出力を電圧変換して増幅するトランスインピーダンスアンプであってもよい。電気素子7は、第1面7bに形成された電極を介して入力された電気信号を増幅して駆動信号を生成し、当該駆動信号を光素子5に出力して光素子5を駆動する。また、電気素子7は、上記のドライバ回路、及び上記のトランスインピーダンスアンプの両方を含んでいてもよい。
【0060】
電気素子7は、例えば、SiGe BiCMOSプロセスによって形成された半導体回路部品である。電気素子7の第1方向D1の長さL6は2mmであり、電気素子7の第2方向D2の長さは4mmである。電気素子7の第3方向D3の長さH6(厚さ)は0.1mmである。電気素子7は、第1気密空間K1において基板2に対してフリップチップ実装(フェイスダウン実装)される。フリップチップ実装では、例えば、熱圧着または超音波接合が行われる。
【0061】
電気素子7は、基板2に対向する第1面7b(回路面)、および第1面7bとは反対側を向く第2面7c(基板面)を有する。電気素子7は、第1面7bが基板2を向くように基板2に実装されている。例えば、電気素子7は第1面7bに形成された電極を有し、当該電極はバンプ9を介して基板2の第1面2bに形成された電極2fおよびビア2dに電気的および熱的に接続される。電気素子7の電極は、例えば、アルミニウム(Al)によって構成されたパッドである。電気素子7と基板2との間にはアンダーフィル樹脂が充填されていてもよい。
【0062】
例えば、電気素子7の基板2とは反対側(第2面7c)は気体に囲まれているため熱的にフローティングになっている。一方、電気素子7は基板2のビア2dを介して熱伝導部材8に熱的に接続されている。したがって、電気素子7から発せられた熱は、第1リッド3に伝わりにくく、ほとんど熱伝導部材8に伝達される。基板2に第2リッド4が接合された状態において、第2リッド4の放熱部材4bは熱伝導部材8から見て第2面2cとは反対側に位置する。
【0063】
熱伝導部材8は、例えば、放熱ブロックである。熱伝導部材8は、放熱部材4bと基板2との間に挟まれている。放熱部材4bには熱伝導部材8が熱的に接続されている。熱伝導部材8は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)によって構成されている。熱伝導部材8は、例えば、基板2の電極2gに接触する第1面8b、および放熱部材4bに接触する第2面8cを有する。第1面8bと電極2fとの間、および第2面8cと放熱部材4bとの間、の少なくともいずれかに熱伝導材が介在していてもよい。例えば、熱伝導部材8の第1方向D1の長さL7は2mmであり、熱伝導部材8の第2方向D2の長さは4mmである。熱伝導部材8の第3方向D3の長さH7(厚さ)は1mmである。
【0064】
電気素子7の回路面は、基板2に固定され、基板2を介して熱伝導部材8に接続されている。よって、電気素子7の熱を光モジュール1の外部に逃がすことが可能である。電気素子7の電極は、基板2の電極2fに電気的に接続されるとともに、電気素子7および熱伝導部材8が電極2f,2gおよびビア2dを介して互いに熱的に接続されている。これに対し、電気素子7の基板面は他の構成要素(固体)に接触していない。よって、回路面および基板面の両方が固定された構成と比較して、温度変化による電気素子7に対する応力の影響等を抑えることができる。
【0065】
仮に、電気素子7が第2気密空間K2の中で熱伝導部材8と基板2の間に挟まれる場合(回路面が基板2の第2面2cを向くように電気素子7が基板2に搭載され、電気素子7の基板面に熱伝導部材8が搭載される場合)、温度変化に伴って、第2リッド4、熱伝導部材8、電気素子7および基板2がそれぞれの線膨張係数に従って膨張または収縮するため、電気素子7に大きな応力が加わる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、電気素子7の回路面のみが固定されるため、電気素子7に加わる熱応力を低減することができる。これにより電気素子7の信頼性が向上する。
【0066】
光モジュール1は、電気素子7を光素子5に電気的に接続する電気配線10を備える。電気配線10は、バンプ9を介して光素子5の第1面5bに形成された電極と電気的に接続されるとともに、バンプ9を介して電気素子7の第1面7bに形成された電極と電気的に接続される。電気配線10は、電気素子7と光素子5との間において電気信号を伝送するための伝送線路を構成する。電気配線10は、例えば、高速信号(高周波信号)を伝送するための信号配線を含む。
【0067】
電気配線10は、基板2の第1面2bに形成されている。電気配線10によって伝送線路を構成し、伝送線路の特性インピーダンスが適切に設計されることによって光素子5から電気素子7までの距離を離す(例えば1mm離す)ことが可能となる。この場合、電気配線10の熱抵抗を大きくして電気素子7から光素子5への熱流入を低減することが可能となる。さらに、電気配線10によって伝送線路が構成されることにより、ワイヤボンディング接続に比べて電気配線の寄生インダクタンスの影響を低減できる。
【0068】
図3は、光素子5および電気素子7を互いに接続する電気配線10を示す図である。図2及び図3に示されるように、電気配線10は、第1方向D1に沿って延在している。基板2には複数の電気配線10が形成されており、複数の電気配線10は第2方向D2に沿って並んでいる。複数の電気配線10は、例えば、第2方向D2に沿って等間隔に並んでいる。電気配線10の間隔(ピッチ)は、例えば、100μmである。
【0069】
電気配線10の幅は、例えば、95μmである。第2方向D2に沿って互いに隣接する2本の電気配線10の間の距離は、例えば、5μmである。このように、基板2には複数の電気配線10が高密度に形成されている。よって、光素子5と電気素子7との電気接続を高密度に行うことが可能である。例えば、基板2の比誘電率は、セラミックの比誘電率よりも低い。一例として、基板2の比誘電率は5.5である。この場合、電気配線10において安定した信号伝送が可能な遮断周波数をセラミックパッケージよりも高くすることが可能となる。よって、光モジュール1では、より高い周波数帯域(例えば100GHz以上)まで使用することが可能である。
【0070】
電気配線10を伝送する信号は、例えば、差動信号によって構成されている。一例として、電気配線10を伝送する信号は4chの差動信号によって構成されている。電気配線10の数は、例えば、4ch合計で16本である。電気配線10は、例えば、GSSG(グランド・シグナル・シグナル・グランド)線路である。しかしながら、電気配線10は、GSGSG(グランド・シグナル・グランド・シグナル・グランド)線路であってもよい。電気配線10は、例えば、1層のCu配線として設計された差動マイクロストリップ線路またはコプレーナ線路である。1層とすることで前述の電気配線10の熱抵抗を大きくすることが可能である。差動マイクロストリップ線路またはコプレーナ線路の特性インピーダンスは、例えば、インピーダンス整合のために光変調器(光素子5)の終端抵抗に合わせることが好ましく、例えば、差動インピーダンスは50~60Ωである。
【0071】
Cu配線の厚さは、例えば、3μmである。銅(Cu)の熱伝導率が約400[W/(m・K)]であり、電気配線10の断面積が285μm(幅95μm×厚さ3μm)であり、光素子5から電気素子7までの距離が1mmであるとすると、16本の電気配線10の合計の熱抵抗は約550[K/W]である。基板2の光素子5から電気素子7までのガラス部分の熱抵抗は、ガラスの熱伝導率を約1[W/(m・K)]とすると、光素子5および電気素子7の第2方向D2の長さが4mm、基板2の厚さが0.5mm、光素子5から電気素子7までの距離が1mmであるため、約500[K/W]である。このため、光素子5から電気素子7までの並列熱抵抗は約260[K/W]である。この並列熱抵抗は、発熱体である電気素子7に熱的に接続された基板2のサーマルビア(ビア2d)の熱抵抗(電気素子7の面積4mm×2mm、基板2の厚み0.5mm、ビア2dの部分の熱伝導率40[W/(m・K)]から約1.6[K/W])よりも150倍以上大きい。したがって、光素子5および電気素子7の間の熱の流出入を効果的に低減することができる。
【0072】
以上、電気配線10について説明した。しかしながら、電気配線10の構成は、上記の例に限られず適宜変更可能である。例えば、電気配線10は、2層のCu配線として設計されたグランデッドコプレーナ線路であってもよい。また、光モジュール1は、光素子5および電気素子7の間に、電気配線10以外の電源線または制御線(比較的低速度の電気信号)を有していてもよい。さらに、光モジュール1は、EMI対策のため、例えば、第1リッド3の外側にシールド(接地電位に接続された金属製の覆い)を備えていてもよい。
【0073】
例えば、光モジュール1は、外部接続用の端子11を有する。端子11は、基板2の第1面2bに設けられた表面実装用の端子である。表面実装用の端子11が設けられる基板2の面を実装面ともいう。第1面2bに対する端子11の高さ(第3方向D3の長さ)H8は、第1面2bに対する第1リッド3の高さH2よりも大きい。一例として、端子11は、球状を呈する半田ボールである。端子11の直径は、一例として、400μmである。端子11は、例えば、Sn-Ag-Cu合金系の半田である。
【0074】
端子11は、基板2の第1面2bに形成された電気配線2hに接続されている。電気配線2hの表面はパッシベーション膜により保護されていてもよい。その場合、電気配線2hの端子11と接続される部分には、金属が露出した電極(パッド)が形成されている。当該電極は表面がアンダーバンプメタルでメッキ処理されてもよい。電気配線2hは、バンプ9を介して電気素子7の第1面7bに形成された電極に電気的に接続されている。光モジュール1は複数の端子11を有し、複数の端子11は、例えば、第2方向D2に沿って並って並んでいる。なお、端子11は、アレイ状に配列されていてもよい。例えば、複数の端子11はBGA(Ball Grid Array)を構成する。
【0075】
端子11および電気配線2hは、例えば、高速信号(高周波信号)である電気信号Sを電気素子7に入出力するために使用される。端子11および電気配線2hを伝送する信号は、例えば、差動信号によって構成されている。一例として、端子11および電気配線2hを伝送する信号は4chの差動信号によって構成されている。電気配線2hの数は、例えば、4ch合計で16本である。電気配線2hは、例えば、GSSG(グランド・シグナル・シグナル・グランド)線路である。しかしながら、電気配線2hは、GSGSG(グランド・シグナル・グランド・シグナル・グランド)線路であってもよい。電気配線2hは、例えば、1層のCu配線として設計された差動マイクロストリップ線路またはコプレーナ線路である。差動マイクロストリップ線路またはコプレーナ線路のインピーダンスは、例えば、インピーダンス整合のために電気配線2hが接続された電気素子7の終端抵抗に合わせることが好ましく、例えば、差動インピーダンスは100Ωである。
【0076】
電気配線2hの間隔(ピッチ)は、例えば、100μmである。電気配線2hの幅は、例えば、80μmである。第2方向D2に沿って互いに隣接する2本の電気配線2hの間の距離は、例えば、20μmである。このように、基板2には複数の電気配線2hが高密度に形成されている。よって、電気素子7と光モジュール1の外部との電気接続を高密度に行うことが可能である。例えば、基板2の比誘電率は、セラミックの比誘電率よりも低い。一例として、基板2の比誘電率は5.5である。この場合、電気配線2hにおいて安定した信号伝送が可能な遮断周波数をセラミックパッケージよりも高くすることが可能となる。よって、光モジュール1では、より高い周波数帯域(例えば100GHz以上)まで使用することが可能である。
【0077】
高速信号を伝送するため、端子11はマイクロバンプであってもよい。例えば、端子11としては、半田で構成されたC4(Controlled collapse chip connection)バンプ、または、先端部に半田が形成された銅(Cu)ピラーを使用することができる。例えば、C4バンプの直径は100μmである。例えば、Cuピラーの直径は40μmであり、高さは50μmである。端子11にC4バンプまたはCuピラーといったマイクロバンプを使用した場合、端子11にBGA用の半田ボールを使用した場合に比べてサイズが小さくなるため、寄生容量や寄生インダクタンスも小さくなり、高周波信号の伝送が可能となる。しかしながら、端子11にマイクロバンプを使用した場合、端子11の高さH8が第1リッド3の高さH2よりも小さくなる。したがって、光モジュール1を別基板に実装する際、第1リッド3が対向する位置に凹部または貫通穴を設けてもよい。
【0078】
次に、本実施形態に係る光モジュール1から得られる作用効果について説明する。光モジュール1は、第1面2b、第2面2cおよびビア2dを有するガラス製の基板2と、光素子5と、電気素子7と、熱伝導部材8と、温調素子6とを備える。電気素子7および光素子5は、基板2の第1面2bに実装される。光モジュール1は、第1面2bに接続され、電気素子7および光素子5を気密封止する第1リッド3を備える。したがって、基板2の第1面2bに実装された電気素子7および光素子5が第1リッド3によって気密封止されるので、電気素子7および光素子5を保護することができる。基板2は、第1面2bと第2面2cとの間を貫通するビア2dを有する。ビア2dを介して、電気素子7および熱伝導部材8を互いに熱的に接続するとともに、光素子5および温調素子6を互いに熱的に接続することができる。
【0079】
光モジュール1では、電気素子7および光素子5は、ガラス製の基板2から見て熱伝導部材8および温調素子6とは反対側に実装される。よって、断熱性が良好なガラス製の基板2によって、温度変化による応力の影響から電気素子7および光素子5を保護することができる。さらに、光モジュール1は、気密封止された電気素子7および光素子5を互いに電気的に接続する電気配線10を備える。電気配線10は、電気素子7と光素子5との間で電気信号を伝送するための伝送線路を構成する。したがって、気密封止された空間における電気配線10を介して電気素子7と光素子5との間において電気信号が伝送されるので、電気素子7と光素子5の間の高速の信号伝送が可能となる。
【0080】
前述したように、ビア2dは、基板2の熱伝導率より大きい熱伝導率を有してもよい。この場合、ビア2dを介して、熱伝導部材8と電気素子7との間の熱伝達、および温調素子6と光素子5との間の熱伝達を一層効率よく行うことができる。
【0081】
前述したように、光モジュール1は、第2面2cに実装され、第2面2cと反対に放熱部材4bを有する第2リッド4をさらに備えてもよい。第2リッド4は、熱伝導部材8および温調素子6を気密封止してもよく、熱伝導部材8および温調素子6は、放熱部材4bに熱的に接続されていてもよい。この場合、第2リッド4によって熱伝導部材8および温調素子6が気密封止されるので、熱伝導部材8および温調素子6を保護することができる。第2リッド4は、放熱部材4bを有する。したがって、第2リッド4の放熱部材4bを介して熱伝導部材8および温調素子6の熱を外部に放熱させることができる。
【0082】
続いて、種々の変形例に係る光モジュールについて説明する。後述する変形例に係る光モジュールの一部の構成は、前述した光モジュール1の一部の構成と同一である。よって、以下の説明では、既出の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。図4は、第1変形例に係る光モジュール21を示す断面図である。前述の実施形態では、光素子5が第1面5bに形成された電極を有し当該電極が基板2のビア2dに熱的に接続されるフェイスダウン実装(フリップチップ実装)について説明した。前述の実施形態では、電気素子7も光素子5と同様フェイスダウン実装(フリップチップ実装)されていた。これに対し、光モジュール21では、第1面5b(回路面)が基板22のビア2dとは反対側を向くように光素子5が基板22に実装されるとともに、第1面7b(回路面)が基板22のビア2dとは反対側を向くように電気素子7が基板22に実装され、光素子5および電気素子7がともにフェイスアップ実装されている。
【0083】
光モジュール21は、第1面2bに凹部22bが形成された基板22を有する。基板22は、凹部22bを有する点で前述した基板2とは異なる。基板22の第1面2bは凹部22bを有し、電気素子7および光素子5は、凹部22bの中に実装されている。これにより、第1面2bに対する電気素子7および光素子5の第3方向D3の突出量を抑えることができる。凹部22bの底面と光素子5の第2面5c(基板面)が互いに対向し、かつ凹部22bの底面と電気素子7の第2面7c(基板面)とが互いに対向している。
【0084】
例えば、光素子5の第2面5c、および電気素子7の第2面7cのそれぞれは凹部22bの底面に接着剤を介して接着固定されている。当該接着剤は、例えば、銀ペーストである。凹部22bに光素子5および電気素子7が実装されることにより、第1面2bに対する第1リッド3の高さを低く抑えることができる。凹部22bは、例えば、切削加工またはエッチングによって第1面2bに形成されている。凹部22bは、第1面2bにおいて第3方向D3に窪んでいる。
【0085】
光モジュール21は、光素子5と電気素子7との間に充填された樹脂層23を備える。樹脂層23は、基板22の凹部22bに充填されている。光モジュール21は、樹脂層23において光素子5から基板22まで延在する樹脂導波路24を有する。樹脂導波路24は樹脂によって構成されている。光素子5は、例えば、樹脂導波路24および基板22を介して光モジュール1の外部と光信号Lの送受信を行う。樹脂導波路24は光信号Lが通るコアとして機能し、樹脂層23は樹脂導波路24の周囲に位置するクラッドとして機能する。樹脂導波路24および樹脂層23は光モジュール1が使用する波長帯域(光信号Lの波長帯域)において透過性を有することが望ましい。例えば、樹脂導波路24および樹脂層23は、光信号Lの波長帯域において80%以上の透過率を有してもよい。
【0086】
図5は、図4の樹脂層23の周辺の構造を拡大した図である。図4および図5に示されるように、光モジュール21は、基板22の第1面2bに形成された電気配線25bを有する。電気配線25bは、例えば、銅(Cu)または金(Au)によって構成されている。電気配線25bが銅(Cu)によって構成されている場合、電気配線25bの表面が金(Au)メッキされていてもよい。電気配線25bと基板22との間には絶縁層が形成されていてもよい。電気配線25bは、絶縁膜(保護膜)に覆われていてもよい。例えば、電気配線25bは、基板22の端面22cから離隔した位置にパッド25cを有する。上記のように電気配線25bが絶縁膜(保護膜)に覆われている場合、パッド25cの部分において当該絶縁膜は除去されており、当該部分において電気配線25bが露出する。
【0087】
光素子5および電気素子7のそれぞれは、基板22の反対側を向く回路面を有する。電気素子7の回路面には、例えば、トランジスタ等のアクティブ素子、電気配線、またはパッドが形成されている。例えば、電気素子7の基板面には、電極等のパッシブ素子が形成されている。光素子5が光変調器である場合、光素子5の回路面には、例えば、光導波路、光スプリッタ、光カプラ、電気配線またはパッドが形成されている。光素子5の回路面には、エピタキシャル層が形成されていてもよいし、アクティブ素子が搭載されていてもよい。光素子5の基板面には、例えば、電極またはレンズ等のパッシブ素子が搭載されていてもよい。
【0088】
樹脂層23は、基板22の凹部22bに充填された樹脂によって構成されている。光素子5および電気素子7は、樹脂層23の当該樹脂に埋め込まれている。当該樹脂は、例えば、液体の状態で凹部22bに配置された光素子5および電気素子7を埋めるように凹部22bに充填される。その後、当該樹脂は、露光され、必要に応じて現像される。これにより、樹脂層23が形成される。
【0089】
樹脂層23は、例えば、凹部22bの底面に接触する第1樹脂層23bと、第1樹脂層23bの当該底面とは反対側に位置する第2樹脂層23cと、第2樹脂層23cから見て第1樹脂層23bとは反対側に位置する第3樹脂層23dとを含む。第1樹脂層23bを構成する樹脂は、例えば、感光性ポリマーである。第1樹脂層23bは、凹部22bを埋めるために形成される。第1樹脂層23bは、凹部22bにおいて光素子5および電気素子7を埋め込んでいる。第1樹脂層23bの厚さ(第3方向D3の長さ)は、例えば、凹部22bの深さ(第3方向D3の長さ)と略同一である。この場合、第1樹脂層23bの表面(凹部22bの底面とは反対側の面)は第1面2bと面一になる。しかしながら、第1樹脂層23bの厚さは、凹部22bの深さより厚くてもよいし薄くてもよい。
【0090】
第2樹脂層23cは、複数の電気配線26が形成される層である。電気配線26は、例えば、樹脂層23上に形成された金属膜である。電気配線26は、例えば、銅(Cu)によって構成されている。電気配線26は、例えば、セミアディティブ法等のメッキプロセスによって形成されている。この場合、電気配線26は、再配線層(RDL:Redistribution Layer)とも称される。第2樹脂層23cは、電気配線26を形成するための下地として機能する。第2樹脂層23cは、電気配線25bのパッド25c、電気素子7の電極、および光素子5の電極を覆っている。複数の電気配線26は、電気配線25bのパッド25cと電気素子7の電極とを互いに電気的に接続する電気配線27と、電気素子7の電極と光素子5の電極とを互いに電気的に接続する電気配線28とを含む。電気素子7は、例えば、外部から端子11に入力された電気信号Sを電気配線27を介して受信し、電気信号Sに応じて生成した駆動信号を電気配線28を介して光素子5に出力する。第1方向D1において、電気素子7は、端子11と光素子5との間に配置されている。あるいは、電気素子7は、例えば、光信号Lに応じて生成された受信信号を光素子5から電気配線28を介して受信し、当該受信信号に応じて生成した電気信号Sを電気配線27を介して端子11に出力する。第1方向D1において、電気素子7は、端子11と光素子5との間に配置されている。
【0091】
第2樹脂層23cを構成する樹脂は、例えば、感光性ポリマーである。当該樹脂は、液体の状態で第1樹脂層23bに塗布されるか、または、フィルムの状態で第1樹脂層23bにラミネートされる。その後、当該樹脂が露光および現像されることによって第2樹脂層23cが形成される。なお、第2樹脂層23cは、省略されてもよい。この場合、第1樹脂層23bが、第2樹脂層23cと一体化されて電気配線25bのパッド25c、電気素子7の電極、および光素子5の電極を覆ってもよい。そして、第1樹脂層23b上に電気配線26が形成されてもよい。
【0092】
例えば、光モジュール21は、光素子5の電極、および電気素子7の電極にアクセスするためのビア25dと、電気配線25bにアクセスするためのビア25fとを有する。ビア25dおよびビア25fのそれぞれは、例えば、レーザ光の照射によって形成されたビアホールと、当該ビアホールの中に形成された電気配線とによって構成されている。ビア25dの電気配線は、電気配線26とは別に形成されてもよいし、電気配線26とともに(一括して)形成されてもよい。ビア25dは、その内部に導電性材料が充填されたフィルドビアであってもよいし、その内部に導電性材料が充填されないコンフォーマルビアであってもよい。ビア25fについても同様である。
【0093】
第2樹脂層23c(第2樹脂層23cの第1樹脂層23bとは反対の面)には、電気配線27および電気配線28が形成されている。電気配線28の第1方向D1の両端部のそれぞれは、ビア25dを介して光素子5および電気素子7のそれぞれに電気的に接続される。したがって、光素子5および電気素子7は、電気配線28およびビア25dを介して互いに電気的に接続される。例えば、電気配線28は、前述した電気配線10と同様、高速信号(高周波信号)を伝送するための信号配線を含む。例えば、電気配線28は、信号配線としての伝送線路を構成する。光素子5が変調素子の場合、電気配線28の特性インピーダンスは、インピーダンス整合のために光素子5に形成された高周波配線(伝送線路)、および終端抵抗の抵抗値と略等しいことが好ましい。「略等しい」とは、実用上許容できる範囲内で相互の値が異なっていてもよいことを示している。例えば、電気配線27は、前述した電気配線2hと同様、高速信号(高周波信号)を伝送するための信号配線を含む。例えば、電気配線27は、信号配線としての伝送線路を構成する。電気配線27の特性インピーダンスは、インピーダンス整合のために電気配線27に接続された電気素子7に形成された終端抵抗の抵抗値と略等しいことが好ましい。電気配線27の特性インピーダンスは、電気配線28の特性インピーダンスと異なってもよい。
【0094】
第3樹脂層23dは、電気配線26を覆って電気配線26を保護している。したがって、電気配線26は、第2樹脂層23cと第3樹脂層23dとの間に形成されている。第3樹脂層23dを構成する樹脂は、例えば、感光性ポリマーである。当該樹脂は、液体の状態で第2樹脂層23cに塗布されるか、または、フィルムの状態で第2樹脂層23cにラミネートされてもよい。その後、当該樹脂が露光及び現像されることによって第3樹脂層23dが形成される。なお、第3樹脂層23dは省略されてもよい。
【0095】
樹脂導波路24は、第1樹脂層23bに埋め込まれている。第1樹脂層23bは、光素子5に入出力する光信号Lの光導波路におけるクラッドとして機能し、コア層として機能する樹脂導波路24の内部に光信号Lを閉じ込める。樹脂導波路24および第1樹脂層23bの屈折率は、光信号の波長帯域において例えば1.3~1.7の範囲にある。第1樹脂層23bは、樹脂導波路24の屈折率よりも小さい屈折率を有する。例えば、第1樹脂層23bを構成する樹脂の線膨張係数は、樹脂導波路24を構成する樹脂の線膨張係数より小さい。この場合、第1樹脂層23bの熱膨張または熱収縮が、樹脂導波路24による光素子5と基板22との光結合に与える影響(例えば光結合効率の低下)を低減できる。
【0096】
第2樹脂層23cは、樹脂導波路24から離隔している。すなわち、第2樹脂層23cの第1方向D1の位置は、樹脂導波路24の第1方向D1の位置とは異なっている。この場合、第2樹脂層23cの熱膨張または熱収縮が樹脂導波路24による光素子5と基板22との光結合に与える影響を低減できる。樹脂導波路24と光素子5の光結合は、各光導波路の端面同士が対向した状態で行われてもよいし、光導波路同士を光信号Lの進行方向に沿って互いに所定距離だけ重ね合わせたエバネッセント結合によって行われてもよい。
【0097】
図6は、第2変形例に係る光モジュール31を示す断面図である。光モジュール31は、第1面2bに凹部32bが形成された基板32を有する。基板32は、凹部32bが第1凹部32cおよび第2凹部32dを含む点が基板22とは異なる。凹部32bは、互いに独立な第1凹部32cと第2凹部32dとを含む。第1凹部32cは、第1方向D1において端子11と第2凹部32dとの間に位置している。電気素子7は、第1凹部32cの中に実装され、光素子5は、第2凹部32dの中に実装されている。
【0098】
光モジュール31は、凹部32bに充填される樹脂によって構成される樹脂層33を有する。樹脂層33は、第1凹部32cに形成された第1樹脂層33b、第2樹脂層33cおよび第3樹脂層33dと、第2凹部32dに形成された第4樹脂層33fとを含む。例えば、第2樹脂層33cおよび第3樹脂層33dのそれぞれは、前述した第2樹脂層23cおよび第3樹脂層23dのそれぞれと同一である。
【0099】
第1樹脂層33bは、第1凹部32cを埋めるために形成される。前述した第1樹脂層23bは、樹脂導波路24におけるクラッドとして機能するため、光モジュール1が使用する波長帯域(光信号Lの波長帯域)において透過性を有し、樹脂導波路24の屈折率より小さい屈折率を有する。これに対し、第1樹脂層33bは、樹脂導波路24と分離されているので樹脂導波路24の屈折率より小さい屈折率を有していなくてもよいし、透過性を有していなくてもよい。例えば、第1樹脂層33bの透過率は、光信号Lの波長において80%未満であってもよい。例えば、第1樹脂層33bの材料は、第1樹脂層23bの材料とは異なっており屈折率等の制約を有しない。一方、第4樹脂層33fの材料は、第1樹脂層23bと同様に屈折率等の制約を有する。第4樹脂層33fは、光素子5に入出力する光信号Lの光導波路におけるクラッドとして機能する。したがって、第4樹脂層33fの材料は、前述した第1樹脂層23bの材料と同一であってもよい。
【0100】
以上、光モジュール31では、電気素子7が収納される第1凹部32c、および光素子5が収納される第2凹部32dが互いに別々に形成されている。したがって、樹脂層33の体積を減らすことができる。光素子5が収納される第2凹部32dに形成された第4樹脂層33fの体積を低減できるので、熱膨張または熱収縮が樹脂導波路24による光素子5と基板32との光結合に与える影響をさらに低減できる。また、光素子5と電気素子7との間に埋め込まれる樹脂の量を削減することができる。これにより、温度変化に伴う応力の発生やそれに伴う変形量を低減し、電気配線28の信頼性を向上することができる。
【0101】
図7は、第3変形例に係る光モジュール41を示す断面図である。光モジュール41は、第1面2bに凹部22bが形成された基板22と、凹部22bに形成される樹脂層33を分離する分離部42とを有する。例えば、分離部42は、樹脂によって構成された樹脂止めである。分離部42の材料は、一例として、エポキシ樹脂である。例えば、分離部42は、光素子5の基板2と反対側に形成されている。分離部42は、凹部22bの電気素子7が配置される領域から樹脂導波路24が配置される領域を分離する。
【0102】
図8は、分離部42を第3方向D3に沿って見た(基板2を平面視した)図である。図9は、図8のB-B線断面図である。図7図8および図9に示されるように、分離部42は、基板22の第1面2bに接触するとともに第2方向D2に沿って並ぶ一対の第1部分42bと、光素子5の第1面5bに接触するとともに一対の第1部分42bを互いに接続する第2部分42cと、光素子5の第2方向D2の両側のそれぞれに位置する一対の第3部分42dとを有する。凹部22bは、分離部42によって、電気素子7が配置される第1領域22dと、樹脂導波路24が配置される第2領域22fとに分離されている。第1領域22dには第1樹脂層33b、第2樹脂層33cおよび第3樹脂層33dが形成されており、第2領域22fには第4樹脂層33fが形成されている。分離部42は、例えば、樹脂が凹部22bに配置された光素子5に塗布され、当該樹脂が加熱硬化されることによって形成される。分離部42によって、第1樹脂層33b、第2樹脂層33cおよび第3樹脂層33dの形成と、第4樹脂層33fの形成とを互いに独立して行うことができる。
【0103】
以上、光モジュール41では、基板22が1つの凹部22bを有し、凹部22bが分離部42によって分離されている。分離部42は光素子5に形成されており、分離部42の電気素子7とは反対側に位置する第2領域22fに第4樹脂層33fが形成されている。したがって、第4樹脂層33fの体積をより低減できるので、熱膨張または熱収縮が樹脂導波路24による光素子5と基板22との光結合に与える影響をより確実に低減できる。さらに、分離部42が光素子5に固定されていることにより、第1樹脂層33bからの樹脂導波路24への応力の影響を低減できる。
【0104】
図10は、第4変形例に係る光モジュール51を示す断面図である。光モジュール51は、分離部42とは異なる態様の分離部52と、樹脂層33に形成された複数の電気配線56とを有する。電気配線56は、例えば、銀(Ag)によって構成されている。電気配線56は、インクジェット法によって形成されている。より具体的には、基板2および樹脂層33(第1樹脂層33b)に塗布されたナノ銀粒子の層が焼結されて電気配線56が形成されている。
【0105】
電気配線56は、第2樹脂層33cによって保護されている。しかしながら、この第2樹脂層33cは省略することも可能である。電気配線56は、信号配線として特性インピーダンスが設定された伝送線路を含んでいてもよい。複数の電気配線56は、第1面2bに形成された電気配線25bと電気素子7の電極とを互いに電気的に接続する電気配線57と、電気素子7の電極と光素子5の電極とを互いに電気的に接続する電気配線58とを含む。電気配線25bと、電気配線57と、電気配線58とは、第3方向D3において互いに段差のない状態で形成することができる。
【0106】
図11は、分離部52を第3方向D3に沿って見た図である。図10および図11に示されるように、第3方向D3に沿って見たときに分離部52は矩形枠状を呈する。分離部52は、所定の線幅を有する閉曲線として形成されていてもよい。分離部52は、凹部22bを跨ぐとともに第2方向D2に沿って延在する第1延在部52bと、第1面2bにおいて第2方向D2に沿って延在する第2延在部52cと、第1延在部52bの第2方向D2の端部から第2延在部52cの第2方向D2の端部まで延在する第3延在部52dおよび第4延在部52fとを有する。
【0107】
凹部22bは、第1延在部52bによって、電気素子7が配置される第1領域22dと、樹脂導波路24が配置される第2領域22fとに分離されている。第1領域22dには第1樹脂層33bおよび第2樹脂層33cが形成されており、第2領域22fには第4樹脂層33fが形成されている。第3方向D3に沿って見たときに分離部52で囲まれた内側の領域に第4樹脂層33fが形成されている。第2延在部52c、第3延在部52dおよび第4延在部52fは、基板22の第1面2bに形成されており、第2領域22fからの第4樹脂層33fの樹脂の漏れ止めとして機能する。第3方向D3に沿って見たときにおける分離部52の線幅および長さは、基板22および光素子5に対する分離部52の密着性を考慮して定められる。
【0108】
図12は、第5変形例に係る光モジュール61を示す断面図である。光モジュール61は、光モジュール61の外部と電気素子7とを互いに電気的に接続する配線チップ62と、光素子5と電気素子7とを互いに電気的に接続する配線チップ63とを有する。配線チップ62は、絶縁性を有する基板と、当該基板上に形成され、基板22の第1面2bに対向する電気配線62bと、を有する。基板は、例えば、ガラスあるいはシリコンによって構成されている。電気配線62bは導電性材料によって構成されている。
【0109】
配線チップ62の電気配線62bが形成された面は配線チップ62の回路面であり、当該回路面の反対の面は基板面である。配線チップ62は、バンプ64を介して第1面2bに形成された電気配線2hにフリップチップ搭載されるとともに、バンプ65を介して電気素子7の電極にフリップチップ搭載される。すなわち、配線チップ62の回路面が基板2の第1面2bと電気素子7の回路面に接続される。配線チップ62に形成された電気配線62bを介して電気配線2hが電気素子7に電気的に接続される。
【0110】
配線チップ63は、光素子5の第1面5b、および電気素子7の第1面7bに対向する電気配線63bを有する。電気配線63bは導電性材料によって構成されている。配線チップ63は、バンプ65を介して、光素子5の電極、および電気素子7の電極のそれぞれにフリップチップ搭載される。すなわち、配線チップ63の回路面が、光素子5の回路面、および電気素子7の回路面のそれぞれに接続される。電気配線63bを介して電気素子7は光素子5に電気的に接続されている。
【0111】
電気配線62bおよび電気配線63bのそれぞれは、例えば、銅(Cu)によって構成されている。一例として、電気配線62bおよび電気配線63bの銅(Cu)はメッキプロセスによって形成されてもよい。配線チップ62および配線チップ63の表面に絶縁層が形成されていてもよい。この場合、光素子5および電気素子7のそれぞれの回路層との絶縁、および表面保護が可能となる。当該絶縁層は、例えば、ポリマーによって構成されている。電気配線62bと配線チップ62の基板層との間に絶縁層が形成されていてもよい。当該絶縁層は、例えば、SiO膜である。この場合、配線チップ62の基板層と電気配線62bとの絶縁が可能となる。同様に、電気配線63bと配線チップ63の基板層との間に絶縁層が形成されていてもよい。
【0112】
電気配線62bおよび電気配線63bのそれぞれは、信号配線として特性インピーダンスが設定された伝送線路を含んでいてもよい。バンプ65は、例えば、半田バンプ、Auスタッドバンプ、またはCuピラー上に半田キャップが載せられたマイクロバンプであってもよい。この場合、パッドを小さくして電気配線に必要な面積を小さくでき、配線間の間隔を小さくして高密度に複数の電気配線62b、および複数の電気配線63bを形成できる。
【0113】
配線チップ62および配線チップ63のそれぞれは、例えば、超音波法または熱圧着法によって光素子5の電極、および電気素子7の電極のそれぞれに強固に接続されている。例えば、バンプ64およびバンプ65のそれぞれはアンダーフィル樹脂66に覆われている。これにより、バンプ64およびバンプ65は保護されているとともに、配線チップ62および配線チップ63との接合強度が補強されている。アンダーフィル樹脂66は省略されてもよい。電気配線62bによって伝送される電気信号の速度が比較的遅い場合には、配線チップ62に代えてボンディングワイヤが配置されてもよい。電気配線63bについても同様である。
【0114】
図13は、第6変形例に係る光モジュール71を示す断面図である。光モジュール71は、凹部22bとは異なる態様の凹部72bを有する基板72を備える。基板72の第1面2bは、凹部72bを有し、光素子5は凹部72bの中に実装され、電気素子7は凹部72bの外に実装されている。電気素子7は、その回路層が基板2を向くように実装されている(フリップチップ実装)。光素子5は、凹部72bにおいてフェイスアップ実装されている。
【0115】
光モジュール71は、光素子5および電気素子7を互いに電気的に接続する配線チップ73を有する。配線チップ73は、前述した配線チップ63等と同様、基板上に形成された電気配線73bを有する。電気素子7の電極には複数のバンプ9が形成されている。複数のバンプ9のうちのいずれかは電気配線2hに接続される。また、複数のバンプ9のうちのいずれかは配線チップ73を介して光素子5の電極に接続される。光素子5の電極は、バンプ65、および配線チップ73に形成された電気配線73bを介して電気素子7の電極と電気的に接続される。なお、光モジュール71は、配線チップ73に代えて、寄生インダクタンスの影響を低減するよう比較的短い(例えば100μm以下)ボンディングワイヤを有していてもよい。
【0116】
図14は、第7変形例に係る光モジュール81を示す断面図である。光モジュール81において基板72の第1面2bは凹部72bを有し、光モジュール81は凹部72bに充填された樹脂層33(第1樹脂層33bおよび第4樹脂層33f)を備える。光モジュール81は、光素子5および電気素子7を互いに電気的に接続する電気配線84と、電気配線84を被覆する樹脂層83とを有する。電気配線84は、基板72の第1面2bに形成された第1部分84cと、第1部分84cの端から樹脂層33(第1樹脂層33b)上を通って光素子5の電極に至るまで形成された第2部分84bとを有する。第1部分84c(第1配線)は、例えば、銅(Cu)または金(Au)配線である。第1部分84c(第1配線)は、例えば、基板72の第1面2bのサーマルパッドと同様に形成されてもよい。第2部分84b(第2配線)は、例えば、インクジェット配線またはメッキ配線(RDL)である。当該第1配線と当該第2配線とが互いに直列に接続されている。当該接続箇所において、第2配線が第1配線に重なるように形成されていてもよい。電気配線84は、第1部分84cと第2部分84bが同時に(一括で)形成された電気配線であってもよい。
【0117】
図15は、第8変形例に係る光モジュール91を示す断面図である。光モジュール91は、光素子5および電気素子7に加えて、第2電気素子92を有する。第2電気素子92は、例えば、基板22の第2面2cにフリップチップ実装されている。第2電気素子92は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)である。この場合、第2電気素子92は、例えば、パラレル信号とシリアル信号の相互変換を行うSERDES機能、エラー訂正機能、イコライザ機能、およびアナログデジタル変換機能を有する。
【0118】
第2電気素子92は、基板22に対向する第1面92bと、第1面92bの反対を向く第2面92cとを有する。光モジュール91は、第2電気素子92を基板22に電気的に接続する電極93を有する。例えば、電極93は前述したマイクロバンプである。第2電気素子92は、電極93を介してパラレル信号(一例として100chの8GBd変調信号)を基板22の外部と送受信する。
【0119】
光モジュール91は、外部接続用の端子96と、端子96が固定された第1基板部98と、第1基板部98および基板22の間に介在する第2基板部97とを有する。光モジュール91は、第1基板部98および第2基板部97を有する多層基板を構成している。例えば、第1基板部98および第2基板部97は、それぞれ第3方向D3に延在するビアを有する絶縁層で構成されており、第1基板部98と第2基板部97との間に電気配線を形成することができる。なお、光モジュール91の基板部の数は適宜変更可能である。すなわち、光モジュール91は、第1基板部98および第2基板部97のいずれかを有しなくてもよいし、第1基板部98および第2基板部97の他にさらに別の基板部を有していてもよい。
【0120】
第1基板部98および第2基板部97は、例えば、ガラス基板である。光モジュール91は、基板22を第3方向D3に沿って貫通する複数の電気配線95dと、電気配線95dの第2電気素子92とは反対側の端部において第1方向D1に沿って延びる電気配線95eと、第2基板部97を第3方向D3に沿って貫通する複数の電気配線95fと、電気配線95fの基板22とは反対側の端部において第1方向D1に沿って延びる電気配線95gとを有する。電気配線95gは、第1基板部98と第2基板部97との間に形成されている。さらに、光モジュール91は、電気配線95gから第1基板部98を第3方向D3に貫通する電気配線95hと、電気配線95hの第2基板部97とは反対側の端部において第1方向D1に沿って延びる電気配線95jとを有する。
【0121】
第1基板部98および第2基板部97がガラス基板である場合には、上記のように高密度な配線が可能となる。第2電気素子92は、電極93、電気配線95d、電気配線95f、電気配線95g、電気配線95hおよび電気配線95jを介して端子96に電気的に接続されている。端子96は、球状を呈する半田ボールである。第2電気素子92は、電極93から第2リッド4の内部(第2気密空間K2)にまで第2面2cに沿って延びる電気配線95fと、電気配線95fから基板22を貫通する電気配線95cと、電気配線95cから電気配線26まで延びる電気配線25bとを介して電気素子7に電気的に接続する。電気配線25bは、第1気密空間K1に形成されている。電気配線95fおよび電気配線25bのそれぞれは、例えば、Cu(銅)またはAu(金)によって構成されている。電気配線95cは、例えば、TGVによって構成されている。電気配線95f、電気配線95cおよび電気配線25bは、均一な特性インピーダンスを有することが好ましい。具体的には、均一な特性インピーダンスは、インピーダンス整合のため電気配線95cに接続された電気素子7の終端抵抗、および、電気配線95fに接続された第2電気素子92の終端抵抗に略等しいことが好ましい。
【0122】
第2電気素子92は、例えば、電気配線95a、電気配線95cおよび電気配線25bを介してシリアル信号(一例として4chの200GBd変調信号)を電気素子7と送受信する。例えば、第2電気素子92は、基板22からの外部から受信したパラレル信号をシリアル信号に変換して電気素子7に送信する。また、第2電気素子92は、電気素子7から受信したシリアル信号をパラレル信号に変換して基板22の外部に送信する。第2電気素子92が光モジュール91の外部との信号の送受信をシリアル信号よりも遅いパラレル信号で行うことにより、第2電気素子92と端子96との間の電気配線を伝達する信号の速度を低く抑えることができる。その結果、半田ボールである端子96等によるインピーダンス不整合の影響を低減できるので、光モジュール91の性能向上が容易となる。これにより、端子96にはマイクロバンプではなく、BGA用の半田ボールを使用することが可能となる。
【0123】
図16は、第9変形例に係る光モジュール101を示す断面図である。光モジュール101は、第1リッド3の内部(第1気密空間K1)から第2電気素子92まで延びる配線の態様が光モジュール91とは異なっている。光モジュール101は、第2リッド4の外部において電気配線95aから基板22を第3方向D3に貫通する電気配線105cと、電気配線105cの電気配線95aとは反対の端部から第1気密空間K1まで延びる電気配線105bとを有する。電気配線95aおよび電気配線105cは第1リッド3および第2リッド4の外に形成されており、電気配線105bは第1気密空間K1から第1気密空間K1の外部まで延びている。
【0124】
図17は、第10変形例に係る光モジュール111を示す断面図である。光モジュール111は第1リッド113を有する。第3方向D3に沿って見たときにおける第1リッド113の面積は、第3方向D3に沿って見たときにおける第2リッド4の面積よりも広い。第1リッド113の第1方向D1の端部は、第2リッド4の第1方向D1の端部よりも第2電気素子92に向かって張り出している。すなわち、第3方向D3に沿って見たときに、第1リッド113の側壁部は、第2リッド4の側壁部4cと第2電気素子92との間に位置する。光モジュール111は、第1リッド113の内部(第1気密空間K1)に位置する電気配線115bと、電気配線115bから基板22を第3方向D3に貫通する電気配線115cとを有する。
【0125】
図18は、第11変形例に係る光モジュール121を示す断面図である。光モジュール121は基板122を有する。基板122の第1面2bは凹部122bを有し、電気素子7は凹部122bの中に実装され、光素子5は凹部122bの外に実装されている。光素子5は、その回路層が基板122を向くように実装されている(フリップチップ実装)。電気素子7は、基板122においてフェイスアップ実装されている。
【0126】
光モジュール121は、凹部122bに充填された樹脂層123をさらに備える。樹脂層123は、第1樹脂層33bと同様の第1樹脂層123bと、第2樹脂層33cと同様の第2樹脂層123cとを有する。光モジュール121は、光素子5および電気素子7を互いに接続する電気配線124、および、基板122の電気配線2hと電気素子7を互いに接続する電気配線125を有する。電気配線124は、基板122の第1面2bに形成された第1部分124cと、第1部分124cの端から樹脂層123(第1樹脂層123b)上を通って電気素子7の電極に至るまで形成された第2部分124bとを有する。第1部分124c(第1配線)は、例えば、銅(Cu)または金(Au)配線である。第1部分124cは、基板122の第1面2bのサーマルパッドと同様に形成されてもよい。第2部分124b(第2配線)は、例えば、インクジェット配線またはメッキ配線(RDL)である。当該第1配線と当該第2配線とが互いに直列に接続されている。基板122の平面視において第2配線124bが第1配線124cに重なるように当該接続箇所が形成されていてもよい。電気配線124は、第1部分124cと第2部分124bが同時に(一括で)形成された電気配線であってもよい。電気配線125は、例えば、電気配線2hの端から樹脂層123(第1樹脂層123b)上を通って電気素子7の電極に至るまで形成されたインクジェット配線またはメッキ配線(RDL)である。電気配線2hと電気配線125とが互いに直列に接続されている。当該接続箇所において、電気配線125が電気配線2hに重なるように形成されていてもよい。
【0127】
図19は、第12変形例に係る光モジュール131を示す断面図である。光モジュール131は基板132を有し、基板132の第1面2bには凹部132bが形成されている。光モジュール131において、光素子5および電気素子7は、ともにフリップチップ実装されている。光素子5の第1面5bはバンプ133を介して基板2に接続されており、電気素子7の第1面7bはバンプ134を介して基板2に接続されている。
【0128】
光モジュール131は、光素子5および電気素子7を互いに電気的に接続する電気配線136を有する。電気配線136の構成は、例えば、前述した電気配線10の構成と同一である。光モジュール131は、凹部132bにおいてバンプ134から第1リッド3の外部にまで延在する電気配線135を有する。電気配線135は、凹部132bの底面から凹部132bの外方に延在している。電気配線135における第1リッド3の外部に位置する部分には端子11が接続されている。例えば、凹部132bの内面のうち電気配線135が形成されている部分は第3方向D3に対して傾斜している。この場合、反射等による高周波信号の損失を低減できる。
【0129】
図20は、第13変形例に係る光モジュール141を示す断面図である。なお、図20では、第2電気素子92の周辺の構造の図示を簡略化している。光モジュール141は、凹部142bが形成された基板142を有する。光モジュール141は、電気素子7に電気的に接続されるとともに凹部142bの底面に沿って延在する電気配線143bと、電気配線143bから基板142を第3方向D3に貫通するTGVである電気配線143cと、電気配線143cから第2リッド4の外部に延在する電気配線143dとを有する。電気配線143dは、第2気密空間K2から、第2電気素子92に電気的に接続された電極93まで延在している。凹部142bの底面に沿って延びる電気配線143bから電気配線143cが延在することにより、電気配線143cの長さを基板142の厚さ(第3方向D3の長さ)よりも短くできる。その結果、高周波特性がさらに改善される。
【0130】
以上、本開示に係る実施形態および種々の変形例について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態または種々の変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。また、本開示に係る光モジュールは、前述の実施形態、および第1変形例から第13変形例のうちの複数の例が組み合われたものであってもよい。例えば、本開示に係る光モジュールの各部の構成、形状、大きさ、材料、数および配置態様は、前述した実施形態または変形例に限られず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0131】
1…光モジュール
2…基板
2b…第1面
2c…第2面
2d…ビア
2d1…第1ビア
2d2…第2ビア
2f…電極
2g…電極
2h…電気配線
3…第1リッド
3b…凹部
3c…接続面
3d…底部
3f…側壁部
4…第2リッド
4b…放熱部材
4c…側壁部
5…光素子
5b…第1面(回路面)
5c…第2面(基板面)
6…温調素子
6b…ペルチェ素子
6c…第1基板
6d…第2基板
7…電気素子
7b…第1面(回路面)
7c…第2面(基板面)
8…熱伝導部材
8b…第1面
8c…第2面
9…バンプ
10…電気配線
11…端子
21…光モジュール
22…基板
22b…凹部
22c…端面
22d…第1領域
22f…第2領域
23…樹脂層
23b…第1樹脂層
23c…第2樹脂層
23d…第3樹脂層
24…樹脂導波路
25b…電気配線
25c…パッド
25d,25f…ビア
26,27,28…電気配線
31…光モジュール
32…基板
32b…凹部
32c…第1凹部
32d…第2凹部
33…樹脂層
33b…第1樹脂層
33c…第2樹脂層
33d…第3樹脂層
33f…第4樹脂層
41…光モジュール
42…分離部
42b…第1部分
42c…第2部分
42d…第3部分
51…光モジュール
52…分離部
52b…第1延在部
52c…第2延在部
52d…第3延在部
52f…第4延在部
56,57,58…電気配線
61…光モジュール
62…配線チップ
62b…電気配線
63…配線チップ
63b…電気配線
64,65…バンプ
66…アンダーフィル樹脂
71…光モジュール
72…基板
72b…凹部
73…配線チップ
73b…電気配線
81…光モジュール
83…樹脂層
84…電気配線
84b…第2部分
84c…第1部分
91…光モジュール
92…第2電気素子
92b…第1面
92c…第2面
93…電極
95a,95c,95d,95e,95f,95g,95h,95j…電気配線
96…端子
97…第2基板部
98…第1基板部
101…光モジュール
105b,105c…電気配線
111…光モジュール
113…第1リッド
115b,115c…電気配線
121…光モジュール
122…基板
122b…凹部
123…樹脂層
123b…第1樹脂層
123c…第2樹脂層
124…電気配線
124b…第2部分
124c…第1部分
125…電気配線
131…光モジュール
132…基板
132b…凹部
133,134…バンプ
135,136…電気配線
141…光モジュール
142…基板
142b…凹部
143b,143c,143d…電気配線
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
K1…第1気密空間
K2…第2気密空間
L…光信号
S…電気信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20