(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095188
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240703BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q11/00
A61K8/49
A61K8/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212289
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 駿太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC811
4C083AC812
4C083AC862
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE06
4C083EE09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】嗜好性を損なうことなく、心地よい引き締め感を発揮でき、かつその持続性が強化された口腔用組成物を提供する。
【解決手段】段】本発明は、成分(A):クロロブタノール、並びに、成分(B):式(1):
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、R
3は、有機基である)で表される化合物を含有する、口腔用組成物を提供する。(A)/(B)の質量比は、0.05~150000が好ましく、成分(B)は、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド等が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):クロロブタノール、並びに、
成分(B):式(1):
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、R
3は、有機基である。)
で表される化合物
を含有する、口腔用組成物。
【請求項2】
R
3は、式(2)又は(3):
【化2】
(式中、R
4は、アルキレン基、ヒドロキシアルキレン基又は直接結合であり、R
5は、アルコキシ基、シアノアルキル基又は水素原子であり、R
6は、-CH=で表される基または窒素原子である。また、R
7は、アルキレン基又は直接結合であり、R
8は、アルキル基であり、nは、0又は1である。)
で表される基である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(B)が、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート、(1R,2S,5R)-N-(4-メントキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド、及び(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミドからなる群より選ばれる1種類以上を含む、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(B)に対する成分(A)の質量比((A)/(B))が0.05~150000である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
成分(A)の含有量が0.001~1質量%である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
成分(B)の含有量が0.000005~0.1質量%である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
歯磨剤、洗口剤、又はスプレー剤である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オーラルケア製品は、使用性や効果による満足感を与え、製品を使い続けることで口腔衛生に寄与している。特に、歯周病や歯槽膿漏予防などの口腔用製品では効果や効能が重視されており、製品使用時の効果実感を与える製剤設計は重要である。
【0003】
口腔用組成物に塩化ナトリウムを配合し、歯周病予防に対する歯茎の引き締め効果やサッパリ感を与えることが行われており、特許文献1には、口腔用組成物において塩化ナトリウムや重曹を併用する技術が示されている。また、特許文献2では、口腔組成物に塩化ナトリウム、メントール、冷感剤、スピラントール等を併用することで、清涼感および薬効感(引き締め感および辛味刺激)を向上させる技術が示されている。また、特許文献3には、口腔用組成物において、銅を含有する化合物、及びメンチルグルタレートを併用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-212041号公報
【特許文献2】特開2010-37318号公報
【特許文献3】国際公開第2019/230710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2のように塩化ナトリウムを用いると、塩化ナトリウム由来の刺激や塩辛い後味が強く出る場合があった。また、特許文献3のような発明では、収斂感が無くなるという問題がある。更なる効果実感の向上のために、辛味刺激を強めることが考えられるが、嗜好性を損ねる可能性があり、より効果感を実感したい消費者ニーズに応えることは難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、嗜好性を損なうことなく、心地よい引き締め感を発揮でき、かつその持続性が強化された口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕成分(A):クロロブタノール、並びに、
成分(B):式(1):
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、R
3は、有機基である。)
で表される化合物
を含有する、口腔用組成物。
〔2〕R
3は、式(2)又は(3):
【化2】
(式中、R
4は、アルキレン基、ヒドロキシアルキレン基又は直接結合であり、R
5は、アルコキシ基、シアノアルキル基又は水素原子であり、R
6は、-CH=で表される基または窒素原子である。また、R
7は、アルキレン基又は直接結合であり、R
8は、アルキル基であり、nは、0又は1である。)
で表される基である、〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕成分(B)が、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート、(1R,2S,5R)-N-(4-メントキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド、及び(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミドからなる群より選ばれる1種類以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の口腔用組成物。
〔4〕成分(B)に対する成分(A)の質量比((A)/(B))が0.05~150000である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
〔5〕成分(A)の含有量が0.001~1質量%である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
〔6〕成分(B)の含有量が0.000005~0.1質量%である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
〔7〕歯磨剤、洗口剤、又はスプレー剤である〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、刺激感が抑制され、引き締め感を発揮でき、かつ、その持続性も良好な口腔用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含有する。
【0010】
[成分(A)]
成分(A)は、クロロブタノール(1,1,1-トリクロロ-2-メチル-2-プロパノール)である。成分(A)を含有することにより、口腔用組成物に収斂感を付与できる。本明細書において「収斂感」とは、歯茎がきゅっとひきしまる感覚を意味し、刺激(単なる痛み)とは区別される。
【0011】
クロロブタノールは、第十八改正日本薬局方又は医薬部外品原料規格に適合したものを使用できる。クロロブタノールとしては、例えば、メルク株式会社製1,1,1-トリクロロ-2-メチル-2-プロパノール等の市販品を使用してもよい。
【0012】
成分(A)の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対して、通常、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。これにより、使用中の心地よい引き締め感を発揮できる。上限は、通常、1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。これにより、後述する成分(B)と組み合わせたときに成分(A)による刺激を軽減できる。従って、成分(A)の含有量は、通常、0.001~1質量%、好ましくは0.01~1質量%、又は0.01~0.5質量%、より好ましくは0.05~0.2質量%である。
【0013】
[成分(B)]
成分(B)は、式(1)で表される、置換基を有するイソプロピルシクロヘキシルカルボキサミド基を有する化合物である。
【化3】
【0014】
式(1)中、R1及びR2は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、好ましくは、R1及びR2の両方がメチル基、又は、一方がメチル基かつ他方が水素原子である。
【0015】
式(1)中、R3は、有機基である。有機基としては、例えば、炭素原子を少なくとも含み、必要に応じてさらに、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子)等の、炭素原子以外の原子を含む1価の基が挙げられ、炭素原子を含む基、又は炭素原子と、酸素原子または窒素原子とを含む基が好ましく、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基がより好ましい。R3が有してもよい置換基としては、例えば、アルコキシ基、シアノアルキル基、複素環基、アリール基が挙げられる。
【0016】
R
3の好ましい例としては、式(2)又は(3)で表される基が挙げられる。
【化4】
【0017】
式(2)中、R4は、アルキレン基、ヒドロキシアルキレン基又は直接結合である。R4としてのアルキレン基及びヒドロキシアルキレン基を構成する炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~7、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3である。また、アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖又は分岐が好ましい。R4としてのヒドロキシアルキレン基は、ヒドロキシ基を少なくとも1つ有していればよいが、1つであることが好ましい。R4は、好ましくは-CH2-CH(OH)-基(ヒドロキシエチレン基)、-CH2CH2-(エチレン基)である。
【0018】
式(2)中、R5は、アルコキシ基、シアノアルキル基又は水素原子である。アルコキシ基、シアノアルキル基の炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~7、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3、1~2又は1である。アルコキシ基、シアノアルキル基のアルキル部分は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖が好ましい。アルコキシ基は、メトキシ基が好ましい。シアノアルキル基は、シアノメチル基が好ましい。R4がアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基のとき、R5は水素原子が好ましい。R4が直接結合のとき、R5はアルコキシ基又はシアノアルキル基が好ましい。
【0019】
式(2)中、R6は、-CH=で表される基または窒素原子である。R6が窒素原子のとき、R4はアルキレン基及び/又はR5は水素原子が好ましい。R5がアルコキシ基又はシアノアルキル基のとき、R6は炭素原子が好ましい。
【0020】
式(3)中、R7、R8は、それぞれ、アルキレン基又は直接結合、アルキル基である。R7、R8としてのアルキレン基、アルキル基を構成する炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~7、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3、もしくは1又は2、更により好ましくは1である。R7、R8は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。R7は、好ましくは直接結合、-CH2-CH(CH3)-基、-CH2CH2-(エチレン基)であり、より好ましくは直接結合又はメチレン基である。R8は、好ましくはメチル基、エチル基又はプロピル基であり、好ましくはエチル基である。
【0021】
式(3)中、nは、0又は1である。n=0のとき、R7は直接結合が好ましい。n=1のとき、R7はアルキレン基が好ましい。
【0022】
式(1)で表される化合物が不斉炭素原子を有する場合、化合物の旋光性は特に限定されない。式(1)で表される化合物は、本発明の効果を害しない範囲で、式中に示さない置換基を有していてもよい。
【0023】
成分(B)としては、以下のいずれかが好ましい:
【0024】
N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(CA370)
【化5】
【0025】
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(WS-3)
【化6】
【0026】
エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)
【化7】
【0027】
(1R,2S,5R)-N-(4-メントキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(WS-12)
【化8】
【0028】
(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド(Evercool(登録商標)180)
【化9】
【0029】
(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミド(Evercool(登録商標)190)
【化10】
【0030】
成分(B)は、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド、(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミドがより好ましく、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドがさらに好ましい。成分(B)は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
成分(B)の含有量は、好ましくは0.000005質量%以上、より好ましくは0.00001質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、又は0.002質量%以上である。これにより、心地よい引き締め感を持続させることができる。上限は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。これにより、上述の成分(A)に起因する刺激を抑制することができる。したがって、成分(B)の含有量は、好ましくは0.000005~0.1質量%、より好ましくは0.00001~0.1質量%、更に好ましくは0.0001~0.05質量%又は0.002~0.05質量%である。
【0032】
[質量比((A)/(B))]
成分(A)の含有量の成分(B)の含有量に対する質量比((A)/(B))は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上である。これにより、歯ぐきへの心地よい引き締め感の持続を付与することができる。上限は、好ましくは150000以下、より好ましくは100000以下、さらに好ましくは5000又は800以下である。これにより、口腔内における刺激を抑制することができる。したがって、質量比((A)/(B))は好ましくは0.05~150000、より好ましくは0.1~100000、さらに好ましくは0.5~5000又は0.5~800である。
【0033】
[任意成分]
本発明の口腔用組成物は、その効果を損なわない範囲で、既に説明した成分(A)及び成分(B)以外の任意成分を含有していてもよい。
【0034】
任意成分としては、例えば、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、防腐剤、甘味剤、着色剤、香料、pH調整剤、有効成分等が挙げられる。以下、具体的に説明する。
【0035】
―研磨剤―
研磨剤は、無機研磨剤及び有機研磨剤のいずれでもよい。無機研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、ゼオライト、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、結晶性ジルコニウムシリケート、チタン結合性シリカ等の研磨性シリカ;第2リン酸カルシウム・2水和塩又は無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物;炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム系研磨剤;水酸化カルシウム、硫酸カルシウム等の、炭酸/リン酸以外のカルシウム系研磨剤;炭酸水素ナトリウム;酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等のアルミニウム系材料;ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム等のケイ酸系材料;炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム等のマグネシウム系材料;ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト等のアパタイト系材料;二酸化チタン、雲母チタン、酸化チタン等のチタン系材料;ベントナイト等の鉱物が挙げられる。有機研磨剤としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート、合成樹脂系研磨剤が挙げられる。研磨剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
研磨剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対して、通常、2質量%以上、好ましくは10質量%以上である。上限は、通常、50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
【0037】
―湿潤剤―
湿潤剤としては、例えば、ソルビット(ソルビトール)、グリセリン等の糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量(例えば、医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量)200~6000のポリエチレングリコール)、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール等が挙げられる。湿潤剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
湿潤剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対して、通常、2質量%以上である。上限は、通常、40質量%以下である。
【0039】
―粘結剤―
粘結剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロース(例、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル、モンモリロナイト、カオリン、増粘性シリカ、ベントナイト、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。粘結剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
粘結剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対して、通常、0.1質量%以上である。上限は、通常、6質量%以下である。
【0041】
―界面活性剤―
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ミリストイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム、N-メチル-N-アシルアラニンナトリウム、α-オレフィンスルフォン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムが挙げられる。
【0043】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド平均付加モル数は、通常2~100モル、好ましくは3~100モル、より好ましくは3~60モルである。
【0044】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩が挙げられる。
【0045】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型両性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
界面活性剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対して、通常、0.01質量%以上である。上限は、通常、5質量%以下である。
【0048】
―防腐剤―
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(例、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。防腐剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
―甘味剤―
甘味剤としては、例えば、キシリトール、マルチトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビオサイド、アスパルテームが挙げられる。甘味剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
―着色剤―
着色剤としては、例えば、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号が挙げられる。着色剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
―香料―
香料としては、例えば、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、バジル油、カルダモン油、コリアンダー油、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、マンダリン油、ライム油、グレープフルーツ油、柚子油、スウィーティー油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、セロリ油、ベイ油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、レモングラス油、ローズ油、ジャスミン油、パチュリ油、イリスコンクリート、ローズアブソリュート、オレンジフラワーアブソリュート、バニラアブソリュート、マンゴーアブソリュート、パチュリアブソリュート、ミントアブソリュート、ジンジャーオレオレジン、ペッパーオレオレジン、カプシカムオレオレジン、トウガラシ抽出物等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、リモネン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、カンファー、フェンキルアルコール、フェンキルアセテート、フェンコン、4-メチルグアヤコール、4-エチルグアヤコール、4-プロピルグアヤコール、ピネン、ブタノール、イソアミルアルコール、n-ヘキセノール、cis-3-ヘキセノール、cis-6-ノネノール、リナロール、α-テルピネオール、メントール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、アネトール、チモール、メチルチャビコール、オイゲノール、カルボン、メントン、プレゴン、1,8-シネオール、ヨノン、キャロン、n-ヘキサナール、trans-2-ヘキセナール、シトラール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキシルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、アリルヘキサノエート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、リナリルアセテート、メンチルアセテート、カルビールアセテート、フェノキシエチルイソブチレート、メチルジャスモネート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、メチルシンナメート、メチルアンスラニレート、フェニルエチルグリシデート、エチルラクテート、バニリン、マルトール、炭素原子数4~12のガンマ及びデルタラクトン、アンブレットリド、ジメチルサルファイド、トリメチルピラジン、エチル-β-メチルチオプロピオネート、フラネオール、エチルシクロペンテノロン、シクロテン、2-メチルブチリックアシッド、プロピオニックアシッド、p-メトキシシンナミックアルデヒド、スピラントール、リナロールオキサイド、バニリルブチルエーテル、イソプレゴール、3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール、メンチルラクテート、メントングリセリンアセタール等の単品香料、さらに、ミントフレーバー、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、メロンフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、ラズベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、マンゴーフレーバー、ウメフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ティーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー等の調合香料、及び、エチルアルコール、プロピレングリコール、トリアセチン、グリセリン脂肪酸エステル等の香料溶剤等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。香料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
香料の含有量は特に限定されないが、本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。含有量は通常、口腔用組成物全体(100質量%)に対して、通常、0.000001質量%以上である。上限は、通常、4質量%以下である。
【0053】
―pH調整剤―
口腔組成物がpH調整剤を含むことにより、製剤のpH安定性を確保できる。
【0054】
pH調整剤として、公知のものを必要に応じ、含有させることができる。具体的にはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩(例、クエン酸ナトリウム)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
―有効成分―
有効成分としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール等の抗菌性物質、グルカナーゼ(デキストラナーゼ、ムタナーゼ等)、プロテアーゼ、塩化リゾチーム等の酵素、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸トリナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレンスルホン酸塩、ベルベリン、オウバクエキス等の抗炎症剤、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ピリドキシン等の各種ビタミン類、ジヒドロコレステロール、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム、オウゴン、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、ベニバナ、ハマメリス等の植物抽出物、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウム等の無機塩類、ポリリン酸ナトリウム等の水溶性無機リン酸化合物、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリビニルピロリドン、歯石防止剤、歯垢防止剤等が挙げられる。有効成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
これらの有効成分の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で、有効量とすることができる。
【0057】
-溶媒-
溶媒としては、例えば、水(精製水)、エタノール等が挙げられ、水が好ましい。溶媒は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
―他の任意成分―
上記以外の任意成分の例としては、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ウレタン、シリコン、天然ゴムが挙げられる。これら他の任意成分の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定できる。
【0059】
[口腔用組成物の剤形及び用途]
本発明の口腔用組成物は、歯磨剤、洗口剤、スプレー剤、塗布剤、貼付剤、又は口腔内溶解剤等の口腔用製剤とすることができ、これらのうち、歯磨剤、洗口剤、スプレー剤が好ましい。
口腔用組成物の剤形は、利用形態に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。剤形としては、例えば、ペースト状、液状等の形態で、歯磨剤であれば練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨として調製でき、練歯磨が好ましい。
【0060】
[口腔用組成物の製造方法]
口腔用組成物の製造方法は特に限定されず、剤形に応じて、それぞれの通常の方法で調製され得る。例えば練歯磨剤として利用する場合、溶媒に溶解する成分を調製した後、それ以外の不溶性成分を混合し、必要に応じて脱泡(例えば、減圧等)を行う方法が挙げられる。得られる練歯磨は、容器に収容して製品とすることができる。容器は、形状、材質は特に制限されず、通常の歯磨剤組成物に使用される容器を使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック製のラミネートチューブ等の容器等が挙げられる。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例により説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0062】
実施例1~31及び比較例1~8
表1~6に示す組成の口腔用組成物を常法により調製した。また、香料Aの組成を、表7に示す。
【0063】
<使用した原料>
―成分(A)―
クロロブタノール:メルク(株)
【0064】
―成分(B)―
N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド:Coolact(登録商標)370(CA370)、高砂香料工業(株)社製
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド:WS-3、シムライズジャパン社製
エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート:WS-5、豊玉香料(株)製
(1R,2S,5R)-N-(4-メントキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド:WS-12、豊玉香料(株)製
(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド:Evercool(登録商標)180、ジボダン社製
(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミド:Evercool(登録商標)190、ジボダン社製
【0065】
<評価方法>
被験者4名によって評価した。歯ブラシ(クリニカアドバンテージ歯ブラシ、4列コンパクトふつう、ライオン(株)製)にサンプルの練歯磨剤1gを載せ、3分間歯みがきを行った後、10mLの水で1回、口腔内をすすいだ。使用直後の歯ぐきへの心地よい引き締め感、歯ぐきへの心地よい引き締め感の持続、口腔内の刺激を、それぞれ下記の評点基準によって判定し、4名の平均点を求め、下記の評価基準で評価した。なお、歯ぐきへの心地よい引き締め感の持続とは、使用後20分経過後も歯ぐきにひきしまりを感じることを指す。
【0066】
<使用直後の歯ぐきへの心地よい引き締め感>
評点基準
5:非常に感じる
4:感じる
3:やや感じる
2:あまり感じない
1:全く感じない
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0067】
<歯ぐきへの心地よい引き締め感の持続>
評点基準
5:非常に感じる
4:感じる
3:やや感じる
2:あまり感じない
1:全く感じない
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0068】
<口腔内の刺激>
評点基準
5:全く感じない
4:あまり感じない
3:わずかに感じる
2:感じる
1:非常に感じる
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
比較例1~8では引き締め感、その持続、及び刺激のうちのいずれかのみ高評価であったのに対し、成分(A)及び成分(B)を併用する実施例1~31は、いずれもバランスよく良好な評価であった。
【0077】
これらの結果は、本発明の口腔用組成物が、刺激が抑制され、かつ、心地よい引き締め感を発揮でき、かつその持続性も良好であることを示している。
【0078】
以下、処方例を示す。
【0079】
処方例1:洗口剤
クロロブタノール 0.1 質量%
N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド 0.001 質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.05 質量%
グリセリン 5 質量%
プロピレングリコール 5 質量%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1 質量%
スクラロース 0.05 質量%
サッカリンナトリウム 0.005 質量%
香料A 0.1 質量%
クエン酸 0.05 質量%
クエン酸ナトリウム 0.2 質量%
精製水 残部
合計 100 質量%
(A)/(B)比=100
【0080】
処方例2:洗口剤
クロロブタノール 0.1 質量%
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド 0.001 質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.05 質量%
グリセリン 5 質量%
プロピレングリコール 5 質量%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1 質量%
スクラロース 0.05 質量%
サッカリンナトリウム 0.005 質量%
香料A 0.1 質量%
クエン酸 0.05 質量%
クエン酸ナトリウム 0.2 質量%
精製水 残部
合計 100 質量%
(A)/(B)比=100
【0081】
処方例3:マウススプレー
クロロブタノール 0.1 質量%
N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド 0.001 質量%
エタノール 25 質量%
グリセリン 35 質量%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 5 質量%
キシリトール 3 質量%
香料A 1 質量%
クエン酸 0.05 質量%
クエン酸ナトリウム 0.95 質量%
精製水 残部
合計 100 質量%
(A)/(B)比=100
【0082】
処方例4:マウススプレー
クロロブタノール 0.1 質量%
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド 0.001 質量%
エタノール 25 質量%
グリセリン 35 質量%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 5 質量%
キシリトール 3 質量%
香料A 1 質量%
クエン酸 0.05 質量%
クエン酸ナトリウム 0.95 質量%
精製水 残部
合計 100 質量%
(A)/(B)比=100