(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095190
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】Vベルト式無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 9/12 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
F16H9/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212291
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 善昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 豪
(72)【発明者】
【氏名】細谷 亮平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 淳史
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 寿光
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大
(72)【発明者】
【氏名】古谷 昌志
【テーマコード(参考)】
3J050
【Fターム(参考)】
3J050AA02
3J050BA03
3J050BB08
3J050CA02
3J050CC02
3J050CC05
3J050CD08
3J050DA03
(57)【要約】
【課題】Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ること。
【解決手段】Vベルト式無断変速機(71)の円錐面(81a,82a,91a,92a)には、プーリ(80,90)の内周側から外周側に向けて延びて、Vベルト(75)が接触する領域に設けられたベルトリリース用加工部(130,140,150)が設けられ、ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、Vベルト(75)がプーリ(80,90)から離間するリリース点(P)に対応する位置から、プーリ(80,90)の回転方向に直交する遠心方向よりも回転方向側に向けて延びる形状である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vベルト(75)を狭持する面が円錐面(81a,82a,91a,92a)に形成された一対のプーリ(80,90)を有するVベルト式無断変速機において、
前記円錐面(81a,82a,91a,92a)には、前記プーリ(80,90)の内周側から外周側に向けて延びて、前記Vベルト(75)が接触する領域に設けられたベルトリリース用加工部(130,140,150)が設けられ、
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記Vベルト(75)が前記プーリ(80,90)から離間するリリース点に対応する位置から、前記プーリ(80,90)の回転方向に直交する遠心方向よりも回転方向側に向けて延びる形状である
Vベルト式無断変速機。
【請求項2】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記円錐面(81a,82a,91a,92a)における前記Vベルト(75)の最小接触半径上の位置、又は、その近傍に対応する位置から、前記プーリ(80,90)の遠心方向と、前記Vベルト(75)の接線方向との間の領域に設けられる
請求項1に記載のVベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記プーリ(80,90)の内周側から外周側に向けて、前記プーリ(80,90)の回転方向に対して逆方向に凸の曲線に沿って延びる形状である
請求項1に記載のVベルト式無断変速機。
【請求項4】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記プーリ(80,90)の遠心方向と、前記Vベルト(75)の接線方向との間の領域にて、各方向に対して傾斜する方向に延びる直線形状である
請求項1に記載のVベルト式無断変速機。
【請求項5】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記Vベルト(75)が進入不能な幅の溝(130)である
請求項1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
【請求項6】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記Vベルト(75)側に突出する凸部(140)である
請求項1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
【請求項7】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)は、前記円錐面(81a,82a,91a,92a)における他の表面よりも低摩擦となる表面加工を施した加工部(150)である
請求項1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
【請求項8】
前記ベルトリリース用加工部(130,140,150)の幅は、前記プーリ(80,90)の周方向で異なる
請求項1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vベルト式無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献するVベルト式無段変速機の研究開発が行われている。
特許文献1には、Vベルト式無段変速装置において、プーリの円錐面にVベルトの回転方向に直交する方向に延びる放射状の溝を形成する構成が開示されている。この構成により、Vベルトの回転方向のすべりを抑制し、Vベルトの変速方向の移動をスムーズにする効果が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の放射状の溝は、Vベルトの軌道と大きく異なる方向に延びる溝であるため、Vベルトが溝に引っ掛かり、フリクションが増加して伝達効率の低下を招くおそれがある。
一方、溝加工等の表面加工を行っていないプーリの場合、Vベルトがプーリで狭持されているところから抜けようとする際に、Vベルトがプーリの回転に連れ回ってしまい、Vベルトの軌道が乱れ、伝達効率の低下を招くおそれがある。伝達効率の低下は、エネルギー消費の増大につながる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ることを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
Vベルトを狭持する面が円錐面に形成された一対のプーリを有するVベルト式無断変速機において、前記円錐面には、前記プーリの内周側から外周側に向けて延びて、前記Vベルトが移動する領域に設けられたベルトリリース用加工部が設けられ、前記ベルトリリース用加工部は、前記Vベルトが前記プーリから離間するリリース点に対応する位置から、前記プーリの回転方向に直交する遠心方向よりも回転方向側に向けて延びる形状であるVベルト式無断変速機を提供する。
【発明の効果】
【0006】
Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ることで、エネルギーの効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図3】比較例1の駆動プーリ及び従動プーリをVベルトと共に模式的に示す図である。
【
図4】比較例2の駆動プーリ及び従動プーリをVベルトと共に模式的に示す図である。
【
図5】本構成の駆動プーリ及び従動プーリをVベルトと共に模式的に示す図である。
【
図8】駆動プーリの円錐面をVベルトと共に示す図である。
【
図11】変形例に係る凸部の説明に供する図である。
【
図12】変形例に係る加工部の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダ部24とを備える。シリンダ部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
本実施の形態の鞍乗り型車両10は、乗員が跨るようにして着座するシート17を備えるスクーター型の鞍乗り型車両である。パワーユニット12は、車体フレーム11の後部に支持されるユニットスイングパワーユニットである。パワーユニット12は、クランクケース23と、シリンダ部24とスイングアーム16とが一体に設けられている。
【0016】
図2は、パワーユニット12の内部構造を示す図である。
パワーユニット12は、エンジン40と、エンジン40及び後輪15間に設けられる変速機41とを備えており、エンジン40のシリンダ部24に排気装置25の上流端が接続される。
【0017】
エンジン40は、単気筒の4サイクルエンジンであり、クランクケース23からシリンダ部24が前方へ向けて水平に突出する水平エンジンに構成される。シリンダ部24は、クランクケース23側から順に、シリンダブロック42、シリンダヘッド43、シリンダヘッドカバー44で構成される。
【0018】
シリンダ部24には、ピストン55が摺動自在に配置され、クランクケース23には、ピストン55にコンロッド56を介して連結されたクランク軸63が回転自在に支持される。シリンダヘッド43には、点火プラグ43Pが装着され、点火プラグ43Pの先端が、ピストン55とシリンダヘッド43との間の燃焼室に臨んでいる。ピストン55が往復動すると、それに伴ってクランク軸63が回転する。
クランク軸63は、クランクケース23内を左右に延び、左右一対の軸受66,67を介して回転自在に支持される。シリンダヘッド43とシリンダヘッドカバー44の間にクランク軸63と平行にカム軸65が回転自在に支持される。
【0019】
カム軸65は、シリンダヘッド43とシリンダヘッドカバー44との間で回転自在に支持され、クランク軸63との間に掛け渡されたカムチェーン68を介してクランク軸63と共に回転する。カム軸65の回転により、吸排気弁が駆動されて4サイクルに従った吸排気が実施される。クランク軸63の回転は、変速機41を介して後輪15に伝達される。つまり、変速機41は、エンジン40の動力を後輪15に伝達する車両用動力伝達装置を構成する。
【0020】
クランクケース23は、後輪15の左側を通って後方に延び、変速機41を収容する伝動ケース30を有する。伝動ケース30には、車幅方向外側に相当する左側からサイドカバー31が固定される。サイドカバー31によって、変速機41を収容する空間が閉塞される、サイドカバー31は、伝動ケース30の周壁にボルトB1で固定されると共に、伝動ケース30から車幅方向に突出するボス部32にボルトB2で固定される。
【0021】
クランク軸63の後方には、クランク軸63と平行に従動軸74が回転自在に支持される。ボス部32は、クランク軸63の後方、かつ、従動軸74の前方に設けられる。このボス部32は、変速機41における後述する駆動プーリ80と従動プーリ90の間、かつ、Vベルト75に囲まれる空間を利用して設けられる。このボス部32により、カバー31と伝動ケース30との固定強度を効果的に高めることができる。なお、ボス部32は、本発明の「他のカバー(カバー31に相当)の取り付けに使用されるカバー取付用ボス部32」に相当する。
図2及び後述する各図において、クランク軸63の軸線(中心軸線)に符号L1を付して示し、従動軸74の軸線(中心軸線)に符号L2を付して示している。
【0022】
変速機41は、Vベルト式無断変速機71と、Vベルト式無断変速機71と出力軸102との間に設けられた発進クラッチ100とを備える。
Vベルト式無断変速機71は、クランク軸63の軸方向一端部(本構成では左端部)に設けられた駆動プーリ80と、クランク軸63と平行に軸支された従動軸74と、従動軸74の軸方向一端部(本構成では左端部)に設けられた従動プーリ90と、駆動プーリ80と従動プーリ90との間に掛け渡されるVベルト75とを備えている。従動軸74は、複数の軸受76,77,78を介して回転自在に支持される。Vベルト式無断変速機71は、Vベルト式無段変速機、又はVベルト式変速機とも称される。Vベルト75は合成ゴム等で製作される。
【0023】
駆動プーリ80の回転は、Vベルト75を介して従動プーリ90に伝達される。従動プーリ90と従動軸74との間には、駆動プーリ80が回転すると、遠心力によって接続状態となる発進クラッチ100が配置される。この発進クラッチ100を介して従動プーリ90と従動軸74とが断接(切断/接続)される。なお、発進クラッチ100は、「遠心クラッチ」と言うこともできる。
【0024】
従動軸74の後方には、中間軸101と出力軸102が前後に間隔を空けて互いに平行に配置される。各軸101,102は、軸受103,104,105,106を介して回転自在に支持される。従動軸74の回転は、減速ギヤ107を介して中間軸101に伝達され、中間軸101の回転は、減速ギヤ108を介して出力軸102に伝達され、出力軸102に連結された後輪15が回転駆動する。従動軸74から中間軸101を経て出力軸102に至る機構は、Vベルト式無断変速機71の回転を更に減速する減速機構を構成する。
【0025】
クランク軸63が回転すると、クランク軸63の回転が駆動プーリ80から従動プーリ90に伝達され、エンジン40がアイドリング回転数を超えると、発進クラッチ100がつながり、鞍乗り型車両10が発進する。
【0026】
駆動プーリ80及び従動プーリ90について更に説明する。
駆動プーリ80は、クランク軸63の軸方向一端部に固定された固定シーブ81と、固定シーブ81に対向して配置され、クランク軸63の軸方向に移動自在に支持された可動シーブ82とを備える。固定シーブ81と可動シーブ82とは、互いに対向する円錐面形状の円錐面81a,82aを有する。各円錐面81a,82aは、Vベルト75の幅中心C1(
図2)を基準にして左右対称形状である。
【0027】
Vベルト75の幅方向両側面は、これら円錐面81a,82aに当接する。固定シーブ81の円錐面81aと可動シーブ82の円錐面82aとは、その距離が外径側から内径側に向かって漸次減少し、固定シーブ81と可動シーブ82との間の溝は、V字状に形成される。
【0028】
クランク軸63が回転すると、回転による遠心力で遠心方向に移動するウェイトローラー153の作用により可動シーブ82が軸方向に移動する。これによって、可動シーブ82と固定シーブ81との離間距離が変動し、可動シーブ82と固定シーブ81との間に挟まれたVベルト75の巻き掛け径が可変する。なお、固定シーブ81は、「固定プーリ半体」とも称される。また、可動シーブ82は、「可動プーリ半体」とも称される。
【0029】
従動プーリ90は、従動軸74に固定された従動固定シーブ91と、従動軸74に軸方向に移動自在に支持された従動可動シーブ92とを備える。従動固定シーブ91と従動可動シーブ92とは、互いに対向する円錐面形状の円錐面91a,92aを有する。各円錐面91a,92aは、Vベルト75の幅中心C1(
図2参照)を基準にして左右対称形状である。
【0030】
Vベルト75の幅方向両側面は、これら円錐面91a,92aに当接する。従動固定シーブ91の円錐面91aと従動可動シーブ92の円錐面92aとは、その距離が外径側から内径側に向かって漸次減少し、従動固定シーブ91と従動可動シーブ92との間の溝は、V字状に形成される。
【0031】
従動可動シーブ92は、従動側付勢部材110によって従動固定シーブ91側に付勢され、Vベルト75をVベルト75の幅方向に押圧する。本実施の形態の従動側付勢部材110はコイルスプリングである。
基本的には、可動シーブ82を押すウェイトローラー153の作用と、従動可動シーブ92を押圧する従動側付勢部材110の作用とによって、駆動プーリ80と従動プーリ90のそれぞれの溝幅が調節され、Vベルト式無断変速機71の変速比が自動的に調整される。従動側付勢部材110は、コイルスプリング以外の付勢部材でもよい。
なお、従動固定シーブ91は、「従動固定プーリ半体」とも称され、従動可動シーブ92は、「従動可動プーリ半体」とも称される。
【0032】
図3は、比較例1の駆動プーリ80及び従動プーリ90をVベルト75と共に模式的に示す図である。
図3にはLOW(LOW GEARED)のときのVベルト75を示している。
比較例1では、各プーリ80,90の各円錐面81a,82a,91a,92aが一般的な平面形状である。本説明における一般的な平面形状とは、凹凸を付与した加工面ではなく、かつ、低摩擦の表面加工を施した加工面ではない平面であり、「特別な表面加工無しの面」と言うこともできる。
【0033】
図3には、駆動プーリ80及び従動プーリ90のそれぞれ一方の円錐面82a,91aを示し、かつ、駆動プーリ80等の各部材を、本実施形態の部材と同一の符号を付して示している。また、
図3には、各プーリ80,90の回転方向を矢印で示し、Vベルト75の軌道が適切な場合に、Vベルト75が各プーリ80,90から離間するリリース点Pを示すと共に、リリース点PにおいてVベルト75が抜ける方向D1を示している。なお、方向D1は、Vベルト75の接触半径におけるリリース点Pの接線方向に相当する。
【0034】
比較例1の「特別な表面加工無しの面」の場合、各円錐面81a,82a,91a,92aとVベルト75との間の摩擦力が比較的大きくなり、Vベルト75がリリース点Pで各プーリ80,90から離間せず、各プーリ80,90の回転に連れ回ってしまうおそれがある。Vベルト75がリリース点Pで各プーリ80,90から離間しない場合、
図3に二点鎖線で示すように、Vベルト75の軌道が乱れ、フリクションが増加して伝達効率の低下を招いてしまう。また、Vベルト75が上下に振動し、騒音の発生を招くおそれもある。
【0035】
図4は、比較例2の駆動プーリ80及び従動プーリ90をVベルト75と共に模式的に示す図である。
図4にはLOWのときのVベルト75を実線で示し、TOP(TOP GEARED)のときのVベルト75を二点鎖線で示している。
比較例2では、各プーリ80,90の各円錐面81a,82a,91a,92aに、Vベルト75の回転方向に直交する方向に延びる放射状の溝130Mが設けられている。
図4においても、
図3と同様に、各部材の符号は、本実施形態と同一の符号を使用して示すと共に、リリース点P及びVベルト75が抜ける方向D1を示している。
【0036】
比較例2の場合、放射状の溝130Mの分だけ、Vベルト75と円錐面82aとの間の接触面積が低減するので、Vベルト75をリリース点Pで各プーリ80,90から離間させ易くなる。
しかしながら、Vベルト75の軌道と、溝130Mが延びる方向とが大きく異なることを原因として、Vベルト75が溝130Mに引っ掛かり易くなる。例えば、リリース点Pにおいて、Vベルト75の軌道は上記方向D1となるため、Vベルト75の軌道と、溝130Mが延びる径方向との差は90°に近い角度となる。このため、Vベルト75が溝130Mに引っ掛かり、フリクションが増加して伝達効率の低下を招いたり、騒音の発生を招いたりするおそれがある。
【0037】
変速時のVベルト75の動きについて説明すると、Vベルト75は、リリース点Pにおいて、遠心方向(各プーリ80,90の径方向に相当)、及び、Vベルト75が抜ける方向D1の両方に沿って移動することになる。
例えば、TOP側へ変速する場合、駆動プーリ80側のVベルト75は、駆動プーリ80の外径方向に移動しながら、方向D1に沿った方向にも移動し、従動プーリ90側のVベルト75は、従動プーリ90の内径方向に移動しながら、方向D1に沿った方向に移動する。
【0038】
比較例2の場合、溝130MがVベルト75に略直交する方向に延びるため、変速時において、Vベルト75の移動方向と、溝130Mが延びる方向とが大きく異なる事態が生じ、これを原因として、Vベルト75が溝130Mに引っ掛かるおそれがある。そのため、Vベルト75と各プーリ80,90との間のフリクションが増加し、伝達効率の低下を招いたり、騒音の発生を招いたりするおそれもある。以上のように、比較例1、及び比較例2のいずれにおいても、Vベルト75のリリース性向上に改善の余地がある。
【0039】
Vベルトリリース性の向上の一手法として、各円錐面81a,82a,91a,92aの表面全体に、低摩擦の表面加工を施す方法が挙げられる。しかし、この方法は部品コストや加工コストの増大を招く要因となる。また、表面加工の種類によっては、表面加工の箇所がVベルト75との接触によって損傷するおそれもある。また、Vベルト75との接触面積を低減する他の方法として、各円錐面81a,82a,91a,92aの表面に、同心円状の溝を設けた場合、Vベルト75が巻き込まれ易くなってしまう。
【0040】
図5は、本構成の駆動プーリ80及び従動プーリ90をVベルト75と共に模式的に示す図である。
図5の場合も、
図4と同様に、LOWのときのVベルト75を実線で示すと共に、TOPのときのVベルト75を二点鎖線で示している。
本構成では、Vベルトリリース性を向上するために、
図5に示すように、Vベルト75の回転方向に直交する方向ではない方向で、各プーリ80,90の内周側から外周側に向けて延びる複数の溝130を設けている。
【0041】
ここで、駆動プーリ80及び各シーブ81,82の軸線(中心軸線)は、クランク軸63の軸線L1と一致し、従動プーリ90及び各シーブ91,92の軸線は、従動軸74の軸線L2と一致する。そのため、以下の説明では、駆動プーリ80及び各シーブ81,82の軸線については符号L1を付して説明し、従動プーリ90及び各シーブ91,92の軸線については号L2を付して説明する。
【0042】
複数の溝130は、各プーリ80,90の軸線L1,L2を基準にして所定の角度間隔で設けられている。本実施形態では、等角度間隔で7本の溝130が設けられているが、7本未満でもよいし、8本以上でもよい。また、これら溝130は等角度間隔でなくてもよい。
本構成において、各円錐面81a,82a,91a,92aに設けられる各溝130は同形状であり、対向する円錐面に設けられた各溝は、Vベルト75の幅中心C1を基準にして対称形状である。
【0043】
図6は、駆動プーリ80の円錐面82aを示す図である。
図7は、
図6のA-A断面図である。
図6に示すように、各溝130は、駆動プーリ80の内周側から外周側に向けて延びて、駆動プーリ80の回転方向に対して逆方向に凸の曲線に沿って延びる曲線形状に形成されている。
各溝130は、円錐面82aにおけるVベルト75の最小接触半径R1上の位置、又は、その近傍に対応する位置から、Vベルト75の最大接触半径R2上の位置、又は、その近傍に対応する位置までの間に設けられる。そのため、各溝130は、LOWからTOPのいずれの場合でも、Vベルト75が存在する領域に位置する。
【0044】
図7に示すように、溝130は、円錐面82aにおける他の面から凹む形状に形成され、本構成では、円弧断面形状に凹むことによって、Vベルト75との引っ掛かりの低減や、風切り音の低減等に有利である。また、溝130は、Vベルト75よりも幅狭の溝に形成されることによって、Vベルト75が進入不能な幅に形成される。そのため、Vベルト75が溝130に嵌まる事態が回避される。
このように、円錐面82aに溝130を有することで、Vベルト75と円錐面82aとの間の接触面積が低減し、Vベルト75と円錐面82aとの間の摩擦力が低減するので、Vベルト75をリリース点Pで駆動プーリ80から離間させ易くなる。
【0045】
図6に示すように、溝130は、Vベルト75が駆動プーリ80から離間するリリース点Pに対応する位置から駆動プーリ80の回転方向に直交する遠心方向D2よりも回転方向側に向けて延びる溝でもある。なお、「リリース点Pに対応する位置」は、リリース点Pと一致する位置(Vベルト75の接触半径上となる位置と言うこともできる)に限定されず、リリース点Pの近傍の位置でもよい。
【0046】
ここで、
図8は、駆動プーリ80の円錐面82aをVベルト75と共に示す図である。
図6及び
図8に示すように、溝130は、駆動プーリ80の遠心方向D2と、Vベルト75の接線方向に相当する方向D1との間の領域に設けられる。そのため、溝130Mが、
図8に示すVベルト75に対し、Vベルト75の軌道に沿う側に傾斜した溝となり、比較例2に記載したようなVベルト75に直交する溝と比べて、Vベルト75が溝に引っ掛かり難くなる。換言すると、溝130を、リリース点PにおけるVベルト75の接線方向に相当する方向D1にある程度沿わせつつ、Vベルト75を巻き込み難くする形状にし易くなる。
【0047】
また、変速によりVベルト75が駆動プーリ80の径方向、及び方向D1の両方に沿った方向に移動する場合であっても、上記したように、溝130は、駆動プーリ80の遠心方向D2と、Vベルト75の接線方向に相当する方向D1との間の領域に設けられるので、Vベルト75の移動方向と、溝130が延びる方向との差を抑えることができる。したがって、Vベルト75が溝130Mに引っ掛かる事態を抑制できる。
しかも、溝130は、逆方向に凸の曲線に沿って延びる形状であるので、変速中のVベルト75の移動に沿う溝となり易く、変速中のVベルト75の移動をスムーズ化し易くなる。
【0048】
従動プーリ90に設けられる溝130も、
図6に示すように、駆動プーリ80に設けられる溝130と同様に形成されるので、従動プーリ90の内周側から外周側に向けて延びて、従動プーリ90の回転方向に対して逆方向に凸の曲線に沿って延びる曲線形状となっている。また、従動プーリ90に設けられる溝130は、Vベルト75が従動プーリ90から離間するリリース点Pに対応する位置から従動プーリ90の遠心方向D2よりも回転方向側に向けて延びる溝でもある。さらに、従動プーリ90に設けられる溝130は、円錐面91aにおけるVベルト75の最小接触半径R1上、又は、その近傍に対応する位置から、従動プーリ90の遠心方向D2と、Vベルト75の接線方向に相当する方向D1との間の領域に設けられる溝でもある。
【0049】
このようにして、本構成では、Vベルト式無断変速機71が変速していない場合、及び、変速中のいずれの場合も、各プーリ80,90において、Vベルト75の移動方向と溝130が延びる方向との差を抑えてVベルト75が溝130に引っ掛かる事態を抑制し、Vベルト75の移動をスムーズ化し易くなる。これにより、Vベルト75と各プーリ80,90との間のフリクションが増加し、Vベルト式無断変速機71の伝達効率の低下を招いたり、騒音の発生を招いたりする事態を低減することができる。
【0050】
以上説明したように、Vベルト式無断変速機71の各プーリ80,90の円錐面81a,82a,91a,92aには、各プーリ80,90の内周側から外周側に向けて延びて、Vベルト75が接触する領域に設けられたベルトリリース用加工部として機能する溝130が設けられる。これら溝130は、Vベルト75が各プーリ80,90から離間するリリース点Pに対応する位置から、各プーリ80,90の回転方向に直交する遠心方向よりも回転方向側に向けて延びる形状に形成されている。
この構成によれば、Vベルト75がリリース点Pから離間する場合に、Vベルト75と溝130との間の角度差が大きくならない。そのため、Vベルト75が溝130に引っ掛かる事態を抑制しながら、Vベルト75と円錐面81a,82a,91a,92aとの間の摩擦力を低減できる。したがって、Vベルト75を各プーリ80,90からスムーズに離間させることができ、伝達効率の向上、及び騒音の低減等に有利となる。その結果、鞍乗り型車両10の駆動に要するエネルギー消費を抑え、エネルギーの効率化に寄与することが可能になる。
【0051】
また、各溝130は、円錐面81a,82a,91a,92aにおけるVベルト75の最小接触半径R1上の位置、又は、その近傍に対応する位置から、各プーリ80,90の遠心方向D2と、Vベルト75の接線方向に相当する方向D1との間の領域に設けられる。
この構成によれば、Vベルト75が遠心方向D2、及び方向D1のいずれか及び両方に移動する場合に、Vベルト75と溝130との間の角度差を抑えることができる。そのため、変速していない場合、及び、変速中のいずれの場合も、Vベルト75が溝130に引っ掛かる事態を抑制しながら、Vベルト75を各プーリ80,90からスムーズに離間させ易くなる。
【0052】
また、各溝130は、各プーリ80,90の内周側から外周側に向けて、各プーリ80,90の回転方向に対して逆方向に凸の曲線に沿って延びる形状である。この構成によれば、変速中のVベルト75の移動に沿う溝130となり易く、変速中のVベルト75の移動をスムーズにし易くなる。
また、各溝130は、Vベルト75が進入不能な幅の溝であるので、Vベルト75が溝130に嵌まる事態を回避できる。また、溝130の幅調整により、Vベルト75と円錐面82aとの間に発生する摩擦力を適正範囲に低減可能である。
【0053】
上記実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、溝130が各プーリ80,90の回転方向に対して逆方向に凸の曲線に沿って延びる曲線形状の場合を説明したが、これに限定されず、上記凸の曲線を近似する折れ線形状でもよい。各プーリ80,90の遠心方向D2と、Vベルト75の接線方向に相当する方向D1との間の領域に設けられる範囲で、溝130を、適宜な形状にしてもよい。
また、溝130を、各プーリ80,90の遠心方向D2と、Vベルト75の接線方向に相当する方向D1との間の領域にて、各方向D2,D1に対して傾斜する方向に延びる直線形状にしてもよい。
【0054】
図9は、直線形状の溝130の一例を示す図である。直線形状の溝130は、駆動プーリ80の内周側から外周側に向けて延びる直線形状であり、Vベルト75が駆動プーリ80から離間するリリース点Pに対応する位置から、駆動プーリ80の遠心方向D2よりも回転方向側に向けて延びる形状でもある。この直線形状の溝130は、リリース点PからVベルト75が抜ける方向D1に沿うベルト軌道と少し傾きをずらして形成され、
図8に示す凸の曲線を近似する直線でもある。これにより、簡易形状の溝130で、Vベルト75が溝130に引っ掛かる事態を抑制しながら、Vベルト75をプーリ80からスムーズに離間させることができる。また、直線形状の溝130でも、変速中のVベルト75の移動に沿う溝となり易く、変速中のVベルト75の移動をスムーズ化し易くなる。
【0055】
なお、直線形状の溝130の角度は、変速していない場合、及び、変速中のいずれの場合にも、Vベルト75の移動方向と溝130が延びる方向との差を抑えるように設定することが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、複数の溝130が同形状の場合を説明したが、これに限定されない。例えば、各溝130の幅が各プーリ80,90の周方向で異なるようにしてもよい。
図10には、駆動プーリ80に設けられる各溝130の幅を駆動プーリ80の周方向で異なるようにした場合の一例を示している。
各溝130の幅が各プーリ80,90の周方向で異なるようにすることによって、複数の溝130の影響によるVベルト75の共振を抑制できる。
【0057】
また、上記実施形態では、Vベルト75が接触する領域に設けられたベルトリリース用加工部として、溝130を設ける場合を説明したが、溝130に限定されない。つまり、上記ベルトリリース用加工部には、Vベルト75との間の摩擦力を低減可能な構成を広く適用できる。
【0058】
溝130以外のベルトリリース用加工部としては、例えば、
図11に示すように、溝130の領域を、Vベルト75側に突出する凸部140に置き換えた構成が挙げられる。この構成によれば、Vベルト75と円錐面82aとの接触範囲を凸部140の範囲に狭めることができ、接触範囲を狭めた分だけ、Vベルト75と円錐面82aとの間の摩擦力を低減することができる。凸部140は、溝130と同様形状であるため、Vベルト75がリリース点Pから離間する場合に、Vベルト75と溝130との間の角度差が大きくならず、Vベルト75が凸部140に引っ掛からず、Vベルト75を駆動プーリ80からスムーズに離間させることができる。
【0059】
図11中の符号Bは、凸部140の断面を周辺と共に示している。凸部140の断面形状は、円弧状に膨出する形状に限定されず、他の形状を適用してもよい。また、凸部140は、曲線形状に限定されず、
図9に例示したような直線形状でもよい。
【0060】
溝130以外のベルトリリース用加工部としては、
図12に示すように、溝130の領域を、円錐面81a,82a,91a,92aにおける他の表面よりも低摩擦となる表面加工を施した加工部150に置き換えた構成も挙げられる。この構成によれば、溝130を構成する場合と同様に、Vベルト75と円錐面82aとの間の摩擦力を低減できると共に、Vベルト75がリリース点Pから離間する場合に、Vベルト75と加工部150との間の角度差が大きくならず、Vベルト75を駆動プーリ80からスムーズに離間させることができる。また、加工部150は、曲線形状に限定されず、
図9に例示したような直線形状でもよい。
【0061】
加工部150には、Vベルト75との間の摩擦力を低減可能な材料をコーティングした構成、或いは、円錐面81a,82a,91a,92aの表面を細かい凹凸形状にして低摩擦を実現する構成など、公知の構成を広く適用可能である。
加工部150は、円錐面81a,82a,91a,92aの全面に設ける必要がないので、全面に加工部150を設ける場合と比べて、材料や加工のコスト低減を期待できる。
なお、溝130は、Vベルト75が進入不能な幅の溝にする必要があるが、凸部140や加工部150の幅については、そのような制限がなく、ベルトリリース性の向上に好適な適宜な幅に設定すればよい。
【0062】
また、凸部140及び加工部150を採用する場合でも、凸部140及び加工部150が各プーリ80,90の周方向で異なるようにすることによって、凸部140及び加工部150の影響によるVベルト75の共振を抑制できる。
また、溝130、凸部140及び加工部150等からなるベルトリリース用加工部を、全ての円錐面81a,82a,91a,92aに設ける場合を説明したが、Vベルト75をスムーズに離間させることが可能な範囲で、円錐面81a,82a,91a,92aのいずれかに設けるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明を、
図1に示す自動二輪車のVベルト式無断変速機71に適用する場合を説明したが、これに限定されず、本発明を、任意の鞍乗り型車両のVベルト式無断変速機に適用してもよい。また、本発明を、鞍乗り型車両以外に使用されるVベルト式無断変速機に適用してもよい。
【0064】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0065】
(構成1)Vベルトを狭持する面が円錐面に形成された一対のプーリを有するVベルト式無断変速機において、前記円錐面には、前記プーリの内周側から外周側に向けて延びて、前記Vベルトが移動する領域に設けられたベルトリリース用加工部が設けられ、前記ベルトリリース用加工部は、前記Vベルトが前記プーリから離間するリリース点に対応する位置から、前記プーリの回転方向に直交する遠心方向よりも回転方向側に向けて延びる形状であるVベルト式無断変速機。
この構成によれば、ベルトリリース用加工部により、Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ることができ、エネルギーの効率化に寄与することができる。
【0066】
(構成2)前記ベルトリリース用加工部は、前記円錐面における前記Vベルトの最小接触半径上の位置、又は、その近傍に対応する位置から、前記プーリの遠心方向と、前記Vベルトの接線方向との間の領域に設けられる構成1に記載のVベルト式無段変速機。
この構成によれば、Vベルトが遠心方向、及びVベルトの接線方向のいずれか及び両方に移動する場合に、Vベルトとベルトリリース用加工部との間の角度差を抑えることができる。そのため、変速していない場合、及び、変速中のいずれの場合も、Vベルトがベルトリリース用加工部に引っ掛かる事態を抑制しながら、Vベルトをプーリからスムーズに離間させることができる。
【0067】
(構成3)前記ベルトリリース用加工部は、前記プーリの内周側から外周側に向けて、前記プーリの回転方向に対して逆方向に凸の曲線に沿って延びる形状である構成1又は2に記載のVベルト式無断変速機。
この構成によれば、変速中のVベルトの移動に沿う溝となり易く、変速中のVベルトの移動をスムーズ化し易くなる。
【0068】
(構成4)前記ベルトリリース用加工部は、前記プーリの遠心方向と、前記Vベルトの接線方向との間の領域にて、各方向に対して傾斜する方向に延びる直線形状である構成1又は2に記載のVベルト式無断変速機。
この構成によれば、簡易形状の溝で、Vベルトがベルトリリース用加工部に引っ掛かる事態を抑制しながら、Vベルトをプーリからスムーズに離間させることができる。また、この直線形状の溝を、上記凸の曲線を近似する溝にすることで、変速中のVベルトの移動に沿う溝となり易く、変速中のVベルトの移動をスムーズ化し易くなる。
【0069】
(構成5)前記ベルトリリース用加工部は、前記Vベルトが進入不能な幅の溝である構成1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
この構成によれば、円錐面への溝加工によって、Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ることが可能になり、かつ、Vベルトが溝に嵌まる事態が回避される。また、溝の幅調整により、Vベルトと円錐面との間に発生する摩擦力を適正範囲に低減可能である。
【0070】
(構成6)前記ベルトリリース用加工部は、前記Vベルト側に突出する凸部である構成1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
この構成によれば、円錐面に凸部を設けることによって、Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ることが可能になる。
【0071】
(構成7) 前記ベルトリリース用加工部は、前記円錐面における他の表面よりも低摩擦となる表面加工を施した加工部である構成1から4のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
この構成によれば、円錐面に加工部を設けることによって、Vベルトをプーリからスムーズに離間させ、伝達効率の向上を図ることが可能になる。
【0072】
(構成8)前記ベルトリリース用加工部の幅は、前記プーリの周方向で異なる構成1から7のいずれか一項に記載のVベルト式無断変速機。
この構成によれば、ベルトリリース用加工部の影響によるVベルトの共振を抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
12 パワーユニット
41 変速機
71 Vベルト式無断変速機
74 従動軸
75 Vベルト
80 駆動プーリ
81 固定シーブ
81a,82a 駆動プーリの円錐面
82 可動シーブ
90 従動プーリ
91 従動固定シーブ
91a,92a 従動プーリの円錐面
92 従動可動シーブ
130 溝(ベルトリリース用加工部)
130M 溝
140 凸部(ベルトリリース用加工部)
150 加工部(ベルトリリース用加工部)
P リリース点
D1 Vベルトが抜ける方向(リリース点の接線方向、Vベルトの接線方向)
D2 プーリの遠心方向
L1 クランク軸及び駆動プーリの軸線
L2 従動軸及び従動プーリの軸線