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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095196
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法装置、及び治療寝台
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61N5/10 T
A61N5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212302
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 辰雄
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC07
4C082AE02
4C082AE03
4C082AG26
4C082AG52
4C082AL03
4C082AL04
4C082AL06
4C082AR02
(57)【要約】
【課題】治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者の負担を低減できる中性子捕捉療法装置、及び治療寝台を提供する。
【解決手段】中性子捕捉療法装置1の治療寝台100は、患者50を載置し、載置された患者50の腕51を通す腕通し部62を有する載置部60と、腕通し部62を通った腕51を支持する支持部61と、を備える。このため、患者50が側臥位の状態で載置部60に載置されたら、患者50は下側の腕51を腕通し部62に通して、腕51を支持部61で支持することができる。そのため、患者50は、腕51を支持された楽な状態にて、側臥位の姿勢を維持することができる。ここで、支持部61は、載置部60との相対的な位置関係を維持するための維持構造70を有する。このため、載置部60を移動させるときには、維持構造70によって、患者50が支持部61で腕51を支持された状態にて移動することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子線を照射する患者を載置するための治療寝台と、
前記治療寝台に載置された前記患者に中性子線を照射する照射部と、を備え、
前記患者と前記治療寝台との位置関係が固定された状態にて、前記照射部に対して前記患者を配置し、前記照射部から前記中性子線を照射し、
前記治療寝台は、
前記患者を載置する載置部と、
腕を支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する、中性子捕捉療法装置。
【請求項2】
前記治療寝台は、前記中性子線の前記照射部に対して移動可能である、請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項3】
前記維持構造は、前記載置部に対する前記支持部の接続部によって構成される、請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項4】
前記維持構造は、前記載置部に対して前記支持部を独立して移動可能とする移動機構である、請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項5】
前記治療寝台は、点滴を挿した状態で前記患者を固定する、請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項6】
前記載置部は、該載置部に載置された前記患者の腕を通す腕通し部を有する、請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項7】
中性子線を照射する患者を載置するための治療寝台であって、
前記患者を載置する載置部と、
腕を支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する、治療寝台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子捕捉療法装置、及び治療寝台に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線を照射してがん細胞を死滅させる中性子捕捉療法として、ホウ素化合物を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が知られている。ホウ素中性子捕捉療法では、がん細胞に予め取り込ませておいたホウ素に中性子線を照射し、これにより生じる重荷電粒子の飛散によってがん細胞を選択的に破壊する。
【0003】
上述のような中性子捕捉療法装置として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。特許文献1に示される中性子捕捉療法装置は、治療寝台に患者を固定した状態で、中性子線の照射口の手前に配置することで治療を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-83351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、中性子捕捉療法装置で治療を行う時、側臥位の状態の患者を寝台に固定する場合がある。ここで、治療を行うときには、腕に点滴を挿す必要がある。そのため、患者の体で点滴が潰されないように、患者は側臥位で下側の腕を伸ばした状態を維持する必要がある。しかしながら、腕を伸ばした状態で側臥位の姿勢を維持することは、患者にとって負担になるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者の負担を低減し、確実に治療を行うことができる中性子捕捉療法装置、及び治療寝台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る中性子捕捉療法装置は、中性子線を照射する患者を載置するための治療寝台と、治療寝台に載置された患者に中性子線を照射する照射部と、を備え、患者と治療寝台との位置関係が固定された状態にて、照射部に対して患者を配置し、照射部から中性子線を照射し、治療寝台は、患者を載置する載置部と、腕を支持する支持部と、を備え、支持部は、載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する。
【0008】
本発明に係る中性子捕捉療法装置は、患者と治療寝台との位置関係が固定された状態にて、照射部に対して患者を配置し、照射部から中性子線を照射する。これにより、照射部は、治療中に患者の治療部位が動くことを抑制して、治療部位に対して中性子線を照射することができる。これに対し、治療寝台は、患者を載置する載置部と、腕を支持する支持部と、を備える。このため、患者が側臥位の状態で載置部に載置されたら、患者は下側の腕を支持部で支持することができる。そのため、患者は、腕を支持された楽な状態にて、側臥位の姿勢を維持することができる。ここで、支持部は、載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する。このため、載置部を移動させるときには、維持構造によって、患者が支持部で腕を支持された状態にて移動することができる。以上により、治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者の負担を低減できる。このように、患者の負担を低減する結果、治療中の治療部位が動くことを抑制して、正確に中性子線を照射することで、確実に治療を行うことができる。
【0009】
治療寝台は、中性子線の照射部に対して移動可能であってよい。この場合、治療寝台に患者を固定した状態で、患者を照射部の位置に移動させることができる。
【0010】
維持構造は、載置部に対する支持部の接続部によって構成されてよい。この場合、支持部が載置部に接続されるため、患者の腕と共に支持部が載置部と同期して移動することができる。
【0011】
維持構造は、載置部に対して支持部を独立して移動可能とする移動機構であってよい。この場合、載置部が移動するときは、当該載置部に追従させるように、患者の腕と共に支持部を移動させることができる。
【0012】
治療寝台は、点滴を挿した状態で患者を固定してよい。この場合、腕を支持部で支持することにより、点滴が患者の体で潰されることを抑制しながら、患者が楽な姿勢を維持することができる。
【0013】
載置部は、載置された患者の腕を通す腕通し部を有してもよい。この場合、中性子線の照射時に側臥位となる患者が、載置部よって胴体を支持されるとともに支持部によって下側の腕を支持される状態に容易に至ることができる。また、中性子線の照射時において、側臥位の患者は、より楽な姿勢を維持することができる。
【0014】
本発明に係る治療寝台は、中性子線を照射する患者を載置するための治療寝台であって、患者を載置しする載置部と、腕を支持する支持部と、を備え、支持部は、載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する。
【0015】
本発明に係る治療寝台は、患者を載置する載置部と、腕を支持する支持部と、を備える。このため、患者が側臥位の状態で載置部に載置されたら、患者は下側の腕を支持部で支持することができる。そのため、患者は、腕を支持された楽な状態にて、側臥位の姿勢を維持することができる。ここで、支持部は、載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する。このため、載置部を移動させるときには、維持構造によって、患者が支持部で腕を支持された状態にて移動することができる。以上により、治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者の負担を低減し、それにより確実に治療を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者の負担を低減し、確実に治療を行うことができる中性子捕捉療法装置、及び治療寝台を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る中性子捕捉療法装置を示す概略図である。
図2図2(a)は、治療寝台の概略平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すIIb-IIb線に沿った概略断面図である。
図3】患者を載置した状態の治療寝台を示す概略平面図である。
図4】患者を載置した状態の治療寝台を示す概略断面図である。
図5】変形例に係る治療寝台を示す概略断面図である。
図6】変形例に係る中性子捕捉療法装置を含む中性子捕捉療法システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る中性子捕捉療法装置1を示す概略図である。中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1は、治療部102と、治療寝台100と、移動機構110と、を備える。
【0020】
治療部102は、患者50に中性子線Nを照射する照射ポート106(照射部)を有する。治療部102は、当該照射ポート106や移動機構110を配置する構造物などによって構成される。治療部102は治療室101に設けられる。照射ポート106は、治療室101の垂直な壁部に設けられる。照射ポート106からは水平方向に中性子線Nが出射する。照射ポート106は、後述のコリメータ20と、照射部周辺壁115と、を備える。移動機構110は、治療部102において患者50載置した治療寝台100を移動可能な機構である。移動機構110は、治療室101内において、照射ポート106の手前の位置に設けられる。
【0021】
治療部102では、例えばホウ素(10B)が投与された患者50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
【0022】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2を備えている。加速器2は、粒子を加速して、粒子線Rを出射する。例えば、加速器2として、サイクロトロン、線形加速器などが採用されてよい。
【0023】
加速器2から出射された粒子線Rは、内部が真空に保たれ、内部をビームが通過可能なビームダクトと称される輸送路9内を通過して、ターゲット配置部30へ輸送される。ターゲット配置部30は、ターゲット10を配置する部分であり、ターゲット10を照射時の姿勢となるように保持する機構を有する。ターゲット配置部30は、輸送路9の端部(出射口)と対向する位置に、ターゲット10を配置する。加速器2から出射された粒子線Rは、輸送路9を通り、輸送路9の端部に配置されたターゲット10へ向かって進行する。この輸送路9に沿って複数の電磁石4(四極電磁石など)、及び走査電磁石6が設けられている。複数の電磁石4は、例えば電磁石を用いて粒子線Rのビーム軸調整などを行うものである。
【0024】
走査電磁石6は、粒子線Rを走査し、ターゲット10に対する粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、粒子線Rのターゲット10に対する照射位置を制御する。
【0025】
中性子捕捉療法装置1は、粒子線Rをターゲット10に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者50に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット10、遮蔽体8、減速材39、コリメータ20を備えている。
【0026】
ターゲット10は、粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ターゲット10は、粒子線Rが照射されることで中性子線Nを発生させる材質によって形成される固体形状の部材である。具体的に、ターゲット10は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状の固体形状をなしている。なお、ターゲット10は、円板状に限らず、他の形状であってもよい。
【0027】
減速材39は、ターゲット10で生成された中性子線Nを減速させる(中性子線Nのエネルギーを低下させる)ものである。減速材39は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる層39Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる層39Bと、からなる積層構造を有していてよい。
【0028】
遮蔽体8は、発生させた中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体8は、減速材39を囲むように設けられている。遮蔽体8の上部及び下部は、減速材39より粒子線Rの上流側に延在している。
【0029】
コリメータ20は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する照射口20aを有する。コリメータ20は、例えば中央に照射口20aを有するブロック状の部材である。コリメータ20は、中性子線Nを治療室101内へ照射する箇所の壁部である照射部周辺壁115に取り付けられる。
【0030】
移動機構110は、患者50を載置した治療寝台100を6軸方向へ移動させるいわゆる6軸機構である。移動機構110は、治療寝台100の水平移動、及び回転移動を可能とする。本実施形態では、移動機構110は、治療寝台100に載置された状態の患者50を支持し、当該治療寝台100ごと患者50を移動させる。
【0031】
次に、図2図4を参照して、治療寝台100の詳細な構成について説明する。図2(a)は、治療寝台100の概略平面図である。図2(b)は、図2(a)に示すIIb-IIb線に沿った概略断面図である。図3は、患者50を載置した状態の治療寝台100を示す概略平面図である。図3は、患者50を載置した状態の治療寝台100を示す概略断面図である。
【0032】
図2に示すように、治療寝台100は、載置部60と、支持部61と、を備える。載置部60は、患者50を載置するための部材である。載置部60は、長方形板状の部材である。載置部60は、長辺側の縁部60a,60bと、短辺側の縁部60c,60dと、を有する。載置部60は、患者50を載置する載置面となる上面60eを有する(図3参照)。
【0033】
図2(a)に示すように、載置部60は、載置された患者50の腕51を通す腕通し部62を有する(図4も参照)。腕通し部62は、載置部60を上下方向に貫通する切欠、または貫通孔によって構成される。本実施形態では、腕通し部62は、長辺側の縁部60aから長辺側の縁部60b側へ延びるような切欠部によって構成される。腕通し部62は、短辺側の縁部60c寄りの位置に形成される。図3及び図4に示すように、側臥位で載置部60の上面60e上に載置された患者50は、載置部60側の腕51を腕通し部62に通して下方へ延ばすことができる。
【0034】
図2(b)に示すように、支持部61は、腕通し部62を通った腕51を支持する(図4参照)。支持部61は、腕通し部62から下方へ離間した位置にて、載置部60と平行をなす底壁部63を有する。また、支持部61は、底壁部63の縁部から上方へ延びる側壁部64を有する。図4に示すように、患者50は、上腕51aを腕通し部62から下方へ延ばし、肘を曲げて前腕51bを底壁部63上に載置する。また、底壁部63上に載置された前腕51bは、側壁部64で周囲を囲まれることによって、保護される。
【0035】
支持部61は、載置部60との相対的な位置関係を維持するための維持構造70を有する。ここで、相対的な位置関係を維持することとは、載置部60に対する支持部61の相対的な位置が完全に一定となる状態のみならず、腕51を支持する支持部61としての機能を維持できるような位置関係を保つことができている範囲で、載置部60に対する支持部61の相対的な位置に多少の変化が生じることを許容する。また、維持構造70は、載置部60の動きに支持部61の動きが完全に同期していることのみならず、両者の動きに多少のずれが生じることを許容する。
【0036】
本実施形態では、維持構造70は、載置部60に対する支持部61の接続部71によって構成される。接続部71は、側壁部64の上端部と載置部60の下面60fとを接続する。これにより、支持部61は、載置部60に固定される。そのため、載置部60が移動したら、当該動作に同期して支持部61も移動する。また、載置部60に対する支持部61の相対的な位置は完全に一定となる。
【0037】
次に、図3及び図4を採用して、治療寝台100を用いて患者50を治療する時の手順について説明する。図3及び図4に示すように、まず、治療寝台100の載置部60の上面60eに患者50を側臥位の状態で載置する。このとき、患者50は、下側の腕51を腕通し部62に通して、載置部60の下方へ伸ばす。また、肘を曲げて、前腕51bを支持部61の底壁部63上に載置する。このように、支持部61で支持された前腕51bに対して点滴73を挿す。点滴73のチューブ74は、腕通し部62から引き出す。治療寝台100は、点滴73を挿した状態で患者50を固定する。当該固定には、図示されない固定具などを用いればよい。
【0038】
移動機構110(図1参照)は、患者50を固定した状態の治療寝台100を移動させて、患者50の治療箇所(ここでは頭部)を照射ポート106のコリメータ20の手前に配置する。そして、照射ポート106から患者50の治療箇所へ向けて中性子線を照射する。
【0039】
次に、本実施形態に係る治療寝台100、及び中性子捕捉療法装置1の作用・効果について説明する。
【0040】
本実施形態に係る中性子捕捉療法装置1は、患者50と治療寝台100との位置関係が固定された状態にて、照射ポート106に対して患者50を配置し、照射ポート106から中性子線Bを照射する。これにより、照射ポート106は、治療中に患者50の治療部位(腫瘍)が動くことを抑制して、治療部位に対して中性子線Bを照射することができる。これに対し、治療寝台100は、患者50を載置し、載置された患者50の腕51を通す腕通し部62を有する載置部60と、腕通し部62を通った腕51を支持する支持部61と、を備える。このため、患者50が側臥位の状態で載置部60に載置されたら、患者50は下側の腕51を腕通し部62に通して、腕51を支持部61で支持することができる。そのため、患者50は、腕51を支持された楽な状態にて、側臥位の姿勢を維持することができる。ここで、支持部61は、載置部60との相対的な位置関係を維持するための維持構造70を有する。このため、載置部60を移動させるときには、維持構造70によって、患者50が支持部61で腕51を支持された状態にて移動することができる。以上により、治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者50の負担を低減できる。このように、患者50の負担を低減する結果、治療中の治療部位が動くことを抑制して、正確に中性子線Bを照射することで、確実に治療を行うことができる。
【0041】
治療寝台100は、中性子線の照射ポート106に対して移動可能であってよい。この場合、治療寝台100に患者50を固定した状態で、患者50を照射ポート106の位置に移動させることができる。
【0042】
維持構造70は、載置部60に対する支持部61の接続部71によって構成されてよい。この場合、支持部61が載置部60に接続されるため、患者50の腕51と共に支持部61が載置部60と同期して移動することができる。
【0043】
支持部61は、載置部60に対して独立して移動可能であってよい。この場合、載置部60が移動するときは、当該載置部60に追従させるように、患者50の腕51と共に支持部61を移動させることができる。
【0044】
治療寝台100は、点滴を挿した状態で患者50を固定してよい。この場合、腕51を支持部61で支持することにより、点滴73が患者50の体で潰されることを抑制しながら、患者50が楽な姿勢を維持することができる。
【0045】
本実施形態に係る治療寝台100は、患者50を載置し、載置された患者50の腕51を通す腕通し部62を有する載置部60と、腕通し部62を通った腕51を支持する支持部61と、を備える。このため、患者50が側臥位の状態で載置部60に載置されたら、患者50は下側の腕51を腕通し部62に通して、腕51を支持部61で支持することができる。そのため、患者50は、腕51を支持された楽な状態にて、側臥位の姿勢を維持することができる。ここで、支持部61は、載置部60との相対的な位置関係を維持するための維持構造70を有する。このため、載置部60を移動させるときには、維持構造70によって、患者50が支持部61で腕51を支持された状態にて移動することができる。以上により、治療中に長時間の側臥位の姿勢をとる際の患者50の負担を低減できる。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、上述の実施形態では、支持部61は、載置部60に接続されていた。これに代えて、維持構造70は、載置部60に対して支持部61を独立して移動可能とする移動機構であってよい。この場合、載置部60が移動するときは、当該載置部60に追従させるように、患者50の腕51と共に支持部61を移動させることができる。具体的には、図5に示すように、側壁部64の上端部は載置部60とは接続されておらず、支持部61は、移動機構75に設けられてよい。移動機構75は、例えば台車などによって構成される。この場合、載置部60が移動したときには、作業者の手動により、または自動的に移動機構75を移動させることで、腕51と共に支持部61を載置部60に追従させることができる。
【0048】
また、上述の実施形態の中性子捕捉療法装置において、寝台の載置部が腕通し部を有しているが、本発明はこれに限られるものではない。本発明の中性子捕捉療法装置は、寝台の載置部との相対的な位置関係を維持する維持構造を有する支持部を有してしていればよい。例えば、治療室とは異なる別室で、中性子線照射中の患者の姿勢を維持させるための寝台への固定作業が行われ、固定された患者ごと寝台を治療室101へ移動させ、照射ポート106に対して患者を中性子線照射時における所定位置に配置される。その後、例えば数十分~数時間、患者への中性子線の照射が行われる。このように、治療前の準備段階から中性子線の照射までの長時間にわたり、載置部と載置部との相対的な位置関係を維持する維持構造を有する支持部とで患者を支持することにより、患者の負担を低減する結果、治療中の治療部位が動くことを抑制して、正確に中性子線を照射することで、確実に治療を行うことができる。
【0049】
図6は、他の実施形態に係る中性子捕捉療法装置を含む中性子捕捉療法システムを示す概略図である。中性子捕捉療法システム201(中性子捕捉療法装置)は、治療寝台202に載置された患者を収容し当該患者に対する中性子線の照射が行われる治療室203と、荷電粒子線を発生させる加速器205および加速器205から出射された荷電粒子線を後述の照射ポート206へ輸送する輸送ライン207が収納される加速器室209と、輸送ライン207から荷電粒子線を受け患者に照射するための中性子線を発生させる照射ポート206と、を備えている。加速器205は、例えばサイクロトロンであり、荷電粒子(例えば陽子)を加速して、荷電粒子線P(例えば陽子線)を出射する。加速器205は、例えばビーム半径40mm、60kw(=30MeV×2mA)の荷電粒子線を出射する能力を有する。なお、加速器205はサイクロトロンに限らず、シンクロトロン、ライナック、静電加速器等の他の加速器でもよい。治療室203および加速器室209は遮蔽壁Wに囲まれた閉鎖空間であり、遮蔽壁Wは放射線を遮蔽するためのコンクリート製の壁である。照射ポート206は、図1を用いて説明された、コリメータ20と、照射部周辺壁115とに対応する構造物を備える(図6において図示されない)。照射ポート206は、治療室203と加速器室209とを仕切る遮蔽壁Wに埋め込まれるように配置されている。なお、照射ポート206は、遮蔽壁Wに埋め込まれずに、治療室203内に配置されてもよい。さらに、治療室203と加速器室209とを遮蔽壁Wにより隔てずに、一つの部屋としてもよい。
【0050】
さらに、中性子捕捉療法システム201は、治療室203に対して隣接する準備室210を備えている。準備室210は、遮蔽壁Wによって治療室203から隔離されている。治療室203と準備室210との間を通行可能とする連絡室213が、遮蔽壁Wを貫通して設けられている。そして、連絡室213と治療室203との境界、および連絡室213と準備室210との境界には、開閉可能な遮蔽扉215が設けられている。治療寝台202は、連絡室213を通じて治療室203と準備室210との間を移動可能である。準備室210では、治療に先立つ準備作業が行われる。具体的に、準備室210は、治療室203において患者に中性子線を照射するために必要な作業を実施するための部屋である。準備室210では、例えば、治療寝台202への患者の拘束や、コリメータ20と患者との位置合わせの模擬が実施される。従って、準備室210は、治療寝台202が配置可能であり、治療寝台202の周囲で作業者が容易に準備作業をすることができる程度の大きさを有している。準備室210における患者の治療寝台202への拘束(固定)が、治療室203において照射ポート206から患者へ中性子線を照射する最中における姿勢と同じ姿勢となるように行われることで、上記位置合わせの模擬が実施されてもよい。
【0051】
また、準備室210において治療寝台202へ拘束された(固定された)状態の患者が治療寝台202へ拘束された状態が維持されたまま、治療寝台202が連絡室213を通って治療室203まで移動される。治療室203まで移動された治療寝台202は、照射ポート206の側に配置され、その後、照射ポート206から患者に向けて中性線の照射が行われる。準備室で固定された患者が照射室の照射部まで固定された状態を維持して搬送され、中性子線の照射が行われる。このように、治療前の準備段階から中性子線の照射までの長時間にわたり、載置部と、載置部との相対的な位置関係を維持する維持構造を有する支持部とで患者を支持することにより、患者の負担を低減する結果、治療中の治療部位が動くことを抑制して、正確に中性子線を照射することで、確実に治療を行うことができる。
【0052】
なお、図6の実施形態において、患者の治療寝台202への固定は治療室3とは異なる別室(準備室210)で行われたが、治療室3内の照射ポート206の側から離れた他の場所で行われてもよい。また、位置を固定された状態を確認するために患者を撮影する図示されない画像取得装置(CT装置、等)と、照射ポートとの間を、患者が固定された状態で寝台を移動させることで患者が搬送されてもよい。画像取得装置は、治療室203に設けられてもよいし、準備室210など、治療室203とは異なる部屋に設けられてもよい。また、図6の実施形態においてコリメータは、照射ポート206に設けられているが、照射ポート206に設けられる代わりに、治療寝台202に固定され、治療寝台202とともに準備室210と治療室203との間を移動可能であってもよい。
【0053】
[形態1]
中性子線を照射する患者を載置するための治療寝台と、
前記治療寝台に載置された前記患者に中性子線を照射する照射部と、を備え、
前記患者と前記治療寝台との位置関係が固定された状態にて、前記照射部に対して前記患者を配置し、前記照射部から前記中性子線を照射し、
前記治療寝台は、
前記患者を載置する載置部と、
腕を支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する、中性子捕捉療法装置。
[形態2]
前記治療寝台は、前記中性子線の前記照射部に対して移動可能である、形態1に記載の中性子捕捉療法装置。
[形態3]
前記維持構造は、前記載置部に対する前記支持部の接続部によって構成される、形態1又は2に記載の中性子捕捉療法装置。
[形態4]
前記維持構造は、前記載置部に対して前記支持部を独立して移動可能とする移動機構である、形態1~3の何れか一項に記載の中性子捕捉療法装置。
[形態5]
前記治療寝台は、点滴を挿した状態で前記患者を固定する、形態1~4の何れか一項に記載の中性子捕捉療法装置。
[形態6]
前記載置部は、該載置部に載置された前記患者の腕を通す腕通し部を有する、形態1~5の何れか一項に記載の中性子捕捉療法装置。
[形態7]
中性子線を照射する患者を載置するための治療寝台であって、
前記患者を載置する載置部と、
腕を支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記載置部との相対的な位置関係を維持するための維持構造を有する、治療寝台。
【符号の説明】
【0054】
1…中性子捕捉療法装置、50…患者、51…腕、60…載置部、61…支持部、100…治療寝台、106…照射ポート(照射部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6