(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095202
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/14 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
C08F220/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212310
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】寳來 健介
(72)【発明者】
【氏名】井本 慎也
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL03P
4J100AQ01Q
4J100BC53Q
4J100CA04
4J100FA03
4J100FA20
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】
生産性に優れた、α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】
α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法であって、α-メチレンラクトン単量体と、分散媒と、第一の界面活性剤と、を含む混合物を撹拌して懸濁液を得る懸濁液製造工程と、懸濁液を加熱し、重合体を得る重合工程と、を有し、懸濁液製造工程と重合工程との間に、第二の界面活性剤を懸濁液に添加する、重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法であって、
α-メチレンラクトン単量体と、分散媒と、第一の界面活性剤と、を含む混合物を撹拌して懸濁液を得る懸濁液製造工程と、
前記懸濁液を加熱し、前記重合体を得る重合工程と、を有し、
前記懸濁液製造工程と前記重合工程との間に、第二の界面活性剤を前記懸濁液に添加する、重合体の製造方法。
【請求項2】
前記第一の界面活性剤及び/又は前記第二の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第一の界面活性剤と前記第二の界面活性とは同じ界面活性剤である、請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
前記懸濁液製造工程における撹拌周速が4m/s以上15m/s以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体(樹脂)は、透明性、耐熱性、光学等方性に優れ、光学部材への適用が期待されている。当該樹脂は、例えば、特許文献1に示されるように懸濁重合により得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
懸濁重合後に得られる重合体粒子は、通常、濾過や遠心分離等して回収される。重合体粒子の粒子径が過度に小さくなると、回収率が低下したり回収時間が伸びたりして、生産性が低下する。
【0005】
本開示は、生産性に優れた、α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の[1]~[4]に記載の重合体の製造方法を提供する。
[1] α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法であって、α-メチレンラクトン単量体と、分散媒と、第一の界面活性剤と、を含む混合物を撹拌して懸濁液を得る懸濁液製造工程と、上記懸濁液を加熱し、上記重合体を得る重合工程と、を有し、上記懸濁液製造工程と上記重合工程との間に、第二の界面活性剤を上記懸濁液に添加する、重合体の製造方法。
[2] 上記第一の界面活性剤及び/又は上記第二の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤を含む、[1]に記載の重合体の製造方法。
[3] 上記第一の界面活性剤と上記第二の界面活性とは同じ界面活性剤である、[1]又は[2]に記載の重合体の製造方法。
[4] 上記懸濁液製造工程における撹拌周速が4m/s以上15m/s以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、生産性に優れた、α-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とはメタクリルとアクリルとの両方を包含する用語として用いる。樹脂と重合体とは同義の用語として用いる。数値範囲をX~Yと示すときは、X以上Y以下を意味する。例えば、「5~60質量%」は5質量%以上60質量%以下を意味する。
【0009】
[重合体の製造方法]
本実施形態のα-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法は、α-メチレンラクトン単量体と、分散媒と、第一の界面活性剤と、を含む混合物を撹拌して懸濁液を得る懸濁液製造工程と、当該懸濁液を加熱し、重合体を得る重合工程と、を有し、懸濁液製造工程と重合工程との間に、第二の界面活性剤を上記懸濁液に添加する工程を含む。
【0010】
<懸濁液製造工程>
本実施形態の懸濁液は、α-メチレンラクトン単量体と、分散媒と、第一の界面活性剤と、を含む混合物を撹拌して得られる。
【0011】
(単量体)
α-メチレンラクトン単量体とは、ラクトン環のα位の炭素にメチレン基が結合した化合物の総称である。ラクトンの環員数は、特に限定されないが、化合物としての安定性等の観点から、好ましくは5員環(γ-ラクトン)又は6員環(δ-ラクトン)である。
【0012】
5員環又は6員環であるα-メチレンラクトン単量体の代表例は、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-δ-バレロラクトンである。
【0013】
α-メチレンラクトン単量体は、例えば、以下の式(1)に示すような化合物が好ましい。
【0014】
【0015】
式(1)におけるR1~R4は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0016】
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキル基である。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。アルキル基は直鎖でも分岐を有していてもよく、環状でもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等である。
【0018】
R1~R4は、好ましくは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは全て水素原子である。
【0019】
懸濁液は、α-メチレンラクトン単量体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0020】
本実施形態の懸濁液は、α-メチレンラクトン単量体に加えて、任意のその他の単量体を含んでいてもよい。任意のその他の単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等である。懸濁液は任意のその他の単量体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0021】
任意のその他の単量体のなかでは、本実施形態の重合体を用いて得られるフィルムの耐熱性、透明性等をより向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルが更に好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより更に好ましい。懸濁液は、(メタ)アクリル酸アルキルを1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0022】
なお、(メタ)アクリル酸アルキルにおける炭素数1~6のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等である。
【0023】
懸濁液に含まれるα-メチレンラクトン単量体の含有量は、耐熱性等をより向上させる観点から、懸濁液に含まれる単量体全量において、5~60質量%が好ましく、7.5~50質量%がより好ましく、10~45質量%が更に好ましい。
【0024】
懸濁液に含まれる炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルの含有量は、懸濁液における単量体全量において、40~95質量%が好ましく、45~92.5質量%がより好ましく、50~90質量%が更に好ましい。
【0025】
懸濁液に含まれるα-メチレンラクトン単量体及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル以外の単量体の含有量は、懸濁液における単量体全量において、好ましくは0~30質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましく、0~20質量%が更に好ましい。
【0026】
(分散媒)
分散媒は、水溶媒であることが好ましい。水溶媒は非水溶媒(特に水溶性有機溶媒)を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒等である。
【0027】
懸濁液に含まれる分散媒の含有量は、単量体全量100質量部に対して、例えば50~300質量部、又は100~200質量部である。
【0028】
(第一の界面活性剤)
第一の界面活性剤は、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアリルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩のようなポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアルキルアンモニウムクロリドのような4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤等である。懸濁液は第一の界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。第一の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、特に、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩等のポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩を含むことが好ましい。
【0029】
懸濁液における第一の界面活性剤の含有量は、単量体全量100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.05~10質量部である。
【0030】
α-メチレンラクトン単量体、第一の界面活性剤等を分散媒中に分散させるときは、パドル翼等で撹拌して分散させてもよく、高速せん断タービン型分散機、高圧ジェットホモジナイザー、超音波式乳化分散機、媒体撹拌分散機、強制間隙通過型分散機等の乳化分散装置を用いて分散させてもよい。
【0031】
懸濁液製造工程における撹拌周速は、重合体の生産性を上げる観点から、好ましくは4m/s以上15m/s以下であり、より好ましくは6m/s以上13m/s以下であり、更に好ましくは7m/s以上12m/s以下である。撹拌周速は、上記範囲内において重合体の製造の規模によって適宜調整すればよく、撹拌に要する時間も重合体の製造の規模によって適宜調整すればよい。
【0032】
本実施形態の懸濁液製造工程では、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤等の添加剤を添加してもよい。
【0033】
重合開始剤は、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物等である。重合開始剤の添加量は、必要に応じて適宜調整すればよいが、単量体100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましく、0.1~2質量部が更に好ましい。
【0034】
連鎖移動剤は、例えば、n-ドデシルメルカプタン、β-メルカプトプロピオン酸等の単官能チオール化合物;両末端メルカプト変性ポリシロキサン等の2官能チオール化合物;側鎖がメルカプト変性された側鎖多官能メルカプト変性ポリシロキサン等である。連鎖移動剤の添加量は、必要に応じて適宜調整すればよいが、単量体100質量部に対して、0.001~1質量部が好ましく、0.01~0.3質量部がより好ましい。
【0035】
分散剤は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子系分散安定剤;アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等の無機分散剤等である。分散剤の添加量は、必要に応じて適宜調整すればよいが、単量体100質量部に対して、0.1~3質量部が好ましく、0.2~1質量部がより好ましい。
【0036】
重合開始剤、連鎖移動剤及び分散剤以外の添加剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)等の重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤等の位相差調整剤;親水性高分子、導電性フィラー等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;等が挙げられる。これらの添加剤の含有割合は、必要に応じて適宜調整すればよいが、単量体100質量部に対して、0~5質量部であってもよく、0~3質量部であってもよい。
【0037】
<重合工程>
上記懸濁液を加熱すると、重合反応が開始される。
【0038】
懸濁液の加熱方法としては、重合体の製造の規模によって適宜選択すればよく、例えば、懸濁液が50~90℃になるまで加熱し、一度温度を一定に保ち、その後、重合体の反応の進行に応じて、懸濁液が70~100℃になるまで加熱をする方法がある。また、加熱温度及び加熱時間は、単量体の種類、重合体の製造の規模等によって適宜調整すればよい。
【0039】
重合工程では、懸濁液を撹拌しながら加熱してもよい。重合工程における懸濁液の撹拌周速は、特に制限されないが、懸濁液製造工程における撹拌周速より遅いことが好ましい。重合工程における撹拌周速は、重合反応を促進する観点から、例えば、0.1m/s以上3m/s以下、又は1.0m/s以上2.0m/s以下等である。
【0040】
<第二の界面活性剤を懸濁液に添加する工程>
本実施形態の重合体の製造方法は、上記懸濁液製造工程と上記重合工程との間に、第二の界面活性剤を上記懸濁液に添加する工程を含む。なお、懸濁液製造工程と重合工程との間とは、懸濁液製造工程における撹拌の停止後、重合工程における加熱の開始前を意味する。
【0041】
(第二の界面活性剤)
第二の界面活性剤の具体例は、第一の界面活性剤の具体例と同じである。懸濁液に対して、第二の界面活性剤を1種のみ添加してもよく、2種以上を添加してもよい。また、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤とは、それぞれ同種の界面活性剤であってもよく、それぞれ別種の界面活性剤であってもよい。特に、製造の簡便さの観点から、第一の界面活性剤と第二の界面活性とは同じ界面活性剤であってもよい。第二の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、特に、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩等のポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩を含むことが好ましい。
【0042】
第二の界面活性剤の添加量は、懸濁液中の第一の界面活性剤の含有量を考慮して適宜調整すればよいが、単量体全量100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましい。また、第二の界面活性剤の添加量は、第一の界面活性剤全量100質量部に対して、10~1000質量部が好ましく、20~800質量部がより好ましい。
【0043】
第二の界面活性剤は、上記分散媒に溶解させて添加してもよい。分散媒の量は、第二の界面活性剤の種類及びその添加量によって適宜調整すればよい。
【0044】
<固液分離工程>
重合工程後に、固液分離することにより、重合体を回収できる。固液分離の方法は、例えば、濾過、遠心分離、それらの組み合わせから最適な方法を選択できる。回収した重合体は、必要に応じて適宜乾燥してもよい。乾燥温度は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、また、好ましくは90℃以下である。乾燥は、重合体中の水分量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下になるまで実施できる。乾燥時間は、好ましくは10時間以上、より好ましくは12時間以上であり、また、好ましくは20時間以下、より好ましくは18時間以下である。
【0045】
重合体中の水分量は、水分測定装置を用いて測定できる。水分測定装置による測定方法は、例えば、乾燥重合体約0.5gをメタノール液中で分散し、該重合体によって持ち込まれたメタノール液中の水分量をカールフィッシャー容量滴定装置(平沼産業株式会社製の自動水分測定装置「AQV-300」)を用いて測定する方法がある。滴定剤にはアクアミクロンSS-Z 3mg(三菱化学株式会社製)を使用し、滴定剤の力価検定は脱イオン水を用いることができる。
【0046】
上記の方法によって得られた重合体の平均粒子径は、重合後の固液分離の作業を容易にする観点から、好ましくは1.1μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であり、更に好ましくは2.0μm以上である。また、均一な重合体を得る観点から、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。
【0047】
以上説明したα-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法によれば、懸濁重合に用いる界面活性剤の一部を、懸濁液の製造後に、懸濁液に添加する。これにより、懸濁重合の重合工程によって得られる重合体の粒径を好適化できる。その結果、固液分離工程における効率が向上する。
【0048】
従来は、懸濁重合に用いる界面活性剤の全量を、懸濁液を製造するための混合物に添加している。これにより、懸濁重合の重合工程によって得られる重合体の粒径は過度に小さくなるおそれがある。また粒径を考慮して界面活性剤の使用量を減らすと、懸濁液における単量体の分散状態が不十分となるおそれがある。
【0049】
これに対して、本開示に係るα-メチレンラクトン由来の構造単位を有する重合体の製造方法によれば、従来に比べて、懸濁液を製造するための混合物における界面活性剤の含有量が低減されるので、懸濁重合の重合工程によって得られる重合体の粒径は好適化される。また、製造された懸濁液に界面活性剤を添加するので、懸濁液における単量体の分散状態が良好に維持される。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明するが、本開示は実施例によって限定されるものではない。また、各種物性は、次のようにして測定・評価した。
【0051】
[重合体の平均粒子径]
重合体の平均粒子径は、重合反応が完了した後の懸濁液に超音波を照射して重合体を分散させた後、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製の「コールターマルチサイザーIII型」)を使用して30000個の粒子の粒子径を測定し、体積当たりの平均粒子径を算出して求めた。
【0052】
実施例で用いた材料について説明する。メタクリル酸メチル(MMA)、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)は東京化成工業社製の市販品である。パーロイルL(ジラウロイルパーオキサイド、LPO)は日油社製の市販品である。ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名「ハイテノール(登録商標)NF-08」)は第一工業製薬社製の市販品である。t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(商品名「ルペロックス(登録商標)575(R575)」)はアルケマ吉富社製の市販品である。ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル(商品名「ニューコール(登録商標)1020」)は日本乳化剤社製の市販品である。
【0053】
(実施例1)
撹拌装置(新東化学社製スリーワンモータ、アンカー型撹拌翼)、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器を用意した。容器に第一の界面活性剤としてハイテノール(登録商標)NF-08を0.25質量部溶解した脱イオン水150質量部を仕込んだ。そこへあらかじめ調製しておいたMMAを75質量部、MLを25質量部、LPOを0.5質量部、nDM(n-ドデシルメルカプタン)を0.01質量部含む液を仕込んだ。そして、反応器内の混合物を、T.K.ホモミクサーMARK II model2.5(プライミクス社製)を用い、撹拌周速12m/sで所定時間撹拌して均一な懸濁液とした。
【0054】
懸濁液に第二の界面活性剤としてハイテノールNF-08を1.75質量部溶解した脱イオン水を250質量部追加してから反応器に移送した。移送後、撹拌しながら窒素ガスを吹き込み、懸濁液が70℃になるまで加熱した。内温70℃になった時点を基準時とし、そのまま70℃で反応器を保温して自己発熱により内温がピーク温度に到達した後に75℃に保ち、さらに基準時から2時間後に懸濁液を90℃まで昇温して4時間撹拌することで重合反応を完了させた。その後、反応液(懸濁液)を冷却し、卓上遠心機H-36α(コクサン社製)により4000rpmの回転数で10分間遠心分離を行い、固液分離して重合体を取得し、さらに熱風乾燥機を用いて乾燥して重合体(粉体)を得た。
【0055】
(実施例2~3、比較例1)
界面活性剤の投入量と、撹拌速度を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様の方法により、重合体(粉体)を得た。
【0056】
(実施例4)
撹拌装置(新東化学社製スリーワンモータ、アンカー型撹拌翼)、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器を用意した。容器に第一の界面活性剤としてニューコール(登録商標)1020を0.15質量部と、ラウリル硫酸ナトリウムを0.1質量部溶解した脱イオン水150質量部を仕込んだ。そこへあらかじめ調製しておいた、MMAを75質量部、MLを25質量部、LPOを0.5質量部、nDMを0.01質量部含む液を仕込んだ。そして、反応器内の混合物を、T.K.ホモミクサーMARK II model2.5(プライミクス社製)を用い、撹拌周速7.5m/sで所定時間撹拌して均一な懸濁液とした。
【0057】
懸濁液に第二の界面活性剤としてニューコール1020を0.15質量部と、ラウリル硫酸ナトリウムを0.1質量部溶解した脱イオン水を250質量部追加してから反応器に移送した。移送後、撹拌しながら窒素ガスを吹き込み、懸濁液が70℃になるまで加熱した。内温70℃になった時点を基準時とし、そのまま70℃で反応器を保温して自己発熱により内温がピーク温度に到達した後に75℃に保ち、さらに基準時から2時間後に懸濁液を90℃まで昇温して4時間撹拌することで重合反応を完了させた。その後、反応液(懸濁液)を冷却し、卓上遠心機H-36α(コクサン社製)により4000rpmの回転数で10分間遠心分離を行い、固液分離して重合体を取得し、さらに熱風乾燥機を用いて乾燥して重合体(粉体)を得た。
【0058】
得られた重合体の平均粒子径及び回収率について表1に記載した。なお、重合体の回収率は、理論的に得られる重合体の質量を100質量%とするものである。
【0059】