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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095205
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/56 20230101AFI20240703BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C02F1/56 K
B01D21/01 107A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212315
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】小室 雄介
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB12
4D015BB14
4D015CA20
4D015DA04
4D015DA06
4D015DA13
4D015DA16
4D015DA17
4D015DB02
4D015DB12
4D015DB23
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA32
4D015EA33
4D015EA37
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の捕集効率を高め、排水処理効率を向上させることが可能となる排水処理方法及び排水処理装置を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、ガラス繊維を含有する排水を処理する排水処理において、カチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加ステップと、アニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加ステップと、を備え、第1の凝集剤添加ステップの後、第2の凝集剤添加ステップを行う排水処理方法及び排水処理装置を提供する。
この発明によれば、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の十分な捕集を可能とし、排水処理効率を高めることが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を含有する排水を処理する排水処理方法において、
前記排水にカチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加ステップと、
前記排水にアニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加ステップと、を備え、
前記第1の凝集剤添加ステップの後、前記第2の凝集剤添加ステップを行うことを特徴とする、排水処理方法。
【請求項2】
前記カチオン系高分子凝集剤が、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記第2の凝集剤添加ステップの前段に、無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加ステップを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
ガラス繊維を含有する排水を処理する排水処理装置において、
前記排水にカチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段と、
前記第1の凝集剤添加手段の後段で、前記排水にアニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加手段と、を備えることを特徴とする、排水処理装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維を含有する排水を処理する排水処理方法及び排水処理装置に関するものである。詳しくは、本発明は、ガラス繊維を含有する排水に対する凝集分離処理を行う排水処理方法及び排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工場等から発生する排水の処理において、懸濁物質(以下「SS」という。)のような固体分を含む排水の処理方法として、凝集剤などの薬剤を添加してSSを含む凝集物(フロック)を生成し、生成した凝集物の固液分離を行う凝集分離処理が知られている。
また、このとき使用する薬剤(特に凝集剤)については、SSの化学的性質や性状に応じた選択が行われることが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、アスベスト含有繊維強化セメント板の表面に付着した汚泥を水で洗浄除去する際に発生する、アスベスト繊維及び汚泥を含有する洗浄水に対し、無機凝集剤を混合し、pH調整を行った後に、更にアニオン系高分子凝集剤を添加する処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-259974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、繊維状物質(アスベスト繊維)を含む排水に対し、無機凝集剤と高分子凝集剤(アニオン系高分子凝集剤)の組み合わせによる処理を行うことが知られており、他の繊維状物質(パルプ)を含む排水に対しても同様に、無機凝集剤と高分子凝集剤(ノニオン系・アニオン系高分子凝集剤)を用いる処理が広く行われている。
【0006】
しかしながら、凝集剤などの薬剤の添加による凝集分離処理においては、SSの性状が類似している場合であっても、凝集剤によるSSの除去効果がすべてのSSに対して画一的に作用するとは限らない。本発明者は、特にガラス繊維を含有する排水においては、従来の繊維状物質に対する処理で使用される凝集剤による凝集分離処理を行っても、ガラス繊維以外のSSは凝集するが、ガラス繊維は流出してしまい、十分な処理効果が得られないという知見を得た。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の捕集効率を高め、排水処理効率を向上させることが可能となる排水処理方法及び排水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、ガラス繊維を含有する排水においては、凝集剤と反応させるに当たり、好適な凝集剤及びその添加順序が存在することを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の排水処理方法及び排水処理装置である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の排水処理方法は、ガラス繊維を含有する排水を処理する排水処理方法において、排水にカチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加ステップと、排水にアニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加ステップと、を備え、第1の凝集剤添加ステップの後、第2の凝集剤添加ステップを行うことを特徴とする。
この排水処理方法によれば、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の十分な捕集を可能とし、排水処理効率を高めることが可能となる。
【0010】
また、本発明の排水処理方法の一実施態様としては、カチオン系高分子凝集剤が、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩を含むという特徴を有する。
この特徴によれば、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の捕集効率をより向上させ、排水処理効率をより一層高めることが可能となる。
【0011】
また、本発明の排水処理方法の一実施態様としては、第2の凝集剤添加ステップの前段に、無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加ステップを備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の捕集効率を低下させることなく、ガラス繊維以外の含有成分についても捕集・凝集効果を高めることができ、排水処理効率をより一層高めることが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の排水処理装置は、ガラス繊維を含有する排水を処理する排水処理装置において、排水にカチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段と、第1の凝集剤添加手段の後段で、排水にアニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加手段と、を備えることを特徴とする。
この排水処理装置によれば、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の十分な捕集を可能とし、排水処理効率を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラス繊維を含有する排水処理において、ガラス繊維の捕集効率を高め、排水処理効率を向上させることが可能となる排水処理方法及び排水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施態様における排水処理装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の排水処理装置に基づく実施例1に係る処理前の排水(A)及び処理後の処理水(B)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る排水処理方法及び排水処理装置の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する排水処理方法及び排水処理装置については、本発明に係る排水処理方法及び排水処理装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の排水処理方法及び排水処理装置は、ガラス繊維を含有する排水の処理に利用するための装置であり、例えば、ガラス繊維の製造あるいはガラス繊維を用いた製品(フィルタや紙製品)の製造に係る工場等から発生する排水処理に利用される。
【0017】
また、本発明の排水処理方法及び排水処理装置により処理する排水は、ガラス繊維を含有するものである。
ここで、本発明におけるガラス繊維とは、高温で溶解したガラス原料を太さ数μm以下の綿状に繊維化したグラスウール(ガラス短繊維)、あるいはガラス原料を太さ数μmから数十μmの糸状に成形したグラスファイバー(ガラス長繊維)のいずれであってもよい。また、本発明におけるガラス繊維としては、各種製品(複合材)の一原料として使用されるに当たり、サイジング等の表面処理が行われたものとしてもよい。
【0018】
本発明におけるガラス繊維としては、各種製品(複合材)の一原料として使用され、長さが数cm以下のものが好適な例として挙げられる。このようなガラス繊維は、排水中に浮遊して存在し、沈降しにくいことから、従来の凝集沈殿分離では除去が困難なものである。また、このようなガラス繊維を含有する排水の発生源については、例えば、ガラス繊維を含有する製品(フィルタや紙製品)の製造工程から発生する排水が好適な例として挙げられる。
【0019】
[排水処理装置]
図1は、本発明の実施態様に係る排水処理装置の構成を示す概略図である。
本実施態様の排水処理装置1は、図1に示すように、処理対象となるガラス繊維を含有する排水(以下、単に「排水W0」と呼ぶ)に対し、カチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段2と、アニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加手段3とを備えるものである。また、本実施態様の排水処理装置1は、第1の凝集剤添加手段2及び第2の凝集剤添加手段3の前段に、無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段4を備えている。
【0020】
本実施態様の排水処理装置1による排水処理について、図1に基づき説明する。
まず、ラインL1を介して無機凝集剤添加手段4に排水W0が導入され、排水W0に対して無機凝集剤が添加される。そして、無機凝集剤が添加された排水W0は、ラインL2を介して第1の凝集剤添加手段2に導入され、カチオン系高分子凝集剤が添加される。さらに、その後、ラインL3を介して第2の凝集剤添加手段3に導入され、アニオン系高分子凝集剤が添加されることで排水W0に対する凝集分離処理が進行し、ガラス繊維を含む凝集物が形成されて、排水W0が処理水W1となる。そして、処理水W1は、ラインL4を介して系外に排出される。
以下、排水処理装置1における各構成の詳細について説明する。
【0021】
第1の凝集剤添加手段2は、排水W0に対し、カチオン系高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加ステップを行うためのものであり、図1に示すように、第1処理槽21と、第1処理槽21内の排水W0にカチオン系高分子凝集剤を添加する第1凝集剤添加部22を備えるものが挙げられる。
【0022】
本実施態様における第1の凝集剤添加手段2では、後述する無機凝集剤添加手段4を経た排水W0がラインL2を通じて第1処理槽21に供給される。そして、第1処理槽21内に供給された排水W0に対し、第1凝集剤添加部22を介してカチオン系高分子凝集剤を添加する。カチオン系高分子凝集剤が添加された排水W0は、ラインL3を介して第2の凝集剤添加手段3へ導入される。
【0023】
第1処理槽21は、槽内に排水W0を貯留し、排水W0とカチオン系高分子凝集剤の混合を行うことができるものであればよく、具体的な構造や材質については特に限定されない。また、第1処理槽21には、添加されたカチオン系高分子凝集剤と排水W0とを撹拌混合するための撹拌機構を設けることが好ましい。
【0024】
第1凝集剤添加部22は、第1処理槽21内の排水W0に対して、カチオン系高分子凝集剤を添加することができるものであればよく、例えば、カチオン系高分子凝集剤を貯留する貯留部と、貯留部と第1処理槽21とを接続する供給用配管からなるものなどが挙げられる。また、貯留部あるいは供給用配管にカチオン系高分子凝集剤の添加量を制御するための制御機構(開閉弁、バルブ等)を設けるものとしてもよい。
【0025】
本実施態様で用いるカチオン系高分子凝集剤としては、ポリアミン、ポリアクリルアミド誘導体(カチオン変性ポリアクリルアミド等)、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩から選択されることが好ましく、特にポリジアリルジメチルアンモニウム塩を含むことが好ましい。これらのカチオン系高分子凝集剤を用いることにより、ガラス繊維の捕集効果を高めることが可能となる。
【0026】
第2の凝集剤添加手段3は、上述した第1の凝集剤添加手段2の後段で、排水W0に対し、アニオン系高分子凝集剤を添加する第2の凝集剤添加ステップを行うためのものであり、図1に示すように、第2処理槽31と、第2処理槽31内の排水W0にアニオン系高分子凝集剤を添加する第2凝集剤添加部32を備えるものが挙げられる。
【0027】
本実施態様における第2の凝集剤添加手段3では、第1の凝集剤添加手段2(及び無機凝集剤添加手段4)を経た排水W0がラインL3を通じて第2処理槽31に供給される。そして、第2処理槽31内に供給された排水W0に対し、第2凝集剤添加部32を介してアニオン系高分子凝集剤を添加する。アニオン系高分子凝集剤が添加された後、排水W0は処理水W1として、ラインL4を介して系外に排出される。
【0028】
第2処理槽31は、槽内に排水W0を貯留し、排水W0とアニオン系高分子凝集剤の混合を行うことができるものであればよく、具体的な構造や材質については特に限定されない。また、第2処理槽31には、添加されたアニオン系高分子凝集剤と排水W0とを撹拌混合するための撹拌機構を設けることが好ましい。
【0029】
第2凝集剤添加部32は、第2処理槽31内の排水W0に対して、アニオン系高分子凝集剤を添加することができるものであればよく、例えば、アニオン系高分子凝集剤を貯留する貯留部と、貯留部と第2処理槽31とを接続する供給用配管からなるものなどが挙げられる。また、貯留部あるいは供給用配管にアニオン系高分子凝集剤の添加量を制御するための制御機構(開閉弁、バルブ等)を設けるものとしてもよい。
【0030】
本実施態様で用いるアニオン系高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド誘導体(アニオン変性ポリアクリルアミド等)、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。また本実施態様で用いるアニオン系高分子凝集剤としては、弱アニオン性を示すものが好ましく、特に弱アニオン性のポリアクリルアミド誘導体を含むことが好ましい。これらのアニオン系高分子凝集剤を用いることにより、ガラス繊維の捕集効果を高めることが可能となる。
【0031】
本実施態様の排水処理装置1において、排水W0は、第1の凝集剤添加手段2、第2の凝集剤添加手段3の順に処理を経ることにより、従来捕集が困難であったガラス繊維についても凝集分離することが可能となり、処理水W1中にガラス繊維が流出することを抑制することが可能となる。
また、本実施態様の排水処理装置1においては、第2の凝集剤添加手段3の前段に、無機凝集剤添加手段4を設けることが好ましい。これにより、ガラス繊維の捕集効率を低下させることなく、ガラス繊維以外の含有成分についても捕集・凝集効果を高めることができ、排水処理効率をより一層高めることが可能となる。
【0032】
無機凝集剤添加手段4は、排水W0に対し、無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加ステップを行うためのものであり、図1に示すように、第3処理槽41と、第3処理槽41内の排水W0に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加部42を備える。
【0033】
本実施態様における無機凝集剤添加手段4では、排水W0の発生源からラインL1を通じて排水W0が第3処理槽41に供給される。そして、第3処理槽41内に供給された排水W0に対し、無機凝集剤添加部42を介して無機凝集剤を添加する。無機凝集剤が添加された排水W0は、ラインL2を介して第1の凝集剤添加手段2へ導入される。
なお、無機凝集剤添加手段4は、第2の凝集剤添加手段3より前段に設けられるものであればよい。したがって、無機凝集剤添加手段4を、第1の凝集剤添加手段2の後段、かつ第2の凝集剤添加手段3の前段に設けるものとしてもよい。
【0034】
第3処理槽41は、槽内に排水W0を貯留し、排水W0と無機凝集剤の混合を行うことができるものであればよく、具体的な構造や材質については特に限定されない。また、第3処理槽41には、添加された無機凝集剤と排水W0とを撹拌混合するための撹拌機構を設けることが好ましい。
【0035】
無機凝集剤添加部42は、第3処理槽41内の排水W0に対して、無機凝集剤を添加することができるものであればよく、例えば、無機凝集剤を貯留する貯留部と、貯留部と第3処理槽41とを接続する供給用配管からなるものなどが挙げられる。また、貯留部あるいは供給用配管に無機凝集剤の添加量を制御するための制御機構(開閉弁、バルブ等)を設けるものとしてもよい。
【0036】
本実施態様で用いる無機凝集剤としては、鉄塩(ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリシリカ鉄等)、またはアルミニウム塩(硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム等)が挙げられる。
【0037】
また、無機凝集剤添加手段4により、排水W0に対して無機凝集剤を添加することで、排水W0のpHが低下する(酸性寄りになる)ことがある。一方、高分子凝集剤の凝集効果を鑑み、第1の凝集剤添加手段2(あるいは第2の凝集剤添加手段3)に導入される排水W0のpHは中性寄りであることが好ましい。このため、排水W0に対するpH調整を行うためのpH調整手段を、無機凝集剤添加手段4の後段、かつ高分子凝集剤を添加する第1の凝集剤添加手段2(あるいは第2の凝集剤添加手段3)の前段となる箇所に設けることが好ましい。pH調整手段としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質を貯留するタンク及び供給用配管、並びに塩基性物質の添加量を調整する機構(バルブ等)を備えるものが挙げられる。
【0038】
無機凝集剤添加手段4、第1の凝集剤添加手段2、第2の凝集剤添加手段3を経た後の処理水W1は、ラインL4を介して系外に排出される。
このとき、第2の凝集剤添加手段3における第2処理槽31の上方部にラインL4を接続し、第2処理槽31内の清澄分を処理水W1として排出するものとしてもよいが、ラインL4を介して第2処理槽31外に排出される処理水W1に対して、固液分離処理を行う固液分離部を設けることが好ましい。これにより、処理水W1中のガラス繊維を含む凝集物の回収率を向上させ、排水処理効率をより一層高めることが可能となる。
固液分離部は、ガラス繊維を含む凝集物を分離・回収可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、凝集沈殿槽、加圧浮上槽、膜分離処理槽などが挙げられる。なお、本実施態様における固液分離部として用いる各槽の構造・付帯設備については特に限定されず、公知の構造・付帯設備を用いることができる。
【0039】
また、処理水W1については、放流可能な水質とするための水処理設備に導入し、更に処理を行うものとしてもよい。より具体的には、本実施態様の排水処理装置1において、第2の凝集剤添加手段3の後段に、凝集分離によって分離された成分以外の含有成分を処理するため、固液分離部以外の各種水処理設備を更に設け、処理水W1に対して更に処理を行うことが挙げられる。また、回収したガラス繊維を含む凝集物についても、別途処理を行うことが好ましい。
【0040】
なお、上述した実施態様は排水処理方法及び排水処理装置の一例を示すものである。本発明に係る排水処理方法及び排水処理装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る排水処理方法及び排水処理装置を変形してもよい。
【0041】
例えば、本実施態様の排水処理装置として、第1の凝集剤添加手段と第2の凝集剤添加手段をそれぞれ独立した槽で行うもの、すなわち、複数の槽を設け、槽ごとに各凝集剤の添加を行うものを示したが、これに限定されるものではない。
本発明の排水処理装置の別態様としては、例えば、第1の凝集剤添加手段と第2の凝集剤添加手段を1つの槽で行うものとしてもよい。より具体的には、1つの槽に対して第1凝集剤添加部22及び第2凝集剤添加部32を設け、この槽内に貯留した排水W0に対し、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤の順で添加するものが挙げられる。このとき、無機凝集剤添加部42を更に備え、排水W0に対し、無機凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤の順、あるいはカチオン系高分子凝集剤、無機凝集剤、アニオン系高分子凝集剤の順で添加するものとしてもよい。これにより、装置全体の省スペース化が可能となる。
【実施例0042】
以下、実施例に基づき、本発明の排水処理装置による排水処理について説明する。
実施例1~3は、本実施態様の排水処理装置1を用いた排水処理である。すなわち、ガラス繊維を含む排水(排水W0)に対し、無機凝集剤添加手段4による無機凝集剤添加、第1の凝集剤添加手段2によるカチオン系高分子凝集剤添加、第2の凝集剤添加手段3によるアニオン系高分子凝集剤添加の順に処理を行い、処理水W1を得るものである。
【0043】
排水W0は、ガラス繊維を一原料として用いる製紙工場から排出されたもの(pH6.48)を用いた。
そして、無機凝集剤添加手段4で用いる無機凝集剤として硫酸バンド(200mg/L)、第2の凝集剤添加手段3で用いるアニオン系高分子凝集剤としてポリアクリルアミド誘導体(2.5mg/L)を用いた。
また、第1の凝集剤添加手段2で用いるカチオン系高分子凝集剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩(実施例1)、ポリアクリルアミド誘導体(実施例2)、ポリアミン(実施例3)を用い、いずれも添加量は1mg/Lとした。
【0044】
なお、無機凝集剤添加手段4により、排水W0のpHが低下したため(pH4.93)、水酸化ナトリウムによってpHを調整した後(pH6.53)、第1の凝集剤添加手段2に導入した。
【0045】
一方、比較例1は、実施例1~3における排水処理から第1の凝集剤添加手段2を除いたものである。また、比較例2は、第1の凝集剤添加手段2と第2の凝集剤添加手段3の順序を入れ替えたものである。その他の条件については、実施例1~3と同様である。
【0046】
実施例1~3及び比較例1、2によって得られた処理水W1に対し、ガラス繊維の流出(浮遊成分の有無)を目視で確認した。このとき、目視によって処理水W1中にガラス繊維の浮遊が確認できないもの(ガラス繊維による光の反射が確認できないもの)を、ガラス繊維の流出が起きていないもの(◎)とし、◎(優:ガラス繊維の流出なし)、〇(良)、△(可)、×(不可:ガラス繊維が流出(捕集されていない))の順で評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1において、各凝集剤の欄に示した丸付き数字は、排水W0に対する処理順(添加順)を示すものである。
【0047】
【表1】
【0048】
また、図2には、処理前の排水W0(図2A)と、実施例1による処理後の処理水W1(図2B)の写真を示している。
図2から、本実施態様の排水処理装置1に基づく処理によって、ガラス繊維を含む排水W0中のSSは、塊状(粒状)とはならず、繊維状(枝状)となることが分かった。そして、この繊維状の凝集物にガラス繊維が捕捉されることで、ガラス繊維の流出が抑制されていることが分かった。一方、比較例1、2においては、凝集性は実施例と大きく変わらないが、ガラス繊維が捕捉(捕集)されず、処理水W1内に浮遊しているのが確認された。
なお、無機凝集剤添加手段4と第1の凝集剤添加手段2の順序を入れ替え、それ以外の条件については実施例と同様に処理した結果、凝集性及びガラス繊維の捕集性において、実施例と相違ないという結果が得られた。
【0049】
表1に示した実施例1~3及び図2から、本発明の排水処理装置1に基づく処理によって、ガラス繊維を含有する排水に対し、ガラス繊維の十分な捕集を可能とし、排水処理効率を高めることができるという効果が認められた。特に、カチオン系高分子凝集剤としてポリジアリルジメチルアンモニウム塩を用いることで、ガラス繊維に対する高い捕集効果が得られることが示された。
【0050】
そして、表1に示した比較例1の結果から、多価金属イオン由来のプラス電荷を有する(カチオン系)無機凝集剤とアニオン系高分子凝集剤の組み合わせを用いてもガラス繊維の捕集効果は得られないことが分かった。したがって、実施例1~3に示したようなガラス繊維の捕集効果は、単に電荷の正負を組み合わせることではなく、カチオン系高分子凝集剤の構造やイオン性以外の性質に起因して発揮されるものと推察される。
【0051】
また、表1に示した比較例2の結果から、カチオン系高分子凝集剤より先にアニオン系高分子凝集剤を添加した場合においては、SSに対する凝集効果は発揮されるものの、ガラス繊維の捕集効果は得られないことが分かった。したがって、実施例1~3に示したようなガラス繊維の捕集効果は、単に高分子凝集剤による凝集体形成によるものではなく、ガラス繊維とカチオン系高分子凝集剤が接触し相互作用したものに対する凝集体形成を行うことで発揮されるものと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の排水処理方法及び排水処理装置は、ガラス繊維を含有する排水の処理に利用することができる。例えば、各種工場等から発生する排水処理に利用され、特に、フィルタや紙製品などの複合材のように、ガラス繊維を一原料として用いる製品の製造工程で発生する排水処理に対し、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…排水処理装置、2…第1の凝集剤添加手段、21…第1処理槽、22…第1凝集剤添加部、3…第2の凝集剤添加手段、31…第2処理槽、32…第2凝集剤添加部、4…無機凝集剤添加手段、41…第3処理槽、42…無機凝集剤添加部、L1~L4…ライン、W0…排水、W1…処理水
図1
図2