(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095207
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/018 20060101AFI20240703BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240703BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20240703BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20240703BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240703BHJP
B60G 17/015 20060101ALI20240703BHJP
B60G 21/073 20060101ALI20240703BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240703BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20240703BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60G17/018
A61B5/11 120
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/0245 C
A61B5/0245 100B
B60G17/015 A
B60G21/073
G06T7/00 650Z
G06T7/20 300Z
H04N7/18 C
H04N7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212317
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 一二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰
【テーマコード(参考)】
3D301
4C017
4C038
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301AA09
3D301CA01
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA38
3D301DB27
3D301EA04
3D301EA10
3D301EA17
3D301EA18
3D301EA19
3D301EA20
3D301EA21
3D301EA24
3D301EA82
3D301EB13
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC07
3D301EC37
3D301EC59
4C017AA10
4C017AA14
4C017AB04
4C017AB06
4C017AC28
4C017BC16
4C017EE01
4C017FF05
4C038SS08
4C038SV01
4C038VA04
4C038VB31
4C038VB33
4C038VC05
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC14
5C054FC15
5C054HA26
5L096BA04
5L096DA02
5L096EA39
5L096HA02
5L096JA16
(57)【要約】
【課題】簡便な構成を用いて乗員に加わる振動を推定し、乗員が不快に感じる振動を抑制することができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態の車両制御装置は、車両の周辺と車室内とを撮影可能なカメラから、車両の周辺画像と車室内の乗員の画像とを取得する取得部と、周辺画像に基づいて、車両に加わる振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する第1の推定部と、乗員の画像に基づいて、乗員の車両に対する振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する第2の推定部と、車両に加わる振動に乗員の車両に対する振動を加味して、乗員に加わる振動を算出する算出部と、乗員に加わる振動を制御する振動制御装置に出力される信号であって、乗員に加わる振動に基づく信号を生成する生成部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺と車室内とを撮影可能なカメラから、前記車両の周辺画像と前記車室内の乗員の画像とを取得する取得部と、
前記周辺画像に基づいて、前記車両に加わる振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する第1の推定部と、
前記乗員の画像に基づいて、前記乗員の前記車両に対する振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する第2の推定部と、
前記車両に加わる前記振動に前記乗員の前記車両に対する前記振動を加味して、前記乗員に加わる振動を算出する算出部と、
前記乗員に加わる振動を制御する振動制御装置に出力される信号であって、前記乗員に加わる振動に基づく信号を生成する生成部と、を備える、
車両制御装置。
【請求項2】
前記第2の推定部は、
前記乗員の前記車両に対する前記振動を推定するとともに、前記乗員の画像に含まれる前記乗員の顔面および胴体の少なくともいずれかを含む身体部位に基づいて前記乗員の属性を推定し、
前記生成部は、
前記乗員に加わる振動に加えて前記乗員の属性に基づく信号を生成する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記乗員の属性ごとの優先順および前記乗員の身体部位ごとの優先順の少なくともいずれかを含む外部要求の入力を受け付ける入力部を更に備え、
前記生成部は、
前記外部要求に応じて前記乗員の画像から得られる情報の重みづけを変更する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第2の推定部は、
前記乗員の前記車両に対する前記振動を推定するとともに、前記乗員の画像に含まれる前記乗員の乗車位置および前記乗員の身体部位の少なくともいずれかに基づいて前記乗員のバイタルサインを含む状態を推定し、
前記生成部は、
前記乗員に加わる振動に加えて前記乗員の状態に基づく信号を生成する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の推定部、並びに前記生成部の少なくともいずれかは、
機械学習を用いて構築され、前記周辺画像と前記乗員の画像とから得られる情報が入力されると前記信号を出力する学習済みモデルに基づいて動作する、
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の振動を抑制するため、車両に設けられた加速度センサを用いて乗員に加わる加速度等の状態量を推定する技術が知られている。上述の特許文献1の技術では、乗員の状態量をより正確に把握するために、車室内に設けたインナカメラの画像を利用する。また、上述の特許文献2の技術では、インナカメラの画像情報から乗員の年齢を推定し、それに合わせて運転制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-001519号公報
【特許文献2】特開2020-029210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車載加速度センサは通常、車体に固定されており、スプリングが設けられたシートに着座する乗員の状態量を精度よく推定することは困難である。一方、インナカメラを用いて乗員の状態量を推定する上述の特許文献1では、車両に対する乗員の状態量しか知ることができず、車両の振動も加味した実質的な乗員の振動を把握することはできない。
【0005】
また、乗員の年齢等の属性のみならず、個々の身体部位における共振点、及び特定部位で不快と感じる振動レベルは異なっており、上述の特許文献2では、多くの乗員を満足させるような状態を得ることが困難である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡便な構成を用いて乗員に加わる振動を推定し、乗員が不快に感じる振動を抑制することができる車両制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の車両制御装置は、車両の周辺と車室内とを撮影可能なカメラから、前記車両の周辺画像と前記車室内の乗員の画像とを取得する取得部と、前記周辺画像に基づいて、前記車両に加わる振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する第1の推定部と、前記乗員の画像に基づいて、前記乗員の前記車両に対する振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する第2の推定部と、前記車両に加わる前記振動に前記乗員の前記車両に対する前記振動を加味して、前記乗員に加わる振動を算出する算出部と、前記乗員に加わる振動を制御する振動制御装置に出力される信号であって、前記乗員に加わる振動に基づく信号を生成する生成部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、簡便な構成を用いて乗員に加わる振動を推定し、乗員が不快に感じる振動を抑制することができる。
【0009】
また、上述の車両制御装置において、前記第2の推定部は、前記乗員の前記車両に対する前記振動を推定するとともに、前記乗員の画像に含まれる前記乗員の顔面および胴体の少なくともいずれかを含む身体部位に基づいて前記乗員の属性を推定し、前記生成部は、前記乗員に加わる振動に加えて前記乗員の属性に基づく信号を生成する。この構成によれば、乗員の属性によって不快に感じる振動特性が異なるところ、乗員の属性に合わせた振動制御を行うことができる。
【0010】
また、上述の車両制御装置において、前記乗員の属性ごとの優先順および前記乗員の身体部位ごとの優先順の少なくともいずれかを含む外部要求の入力を受け付ける入力部を更に備え、前記生成部は、前記外部要求に応じて前記乗員の画像から得られる情報の重みづけを変更する。この構成によれば、乗員が外部要求を入力することで、車両制御装置に所望の制御を行わせることができる。
【0011】
また、上述の車両制御装置において、前記第2の推定部は、前記乗員の前記車両に対する前記振動を推定するとともに、前記乗員の画像に含まれる前記乗員の乗車位置および前記乗員の身体部位の少なくともいずれかに基づいて前記乗員のバイタルサインを含む状態を推定し、前記生成部は、前記乗員に加わる振動に加えて前記乗員の状態に基づく信号を生成する。この構成によれば、乗員の状態によって不快に感じる振動特性が異なるところ、乗員の状態に合わせた振動制御を行うことができる。
【0012】
また、上述の車両制御装置において、前記第1及び第2の推定部、並びに前記生成部の少なくともいずれかは、機械学習を用いて構築され、前記周辺画像と前記乗員の画像とから得られる情報が入力されると前記信号を出力する学習済みモデルに基づいて動作する。この構成によれば、機械学習を用いて構築された学習済みモデルを用いるので、より高精度に振動制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる車両制御装置が搭載された車両の上面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる車両制御装置が搭載された車両の車室内を上面から見た透視図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる車両制御システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる車両制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる車両制御装置が、車両に加わる振動と、車両に対する乗員の振動とから、乗員に加わる振動を算出する例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるインナカメラの撮像画像から推定可能な乗員の状態の幾つかの例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる車両制御装置がしたがうアルゴリズムを強化学習により構築する場合の例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる車両制御装置に予め与えられる振動特性データの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる車両制御装置による車両制御処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例にかかる車両制御装置のモニタ装置に表示される外部要求入力画面の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の変形例にかかる車両制御装置のモニタ装置に表示される外部要求入力画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例にかかる車両制御装置による車両制御処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の例示的な実施形態等の同様の構成要素には共通の符号を付与して、重複する説明を適宜省略する。
【0015】
(車両の構成例)
図1は、実施形態にかかる車両制御装置20が搭載された車両10の上面図である。なお、
図1においては、
図2において後述する幾つかの構成の図示および説明を省略する。また、
図1及び後述の
図2における車両10の前後左右は、車両10の運転席から見た場合の方向を示す。
【0016】
実施形態の車両10は、例えば内燃機関を駆動源とする内燃機関自動車であってもよいし、電動機を駆動源とする電気自動車または燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよい。
【0017】
また、車両10は、種々の変速装置を搭載することができ、内燃機関または電動機を駆動するために必要な種々のシステム、部品等の装置を搭載することができる。また、車両10における車輪13の駆動に関わる装置の方式、個数、及びレイアウト等は、種々に設定することができる。
【0018】
図1に示すように、車両10は、車体12、複数の車輪13、及び複数のアウタカメラ16a~16dを備える。なお、個々のアウタカメラ16a~16dを区別する必要がない場合には単にアウタカメラ16と記載する。
【0019】
車体12は、乗員が乗車する車室を構成する。車体12には、複数の車輪13、及び複数のアウタカメラ16が取り付けられている。
図1の例では、車体12は、4個の車輪13と、4個のアウタカメラ16とを備えている。ただし、車体12に取り付けられるアウタカメラ16の個数は任意である。
【0020】
4個の車輪13は、車体12の前後左右に設けられている。前側の2個の車輪13は例えば転舵輪として機能し、後側の2個の車輪13は例えば駆動輪として機能する。
【0021】
アウタカメラ16は、例えばCCD(Charge Coupled Device)、またはCIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。アウタカメラ16は、所定のフレームレートで撮影される複数のフレーム画像を含む動画、または静止画の撮像画像を生成する。
【0022】
アウタカメラ16は、車体12の外周部に設けられ、それぞれ広角レンズまたは魚眼レンズを有しており、例えば水平方向の140°~190°の範囲を撮影することができる。アウタカメラ16の光軸は、斜め下方に向けて設定されている。
【0023】
これにより、アウタカメラ16は、路面を含む車両10の周辺を撮像した周辺画像を収集して車両制御装置20に出力する。車両制御装置20は、アウタカメラ16が収集した周辺画像に基づいて、路面等を走行中の車両10に加わる振動を検出することができる。
【0024】
アウタカメラ16aは、車体12の前端部の左右方向の中央部であって、例えばフロントバンパーに設けられている。アウタカメラ16aは、車両10の前方を撮像した撮像画像を周辺画像として収集する。アウタカメラ16bは、車体12の後端部の左右方向の中央部であって、例えばリアバンパーに設けられている。アウタカメラ16bは、車両10の後方を撮像した撮像画像を周辺画像として収集する。
【0025】
アウタカメラ16cは、車体12の左端部の前後方向の中央部であって、例えば左側のサイドミラーに設けられている。アウタカメラ16cは、車両10の左方を撮像した撮像画像を周辺画像として収集する。アウタカメラ16dは、車体12の右端部の前後方向の中央部であって、例えば右側のサイドミラーに設けられている。アウタカメラ16dは、車両10の右方の周辺を撮像した撮像画像を周辺画像として収集する。
【0026】
図2は、実施形態にかかる車両制御装置20が搭載された車両10の車室内を上面から見た透視図である。なお、
図2においては、
図1において上述した幾つかの構成の図示を省略する。
【0027】
図2に示すように、車両10の車室内には、複数の座席2a~2e及び複数のインナカメラ14a,14bが設けられている。なお、個々の座席2a~2eを区別する必要がない場合には単に座席2と記載し、個々のインナカメラ14a,14b区別する必要がない場合には単にインナカメラ14と記載する。
【0028】
複数の座席2a~2eのうち、車室内の前方側には運転席2a及び助手席2bが設けられ、後方側には複数の後部座席2c~2eが設けられる。
図2の例では、このように、合計5人分の座席2a~2eが車室内に設けられている。ただし、車室内に設けられる座席2の個数は任意である。
【0029】
複数の後部座席2c~2eのうち、後部座席2cは、運転席2aの後方に設けられ、後部座席2dは、助手席2bの後方に設けられ、後部座席2eは、後部座席2cと後部座席2dとの間に設けられる。
図2の例では、複数の後部座席2c~2eは、互いに座面が連続するいわゆるベンチシートタイプの座席である。しかし、後部座席2c~2eが、例えば運転席2a及び助手席2bと同様、個々に独立して設けられていてもよい。
【0030】
インナカメラ14は、上述のアウタカメラ16と同様、例えばCCD、またはCIS等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。インナカメラ14もまた、所定のフレームレートで撮影される複数のフレーム画像を含む動画、または静止画の撮像画像を生成する。
【0031】
インナカメラ14は、車室内に設けられ、車室内の乗員を撮像した乗員画像を収集して車両制御装置20に出力する。車両制御装置20は、インナカメラ14が収集した乗員画像に基づいて、車両10に対する乗員の振動を検出することができる。
【0032】
インナカメラ14a,14bのうち、インナカメラ14aは、車室の前側の乗員を撮像することが可能な位置に設置されている。インナカメラ14aは、少なくとも運転席2aに着座する乗員、及び助手席2bに着座する乗員の撮像画像を乗員画像として収集する。
【0033】
インナカメラ14a,14bのうち、インナカメラ14bは、車室の後ろ側の乗員を撮像することが可能な位置に設置されている。インナカメラ14bは、少なくとも後部座席2c~2eに着座する乗員の撮像画像を乗員画像として収集する。
【0034】
図2の例では、このように、2個のインナカメラ14a,14bが車室内に設けられている。ただし、車室内に設けられるインナカメラ14の個数は任意である。
【0035】
また、
図2の例によらず、車両10が、大人数の乗員の移送が可能なバス型の車両等である場合には、いずれかの座席に座っている乗員のみならず、立って乗車している乗員、あるいは、車椅子等に腰掛けた状態の乗員等を、インナカメラ14によって撮像可能であることとする。
【0036】
実施形態の車両制御装置20は、上述のアウタカメラ16、及びインナカメラ14の撮像画像に基づいて、車両10の乗員に加わる正味の振動を算出する。また、車両制御装置20は、算出した正味の振動に基づいて車両10の各部を制御して、乗員が不快に感じる振動を抑制する。
【0037】
(車両制御システムの構成例)
図3は、実施形態にかかる車両制御システム200の全体構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
図3に示すように、車両制御システム200は、車両制御装置20、モニタ装置30、振動制御システム40、横揺れ制御システム50、操舵システム60、インナカメラ14、及びアウタカメラ16を備える。これらの構成は、車内ネットワークNTによって互いに情報の送受信が可能に接続されている。
【0039】
車内ネットワークNTは、例えばCAN(Controller Area Network)及びLIN(Local Interconnect Network)等を含んで構成される。車内ネットワークNTを車両制御システム200の一部に含めてもよい。
【0040】
車両制御装置20は、ECU(Electronic Control Unit)等のマイクロコンピュータとして構成されており、振動制御を含む車両10の各部の制御を行う。
【0041】
車両制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、表示制御回路23、SSD(Solid State Drive)24、ROM(Read Only Memory)25、及びRAM(Random Access Memory)26を備える。CPU21、ROM25、及びRAM26は同一パッケージ内に集積されていてもよい。
【0042】
CPU21は、ハードウェアプロセッサの一例であって、ROM25等の不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムを読み出し、このプログラムにしたがって各種の演算処理および制御を実行する。
【0043】
ROM25は、各種プログラム及びプログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。RAM26は、CPU21による演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。SSD24は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であって、車両制御装置20の電源がオフされた場合にあってもデータを維持する。
【0044】
表示制御回路23は、モニタ装置30が備える後述の表示部31に表示させる各種データを生成する。
【0045】
振動制御システム40は、サスペンション41、サスペンション制御部42、及びバネセンサ43を有し、主に車両10の垂直成分の振動を抑制する。振動制御システム40は、振動制御装置の一例である。
【0046】
サスペンション41は、例えば車軸を支えるサスペンションアーム、車輪13等に加わる衝撃を吸収するバネ、及びバネの伸縮による車体12の揺れを減衰させるショックアブゾーバ等を含む装置であり、車両10の振動を緩和する。サスペンション制御部42は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。サスペンション制御部42は、バネセンサ43の検出結果等に基づいて、サスペンション41に含まれるバネのバネ定数、及びショックアブゾーバの減衰力等を制御する。バネセンサ43は、例えばサスペンション41に含まれるバネの伸縮等を検出する。
【0047】
ただし、サスペンション41のバネセンサ43を上述のアウタカメラ16で代用することも可能である。アウタカメラ16の撮像画像によれば、車体12の傾きを検出可能であるので、サスペンション41において幾何学的に配置されるバネの伸縮量をアウタカメラ16の画像から推定することもできる。
【0048】
横揺れ制御システム50は、スタビライザ51、スタビライザ制御部52、及び横揺れセンサ53を有し、主に車両10の水平成分の振動を抑制する。横揺れ制御システム50は、振動制御装置の一例である。
【0049】
スタビライザ51は、例えばサスペンション41に追加された接続部品等を含む装置であり、車両10の車軸の傾きを補正する。スタビライザ制御部52は、例えばCPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。スタビライザ制御部52は、横揺れセンサ53の検出結果等に基づいてスタビライザ51を制御する。横揺れセンサ53は、例えば加速度センサ等の位置センサであって、車両10の横揺れを検出する。
【0050】
ただし、スタビライザ51の横揺れセンサ53を上述のアウタカメラ16で代用することも可能である。アウタカメラ16の撮像画像によれば、車体12の横揺れを検出することも可能である。
【0051】
操舵システム60は、操舵部61、操舵制御部62、及び操舵センサ63を有し、車両10の進行方向を制御する。操舵システム60は、振動制御装置の一例である。
【0052】
操舵部61は、例えばハンドルまたはステアリングホイール等を含む装置であり、車両10の転舵輪を転舵させて、車両10の進行方向を操舵する。操舵制御部62は、例えばCPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。操舵制御部62は、運転者によるハンドルまたはステアリングホイール等の操作に基づいて車両10の進行方向を制御する。操舵センサ63は、例えばホール素子等を含む角度センサであって、操舵部61の回転角である操舵角を検出する。
【0053】
モニタ装置30は、車両10の車室内のインストルメントパネル等に設けられ、表示部31及び入力部32を有する。
【0054】
表示部31は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、または有機ELディプレイ(OELD:Organic Electroluminescent Display)等の表示装置である。表示部31は、例えば車両制御装置20がアウタカメラ16から取得した画像データに基づく画面、乗員への情報提示を行う画面、及び乗員から各種の操作指示を受け付ける画面等を表示する。
【0055】
入力部32は、例えば表示部31の表示画面に設けられているタッチパネルである。入力部32は、表示部31が表示画面に表示する内容を透過可能に構成されている。これにより、入力部32は、表示部31の表示内容を乗員に視認させることができる。
【0056】
入力部32は、表示部31の表示内容に対応した位置を運転者等が触れることによって入力した指示を受け付けて、車内ネットワークNTを介して車両制御装置20へ送信する。なお、入力部32は、タッチパネルに限らず、押しボタン式等のハードスイッチであってもよい。
【0057】
図4は、実施形態にかかる車両制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、車両制御装置20は、表示制御部201、振動算出部202、信号生成部203、取得部204、車両状態推定部205、乗員状態推定部206、及び出力部207を機能部として備える。
【0058】
これらの機能部は、例えば上述のCPU21がROM25等の記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して、それを実行することにより実現される。または、プログラムにしたがうCPU21の制御下で、表示制御回路23等が動作することにより実現される。
【0059】
なお、これらの機能部の一部または全部は、ASIC(Applocation Specific Integrated Circuit)を含む回路等のハードウェアによって構成されてもよい。
【0060】
表示制御部201は、モニタ装置30の表示部31に表示する内容を生成し、表示部31に表示させる。
【0061】
取得部204は、車両10の周辺画像として、アウタカメラ16から車両10周辺の撮像画像を取得する。また、取得部204は、車室内の乗員画像として、インナカメラ14から車室内の撮像画像を取得する。
【0062】
第1の推定部としての車両状態推定部205は、取得部204によって取得された周辺画像に基づいて、路面等を走行中の車両10に加わる振動を推定する。
【0063】
路面状況等から車両10に加わる振動には、例えば垂直成分の振動である上下動(ピッチ)、水平成分の振動である横揺れ(ロール)、及び車体12の浮き上がり(ヒーブ)等がある。車両状態推定部205は、これらのうち少なくとも垂直成分の振動を特定する。ただし、車両状態推定部205が、垂直成分のみならず、水平成分その他の各方向における振動全般を特定可能であることが好ましい。
【0064】
車両状態推定部205は、このような車両10の振動を、周辺画像に写る路面の起伏および段差、並びに周囲の景色との対比から推定することが可能である。ここで、車両状態推定部205により推定される振動は、振動加速度と言い換えることもできる。
【0065】
なお、車両状態推定部205は、複数のアウタカメラ16a~16dから取得したそれぞれの撮像画像に基づいて、アウタカメラ16a~16dのそれぞれの設置位置における車両10の振動を推定してもよい。
【0066】
第2の推定部としての乗員状態推定部206は、取得部204によって取得された乗員画像に基づいて、乗員の乗車位置、乗員の属性、乗員の状態、及び車両10に対する乗員の振動を推定する。
【0067】
具体的には、乗員状態推定部206は、インナカメラ14a,14bによる撮像画像内に映る乗員の位置から、車室内における乗員の乗車位置を推定することができる。なお、車両10が、大人数の乗員の移送が可能なバス型の車両等である場合には、乗員が立っているのか座っているのか、あるいは、車椅子等に腰掛けた状態であるのか等を、乗員状態推定部206が推定可能であってもよい。
【0068】
また、乗員状態推定部206は、インナカメラ14a,14bに映る乗員の顔面画像および全身画像等から、乗員の性別、年代、体格等の属性を推定することができる。
【0069】
また、乗員状態推定部206は、インナカメラ14a,14bに映る乗員の胸部の動き等から、その乗員の心拍および呼吸等を検出することができる。また、乗員状態推定部206は、検出した心拍および呼吸、並びにインナカメラ14a,14bに映る乗員の瞬き等の挙動から、その乗員の疲労度および不快度等の乗員の状態を推定可能である。
【0070】
また、インナカメラ14は、車室内にある車体12の一部構造に取り付けられている。このため、車両10の振動とインナカメラ14の振動とは略同期していると言える。したがって、インナカメラ14からの撮像画像を解析することで、車両10に加わる振動を差し引いた、車両10を基準とする乗員の振動が推定される。ここで、乗員状態推定部206により推定される振動は、振動加速度と言い換えることもできる。
【0071】
なお、乗員状態推定部206は、複数のインナカメラ14a,14bに映る乗員のそれぞれについて、それらの乗員の車両10に対する振動を推定してもよい。また、乗員状態推定部206は、個々の乗員の頭部、胸部、腹部、及び脚部等の少なくともいずれかを含む複数部位について、それらの身体部位の車両10に対する振動を推定してもよい。
【0072】
以上のように、乗員状態推定部206は、インナカメラ14の画像から、車両10に対する乗員の振動だけでなく、車室内における乗員の3次元的な位置、及び乗員のバイタルサイン等を含む状態をも推定することが可能である。
【0073】
振動算出部202は、車両状態推定部205が推定した車両10の振動と、乗員状態推定部206が推定した乗員の振動と、に基づいて、乗員に加わる振動を算出する。すなわち、乗員に加わる振動は、車両10に加わる振動に車両10に対する乗員の振動を加味したものであり、乗員に実質的に加わる正味の振動である。ここで、振動算出部202により算出される振動は、振動加速度と言い換えることもできる。
【0074】
なお、振動算出部202は、車両10の乗員のそれぞれに加わる振動を算出してもよい。このとき、振動算出部202は、アウタカメラ16a~16dのそれぞれの設置位置における車両10の振動と、複数のインナカメラ14a,14bに映る乗員のそれぞれの乗車位置とを対応付けて、個々の乗員に加わる振動をそれぞれ算出することができる。
【0075】
また、振動算出部202は、乗員の頭部、胸部、腹部、及び脚部等の少なくともいずれかを含む複数部位について、それらの身体部位に加わる振動を個々に算出してもよい。
【0076】
信号生成部203は、乗員に加わる振動に基づいて、振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60の少なくともいずれかに、乗員が不快に感じる振動を抑制する制御を行わせる信号を生成する。
【0077】
すなわち、例えば振動制御システム40に対する信号は、振動制御システム40のサスペンション制御部42に、サスペンション41に含まれるバネのバネ定数、及びショックアブゾーバの減衰力の少なくともいずれかを制御させる制御信号でありうる。
【0078】
また例えば、横揺れ制御システム50に対する信号は、横揺れ制御システム50のスタビライザ制御部52に、スタビライザ51を制御させる制御信号でありうる。
【0079】
また例えば、操舵システム60に対する信号は、操舵システム60の操舵制御部62に、複数の車輪13のうち駆動輪である後輪を制御させる制御信号でありうる。
【0080】
なお、信号生成部203は、複数の乗員のそれぞれについて、それらの乗員に加わる振動が算出されている場合において、乗員全員の平均的な不快感を低減させる制御を行わせる信号を生成してもよい。あるいは、信号生成部203は、複数の乗員のうち、不快に感じる振動が最も大きく加わっている乗員の振動を抑制する信号を生成してもよい。
【0081】
また、信号生成部203は、個々の乗員の複数の身体部位について、それらの身体部位に加わる振動が算出されている場合において、各身体部位の平均的な不快感を低減させる制御を行わせる信号を生成してもよい。
【0082】
あるいは、信号生成部203は、複数の部位のうち、頭部または腹部等、より不快感を受けやすい身体部位の振動を抑制する信号を生成してもよい。この場合、乗員の頭部位置としては、例えばヘッドレスト位置の振動を制御すればよい。また、乗員の胸部および腹部位置等としては、例えばシート位置の振動を制御すればよい。また、乗員の脚部としては、例えばフロア位置の振動を制御すればよい。
【0083】
以上のように、乗員全員、あるいは優先すべき乗員もしくは身体部位等、いずれをターゲットとして不快な振動を抑制する制御を行うかは、車両制御部20に予め設定されていてもよい。
【0084】
ここで、どのような周波数および強度の振動を不快と感じるかは、乗員の属性および身体部位によって異なり得る。乗員が男性か女性か、あるいは、幼児か高齢者か、またあるいは、体格が良いかやせ型か等によって、身体を支える筋力、筋繊維あたりの体重、身体全体における共振周波数等が異なるためである。同様に、乗員の頭部、胸部、腹部、及び脚部等の身体部位のそれぞれを支える筋力、筋繊維あたりのこれらの部位の質量、並びに身体部位のそれぞれにおける共振周波数等が異なるため、不快と感じる振動周波数および振動強度等は、身体部位によっても異なる。
【0085】
そこで、信号生成部203は、上述の乗員状態推定部206が推定した乗員の属性、及び複数の身体部位それぞれに加わる振動に基づいて、個々の乗員ごと、及び乗員の個々の身体部位ごとに、振動による不快度を勘案し、それを軽減するような制御を行わせる信号を生成してよい。
【0086】
このような信号の生成は、例えば乗員の属性および身体部位ごとに、不快と感じる振動周波数等の振動特性のデータを予め保持しておくことで可能となる。すなわち、信号生成部203が、この振動特性データを参照することで、乗員に加わる振動周波数等が適正な状態に近づくよう制御信号を生成することができる。
【0087】
出力部207は、信号生成部203が生成した信号を、振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60のうち、対象となるシステムに出力する。
【0088】
振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60は、車両制御装置20からの信号にしたがって、システム内の各部の制御を行う。これにより、乗員が不快に感じる車両10の振動が抑制される。
【0089】
(車両制御装置の機能例)
次に、
図5~
図8を用いて、実施形態の車両制御装置20のより詳細の機能例について説明する。
【0090】
図5は、実施形態にかかる車両制御装置20が、車両10に加わる振動と、車両10に対する乗員の振動とから、乗員に加わる振動を算出する例を示す図である。
【0091】
図5に示すように、車両制御装置20の車両状態推定部205は、アウタカメラ16から取得した周辺画像に基づいて、車両10に加わる振動を推定する。車両10に加わる振動は、例えば振動の大きさの継時的な変化を示すグラフとして得られる。
【0092】
図5の例では、車両10に加わる振動のうち、垂直成分の振動の振幅が描かれたグラフを示す。ただし、上述のように、垂直成分の振動に加え、他の様々な方向の振動が推定されてもよい。
【0093】
また、車両制御装置20の乗員状態推定部206は、インナカメラ14から取得した乗員画像に基づいて、車両10に対する乗員の振動を推定する。車両10に対する乗員の振動は、車両10に加わる振動と同様、例えば振動の大きさの継時的な変化を示すグラフとして得られる。
【0094】
図5の例では、車両10に対する乗員の振動のうち、乗員の頭部、胸部、腹部、及び脚部に加わる垂直成分の振動の振幅が描かれたグラフを示す。ただし、上述のように、垂直成分の振動に加え、他の様々な方向の振動が推定されてもよい。
【0095】
車両制御装置20の振動算出部202は、車両状態推定部205が推定した車両10に加わる振動と、乗員状態推定部206が推定した車両10に対する乗員の各部位の振動とをそれぞれ足し合わせる。
【0096】
すなわち、車両10に加わる振動と、車両10に対する乗員の頭部の振動とが足し合わされて、乗員の頭部に実質的に加わる振動が算出される。また、車両10に加わる振動と、車両10に対する乗員の胸部の振動とが足し合わされて、乗員の胸部に実質的に加わる振動が算出される。また、車両10に加わる振動と、車両10に対する乗員の腹部の振動とが足し合わされて、乗員の腹部に実質的に加わる振動が算出される。また、車両10に加わる振動と、車両10に対する乗員の脚部の振動とが足し合わされて、乗員の脚部に実質的に加わる振動が算出される。
【0097】
このとき、1人の乗員につき、各部位の振動に加味される車両10の振動は全て共通である。
【0098】
車両制御装置20は、
図5に示す乗員の身体部位ごとの実質的な振動を、車室内の乗員のそれぞれについて算出することができる。このとき、車両状態推定部205が、乗員の乗車位置ごとに、その乗車位置に加わる車両10の振動を推定している場合には、個々の乗員について、その乗員の乗車位置に対応する車両10の振動をそれぞれ加味することができる。
【0099】
ところで、実施形態の乗員状態推定部206は、上述のように、車両10に対する乗員の振動に加え、乗員の属性および状態を推定する。また、信号生成部203は、例えば乗員の属性および身体部位ごとの振動特性のデータに基づいて、乗員が不快に感じる振動を抑制する信号を生成する。
【0100】
このような複雑な制御を可能とするアルゴリズムは、例えば機械学習を用いて構築することができる。また、このようなアルゴリズムの構築には、機械学習の種々の手法のうち、例えば強化学習が用いられることが好ましい。以下、実施形態の車両制御装置20がしたがうアルゴリズムを構築する手法の一例として、強化学習アルゴリズムにアクター・クリティック(Actor-Critic)方式を用いる場合を例に説明を進める。
【0101】
このような強化学習においては、インナカメラ14の乗員画像からは、例えば心拍、呼吸、脈拍、及び瞬き等の各種バイタルサイン及び挙動等の検出が可能であり、また、これらのバイタルサイン及び挙動に基づいて、乗員の各種状態の推定が可能であることを前提とすることができる。
【0102】
図6は、実施形態にかかるインナカメラ14の撮像画像から推定可能な乗員の状態の幾つかの例を示す図である。
【0103】
図6に示すように、心拍には低周波(LF:Low Frequency)と高周波(HF:High Frequency)とがあり、ヒトが快適であるときには、これらの比LH/HFが低下することが知られている。なお、LH/HFは、脈拍からも得ることができる。また、ヒトが疲労していたり、不快であったりすると、一般的に、呼吸および瞬きが増加する。
【0104】
図7は、実施形態にかかる車両制御装置20がしたがうアルゴリズムを強化学習により構築する場合の例を示す図である。
【0105】
図7に示すように、アクター・クリティック方式の強化学習では、意思決定者であるエージェント80が意思決定と学習とを行う環境90が設定される。この環境90に対して、行動器とも呼ばれるアクター82が、方策に基づき行動を選択して実行する。評価器とも呼ばれるクリティック81は、環境90から得られる状態および報酬に基づきアクター82の取った行動を評価し、アクター82に通知する。アクター82は評価に基づき方策の更新を行う。これらのサイクルを繰り返すことにより、最適な方策が獲得される。
【0106】
車両制御装置20がしたがうアルゴリズムを構築する場合、状態x(t)を、インナカメラ14の撮像画像から得られる心拍、呼吸、脈拍、及び瞬きと、インナカメラ14及びアウタカメラ16から得られる乗員の各部位に加わる実質的な振動と、定めることができる。
【0107】
また、例えば
図6に示す心拍、呼吸、脈拍、及び瞬き等の指標から導き出される乗員の快/不快、疲労度等の状態を点数化して報酬関数r(t)とすることができる。このような点数化は、例えば乗員の快/不快、疲労度等の状態と、乗員の状態を推測可能なドーパミン、セロトニン等の分泌量との関係を実験式によって導き出すことで可能となる。
【0108】
また、アクター82が行動を実行する環境90を、振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60と定めることができる。
【0109】
以上の設定により、アクター82は、価値関数V(x)から求まる報酬の目標値と現状とのTD(Temporal Difference)誤差を最小化して、状態量によって得られる報酬を最大化するために、方策関数μ(x)の改善を図って行動u(t)を選択していく。
【0110】
上記のような強化学習を、乗員の性別、年代、体格等の属性と、乗員の頭部、胸部、腹部、脚部等の身体部位と、をそれぞれ組み合わせた複数の状態x(t)について繰り返していくことで、乗員の属性ごと及び身体部位ごとに、適正な振動制御を実行可能な学習済みモデルを構築することができる。また、このような学習済みモデルによれば、状態x(t)には、乗員の心拍、呼吸、脈拍、及び瞬き等の乗員の疲労度および不快度を推定可能な状態量も加味されているので、このような乗員の状態も勘案したうえで振動制御の適正化を図ることが可能である。
【0111】
以上のように構築された、乗員の属性ごと及び身体部位ごとの学習済みモデルをアルゴリズムとして組み込んだプログラムをインストールすることで、車両制御装置20に、上述のような複雑な制御を行わせることが可能となる。
【0112】
また、乗員の性別、年代、体格等の属性と、乗員の頭部、胸部、腹部、脚部等の身体部位とのそれぞれの組み合わせを状態x(t)と定めて強化学習を繰り返すことで、乗員の属性ごと及び身体部位ごとに、不快な振動周波数、快適な振動周波数等の振動特性が得られる。このような強化学習によって取得され、車両制御装置20に予め与えられる振動特性データを
図8に示す。
【0113】
図8は、実施形態にかかる車両制御装置20に予め与えられる振動特性データの一例を示す図である。
【0114】
図8に示すように、実施形態の車両制御装置20は、乗員の性別および年代等の属性と、乗員の頭部、胸部、腹部、脚部等の身体部位とのそれぞれの組み合わせによって、異なる振動特性A~Pのデータを保有している。車両制御装置20の信号生成部203は、上述のように、このような振動特性データを参照して、個々の乗員の属性ごと、及び身体部位ごとに、適正な振動制御を行うことが可能な信号を生成する。
【0115】
また、信号生成部203は、乗員の属性の1つとして、BMI(Body Mass Index)等で示される乗員の体格に応じて、例えば幼児を除く成人の個々の振動特性A~Lに所定の係数をかけ合わせることなどにより、乗員の体格差を振動特性A~Lに反映させてもよい。
【0116】
(車両制御装置の処理例)
次に、
図9を用いて、実施形態の車両制御装置20による車両制御処理の例について説明する。
図9は、実施形態にかかる車両制御装置20による車両制御処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0117】
図9に示すように、車両制御装置20の取得部204は、アウタカメラ16から車両10の周辺を撮像した周辺画像を取得し、また、インナカメラ14から車室内の乗員を撮像した乗員画像を取得する(ステップS110)。
【0118】
車両状態推定部205は、アウタカメラ16からの周辺画像に基づいて、路面の起伏および段差等によって車両10に加わる振動を推定する。乗員状態推定部206は、インナカメラ14からの乗員画像に基づいて、車両10に対する乗員の頭部、胸部、腹部、脚部等の各部位の振動を推定する。また、乗員状態推定部206は、車室内の乗員の性別、年代、体格等の属性を推定する。また、乗員状態推定部206は、乗員の心拍、呼吸、脈拍、瞬き等を検出し、これらに基づいて乗員の疲労度および不快度等の状態を推定する(ステップS120)。
【0119】
振動算出部202は、車両状態推定部205が推定した車両10に加わる振動、及び乗員状態推定部206が推定した車両10に対する乗員の振動に基づいて、乗員の各身体部位に実質的に加わる振動を算出する(ステップS130)。
【0120】
信号生成部203は、乗員状態推定部206が推定した乗員の属性および状態、並びに振動算出部202が算出した乗員に加わる振動に基づいて、振動特性データを参照しつつ、振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60の少なくともいずれかを、乗員が不快に感じる振動を抑制するよう制御する信号を生成する(ステップS140)。
【0121】
出力部207は、信号生成部203が生成した信号を、対象となる振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60にそれぞれ出力する(ステップS150)。
【0122】
以上により、実施形態の車両制御装置20による車両制御処理が終了する。
【0123】
(概括)
車両の振動を抑制するため、車両に設けられた加速度センサを用いて乗員に加わる加速度等の状態量を推定する技術が知られている。また、上述の特許文献1の技術のように、インナカメラを用いて乗員の状態量を推定する技術もある。
【0124】
しかしながら、上述のように、車載加速度センサは、剛性を備えた形で車体に固定されるのが一般的であり、スプリングを備えたシートに着座する乗員の状態量を正確に推定することは困難である。別途、乗員向けの加速度センサを追加することも考えられるが、車両パーツが増加してしまうほか、コスト高となってしまう。
【0125】
また、上述のように、インナカメラもまた車体に固定され、車両と同期して振動するため、乗員に加わる振動のうち、インナカメラの画像からは車両を基準とした、車両の振動が加味されない振動しか検出することができない。
【0126】
実施形態の車両制御装置20によれば、アウタカメラ16からの周辺画像に基づいて、車両10に加わる振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する。また、インナカメラ14からの乗員画像に基づいて、乗員の車両10に対する振動であって少なくとも垂直成分を含む振動を推定する。また、車両10に加わる振動に、乗員の車両10に対する振動を加味して、乗員に加わる振動を算出する。
【0127】
これにより、専らカメラ映像を用いて、車両10の振動を加味した乗員の振動を高精度に推定することができる。したがって、例えば乗員向けの加速度センサ等、高価なパーツを新規に車両10に取り付ける必要も生じない。よって、簡便な構成を用いて乗員に加わる振動を推定し、乗員が不快に感じる振動を抑制することができる。
【0128】
実施形態の車両制御装置20によれば、乗員状態推定部206は、乗員の車両10に対する振動を推定するとともに、乗員画像に含まれる乗員の顔面および胴体の少なくともいずれかを含む身体部位に基づいて乗員の属性を推定する。インナカメラ14の画像から乗員の属性を推定し、それを振動制御に用いるので、それぞれの乗員の属性に応じていっそう細やかな振動制御が可能となり、より多くの乗員、あるいは個々の乗員の快適度を向上させることができる。
【0129】
実施形態の車両制御装置20によれば、乗員状態推定部206は、乗員の車両10に対する振動を推定するとともに、乗員画像に含まれる乗員の乗車位置および乗員の身体部位の少なくともいずれかに基づいて乗員のバイタルサインを含む状態を推定する。インナカメラ14の画像から乗員の状態を推定し、それを振動制御に用いるので、それぞれの乗員の状態に応じていっそう細やかな振動制御が可能となり、より多くの乗員、あるいは個々の乗員の快適度を向上させることができる。
【0130】
実施形態の車両制御装置20によれば、車両状態推定部205、乗員状態推定部206、及び信号生成部203の少なくともいずれかは、機械学習を用いて構築され、周辺画像と乗員画像とから得られる情報が入力されると振動制御の信号を出力する学習済みモデルに基づいて動作する。このように、機械学習を用いて構築された学習済みモデルをアルゴリズムとしてプログラムに組み込むことで、上記のように複雑な各種制御を高精度に行うことが可能となる。
【0131】
(変形例)
次に、
図10~
図12を用いて、実施形態の変形例の車両制御装置について説明する。変形例の車両制御装置は、乗員等による外部要求を受け付け可能である点が、上述の実施形態とは異なる。
【0132】
なお、以下においては、実施形態の
図4を援用し、実施形態の車両制御装置20の種々の構成とそれぞれ対応する構成に同じ符号を付して説明する。
【0133】
図10及び
図11は、実施形態の変形例にかかる車両制御装置のモニタ装置30に表示される外部要求入力画面の一例を示す図である。
図10及び
図11に示すように、車両制御装置の表示制御部201は、乗員等による画面操作にしたがって、外部要求入力画面をモニタ装置30に表示させることができる。
【0134】
図10の例では、外部要求入力画面は、例えば乗員の属性、及び乗員の身体部位等のうち、優先させたい事項を外部要求として選択可能な画面となっている。
【0135】
乗員等は、モニタ装置30に表示される外部入力画面から、例えば乗員の属性のうち、高齢者、幼児等の優先させたい属性を選択することが可能である。また、乗員等は、モニタ装置30の外部入力画面から、例えば乗員の身体部位のうち、頭部、胸部等の優先させたい部位を選択することができる。
【0136】
変形例の車両制御装置は、乗員等により選択された優先順にしたがって、所定の属性を有する乗員にとって、あるいは、乗員の所定の身体部位にとって不快に感じる振動を優先的に抑制するよう制御する。
【0137】
乗員の属性および身体部位等において優先させたい項目が無い場合、乗員は、これらについて全体平均を選択することも可能である。また、乗員等による優先順の入力操作が特に行われない場合、車両制御装置は、初期値として全体平均にしたがって振動制御を行うよう設定されていてもよい。
【0138】
図11の例では、外部要求入力画面は、例えば個々の乗員の体調等の状態に関わる事項を外部要求として選択可能な画面となっている。
【0139】
乗員等は、モニタ装置30に表示される外部入力画面から、例えば個々の乗員A,B,C・・・等について、体調の良/不良、並びに頭痛、めまい、車酔い等の具体的な不調があるか否かを入力することが可能である。
【0140】
変形例の車両制御装置は、乗員等により選択された個々の乗員の状態にしたがって、よりケアの必要な乗員にとって不快に感じる振動を優先的に抑制するよう制御する。
【0141】
図12は、実施形態の変形例にかかる車両制御装置による車両制御処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0142】
なお、
図12の処理に先駆けて、乗員等は種々の外部要求をモニタ装置30等から入力可能であり、上述の表示制御部201が外部要求の入力を受け付けた場合には、車両制御装置のメモリ等に入力情報を格納しておくものとする。
【0143】
図12に示す処理のうち、ステップS110~S130の処理は、上述の実施形態の
図9に示すステップS110~S130の処理と同様である。
【0144】
すなわち、インカメラ14及びアウタカメラ16からそれぞれ取得した画像に基づいて(ステップS110)、車両10に加わる振動と、車両10に対する乗員の振動とを推定し、また、乗員の属性および状態を推定する(ステップS120)。また、これらの推定結果から、乗員に実質的に加わる振動を算出する(ステップS130)。
【0145】
変形例の車両制御装置において、信号生成部203は、車両制御装置のメモリ等を参照して、乗員等による外部要求の入力があったか否かを確認する(ステップS131)。所定の属性を有する乗員、乗員の所定の身体部位、あるいは、個々の乗員の体調等に関わる状態等の外部要求が入力されていた場合(ステップS131:Yes)、信号生成部203は、例えば上述の
図8に示す振動特性データ等を参照し、外部要求に応じた属性、身体部位、状態に適する振動特性を選択する(ステップS132)。
【0146】
乗員等による外部要求の入力がなかった場合(ステップS131:No)、信号生成部203は、ステップS132の処理をスキップする。これにより、変形例の車両制御装置による振動制御は、例えば全体平均にしたがう等の初期設定に応じて行われることとなる。
【0147】
図12に示す処理のうち、以降のステップS140~S150の処理もまた、上述の実施形態の
図9に示すステップS140~S150の処理と同様である。
【0148】
すなわち、乗員状態推定部206による推定結果、及び振動算出部202による算出結果に基づいて、また、外部要求があるときはこれに対応する振動特性に基づいて、振動制御の信号が生成され(ステップS140)、振動制御システム40、横揺れ制御システム50、及び操舵システム60へと出力される(ステップS150)。
【0149】
以上により、変形例の車両制御装置による車両制御処理が終了する。
【0150】
変形例の車両制御装置によれば、乗員の属性ごとの優先順および乗員の身体部位ごとの優先順の少なくともいずれかを含む外部要求の入力を受け付ける入力部32を更に備え、入力された外部要求に応じて、乗員の属性および身体部位等に関わる情報等の、乗員画像から得られる情報の重みづけを変更する。これにより、乗員の要望に応じていっそう細やかな振動制御が可能となり、より多くの乗員、あるいは個々の乗員の快適度を向上させることができる。
【0151】
なお、上述の実施形態および変形例では、車両制御システム200が、車両10の外装に設けられるアウタカメラ16と、車室内に設けられるインナカメラ14とを備えることとした。しかし、車両10の周辺画像を撮像するカメラが、インナカメラ14と同様、車室内に設けられていてもよい。
【0152】
また、広角レンズまたは魚眼レンズを有する少なくとも1つのカメラを例えば車室内等に設置して、この1つのカメラで車両10の周辺と車室内の乗員とが共に映り込んだ画像を撮像してもよい。この場合、上述の車両状態推定部205及び乗員状態推定部206は、それぞれ同じ画像から、車両10に加わる振動、車両10に対する乗員の振動、乗員の属性、その他の状態等を推定してもよい。
【0153】
これにより、車載カメラの台数を減らして、よりいっそうコストを削減することができる。
【0154】
あるいは、乗員を撮像するインナカメラ14の台数を増やすなどして、個々の乗員ごと、あるいは、乗員の所定の身体部位ごとに画像を得て、乗員状態推定部206がそれらの画像に基づいて、上記に述べたような各種の推定を行ってもよい。
【0155】
これにより、個々の乗員の属性、身体部位、状態等をより正確に把握することが可能となり、よりいっそう適切な振動制御が可能となる。
【符号の説明】
【0156】
10…車両
14…インナカメラ
16…アウタカメラ
20…車両制御装置
30…モニタ装置
31…表示部
32…入力部
40…振動抑制システム
50…横揺れ抑制システム
60…操舵システム
201…表示制御部
202…振動算出部
203…信号生成部
204…取得部
205…車両状態推定部
206…乗員状態推定部
207…出力部