(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095213
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】炭化水素油の水素化処理触媒、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/19 20060101AFI20240703BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240703BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240703BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240703BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B01J27/19 M
B01J37/08
B01J37/00 Z
B01J35/10 301B
B01J23/883 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212329
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄介
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
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4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA06
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4G169EC30
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA08
4G169FB08
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB50
4G169FB67
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】炭化水素油の水素化処理において高い脱硫活性及び高い脱窒素活性を示す触媒を提供すること。
【解決手段】Al、Si、及び周期表第IV族元素の無機複合酸化物からなる担体と、前記担体に担持された活性金属成分とを含む触媒であって、(1)前記担体中のSiの含有量がケイ素酸化物(SiO2)換算で5.0~25.0質量%であり、(2)前記第IV族元素がTi、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記担体中の第IV族元素の含有量が酸化物換算で1.0~5.0質量%であり、(3)前記活性金属成分が、Mo及び/又はWである第1の金属成分、並びにCo及び/又はNiである第2の金属成分であり、(4)前記第1の金属成分の含有量が酸化物換算で15.0~25.0質量%であり、前記第2の金属成分の含有量は、酸化物換算で2.0~7.0質量%である、炭化水素油の水素化処理触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、ケイ素、及び周期表第IV族元素の無機複合酸化物からなる担体と、前記担体に担持された活性金属成分とを含む触媒であって、
(1)前記担体におけるケイ素の含有量(ただし、担体の量を100質量%とする。)が、ケイ素酸化物(SiO2)換算で5.0~25.0質量%であり、
(2)前記周期表第IV族元素がチタニウム、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記周期表第IV族元素の含有量(ただし、担体の量を100質量%とする。)が酸化物換算で1.0~5.0質量%であり、
(3)前記活性金属成分が、モリブデン及びタングステンのうちの少なくとも一方である第1の金属成分、並びにコバルト及びニッケルのうちの少なくとも一方である第2の金属成分であり、
(4)前記第1の金属成分の含有量(ただし、触媒の量を100質量%とする。)は、酸化物換算で15.0~25.0質量%であり、前記第2の金属成分の含有量(ただし、触媒の量を100質量%とする。)は、酸化物(TiO2、ZrO2又はHfO2)換算で2.0~7.0質量%である、
炭化水素油の水素化処理触媒。
【請求項2】
250℃におけるピリジン脱着に基づき赤外分光法で測定したルイス酸量が170μmol/g以上、かつブレンステッド酸量が2.0~10μmol/gである請求項1に記載の水素化処理触媒。
【請求項3】
(a)窒素吸着法で測定した比表面積が250~350m2/gであり、
(b)空気雰囲気中、570℃で2時間熱処理した際に減少する質量が5.0質量%以下であり、
(c)炭素を含まないか、又は2.0質量%未満の量で含み、
(d)硫化処理後の一酸化窒素の吸着量が9.0ml/g以上である、
請求項1又は2に記載の水素化処理触媒。
【請求項4】
請求項1に記載の水素化処理触媒の製造方法であって、
前記担体を準備する工程Aと、前記第1の金属成分の原料と、前記第2の金属成分の原料と、溶媒とを含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程Bと、前記工程Bにより得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化処理触媒を得る工程Cとを有する、炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素存在下で炭化水素油中の硫黄分を除去するための水素化処理触媒、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素油の水素化処理は、触媒を用いて高温高圧下にて反応を進行させるが、反応条件を低温、低圧下することによりプロセスの経済性が高まるため、円滑に生産可能で高活性な水素化処理触媒が望まれている。
【0003】
従来、アルミナを主体とした担体に、周期表第VI族元素及びVIII族元素から選ばれた活性金属成分が担持された触媒が広く使用されている。更なる触媒性能の向上のため、担体と活性金属の両側面から、各種成分や調製方法などが検討されている。例えば、担体の固体酸性質を制御することで、難脱性に対する活性や水素化分解活性を高めている報告がされている。
【0004】
特許文献1には、シリカ―アルミナに加え、ボリア、チタニア、ジルコニア、イットリア及びハフニアからなる群より選択される少なくとも一種の金属成分を金属量として0.01質量%~8質量%含有する担体に活性成分としてモリブデンやニッケルが担持された水素化処理触媒について開示されている。シリカを30質量%以上含み、ボリア、チタニア、ジルコニア、イットリア及びハフニアからなる群より選択される少なくとも一種の金属成分を金属量として0.01質量%~8質量%含有させ、ブレンステッド酸量が50μmol/g以上に調節している。
【0005】
特許文献2には、Al2O3/SiO2/P2O5系で、SiO2とP2O5をそれぞれ0.5~8.0質量%及び1.0~5.0質量%含む担体に活性成分としてモリブデンやニッケル、コバルトに加えてリンを担持させた水素化処理触媒について開示されている。ブレンステッド酸の発現を最小限にし、活性成分中のリンや有機酸でルイス酸を調整していることが特徴である。
【0006】
特許文献3には、40~90質量%のゼオライトを含むシリカ-アルミナを主体とした担体に活性成分として白金、パラジウムなどの貴金属が担持された水素化処理触媒ついて開示されている。ゼオライトと非結晶性のシリカ-アルミナとの組み合わせが、貴金属触媒の活性の改善及び触媒の性能の改善の両方を生じる、すなわち水素化された供給原料の改善された特性を生じると記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-5600号公報
【特許文献2】国際公開第2020/066555号
【特許文献3】特表2003-531002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、環境規制が厳しくなる中、水素化処理生成油中の硫黄濃度をできるだけ下げることが求められている。既存の触媒には、炭化水素油の水素化処理用途における活性の点でさらなる改良の余地があった。
本発明は、水素化処理能、例えば脱硫活性及び脱窒素活性に優れる水素化処理触媒、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば以下の[1]~[4]に関する。
[1]
アルミニウム、ケイ素、及び周期表第IV族元素(以下、「第三元素」ともいう。)の無機複合酸化物からなる担体と、前記担体に担持された活性金属成分とを含む触媒であって、
(1)前記担体におけるケイ素の含有量(ただし、担体の量を100質量%とする。)が、ケイ素酸化物(SiO2)換算で5.0~25.0質量%であり、
(2)前記担体における前記第三元素がチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、その含有量(ただし、担体の量を100質量%とする。)が酸化物(TiO2、ZrO2又はHfO2)換算で1.0~5.0質量%であり、
(3)前記活性金属成分が、モリブデン及びタングステンのうちの少なくとも一方である第1の金属成分、並びにコバルト及びニッケルのうちの少なくとも一方である第2の金属成分であり、
(4)前記第1の金属成分の含有量(ただし、触媒の量を100質量%とする。)は、酸化物換算で15.0~25.0質量%であり、前記第2の金属成分の含有量(ただし、触媒の量を100質量%とする。)は、酸化物換算で2.0~7.0質量%である、
炭化水素油の水素化処理触媒。
【0010】
[2]
250℃におけるピリジン脱着に基づき赤外分光法で測定したルイス酸量が170μmol/g以上、かつブレンステッド酸量が2.0~10μmol/gである前記[1]の水素化処理触媒。
【0011】
[3]
(a)窒素吸着法で測定した比表面積が250~350m2/gであり、
(b)空気雰囲気中、570℃で2時間熱処理した際に減少する質量が5.0質量%以下であり、
(c)炭素を含まないか、又は2.0質量%未満の量で含み、
(d)硫化処理後の一酸化窒素の吸着量が9.0ml/g以上である、
前記[1]又は[2]の水素化処理触媒。
【0012】
[4]
前記[1]の炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法であって、
前記担体を準備する工程Aと、前記第1の金属成分の原料と、前記第2の金属成分の原料と、溶媒とを含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記担体に含浸させる工程Bと、前記工程Bにより得られた、前記含浸液が含浸された担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化処理触媒を得る工程Cとを有する、炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水素化処理触媒は、脱硫活性、及び脱窒素活性に優れている。また、本発明の水素化処理触媒の製造方法によれば、上述した水素化処理触媒を簡便的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係る水素化処理触媒について説明する。
[水素化処理触媒]
本発明に係る炭化水素油の水素化処理触媒(以下、単に「本触媒」ともいう。)は、無機複合酸化物からなる担体(以下、「無機複合酸化物担体」又は「担体」ともいう。)と、前記担体に担持された活性金属成分とを含む触媒である。
【0015】
《無機複合酸化物担体》
前記無機複合酸化物担体は、アルミニウム、ケイ素、及び周期表第IV族元素(第三元素)の無機複合酸化物からなり、担体におけるケイ素の含有量(ただし、担体の量を100質量%とする。)が、ケイ素酸化物(SiO2)換算で5.0質量%以上であり、好ましくは6.5質量%以上、さらに好ましくは、8.0質量%以上である。また上限値としては、25.0質量%以下であり、好ましくは、20.0質量%以下であり、さらに好ましくは、15.0質量%以下である。
【0016】
また、前記第三元素はチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、前記担体におけるその含有量(ただし、前記担体の量を100質量%とする。)が酸化物(TiO2、ZrO2又はHfO2)換算で1.0質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以上である。また上限値としては、5.0質量%以下であり、好ましくは4.0質量%以下である。
【0017】
各々がこの範囲にあることで、本発明に係る水素化処理触媒は、水素化処理反応に対して最適な触媒の固体酸量と比表面積を有し、脱硫性能、脱窒素活性において向上している。
【0018】
前記無機複合酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で、アルミニウム、ケイ素、第三元素、及び酸素以外の元素(たとえば、リン、マグネシウム、ホウ素)を含んでいてもよい。すなわち、前記無機複合酸化物は、アルミニウム、ケイ素、第三元素及び任意の元素の複合酸化物であってもよい。任意の元素の含有量は、その酸化物(例えば、P2O5、MgO、B2O3)換算で、たとえば0.5質量%以下である。前記無機複合酸化物は、前記任意の元素を含んでいなくてもよい。
【0019】
《活性金属成分》
前記活性金属成分は、第1の金属成分及び第2の金属成分を含んでいる。前記第1の金属成分はモリブデン及びタングステンのうちの少なくとも一方であり、前記第2の金属成分はコバルト及びニッケルのうちの少なくとも一方である。
【0020】
前記第1の金属成分の含有量(本触媒の量を100質量%とする。)は、酸化物(MoO3又はWO3)換算量として15.0~25.0質量%、好ましくは17.0~25.0質量%であり、前記第2の金属成分の含有量(本触媒の量を100質量%とする。)は、酸化物(CoO又はNiO)換算量として2.0~7.0質量%、好ましくは3.0~6.0質量%である。前記第1の金属成分の含有量及び前記第2の金属成分の含有量が前記範囲にあることは、脱硫活性及び触媒寿命の観点から好ましい。
【0021】
本触媒は、担体中に任意に含まれることのあるリンとは別に、リンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。リンを含む場合、リンの含有量は、酸化物(P2O5)換算で、好ましくは0.5~5.0質量%である。
【0022】
《触媒の物性》
本触媒の、後述する実施例で採用された条件又はこれと同等の条件の下で、250℃におけるピリジン脱着に基づき赤外分光法で測定したルイス酸量は、好ましくは170μmol/g以上、より好ましくは180μmol/g以上である。
【0023】
本発明の水素化処理触媒は、ルイス酸量がこの範囲にあると、活性点が良質であり、担体-活性金属との相互作用が調節されており、脱硫活性、及び脱窒素活性に優れる。一方、使用上の汎用性を考慮し過度の脱硫反応、及び脱窒素反応の抑制の観点からは、ルイス酸量の上限値は、240μmol/gであってもよい。
【0024】
ルイス酸量は、たとえば後述する製造方法において、例えば前記無機複合酸化物担体に含まれるアルミニウム、ケイ素、及び第三元素の割合を調節ことにより、増減させることができる。
【0025】
本触媒の、後述する実施例で採用された条件又はこれと同等の条件の下で、250℃におけるピリジン脱着に基づき赤外分光法で測定したブレンステッド酸量は、好ましくは2.0μmol/g以上、より好ましくは2.5μmol/g以上であり、その上限値は、好ましくは10μmol/g以下、より好ましくは8.0μmol/g以下である。ブレンステッド酸量がこの範囲にあると、本発明の水素化処理触媒は、過剰な分解活性の付与又はコーク生成を主体とした活性劣化の促進を抑制し、炭化水素油中の含硫黄化合物に対する脱硫性能、及び含窒素化合物に対する脱窒素が向上する。
【0026】
ブレンステッド酸量は、たとえば後述する製造方法において、例えば前記無機複合酸化物担体に含まれるアルミニウム、ケイ素、及び第三元素の割合を調節する、前記活性金属成分中の第1の金属成分、前記第2の金属成分、及び前述のリンの割合を調節するなどの方法により、増減させることができる。
【0027】
本触媒の窒素吸着法で測定した比表面積は、好ましくは250~350m2/gである。比表面積がこの範囲にあると触媒上の活性点との原料油との反応が効率的に進み水素化処理反応が高まるので好ましい。
【0028】
本触媒の、空気雰囲気中、570℃、2時間熱処理した際に減少する質量(以下、「減少量」ともいう。)は、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、その下限値は、例えば0.0質量%であってもよい。
【0029】
減少量がこの範囲にあると、活性金属の望まない凝集を防ぐことができ、触媒上の活性点との原料油との反応が効率的に進み水素化処理反応が高まるので好ましい。
減少量は、たとえば後述する製造方法において、例えば無機複合酸化物担体に対して含浸液を噴霧含浸させた後の焼成の温度を調節することにより、増減させることができる。
【0030】
本触媒は、炭素を好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.5質量%未満の量で含む。
炭素含量がこの範囲にあると、有機酸由来の炭素により担体-金属相互作用を弱くなるように調節でき、担持した金属種の構造維持性が良化することにより本発明の触媒の存在下での水素化脱硫反応の安定性が保たれる。一方、その下限値はたとえば0質量%(検出限界値以下)であり、本触媒は炭素を含まなくてもよい。
【0031】
後述する実施例で採用された条件又はこれと同等の条件の下で測定される、本発明の触媒を硫化処理した後の一酸化窒素の吸着量は、好ましくは9.0ml/g以上、より好ましくは9.5ml/g以上である。吸着量がこの範囲にあることは、水素化処理反応に対する活性点が本触媒に充分に備わっていることを示している。
【0032】
吸着量は、たとえば後述する製造方法において、例えば無機複合酸化物担体に担持する活性金属成分中の前記活性金属成分中の第1の金属成分、前記第2の金属成分、及び後述のリンの割合を調節することにより増減させることができる。
【0033】
[水素化処理触媒の製造方法]
本触媒の製造方法では、前記無機複合酸化物担体を準備する工程Aと前記第1の金属の原料と、前記第2の金属の原料と、溶媒とを含む含浸液を調製し、前記含浸液を前記無機複合酸化物担体に含浸させる工程Bと、前記工程Bにより得られた、前記含浸液が含浸された無機複合酸化物担体を乾燥させ、次いで焼成して水素化処理触媒を得る工程Cを実施する。
【0034】
次に、本発明の水素化処理触媒の製造方法における各工程について詳述する。
【0035】
<無機複合酸化物担体を準備する工程A>
工程Aでは、前記無機複合酸化物担体(以下、単に「担体」ともいう。)を製造する。
工程Aとしては、たとえば以下の工程A-0が挙げられる。
【0036】
工程A-0
工程A-0は、アルミニウム塩水溶液と、ケイ素酸化物成分(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)、ケイ酸ナトリウムのヒドロゲルなどのケイ酸塩)と、前記第三元素の塩とを混合してスラリーを得る工程と、
前記スラリーの固形分を成型した後、加熱処理して担体を得る工程とを有し、
前記ケイ素酸化物成分の量が、前記担体中で、ケイ素酸化物(SiO2)の量に換算して5.0~25.0質量%となる量であり、
前記第三元素の塩の量が、前記担体中で、前記第三元素の酸化物の量に換算して1.0~5.0質量%となる量である、
無機複合酸化物担体を製造する工程である。
工程A-0の好ましい態様として、以下の工程A-1及びA-2が挙げられる。
【0037】
工程A-1
工程A-1は、シリカヒドロゲルを準備する工程a1と、工程a1で準備されたシリカヒドロゲルと塩基性アルミニウム塩水溶液とを混合して混合液(b11)を調製し、酸性アルミニウム塩水溶液と前記第三元素の塩とを混合して混合液(b12)を調製し、前記混合液(b11)と前記混合液(b12)とを混合してスラリー(b1)を得る工程b1と、前記スラリー(b1)の固形分を成型した後、加熱処理して担体を得る工程c1とを含む、無機複合酸化物担体を製造する工程である。
【0038】
工程A-2
工程A-2は、ケイ素と前記第三元素とを含むヒドロゲル(以下、「シリカ複合ヒドロゲル」ともいう。)を準備する工程a2と、工程a2で準備されたシリカ複合ヒドロゲルと塩基性アルミニウム塩水溶液とを混合して混合液(b21)を調製し、前記混合液(b21)と酸性アルミニウム塩水溶液とを混合してスラリー(b2)を得る工程b2と、前記スラリー(b2)の固形分を成型した後、加熱処理して担体を得る工程c2とを含む、無機複合酸化物担体を製造する工程である。
【0039】
前記工程A-1及びA-2では、ケイ素酸化物成分がアルミニウム塩水溶液中にシリカヒドロゲル、もしくはシリカ複合ヒドロゲルの形で懸濁していることから、ケイ素が均一に分散し、以って平均細孔径、細孔容積などが好ましい範囲に調整され、脱硫活性及び脱窒素活性に優れた水素化処理触媒を構成できる担体が得られる、と考えられる。
【0040】
<工程a1及び工程a2>
工程a1において、シリカヒドロゲルは、市販品であってもよく、酸性水溶液とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合して調製してもよい。工程a2において、シリカ複合ヒドロゲルは、市販品であってもよく、酸性水溶液とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と第三元素の塩の水溶液とを混合して調製してもよい。
【0041】
工程a1及び工程a2において、前記酸性水溶液としては、例えば硫酸水溶液、硝酸水溶液、塩酸が挙げられ、硫酸水溶液が好ましい。アルカリ金属珪酸塩水溶液としては、例えば珪酸ナトリウム水溶液及び珪酸カリウム水溶液が挙げられ、珪酸ナトリウム水溶液(珪酸ソーダ水溶液)が好ましい。
【0042】
<工程b1及び工程b2>
工程b1では、工程a1で準備されたシリカヒドロゲルを水に懸濁して所定濃度(通常2.5~16.5質量%、好ましくは3.5~15.5質量%)に調整し、塩基性アルミニウム塩水溶液と混合して混合液(b11)を調製し、この混合液(b11)とは別に酸性アルミニウム塩水溶液と第三元素の塩とを混合して水溶液(b12)を調製し、前記混合液(b11)と前記水溶液(b12)とを、pHが通常6.5~9.5、好ましくは6.5~8.5、より好ましくは6.8~8.0になるように混合してスラリー(b1)、すなわちアルミニウム、ケイ素及び第三元素の無機複合酸化物水和物のスラリーを得る。
【0043】
工程b2では、工程a2で準備されたシリカ複合ヒドロゲルを水に懸濁して所定濃度(通常2.5~16.5質量%、好ましくは3.5~15.5質量%)に調整し、塩基性アルミニウム塩水溶液(これはアルカリ性の水溶液である。)と混合して混合液(b21)を調製し、この混合液(b21)と酸性アルミニウム塩水溶液(これは酸性の水溶液である。)とを、pHが6.5~9.5、好ましくは6.5~8.5、より好ましくは6.8~8.0になるように混合してスラリー(b2)、すなわちアルミニウム、ケイ素及び第三元素の無機複合酸化物水和物のスラリーを得る。
【0044】
工程b1及びb2において、塩基性アルミニウム塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが好適に使用される。また、酸性アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが好適に使用される。
【0045】
工程b1及びb2において、上記の成分にカルボン酸塩を混合してもよい。カルボン酸塩の例としては、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、及びシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルコン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの塩、好ましくはナトリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられ、無機複合酸化物担体100質量%に対して0.5~4.0質量%となる量の範囲で添加することが好ましい。
【0046】
<工程c1及び工程c2>
工程c1では工程b1で得られた無機複合酸化物水和物のスラリー、すなわち前記スラリー(b1)の固形分を、工程c2では工程b2で得られた無機複合酸化物水和物のスラリー、すなわち前記スラリー(b2)の固形分を、成型した後、加熱処理して担体を得る。たとえば、前記スラリー(b1)又は前記スラリー(b2)を、それぞれ、所望により熟成(加熱)した後、洗浄して副生塩を除き、得られた水和物のスラリーを、所望により更に加熱熟成し、慣用の手段により、例えば、加熱捏和して成型可能な捏和物とした後、押出成型等により所望の形状に成型する。そして、この成型体について、通常70~150℃、好ましくは90~130℃で乾燥した後、更に400~800℃、好ましくは450~600℃で、0.5~10時間、好ましくは2~5時間焼成して、アルミニウム、ケイ素、及び第三元素を含有する無機複合酸化物担体を得る。
【0047】
前記工程Aで使用する前記第三元素の塩の例としては、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウムなどが挙げられ、硫酸チタン、酢酸チタン、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウムが好適に使用できる。
【0048】
工程Aでは、各原料は、製造される担体における各元素の割合が前記担体中の各元素の割合となるような割合、すなわちケイ素がケイ素酸化物(SiO2)換算で5.0~25.0質量%となり、第三元素がその酸化物(MO2、MはTi、Zr又はHf)換算で1.0~5.0質量%となる割合(各割合の好ましい範囲も上述のとおりである。)で、使用される。
【0049】
<金属成分の原料を含む含浸液を無機複合酸化物担体に含浸させる工程B>
工程Bでは、前記無機複合酸化物担体に、第1の金属成分の原料と第2の金属成分の原料と溶媒とを含む含浸液を含浸させる。
【0050】
第1の金属成分の原料としては、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン好ましい。また第2の金属成分の原料としては、例えば、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸コバルトが好ましい。
【0051】
溶媒としては、水が使用される。
前記含浸液は第1の金属成分の原料と第2の金属成分の原料に加えて、リン成分を含むことが好ましい。含浸液中のリンの濃度は、酸化物(P2O5)換算で、好ましくは0.5~5.0質量%である。リンの濃度が0.5質量%以上であると、得られる触媒固体酸量を維持することができる。得られる触媒の比表面積の低下、又は活性金属の分散性の指標となる一酸化炭素吸着量の低下を防ぐ観点からは、リンの濃度は5.0質量%以下であることが好ましい。
【0052】
前記リン成分としては、オルトリン酸(以下、単に「リン酸」ともいう)、リン酸二水
素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などが好ましい。
【0053】
前記含浸液には、有機酸を添加してそのpHを4以下にして、金属成分を溶解させることが好ましい。有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が使用でき、特に、クエン酸、リンゴ酸が好適に用いられる。
【0054】
また有機酸に加えて有機添加剤を用いてもよく、有機添加剤としては、糖類(単糖類、二糖類、多糖類等)が挙げられる。具体的には、例えば、ブドウ糖(グルコース;C6H12O6)、果糖(フルクトース;C6H12O6)、麦芽糖(マルトース;C12H22O11)、乳糖(ラクトース;C12H22O11)、ショ糖(スクロース;C12H22O11)等を加えてもよい。
【0055】
前記含浸液は、前記各成分を常法により混合することにより調製できる。
調製された前記含浸液は、無機複合酸化物担体と接触させることにより、無機複合酸化物担体に含浸される。
前記含浸液に含まれる各成分の量は、上述した組成の水素化処理触媒が得られるように、適宜設定すればよい。
【0056】
<水素化処理触媒を得る工程C>
工程Cでは、含浸液が含浸された無機複合酸化物担体を、通常100~350℃、好ましくは110~320℃、さらに好ましくは150~300℃で、通常0.5~24時間、好ましくは0.5~4.0時間加熱処理することにより乾燥させ、次いで通常350~600℃、好ましくは400~600℃、さらに好ましくは420~600℃で、通常0.5~5.0時間、好ましくは0.5~2.0時間加熱処理することにより焼成し、無機複合酸化物担体に活性金属成分が担持されてなる本発明の水素化処理触媒が得られる。
【0057】
前記乾燥の際の温度が100℃以上であると、残存水分による操作性の悪化を防ぎ、かつ金属担持状態を均一にすることができる。また前記焼成の際の温度が600℃以であると、第1の金属及び第2の金属の凝集を防ぎ、これらを担体上で良好に分散させることができる。
【0058】
前記第1の金属成分がモリブデン、又はタングステンのいずれか、及び第2の金属成分が、コバルト、又はニッケルのいずれかであることが脱硫活性、及び脱窒素活性の観点より好ましい。本触媒では、第1の金属成分の含有量が、酸化物換算で15.0~27.0質量%であり、第2の金属成分の含有量が酸化物換算で2.0~7.0質量%である(ただし、水素化処理触媒を100質量%とする。)ことが脱硫活性、脱窒素活性、及び触媒寿命の観点より好ましい。
【実施例0059】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[測定方法]
各種測定は以下のように行った。
【0060】
<ピリジン吸着に基づくFT-IRによる触媒のブレンステッド酸量及びルイス酸量>
測定試料33mgを、内径20mmのディスクに充填し、赤外分光測定装置(日本分光社製、FT-IR4600)内に設置した。測定雰囲気を500℃で1時間真空排気し、その後30℃まで冷却した。その後、再び150℃まで昇温し、ピリジンを試料に吸着させてピリジン吸着スペクトルを取得した。更に250℃で測定雰囲気を真空排気した後、ピリジン脱離後のスペクトルを取得した。そしてピリジン吸着前後の差スペクトルをとり、その1500cm-1付近の吸収バンドのピーク値からブレンステッド酸量、1450cm-1付近の吸収バンドのピーク値からルイス酸量を求めた。
【0061】
<窒素吸脱着測定のBET一点法による担体の比表面積>
測定試料を磁製ルツボ(B-2型)に約30mL採取し、500℃の温度で1時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却し、測定用サンプルを得た。次に、このサンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積(m2/g)をBET法にて測定した。
【0062】
<強熱減量の測定方法>
測定試料である触媒を大気雰囲気下で、570℃で2時間焼成し、焼成による質量減少量から算出した。
【0063】
<炭素の含有量の測定方法>
触媒中の炭素の含有量は、炭素分析装置(HORIBA(株)社製、EMIA-320V)の高周波炉で燃焼することにより測定した。
【0064】
<一酸化窒素吸着量の測定方法>
一酸化窒素吸着量の測定は、全自動触媒ガス吸着量測定装置(大倉理研製)を用い、硫
化処理した水素化処理触媒に、ヘリウムガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(一酸化窒素濃度10容量%)をパルスで導入し、水素化処理触媒1gあたりの一酸化窒素分子吸着量を測定した。具体的には、60メッシュ以下に粉砕した触媒を約0.02g秤取り、これを石英製のセルに充填し、当該触媒を360℃に加熱して、硫化水素5容量%/水素95容量%のガスを0.2L/分の流量で通流させて1時間硫化処理を行い、その後340℃で1時間保持し、物理吸着している硫化水素を系外に排出した。その後にヘリウムガスと一酸化窒素ガスの混合ガスにて一酸化窒素分子を50℃にて吸着させ、一酸化窒素分子吸着量を測定した。
【0065】
<担体成分(アルミニウム、ケイ素、第三元素)及び金属成分(モリブデン、コバルト、ニッケル、リン)の含有量>
測定試料3gを容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取し、乾燥(200℃、20分)させ、焼成(700℃、5分)した後、Na2O22g及びNaOH1gを加えて15分間溶融した。さらに、H2SO425mlと水200mlを加えて溶解したのち、純水で500mlになるよう希釈して試料とした。得られた試料について、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS-8100、解析ソフトウェアICPS-8000)を用いて、各成分の含有量を酸化物換算基準(Al2O3、SiO2、ZrO2、MoO3、NiO、CoO、P2O5)で測定した。
【0066】
無機複合酸化物担体の調製例と、含浸液の調製例と、各無機複合酸化物担体及び含浸液を用いた本発明の実施例である水素化処理触媒の調製例と、各無機複合酸化物担体及び含浸液を用いた比較例である水素化処理触媒の調製例について以下に記載する。
まず無機複合酸化物担体の調製例と、その工程で使用するシリカヒドロゲルの調製例について記載する。
【0067】
<シリカヒドロゲルの調製>
60Lスチームジャケット付きタンクに濃度が25.0質量%の硫酸水溶液8.12kgを入れ、40℃に加温した。この硫酸水溶液に濃度8.5質量%の珪酸ソーダ47.07kgを90分で添加してpH4.0に調整した。次いで、150分間熟成した後、15.0質量%アンモニア水を添加してpH7.0に調製した後、120分間熟成を行い、シリカヒドロゲルを得た。
【0068】
<担体aの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル3.33kgをイオン交換水48.14kgに懸濁して、濃度6.5質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.50kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液141gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液aを調製した。
【0069】
塩基性アルミニウム混合水溶液aとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液7.86kgをイオン交換水14.14kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム219gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液aを調製した。
【0070】
次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液aを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液aを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーaを調製した。スラリーaのpHは7.2であった。
【0071】
得られた無機複合酸化物水和物スラリーaを撹拌しながら60℃で1時間熟成した後、平板フィルターを用いて脱水し、更に、0.3質量%アンモニア水溶液150Lで洗浄した。洗浄後のケーキ状のスラリーをAl2O3濃度換算で6.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、15質量%アンモニア水でpHを10.0に調整した。これを還流機付熟成タンクに移し、撹拌しながら95℃で10時間熟成した。熟成終了後のスラリーを脱水し、スチームジャケットを備えた双腕式ニーダーにて練りながら所定の水分量まで濃縮捏和した。得られた捏和物を押し出し成型機にて直径が1.8mmの円柱形状に成型し、110℃で乾燥した。乾燥した成型品は電気炉で550℃の温度で3時間焼成し、担体aを得た。
【0072】
<担体bの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル3.33kgをイオン交換水49.52kgに懸濁して、濃度6.3質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.38kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液138gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液bを調製した。
【0073】
塩基性アルミニウム混合水溶液bとは別に、濃度がAl2O3換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液7.68kgをイオン交換水13.82kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム439gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液bを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液bを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液bを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーbを調製した。スラリーbのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体bを得た。
【0074】
<担体cの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル2.00kgをイオン交換水49.04kgに懸濁して、濃度3.9質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.75kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液147gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液cを調製した。
【0075】
塩基性アルミニウム混合水溶液cとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液8.21kgをイオン交換水14.79kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム219gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液cを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液cを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液cを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーcを調製した。スラリーcのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体cを得た。
【0076】
<担体dの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル8.00kgをイオン交換水48.69kgに懸濁して、濃度14.1質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液4.63kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液118gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液dを調製した。
【0077】
塩基性アルミニウム混合水溶液dとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液6.61kgをイオン交換水11.89kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム219gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液dを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液dを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液dを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーdを調製した。スラリーdのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体dを得た。
【0078】
<担体eの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル3.33kgをイオン交換水48.78kgに懸濁して、濃度6.4質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.57kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液141gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液eを調製した。
【0079】
塩基性アルミニウム混合水溶液eとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液7.63kgをイオン交換水13.75kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、TiO2濃度換算で33.0質量%の硫酸チタン121gをイオン交換水679gで希釈した混合し、酸性アルミニウム混合水溶液eを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液eを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液eを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーeを調製した。スラリーeのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体eを得た。
【0080】
<担体fの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル3.33kgをイオン交換水49.16kgに懸濁して、濃度6.3質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.52kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液138gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液fを調製した。
【0081】
塩基性アルミニウム混合水溶液fとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液7.23kgをイオン交換水13.02kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、TiO2濃度換算で33.0質量%の硫酸チタン242gをイオン交換水1.36kgで希釈した混合し、酸性アルミニウム混合水溶液fを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液fを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液fを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーfを調製した。スラリーfのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体fを得た。
【0082】
<担体gの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル10.00kgをイオン交換水48.58kgに懸濁して、濃度17.1質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液6.07kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液109gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液gを調製した。
【0083】
塩基性アルミニウム混合水溶液gとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液6.07kgをイオン交換水10.93kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム219gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液gを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液gを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液gを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーgを調製した。スラリーgのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体gを得た。
【0084】
<担体hの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル667gをイオン交換水49.12kgに懸濁して、濃度1.3質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液6.00kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液154gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液hを調製した。
【0085】
塩基性アルミニウム水溶液hとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液8.57kgをイオン交換水15.43kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム219gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液hを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液hを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液hを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーhを調製した。スラリーhのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体hを得た。
【0086】
<担体iの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル3.33kgをイオン交換水50.65kgに懸濁して、濃度6.2質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.13kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液131gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液iを調製した。
塩基性アルミニウム混合水溶液iとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液7.32kgをイオン交換水13.18kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム877gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液iを調製した。
【0087】
次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液iを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液iを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーiを調製した。スラリーiのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体iを得た。
【0088】
<担体jの調製>
100Lスチームジャケット付きタンクに、上述のとおり得られたシリカヒドロゲル3.33kgをイオン交換水48.46kgに懸濁して、濃度6.4質量%へ調節した後に、この懸濁液に濃度がAl2O3換算で22.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.61kgと、濃度25.0質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液144gを加え、塩基性アルミニウム混合水溶液jを調製した。
【0089】
塩基性アルミニウム混合水溶液jとは別に、濃度がAl2O3換算で7.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液8.02kgをイオン交換水14.73kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、ZrO2濃度換算で18.0質量%の硫酸ジルコニウム22gを混合し、酸性アルミニウム混合水溶液jを調製した。次に、前記塩基性アルミニウム混合水溶液jを撹拌しながら、これに酸性アルミニウム混合水溶液jを一定速度で10分間かけて添加して、無機複合酸化物水和物スラリーjを調製した。スラリーjのpHは7.2であった。以降の工程を担体aの調製法と同様に行い、担体jを得た。
【0090】
<含浸液の調製>
次に、含浸液の調製例について記載する。
【0091】
<含浸液A>
三酸化モリブデン257gと炭酸ニッケル111gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸55gとクエン酸91gを加えて溶解させ、含浸液Aを作製した。
【0092】
<含浸液B>
三酸化モリブデン257gと炭酸コバルト100gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸55gとクエン酸91gを加えて溶解させ、含浸液Bを作製した。
【0093】
<含浸液C>
三酸化モリブデン208gと炭酸ニッケル106gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸53gとクエン酸88gを加えて溶解させ、含浸液Cを作製した。
【0094】
<含浸液D>
三酸化モリブデン348gと炭酸ニッケル119gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸59gとクエン酸98gを加えて溶解させ、含浸液Dを作製した。
【0095】
<含浸液E>
三酸化モリブデン250gと炭酸ニッケル60gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸53gとクエン酸49gを加えて溶解させ、含浸液Eを作製した。
【0096】
<含浸液F>
三酸化モリブデン264gと炭酸ニッケル164gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸56gとクエン酸135gを加えて溶解させ、含浸液Fを作製した。
【0097】
<含浸液G>
三酸化モリブデン264gと炭酸ニッケル107gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、クエン酸88gを加えて溶解させ、含浸液Gを作製した。
【0098】
<含浸液H>
三酸化モリブデン257gと炭酸ニッケル54gと炭酸コバルト51gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸55gとクエン酸91gを加えて溶解させ、含浸液Hを作製した。
【0099】
<含浸液I>
三酸化モリブデン163gと炭酸ニッケル102gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸51gとクエン酸84gを加えて溶解させ、含浸液Iを作製した。
【0100】
<含浸液J>
三酸化モリブデン388gと炭酸ニッケル122gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸61gとクエン酸101gを加えて溶解させ、含浸液Jを作製した。
【0101】
<含浸液K>
三酸化モリブデン247gと炭酸ニッケル35gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸53gとクエン酸29gを加えて溶解させ、含浸液Kを作製した。
【0102】
<含浸液L>
三酸化モリブデン271gと炭酸ニッケル221gを、イオン交換水700mLに懸濁させ、この懸濁液を90℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸58gとクエン酸182gを加えて溶解させ、含浸液Lを作製した。
【0103】
<実施例1:水素化処理触媒の調製>
1000gの担体aに含浸液Aの全量を噴霧含浸させた後、担体aを200℃で1時間加熱処理することにより乾燥し、更に電気炉にて550℃で1時間焼成して水素化処理触媒(以下、単に「触媒」ともいう。以下の実施例についても同様である。)を得た。
【0104】
<実施例2~実施例13:水素化処理触媒の調製>
既述のようにした調製した担体の種類(調製例)と含浸液の種類(調製例)とを後述の表1のように組み合わせ、その他は実施例1と同様にして、実施例2~実施例13の触媒を調製した。
【0105】
次に比較例について説明する。
<比較例1~比較例8:水素化処理触媒の調製>
既述のようにした調製した担体の種類(調製例)と含浸液の種類(調製例)とを後述の表1のように組み合わせ、その他は実施例1と同様にして、比較例1~比較例8の触媒を調製した。
なお、複数の実施例又は比較例で使用されることのある担体及び含侵液は、使用すされる実施例又は比較例ごとに調製した。
【0106】
(触媒性能の評価のための確認試験)
各触媒を固定床反応装置に充填し、触媒に含まれている酸素原子を脱離させて活性化するために、予備硫化処理した。この処理は、硫黄化合物を含む液体又は気体を200℃~400℃の温度、常圧~100MPaの水素圧雰囲気下の管理された反応容器中で流通させることによって行われる。
【0107】
次いで、固定床流通式反応装置内に、直留軽油(15℃における密度0.8477g/cm3、硫黄分1.13質量%、窒素分0.083質量%)を150ml/時間の速度で供給して水素化精製を行なった。その際の反応条件は、水素分圧が4.5MPa、液空間速度が1.5h-1、水素油比が250Nm3/klである。また、触媒の活性評価は、反応温度370℃における比較例1の活性を基準(100%)として各触媒の相対活性を示した。ここで、脱硫率は、水素化精製により除去された硫黄分/減圧軽油中の硫黄分×100(%)の式により求められ、脱窒素率は、水素化精製により除去された窒素分/減圧軽油中の窒素分×100(%)の式により求められる。
実施例1~13、及び比較例1~8の各触媒の性状と触媒性能を表1に示す。
【0108】