(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095220
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ミネラル水の製造方法及び微生物の繁殖抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240703BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240703BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240703BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240703BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240703BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240703BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20240703BHJP
【FI】
A23L2/00 V
A23L2/38 B
C02F1/32
B01D63/02
C02F1/44 D
C02F1/28 A
C02F1/68 510B
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 540A
C02F1/68 540D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212340
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】大屋 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】井戸 芳博
(72)【発明者】
【氏名】横尾 芳明
【テーマコード(参考)】
4B117
4D006
4D037
4D624
【Fターム(参考)】
4B117LC07
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG24
4B117LK02
4B117LP01
4B117LP02
4B117LP12
4B117LP13
4B117LP17
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4D624CA13
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4D624DB30
(57)【要約】
【課題】美味しくかつ安全なミネラル水を長期的に安定して提供すること、及び浄水システムや製品(例えば、容器詰めの飲用水、食品又は飲料)における微生物の繁殖を抑制することを目的とする。
【解決手段】ミネラル水を製造する方法であって、ミネラル溶液を提供する工程、水道水をろ過して浄水を提供する工程、及びミネラル水中のカリウムイオン濃度が20ppm以上となるように、前記ミネラル溶液と前記浄水とを混合する工程を含むことを特徴とする、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラル水を製造する方法であって、
ミネラル溶液を提供する工程、
水道水をろ過して浄水を提供する工程、及び
ミネラル水中のカリウムイオン濃度が20ppm以上となるように、前記ミネラル溶液と前記浄水とを混合する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ミネラル溶液が弱アルカリ性のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ミネラル溶液がカートリッジに充填されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ミネラル溶液の除菌が中空糸膜を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ミネラル溶液の殺菌がUV照射により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ミネラル溶液のpHが7.5~10.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ミネラル溶液中のカリウムイオン濃度が、1,000ppm以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ミネラル溶液が、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラル抽出液を抽出することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記植物由来原料が、ココヤシ、パームヤシ、アーモンド、クルミ又はプラムの果実殻;おがくず、木炭、樹脂又はリグニンから選択される木材;巣灰;竹材;バガス、もみ殻、コーヒー豆又は廃糖蜜から選択される食品残渣;あるいはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ミネラル溶液が、前記ミネラル抽出液をさらに濃縮することによって調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ミネラル水が経口摂取可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ミネラル水が延長されたシェルライフを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
浄水システム内の微生物の繁殖を抑制する方法であって、
前記浄水システムにおいて、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を用いてミネラル水を提供する工程、及び
前記ミネラル水で前記浄水システムの管路の少なくとも一部を満たす工程を含む、方法。
【請求項15】
製品における微生物の繁殖を抑制する方法であって、前記製品に請求項1~13のいずれか1項に記載の方法により製造されたミネラル水を適用することを含む、方法。
【請求項16】
前記製品が、容器詰めの飲用水、食品又は飲料である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美味しくかつ安全なミネラル水を長期的に安定して提供するする方法、及び浄水システムや製品(例えば、容器詰めの飲用水、食品又は飲料)における微生物の繁殖を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向や美味志向を背景として、安全で美味しい水を求める社会的関心が高まっており、浄水器の設置が増えている。一方で、水にミネラルを付与してより高付加価値な飲料を提供する取り組みが進んでいる。
【0003】
特許文献1には、麦飯石、天寿石、トルマリン等の天然鉱石を水に浸漬することによりミネラル成分を溶出させることを特徴とするミネラル水の製造方法が開示されているが、このような従来の方法においては、徐放されるミネラル濃度が安定しないため、長期的に、安定した微生物の抑制効果は期待できない。
【0004】
引用文献2には、抗菌活性炭を組み込んだ浄水カートリッジが開示されているが、抗菌物質が固形であるため、徐放されるミネラル濃度が安定せず、また、抗菌活性炭の抗菌物質が脱離して水に混入するリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-102137号公報
【特許文献2】特開2003-88855号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】安部郁夫,活性炭の製造方法,炭素 連載講座,2006,No.225,373-381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存のカートリッジ型浄水器を用いる場合、カートリッジの装着後は、長期間(例えば、6カ月間)接続されたままとなる。したがって、カートリッジの接続部が汚れている場合や交換の際にカートリッジの接続部を手などで触れた場合には、微生物がカートリッジに吸い込まれ、浄水を汚染する恐れがあった。さらに、浄水器で水道水を浄水化すると、水道水に含まれている塩素が除去されてしまうため、従来の浄水システムにおいては、微生物が非常に増殖しやすいという問題があった。また、蛇口付近の浄水は外気に暴露されているため、従来の浄水システムにおいては、蛇口付近に滞留した水は、定期的(例えば、48時間に1回)に排出するために定時排水機構を備えている必要があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決し、美味しくかつ安全なミネラル水を長期的に安定して提供すること、及び浄水システムや製品(例えば、容器詰めの飲用水、食品又は飲料)における微生物の繁殖を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の経路において、ミネラル成分を含有するミネラル溶液を提供し、第2の経路において、水道水をろ過して浄水を提供し、当該ミネラル溶液と浄水を混合することにより、ミネラル成分が付加され、美味しくかつ安全なミネラル水を長期的に安定して提供することが可能な新規な浄水システムに基づく。本発明らは、このたび、このような浄水システムにおいて、浄水と混合する前にミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌することにより、下流側の浄水を汚染することなくミネラル水を提供することが可能となり、さらには、弱アルカリ性のpHを有するミネラル溶液を浄水に添加して得られたミネラル水を浄水システムの管路に満たすことによって、浄水システム内の滞留水における微生物の繁殖を抑制することが可能となる、という驚くべき知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の主旨は、以下に存する。
[1] ミネラル水を製造する方法であって、
ミネラル溶液を提供する工程、
水道水をろ過して浄水を提供する工程、及び
ミネラル水中のカリウムイオン濃度が20ppm以上となるように、前記ミネラル溶液と前記浄水とを混合する工程を含むことを特徴とする、方法。
[2] 前記ミネラル溶液が弱アルカリ性のpHを有する、1に記載の方法。
[3] 前記ミネラル溶液がカートリッジに充填されている、1に記載の方法。
[4] 前記ミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌する工程をさらに含む、1に記載の方法。
[5] 前記ミネラル溶液の除菌が中空糸膜を用いて行われる、1に記載の方法。
[6] 前記ミネラル溶液の殺菌がUV照射により行われる、1に記載の方法。
[7] 前記ミネラル溶液のpHが7.5~10.5である、1に記載の方法。
[8] 前記ミネラル溶液中のカリウムイオン濃度が、1,000ppm以上である、1に記載の方法。
[9] 前記ミネラル溶液が、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラル抽出液を抽出することによって調製される、1に記載の方法。
[10] 前記植物由来原料が、ココヤシ、パームヤシ、アーモンド、クルミ又はプラムの果実殻;おがくず、木炭、樹脂又はリグニンから選択される木材;巣灰;竹材;バガス、もみ殻、コーヒー豆又は廃糖蜜から選択される食品残渣;あるいはこれらの組み合わせから選択される、1に記載の方法。
[11] 前記ミネラル溶液が、前記ミネラル抽出液をさらに濃縮することによって調製される、7に記載の方法。
[12] 前記ミネラル水が経口摂取可能である、1に記載の方法。
[13] 前記ミネラル水が延長されたシェルライフを有する、1に記載の方法。
[14] 浄水システム内の微生物の繁殖を抑制する方法であって、
前記浄水システムにおいて1~13のいずれかに記載の方法を用いてミネラル水を提供する工程、及び
前記ミネラル水で前記浄水システムの管路の少なくとも一部を満たす工程を含む、方法。
[15] 製品における微生物の繁殖を抑制する方法であって、前記製品に1~13のいずれかに記載の方法により製造されたミネラル水を適用することを含む、方法。
[16] 前記製品が、容器詰めの飲用水、食品又は飲料である、15に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、浄水システム内を静菌状態で保つことができる。また、高濃度のミネラルを含有するミネラル溶液を用いることにより、浄水システムをコンパクトにすることができる。ミネラルの濃度調節が容易となり、美味しくかつ安全なミネラル水を長期的に安定して提供することが可能となる。また、これにより、延長されたシェルライフを有するミネラル水を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一の態様において、ミネラル水を製造する方法であって、
ミネラル溶液を提供する工程、
水道水をろ過して浄水を提供する工程、及び
ミネラル水中のカリウムイオン濃度が20ppm以上となるように、前記ミネラル溶液と前記浄水とを混合する工程を含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0013】
本発明において用いられるミネラル溶液は、単回使用又は交換可能な容器(カートリッジ)に充填して提供されることが好ましい。容器の形態は、特に制限されないが、例えば、金属容器(缶)、樹脂容器、紙容器(ケーブルトップつきも含む)、PET容器、パウチ容器、ガラス瓶などが挙げられる。
【0014】
水道水のろ過は、残留塩素やコロイド粒子や微生物を除くために行われ、使用形態により一般的には蛇口直結型、据羅型、流し台組み込み型(アンダーシンクタイプ)に分けられ、典型的には活性炭や中空糸膜などの浄水フィルターが組み込まれた浄水器によって行われる。
【0015】
本発明において用いられるミネラル溶液は、水道水をろ過して得られた浄水と混合することにより希釈されて、ミネラル水が製造されるが、ミネラル溶液が充填されたカートリッジを開封して浄水システムの管路に接続する場合、カートリッジの装着後は、長期間接続されたままとなる。したがって、カートリッジの接続部が汚れている場合やカートリッジの接続部を手などで触れた場合には、微生物がカートリッジに吸い込まれ、浄水を汚染する可能性があるため、本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合する前に除菌及び/又は殺菌されることが好ましい。したがって、本発明に係る方法は、前記ミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌する工程をさらに含んでよい。
【0016】
本願明細書において、微生物は、特に制限されないが、典型的には水、特に水道水又は浄水に生息する細菌であり、例えば、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌が挙げられる。
【0017】
ミネラル溶液の除菌は、好ましくは中空糸膜を用いて行われる。中空糸膜の種類は、浄水システムにおいて用いることができる限り特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテル系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリスルフォン系、フッ素樹脂系、ポリエステル系、又はポリアミド系が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系中空糸膜が用いられる。中空糸膜の中空糸としては、例えば、外径が約20~約2000μm、口径が約0.01~約1μm、空孔率が約20~約90%、膜厚が約5~約300μmのものを用いることができる。
【0018】
ミネラル溶液の殺菌は、好ましくは紫外線(UV)照射により行われる。UV照射装置の光源としては、例えば、紫外線発光ダイオード(UV-LED)が挙げられるが、殺菌効果の高さの観点から、約200nm~約300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する深紫外発光ダイオード(DUV-LED)を使用することが好ましい。UV照射装置に通液する流量は、殺菌可能である限り特に制限されないが、典型的には、4mL/分以下、好適には、0.5mL/分以下、最適には、0.1mL/分以下である。
【0019】
このように、浄水と混合する前にミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌することにより、浄水側(下流側)を汚染することなくミネラル水を提供することが可能となる。
【0020】
また、上述のとおり、従来の浄水システムによって水道水を浄水化した場合には、水道水に含まれている塩素が除去されてしまうため、浄水中に微生物が非常に増殖しやすいという問題があったが、本発明者らは、この度、本発明において用いられるミネラル溶液を浄水に添加して得られたミネラル水が、微生物の増殖を抑制する機能を有するという驚くべき知見を見出した。
【0021】
本発明において用いられるミネラル溶液は、好ましくは、弱アルカリ性のpHを有しており、このようなpHは、典型的には、7.5~10.5、7.5~10.0、7.5~9.5、7.5~9.0、7.5~8.5、7.5~8.0、8.0~10.5、8.0~10.0、8.0~9.5、8.0~9.0、8.0~8.5、8.5~10.5、8.5~10.0、8.5~9.5、8.5~9.0、9.0~10.5、9.0~10.0、9.0~9.5、9.5~10.5、9.5~10.0、又は10.0~10.5である。
【0022】
本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合することにより、浄水にミネラル成分を付加して、安定的にミネラル水を提供することを目的とすることから、ミネラル溶液には、高濃度のミネラル成分が含まれていることが好ましい。ミネラル溶液中のカリウムイオン濃度は、例えば、1,000ppm以上、2,000ppm以上、3,000ppm以上、4,000ppm以上、5,000ppm以上、6,000ppm以上、7,000ppm以上、8,000ppm以上、9,000ppm以上、10,000ppm以上、11,000ppm以上、12,000ppm以上、13,000ppm以上、14,000ppm以上、15,000ppm以上、16,000ppm以上、17,000ppm以上、18,000ppm以上、19,000ppm以上、20,000ppm以上、21,000ppm以上、22,000ppm以上、23,000ppm以上、24,000ppm以上、25,000ppm以上、26,000ppm以上、27,000ppm以上、28,000ppm以上、29,000ppm以上、30,000ppm以上、31,000ppm以上、32,000ppm以上、33,000ppm以上、34,000ppm以上、35,000ppm以上、36,000ppm以上、37,000ppm以上、38,000ppm以上、39,000ppm以上、40,000ppm以上、41,000ppm以上、42,000ppm以上、43,000ppm以上、44,000ppm以上、45,000ppm以上、46,000ppm以上、47,000ppm以上、48,000ppm以上、49,000ppm以上、50,000ppm以上、51,000ppm以上、52,000ppm以上、53,000ppm以上、54,000ppm以上、55,000ppm以上、56,000ppm以上、57,000ppm以上、58,000ppm以上、59,000ppm以上、60,000ppm以上、61,000ppm以上、62,000ppm以上、63,000ppm以上、64,000ppm以上、65,000ppm以上、66,000ppm以上、67,000ppm以上、68,000ppm以上、69,000ppm以上、70,000ppm以上、71,000ppm以上、72,000ppm以上、73,000ppm以上、74,000ppm以上、75,000ppm以上、76,000ppm以上、77,000ppm以上、78,000ppm以上、79,000ppm以上、80,000ppm以上、81,000ppm以上、82,000ppm以上、83,000ppm以上、84,000ppm以上、85,000ppm以上、86,000ppm以上、87,000ppm以上、88,000ppm以上、89,000ppm以上、90,000ppm以上、91,000ppm以上、92,000ppm以上、93,000ppm以上、94,000ppm以上、95,000ppm以上、96,000ppm以上、97,000ppm以上、98,000ppm以上、99,000ppm以上、100,000ppm以上、110,000ppm以上、120,000ppm以上、130,000ppm以上、140,000ppm以上、150,000ppm以上、160,000ppm以上、170,000ppm以上、180,000ppm以上、190,000ppm以上、200,000ppm以上であってよい。
【0023】
本発明において用いられるミネラル溶液は、例えば、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラル抽出液を抽出することによって調製することができる。
【0024】
活性炭は、大部分の炭素の他、酸素、水素、カルシウムなどからなる多孔質の物質であり、体積あたり表面積が大きいため、多くの物質を吸着する性質を有することから、20世紀初頭から現在にいたるまで、工業的に広く生産されている。一般には、活性炭は、原料となる炭素材料の内部にnmオーダーの微細孔を生成させること(賦活)によって製造される。活性炭の製造方法は、原料を炭化したのち水蒸気や二酸化炭素などの賦活ガスを用いて高温で賦活処理を行うガス賦活法と、原料に塩化亜鉛やリン酸などの薬品を加えてから不活性ガス雰囲気中で加熱して炭化と賦活を同時に行う薬品賦活法に大別される(非特許文献1)。本発明において用いられる活性炭は、炭素材料として植物由来原料を用いて、上記ガス賦活法又は薬品賦活法のいずれかによって製造することができる。本発明において用いられる活性炭は、ミネラル成分の抽出源として使用されるため、活性炭は塩酸等の強酸で洗浄されていないものが好ましい。
【0025】
活性炭の原料は、植物由来原料である限り特に制限されないが、例えば、果実殻(ココヤシ、パームヤシ、アーモンド、クルミ、プラム)、木材(おがくず、木炭、樹脂、リグニン)、巣灰(おがくずの炭化物)、竹材、食品残渣(バガス、もみ殻、コーヒー豆、廃糖蜜)、廃棄物(パルプ工場廃液、建設廃材)などが挙げられ、典型的には、ヤシ殻、おがくず、竹、又はこれらの組み合わせから選択され、好適には、ヤシ殻である。ヤシ殻は、ココヤシ又はパームヤシの実の中にあるシェルと呼ばれる殻を意味する。
【0026】
活性炭の形状は特に限定されないが、例えば、粉末活性炭、粒状活性炭(破砕炭、顆粒炭、成型炭)、繊維状活性炭、又は特殊成型活性炭などが挙げられる。
【0027】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラル抽出液を抽出する工程は、植物由来原料の活性炭を水系溶媒と接触させて、植物由来原料の活性炭に存在するミネラルを溶出させることによって達成される。このような工程は、植物由来原料の活性炭に存在するミネラルを溶出させることができる限り特に制限されないが、例えば、植物由来原料の活性炭を水系溶媒に浸漬することや、植物由来原料の活性炭を充填したカラムに水系溶媒を通過させることによって行うことができる。植物由来原料の活性炭を水系溶媒に浸漬する場合には、抽出効率を上げるために、水系溶媒を攪拌してもよい。また、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出した後に、不純物を除去するために、得られた抽出液を遠心分離する工程、及び/又は濾過する工程などをさらに含んでもよい。
【0028】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程において用いられる水系溶媒は、基本的には、HCl溶液以外のものを指す。典型的には水溶媒であり、特に純水であることが好ましい。純水とは、塩類、残留塩素、不溶性微粒子、有機物、非電解性ガスなどの不純物を含まないか殆ど含まない純度の高い水を意味する。純水には、不純物を取り除く方法により、RO水(逆浸透膜を通した水)、脱イオン水(イオン交換樹脂などによりイオンを除去した水)、蒸留水(蒸留器で蒸留した水)などが含まれる。純水はミネラル成分を含まないことから、ミネラルを補給する効果は示さない。
【0029】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出できる限り抽出温度は特に制限されないが、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程は、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、又は95℃以上の温度で行うことができ、例えば、5~95℃、5~90℃、5~85℃、5~80℃、5~75℃、5~70℃、5~65℃、5~60℃、5~55℃、5~50℃、5~45℃、5~40℃、5~35℃、5~30℃、5~25℃、5~20℃、5~15℃、5~10℃、10~95℃、10~90℃、10~85℃、10~80℃、10~75℃、10~70℃、10~65℃、10~60℃、10~55℃、10~50℃、10~45℃、10~40℃、10~35℃、10~30℃、10~25℃、10~20℃、10~15℃、15~95℃、15~90℃、15~85℃、15~80℃、15~75℃、15~70℃、15~65℃、15~60℃、15~55℃、15~50℃、15~45℃、15~40℃、15~35℃、15~30℃、15~25℃、15~20℃、20~95℃、20~90℃、20~85℃、20~80℃、20~75℃、20~70℃、20~65℃、20~60℃、20~55℃、20~50℃、20~45℃、20~40℃、20~35℃、20~30℃、20~25℃、25~95℃、25~90℃、25~85℃、25~80℃、25~75℃、25~70℃、25~65℃、25~60℃、25~55℃、25~50℃、25~45℃、25~40℃、25~35℃、25~30℃、30~95℃、30~90℃、30~85℃、30~80℃、30~75℃、30~70℃、30~65℃、30~60℃、30~55℃、30~50℃、30~45℃、30~40℃、30~35℃、35~95℃、35~90℃、35~85℃、35~80℃、35~75℃、35~70℃、35~65℃、35~60℃、35~55℃、35~50℃、35~45℃、35~40℃、40~95℃、40~90℃、40~85℃、40~80℃、40~75℃、40~70℃、40~65℃、40~60℃、40~55℃、40~50℃、40~45℃、45~95℃、45~90℃、45~85℃、45~80℃、45~75℃、45~70℃、45~65℃、45~60℃、45~55℃、45~50℃、50~95℃、50~90℃、50~85℃、50~80℃、50~75℃、50~70℃、50~65℃、50~60℃、50~55℃、55~95℃、55~90℃、55~85℃、55~80℃、55~75℃、55~70℃、55~65℃、55~60℃、60~95℃、60~90℃、60~85℃、60~80℃、60~75℃、60~70℃、60~65℃、65~95℃、65~90℃、65~85℃、65~80℃、65~75℃、65~70℃、70~95℃、70~90℃、70~85℃、70~80℃、70~75℃、75~95℃、75~90℃、75~85℃、75~80℃、80~95℃、80~90℃、80~85℃、85~95℃、85~90℃、又は90~95℃の温度で行われる。
【0030】
植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出できる限り抽出時間は特に制限されないが、植物由来原料の活性炭から水系溶媒を用いてミネラルを抽出する工程は、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上、35分以上、40分以上、45分以上、50分以上、55分以上、60分以上、65分以上、70分以上、75分以上、又は80分以上の時間で行うことができ、例えば、5~80分、5~75分、5~70分、5~65分、5~60分、5~55分、5~50分、5~45分、5~40分、5~35分、5~30分、5~25分、5~20分、5~15分、5~10分、10~80分、10~75分、10~70分、10~65分、10~60分、10~55分、10~50分、10~45分、10~40分、10~35分、10~30分、10~25分、10~20分、10~15分、15~80分、15~75分、15~70分、15~65分、15~60分、15~55分、15~50分、15~45分、15~40分、15~35分、15~30分、15~25分、15~20分、20~80分、20~75分、20~70分、20~65分、20~60分、20~55分、20~50分、20~45分、20~40分、20~35分、20~30分、20~25分、25~80分、25~75分、25~70分、25~65分、25~60分、25~55分、25~50分、25~45分、25~40分、25~35分、25~30分、30~80分、30~75分、30~70分、30~65分、30~60分、30~55分、30~50分、30~45分、30~40分、30~35分、35~80分、35~75分、35~70分、35~65分、35~60分、35~55分、35~50分、35~45分、35~40分、40~80分、40~75分、40~70分、40~65分、40~60分、40~55分、40~50分、40~45分、45~80分、45~75分、45~70分、45~65分、45~60分、45~55分、45~50分、50~80分、50~75分、50~70分、50~65分、50~60分、50~55分、55~80分、55~75分、55~70分、55~65分、55~60分、60~80分、60~75分、60~70分、60~65分、65~80分、65~75分、65~70分、70~80分、70~75分、又は75~80分の時間で行われる。
【0031】
上記のような抽出方法により、ミネラルとして、特にカリウムを豊富に含むミネラル抽出液を得ることができる。カリウムは生体に必要なミネラルの1つであり、生体内においては大部分が細胞内に存在し、細胞外液に多く存在するナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧を維持したり、細胞内の水分を保持したりするのに重要な役割を果たしている。カリウムは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きを担っている。また、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果を有することが知られている。
【0032】
また、上記抽出方法により得られたミネラル抽出液は、塩化物イオン及び二価の金属イオンの含有量が有意に少ないといった利点を有する。下記で詳しく説明するように、塩化物イオン及び二価の金属イオンは、苦味やえぐみといった雑味をもたらす。上記ミネラル抽出液の製造方法により得られたミネラル抽出液は、人にとって極めて重要なミネラル成分であるカリウムを豊富に含む一方で、苦味やえぐみといった雑味をもたらす二価の金属イオン及び塩化物イオンの含有量が少ない。また、上記ミネラル抽出液の製造方法により得られたミネラル抽出液においては、重金属類(鉛、カドミウム、ヒ素、水銀など)が活性炭中に存在していても、その抽出が抑制される。したがって、上記ミネラル抽出液の製造方法により得られたミネラル抽出液は、飲用水、食品又は飲料のミネラル添加剤の原材料として極めて有用である。
【0033】
本発明において用いられるミネラル溶液は、上述したミネラル抽出液をさらに濃縮することによって調製してもよい。
【0034】
ミネラル抽出液を濃縮する工程は、当業界において周知な方法によって行うことができ、このような方法としては、例えば、煮沸濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮、又は超音波霧化分離などが挙げられる。ミネラル抽出液を濃縮することにより、その組成を殆ど変更することなく、高濃度のカリウムなどの所望のミネラルを含有するミネラル濃縮液組成物が得られる。
【0035】
前記ミネラル抽出液を濃縮する工程の後に、得られたミネラル濃縮液組成物を冷蔵保管及び冷時濾過することが好ましい。冷却温度は、典型的には、0~15℃、好ましくは、3~10℃、3~9℃、3~8℃、3~7℃、3~6℃に調整される。また、このような冷蔵保管及び冷時濾過より前にミネラル濃縮液組成物のpHを調整することが好ましい。ミネラル濃縮液組成物は、例えば、7.5~10.5、7.5~10.0、7.5~9.5、7.5~9.0、7.5~8.5、7.5~8.0、8.0~10.5、8.0~10.0、8.0~9.5、8.0~9.0、8.0~8.5、8.5~10.5、8.5~10.0、8.5~9.5、8.5~9.0、9.0~10.5、9.0~10.0、9.0~9.5、9.5~10.5、9.5~10.0、又は10.0~10.5のpHを有するように調整される。このような処理を行うことにより、透明性が高く、浮遊物や沈殿物が有意に低減されたミネラル濃縮液組成物を得ることができる。
【0036】
したがって、本発明において用いられるミネラル溶液は、このようにして調製されたミネラル抽出液又はミネラル濃縮液組成物を含むことが好ましい。
【0037】
本発明において用いられるミネラル溶液は、ミネラル成分の他に保存料を含んでいてもよい。このような保存料は、飲用水、食品又は飲料に添加できる限り特に制限されないが、例えば、エタノール、安息香酸、安息香酸ナトリウム、しらこたん白抽出物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、ポリリジンなどが挙げられる。
【0038】
ミネラル溶液の希釈割合は、ミネラル水中のカリウムイオン濃度が20ppm以上となるように浄水と混合される限り特に限定されないが、例えば、浄水に対して10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、100倍以上、200倍以上、300倍以上、400倍以上、500倍以上、600倍以上、700倍以上、800倍以上、900倍以上、1,000倍以上、2,000倍以上、3,000倍以上、4,000倍以上、5,000倍以上、6,000倍以上、7,000倍以上、8,000倍以上、9,000倍以上、10,000倍以上で混合することができる。
【0039】
本発明において用いられるミネラル溶液は、例えばポンプを用いて浄水と自動混和することにより、連続的かつ安定的にミネラル水を提供することができる。
【0040】
本発明に係る方法により製造されたミネラル水は、経口摂取可能であり、飲用であることが好ましい。
【0041】
カリウムは人にとって極めて重要なミネラル成分であるが、過剰なカリウムイオンは、苦みやえぐみといった雑味をもたらす。したがって、本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合してミネラル水を提供する際に、ミネラル水中のカリウム濃度の下限値が、20ppm以上、25ppm以上、30ppm以上、35ppm以上、40ppm以上、45ppm以上、又は50ppm以上であり、そして、カリウムイオン濃度の上限値が600ppm以下、595ppm以下、590ppm以下、585ppm以下、580ppm以下、575ppm以下、570ppm以下、565ppm以下、560ppm以下、555ppm以下、550ppm以下、545ppm以下、540ppm以下、535ppm以下、530ppm以下、525ppm以下、520ppm以下、515ppm以下、510ppm以下、505ppm以下、500ppm以下、495ppm以下、490ppm以下、485ppm以下、480ppm以下、475ppm以下、470ppm以下、465ppm以下、460ppm以下、455ppm以下、450ppm以下、445ppm以下、440ppm以下、435ppm以下、430ppm以下、425ppm以下、420ppm以下、415ppm以下、410ppm以下、405ppm以下、400ppm以下、395ppm以下、390ppm以下、385ppm以下、380ppm以下、375ppm以下、370ppm以下、365ppm以下、360ppm以下、355ppm以下、350ppm以下、345ppm以下、340ppm以下、335ppm以下、330ppm以下、325ppm以下、320ppm以下、315ppm以下、310ppm以下、305ppm以下、300ppm以下、295ppm以下、290ppm以下、285ppm以下、280ppm以下、275ppm以下、270ppm以下、265ppm以下、260ppm以下、255ppm以下、250ppm以下、245ppm以下、240ppm以下、235ppm以下、230ppm以下、225ppm以下、220ppm以下、215ppm以下、210ppm以下、205ppm以下、又は200ppm以下となるように調製されることが好ましい。本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合してミネラル水を提供する際に、ミネラル水中のカリウム濃度が、例えば、20~200ppm、20~190ppm、20~180ppm、20~170ppm、20~160ppm、20~150ppm、20~140ppm、20~130ppm、20~120ppm、20~110ppm、20~100ppm、20~90ppm、20~80ppm、20~70ppm、20~60ppm、20~50ppm、20~40ppm、20~30ppm、30~200ppm、30~190ppm、30~180ppm、30~170ppm、30~160ppm、30~150ppm、30~140ppm、30~130ppm、30~120ppm、30~110ppm、30~100ppm、30~90ppm、30~80ppm、30~70ppm、30~60ppm、30~50ppm、30~40ppm、40~200ppm、40~190ppm、40~180ppm、40~170ppm、40~160ppm、40~150ppm、40~140ppm、40~130ppm、40~120ppm、40~110ppm、40~100ppm、40~90ppm、40~80ppm、40~70ppm、40~60ppm、40~50ppm、50~200ppm、50~190ppm、50~180ppm、50~170ppm、50~160ppm、50~150ppm、50~140ppm、50~130ppm、50~120ppm、50~110ppm、50~100ppm、50~90ppm、50~80ppm、50~70ppm、50~60ppm、60~200ppm、60~190ppm、60~180ppm、60~170ppm、60~160ppm、60~150ppm、60~140ppm、60~130ppm、60~120ppm、60~110ppm、60~100ppm、60~90ppm、60~80ppm、60~70ppm、70~200ppm、70~190ppm、70~180ppm、70~170ppm、70~160ppm、70~150ppm、70~140ppm、70~130ppm、70~120ppm、70~110ppm、70~100ppm、70~90ppm、70~80ppm、80~200ppm、80~190ppm、80~180ppm、80~170ppm、80~160ppm、80~150ppm、80~140ppm、80~130ppm、80~120ppm、80~110ppm、80~100ppm、80~90ppm、90~200ppm、90~190ppm、90~180ppm、90~170ppm、90~160ppm、90~150ppm、90~140ppm、90~130ppm、90~120ppm、90~110ppm、90~100ppm、100~200ppm、100~190ppm、100~180ppm、100~170ppm、100~160ppm、100~150ppm、100~140ppm、100~130ppm、100~120ppm、100~110ppm、110~200ppm、110~190ppm、110~180ppm、110~170ppm、110~160ppm、110~150ppm、110~140ppm、110~130ppm、110~120ppm、120~200ppm、120~190ppm、120~180ppm、120~170ppm、120~160ppm、120~150ppm、120~140ppm、120~130ppm、130~200ppm、130~190ppm、130~180ppm、130~170ppm、130~160ppm、130~150ppm、130~140ppm、140~200ppm、140~190ppm、140~180ppm、140~170ppm、140~160ppm、140~150ppm、150~200ppm、150~190ppm、150~180ppm、150~170ppm、150~160ppm、160~200ppm、160~190ppm、160~180ppm、160~170ppm、170~200ppm、170~190ppm、170~180ppm、180~200ppm、180~190ppm、又は190~200ppmとなるように調製することができる。
【0042】
天然に存在する水には一定量の塩化物イオンが含まれており、これらの多くは地質や海水に由来するものである。塩化物イオンは、250~400mg/l以上存在すると、味に鋭敏な人には塩味を与え、味を損なう可能性があるため、本発明において用いられるミネラル溶液における塩化物イオンの含有量は、できるだけ少なくなるように調製することが好ましい。本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合してミネラル水を提供する際に、ミネラル水中の塩化物イオンの含有量が、例えば、前記カリウムイオン濃度の50%以下、49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下となるように調製することができる。本発明において用いられるミネラル溶液中の塩化物イオンの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の50%以下、49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下である。
【0043】
カルシウムは、生体内において、リンと共にハイドロキシアパタイトとして骨格を形成し、筋肉の収縮に関与することが知られている。マグネシウムは、生体内において、骨や歯の形成並びに多くの体内の酵素反応やエネルギー産生に関与することが知られている。また、水中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの含有量は、水の味に影響することが知られており、水中に含まれるミネラル類のうちカルシウムとマグネシウムの合計含有量の指標(硬度)が一定水準より少ない場合を軟水、多い場合を硬水という。一般的には、日本国内で産出されるミネラル水は軟水のものが多く、欧州で産出されるものには硬水が多い。WHOの基準では、これらの塩類の量を炭酸カルシウムに換算したアメリカ硬度(mg/l)において、0~60のものを軟水、120~180のものを硬水、180以上のものを非常な硬水というように決められている。一般的には適度な硬度(10~100mg/l)の水が美味しいとされており、特にマグネシウム含有量が高くなると苦みが強く飲みにくくなる。また、硬度が高すぎると、水の味覚に影響を与えるだけでなく、胃腸を刺激し、下痢などの原因となるため好ましくない。したがって、本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合してミネラル水を提供する際に、ミネラル水中のカルシウムイオンの含有量が、例えば、前記カリウムイオン濃度の30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下であり、そして、ミネラル水中のマグネシウムイオンの含有量が、例えば、前記カリウムイオン濃度の15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下となるように調製することが好ましい。本発明において用いられるミネラル溶液中のカルシウムイオンの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、又は0.01%以下である。また、本発明において用いられるミネラル溶液中のマグネシウムイオンの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、又は0.01%以下である。
【0044】
ナトリウムは、生体内において、水分を保持しながら細胞外液量や循環血液の量を維持し、血圧を調節している。効果的に体内に水分補給するには、一定量のナトリウムイオンを摂取するとよいことが知られており、特に熱中症対策などに有効である。しかしながら、ナトリウムを過剰に摂取すると、この液量が増大するため、血圧が上昇したり、むくみが生じたりするおそれがある。また、ナトリウムイオンの含有量が多くなるにしたがい、塩味やぬめり感が生じてしまい、飲料の爽快感が損なわれる場合がある。したがって、本発明において用いられるミネラル溶液は、浄水と混合してミネラル水を提供する際に、ミネラル水中のナトリウムイオン濃度が、例えば、前記カリウムイオン濃度の10~50%、10~45%、10~40%、10~35%、10~30%、10~25%、10~20%、10~15%、15~50%、15~45%、15~40%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~50%、20~45%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%、25~30%、30~50%、30~45%、30~40%、30~35%、35~50%、35~45%、35~40%、40~50%、40~45%、又は45~50%となるように調製することが好ましい。前記ミネラル溶液中のナトリウムの含有量は、例えば、前記カリウムイオン濃度の5~45%、5~40%、5~35%、5~30%、5~25%、5~20%、5~15%、5~10%、10~45%、10~40%、10~35%、10~30%、10~25%、10~20%、10~15%、15~45%、15~40%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~45%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%、25~30%、30~45%、30~40%、30~35%、35~45%、35~40%、又は40~45%である。
【0045】
本発明に係る方法により製造されたミネラル水は、典型的には、7.5~10.5、7.5~10.0、7.5~9.5、7.5~9.0、7.5~8.5、7.5~8.0、8.0~10.5、8.0~10.0、8.0~9.5、8.0~9.0、8.0~8.5、8.5~10.5、8.5~10.0、8.5~9.5、8.5~9.0、9.0~10.5、9.0~10.0、9.0~9.5、9.5~10.5、9.5~10.0、又は10.0~10.5のpHを有してよい。また、本発明に係る方法により製造されたミネラル水は、緩衝能を有しており、好ましくは、弱アルカリ性から弱酸性のpH領域において、有意な緩衝能を有する。例えば、pH9.2に調整した水酸化ナトリウム溶液100gに対して0.1M塩酸で滴定し、pH9.2からpH3.0までに要した液量を(A)mLとし、本発明において用いられるミネラル溶液を添加した水を0.1M塩酸で滴定し、pH9.2からpH3.0までに要した液量を(B)mLとしたときの比(B)/(A)を緩衝能とした場合、本発明において用いられるミネラル溶液を添加した水は、例えば、1.5以上、1,6以上、1,7以上、1,8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、8.5以上、9.0以上、9.5以上、10.0以上、10.5以上、11.0以上、又は11.5以上の緩衝能を有する。
【0046】
水道水には殺菌のため次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、液化塩素などが混ぜられており、日本の水道法の規定では、各家庭の蛇口で1リットルあたり0.1mg以上(=3×10-5mol/l)の残留塩素を保つように規定されている。一方、水道の原水に含まれているアンモニア性窒素と次亜塩素酸分子(HCLO)などの残留塩素が反応して無機クロラミン類(モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン)が形成され、これらがカルキ臭の主な原因となり水の風味を損なっている。pH7.5以上では、水中のHCLOはCLO-にイオン化するため、本発明のミネラル含有組成物を添加して弱アルカリ性となった水中では、無機クロラミン類の形成が生じにくいため、カルキ臭の発生が低減されるものと考えられる。したがって、上記pH特性を有する、本発明に係る方法により製造されたミネラル水は、まろやかで雑味が少ない風味を付与し、カルキ臭そのものを低減する機能を有する。また、このようなpH特性は、生体内における酸性化を予防又は改善するために有用であり、例えば、食後の口腔内の酸性化に起因する酸蝕歯の予防や、胃腸内の酸性化に起因する胃酸過多や腸内異常発酵などの胃腸症状の改善に有用となり得る。
【0047】
そして、さらに重要なことに、本発明において用いられるミネラル溶液を浄水に添加して得られたミネラル水は、微生物の増殖を抑制する機能を有することから、このようなミネラル水を浄水システムの管路に満たすことにより、浄水システム内の滞留水における微生物の繁殖を抑制することで、上述した浄水と混合する前にミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌することで浄水側(下流側)の汚染が回避されることと相まって、本発明に係る方法により製造されたミネラル水中の微生物の数は、従来の浄水システムを使用した場合と比較して有意に低減されたまま維持されるものと考えられる。したがって、本発明によって、美味しくかつ安全なミネラル水を長期的に安定して提供することが可能となる。また、本発明により、延長されたシェルライフを有するミネラル水を製造することが可能となる。
【0048】
本発明の第二の態様において、浄水システム内の微生物の繁殖を抑制する方法であって、
前記浄水システムにおいて、上述のミネラル水の製造方法を用いてミネラル水を提供する工程、及び
前記ミネラル水で前記浄水システムの管路の少なくとも一部を満たす工程を含む、方法が提供される。
【0049】
例えば、本発明に係る浄水システム内の微生物の繁殖を抑制する方法においては、第1の経路において、カートリッジに充填された弱アルカリ性のpHを有するミネラル溶液が提供され、当該ミネラル溶液が除菌及び/又は殺菌され、ポンプによりカートリッジからのミネラル溶液の吐出量が制御され、連続的かつ安定的にミネラル溶液が提供される。第2の経路において、水道水が浄水器などによりろ過されて浄水が提供される。そして、第1の経路において提供されたミネラル溶液と第2の経路において提供された浄水が混合されて、得られたミネラル水で前記浄水システムの管路の少なくとも一部(例えば、第1の経路と第2の経路の接合部分から蛇口まで)を満たすことにより、浄水システム内の微生物の繁殖を抑制することができる。
【0050】
上述のとおり、本発明において用いられるミネラル溶液を浄水に添加して得られたミネラル水は、微生物の増殖を抑制する機能を有することから、このようなミネラル水を浄水システムの管路に満たすことにより、浄水システム内の滞留水における微生物の繁殖を抑制することで、上述した浄水と混合する前にミネラル溶液を除菌及び/又は殺菌することで浄水側(下流側)の汚染が回避されることと相まって、浄水システム内の微生物の繁殖は有意に抑制されるものと考えられる。
【0051】
本発明の第三の態様において、製品における微生物の繁殖を抑制する方法であって、前記製品に上述のミネラル水の製造方法により製造されたミネラル水を適用することを含む、方法が提供される。これにより、延長されたシェルライフを有する製品を製造することが可能となる。
【0052】
前記製品は、例えば、容器詰めの飲用水、食品又は飲料である。この場合、ミネラル水は、容器を密封する前に飲用水、食品又は飲料に添加される。ミネラル水及び飲用水、食品又は飲料は、容器に充填される前、及び/又は容器に充填され密封された後に除菌及び/又は滅菌されることが好ましい。微生物の繁殖を抑制する機能を有するミネラル水を添加した飲用水、食品又は飲料を容器に充填することにより、充填された製品における微生物の増殖が抑制され、製品のシェルライフを有意に延長することができる。
【0053】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、適宜変更を加えて実施することが可能である。
【実施例0054】
<実施例1:ヤシ殻活性炭からのミネラル抽出液の作製>
1L三角フラスコにヤシ殻活性炭(「太閤CWタイプ」未洗浄品/フタムラ化学社製)30g、及び90℃に加温した蒸留水400gを入れ、90℃で加温しながら100rpmで15分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液をポリエステル500メッシュ(25μm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液を3000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離した後の上清を濾紙で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。
【0055】
<実施例2:活性炭の比較>
ヤシ殻活性炭をクラレコール(登録商標)GG(未洗浄品/クラレ社製)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0056】
<実施例3-6:抽出時間の比較>
抽出時間を10、20、40、80分に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0057】
<実施例7-9:蒸留水量、抽出時間の比較>
蒸留水を130、200、400g、抽出時間を5分に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0058】
<実施例10-12:抽出温度、抽出時間の比較>
抽出温度を30、60、90℃、抽出時間を5分に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でミネラル抽出液を作成した。
【0059】
実施例1-12で作成したミネラル抽出液を下記の方法に従って分析した。
<金属のICP分析>
ICP発光分光分析装置:iCAP6500Duo(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。ICP汎用混合液XSTC-622Bを希釈して0、0.1、0.5、1.0mg/Lの4点検量線を作成した。試料を検量線範囲に入るように希硝酸で希釈し、ICP測定を行った。
【0060】
<Cl-,SO4
2-のIC分析>
イオンクロマトグラフシステム:ICS-5000K(日本ダイオネクス社製)を使用した。カラムはDionex Ion Pac AG20およびDionex Ion Pac AS20を用いた。溶離液は0~11分は5mmol/L、13~18分は13mmol/L、20~30分は45mmol/Lの水酸化カリウム水溶液を用い、0.25mL/分の流量で溶出した。陰イオン混合標準液1(Cl-20mg/L、SO4
2-100mg/L含む7イオン種含有:富士フイルム和光純薬社製)を希釈して、Cl-は0、0.1、0.2、0.4、1.0mg/Lの5点検量線を、SO4
2-は0、0.5、1.0、2.0、5.0mg/Lの5点検量線を作成した。試料を検量線範囲に入るように希釈し、25μL注入してIC測定を行った。
【0061】
【0062】
活性炭、抽出時間、活性炭に対する抽出液量、抽出温度を変更してもカリウム濃度が有意に高いという特徴は変わらなかった。また、HClを用いた場合には有意な量の塩化物イオンが抽出された一方(データは示さず)で、いずれの実施例においても、塩化物イオンの濃度は低かった。なお、上記いずれの実施例においても、重金属類(鉛、カドミウム、ヒ素、水銀など)は検出されなかった(データは示さず)。
【0063】
<実施例13:濃縮液の作成>
1L三角フラスコにヤシ殻活性炭(「太閤CWタイプ」未洗浄品/フタムラ化学社製)174g、及び30℃に加温した蒸留水753gを入れ、30℃で加温しながら100rpmで5分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液をポリエステル500メッシュ(25μm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液を3000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離した後の上清を濾紙で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。同様に、さらに2回実施した。得られた3回のミネラル抽出液を混合し、エバポレーターによって62倍に濃縮し、下記に示すミネラル濃縮エキスを得た。
【0064】
実施例13で作成したミネラル抽出液とミネラル濃縮エキスを62倍に希釈したものを上記の方法に従って分析した。結果を以下の表に示す。
【0065】
【0066】
濃縮の条件を経ても、カリウム濃度が高く、ナトリウム、塩化物イオンの濃度が低い特徴は変わらなかった。
【0067】
<実施例14:ヤシ殻活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
1L三角フラスコにヤシ殻活性炭(「太閤CWタイプ」未洗浄品/フタムラ化学社製)200g、及び90℃に加温した蒸留水1500gを入れ、90℃で加温しながら100rpmで15分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液をポリエステル500メッシュ(25μm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液を3000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離した後の上清を濾紙で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。得られたミネラル抽出液を、エバポレーターによって14倍に濃縮し、下記に示すミネラル濃縮エキスを得た。
【表3】
【0068】
<実施例15:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=パイロットスケール=
ヤシ殼活性炭(「太閤」、塩酸未洗浄品、フタムラ化学社製)40kgに180Lの純水を通液し、得られた懸濁液をメッシュ及び遠心分離によって清澄化し、ミネラル抽出液を得た。遠心式薄膜真空蒸発装置によって92倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を遠心分離及び濾紙によって清澄化した。これを各1Lのビニールパウチに充填し、85℃、30分間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。
【0069】
<実施例16:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=ラボ・スモールスケール=
ヤシ殼活性炭(粒状白鷺、塩酸未洗浄品、大阪ガスケミカル社製)200gと蒸留水910gを入れ、30℃で加温しながら100rpmで20分間、撹拌子によって攪拌した。得られた懸濁液を濾紙(東洋濾紙株式会社ADVANTEC定量濾紙No.5Cφ55mm)で吸引濾過し、これにより得られた濾液をさらに濾紙(MERCKOmnipore PTFE Membrane 5.0μmφ47mm)で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。これを十分量のミネラル抽出液が得られるまで複数回繰り返し、ミネラル抽出液全体を混合した後、ロータリーエバポレーターによって50倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC 25ASO20AN 0.2μm)で濾過し、ミネラル濃縮エキスを得た。このミネラル濃縮液に塩酸を添加し、pHが9.5程度付近になるように調整し、これをバイアル瓶に10mL小分け充填し、2日間冷蔵にて保管した。その後、濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC 25ASO20AN 0.2μm)で冷時濾過し、これを80℃、30分間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。
【0070】
<実施例17:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=ラボ・ラージスケール=
ヤシ殼活性炭(粒状白鷺、塩酸未洗浄品、大阪ガスケミカル社製)800gと蒸留水3660gを入れ、30℃で加温しながら15分間、攪拌した。得られた懸濁液を濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC A080A090C)で吸引濾過し、ミネラル抽出液を得た。これを十分量のミネラル抽出液が得られるまで複数回繰り返し、ミネラル抽出液全体を混合した後、ロータリーエバポレーターによって60倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC A080A090C)で濾過し、ミネラル濃縮エキスを得た。これをバイアル瓶に10mL小分け充填し、2日間冷蔵にて保管した。その後、濾紙(東洋濾紙株式会社 ADVANTEC A080A090C)で冷時濾過した。これに塩酸を添加し、pHが9.5程度付近になるように調整し、さらに純水によってカリウムイオン濃度が100000ppm程度になるよう希釈調整した。これを80℃、30分間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。
【0071】
<実施例18:ヤシ殼活性炭からのミネラル濃縮エキスの作製>
=パイロットスケール=
2500Lコニカルタンクに菌数ヤシ殼活性炭(「粒状白鷺、未洗浄品、大阪ガスケミカル社製)360kgと35℃純水1620kgを入れ、15分間攪拌し、得られた懸濁液を振動篩及び遠心分離、濾紙濾過に清澄化し、ミネラル抽出液を得た。遠心式薄膜真空蒸発装置によって60倍に減圧濃縮し、得られた濃縮液を濾紙で濾過し、ミネラル濃縮エキスを得た。ドラム缶に充填して2日間冷蔵にて保管し、その後、濾紙で冷時濾過した。これに塩酸を添加し、pHが9.5程度付近になるように調整し、さらに純水によってカリウムイオン濃度が100000ppm程度になるよう希釈調整した。これを130℃、30秒間熱処理し、ミネラル濃縮処理エキスを得た。
【0072】
<実施例19:微生物の増殖抑制に関する評価>
(1)供試菌の調製
バチルス(Bacillus)属細菌(栄養細胞)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を供試菌として増殖性試験に用いた。
バチルス(Bacillus)属細菌(栄養細胞)は、野生株の凍結菌株を解凍し、標準寒天培地に100μl塗抹し、35℃で2日培養した後、菌体をかきとり、遠心分離(4,000rpm,10分)を行い、洗浄後、濃縮することにより調製した。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、10mlの滅菌生理食塩水を分注した遠沈管にBIOBALL(ビオメリュー社製)を1個(108cfu/個)投入した後、攪拌して溶解させることにより調製した。
【0073】
(2)供試液の調製
実施例18のミネラル濃縮処理エキスを、純水によってカリウムイオン濃度が71000ppm程度になるよう希釈調整しミネラル溶液を得た。
ミネラル溶液を浄水(パナソニック社製アルカリイオン整水器TK-AS46にて製造)によって40ppm程度になるよう希釈調整しミネラル水を得た。
【0074】
(3)細菌増殖試験
15ml遠沈管に上記で作成した各供試液を10ml分注した(n=3)。上記で作成した各供試菌試料を104cfu/mlになるよう調整し、各遠沈管に100μl滴下した。滴下後攪拌し、攪拌直後に抜き取り、滅菌生理食塩水にて段階希釈し、標準寒天培地に100μl塗抹し、35℃でインキュベートし、菌数を測定した(ゼロタイム)。30℃及び/又は15℃で恒温保管し、1日目、2日目、3日目、4日目、7日目及び14日目に抜き取り、標準寒天培地に100μl塗抹し、35℃でインキュベートして、48時間経過後に菌数を測定した。
【0075】
細菌増殖試験の結果を以下の表に示す。
【表4】
上記の結果に示されるとおり、各供試菌株は、浄水では速やかに増殖した一方で、ミネラル水では、浄水と比較して増殖が有意に抑制された。
【0076】
<実施例20:除菌及び殺菌の実効性に関する評価>
(1)供試菌株の調製
バチルス(Bacillus)属細菌の栄養細胞及び芽胞液を供試菌試料として中空糸膜を用いた除菌試験及びUV照射による殺菌試験に用いた。
バチルス(Bacillus)属細菌(栄養細胞)は、野生株の凍結菌株を解凍し、標準寒天培地に100μl塗抹し、35℃で2日培養した後、菌体をかきとり、遠心分離(4,000rpm,10分)を行い、洗浄後、濃縮することにより調製した。
芽胞液は、上記の栄養細胞の調製に得られた濃縮液をヒートブロックにて80℃で10分間熱処理してから氷冷することにより調製した。
【0077】
(3)中空糸膜を用いた除菌試験(試験1,2)
上記で調製した栄養細胞及び芽胞液をそれぞれ50mlのミネラル水に滴下し、供試菌液とした。中空糸膜ユニット(NOK社製)に20ml/分で供試菌液を全量通液させた。通液後のろ液を回収した。ろ液を滅菌生理食塩水にて段階希釈した。標準寒天培地に100μl塗抹し、35℃でインキュベートした。48時間経過後、コロニー数(cfu)を測定した。
【0078】
(4)UV照射による殺菌試験(試験3,4,5,6,7,8)
上記で調製し栄養細胞及び芽胞液をそれぞれ50ml用のミネラル水に滴下し、供試菌液とした。ポンプを用い、UVユニットPAQ-03B-450(Aqua Sense社製)に供試菌液を4mL/分、0.5mL/分、0.1mL/分の各流量にて通液した。UVユニット通過後の通過液を回収した。通過液を滅菌生理食塩水にて段階希釈した。標準寒天培地に100μl塗抹し、35℃でインキュベートした。48時間経過後及び7日経過後にコロニー数(cfu)を測定した。
【0079】
中空糸膜を用いた除菌試験及びUV照射による殺菌試験の結果を以下の表に示す。
【表5】
上記の結果に示されるとおり、中空糸膜を用いた除菌及びUV照射による殺菌により、栄養細胞及び芽胞液の菌数は有意に低減された。