(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095229
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】防カビ溶液の噴霧方法およびその噴霧ノズル
(51)【国際特許分類】
B05D 1/02 20060101AFI20240703BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240703BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B05D1/02 Z
B05D7/24 303A
B05D3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212358
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】514216926
【氏名又は名称】有限会社ワンリッチインターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】500488476
【氏名又は名称】株式会社エイケン
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】市橋 裕一
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA81
4D075AE03
4D075BB41Z
4D075BB48Z
4D075CA45
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC01
4D075DC02
4D075DC15
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA07
4D075EC01
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC35
(57)【要約】
【課題】 防カビ溶液の噴霧ムラの発生を抑制することができる防カビ溶液の噴霧方法およびその噴霧ノズルを提供する。
【解決手段】 防カビ溶液に自家蛍光物質を混入して防カビ処理が必要な対象面に噴霧するとともに、前記自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を前記対象面に向けて照射して、前記防カビ溶液の噴霧済み領域を識別可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防カビ溶液に自家蛍光物質を混入して防カビ処理が必要な対象面に噴霧するとともに、前記自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を前記対象面に向けて照射して、前記防カビ溶液の噴霧済み領域を識別する防カビ溶液の噴霧方法。
【請求項2】
前記防カビ溶液は、酸性の第一溶液とアルカリ性の第二溶液と中性の第三溶液から構成され、第一溶液、第二溶液、第三溶液の順に前記対象面に重ねて噴霧することを特徴とする請求項1に防カビ溶液の噴霧方法。
【請求項3】
前記第一溶液はクエン酸を含む溶液であり、前記第二溶液は次亜塩素酸水を含む溶液であることを特徴とする請求項2に記載の防カビ溶液の噴霧方法。
【請求項4】
前記第一溶液は、界面活性剤を含む溶液であることを特徴とする請求項3に記載の防カビ溶液の噴霧方法。
【請求項5】
前記第三溶液は光触媒を含む抗菌機能を有する溶液であることを特徴とする請求項4に記載の防カビ溶液の噴霧方法。
【請求項6】
前記防カビ溶液の噴霧粒径は、100μmを超え、200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の防カビ溶液の噴霧方法。
【請求項7】
防カビ溶液を防カビ処理が必要な対象面に噴霧する噴霧ノズルにおいて、
前記噴霧ノズルは、防カビ処理対象面に向けて光を照射するLEDが前記噴霧ノズルの本体部に取り付けられてなり、
前記LEDは、前記防カビ溶液に混入された自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を発光するものであることを特徴とする防カビ溶液用の噴霧ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防カビ溶液の噴霧方法およびその噴霧ノズルにかかり、具体的には衛生管理が求められる各種施設におけるカビの発生を抑制する抗菌および発生したカビの菌を死滅あるいは不活化する防カビ溶液の噴霧方法およびその噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場、食品スーパ、ホテルや旅館(浴室、客室、外壁、調理場等)、病院や介護施設(浴室、客室、外壁、調理場等)、その他、衛生管理及び保全が求められる各種施設の床面、天井面、壁面、作業台および機械器具、などに防カビ処理を定期的に行うことが要請される。
【0003】
一般に、防カビ処理はカビが発生した対象面にカビの菌を死滅あるいは不活化する溶液を塗布又は噴霧することにより行われる。防カビ溶液としては、広く知られている塩素系の溶液のほか、種々の防カビ溶液が知られており、今なお種々の防カビ溶液の開発が行われている。また、防カビ処理の対象面に塗布等により付着された防カビ溶液が人体に悪影響を及ぼさないこと、防カビ処理の対象面が腐食しないこと等が要求される。また、防カビ処理作業において、防カビ溶液の飛散等を抑えること、塩素などの有害ガスの発生を抑えることが要求される。
【0004】
一方、塗布等された防カビ溶液が対象面に発生したカビ真菌の深部に伸びた菌糸に浸透する前に、その防カビ溶液の有効成分が自己分解してしまうと、短期間でカビが再発生することから、防カビ溶液に界面活性剤を添加して防カビ溶液の浸透速度を速めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、防カビ処理は対象面に防カビ溶液を塗布又は噴霧によりムラなく付着させることが要求される。塗布の場合は比較的ムラなく防カビ溶液を付着させることができるが、噴霧の場合はムラなく防カビ溶液を付着させることが難しい。特に、噴霧粒径を細かくするほど、また防カビ処理の対象面が作業者の位置から遠く離れるほど、噴霧ムラを認識することが難しくなるという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、防カビ溶液の噴霧ムラの発生を抑制することができる防カビ溶液の噴霧方法およびその噴霧ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防カビ溶液の噴霧方法は、防カビ溶液に自家蛍光物質を混入して防カビ処理が必要な対象面に噴霧するとともに、前記自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を前記対象面に向けて照射して前記防カビ溶液の噴霧済み領域を識別することにある。
【0009】
本発明によれば、防カビ溶液が噴霧された対象面の領域から蛍光が発するので、作業者は防カビ処理の対象面から発光される蛍光の強さに応じて、防カビ溶液が必要かつ十分に噴霧された領域を確認できるから、防カビ溶液の噴霧ムラの発生を抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記防カビ溶液は、酸性の第一溶液とアルカリ性の第二溶液と中性の第三溶液から構成され、第一溶液、第二溶液、第三溶液の順に前記対象面に重ねて噴霧することが好ましい。特に、前記第一溶液はクエン酸を含む溶液であり、前記第二溶液は次亜塩素酸水を含む溶液であることが好ましい。クエン酸は、カビの排出物および死骸の消臭機能と殺菌機能を有する。この第一溶液のクエン酸が対象面にしっかり浸透したところに第二溶液の次亜塩素酸水が混ざることにより次亜塩素酸が発生する。この反応は中性化に向けて一気に次々と起こり、黒カビの不活化と黒ずみの漂白を進めることができる。
【0011】
ここで、前記第一溶液に、界面活性剤を添加することが好ましい。これによれば、前記第一溶液が深部に伸びた菌糸に浸透する速度が速くなり、噴霧された防カビ溶液の有効成分が自己分解する前に、カビの深部菌糸にまで浸透して溶液の効果を高めることができる。また、前記第三溶液には光触媒を含む抗菌機能を有する溶液を含めることが好ましい。
【0012】
また、防カビ溶液の噴霧粒径は、100μmを超え、200μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の防カビ溶液の噴霧方法を実施する噴霧ノズルは、防カビ処理対象面に向けて光を照射するLEDが前記噴霧ノズルの本体部に取り付けられてなり、前記LEDは、前記防カビ溶液に混入された自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を発光するものであることが好ましい。これによれば、作業者の位置よりも高い天井や、棚や作業台の陰に位置する壁面などに防カビ溶液を噴霧する際、長い棒の先に噴霧ノズルを固定して天井や壁面に防カビ溶液を噴霧すると、防カビ溶液が噴霧された対象面の領域から蛍光が発する。その結果、作業者は防カビ処理の対象面から発光される蛍光の強さ等に応じて、防カビ溶液が必要かつ十分に噴霧された領域を確認でき、噴霧ムラを抑えて効果的に噴霧領域を確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、防カビ溶液の噴霧ムラの発生を抑制することができる防カビ溶液の噴霧方法およびその噴霧ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の防カビ溶液の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態の防カビ溶液の噴霧方法を説明する。また、
図1に、本実施形態の防カビ溶液の噴霧方法で用いた防カビ溶液の組成例を示す。同図に示すように、防カビ溶液は第一溶液、第二溶液および第三溶液からなり、これら第一から第三のステップ順に防カビ対象面に噴霧する。本実施形態に用いた防カビ溶液は、対象表面を腐食させたり、人体に悪影響を及ぼす有害ガスが発生する恐れがない。
【0017】
特に、本発明の防カビ溶液の噴霧方法は、第一溶液、第二溶液および第三溶液のそれぞれに自家蛍光物質を混入して防カビ処理が必要な対象面に噴霧すると同時に、自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を前記対象面に向けて照射して、防カビ溶液の噴霧済み領域を識別することを特徴とする。自家蛍光物質は、周知のとおり、特定波長の紫外線(例えば、波長が300~400nm)光を照射すると励起されて可視光の蛍光を発するものであり、多くの物質が知られている。本発明に適する自家蛍光物質としては、第一溶液、第二溶液および第三溶液によって害されないこと、および使用状況と使用目的を加味して適切なものを選択する。
【0018】
本実施形態では、食品工場などのカビ処理を主としているため、芳香族アミノ酸を自家蛍光物質として利用している。芳香族アミノ酸が励起されて発する光は、蛍光でやや赤色であり、蛍光時間は比較的長い。したがって、芳香族アミノ酸を含む防カビ溶液が噴霧された領域の防カビ処理の対象面(壁、天井など)に、一様に蛍光色が見えていることを確認して、重複や過剰噴霧を回避できる。
【0019】
図1に示すように、第一溶液は、クエン酸(酸性)と界面活性剤を精製水に溶かした溶液である。クエン酸の濃度は500ppm、界面活性剤の濃度は200ppmを基本とし、カビの程度等に応じて適宜調整することが好ましい。この第一溶液は、カビの殺菌、カビの排せつ物および死骸の消臭に機能する。また、界面活性剤は、第一溶液を深部の菌糸にまで浸透させる機能がある。
【0020】
第二溶液は、高濃度次亜塩素酸水(アルカリ性)を精製水に溶かした溶液である。高濃度次亜塩素酸水の濃度は、500~1000ppmの範囲とし、できるだけ低いほうが好ましい。また、第一と第二溶液の反応で次亜塩素酸が発生する。この反応は、一気に中性化に向けて次々に起こり、黒カビの不活化と黒ずみの漂白を促進する機能がある。また、第一溶液と第二溶液の反応が速いため防カビ処理の作業性を向上させることができる。
【0021】
第三溶液は、中性のPHMB(ポリヘキサニド)をベース(主成分)とし、これに光触媒を添加して精製水に溶かした溶液であり、抗菌と処理面の保護を狙いとする。ポリヘキサニドの濃度は500~1000ppmが好ましい。光触媒は必ずしも必須成分ではないが、0~5質量%程度添加することが好ましい。
【0022】
以上述べたように、本実施形態の防カビ溶液の噴霧方法によれば、防カビ溶液の噴霧済み領域を識別することに加えて、噴霧粒子径を150μm程度にコントロールすることで、液だれを防ぐことができるため、噴霧済みのところは一様に蛍光色が現れる。このことから、自家蛍光物質の発光の程度で防カビ溶液の噴霧量および噴霧の程度を判断でき、防カビ溶液を必要量以上に防カビ対象面に噴霧するのを抑制することができる。
【0023】
また、従来はカビ深部の真菌の菌糸に防カビ溶液が到達するまでに時間がかかるため、深部に浸透する前に防カビ溶液の有効成分が自己分解してしまい、結果として深部の菌糸を残してしまい、防カビ対象面に短時間でカビが再発生する問題があった。これに対し、本実施形態の防カビ溶液の噴霧方法によれば、防カビ溶液に界面活性剤を添加して防カビ溶液の浸透速度を速めていることから、防カビ溶液が速やかに深部の菌糸にまで達するから、カビの再発生を遅らせることができる。
【0024】
本発明の防カビ溶液の噴霧方法を実施する噴霧ノズルには、従来周知の噴霧ノズルを適用することができるが、本発明に特有の構成は、噴霧ノズルの本体部に、防カビ処理対象面に向けて光を照射するLEDを保持させ、LEDは防カビ溶液に混入された自家蛍光物質の自家蛍光を励起する波長の光を発光する構成とする。これによれば、作業者の位置よりも高い天井や、棚や作業台の陰に位置する壁面などに防カビ溶液を噴霧する際、棒の先に噴霧ノズルを固定して天井や壁面に防カビ溶液を噴霧しても、噴霧ムラを抑えて効果的に噴霧領域を確認することが可能になる。また、本発明の噴霧ノズルは、第一溶液と、第二溶液と、第三溶液の異なる溶液ごとに分けて用いることが好ましい。これにより、それらの溶液のコンタミを防止することができる。
【0025】
また、噴霧ノズルの防カビ溶液の噴霧粒径は、100μmを超え、200μm以下であることが好ましい。これにより、従来の塗布と同様に防カビ対象面に付着膜を形成することができる。
【0026】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能であることは明らかであり、それらの変形は本発明の特許請求の範囲に含まれる。