特開 2024-95238 車両用灯具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024095238

(43)【公開日】2024-07-10

(54)【発明の名称】車両用灯具

(51)【国際特許分類】

   F21S 45/00 20180101AFI20240703BHJP

   F21W 102/13 20180101ALN20240703BHJP

【ＦＩ】

F21S45/00

F21W102:13

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022212374

(22)【出願日】2022-12-28

(71)【出願人】

【識別番号】000001133

【氏名又は名称】株式会社小糸製作所

(74)【代理人】

【識別番号】110004060

【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所

(74)【代理人】

【識別番号】100168088

【弁理士】

【氏名又は名称】太田 悠

(74)【代理人】

【識別番号】100077986

【弁理士】

【氏名又は名称】千葉 太一

(74)【代理人】

【識別番号】100139745

【弁理士】

【氏名又は名称】丹波 真也

(74)【代理人】

【識別番号】100187182

【弁理士】

【氏名又は名称】川野 由希

(74)【代理人】

【識別番号】100207642

【弁理士】

【氏名又は名称】簾内 里子

(72)【発明者】

【氏名】戸塚 貴丈

(72)【発明者】

【氏名】奥村 亜耶

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 隆一

(72)【発明者】

【氏名】瀧澤 葵

(57)【要約】

【課題】ランプボディの剛性向上に灯具内構造物を利用する。
【解決手段】
前面が開口する容器状のランプボディ（２）と、前記ランプボディ（２）の前面開口部に組付けられて、内側に灯室（Ｓ）を画成する前面カバー（４）と、前記灯室（Ｓ）内に配置される灯具内構造物（５０）を備え、前記ランプボディ（２）の背面壁（６）には、該背面壁（６）の一部で構成する横断面略円弧状の複数の梁（６１～６７）がトラス状に延在し、前記梁（６１～６７）の少なくとも一つにより、前記灯具内構造物（５０）が支持される車両用灯具（１）を提供する。灯具内構造物を支持する梁では、灯具内構造物の剛性が梁の剛性の一部となって梁を補強する。
【選択図】図６

【特許請求の範囲】

【請求項1】

前面が開口する容器状のランプボディと、前記ランプボディの前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、前記灯室内に配置される灯具内構造物と、を備え、
前記ランプボディの容器面には、該容器面の一部で構成する、横断面略円弧状の複数の梁がトラス状に延在し、
前記梁の少なくとも一つにより、前記灯具内構造物が支持される、
ことを特徴とする車両用灯具。

【請求項2】

前記灯具内構造物は、前記梁のうち圧縮方向の軸力が作用する梁に配置される
ことを特徴とする請求項１に記載の車両用灯具。

【請求項3】

前記灯具内構造物は長尺であり、前記灯具内構造物の長尺方向を、前記梁の軸方向に合わせて配置する
ことを特徴とする請求項１に記載の車両用灯具。

【請求項4】

前記灯具内構造物を支持する梁の近傍の前記容器面には、前記灯具内構造物の長尺方向に、少なくとも一つのうねりを形成する
ことを特徴とする請求項３に記載の車両用灯具。

【請求項5】

前記灯具内構造物は、前記灯具内構造物を支持する梁を備える前記容器面とは別の前記容器面とも結合するように固定する
ことを特徴とする請求項１に記載の車両用灯具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本願発明は、ランプボディと前面カバーを備えた車両用灯具に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、制御部など、灯室内に配置される構造物（灯具内構造物）は、ランプボディの空きスペースに配置されていた。例えば特許文献１では、スイブル駆動のための制御部は、箱状に形成されたランプボディの空きスペースに固定されている。また近年、カーボンニュートラルの観点から、ランプボディの軽量化に向けた動きがあるが、単純にランプボディの肉厚を薄くするとボディの剛性が低下する恐れがあるため、ランプボディの剛性維持が課題である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１６－１１０８５３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ランプボディの剛性向上のためには補強リブを設けることが考えられるが、補強リブを設けると、ランプボディはその分重量化する。

【0005】

本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、空きスペースに配置されていた灯具内構造物を、ランプボディの剛性向上に利用することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記問題を解決するため、本発明の第１の態様の車両用灯具は、前面が開口する容器状のランプボディと、前記ランプボディの前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、前記灯室内に配置される灯具内構造物と、を備え、前記ランプボディの容器面には、該容器面の一部で構成する、横断面略円弧状の複数の梁がトラス状に延在し、前記梁の少なくとも一つにより、前記灯具内構造物が支持される。この態様によれば、灯具内構造物は、ランプボディに形成されたトラス構造の梁の少なくとも一つによって支持されるから、灯具内構造物の剛性が梁の剛性の一部となって梁を補強し、トラス構造の強度が向上する。トラス構造の剛性が上がる分、ランプボディの薄肉・軽量化を図ることができる。

【0007】

第２の態様の車両用灯具では、第１の態様において、前記灯具内構造物は、前記梁のうち圧縮方向の軸力が作用する梁に配置されるのも好ましい。この態様によれば、トラス構造の圧縮材において変形および座屈への耐性を上げることができるから、トラス構造の剛性をより高めることができる。

【0008】

第３の態様の車両用灯具では、第１または２の態様において、前記灯具内構造物は長尺であり、前記灯具内構造物の長尺方向を、前記梁の軸方向に合わせて配置するのも好ましい。この態様によれば、灯具内構造物を支持する梁において、灯具内構造物が柱のように機能するため、トラス構造の剛性をより高めることができる。

【0009】

第４の態様の車両用灯具では、第１～３のいずれかの態様において、前記灯具内構造物を支持する梁の近傍の前記容器面には、前記灯具内構造物の長尺方向に、少なくとも一つのうねりを形成するのも好ましい。この態様によれば、灯具内構造物を支持する梁の近傍の容器面から伝わる応力が、うねりの湾曲で分散される。結果、灯具内構造物を支持する梁の面強度を高められ、トラス構造の剛性をより高めることができる。

【0010】

第５の態様の車両用灯具では、第１～４のいずれかの態様において、 前記灯具内構造物は、前記灯具内構造物を支持する梁を備える前記容器面とは別の前記容器面とも結合するように固定するのも好ましい。この態様によれば、灯具内構造物を介して、灯具内構造物を支持する梁の剛性を別の容器面の剛性にも頼ることができるので、トラス構造の剛性をより高めることができる。

【発明の効果】

【0011】

本発明によれば、空きスペースに配置されていた灯具内構造物を、ランプボディの剛性向上に利用することで、ランプボディの軽量化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具１の概略正面図である。

【図2】同灯具１のランプボディ２の概略正面図である。

【図3】図２のランプボディ２の端面図であって、（Ａ）Ａ－Ａ線に沿う端面図、（Ｂ）Ｂ－Ｂ線に沿う端面図、（Ｃ）Ｃ－Ｃ線に沿う端面図、（Ｄ）Ｄ－Ｄ線に沿う端面図、（Ｅ）Ｅ－Ｅ線に沿う端面図、（Ｆ）Ｆ－Ｆ線に沿う端面図、（Ｇ）Ｇ－Ｇ線に沿う端面図である。

【図4】図２のランプボディ２に形成されるトラス構造を説明する図である。

【図5】図２のＨ部の拡大図である。

【図6】図５のＨ部にＬＤＭ５０を配置した図である。

【図7】図６の平面図である。

【図8】実施形態の一つ目の変形例に係る車両用灯具１１０を示す図である。

【図9】実施形態の二つ目の変形例に係る車両用灯具１２０を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。

【0014】

（車両用灯具）
図１は、本発明の好適な実施形態に係る車両用灯具１の概略的な正面図である。車両用灯具１は車両の前方の左右の角部に装着される前照灯である。図１に示すように、車両用灯具１は、前方が開口した容器状のランプボディ２と、ランプボディ２の前面開口部２´（後述する図２参照）に組み付けられる前面カバー４とを備える。前面カバー４は例えばポリカーボネイトなどの透光性を有する樹脂やガラスなどで構成され、前面カバー４がランプボディ２の前面開口部２´に取付けられることで、内側に灯室Ｓが画成される。

【0015】

画成された灯室Ｓ内には、ハイビーム用のランプユニットＨｉおよびロービーム用のランプユニットＬｏが収容される。ハイビーム用のランプユニットＨｉおよびロービーム用のランプユニットＬｏは、光源からの出射光を車両前方に照射して、それぞれハイビーム配光／ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニット（Ｈｉ，Ｌｏ）には、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などのランプユニットが用いられて良く、その種類は問わない。

【0016】

（ランプボディの全体形状）
ランプボディ２の形状について詳しく説明する。図２は、ランプボディ２の概略正面図である。

【0017】

ランプボディ２は、硬質の合成樹脂材料を用いて射出成形により形成される。ランプボディ２の前面開口部２´の周縁には、前面カバー４の周縁に設けられたシール脚と係合するためのシール溝３が周設されている。ランプボディ２の前面開口部２´の周縁部外表面には、車体に取付けるための車体取付部５が、車体側の取付部分の形状に対応させて突設されている。車体取付部５は、ランプボディ２の外表面に、上方に３か所、左方に２か所、合計５か所に設けられている。

【0018】

ランプボディ２は、構成面として、背面壁６、天井面７、底面８、左右の側面９，９を有し、背面壁６が後方に膨らみ、隣接する天井面７、底面８、および側面９，９と稜線を介して（曲線的に）連続的に接続されている。

【0019】

底面８は、背面壁６の下方縁部から前方に向かって延出して形成され、ランプボディ２の前面開口部２´の縁部に設けられたシール溝３に接続する。側面９，９は、背面壁６の左右縁部からそれぞれの側方かつやや前方に向かって延出して形成され、シール溝３に接続する。天井面７は、延出量が小さく、シール溝３の縁部から緩やかに背面下方に向かって湾曲しながら延在して背面壁６と接続し、背面壁６と略一体的に形成されている。

【0020】

このため、背面壁６、天井面７、底面８、および側面９，９は、主として平面ではなく曲率半径の大きな湾曲面で構成され、かつ、ランプボディ２は全体として、背面壁６を底部とみる容器状に形成され、背面壁６、天井面７、底面８、および側面９，９のそれぞれが、互いの曲面同士がなめらかに連続した容器面を形成している。

【0021】

ランプボディ２には、第１ユニット取付孔３１、第２ユニット取付孔３２、および第３ユニット取付孔３３が形成されている。第１ユニット取付孔３１は、ハイビーム用のランプユニットＨｉを取付けるための孔で、背面壁６の左上方に形成されている。第２ユニット取付孔３２は、バックカバー（図示せず）を取り付けるための孔で、背面壁６の右上方に形成されている。第３ユニット取付孔３３は、ランプユニット（Ｈｉ，Ｌｏ）の点灯を制御するライトドライバモジュール５０（後述する。以降、ＬＤＭと称する。）を取り付けるための孔で、背面壁６の中央下部に形成されている。

【0022】

また、ランプボディ２には、第１エイミング部材取付孔４１、第２エイミング部材取付孔４２、および第３エイミング部材取付孔４３が、第３ユニット取付孔３３の回りに形成されている。各エイミング部材取付孔４１，４２，４３には、従来周知の構成のエイミング部材（図示略）が取付けられる。第１エイミング部材取付孔４１は、第３ユニット取付孔３３および第１ユニット取付孔３１の間に配置されるように、背面壁６の左方の下縁部に設けられている。第２エイミング部材取付孔４２は、第３ユニット取付孔３３から第１エイミング部材取付孔４１までの距離と略等距離だけ、第１エイミング部材取付孔４１と反対方向にオフセットされるように、背面壁６の右方の下縁部に設けられている。第３エイミング部材取付孔４３は、第２エイミング部材取付孔４２の略鉛直上方に配置されるように、背面壁６の右方の上端部に形成されている。

【0023】

（ランプボディの梁構造）
ランプボディ２の背面壁６には、該背面壁６の一部で構成する、第１梁６１、第２梁６２、第３梁６３、第４梁６４、第５梁６５、第６梁６６、および第７梁６７が、背面壁６の略全体に亘り延在している。第１梁６１は、第１エイミング部材取付孔４１と第１ユニット取付孔３１を端点として両者を結ぶようにして延在しており、左方に傾く梁として形成されている。第２梁６２は、第１エイミング部材取付孔４１からおおむね上方に向かって背面壁６の上端部まで延在しており、略鉛直方向に延びる梁として形成されている。第３梁６３は、第１エイミング部材取付孔４１と背面壁６の上中央端部を端点として両者を結ぶようにして延在しており、右方に傾く梁として形成されている。第４梁６４は、背面壁６の上記上中央端部と第２エイミング部材取付孔４２を端点として両者を結ぶようにして延在しており、左方に傾く梁として形成されている。第５梁６５は、第１エイミング部材取付孔４１と第２エイミング部材取付孔４２を端点として両者を結ぶようにして延在しており、略水平方向に延びる梁として形成されている。第６梁６６は、第２エイミング部材取付孔４２と第３エイミング部材取付孔４３を端点として両者を結ぶようにして延在しており、略鉛直方向に延びる梁として形成されている。第７梁６７は、第２エイミング部材取付孔４２と、第２ユニット取付孔３２を端点として両者を結ぶようにして延在しており、右方に傾く梁として形成されている。

【0024】

図３は、図２に示す切断線に沿った、各梁６１～６７の端面図である。図３（Ａ）はＡ－Ａ線に沿った端面図で、第１梁６１の断面形状である。図３（Ｂ）はＢ－Ｂ線に沿った端面図で、第２梁６２の断面形状である。図３（Ｃ）はＣ－Ｃ線に沿った端面図で、上方が第３梁６３の断面形状であり、下方が第５梁６５の左端部の断面形状である。図３（Ｄ）はＤ－Ｄ線に沿った端面図で、上方が第４梁６４の断面形状であり、下方が第５梁６５の右端部の断面形状である。図３（Ｅ）はＥ－Ｅ線に沿った端面図で、第６梁６６の断面形状である。図３（Ｆ）はＦ－Ｆ線に沿った端面図で、第７梁６７の断面形状である。図３（Ｇ）はＧ－Ｇ線に沿った端面図で、上方が第４梁６４の断面形状であり、下方が第５梁６５の中央部の断面形状である。第５梁６５の中央部には、第３ユニット取付孔３３が形成されている。このように、各梁６１～６７は、その延在方向に直交した横断面形状が略円弧状に構成されている。各梁６１～６７の湾曲面の突出方向は、灯室Ｓの方向（前方）または灯室Ｓの外方向（後方）のいずれに形成されていてもよい。本形態では、各梁６１～６７は灯室Ｓの方向（前方）に湾曲する梁として形成されている。

【0025】

ここで、図４はランプボディ２の正面図であり、ランプボディ２に形成されるトラス構造を薄墨で示したものである。前述の通り、天井面７のシール溝３は、天井面７は背面壁６と略一体的に構成されているため、トラスの上弦材のように延在する。ランプボディ２では、着力点を各梁６１～６７と天井面７のシール溝３で繋ぐことよって、図４に示すトラス構造が形成される。

【0026】

このため本形態のランプボディ２は、このようなトラス構造を有さないランプボディに比して、剛性の高い構造となっている。

【0027】

（灯具内構造物の利用）
上記のトラス構造の剛性が上がるほど、ランプボディ２は従来よりも薄肉化が可能となり、軽量化を図ることができる。このための構造について、図５～図７を用いて詳しく説明する。

【0028】

図５は図２のＨ部の拡大図、図６はＨ部にＬＤＭ５０を配置した図であり、図７は図６を平面視した図である。第５梁６５は、図３（Ｃ），図３（Ｄ），および図３（Ｇ）で示されているように、灯室Ｓ方向（前方）に凸の湾曲面で構成されており、図５にも示されるように、第５梁６５の中央部には、第３ユニット取付孔３３が形成されている。第３ユニット取付孔３３には、図６に示されるようにＬＤＭ５０が固定される。

【0029】

ＬＤＭ（ライトドライバモジュール）５０は、灯具内構造物の一つである。本明細書では、灯具内構造物とは、灯室Ｓ内に配置される構造物であって、ＬＤＭ５０のようなランプユニットの点灯制御部や、ランプユニットのスイブル駆動制御部やレベリング駆動制御部など、灯室Ｓ内に配置する必要があり、所定の大きさと強度を持つ部品，部材，またはユニットを言うものとする。

【0030】

ＬＤＭ５０は、基板（図示略）上に点灯制御回路とＥＣＵ（Electronic Control Unit）を備え、基板を囲う金属ケース５２を備えている。金属ケース５２は直方体形状で、固定状態において、下面が上面よりもやや延出し、前方は開口している。金属ケース５２の背面側はコネクタ挿入口５４（図７参照）となっている。コネクタ挿入口５４は、周部に第３ユニット取付孔３３に形成された凹凸形状に対応した形状を備え、第３ユニット取付孔３３に嵌合する。ＬＤＭ５０は、コネクタ挿入口５４を第３ユニット取付孔３３に嵌め込むことで、第５梁６５に支持される。

【0031】

さらに金属ケース５２の左右側面には、ケース上面の前端部付近に、金属ケース５２と一体的に形成された固定部５３を備える。固定部５３は、左右側面から水平方向に延出したプレートが折り曲げられて上にオフセットするように段状に形成された第１押さえプレート５３１と、第１押さえプレート５３１の前方を鉛直下方向に折り曲げて形成された第２押さえプレート５３２を備えており、少なくとも第２押さえプレート５３２には、ねじ挿通孔（図示せず）が形成されている。

【0032】

一方、第３ユニット取付孔３３の左右には、ＬＤＭ５０を保持するための一対の保持アーム８１，８２が形成されている。保持アーム８１，８２は、ＬＤＭ５０の左右方向長さ分離間して形成され、第３ユニット取付孔３３の中心からの距離がそれぞれ等距離となるように形成されている。保持アーム８１，８２は、背面壁６から柱状に前方に延出するとともに下端部は底面８に接続して、底面８と一体的に形成されている。保持アーム８１，８２の前面８３は鉛直平面で、ＬＤＭ５０の第２押さえプレート５３２に一致する位置まで前方に延出し、ねじ穴８４を備えている。

【0033】

ＬＤＭ５０は、コネクタ挿入口５４を第３ユニット取付孔３３に嵌め込むことで、第５梁６５に片持ち支持されるとともに、固定部５３の第２押さえプレート５３２を保持アーム８１，８２の前面８３にねじ止め固定することで、第３ユニット取付孔３３，保持アーム８１，保持アーム８２で三点固定される。

【0034】

（作用効果）
従来、ＬＤＭのような灯具内構造物は、ランプボディのどこかに付けられればよい、という考えのもと、ランプボディの空きスペースに、例えばＬＤＭのケースを支持するために箱形の収容空間を形成するなどして、配置されていた。これに対し、本形態では、ＬＤＭ５０（灯具内構造物）は、ランプボディ２の第５梁６５（トラス構造）によって支持されているため、ＬＤＭ５０（灯具内構造物）の剛性が第５梁６５の剛性の一部となって、第５梁６５の強度を補強する。

【0035】

特に、本形態のランプボディ２に形成されたトラス構造では、梁６１～６７のうち、第５梁６５は圧縮材となるため、より高い剛性を備えることが好ましい。これに対し、本形態では、ＬＤＭ５０の剛性が第５梁６５の剛性の一部となり、トラス構造の圧縮材において剛性を高めることができるから、ランプボディ２に形成されたトラス構造の変形および座屈への耐性を上げることができる。

【0036】

また、灯具内構造物は、梁の軸方向に沿わせて延在させることで、梁の剛性を灯具内構造物の剛性に頼ることができるため好ましい。これに対し、本形態では、ＬＤＭ５０の金属ケース５２は、固定状態において、左右・前後・上下方向のうち、左右方向が最も長尺となっており、第５梁６５の軸方向となる左右方向に金属ケース５２の長尺の辺が配置されていることから、第５梁６５においてＬＤＭ５０が柱のように機能するため、ランプボディ２に形成されたトラス構造の剛性をより高めることができる。

【0037】

また、灯具内構造物は、灯具内構造物を支持する梁を備える容器面とは別の容器面とも結合させることで、灯具内構造物を介して、灯具内構造物を支持する梁の剛性を別の容器面の剛性にも頼ることができるため好ましい。これに対し、本形態では、ＬＤＭ５０は、ＬＤＭ５０を支持する第５梁６５がある背面壁６（容器面）だけでなく、その近傍の底面８（別の容器面）に形成された保持アーム８１，８２とも結合した三点固定となっている。ため、第５梁６５の剛性が底面８の剛性で補強される。このため、第５梁６５の剛性が強化され、ランプボディ２に形成されたトラス構造の変形および座屈への耐性をより上げることができる。

【0038】

（変形例）
次に、上記実施の形態の好ましい変形例について説明する。

【0039】

図８は、一つ目の変形例に係る車両用灯具１１０を示すものであって、同灯具１１０を図５と同様に拡大した図である。ＬＤＭ５０が配置される第５梁６５は、他の梁６１～６４，６６～６７において相対的に長い梁となっている。このような長い梁には、実施の形態で示したように灯具内構造物が配置されるとともに、本変形例で示すように、該梁の近傍の容器面に、灯具内構造物の長尺方向に少なくとも一つのうねりを形成し、灯具内構造物を支持する梁にかかる応力を分散することが好ましい。本変形例では、第５梁６５の近傍にある底面８（容器面）に、ビード部８０を形成している。ビード部８０は、ＬＤＭ５０の下方略中央において、背面壁６からシール溝３まで延在するとともに、ビード部８０の下端部は底面８に接続して、底面８と一体的に形成されている。ビード部８０を形成することにより、第５梁６５の近傍の底面８（容器面）に、ＬＤＭ５０（灯具内構造物）の長尺方向となる左右方向に一つのうねりが形成されるため、底面８から第５梁６５に伝わる応力がビード部８０の湾曲で分散され、結果、第５梁６５の面強度を高める構成となる。このため、第５梁６５の剛性が強化され、ランプボディ２に形成されたトラス構造の変形および座屈への耐性をより上げることができる。なお、ビード部８０の湾曲の突出方向は、灯室Ｓの方向（上方）または灯室Ｓの外方向（下方）のいずれに形成されていてもよい。うねりの数も、一つに限らず、複数形成されてもよい。

【0040】

図９は、二つの変形例に係る車両用灯具１２０を示すものであって、同灯具１２０を図２と同様に正面視した図である。実施の形態のランプボディ２に形成されたトラス構造では、梁６１～６７のうち、第６梁６６も圧縮材となるため、第６梁６６も、変形や座屈を防ぐため高い剛性を備えることが好ましい。このため、本変形例では、第３エイミング部材取付孔４３を備える第６梁６６に、エイミングドライバモジュール９０を配置している。エイミングドライバモジュール９０で駆動制御されるエイミング部材は従来周知の構成でよく、第３エイミング部材取付孔４３に配置されたエイミングスクリュウ１０２（またはエイミングロッド）を、ランプユニット（Ｈｉ，Ｌｏ）を支持するランプブラケット１０１（破線で示す）に接続する。エイミングドライバモジュール９０は、エイミングスクリュウ１０２を前後方向に動かす駆動機構およびその制御部を備え（図示略）、該駆動機構および制御部を収容する金属ケース９２を備えている。金属ケース９２は第６梁６６の軸方向となる鉛直方向にケースの長尺が配置されるように、例えば上下の固定部９３によって第６梁６６にねじ固定されている。このように、特に、トラス構造の圧縮材となる梁は、積極的に灯具内構造物を支持することにより、ランプボディ２のトラス構造の剛性をより高めることが可能となり、その分ランプボディ２の薄肉・軽量化を図ることができる。なお、実施の形態においても、灯具内構造物の外形は金属ケースとして記載したが、ケースの素材は例えば樹脂であってもよく、また、直方体形状に限定するものでもない。灯具内構造物の外形は、ケース形状から逸脱した形状のものであっても、梁を補強できる程度の大きさと強度を備える構造物であれば、外形は好適に変形されてよい。

【0041】

以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。特に、本明細書で開示した各梁の延在方向や形態は一例にすぎず、三角形を基本としたトラス構造が形成されれば、他の形態のトラス構造が用いられてよい。これに伴い、本明細書で開示した灯具内構造物の配置は一例にすぎず、ランプボディに形成されたトラス構造に応じて、灯具内構造物の配置も好適に変更されてよい。

【符号の説明】

【0042】

１ ：車両用灯具
２ ：ランプボディ
３ ：シール溝
４ ：前面カバー
６ ：背面壁（容器面）
７ ：天井面（容器面）
８ ：底面（容器面）
９ ：側面（容器面）
３１～３２ ：ユニット取付孔
４１～４３ ：エイミング部材取付孔
６１～６７ ：梁
５０ ：ライトドライバモジュール（灯具内構造物）
８０ ：ビード部（うねり）
９０ ：エイミングドライバモジュール（灯具内構造物）
Ｓ ：灯室

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】