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  • 特開-巻取装置、及び、繊維機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095243
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】巻取装置、及び、繊維機械
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/08 20060101AFI20240703BHJP
   B65H 63/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B65H67/08 B
B65H63/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212383
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】高安 孝治
【テーマコード(参考)】
3F112
3F115
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112BA03
3F112CA03
3F112JA08
3F112MA05
3F115BA03
3F115CA03
3F115CA18
3F115CB11
3F115CB13
3F115CF25
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率を向上させつつ糸端を適切に捕捉する。
【解決手段】巻取装置10は、給糸部15と、巻取部17と、第1捕捉部30と、制御部101と、を備える。給糸部15は、糸14を供給する。巻取部17は、管22aを巻取方向に回転させることで管22aに糸14を巻き付けてパッケージ22を形成する。第1捕捉部30は、パッケージ22の外側の糸端を吸引する捕捉口33を有する。制御部101は、巻取部17と第1捕捉部30を制御する。制御部101は、パッケージ22の径及び/又は形状に基づいて、第1捕捉部30に発生させる吸引力を制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給するための給糸部と、
管を巻取方向に回転させることで前記管に前記糸を巻き付けてパッケージを形成する巻取部と、
前記パッケージの外側の糸端を吸引する捕捉口を有する捕捉部と、
前記巻取部と前記捕捉部とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記パッケージの径及び/又は形状に基づいて、前記捕捉部に発生させる吸引力を制御する、
巻取装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記パッケージの径及び/又は形状に基づいて、前記糸端を吸引する際の前記管に対する前記捕捉口の位置を制御し、
前記管に対する前記捕捉口の位置が離れる状況が発生した場合に、前記捕捉部の吸引力を調整する、請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記パッケージの径及び/又は形状に基づき、前記パッケージの径及び/又は形状を変数として前記管に対する前記捕捉口の位置を算出するための第1数式と、前記パッケージの径及び/又は形状を変数として前記捕捉部の吸引力を算出するための第2数式と、を用いて、前記捕捉口の位置及び前記捕捉部の吸引力を算出する、請求項2に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記パッケージの径及び/又は形状に応じて段階的に設定される前記管に対する前記捕捉口の位置に関する情報と、前記パッケージの径及び/又は形状に応じて段階的に設定される前記捕捉部の吸引力に関する情報と、を含む捕捉制御情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記パッケージの径及び/又は形状と前記捕捉制御情報とに基づいて、前記パッケージの表面に対する前記捕捉口の位置と、前記捕捉部の吸引力を制御する、請求項2又は3に記載の巻取装置。
【請求項5】
前記捕捉部に吸引力を生じさせる吸引源と、
前記捕捉部と前記吸引源との間に設けられ、前記捕捉部と前記吸引源との間で気体を流通可能とする開口と、前記開口を全開する全開位置と前記開口を全閉する全閉位置との間で移動することで前記開口の開度を調節するシャッターと、を有する開度調節部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記シャッターの位置を制御することで前記捕捉部の吸引力を制御する、請求項1~4のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項6】
前記巻取部は、前記パッケージの外周に接触して回転することで前記管を回転させる回転ローラを有する、請求項1~5のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記捕捉部による前記糸端の捕捉に成功したか否かを判断し、
前記糸端の捕捉に失敗したと判断した場合、捕捉に失敗したと判断したときの吸引力よりも前記捕捉部の吸引力を大きくし、
吸引力を増加させた前記捕捉部により前記糸端の捕捉を再度実行する、
請求項1~6のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項8】
前記糸の状態を検出することで、前記糸における欠点である短欠点と、前記短欠点よりも欠点長さが長い長欠点と、を検出する監視装置をさらに備え、
前記制御部は、
監視装置が長欠点を検出した場合、前記捕捉部により前記糸端が捕捉されたか否かを判断し、
前記糸端が捕捉されたと判断した場合、前記糸端を捕捉後の前記捕捉部の吸引力を、前記糸端を捕捉する際の吸引力よりも低下させる、
請求項1~7のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の複数の巻取装置と、
前記制御部と通信を行い、複数の巻取装置全体における前記捕捉部による前記糸端の捕捉の成功率を算出する管理部と、を備える繊維機械であって、
各巻取装置の前記制御部は、前記管理部により算出された成功率と、当該巻取装置における前記糸端の捕捉の成功率と、に基づいて、当該巻取装置の前記捕捉部の吸引力を制御する、
繊維機械。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の複数の巻取装置と、
複数の巻取装置の前記捕捉部に対して吸引力を発生させる吸引源と、
前記制御部と通信を行い、複数の巻取装置全体における前記パッケージの形成状況を把握する管理部と、を備える繊維機械であって、
前記吸引源は、複数の巻取装置に対して共通のものであり、
前記管理部は、複数の巻取装置全体における前記パッケージの形成状況に基づき、前記吸引源の吸引力を制御する、
繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置、及び、複数の巻取装置を備える繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンから供給された糸を巻き取って、糸のパッケージを形成する巻取装置が知られている。この巻取装置においては、給糸ボビンから供給される糸に欠点が存在する場合がある。パッケージの形成に際しては、このような欠点は除去する必要がある。なぜなら、パッケージに糸の欠点が存在していると、パッケージの品質が低下するからである。糸の欠点の除去は、糸の欠点が存在している箇所を切断することで行われる。
【0003】
糸の欠点を切断により除去すると、給糸ボビンとパッケージとの間で糸が切断された状態になる。よって、巻取装置では、糸の欠点を除去した後に、パッケージ側の糸端と給糸ボビン側の糸端とを糸継装置により糸継ぎして、パッケージへの糸の巻き取りが再開される。糸継装置により糸継ぎを行う際に、巻取装置では、糸端を捕捉して移動させることで糸を糸継装置まで導く。巻取装置は、この糸端の捕捉と移動を行うための捕捉部を備えている。捕捉部は、内部空間を有し、この内部空間に糸端を吸引することで、糸端を捕捉する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-108845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の巻取装置において、パッケージ側の糸端の捕捉は、捕捉部の捕捉口をパッケージに接近させ、捕捉部に吸引力を発生させることで行われる。吸引により糸端を捕捉する場合、パッケージの径及び/形状によって糸端の捕捉のしやすさが異なる。よって、従来の装置では、糸端の捕捉がしにくい場合を基準にして吸引力を決定し、その吸引力をパッケージの径及び/形状によらず一定としていた。
【0006】
そのため、従来の装置では、現在のパッケージの径及び/又は形状が糸端の捕捉がしやすい状態においても、大きな吸引力により糸端の捕捉が行われていた。すなわち、従来の装置では、より小さな吸引力でも糸端を捕捉できる場合にも大きな吸引力により糸端の捕捉がされていた。過剰な吸引力で糸端を吸引する場合、過剰な吸引力の発生に伴う無駄なエネルギー消費、不適切な糸端の捕捉(例えば、パッケージの最外周の糸端だけでなく、それよりも内側の糸も捕捉される現象(二重口出し)など)が発生する。
【0007】
本発明の目的は、糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置、複数の巻取装置を備える繊維機械のエネルギー効率を向上させつつ糸端を適切に捕捉することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一態様に係る巻取装置は、給糸部と、巻取部と、捕捉部と、制御部と、を備える。給糸部は、糸を供給する。巻取部は、管を巻取方向に回転させることで管に糸を巻き付けてパッケージを形成する。捕捉部は、パッケージの外側の糸端を吸引する捕捉口を有する。制御部は、巻取部と捕捉部とを制御する。また、制御部は、パッケージの径及び/又は形状に基づいて、捕捉部に発生させる吸引力を制御する。
【0009】
上記の巻取装置では、制御部が、巻取部で形成されたパッケージの径及び/又は形状に基づいて捕捉部に発生させる吸引力を制御する。これにより、例えば、パッケージの径及び/又は形状が、パッケージ側の糸端を捕捉しにくい状態の場合には、制御部が、捕捉部に大きい吸引力を発生させる。この結果、パッケージ側から糸端を確実に捕捉できる。その一方で、パッケージの径及び/又は形状が、パッケージ側の糸端を捕捉しやすい状態の場合には、制御部が、捕捉部の吸引力を低下させる。この結果、本来捕捉したいパッケージ側の糸端のみを確実に捕捉して二重口出しなどの不適切な捕捉を抑制しつつ、過大な吸引力を発生させることによる無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0010】
上記の巻取装置において、制御部は、パッケージの径及び/又は形状に基づいて、糸端を吸引する際の管に対する捕捉口の位置を制御し、管に対する捕捉口の位置が離れる状況が発生した場合に、捕捉部の吸引力を調整してもよい。これにより、パッケージの外側と捕捉口との距離を一定としつつ、捕捉部の吸引力を調整することができるため、無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0011】
上記の巻取装置において、制御部は、パッケージの径及び/又は形状に基づき、パッケージの径及び/又は形状を変数として管に対する捕捉口の位置を算出するための第1数式と、パッケージの径及び/又は形状を変数として捕捉部の吸引力を算出するための第2数式と、を使用して、捕捉口の位置及び捕捉部の吸引力を算出してもよい。これにより、パッケージの径及び/又は形状に応じた、パッケージの表面に対する捕捉口の位置と捕捉部の吸引力とを正確かつ容易に算出できる。
【0012】
上記の巻取装置は、記憶部をさらに備えてもよい。記憶部は、捕捉制御情報を記憶する。捕捉制御情報は、パッケージの径及び/又は形状に応じて段階的に設定される管に対する捕捉口の位置に関する情報と、パッケージの径及び/又は形状に応じて段階的に設定される捕捉部の吸引力に関する情報と、を含む情報である。このとき、制御部は、パッケージの径及び/又は形状と捕捉制御情報とに基づいて、パッケージの表面に対する捕捉口の位置と、捕捉部の吸引力を制御してもよい。これにより、パッケージの径及び/又は形状に応じた、パッケージの表面に対する捕捉口の位置と、捕捉部の吸引力との制御が容易となる。
【0013】
上記の巻取装置は、吸引源と、開度調節部と、を備えてもよい。吸引源は、捕捉部に吸引力を生じさせる。開度調節部は、捕捉部と吸引源との間に設けられ、開口と、シャッターと、を有する。開口は、捕捉部と吸引源との間で気体を流通可能とする。シャッターは、開口を全開する全開位置と開口を全閉する全閉位置との間で移動することで、開口の開度を調節する。この場合、制御部は、シャッターの位置を制御することで、捕捉部の吸引力を制御してもよい。これにより、シャッターの移動により上記の開口の開度を細かく調整できるので、捕捉部の吸引力を精度よく調整できる。
【0014】
上記の巻取装置において、巻取部は、パッケージの外周に接触して回転することで管を回転させる回転ローラを有してもよい。パッケージの外周に回転ローラが存在している場合でも、捕捉部の吸引力を適切に設定できる。
【0015】
上記の巻取装置において、制御部は、捕捉部による糸端の捕捉に成功したか否かを判断し、糸端の捕捉に失敗したと判断した場合、捕捉に失敗したと判断したときの吸引力よりも捕捉部の吸引力を大きくし、吸引力を増加させた捕捉部により糸端の捕捉を再度実行してもよい。これにより、より確実に糸端を捕捉できる。
【0016】
上記の巻取装置は、監視装置をさらに備えてもよい。監視装置は、糸の状態を検出することで、糸における欠点である短欠点と、短欠点よりも欠点長さが長い長欠点と、を検出する。この場合に、監視装置が長欠点を検出した場合、制御部は、捕捉部により糸端が捕捉されたか否かを判断し、糸端が捕捉されたと判断した場合、糸端を捕捉後の捕捉部の吸引力を、糸端を捕捉する際の吸引力よりも低下させてもよい。パッケージから糸端を引き剥がすには大きな吸引力が必要である一方で、糸端をパッケージから引き剥がして捕捉部に捕捉できれば、糸端よりパッケージ側の糸は小さな吸引力でも捕捉部に吸引することができる。よって、糸端よりパッケージ側の糸の吸引時における捕捉部の吸引力を、先端部の捕捉時の吸引力よりも低下させることで、糸端の捕捉を確実に行いつつ、エネルギー消費を抑制できる。
【0017】
本発明の他の態様に係る繊維機械は、複数の上記巻取装置と、管理部と、を備える。管理部は、巻取装置の制御部と通信を行い、複数の巻取装置全体における捕捉部による糸端の捕捉の成功率を算出する。この繊維機械において、各巻取装置の制御部は、管理部により算出された成功率と、当該巻取装置における糸端の捕捉の成功率と、に基づいて、当該巻取装置の捕捉部の吸引力を制御する。これにより、各巻取装置における捕捉部にバラツキがある場合でも、複数の巻取装置全体における糸端の捕捉の成功率を向上させつつ、過大な吸引力を発生させることによる繊維機械の無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0018】
本発明のさらに他の態様に係る繊維機械は、複数の上記巻取装置と、吸引源と、管理部と、を備える。吸引源は、複数の巻取装置の捕捉部に対して吸引力を発生させる。管理部は、制御部と通信を行い、複数の巻取装置全体におけるパッケージの形成状況を把握する。この繊維機械において、吸引源は、複数の巻取装置に対して共通のものである。また、管理部は、複数の巻取装置全体における前記パッケージの形成状況に基づき、吸引源の吸引力を制御する。パッケージの形成状況に応じて、複数の巻取装置で共通の吸引源の吸引力を制御することで、複数の巻取装置で糸端の捕捉を確実に行いつつ、過大な吸引力を発生させることによる繊維機械の無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
上記の巻取装置、繊維機械においては、巻取装置で糸端の捕捉を確実に行いつつ、過大な吸引力を発生させることによる無駄なエネルギー消費を抑制できる。その結果、巻取装置、繊維機械のエネルギー効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】繊維機械の構成を示す図。
図2】巻取装置の構成を示す図。
図3】開度調節部の構成の一例を示す図。
図4】上糸センサの具体的構成を示す図。
図5】巻取装置におけるパッケージの形成動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.第1実施形態
(1)繊維機械
図1を用いて、繊維機械1の構成を説明する。図1は、繊維機械1の構成を示す図である。繊維機械1は、並べて配置された複数の巻取装置10と、吸引源11と、管理装置12と、玉揚装置13と、を備える。各巻取装置10は、給糸ボビン16から糸14を解舒しつつ、この糸14を綾振りしながらパッケージ22を形成する。
【0022】
吸引源11は、例えば、管理装置12内に設けられたブロア装置、ポンプ等である。吸引源11は、管状部材11bを有している。管状部材11bは、複数の巻取装置10に接続され、複数の巻取装置10の全てに対して、糸端を吸引するための吸引力を提供する。すなわち、吸引源11は、複数の巻取装置10に対して共通なものであり、複数の巻取装置10の全てに対して、糸端を吸引するための吸引力を提供する。吸引源11は、管状部材11bの内部空間を、例えば3.0kPaの負圧とする。なお、内部空間の圧力は、3.0kPaに限られず、任意の負圧に設定できる。
【0023】
管理装置12は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、SSD、ハードディスクなど)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムである。管理装置12は、各巻取装置10の制御部と通信可能であり、複数の巻取装置10の管理を行う。繊維機械1のオペレータは、管理装置12を適宜操作することにより、複数の巻取装置10を一括して管理できる。また、管理装置12は、吸引源11の吸引力を制御できる。
【0024】
管理装置12には、ディスプレイ12aと、入力インタフェース12bと、が設けられている。ディスプレイ12aは、巻取装置10の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示する。ディスプレイ12aは、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置である。
【0025】
入力インタフェース12bは、オペレータの操作を受け付ける。オペレータが、入力インタフェース12bを用いて適宜の操作を行うことにより、巻取装置10の設定作業を行うことができる。具体的には、オペレータは、入力インタフェース12bを用いて、パッケージ22に巻く糸の種類や複数の巻取装置10で形成するパッケージ22の種類(すなわち、パッケージ22の形状)を設定できる。入力インタフェース12bは、例えば、入力キー、タッチパネルなどの入力装置である。なお、ディスプレイ12aとタッチパネルである入力インタフェース12bとは一体となっていてもよい。パッケージ22の形状は、パッケージ22の外観を意味する。
【0026】
玉揚装置13は、各巻取装置10においてパッケージ22が満巻(規定量の糸が巻き取られた状態)となった際に、当該巻取装置10の位置まで走行し、満巻パッケージを取り外すと共に、空の管22aをセットする。管22aは、糸14を巻き取って形成したパッケージ22の芯となる。管22aは、例えば、紙製の管状部材である。
【0027】
(2)巻取装置の構成
次に、図2を用いて、巻取装置10の詳細構成を説明する。図2は、巻取装置10の構成を示す図である。巻取装置10は、綾振りドラム方式の巻取ユニットである。巻取装置10は、給糸部15と、巻取部17と、第1捕捉部30と、第2捕捉部34と、糸継装置38と、制御装置100と、を主に有する。
【0028】
給糸部15は、パッケージ22を形成するための糸14を巻取部17に供給する。具体的には、給糸部15は、搬送トレイ(図示せず)に載せられた給糸ボビン16を所定の位置で支持することで、給糸ボビン16を当該所定の位置に供給する搬送トレイ式の供給機構である。給糸部15は、搬送トレイ式の供給機構に限られず、例えばマガジン式の供給機構であってもよい。給糸部15に支持された給糸ボビン16からは、巻取部17により糸14が引き出される。引き出された糸14は、巻取部17によりパッケージ22として巻き取られる。
【0029】
巻取部17は、給糸部15から供給された糸14を用いて、パッケージ22を形成する。巻取部17は、クレードル18と、回転ローラ20と、を有する。クレードル18は、一対の回転支持部(図示せず)にて管22aを長さ方向の両端から挟み込むことにより、当該管22aを所定の軸回りに回転可能に支持する。クレードル18は、支持している管22aに形成されたパッケージ22を回転ローラ20に接触させる状態と、パッケージ22を回転ローラ20から離した状態と、に切替可能となっている。
【0030】
回転ローラ20は、ローラ駆動モータ21によって、軸回りに回転駆動される円筒状の部材である。管22a又はパッケージ22の外周に回転ローラ20を接触させた状態で、回転ローラ20を回転駆動することにより、管22a(パッケージ22)は、回転ローラ20の回転に従って、上記所定の軸周りに従動回転する。
【0031】
また、回転ローラ20の円筒の側面には、螺旋状の綾振溝(綾振り機構)が形成されている。回転ローラ20が回転駆動される間、管22a(パッケージ22)が従動回転すると同時に、給糸ボビン16から解舒された糸14は、綾振溝によって、管22a又はパッケージ22の表面において一定の幅でトラバースされる。これにより、給糸ボビン16から解舒され供給された糸14は、管22a又はパッケージ22の表面にてトラバースされながら巻き取られる。この結果、パッケージ22が形成される。
【0032】
第1捕捉部30は、糸走行経路中の監視装置40の上側に配置され、糸14が切断状態となったときに、パッケージ22の外側の糸端を負圧吸引により捕捉する装置である。第1捕捉部30は、軸部31と、パイプ部(管部)32と、捕捉口33と、を有する。パイプ部32及び捕捉口33は、軸部31を旋回中心として、給糸部15側の待機位置(図2の実線)から巻取部17側の捕捉位置(図2の点線)まで旋回可能(移動可能)である。
【0033】
なお、第1捕捉部30のパイプ部32及び捕捉口33は、捕捉口33が回転ローラ20とパッケージ22とが接触する位置に配置された状態で固定されていてもよい。
【0034】
第1捕捉部30は、捕捉位置において、捕捉口33で発生した吸引流により、パッケージ22側の糸端をパイプ部32内に吸引して捕捉する。糸端を捕捉後、待機位置まで戻ることで、パッケージ22側の糸14を糸継装置38に導く。
【0035】
第1捕捉部30には、パイプ部32の軸部31側に、開度調節部11aを介して、吸引源11が接続されている。これにより、吸引源11は、捕捉口33に負圧力による吸引流を発生できる。開度調節部11aは、吸引源11による捕捉口33の吸引流の流量を調整することで、捕捉口33の吸引力を調整する。具体的には、図3に示すように、開度調節部11aは、開口111と、シャッター113と、を有する。図3は、開度調節部11aの構成の一例を示す図である。
【0036】
開口111の一端(例えば、図3における左側の開口111)は、吸引源11と接続され、他端(例えば、図3における右側の開口111)は、パイプ部32の軸部31側に接続される。これにより、開口111は、第1捕捉部30と吸引源11との間で、例えば図3の開口111を貫通するように描かれた矢印に示す方向に気体を流通可能とする。なお、気体の流通方向は、図3の開口111を貫通する矢印が示す方向とは逆であってもよい。すなわち、図3における右側の開口111に吸引源11が接続されていてもよい。シャッター113は、モータ115の駆動により、開口111を全開する全開位置と、開口111を全閉する全閉位置との間で移動することで、開口111の開度(開口面積)を調節する。
【0037】
上記のように、本実施形態では、吸引源11を複数の巻取装置10で共通とする一方、各巻取装置10の第1捕捉部30に上記の開度調節部11aを設けている。これにより、以下のような有利な点がある。まず、第1捕捉部30の吸引力を他の捕捉部(第2捕捉部34、他の巻取装置10の捕捉部)とは独立して調整できる。例えば、吸引源11を各巻取装置10に設けることによっても第1捕捉部30の吸引力を調整できるが、この場合には、第2捕捉部34の吸引力にも影響が生じる。すなわち、第2捕捉部34の吸引力が意図せず変更される場合がある。また、複数の巻取装置10で共通の吸引源11の吸引力を調整することもできるが、この場合には、その影響が複数の巻取装置10の全てで生じてしまう。つまり、この場合にも、他の巻取装置10における捕捉部の吸引力が意図せず変更される場合がある。
【0038】
また、吸引源11を所望の吸引力(圧力)に変更する際の応答速度より、開度調節部11aのシャッター113を移動させて開口111を所望の開度とする際の応答速度の方が速い。よって、開度調節部11aの開度を調整して吸引力を調整する方が、吸引源11の吸引力を変更するよりも吸引力の変更の応答性がよい。
【0039】
第1捕捉部30の説明に戻る。第1捕捉部30によってパッケージ22側の糸端を捕捉する際の第1捕捉部30の位置において、第1捕捉部30の壁の近傍(パイプ部32の壁の近傍)には、当該内部に糸端が存在するか否かを検出する上糸センサ60が設けられる。上糸センサ60は、第1捕捉部30により糸端の捕捉に成功したか否かを検出する。図4を用いて、上糸センサ60の構成を説明する。図4は、上糸センサ60の具体的構成を示す図である。
【0040】
上糸センサ60は、ケース601と、投光部602と、受光部603と、を有する。ケース601は、支持部材604により、巻取部17に支持されている。ケース601は、投光部602及び受光部603を支持する。投光部602は、発光ダイオード等の発光素子で構成されている。投光部602は、パイプ部32の内部に光を照射する。投光部602が照射した光は、パイプ部32の内部に糸端が存在する場合は、当該糸端で反射する。
【0041】
受光部603は、フォトダイオード等の受光素子で構成されている。受光部603は、糸端で反射した光を受光し、光量に応じた電流又は電圧の電気信号を出力する。この上糸センサ60では、受光部603が投光部602からの光を検出したか否かに基づいて、第1捕捉部30によるパッケージ22側の糸端の捕捉の成否を判断できる。
【0042】
第2捕捉部34は、張力付与装置27と糸継装置38との間に配置される。第2捕捉部34は、上記の第1捕捉部30と同様に、軸部35と、パイプ部36と、捕捉口37と、を有する。捕捉口37は、第1捕捉部30の捕捉口33と同様に、軸部35を旋回中心として旋回可能であると共に、負圧吸引により吸引流を発生できる。第2捕捉部34は、給糸部15側の捕捉位置において、捕捉口37で発生した吸引流により、給糸部15側の糸端をパイプ部36内に吸引して捕捉する。糸端を捕捉後、待機位置まで戻ることで、給糸部15側の糸14を糸継装置38に導く。
【0043】
なお、第2捕捉部34も第1捕捉部30と同様に、パイプ部36の軸部35側に、吸引源11が接続されている。また、第2捕捉部34にも、吸引源11とパイプ部36との間に第1捕捉部30に設けられたのと同様の構成を有する開度調節部などの吸引流量を調節できる装置が設けられてもよい。
【0044】
例えば、監視装置40により短期間に欠点が検出された場合には、給糸ボビン16に問題がある場合がある。この場合、給糸ボビン16から長めに糸を除去するが、その際に、吸引源11による吸引力で糸14を吸引すると、糸14の吸引に時間がかかる。よって、第2捕捉部34にも開口の開度を調整するシャッターを有する開度調節部を設け、開口の開度を大きくして第2捕捉部34の吸引力を大きくすることで短時間に糸14を除去できる。
【0045】
糸継装置38は、糸走行経路中の張力付与装置27の直後(上側)に配置される。糸継装置38は、給糸部15と巻取部17(パッケージ22)との間で糸14が何らかの理由により切断状態となったときに、第2捕捉部34により捕捉され案内された給糸部15側の糸14と、第1捕捉部30により捕捉され案内されたパッケージ22側の糸14と、を糸継ぎする。糸継装置38は、例えば、圧縮空気により発生させた旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。
【0046】
制御装置100は、例えば、CPU、記憶装置(ROM、RAM、SSD、ハードディスクなど)、各種インタフェースを備えたコンピュータシステムである。制御装置100は、制御部101と、記憶部103と、を有する。制御部101は、制御装置100のCPUなどの情報処理部分であり、巻取装置10の制御に関する各種情報処理を実行する。なお、制御部101において実行される各種情報処理は、制御装置100の記憶装置(記憶部103)に記憶され、制御部101により実行可能なプログラムにより実現されてもよい。
【0047】
記憶部103は、制御装置100の記憶装置の記憶領域の一部又は全部であり、制御部101により実行されるプログラム、巻取装置10の制御に関する各種パラメータ、情報等を記憶する。
【0048】
制御部101は、ローラ駆動制御装置21aに駆動信号を送信し、ローラ駆動モータ21の回転駆動を制御する。これにより、制御部101は、回転ローラ20の回転を制御して、パッケージ22(管22a)に糸14をトラバースしながら巻き取ることでパッケージ22を形成できる。制御部101は、パッケージ22への糸14の巻取速度が一定となるよう、回転ローラ20の回転速度を調整する。また、パッケージ22を所望の速度にて回転させるため、パッケージ22の直径の大きさに従って、回転ローラ20の回転速度を調整可能となっていてもよい。
【0049】
制御部101は、糸14の糸継ぎをする場合に、形成されているパッケージ22の径及び/又は形状を把握する。制御部101は、パッケージ22の径(直径/半径)を、管22aへの糸14の巻き取りを開始した時点からの回転ローラ20の回転量と、回転ローラ20の回転により従動回転する管22a(パッケージ22)の回転量と、の比率に基づいて算出する。例えば、管22a(パッケージ22)が1回転したときに回転ローラ20がm回転(m:任意の正数)した場合、パッケージ22の径が回転ローラ20の径のm倍であると算出できる。このため、回転ローラ20及びクレードル18には、それぞれ、回転ローラ20の回転量及び管22aの回転量を測定するセンサ(例えば、エンコーダ)(図示せず)が設けられる。
【0050】
さらに、制御部101は、回転ローラ20から管22a(パッケージ22)に巻き取られた糸14の量に基づいて、パッケージ22の径を算出することもできる。巻き取られた糸14の量は、例えば、回転ローラ20の回転量に基づいて算出できる。
【0051】
一方、巻取装置10にて形成するパッケージ22の形状は、例えば、ユーザが管理装置12を操作することで設定できる。形成するパッケージ22の形状に関する情報は、例えば、管理装置12から制御装置100に送信され、記憶部103に記憶される。すなわち、制御部101は、記憶部103に記憶されたパッケージ22の形状に関する情報から、巻取装置10にて形成するパッケージ22の形状を把握できる。その他、制御部101は、パッケージ22の形状に関する情報を管理装置12から直接取得してもよい。
【0052】
パッケージ22の径及び/又は形状は、例えば、図示しないセンサ(例えば、距離センサ)を用いてパッケージ22の寸法を実測することによっても把握できる。具体的には、例えば第1捕捉部30の捕捉口33の近傍に距離センサを設けることで、パッケージ22の寸法を実測することができる。
【0053】
制御部101は、上記のようにして把握したパッケージ22の径及び/又は形状に基づいて、第1捕捉部30(捕捉口33)に発生させる吸引力を制御する。本発明者は、パッケージ22の径及び/又は形状によって、パッケージ22側の糸端を適切に捕捉するための第1捕捉部30の最適な吸引力が異なることを見いだした。具体的には、パッケージ22の径が大きいときには、パッケージ22の径が小さいときよりも必要な吸引力を小さくした方がよいことを見いだした。これは、以下の理由による。
【0054】
パッケージ22の径が小さいときには、パッケージ22の周囲の気体が吸引されるため、糸端を捕捉するためには、この気体の吸引も考慮して、第1捕捉部30に大きな吸引力を発生させる必要がある。その一方で、パッケージ22の径が大きいときには、パッケージ22の周囲の気体の吸引が抑制されるため、上記気体の吸引を考慮する必要がなく、第1捕捉部30に大きな吸引力を発生させる必要がないからである。また、パッケージ22の径が大きいときに大きな吸引力を発生させると、本来捕捉したい糸端(パッケージ22の最外周の糸端)以外の糸14も捕捉される現象が見られる場合もあった。
【0055】
パッケージ22の形状としては、例えば、円柱形状、円錐台形状がある。パッケージ22の形状が円柱形状の場合には、パッケージ22の表面と捕捉口33とを平行にすることができるので、パッケージ22の位置により糸端の吸引力はほとんど変化しない。その結果、大きな吸引力を必要としない。その一方で、パッケージ22の形状が円錐台形状の場合には、パッケージ22の表面と捕捉口33とを平行にできないので、パッケージ22の位置により糸端の吸引力が変化する。そのため、パッケージ22の表面と捕捉口33とが最も離れた位置でも糸端を確実に捕捉するために、円柱形状の場合と比較して、より大きな吸引力を捕捉口33に発生させる必要がある。
【0056】
以上の知見に基づいて、制御部101は、パッケージ22の径が大きい場合には、シャッター113の位置を開口111の開度がより小さくなる位置に移動させて、第1捕捉部30(捕捉口33)の吸引流量を小さくする。一方、パッケージ22の径が小さい場合には、シャッター113の位置を開口111の開度がより大きくなる位置に移動させて、第1捕捉部30(捕捉口33)の吸引流量を大きくする。また、パッケージ22の形状が円錐台形状である場合には、制御部101は、第1捕捉部30(捕捉口33)の吸引流量を、パッケージ22の形状が円錐形状である場合の吸引流量よりも大きくする。
【0057】
また、制御部101は、把握したパッケージ22の径及び/又は形状に基づいて、パッケージ22側の糸端を捕捉する際の管22aに対する第1捕捉部30の捕捉口33の位置を制御する。具体的には、制御部101は、パッケージ22の表面と捕捉口33との距離を一定とするよう、捕捉口33の位置を制御する。より具体的には、制御部101は、パッケージ22の径が大きい場合には、捕捉口33を管22aからより離れた位置に配置する。一方、パッケージ22の径が小さい場合には、捕捉口33を管22aにより近い位置に配置する。
【0058】
この場合、制御部101は、管22aに対する捕捉口33の位置と捕捉口33の吸引力を調整する。具体的には、管22aに対する捕捉口33の位置が離れる状況が発生した場合には、第1捕捉部30の吸引力が調整される。より具体的には、パッケージ22の径が大きくなり管22aに対する捕捉口33の位置が離れた場合に、さらに第1捕捉部30の吸引力が小さくなる。なぜなら、上記のとおり、例えばパッケージ22の径が大きくなると管22aに対する捕捉口33の位置が離れ、さらにパッケージ22の径が大きくなると捕捉口33の吸引力が小さくなるためである。
【0059】
制御部101は、パッケージ22の径及び/又は形状に基づき、パッケージ22の径及び/又は形状を変数として管22aに対する捕捉口33の位置を表す第1数式を用いて捕捉口33の位置を算出できる。また、制御部101は、パッケージ22の径及び/又は形状を変数として第1捕捉部30(捕捉口33)の吸引力を表す第2数式を用いて第1捕捉部30(捕捉口33)の吸引力を算出できる。これにより、パッケージ22の径及び/又は形状に応じた、パッケージ22の表面に対する捕捉口33の位置と第1捕捉部30の吸引力とを正確かつ容易に算出できる。
【0060】
また、制御部101は、上記の第1数式を用いて捕捉口33の位置を算出し、第1数式を用いて算出した捕捉口33の位置から捕捉口33の吸引力を算出してもよい。その逆に、制御部101は、上記の第2数式を用いて捕捉口33の吸引力を算出し、第2数式を用いて算出した捕捉口33の吸引力から捕捉口33の位置を算出してもよい。
【0061】
他の例として、例えば、第1捕捉部30に捕捉口33とパッケージ22の表面との間の距離を測定するセンサを設け、パッケージ22の表面と捕捉口33との間の距離が一定となるよう第1捕捉部30を移動させて停止させ、このときの第1捕捉部30の移動量からパッケージ22の径(の変化量)を算出し、当該パッケージ22の径から捕捉口33の吸引力(の変更量)を算出することもできる。
【0062】
また、制御部101は、第1捕捉部30の移動量から捕捉口33の位置を算出し、算出した捕捉口33の位置から捕捉口33の吸引力を算出してもよい。その逆に、制御部101は、捕捉口33の吸引力を算出し、算出した捕捉口33の吸引力から捕捉口33の位置を算出してもよい。
【0063】
さらに他の例として、制御部101は、記憶部103に記憶された捕捉制御情報CIに従って、パッケージ22の径及び/又は形状に応じて、管22aに対する捕捉口33の位置及び/又は第1捕捉部30の吸引力を段階的に調整できる。捕捉制御情報CIは、複数種類のパッケージ22の径及び/又は形状と、各パッケージ22の径及び/又は形状における管22aに対する捕捉口33の位置に関する情報と、を関連付けて記録した情報である。さらに、捕捉制御情報CIは、複数種類のパッケージ22の径及び/又は形状と、各パッケージ22の径及び/又は形状における第1捕捉部30の吸引力に関する情報(開度調節部11aの開口111の開度に関する情報、シャッター113の位置に関する情報であってもよい)と、を関連付けて記録した情報である。
【0064】
または、捕捉制御情報CIは、パッケージ22の径及び/又は形状と、管22aに対する捕捉口33の位置と、捕捉口33の吸引力と、を関連付けて記録した情報であってもよい。この場合、捕捉口33の位置は、捕捉口33の吸引力から求めることもできる。または、捕捉口33の吸引力は、捕捉口33の位置から求めることもできる。
【0065】
このように、上記の捕捉制御情報CIに従って捕捉口33の位置と吸引力を制御する(すなわち、シャッター113の位置を調整して開口111の開度を調整する)ことで、制御部101は、捕捉制御情報CIを参照するとの容易な方法により、把握したパッケージ22の径及び/又は形状に応じた、適切な捕捉口33の位置と吸引力を決定できる。
【0066】
巻取装置10は、解舒補助装置25と、張力付与装置27と、監視装置40と、をさらに備える。
【0067】
解舒補助装置25は、給糸部15から巻取部17への糸走行経路中において給糸部15の直後(下流側)に配置される。解舒補助装置25は、給糸ボビン16の芯管に被さることが可能な規制部材26を備える。規制部材26は、略筒状であり、給糸ボビン16の糸層上部に形成されたバルーンに接触するように配置されている。なお、バルーンとは、給糸ボビン16から解舒される糸14が遠心力に振り回されている部分のことである。このバルーンに対して規制部材26を接触させることにより、当該バルーンの部分の糸14に接触して、糸14が過度に振り回されることを防止する。これにより、当該糸14を給糸ボビン16から適切に解舒できる。
【0068】
張力付与装置27は、糸走行経路中の解舒補助装置25の直後(下流側)に配置される。張力付与装置27は、走行する糸14に所定のテンションを付与する。例えば、張力付与装置27は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のもので構成できる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態となるように付勢されている。噛み合わせ状態の櫛歯の間を屈曲させながら糸14を通過させることにより、当該糸14に対して適度なテンションを付与してパッケージ22の品質を高めることができる。
【0069】
監視装置40は、糸走行経路中の糸継装置38の直後(下流側)に配置される。監視装置40は、糸道を走行する糸14の状態を監視して糸欠陥を検出する。具体的には、監視装置40は、糸14の糸走行経路に糸14が通過するスリットを有し、スリットを通過する糸14を図示しない光学式センサで監視する。監視装置40は、光学センサにより検出した光量が所定の範囲よりも過大又は過小であるかを検出するとともに、光学センサにより検出した光量が所定の範囲からずれている状態が継続している時間を測定する。
【0070】
光学センサにより検出した光量が所定の範囲よりも過大であることは、糸14の太さが基準太さよりも細くなっていることに対応する。過小であることは、糸14の太さが基準太さよりも太くなっていることに対応する。また、光量が所定の範囲からずれている状態が継続する時間は、糸欠陥(糸14の太さが基準太さから外れている状態)の長さ(欠点長さ)に対応する。制御部101は、監視装置40から得られたこれらの情報に基づいて、短い糸欠陥(短欠陥)と、短欠陥よりも欠点長さが長い長欠点と、の発生を認識できる。
【0071】
短欠点としては、例えば、糸14の太さが基準太さの1.5倍以上である状態が2cm継続している場合がある。一方、長欠点としては、例えば、糸14の太さが基準太さの1.1倍以上1.4倍以下、又は、0.7倍以上0.9倍以下の状態が10cm継続している場合がある。どの糸欠点を短欠点又は長欠点とするかは、所定の基準により適宜決定できる。
【0072】
監視装置40は、上記の原理により、糸14に発生した糸切れ、すなわち糸走行経路における糸14の有無等も検出できる。
【0073】
監視装置40の近傍には、糸14を切断するためのカッタ41が設けられている。カッタ41は、監視装置40により作動させられる。具体的には、監視装置40により糸欠陥が検出された場合に、カッタ41は糸14を切断する。
【0074】
監視装置40が糸欠陥又は糸切れを検知した場合、制御装置100の制御部101は、第1捕捉部30に対して、パッケージ22側の糸端を捕捉させ、パッケージ22側の糸14を糸継装置38へ導く。一方、制御部101は、第2捕捉部34に対して、給糸部15側の糸端を捕捉させて、給糸部15側の糸14を糸継装置38へ導く。その後、制御部101は、糸継装置38に対して、導いた糸14を糸継ぎするよう指令する。これにより、切断された糸14が糸継ぎされる。
【0075】
制御部101は、上記の糸継動作を実行する際に、現在の第1捕捉部30の吸引力によりパッケージ22側の糸端の捕捉に成功したか否かを判断する。制御部101は、糸継動作を実行中に、上糸センサ60の受光部603にて投光部602からの光が検出されたときに、パイプ部32の内部に糸端が捕捉された、すなわち、糸端の捕捉に成功したと判断する。制御部101は、糸端の捕捉の成功/失敗の実績データを収集して、記憶部103に記憶する。また、糸端の捕捉の成功/失敗の実績データから、巻取装置10における糸端の捕捉の成功率を算出する。
【0076】
糸継動作の実行中に受光部603にて光が検出されず、糸端の捕捉に失敗したと判断した場合、制御部101は、第1捕捉部30の吸引力を、捕捉に失敗したときの吸引力よりも大きくし、吸引力を増加させた第1捕捉部30により糸端の捕捉を再度実行する。これにより、より確実にパッケージ22側の糸端を捕捉できる。
【0077】
他の例として、制御部101は、監視装置40を用いて糸端の捕捉に成功したか否かを判断できる。具体的には、例えば、第1捕捉部30において所定時間吸引を行い、その後、糸継装置38に糸14を案内しても監視装置40において糸14が検出されない場合に、糸端の捕捉に失敗したと判断できる。
【0078】
(3)繊維機械の動作
【0079】
(3-1)各巻取装置におけるパッケージの形成動作
図5を用いて、各巻取装置10におけるパッケージの形成動作を説明する。図5は、各巻取装置10におけるパッケージ22の形成動作を示すフローチャートである。以下で説明するパッケージ22の形成動作は、各巻取装置10で独立して実行される。また、以下で説明するパッケージ22の形成動作は、1つのパッケージ22を形成する際の動作である。よって、各巻取装置10で以下のパッケージ22の形成動作が繰り返し実行されることで、各巻取装置10で複数のパッケージ22を形成される。
【0080】
最初に、回転ローラ20の外周とパッケージ22(管22a)の外周とを接触させた状
態で、制御装置100の制御部101が、ローラ駆動制御装置21aに対して、パッケージ22(管22a)を糸14の巻取方向に回転させる駆動信号を出力する(ステップS1)。これにより、給糸部15から供給された糸14は、回転ローラ20によりトラバースされながら、パッケージ22(管22a)に巻き取られる。
【0081】
糸14を巻き取る間、制御部101は、監視装置40による糸14の状態の監視結果をモニターし、給糸部15から巻取部17までの糸走行経路中において、糸14の糸欠陥又は糸切れが発生したか否かを判定する(ステップS2)。糸欠陥及び糸切れが発生していないと判定した場合(ステップS2において「No」の場合)、制御部101は、指定されたパッケージ22の形成が終了したか否かを判断する(ステップS3)。
【0082】
パッケージ22の形成が終了していない場合(ステップS3において「No」の場合)、制御部101は、回転ローラ20の回転を継続し、パッケージ22の形成を継続する。一方、パッケージ22の形成が終了した場合(ステップS3において「Yes」の場合)、制御部101は、回転ローラ20の回転を停止し、パッケージ22の形成を終了する。
【0083】
糸14を巻き取り中に糸欠陥又は糸切れが発生した場合(ステップS2において「Yes」の場合)、制御部101は、第1捕捉部30及び第2捕捉部34による糸端の捕捉を行う。具体的には、以下の動作を実行する。なお、吸引源11は動作中である。
【0084】
まず、制御部101は、第2捕捉部34を給糸部15側の糸端の捕捉位置まで移動させて、第2捕捉部34に給糸部15側の糸端を捕捉させる。そして、後述する第1捕捉部30によりパッケージ22側の糸14が糸継装置38に導かれた後、給糸部15側の糸端を捕捉した第2捕捉部34を、捕捉位置から待機位置に移動させて、給糸部15側の糸14を糸継装置38に導く。
【0085】
第1捕捉部30による糸端の捕捉は、以下のようにして行う。まず、制御部101は、現在形成しているパッケージ22の形状と、現在のパッケージ22の径と、を把握する(ステップS4)。パッケージ22の径と形状を把握した後、制御部101は、第1捕捉部30を巻取部17側の捕捉位置まで移動させる。その後、制御部101は、把握したパッケージ22の径と形状に基づいて、第1捕捉部30の吸引力と、第1捕捉部30の捕捉口33の位置と、を決定する(ステップS5)。
【0086】
具体的には、パッケージ22の径が比較的大きい場合、制御部101は、開度調節部11aのシャッター113の位置を開口111の開度が小さくなる方向に移動して、吸引源11による第1捕捉部30の吸引流量を減少させると決定する。すなわち、第1捕捉部30の吸引力を小さくすると決定する。一方、パッケージ22の径が比較的小さい場合、制御部101は、シャッター113の位置を開口111の開度が大きくなる方向に移動して、吸引源11による第1捕捉部30の吸引流量を増加させると決定する。すなわち、第1捕捉部30の吸引力を大きくすると決定する。
【0087】
パッケージ22の径に基づいて第1捕捉部30の吸引力(開口111の開度)を決定後、制御部101は、パッケージ22の形状に基づいて、パッケージ22の径に基づいて決定した吸引力(開口111の開度)を補正する。具体的には、パッケージ22の形状が円錐台形状かそれに近い形状である(すなわち、パッケージ22の表面が捕捉口33と平行にならない)場合、制御部101は、第1捕捉部30の吸引力を、パッケージ22の径に基づいて決定した吸引力よりも大きくする。一方、パッケージ22の形状が円筒形状かそれに近い形状である(すなわち、パッケージ22の表面が捕捉口33と平行かそれに近い状態になる)場合、制御部101は、パッケージ22の径に基づいて算出した第1捕捉部30の吸引力を維持する。
【0088】
なお、上記では、パッケージ22の径に基づいて第1捕捉部30の吸引力を決定後、パッケージ22の形状に基づいて第1捕捉部30の吸引力を決定していたがこれに限られない。この逆に、パッケージ22の形状に基づいて第1捕捉部30の吸引力を決定後、パッケージ22の径に基づいて第1捕捉部30の吸引力を決定してもよい。
【0089】
また、パッケージ22の径が比較的大きい場合、制御部101は、第1捕捉部30の捕捉口33の位置を、管22aからより離れた位置に配置する。一方、パッケージ22の径が比較的小さい場合、捕捉口33を管22aにより近い位置に配置する。制御部101は、パッケージ22の形状が円筒形状かそれに近い形状である場合、管22aからより離れた位置に配置する。一方、パッケージ22の形状が円錐台形状かそれに近い形状である場合、捕捉口33を管22aにより近い位置に配置する。
【0090】
糸端の捕捉を実行中に、制御部101は、糸端の捕捉に成功したか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、制御部101は、上糸センサ60において糸端が検出されたときに、糸端の捕捉に成功したと判断できる。
【0091】
上糸センサ60において糸端が検出されず、パッケージ22側の糸端の捕捉が失敗したと判断された場合(ステップS6において「No」の場合)、制御部101は、パッケージ22の回転と第1捕捉部30による糸端の捕捉を停止後に、第1捕捉部30の吸引力を、捕捉に失敗したと判断したときの吸引力よりも増加させて、パッケージ22の回転と第1捕捉部30による糸端の捕捉とを再開する(ステップS7)。これにより、捕捉しにくい糸端を、より確実に捕捉できる。なお、所定時間捕捉動作を実行した後、捕捉に失敗したと判断し、パッケージ22の回転と第1捕捉部30による糸端の捕捉を停止させずに吸引力よりも増加させてもよい。
【0092】
一方、上糸センサ60において糸端が検出され、パッケージ22側の糸端の捕捉が成功したと判断された場合(ステップS6において「Yes」の場合)、監視装置40にて糸欠陥として長欠点が検出されたか否かを判断する(ステップS7)。
【0093】
糸欠陥として長欠点が検出された場合、長い糸14を第1捕捉部30に吸引することになる。本発明者らは、パッケージ22から糸端を引き剥がすには大きな吸引力が必要である一方で、糸端をパッケージ22から引き剥がして第1捕捉部30に捕捉できれば、糸端よりパッケージ22側の糸14は小さな吸引力でも第1捕捉部30に吸引できることを見いだした。
【0094】
上記の知見に基づいて、監視装置40にて長欠点が検出された場合に、制御部101は、第1捕捉部30により糸端が捕捉されたか否かを判断し、当該糸端が捕捉されたと判断した場合、第1捕捉部30の吸引力を、糸端を捕捉する際の吸引力よりも低下させる。
【0095】
具体的には、監視装置40にて長欠点が検出された場合(ステップS7で「Yes」)、制御部101は、第1捕捉部30によりパッケージ22側の糸端が捕捉(上糸センサ60において糸端が検知)された後に、開口111の開度を小さくして第1捕捉部30の吸引力を減少させて、糸端よりパッケージ22側の糸14を吸引する(ステップS9)。このように、糸端を捕捉した後に、第1捕捉部30の吸引力を低下させて、糸端よりパッケージ22側の糸14を吸引することで、糸端の捕捉を確実に行いつつ、エネルギー消費を抑制できる。なお、監視装置40にて短欠点が検出された場合(ステップS7で「No」)には、第1捕捉部30の吸引力は、そのまま維持される。
【0096】
上記のように、糸14を吸引する場合に第1捕捉部30の吸引力をある程度減少させても、糸14の吸引効率に影響することはない。なぜなら、糸14を吸引するために必要な時間は、上記吸引力よりはむしろ、パッケージ22を巻き取り時とは逆方向に回転して糸14を必要な長さだけ繰り出すためにかかる時間に依存するからである。
【0097】
糸端を捕捉(し必要に応じてさらに糸14を吸引)後、制御部101は、パッケージ22側の糸14と給糸部15側の糸14との糸継ぎを実行する(ステップS10)。具体的には、制御部101は、パッケージ22側の糸端を捕捉した第1捕捉部30を、捕捉位置から待機位置に移動させて、パッケージ22側の糸14を糸継装置38に導く。その後、制御部101は、糸継装置38に対して、パッケージ22側の糸14と給糸部15側の糸14とを糸継ぎさせる。
【0098】
糸継ぎを実行後、制御部101は、パッケージ22(管22a)への糸14の巻き取りが再開される(すなわち、パッケージ22の形成動作はステップS1に戻る)。
【0099】
このように、上記の巻取装置10では、制御部101が、巻取部17で形成されたパッケージ22の径及び/又は形状を把握し、把握したパッケージ22の径及び/又は形状に基づいて第1捕捉部30に発生させる吸引力を制御している。これにより、例えば、把握したパッケージ22の径及び/又は形状が、パッケージ側の糸端を捕捉しにくい状態の場合(例えば、パッケージ22の径が小さいとき、及び/又は、パッケージ22の形状が円筒形状ではない場合)には、制御部101が、第1捕捉部30に大きい吸引力を発生させる。この結果、パッケージ22側から糸端を確実に捕捉できる。
【0100】
その一方で、把握したパッケージ22の径及び/又は形状が、パッケージ22側の糸端を捕捉しやすい状態の場合(例えば、パッケージ22の径が大きいとき、及び/又は、パッケージ22の形状が円筒形状かそれに近い場合)には、制御部101が、第1捕捉部30の吸引力を低下させる。この結果、捕捉したいパッケージ22側の糸端のみを確実に捕捉して二重口出しなどの不適切な捕捉を抑制しつつ、過大な吸引力を発生させることによる無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0101】
(3-2)繊維機械の全体動作
以下、繊維機械1の全体動作を説明する。複数の巻取装置10を有する繊維機械1では、ユーザが管理装置12を操作して、各巻取装置10で形成するパッケージ22の形状などを設定した後、各巻取装置10でパッケージ22の形成が実行される。
【0102】
各巻取装置10でパッケージ22を形成中に、管理装置12は、各巻取装置10におけるパッケージ22の形成状況を、各巻取装置10の制御装置100から受信する。パッケージ22の形成状況は、例えば、当該巻取装置10において大きなパッケージが形成されているか、小さなパッケージが形成されているかを表す情報である。管理装置12は、複数の巻取装置10のパッケージ22の形成状況を管理して、複数の巻取装置10で、大きいパッケージが形成されている傾向にあるか、小さいパッケージが形成されている傾向にあるかを判断する。
【0103】
管理装置12は、複数の巻取装置10全体におけるパッケージ22の形成状況に基づき、吸引源11の吸引力を制御する。具体的には、管理装置12は、例えば、複数の巻取装置10全体で大きいパッケージが形成されている傾向がある場合には吸引源11の吸引力を減少させ、小さいパッケージが形成されている傾向がある場合には吸引源11の吸引力を上昇させる。なお、吸引源11の吸引力が変更された場合には、各巻取装置10においては、第1捕捉部30の吸引力が、各巻取装置10におけるパッケージ22の径及び/又は形状に基づいて決定した吸引力となるよう、開口111の開度が補正される。
【0104】
このように、パッケージ22の形成状況に応じて、複数の巻取装置10で共通の吸引源11の吸引力を制御することで、複数の巻取装置10で糸端の捕捉を確実に行いつつ、過大な吸引力を発生させることによる繊維機械1の無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0105】
また、管理装置12は、複数の巻取装置10全体における糸端の捕捉の成功率を算出し、これを複数の巻取装置10の制御装置100に送信する。具体的には、管理装置12は、各巻取装置10の制御装置100から糸端の捕捉の成功/失敗の実績データを取得し、当該実績データから、複数の巻取装置10全体における糸端の捕捉の成功率を算出する。
【0106】
各巻取装置10の制御部101は、管理装置12から受信した複数の巻取装置10全体における糸端の捕捉の成功率と、当該制御部101により制御される巻取装置10における糸端の捕捉の成功率と、に基づいて、第1捕捉部30の吸引力を制御する。
【0107】
具体的には、制御部101は、自身が制御する巻取装置10における糸端の捕捉の成功率が全体の成功率より低い場合には、当該巻取装置10の第1捕捉部30の吸引力を、当該巻取装置10で形成中のパッケージ22の径及び/又は形状に基づいて決定した第1捕捉部30の吸引力よりも増加させる。一方、自身が制御する巻取装置10における糸端の捕捉の成功率が全体の成功率より高い場合には、制御部101は、当該巻取装置10の第1捕捉部30の吸引力を、当該巻取装置10で形成中のパッケージ22の径及び/又は形状に基づいて決定した第1捕捉部30の吸引力よりも減少させる。
【0108】
巻取装置10においては、第1捕捉部30を組み付ける際に位置調整を行う。しかし、複数の巻取装置10毎に第1捕捉部30の調整の違いが多少生じてしまう。この結果、第1捕捉部30で同じ吸引力を発生させても、巻取装置10毎に糸端の捕捉の成功率が異なることがある。したがって、上記のように、糸端の捕捉の成功率に基づいて第1捕捉部30の吸引力を調整することで、各巻取装置10における第1捕捉部30の組み付け位置のバラツキの影響を抑えることができる。その結果、各巻取装置10で組み付け位置にバラツキがある場合でも、複数の巻取装置10全体における糸端の捕捉の成功率を向上させつつ、過大な吸引力を発生させることによる繊維機械1の無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0109】
2.第2実施形態
上記の第1実施形態では、各巻取装置10において、開度調節部11aにおける開口111の開度を調整することで第1捕捉部30の吸引力が制御されていた。その代わりに、繊維機械1の管理装置12が、複数の巻取装置10で形成されているパッケージ22の径及び/又は形状、及び/又は、パッケージ22の形成状態に基づいて、吸引源11の吸引流量を制御して、複数の巻取装置10の第1捕捉部30の吸引力を制御することもできる。
【0110】
3.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定され
るものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細
書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)上記で説明した繊維機械1の動作における各処理の順番及び/又は処理の内容は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0111】
(B)監視装置40は、光学式のセンサに限られない。例えば、監視装置40として静電容量式など他の方式の監視装置を用いてもよい。
【0112】
(C)張力付与装置27は、ゲート式に限られず、例えばディスク式のものを用いることもできる。
【0113】
(D)糸継装置38は、スプライサ装置に限られず、例えば機械式のノッタ等を用いることもできる。
【0114】
(E)吸引源11は、複数の巻取装置10で共通でなくてもよい。すなわち、各巻取装置10に個別に吸引源11を設けてもよい。
【0115】
(F)上記の巻取装置10の巻取部17は、回転ローラ20の回転によりパッケージ22(管22a)を回転させて糸14を管22a(パッケージ22)に巻き取るものであった。これに限られず、巻取部17は、管22a(パッケージ22)をモータなどの駆動源により直接回転させるものであってもよい。この場合、糸14の綾振りを、トラバースアームを用いて行ってもよい。具体的には、例えば、クレードル18の近傍に設けられたトラバースアームに糸14を引っ掛けて、糸14を引っ掛けたトラバースアームを管22a(パッケージ22)の長さ方向に往復させて糸14の綾振りを行うことにより、管22a(パッケージ22)に糸14を巻き取らせることもできる。
【0116】
(G)綾振溝を形成していない回転ローラ20の回転によりパッケージ22(管22a)を回転させてもよい。この場合の糸14の綾振りもトラバースアームを用いて行うことができる。
【0117】
(H)巻取装置10は、給糸ボビン16からの糸14を巻き取ることでパッケージ22を形成する装置に限られない。例えば、繊維束から糸を紡績する紡績機にも用いることができる。
【0118】
(I)上記の実施形態では、第1捕捉部30の吸引力と捕捉口33の位置とを決定する基準は、パッケージ22の径と形状の両方であった。これに限られず、第1捕捉部30の吸引力と捕捉口33の位置とを決定する基準は、パッケージ22の径のみであってもよいし、パッケージ22の形状のみであってもよい。
【0119】
4.実施形態の特徴
上記実施形態は、以下の特徴を有する。
(1)巻取装置(例えば、巻取装置10)は、給糸部(例えば、給糸部15)と、巻取部(例えば、巻取部17)と、捕捉部(例えば、第1捕捉部30)と、制御部(例えば、制御部101)と、を備える。給糸部は、糸(例えば、糸14)を供給する。巻取部は、管(例えば、管22a)を巻取方向に回転させることで管に糸を巻き付けてパッケージ(例えば、パッケージ22)を形成する。捕捉部は、パッケージの外側の糸端を吸引する捕捉口(例えば、捕捉口33)を有する。制御部は、巻取部と捕捉部とを制御する。また、制御部は、パッケージの径及び/又は形状に基づいて、捕捉部に発生させる吸引力を制御する。
【0120】
上記の巻取装置では、制御部が、巻取部で形成されたパッケージの径及び/又は形状に基づいて捕捉部に発生させる吸引力を制御する。これにより、例えば、パッケージの径及び/又は形状が、パッケージ側の糸端を捕捉しにくい状態の場合には、制御部が、捕捉部に大きい吸引力を発生させる。この結果、パッケージ側から糸端を確実に捕捉できる。その一方で、パッケージの径及び/又は形状が、パッケージ側の糸端を捕捉しやすい状態の場合には、制御部が、捕捉部の吸引力を低下させる。この結果、本来捕捉したいパッケージ側の糸端のみを確実に捕捉して二重口出しなどの不適切な捕捉を抑制しつつ、過大な吸引力を発生させることによる無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0121】
(2)上記(1)の巻取装置において、制御部は、パッケージの径及び/又は形状に基づいて、糸端を吸引する際の管に対する捕捉口の位置を制御し、管に対する捕捉口の位置が離れる状況が発生した場合に、捕捉部の吸引力を調整してもよい。これにより、パッケージの外側と捕捉口との距離を一定としつつ、捕捉部の吸引力を調整することができるため、無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0122】
(3)上記(2)の巻取装置において、制御部は、パッケージの径及び/又は形状に基づき、パッケージの径及び/又は形状を変数として管に対する捕捉口の位置を算出するための第1数式と、パッケージの径及び/又は形状を変数として捕捉部の吸引力を算出するための第2数式と、を使用して、捕捉口の位置及び捕捉部の吸引力を算出してもよい。これにより、パッケージの径及び/又は形状に応じた、パッケージの表面に対する捕捉口の位置と捕捉部の吸引力とを正確かつ容易に算出できる。
【0123】
(4)上記(2)~(3)の巻取装置は、記憶部をさらに備えてもよい。記憶部は、捕捉制御情報を記憶する。捕捉制御情報は、パッケージの径及び/又は形状に応じて段階的に設定される管に対する捕捉口の位置に関する情報と、パッケージの径及び/又は形状に応じて段階的に設定される捕捉部の吸引力に関する情報と、を含む情報である。このとき、制御部は、パッケージの径及び/又は形状と捕捉制御情報とに基づいて、パッケージの表面に対する捕捉口の位置と、捕捉部の吸引力を制御してもよい。これにより、パッケージの径及び/又は形状に応じた、パッケージの表面に対する捕捉口の位置と、捕捉部の吸引力との制御が容易となる。
【0124】
(5)上記(1)~(4)の巻取装置は、吸引源(例えば、吸引源11)と、開度調節部(例えば、開度調節部11a)と、を備えてもよい。吸引源は、捕捉部に吸引力を生じさせる。開度調節部は、捕捉部と吸引源との間に設けられ、開口(例えば、開口111)と、シャッター(例えば、シャッター113)と、を有する。開口は、捕捉部と吸引源との間で気体を流通可能とする。シャッターは、開口を全開する全開位置と開口を全閉する全閉位置との間で移動することで、開口の開度を調節する。この場合、制御部は、シャッターの位置を制御することで、捕捉部の吸引力を制御してもよい。これにより、シャッターの移動により上記の開口の開度を細かく調整できるので、捕捉部の吸引力を精度よく調整できる。
【0125】
(6)上記(1)~(5)の巻取装置において、巻取部は、パッケージの外周に接触して回転することで管を回転させる回転ローラ(例えば、回転ローラ20)を有してもよい。パッケージの外周に回転ローラが存在している場合でも、捕捉部の吸引力を適切に設定できる。
【0126】
(7)上記(1)~(6)の巻取装置において、制御部は、捕捉部による糸端の捕捉に成功したか否かを判断し、糸端の捕捉に失敗したと判断した場合、捕捉に失敗したと判断したときの吸引力よりも捕捉部の吸引力を大きくし、吸引力を増加させた捕捉部により糸端の捕捉を再度実行してもよい。これにより、より確実に糸端を捕捉できる。
【0127】
(8)上記(1)~(7)の巻取装置は、監視装置(例えば、監視装置40)をさらに備えてもよい。監視装置は、糸の状態を検出することで、糸における欠点である短欠点と、短欠点よりも欠点長さが長い長欠点と、を検出する。この場合に、監視装置が長欠点を検出した場合、制御部は、捕捉部により糸端が捕捉されたか否かを判断し、糸端が捕捉されたと判断した場合、糸端を捕捉後の捕捉部の吸引力を、糸端を捕捉する際の吸引力よりも低下させてもよい。パッケージから糸端を引き剥がすには大きな吸引力が必要である一方で、糸端をパッケージから引き剥がして捕捉部に捕捉できれば、糸端よりパッケージ側の糸は小さな吸引力でも捕捉部に吸引することができる。よって、糸端よりパッケージ側の糸の吸引時における捕捉部の吸引力を、先端部の捕捉時の吸引力よりも低下させることで、糸端の捕捉を確実に行いつつ、エネルギー消費を抑制できる。
【0128】
(9)繊維機械(例えば、繊維機械1)は、複数の上記(1)~(8)の巻取装置と、管理部(例えば、管理装置12)と、を備える。管理部は、巻取装置の制御部と通信を行い、複数の巻取装置全体における捕捉部による糸端の捕捉の成功率を算出する。この繊維機械において、各巻取装置の制御部は、管理部により算出された成功率と、当該巻取装置における糸端の捕捉の成功率と、に基づいて、当該巻取装置の捕捉部の吸引力を制御する。これにより、各巻取装置における捕捉部にバラツキがある場合でも、複数の巻取装置全体における糸端の捕捉の成功率を向上させつつ、過大な吸引力を発生させることによる繊維機械の無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0129】
(10)繊維機械は、複数の上記(1)~(8)の巻取装置と、吸引源と、管理部と、を備える。吸引源は、複数の巻取装置の捕捉部に対して吸引力を発生させる。管理部は、制御部と通信を行い、複数の巻取装置全体におけるパッケージの形成状況を把握する。この繊維機械において、吸引源は、複数の巻取装置に対して共通のものである。また、管理部は、複数の巻取装置全体における前記パッケージの形成状況に基づき、吸引源の吸引力を制御する。パッケージの形成状況に応じて、複数の巻取装置で共通の吸引源の吸引力を制御することで、複数の巻取装置で糸端の捕捉を確実に行いつつ、過大な吸引力を発生させることによる繊維機械の無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、糸を巻き取ってパッケージを形成する繊維機械に広く適用できる。
【符号の説明】
【0131】
1 :繊維機械
10 :巻取装置
15 :給糸部
16 :給糸ボビン
17 :巻取部
18 :クレードル
20 :回転ローラ
21 :ローラ駆動モータ
21a :ローラ駆動制御装置
22 :パッケージ
22a :管
25 :解舒補助装置
26 :規制部材
27 :張力付与装置
30 :第1捕捉部
31 :軸部
32 :パイプ部
33 :捕捉口
34 :第2捕捉部
35 :軸部
36 :パイプ部
37 :捕捉口
38 :糸継装置
40 :監視装置
41 :カッタ
60 :上糸センサ
601 :ケース
602 :投光部
603 :受光部
604 :支持部材
100 :制御装置
101 :制御部
103 :記憶部
11 :吸引源
11a :開度調節部
11b :管状部材
111 :開口
113 :シャッター
115 :モータ
12 :管理装置
12a :ディスプレイ
12b :入力インタフェース
13 :玉揚装置
14 :糸
CI :捕捉制御情報
図1
図2
図3
図4
図5