(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095256
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】健康リスク判定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240703BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240703BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240703BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/16 130
A61B5/11 100
A61B5/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212408
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】野々村 琢人
(72)【発明者】
【氏名】島田 紗樹
(72)【発明者】
【氏名】仁科 翠
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS07
4C038SS09
4C038SV01
4C038SX01
4C038VA04
4C038VA15
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】負担を軽減しつつ、健康リスクを正確に把握することができる健康リスク判定システムを提供する。
【解決手段】健康リスク判定システム1は、使用者に対して非接触で呼吸情報を取得するセンサ部11と、呼吸情報から使用者の異常呼吸状態を検出する異常検出部15と、単位時間帯ごとに異常呼吸状態の検出回数を取得する単位回数取得部16と、平均検出回数を取得する平均回数取得部17と、最大検出回数を取得する最大回数取得部18と、平均検出回数及び最大検出回数の双方から使用者の健康リスクを判定する健康リスク判定部19と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の異常呼吸状態による健康リスクを判定する健康リスク判定システムであって、
前記使用者に対して非接触で前記使用者の呼吸を示す情報である呼吸情報を取得するセンサ部と、
前記呼吸情報から前記使用者の前記異常呼吸状態を検出する異常検出部と、
前記入眠時刻から前記覚醒時刻までの間における所定の時間幅を有する単位時間帯ごとに前記異常呼吸状態の検出回数を取得する単位回数取得部と、
前記入眠時刻から前記覚醒時刻までの間における前記異常呼吸状態の前記検出回数の合計値を、前記入眠時刻から前記覚醒時刻までの時間で除した値である平均検出回数を取得する平均回数取得部と、
前記単位時間帯ごとに取得された複数の前記検出回数のうちの最大値である最大検出回数を取得する最大回数取得部と、
前記平均検出回数及び前記最大検出回数の双方から前記使用者の健康リスクを判定する健康リスク判定部と、を備える、
健康リスク判定システム。
【請求項2】
前記センサ部は、前記使用者の体動を示す情報である体動情報と、前記使用者の心拍を示す情報である心拍情報とを取得し、
前記異常検出部は、前記体動情報及び前記心拍情報から前記異常呼吸状態を検出する、
請求項1に記載の健康リスク判定システム。
【請求項3】
前記呼吸情報、前記体動情報、及び前記心拍情報から前記使用者の睡眠段階を判定する睡眠段階取得部をさらに備え、
前記健康リスク判定部は、前記異常検出部の検出結果及び前記睡眠段階から前記使用者の健康リスクを判定する、
請求項2に記載の健康リスク判定システム。
【請求項4】
前記呼吸情報は、前記使用者の呼吸に伴う体動を示す信号を含み、
前記信号を増幅し、増幅された前記信号を前記睡眠段階取得部に出力する第1アンプ及び第2アンプをさらに備え、
前記第1アンプのゲインは、前記第2アンプのゲインよりも大きい、
請求項3に記載の健康リスク判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、健康リスク判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-149173号公報には、睡眠時無呼吸症候群によって血圧変動が起こる可能性を示す情報処理装置が開示されている。この情報処理装置は、被測定者の体に装着され、被測定者から所定の測定データを取得する測定端末及びセンサを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の情報処理装置では、測定端末及びセンサが被測定者の体の一部に接触又は近接した状態で被測定者から測定データを取得する。このため、センサ等の物体が体に長時間触れた状態となる場合があるので、被測定者の負担が大きい可能性がある。この負担は、睡眠中の被測定者の測定データを取得しようとする際に特に顕著となる。また、睡眠時無呼吸症候群のような健康リスクの判定に際しては、被測定者の健康リスクを正確に把握することが求められる。
【0005】
本開示は、負担を軽減しつつ、健康リスクを正確に把握することができる健康リスク判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る健康リスク判定システムは、入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の異常呼吸状態による健康リスクを判定する健康リスク判定システムであって、使用者に対して非接触で使用者の呼吸を示す情報である呼吸情報を取得するセンサ部と、呼吸情報から使用者の異常呼吸状態を検出する異常検出部と、入眠時刻から覚醒時刻までの間における所定の時間幅を有する単位時間帯ごとに異常呼吸状態の検出回数を取得する単位回数取得部と、入眠時刻から覚醒時刻までの間における異常呼吸状態の検出回数の合計値を、入眠時刻から覚醒時刻までの時間で除した値である平均検出回数を取得する平均回数取得部と、単位時間帯ごとに取得された複数の検出回数のうちの最大値である最大検出回数を取得する最大回数取得部と、平均検出回数及び最大検出回数の双方から使用者の健康リスクを判定する健康リスク判定部と、を備える。
【0007】
この健康リスク判定システムでは、センサ部が使用者に対して非接触で使用者の呼吸情報を取得する。センサ部が使用者に対して接触する場合と比較して、負担を軽減することができる。また、この健康リスク判定システムは、平均回数取得部によって取得された平均検出回数、及び、最大回数取得部によって取得された最大検出回数の双方から使用者の健康リスクを判定する。例えば、入眠時刻から覚醒時刻までのうち短時間に、集中して使用者が異常呼吸状態となる可能性がある。この場合、平均検出回数のみから使用者の健康リスクを判定すると、健康リスクを正確に把握できない可能性がある。平均検出回数に加えて最大検出回数を加味して使用者の健康リスクを判定するため、短時間に集中して異常呼吸状態となった場合でも、健康リスクを正確に把握することができる。
【0008】
センサ部は、使用者の体動を示す情報である体動情報と、使用者の心拍を示す情報である心拍情報とを取得してもよい。異常検出部は、体動情報及び心拍情報から異常呼吸状態を検出してもよい。この場合、呼吸情報に加えて、体動情報及び心拍情報から異常呼吸状態を検出できる。例えば、異常呼吸状態から異常呼吸状態でない通常の呼吸状態に変化する際の使用者の体動、及び、使用者の心拍数の上昇から異常呼吸状態を検出できる。よって、使用者の異常呼吸状態を一層正確に検出できる。
【0009】
健康リスク判定システムは、呼吸情報、体動情報、及び心拍情報から使用者の睡眠段階を判定する睡眠段階取得部をさらに備えてもよい。健康リスク判定部は、異常検出部の検出結果及び睡眠段階から使用者の健康リスクを判定してもよい。この場合、異常呼吸状態の検出結果に加えて、睡眠段階から健康リスクを判定できる。例えば、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係の観点から、健康リスクについて使用者に助言することができる。
【0010】
呼吸情報は、使用者の呼吸に伴う体動を示す信号を含んでもよい。健康リスク判定システムは、信号を増幅し、増幅された信号を睡眠段階取得部に出力する第1アンプ及び第2アンプをさらに備えてもよい。第1アンプのゲインは、第2アンプのゲインよりも大きくてもよい。例えば、異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化した時に使用者の呼吸が大きくなる傾向にある。仮に健康リスク判定システムが所定のゲインを有する第1アンプのみを備える場合、使用者の呼吸が大きくなった際に第1アンプにより増幅された信号が振り切れて飽和する可能性がある。これに対し、第1アンプのゲインよりも小さいゲインを有する第2アンプを備える場合、第1アンプにおける信号が飽和した場合に第2アンプにおいて信号を増幅して睡眠段階取得部に出力することができる。よって、睡眠段階を一層正確に取得できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、負担を軽減しつつ、健康リスクを正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る健康リスク判定システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2(a)は、センサ部が取り付けられるクッション体を示す斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)に示されたクッション体を構成する芯材を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、健康リスク判定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、異常呼吸状態の検出回数の時系列データの一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、健康リスクの判定基準の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、健康リスクの表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る健康リスク判定システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0014】
本開示に係る健康リスク判定システムは、使用者の異常呼吸状態による健康リスクを判定する。健康リスク判定システムは、入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の健康リスクを判定する。健康リスク判定システムは、例えば、個人用又は家庭用として用いられてもよいし、試験研究用として研究所等で用いられるものであってもよい。また、健康リスク判定システムは、治療用として病院等で用いられるものであってもよい。「使用者」は、健康リスク判定システムにより健康リスクを判定される対象となる者を言う。使用者は、例えば、異常呼吸状態による健康リスクを抱える者、病院等で睡眠治療を受ける者、又は自己の健康リスクの判定を希望する者である。
【0015】
「健康リスク」とは、例えば、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)に伴う心不全等のリスクを言う。「異常呼吸状態」とは、使用者に健康リスクをもたらす可能性を有する睡眠中の呼吸の状態を言う。異常呼吸状態は、例えば、無呼吸状態及び低呼吸状態を含む。「無呼吸状態」とは、使用者の呼吸が10秒以上停止する状態を言う。「低呼吸状態」とは、使用者の呼吸における気流の振幅が30%以上減少し、且つ、動脈血酸素飽和度(SpO2)が4%以上低下する状態が10秒以上経過する状態を言う。
【0016】
図1は、一実施形態に係る健康リスク判定システム1を示すブロック図である。健康リスク判定システム1は、例えば、コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、腕時計、又はウェアラブル端末等の情報端末からアクセス可能とされている。健康リスク判定システム1は、例えば、センサ部11と、健康リスク判定アプリケーション40とを備える。
【0017】
健康リスク判定アプリケーション40は、例えば、情報端末において実行されるアプリケーションプログラムである。健康リスク判定アプリケーション40は、情報端末にダウンロードされるアプリケーションであって情報端末において実行されるアプリケーションであってもよい。以下では、健康リスク判定アプリケーション40が情報端末にダウンロードされたアプリケーションであって、健康リスク判定アプリケーション40の機能が当該情報端末において実行される例について説明する。
【0018】
「情報端末」は、例えば、携帯端末である。「携帯端末」は、例えば、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット又はノートパソコン等、携帯可能な情報端末を示している。「情報端末」は、携帯端末以外の端末であってもよく、例えば、デスクトップのパソコンであってもよい。「情報端末」は、一例として、オペレーティングシステム及びソフトウェア(アプリケーション)等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM及びRAMによって構成される主記憶部と、フラッシュメモリ等によって構成される補助記憶部と、無線通信モジュール等によって構成される通信制御部と、入力装置と、ディスプレイ等の出力装置とを備える。但し、「情報端末」の構成は、上記に限定されず適宜変更可能である。
【0019】
健康リスク判定アプリケーション40の各機能は、プロセッサ又は主記憶部に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、主記憶部又は補助記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。健康リスク判定アプリケーション40の機能の実行に必要なデータ又はデータベースは主記憶部又は補助記憶部に格納される。
【0020】
「情報端末」の各機能要素は、プロセッサ又は記憶部(例えば前述した主記憶部又は補助記憶部)に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し及び書き出しを行う。「情報端末」の処理に用いられるデータ又はデータベースは記憶部に格納される。
【0021】
健康リスク判定アプリケーション40は、複数のコンピュータによって構成される分散処理システムであってもよいし、クライアントサーバシステム、又はクラウドシステムであってもよい。本実施形態に係る健康リスク判定アプリケーション40は、例えば、メインモジュール、データ取得モジュール、判定モジュール、及び出力モジュールを含む。データ取得モジュール、判定モジュール、及び出力モジュールが実行されることによって健康リスク判定アプリケーション40の各機能要素が機能する。健康リスク判定アプリケーション40は、一例として、CD-ROM、DVD-ROM、又は半導体メモリ等の有形の記憶媒体に固定的に記録された上で提供されるものであってもよい。また、健康リスク判定アプリケーション40は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されるものであってもよい。
【0022】
センサ部11は、使用者の身体の情報を取得する。本実施形態では、センサ部11は、呼吸情報、体動情報、及び心拍情報を取得する。呼吸情報は、使用者の呼吸を示す情報である。呼吸情報は、例えば、単位時間当たりの呼吸数(以下では、単に「呼吸数」とする)を含んでもよい。当該単位時間は、変更可能であってもよい。体動情報は、使用者の体動を示す情報である。心拍情報は、使用者の心拍を示す情報である。センサ部11が取得する情報の内容は、適宜変更可能である。センサ部11は、例えば、血圧を示す情報を取得してもよい。
【0023】
図2(a)は、センサ部11が取り付けられるクッション体10を示す斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)に示されたクッション体10を構成する芯材2を示す斜視図である。
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、センサ部11は、例えば、クッション体10に着脱可能なセンサシートである。センサ部11は、クッション体10に横たわる使用者のバイタルデータを取得する。一例として、センサ部11は心電図を取得してもよい。前述した呼吸情報、体動情報、及び心拍情報は、例えば、上記のバイタルデータに含まれる。
【0024】
例えば、センサ部11は糸状センサが刺繍されたシート状生地を有し、クッション体10に対する当該シート状生地の位置は変更可能とされている。センサ部11の糸状センサは、例えば、当該シート状生地において2次元的に広がるように刺繍によって固定されている。当該糸状センサは、一例として、圧電センサである。この場合、センサ部11の圧電センサが付与された使用者の身体の荷重から当該荷重に応じた電気信号を生成し、センサ部11は当該電気信号を前述した呼吸情報、体動情報及び心拍情報として取得する。呼吸情報、体動情報及び心拍情報として取得される電気信号を以下では「信号」と称することがある。
【0025】
センサ部11は、例えば、上記の糸状センサ(一例として圧電センサ)と、糸状センサにより生成された電気信号としての呼吸情報、体動情報、及び心拍情報をセンサ部11の外部に出力する通信部とを有する。上記では、センサ部11が圧電センサを有する例について説明した。しかし、センサ部11のセンサの種類は、圧電センサに限られず、特に限定されない。例えば、センサ部11は、加速度センサを含んでいてもよい。
【0026】
呼吸情報は、使用者の呼吸に伴う体動を示す信号を含む。「呼吸に伴う体動」とは、呼吸に伴う身体の動きを示している。センサ部11は、使用者の呼吸に伴う体動を検出する。センサ部11は、当該呼吸に伴う体動を示す信号をセンサ部11の外部に出力する。心拍情報は、使用者の心拍に伴う体動を示す信号を含む。「心拍に伴う体動」とは、心拍に伴う身体の動きを示している。センサ部11は、使用者の心拍に伴う体動を検出する。センサ部11は、当該心拍に伴う体動を示す信号をセンサ部11の外部に出力する。体動情報は、使用者の呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号を含む。「呼吸及び心拍に伴わない体動」とは、呼吸及び心拍とは関係がない身体の動き、例えば、寝返りによる身体の移動を示している。センサ部11は、使用者の呼吸及び心拍に伴わない体動を検出する。センサ部11は、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号をセンサ部11の外部に出力する。
【0027】
例えば、センサ部11は、使用者の身体に載せられるクッション体10に取り付けられて用いられる。クッション体10は、平面視において長方形状を呈する。クッション体10は、長手方向D1、及び長手方向D1と直交する短手方向D2に延在する。クッション体10は、長手方向D1及び短手方向D2の双方に直交する厚さ方向D3に厚みを有する。
【0028】
クッション体10の長手方向D1の長さは、例えば、120cm以上且つ210cm以下(一例として195cm)である。クッション体10の短手方向D2の長さは、例えば、70cm以上且つ180cm以下(一例として97cm)である。クッション体10の厚さ方向D3の長さは、例えば、3cm以上且つ40cm以下(一例として9cm)である。
【0029】
本実施形態では、クッション体10は、マットレスである。クッション体10の使用者は、自らの身体をクッション体10の上に載せる。このとき、横たわった使用者の身体が延びる方向(すなわち、使用者の頭部と脚部とを結ぶ方向)は、例えば、クッション体10の長手方向D1と一致する。
【0030】
図2(b)に示されるように、クッション体10は、後述する側地3の内部に収容される芯材2を有する。本実施形態では、芯材2は、平面視において長方形状を呈する。芯材2は、例えば、内容物と、当該内容物を収容する袋体とを有する。内容物は、例えば、ウレタンフォーム、又はポリエステルである。袋体の材料は、例えば、綿、又はポリエステルである。
【0031】
芯材2は、直方体形状を呈する。芯材2は、使用者の身体が載せられる上面21と、上面21とは反対側を向く下面22とを有する。上面21は、厚さ方向D3の一方側(
図2(b)における上側)を向く面である。下面22は、厚さ方向D3の他方側(
図2(b)における下側)を向く面である。また、芯材2は、上面21と下面22とを繋ぐ複数の側面23を有する。
【0032】
図2(a)に示されるように、クッション体10は、側地3を有する。本実施形態では、側地3は、袋状であり、平面視において長方形状を呈する。側地3は、例えば、芯材2の上面21を覆う表地31と、芯材2の下面22を覆う裏地32と、表地31及び裏地32を互いに繋ぐ開閉部材33とを有する。開閉部材33は、側地3における芯材2の側面23に対応する位置に設けられている。厚さ方向D3から見た場合において、開閉部材33は、芯材2の側面23の外側に位置する。側地3は、芯材2から着脱可能とされている。「芯材から着脱可能」とは、芯材に対して側地を捲り上げること、及び、側地を捲って芯材の少なくとも一部を露出させることを含んでいる。
【0033】
開閉部材33は、一例として、いわゆるダブルスライダである。すなわち、開閉部材33は、2つのスライド部材34と、スライド部材34のスライドによって表地31及び裏地32を開閉する開閉部35とを有してもよい。
【0034】
この場合、一方のスライド部材34を開閉部35に沿って一方向(
図2(a)における時計回りの方向)にスライドさせると共に、他方のスライド部材34を開閉部35に沿って他方向(
図2(a)における反時計回りの方向)にスライドさせることで、表地31及び裏地32を開くことができる。
【0035】
また、一方のスライド部材34を開閉部35に沿って他方向にスライドさせると共に、他方のスライド部材34を開閉部35に沿って一方向にスライドさせることで、表地31及び裏地32を閉じることができる。開閉部材33は、いわゆるシングルスライダであってもよい。この場合、開閉部材33は、1つのスライド部材34と、開閉部35とを有する。
【0036】
センサ部11は、例えば、袋状の側地3の内部に配置されている。より具体的には、センサ部11は、芯材2と側地3との間に配置されている。センサ部11がクッション体10に取り付けられるに際し、例えば、センサ部11は、クッション体10の短手方向D2に延びるように配置される。この場合、センサ部11は、クッション体10の側地3から見て使用者の身体とは反対側に位置する。よって、クッション体10に使用者の身体が載せられたとき、センサ部11は、使用者に対して非接触となる。センサ部11は、非接触で使用者の呼吸情報、体動情報、及び心拍情報を取得する。
【0037】
センサ部11は、例えば、長手方向D1における使用者の心臓と対応する位置に取り付けられる。センサ部11は、一例として、使用者の頭部が載せられる位置からクッション体10の長手方向D1に離隔した位置(
図2(a)における右下側の位置)までのいずれかの位置に取り付けられる。長手方向D1におけるセンサ部11の取付位置は変更可能とされている。使用者の頭部が載せられる位置からセンサ部11が取り付けられる位置までの距離は、例えば、40cm以上且つ50cm以下(一例として50cm)であってもよい。
【0038】
健康リスク判定アプリケーション40は、例えば、呼吸情報、体動情報、及び心拍情報から使用者の入眠時刻及び覚醒時刻を取得する。入眠時刻とは、使用者が入眠した時刻を言う。覚醒時刻とは、使用者が覚醒した時刻を言う。健康リスク判定アプリケーション40は、例えば、センサ部11によって取得された体動情報、及びセンサ部11の加速度センサによって検知された寝具の動きから入眠時刻を判定して入眠時刻の取得を行ってもよい。覚醒時刻の取得も同様である。上記の例とは異なり、使用者が情報端末で健康リスク判定アプリケーション40を操作して、使用者の操作によって入眠時刻及び覚醒時刻の取得が行われてもよい。
【0039】
図1に示される健康リスク判定システム1は、第1アンプ12及び第2アンプ13を備える。第1アンプ12及び第2アンプ13は、センサ部11から出力された呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号を増幅する。第1アンプ12及び第2アンプ13は、増幅された信号(呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号のそれぞれ)を健康リスク判定アプリケーション40に出力する。例えば、第1アンプ12及び第2アンプ13は、当該増幅された信号を後述する睡眠段階取得部14に出力する。
【0040】
本実施形態では、第1アンプ12のゲインは、第2アンプ13のゲインよりも大きい。但し、第1アンプ12のゲインと第2アンプ13のゲインとは、互いに異なっていればよい。例えば、第2アンプ13のゲインが第1アンプ12のゲインよりも大きくてもよい。
【0041】
健康リスク判定アプリケーション40は、例えば、睡眠段階取得部14と、異常検出部15と、単位回数取得部16と、平均回数取得部17と、最大回数取得部18と、健康リスク判定部19とを有する。
【0042】
睡眠段階取得部14は、使用者の睡眠段階を取得する。睡眠段階は、使用者の睡眠の深さを示す段階である。睡眠段階は、例えば、覚醒、レム睡眠、及びノンレム睡眠に分類される。ノンレム睡眠は、4種類の睡眠段階に分類される。睡眠段階取得部14は、センサ部11によって取得された呼吸情報、体動情報、及び心拍情報から睡眠段階を取得する。睡眠段階取得部14は、第1アンプ12によって増幅された信号、及び、第2アンプ13によって増幅された信号のいずれか一方を用いて睡眠状態を取得する。例えば、使用者の呼吸が急に大きくなった場合、第1アンプ12により増幅された信号が振り切れて飽和する可能性がある。このとき、睡眠段階取得部14は、第1アンプ12のゲインよりも小さいゲインを有する第2アンプ13により増幅された信号を取得する。
【0043】
異常検出部15は、使用者の異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、センサ部11によって取得された呼吸情報から異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、例えば、センサ部11から出力された呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号から、使用者の異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、例えば、使用者の呼吸数から異常呼吸状態を検出する。
【0044】
異常検出部15は、異常呼吸データ及び正常呼吸データを予め記憶していてもよい。異常呼吸データとは、例えば、SASに罹患している者の睡眠中における、呼吸に伴う体動を示す情報、心拍に伴う体動を示す情報、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す情報である。正常呼吸データとは、SASに罹患していない者の睡眠中における、呼吸に伴う体動を示す情報、心拍に伴う体動を示す情報、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す情報である。異常検出部15は、呼吸情報、異常呼吸データ、及び正常呼吸データから使用者の呼吸数を算出するアルゴリズムを予め記憶していてもよい。この場合、異常検出部15は、使用者の呼吸数から異常呼吸状態を検出できる。
【0045】
異常呼吸データ及び正常呼吸データのそれぞれは、例えば、人物の睡眠中における体動をセンサ部11が検出することで生成されてもよい。当該人物の人数は、1人であってもよいし、複数人(一例として12人)であってもよい。異常検出部15は、異常呼吸データ及び正常呼吸データを参照し、センサ部11によって取得された呼吸情報から前述のアルゴリズムを用いて使用者の呼吸数を判定してもよい。
【0046】
ところで、異常呼吸状態から異常呼吸状態でない通常の呼吸状態に変化する際、使用者の体動が生じる傾向にある。本実施形態では、異常検出部15は、センサ部11によって取得された体動情報から異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、例えば、センサ部11から出力された呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号から使用者の異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、例えば、異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の体動から、異常呼吸状態を検出する。
【0047】
また、異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際、使用者の心拍数が急に上昇する傾向にある。本実施形態では、異常検出部15は、センサ部11によって取得された心拍情報から異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、例えば、センサ部11から出力された心拍に伴う体動を示す信号から使用者の異常呼吸状態を検出する。異常検出部15は、例えば、異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の心拍数の上昇から、異常呼吸状態を検出する。
【0048】
一例として、異常検出部15は、呼吸情報から得た使用者の呼吸数、体動情報から得た異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の体動、心拍情報から得た異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の心拍数の上昇から、使用者の異常呼吸状態を検出する。このように、異常検出部15は、呼吸情報のみならず、体動情報及び心拍情報を加味して使用者の異常呼吸状態を検出してもよい。
【0049】
単位回数取得部16は、入眠時刻から覚醒時刻までの間における単位時間帯ごとに、異常検出部15によって検出された異常呼吸状態の検出回数を取得する。単位時間帯とは、所定の時間幅を有する時間帯である。単位時間帯の時間幅は、一例として1時間である。例えば、単位時間帯の時間幅は、変更可能であり、予めユーザにより設定されてもよい。ユーザは、例えば、使用者、使用者の家族を含む使用者の関係者、又は使用者の治療を行う医師である。単位時間帯の時間幅が小さい程、使用者の睡眠を一層詳細に調べることが可能となり、健康リスクを一層高精度に判定することができる。一方、単位時間帯の時間幅が大きい程、健康リスク判定システム1の処理量を低減することができる。
【0050】
平均回数取得部17は、異常検出部15の検出結果から平均検出回数を取得する。平均検出回数とは、入眠時刻から覚醒時刻までの間における異常呼吸状態の検出回数の合計値を、入眠時刻から覚醒時刻までの時間で除した値を言う。単位時間帯の時間幅が1時間である場合、平均検出回数は、いわゆるAHI(Apnea Hypopnea Index)に相当する。
【0051】
最大回数取得部18は、異常検出部15の検出結果から最大検出回数を取得する。最大検出回数とは、単位時間帯ごとに取得された複数の異常呼吸状態の検出回数のうちの最大値を言う。例えば、最大回数取得部18は、単位時間帯ごとに異常呼吸状態の検出回数を取得する。そして、最大回数取得部18は、最も多い検出回数を有する単位時間帯における異常呼吸状態の検出回数を、最大検出回数として取得する。
【0052】
健康リスク判定部19は、使用者の健康リスクを判定する。健康リスク判定部19は、平均回数取得部17によって取得された平均検出回数、及び、最大回数取得部18によって取得された最大検出回数の双方から使用者の健康リスクを判定する。健康リスク判定部19は、例えば、平均検出回数及び最大検出回数の双方から健康リスクの高低を判定する。健康リスク判定部19は、例えば、健康リスクを「高」、「中」、及び「低」の3段階で判定する。
【0053】
本実施形態では、健康リスク判定部19は、異常検出部15の検出結果、及び、睡眠段階取得部14によって取得された睡眠段階から健康リスクを判定する。健康リスク判定部19は、例えば、異常検出部15が異常呼吸状態を検出した時刻、及び、当該時刻において睡眠段階取得部14が取得した睡眠段階から健康リスクを判定すする。
【0054】
健康リスク判定システム1は、表示部20を備える。表示部20は、例えば、健康リスク判定アプリケーション40によって生成された情報を情報端末のディスプレイに表示する。表示部20は、例えば、情報端末の例である、ユーザが所有するコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、又はウェアラブル端末のディスプレイに当該情報を表示してもよい。
【0055】
表示部20は、健康リスク判定部19によって判定された健康リスクを表示する。表示部20は、情報端末のディスプレイに健康リスクを表示する。表示部20は、例えば、長時間のリスクの大小を示す情報、及び、短時間のリスクの大小を示す情報を表示する。長時間のリスクとは、入眠時刻から覚醒時刻までの間における異常呼吸状態の検出回数を用いて判定される使用者の健康リスクを言う。短時間のリスクとは、単位時間帯ごとに取得された異常呼吸状態の検出回数を用いて判定される使用者の健康リスクを言う。表示部20は、例えば、平均回数取得部17によって取得された平均検出回数から長時間のリスクを算出する。表示部20は、例えば、最大回数取得部18によって取得された最大検出回数から短時間のリスクを算出する。
【0056】
本実施形態では、表示部20は、健康リスクの高低を示す情報を表示する。表示部20は、例えば、健康リスク判定部19によって判定された健康リスクの高低を表示する。表示部20は、例えば、健康リスク判定部19から使用者の健康リスクの高低の段階を示す情報を取得する。表示部20は、例えば、健康リスクを「高」、「中」、及び「低」の3段階で表示する。
【0057】
本実施形態では、表示部20は、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報を表示する。表示部20は、異常検出部15が検出した異常呼吸状態の検出時刻、及び当該検出時刻において睡眠段階取得部14が取得した睡眠段階から、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報を表示する。前述した長時間のリスクの大小を示す情報、短時間のリスクの大小を示す情報、健康リスクの高低を示す情報、及び異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報については、後に詳述する。
【0058】
センサ部11と第1アンプ12及び第2アンプ13との間の通信、第1アンプ12及び第2アンプ13と健康リスク判定アプリケーション40との間の通信、並びに、健康リスク判定アプリケーション40と表示部20との間の通信は、例えば、無線LAN(Local Area Network)、又はBluetooth(登録商標)等の無線通信インタフェースにより実現されてもよい。また、これらの通信は、有線により実現されてもよい。
【0059】
続いて、本実施形態に係る健康リスク判定システム1の動作の一例について説明する。
図3は、健康リスク判定システム1の動作の一例を示すフローチャートである。健康リスク判定システム1を動作させる前に、まず、クッション体10にセンサ部11を取り付ける。クッション体10に使用者の身体が載せられたときにセンサ部11が使用者に対して非接触となるように、センサ部11をクッション体10に取り付ける。例えば、センサ部11を芯材2及び側地3の間に配置する。次に、センサ部11が取り付けられたクッション体10に使用者の身体を横たえる。使用者の身体は、例えば、側地3の表地31に接するようにクッション体10に載せられる。
【0060】
続いて、使用者の呼吸に伴う体動、心拍に伴う体動、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動から、センサ部11が呼吸情報、体動情報、及び心拍情報を取得する(工程S1)。工程S1では、センサ部11が使用者の呼吸に伴う体動、心拍に伴う体動、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を検出する。センサ部11は、呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号をセンサ部11の外部に出力する。
【0061】
次に、第1アンプ12及び第2アンプ13がセンサ部11から出力された呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号を増幅する。そして、当該増幅された信号(呼吸に伴う体動を示す信号、心拍に伴う体動を示す信号、並びに、呼吸及び心拍に伴わない体動を示す信号のそれぞれ)を健康リスク判定アプリケーション40に出力する。第1アンプ12及び第2アンプ13は、例えば、当該増幅された信号を睡眠段階取得部14に出力する。
【0062】
続いて、睡眠段階取得部14がセンサ部11によって取得された呼吸情報、体動情報、及び心拍情報から使用者の睡眠段階を取得する(工程S2)。睡眠段階取得部14は、例えば、第1アンプ12によって増幅された信号、及び、第2アンプ13によって増幅された信号のいずれか一方から睡眠段階を取得する。
【0063】
そして、異常検出部15がセンサ部11によって取得された呼吸情報、体動情報、及び心拍情報から異常呼吸状態を検出する(工程S3)。一例として、呼吸情報から得た使用者の呼吸数、体動情報から得た異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の体動、及び心拍情報から得た異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の心拍数の上昇から、異常検出部15は、使用者の異常呼吸状態を検出する。
【0064】
続いて、単位回数取得部16が、入眠時刻から覚醒時刻までの間における単位時間帯ごとに、異常検出部15によって検出された異常呼吸状態の検出回数を取得する(工程S4)。次に、平均回数取得部17が、異常検出部15の検出結果から平均検出回数を取得する(工程S5)。続いて、最大回数取得部18が異常検出部15の検出結果から最大検出回数を取得する(工程S6)。言い換えれば、工程S6において、最大回数取得部18は、異常検出部15の検出結果から単位時間帯ごとに異常呼吸状態の検出回数を取得する。そして、最大回数取得部18は、最も多い検出回数を有する単位時間帯における異常呼吸状態の検出回数を、最大検出回数として取得する。
【0065】
工程S4~工程S6における動作の具体例を、
図4を参照しながら説明する。
図4は、異常呼吸状態の検出回数の時系列データの一例を示すグラフである。
図4に示される縦軸は異常検出部15によって検出された異常呼吸状態の検出回数を示しており、横軸は入眠時刻からの時間を示している。
図4の例では、入眠時刻から覚醒時刻までの時間(つまり使用者の睡眠時間)は8時間である。また、単位時間帯の時間幅は、1時間である。
【0066】
入眠時刻から1時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は0である。入眠時刻から1時間後の時点から2時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は0である。入眠時刻から2時間後の時点から3時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は10である。入眠時刻から3時間後の時点から4時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は50である。
【0067】
入眠時刻から4時間後の時点から5時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は60である。入眠時刻から5時間後の時点から6時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は40である。入眠時刻から6時間後の時点から7時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は0である。入眠時刻から7時間後の時点から8時間後の時点までの単位時間帯において、検出回数は0である。
【0068】
入眠時刻から覚醒時刻までの間における異常呼吸状態の検出回数の合計値は、160である。入眠時刻から覚醒時刻までの時間は、8時間である。よって、
図4の例では、平均回数取得部17により20が平均検出回数として取得される。また、前述の複数の単位時間帯のうち、入眠時刻から4時間後の時点から5時間後の時点までの単位時間帯が最も大きい検出回数を有する。よって、
図4の例では、最大回数取得部18により60が最大検出回数として取得される。
【0069】
次に、
図3に示されるように、健康リスク判定部19が平均回数取得部17によって取得された平均検出回数、及び、最大回数取得部18によって取得された最大検出回数の双方から使用者の健康リスクを判定する(工程S7)。健康リスク判定部19は、平均検出回数及び最大検出回数の双方から健康リスクの高低を判定する。健康リスク判定部19は、例えば、健康リスクを「高」、「中」、及び「低」の3段階で判定する。
【0070】
健康リスク判定部19が健康リスクの高低を判定する際の動作の具体例を、
図5を参照しながら説明する。
図5は、健康リスクの判定基準の一例を示す模式的な図である。
図5に示される「高」、「中」、及び「低」の文字は、健康リスクの高低を示している。また、「X1」、「X2」、「X3」、「Y1」、「Y2」、及び「Y3」は、所定の自然数である。一例として、X1は20であり、X2は45であり、X3は65である。一例として、Y1は15であり、Y2は30であり、Y3は45である。X1~X3、及び、Y1~Y3の値は、変更可能な値であってもよい。
【0071】
平均検出回数が0以上且つY1未満であり、且つ、最大検出回数が0以上且つX1未満である場合、健康リスク判定部19は健康リスクが低いと判定する。このとき、健康リスク判定部19は、健康リスクの高低の段階を「低」と判定する。平均検出回数がY2以上であり、且つ、最大検出回数がX1以上且つX3未満である場合、平均検出回数がY1以上且つY3未満であり、且つ、最大検出回数がX2以上である場合、並びに、平均検出回数がY3以上であり、且つ、最大検出回数がX3以上である場合、健康リスク判定部19は健康リスクが高いと判定する。このとき、健康リスク判定部19は、健康リスクの段階を「高」と判定する。その他の場合、健康リスク判定部19は、健康リスクが中程度であると判定する。このとき、健康リスク判定部19は、健康リスクの段階を「中」と判定する。
【0072】
工程S7では、健康リスク判定部19が異常検出部15の検出結果、及び、睡眠段階取得部14によって取得された睡眠段階から健康リスクを判定する。健康リスク判定部19は、例えば、異常検出部15が異常呼吸状態を検出した時刻、及び、当該時刻において睡眠段階取得部14が取得した睡眠段階を取得する。
【0073】
次に、表示部20が健康リスク判定部19によって判定された健康リスクを表示する(工程S8)。前述したように、表示部20は、例えば、長時間のリスクの大小を示す情報、短時間のリスクの大小を示す情報、健康リスクの高低を示す情報、及び異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報の少なくともいずれかを表示する。
【0074】
工程S8における動作の具体例を、
図6を参照しながら説明する。
図6は、表示部20による健康リスクの表示の一例を示す図である。
図6の例では、表示部20は、長時間のリスクの大小を示す縦軸と、短時間のリスクの大小を示す横軸とを表示する。表示部20は、マトリクス状に配置された複数(一例として9つ)のマス目を表示する。当該マス目は、
図5に示されるマス目と対応している。
図6に示される長時間のリスクの大小を示す縦軸は、
図5に示される平均検出回数を示す縦軸と対応する。
図6に示される短時間のリスクの大小を示す横軸は、
図5に示される最大検出回数を示す横軸と対応する。
【0075】
一例として、表示部20は、
図6に示される複数のマス目のいずれかに点Pを表示することによって、健康リスクの判定結果を表示する。このように、表示部20は、長時間のリスクの大小を示す情報、及び、短時間のリスクの大小を示す情報を表示する。表示部20は、例えば、平均回数取得部17によって取得された平均検出回数から長時間のリスクを算出する。表示部20は、平均回数取得部17によって取得された平均検出回数から、縦軸に沿った方向(
図6における紙面上下方向)の点Pの位置を決定する。表示部20は、例えば、最大回数取得部18によって取得された最大検出回数から短時間のリスクを算出する。表示部20は、最大回数取得部18によって取得された最大検出回数から、横軸に沿った方向(
図6における紙面左右方向)の点Pの位置を決定する。そして、表示部20は、決定された縦軸に沿った方向の位置及び横軸に沿った方向の位置から、複数のマス目のいずれかに点Pを表示する。
【0076】
図6では、平均検出回数がY2以上且つY3未満であり、且つ、最大検出回数がY2以上且つY3未満である場合の表示部20による表示の例を示している。よって、表示部20は、9つのマス目のうち、
図6における右上に位置するマス目に点Pを表示する。
【0077】
工程S8において、表示部20は、例えば、健康リスク判定部19によって判定された健康リスクの高低を示す情報を表示する。表示部20は、例えば、健康リスク判定部19から使用者の健康リスクの高低の段階を示す情報を取得する。表示部20は、使用者の健康リスクの高低を「高」、「中」、及び「低」の3段階で表示する。
図5及び
図6の例では、表示部20は、使用者の健康リスクの高低の段階が「高」であると表示する。
【0078】
工程S8において、表示部20は、例えば、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報を表示する。表示部20は、例えば、健康リスク判定部19によって取得された異常呼吸状態を検出した時刻及び当該時刻における睡眠段階から、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報を表示する。この場合、表示部20は、異常検出部15によって検出された異常呼吸状態の検出回数が増加、又は低下した睡眠段階を、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報として表示してもよい。例えば、表示部20は、入眠時刻からM時間後(Mは自然数、一例として4)であって睡眠深度がN(Nは自然数、一例として3)であるときに異常呼吸状態の検出回数が増加又は減少したことを表示する。
【0079】
例えば、表示部20は、異常呼吸状態が使用者の睡眠の質に影響を与える可能性を表示してもよい。例えば、表示部20は、使用者の睡眠が深いノンレム睡眠時に異常呼吸状態の検出回数が多い場合、睡眠の質が異常呼吸状態により低下している可能性があることを、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係を示す情報として表示してもよい。
【0080】
以上、本実施形態に係る健康リスク判定システム1の動作の一例について説明した。しかしながら、健康リスク判定システムの動作の各工程の内容及び順序は、前述の例に限られず、適宜変更可能である。
【0081】
続いて、本実施形態に係る健康リスク判定システム1の作用効果について説明する。この健康リスク判定システム1では、センサ部11が使用者に対して非接触で使用者の呼吸情報を取得する。センサ部11が使用者に対して接触する場合と比較して、負担を軽減することができる。
【0082】
健康リスク判定システム1は、平均回数取得部17によって取得された平均検出回数、及び、最大回数取得部18によって取得された最大検出回数の双方から使用者の健康リスクを判定する。例えば、入眠時刻から覚醒時刻までのうち短時間に、集中して使用者が異常呼吸状態となる可能性がある。この場合、平均検出回数のみから使用者の健康リスクを判定すると、健康リスクを正確に把握できない可能性がある。健康リスク判定システム1では、平均検出回数に最大検出回数を加味して使用者の健康リスクを判定するため、短時間に集中して異常呼吸状態となった場合でも、健康リスクを正確に把握することができる。
【0083】
例えば、
図4に示されるように、使用者が短時間に集中して異常呼吸状態となる可能性がある。
図4の例では、平均検出回数は20である。
図4の状態は
図5に示される平均検出回数の判定基準のみに照らせば、使用者の健康リスクが中程度(平均検出回数がY1以上且つY2未満)として判定されうる。これに対し、健康リスク判定システム1のように平均検出回数及び最大検出回数の双方から健康リスクを判定する場合、健康リスク判定部19は使用者の健康リスクが高い(平均検出回数がY1以上且つY2未満、及び最大検出回数がX2以上)と判定する。このように、健康リスク判定システム1では、使用者の健康リスクを一層正確に判定できる。
【0084】
本実施形態では、センサ部11は、使用者の体動を示す情報である体動情報と、使用者の心拍を示す情報である心拍情報とを取得する。異常検出部15は、体動情報及び心拍情報から異常呼吸状態を検出する。この場合、呼吸情報に加えて、体動情報及び心拍情報から異常呼吸状態を検出できる。例えば、異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化する際の使用者の体動、及び、使用者の心拍数の上昇から異常呼吸状態を検出できる。よって、使用者の異常呼吸状態を一層正確に検出できる。
【0085】
本実施形態では、健康リスク判定システム1は、呼吸情報、体動情報、及び心拍情報から使用者の睡眠段階を判定する睡眠段階取得部14をさらに備える。健康リスク判定部は、異常検出部15の検出結果及び睡眠段階から使用者の健康リスクを判定する。この場合、異常呼吸状態の検出結果に加えて、睡眠段階から健康リスクを判定できる。例えば、異常呼吸状態の発生時と睡眠段階との関係の観点から、健康リスクについて使用者に助言することができる。
【0086】
本実施形態では、呼吸情報は、使用者の呼吸に伴う体動を示す信号を含む。健康リスク判定システム1は、信号を増幅し、増幅された信号を睡眠段階取得部14に出力する第1アンプ12及び第2アンプ13をさらに備える。第1アンプ12のゲインは、第2アンプ13のゲインよりも大きい。
【0087】
例えば、異常呼吸状態から通常の呼吸状態に変化した時に使用者の呼吸が大きくなる傾向にある。仮に健康リスク判定システム1が所定のゲインを有する第1アンプ12のみを備える場合、使用者の呼吸が大きくなった際に第1アンプ12により増幅された信号が振り切れて飽和する可能性がある。これに対し、第1アンプ12のゲインよりも小さいゲインを有する第2アンプ13を備えることで、第1アンプ12における信号が飽和した場合に第2アンプ13において信号を増幅して睡眠段階取得部14に出力することができる。よって、睡眠段階を一層正確に取得できる。
【0088】
以上、本開示に係る健康リスク判定システムの実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。
【0089】
前述の実施形態では、健康リスク判定部19が
図5に示される判定基準から使用者の健康リスクを判定する例について説明した。しかし、健康リスク判定部19による健康リスクの判定基準は、適宜変更可能である。前述の実施形態では、健康リスク判定部19が健康リスクを「高」、「中」、及び「低」の3段階で判定する例について説明した。しかし、健康リスク判定部19による健康リスクの判定方法は、適宜変更可能である。例えば、健康リスク判定部19は、健康リスクを4つ以上の段階で判定してもよいし、2つの段階で判定してもよい。健康リスク判定部19は健康リスクの判定結果を数値(例えばパーセンテージ)として出力してもよく、表示部20が当該数値を表示してもよい。
【0090】
前述の実施形態では、糸状センサが刺繍されたセンサシートであるセンサ部11について説明した。この場合、センサ部11を容易に任意の位置に移動できるという利点がある。しかし、センサ部はセンサシートでなくてもよく、センサ部の態様は特に限定されない。前述の実施形態では、センサ部が配置されるクッション体10がマットレスである例について説明した。しかし、センサ部が配置されるクッション体は、ベッドパッド、敷き寝具、又は枕であってもよく、クッション体の種類は適宜変更可能である。さらに、センサ部はクッション体以外のもの(例えばベッド)に配置されてもよく、この場合、クッション体を省略することも可能である。
【0091】
前述の実施形態では、センサ部11がクッション体10の芯材2及び側地3の間に配置される例について説明した。しかし、センサ部11の配置態様は、センサ部11が使用者に対して非接触となる態様であればよく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…健康リスク判定システム、2…芯材、3…側地、10…クッション体、11…センサ部、12…第1アンプ、13…第2アンプ、14…睡眠段階取得部、15…異常検出部、16…単位回数取得部、17…平均回数取得部、18…最大回数取得部、19…健康リスク判定部、20…表示部、21…上面、22…下面、23…側面、31…表地、32…裏地、33…開閉部材、34…スライド部材、35…開閉部、40…健康リスク判定アプリケーション、D1…長手方向、D2…短手方向、D3…厚さ方向、P…点。