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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095264
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/82 20060101AFI20240703BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240703BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20240703BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E04B1/82 B
E04B1/94 H
E04B1/61 503Z
G10K11/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212424
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DE03
2E001DF02
2E001FA03
2E001FA11
2E001HC01
2E001HE01
2E125AA53
2E125AA57
2E125AA59
2E125AC23
5D061AA04
5D061BB31
(57)【要約】
【課題】建築物内を区画して室を形成する木材の接合構造において、耐火区画を形成しつつ、室内の遮音、防振性能を高めること。
【解決手段】上下方向の一方側の第1木材と他方側の第2木材とを接合する接合構造であって、上下方向における第1木材の他方側の端部は、第1水平方向の一の側が切欠かれた第1凹部と、第1水平方向に第1凹部と隣接する第1凸部とを有し、第2木材の少なくとも一部は第1凹部に篏合し、第1水平方向において、第1凸部の一の側の側面は、対向する第2木材の側面と面接触する部位を有し、上下方向において第1凹部の底面と対向する第2木材の頂面との間に、重量を支持できる第1遮音ゴムが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の一方側に設けられる第1木材と他方側に設けられる第2木材とを接合する接合構造であって、
前記上下方向における前記第1木材の前記他方側の端部は、
前記上下方向に直交する第1水平方向の一の側が切欠かれた第1凹部と、
前記第1水平方向に前記第1凹部と隣接する第1凸部と、を有し、
前記第2木材の少なくとも一部は、前記第1凹部に篏合し、
前記第1水平方向において、前記第1凸部の前記一の側の側面は、当該側面に対向する前記第2木材の側面と面接触する部位を有し、
前記上下方向において、前記第1凹部の底面と、当該底面に対向する前記第2木材の頂面との間に、重量を支持できる第1遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造であって、
前記第1木材は、前記上下方向に沿う壁であり、
前記第2木材は、前記第2木材よりも前記上下方向の前記他方側に設けられる横材に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であり、
前記上下方向において、前記第1凸部の頂面と、当該頂面と対向する前記横材の面との間に、重量を支持できる第2遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項1に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第1凹部に篏合する第2凸部と、前記第1水平方向に前記第2凸部と隣接して位置し、前記第1凸部に篏合する第2凹部と、を有し、
前記上下方向において、前記第1凸部の頂面と、前記第2凹部の底面との間に、重量を支持できる第3遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の接合構造であって、
前記第1木材は、前記上下方向に沿う壁であり、
前記第1水平方向における前記第1木材の一対の側面のうち、前記一の側の側面は、第1の室を区画し、他の側の側面は、前記第1の室に隣接する第2の室を区画し、
前記第1木材の前記一対の側面のうちの少なくとも一方よりも室内側に、遮音壁が設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の接合構造であって、
前記第1木材よりも前記第1水平方向の前記一の側において、前記第1木材と対向する第3木材を有し、
前記上下方向における前記第3木材の前記他方側の端部は、
前記第1水平方向の他の側が切欠かれた第3凹部と、
前記第1水平方向に前記第3凹部と隣接する第3凸部と、を有し、
前記第2木材の一部は、前記第3凹部に篏合し、
前記第1水平方向において、前記第3凸部の前記他の側の側面は、当該側面に対向する前記第2木材の側面と面接触する部位を有し、
前記上下方向において、前記第3凹部の底面と、当該底面に対向する前記第2木材の頂面との間に、重量を支持できる第4遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項6】
請求項5に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第2木材よりも前記上下方向の前記他方側に設けられる横材に接合され、前記横材と、前記第1木材及び前記第3木材と、を接合する接合木材であり、
前記上下方向において、前記第3凸部の頂面と、当該頂面と対向する前記横材の面との間に、重量を支持できる第5遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項7】
請求項5に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第3凹部に篏合する第4凸部と、前記第1水平方向に前記第4凸部と隣接して位置し、前記第3凸部に篏合する第4凹部と、を有し、
前記上下方向において、前記第3凸部の頂面と、前記第4凹部の底面との間に、重量を支持できる第6遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項8】
請求項5に記載の接合構造であって、
前記第1水平方向における前記第1木材と前記第3木材の間には、空間と遮音材と吸音材のうちの少なくとも何れかが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【請求項9】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第2木材よりも前記上下方向の前記他方側に設けられる横材に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であり、
前記横材の上面よりも室内側に、遮音床が設けられていることと、
前記横材の下面よりも室内側に、遮音天井が設けられていることと、のうちの少なくとも一方を満たすこと、を特徴とする接合構造。
【請求項10】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第1木材よりも下方に設けられ、かつ、
前記第2木材よりも下方に設けられる横材の上面に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であること、を特徴とする接合構造。
【請求項11】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第1木材よりも上方に設けられ、かつ、
前記第2木材よりも上方に設けられる横材の下面に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であること、を特徴とする接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
CLT(Cross Laminated Timber)などの木質材料を、壁や天井や床に用いた木造建築物が知られている。特許文献1には、CLT等の木質材料の外側層の内側に、水分を担持した保水層が設けられた木質材料が開示されている。室内で火炎が発生した場合にも、木質材料の保水層に担持された水分によって、木質材料の温度上昇が抑えられ、発火を遅らせることができる。よって、木造建築物の耐火性能が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-142035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築物には、耐火性能だけでなく、遮音性能や防振性能も求められる。例えば、図1に示すように、木質材料の壁90と床91の接合部に、重量を支持できる遮音ゴム92を設置することで、上階の壁90と、床91及び下階の壁93との間で、音や振動が制振され、室内の遮音、防振性能が高められる。しかし、一般的に用いられている遮音ゴム92は可燃性である。そのため、図1に示すように、遮音ゴム92が一方の室から隣室まで連続して配されていると、火炎が遮音ゴム92に着火した際に、その火炎が隣室へ真っ直ぐに噴き出しやすく、隣戸間の耐火性能が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、建築物内を区画して室を形成する木材の接合構造において、耐火区画を形成しつつ、室内の遮音、防振性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の接合構造は、上下方向の一方側に設けられる第1木材と他方側に設けられる第2木材とを接合する接合構造であって、前記上下方向における前記第1木材の前記他方側の端部は、前記上下方向に直交する第1水平方向の一の側が切欠かれた第1凹部と、前記第1水平方向に前記第1凹部と隣接する第1凸部と、を有し、前記第2木材の少なくとも一部は、前記第1凹部に篏合し、前記第1水平方向において、前記第1凸部の前記一の側の側面は、当該側面に対向する前記第2木材の側面と面接触する部位を有し、前記上下方向において、前記第1凹部の底面と、当該底面に対向する前記第2木材の頂面との間に、重量を支持できる第1遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造である。
本発明の他の特徴については、本明細書および添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建築物内を区画して室を形成する木材の接合構造において、耐火区画を形成しつつ、室内の遮音、防振性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】比較例の接合構造の説明図である。
図2】第1実施形態の接合構造81の説明図である。
図3図3A図3Cは、第1接合ユニット20の説明図である。
図4図4A図4Cは、第2実施形態の接合構造82の説明図である。
図5】室1で発生した音の伝播経路の説明図である。
図6】第3実施形態の接合構造83の説明図である。
図7図7A及び図7Bは、第4実施形態の接合構造84の説明図である。
図8】分割ユニット13の説明図である。
図9】分割ユニット13の説明図である。
図10】第5実施形態の接合構造85の説明図である。
図11図11A図11Cは、第3接合ユニット50の説明図である。
図12図12A図12Cは、第6実施形態の接合構造86の説明図である。
図13図13A及び図13Bは、第7実施形態の接合構造87の説明図である。
図14】第8実施形態の接合構造88の説明図である。
図15】第9実施形態の接合構造89の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
上下方向の一方側に設けられる第1木材と他方側に設けられる第2木材とを接合する接合構造であって、前記上下方向における前記第1木材の前記他方側の端部は、前記上下方向に直交する第1水平方向の一の側が切欠かれた第1凹部と、前記第1水平方向に前記第1凹部と隣接する第1凸部と、を有し、前記第2木材の少なくとも一部は、前記第1凹部に篏合し、前記第1水平方向において、前記第1凸部の前記一の側の側面は、当該側面に対向する前記第2木材の側面と面接触する部位を有し、前記上下方向において、前記第1凹部の底面と、当該底面に対向する前記第2木材の頂面との間に、重量を支持できる第1遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0010】
態様1によれば、第1遮音ゴムにより、第1木材と第2木材の間で音や振動が制振され、第1木材や第2木材で区画される室や周囲の室の遮音、防振性能が高められる。また、第1木材の第1凸部の側面が第2木材と面接触しており、隙間が生じていないので、火炎や煙が第1水平方向に真っ直ぐに突き抜け難い。よって、第1木材及び第2木材を用いて、耐火区画を形成できる。
【0011】
(態様2)態様1に記載の接合構造であって、
前記第1木材は、前記上下方向に沿う壁であり、前記第2木材は、前記第2木材よりも前記上下方向の前記他方側に設けられる横材に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であり、前記上下方向において、前記第1凸部の頂面と、当該頂面と対向する前記横材の面との間に、重量を支持できる第2遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0012】
態様2によれば、第1水平方向に並ぶ第1遮音ゴム及び第2遮音ゴムによって、バランスよく制振することができる。また、上部構造体の荷重を上記2つの遮音ゴムで支持でき、接合構造の安定性が高まる。
【0013】
(態様3)態様1に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第1凹部に篏合する第2凸部と、前記第1水平方向に前記第2凸部と隣接して位置し、前記第1凸部に篏合する第2凹部と、を有し、前記上下方向において、前記第1凸部の頂面と、前記第2凹部の底面との間に、重量を支持できる第3遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0014】
態様3よれば、第1水平方向に並ぶ第1遮音ゴム及び第3遮音ゴムによって、バランスよく制振することができる。また、上部構造体の荷重を上記2つの遮音ゴムで支持でき、接合構造の安定性が高まる。また、第2木材は、第2凸部と第2凹部を有し、第1水平方向の長さが長くなる。そのため、第2木材が安定して第1木材と篏合する。
【0015】
(態様4)態様1から態様3の何れかに記載の接合構造であって、
前記第1木材は、前記上下方向に沿う壁であり、前記第1水平方向における前記第1木材の一対の側面のうち、前記一の側の側面は、第1の室を区画し、他の側の側面は、前記第1の室に隣接する第2の室を区画し、前記第1木材の前記一対の側面のうちの少なくとも一方よりも室内側に、遮音壁が設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0016】
態様4によれば、1枚の壁(第1木材)にて、隣り合う室が区画される場合であっても、壁に入力された音や振動が遮音壁によって制振される。よって、隣室に伝わる音や振動を小さくでき、第1木材や第2木材で区画される室や周囲の室の遮音、防振性能が高まる。
【0017】
(態様5)態様1から態様3の何れか1項に記載の接合構造であって、
前記第1木材よりも前記第1水平方向の前記一の側において、前記第1木材と対向する第3木材を有し、前記上下方向における前記第3木材の前記他方側の端部は、前記第1水平方向の他の側が切欠かれた第3凹部と、前記第1水平方向に前記第3凹部と隣接する第3凸部と、を有し、前記第2木材の一部は、前記第3凹部に篏合し、前記第1水平方向において、前記第3凸部の前記他の側の側面は、当該側面に対向する前記第2木材の側面と面接触する部位を有し、前記上下方向において、前記第3凹部の底面と、当該底面に対向する前記第2木材の頂面との間に、重量を支持できる第4遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0018】
態様5によれば、第4遮音ゴムにより、第3木材と第2木材の間で音や振動が制振される。よって、第1木材~第3木材で区画される室や周囲の室の遮音、防振性能が高まる。また、第3木材の第3凸部の側面が第2木材と面接触しており、隙間が生じていないので、火炎や煙が第1水平方向に真っ直ぐに突き抜け難い。よって、第1木材~第3木材を用いて、耐火区画を形成できる。また、第1木材と第3木材とで、第2木材を共用するため、資材点数を削減できる。
【0019】
(態様6)態様5に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第2木材よりも前記上下方向の前記他方側に設けられる横材に接合され、前記横材と、前記第1木材及び前記第3木材と、を接合する接合木材であり、前記上下方向において、前記第3凸部の頂面と、当該頂面と対向する前記横材の面との間に、重量を支持できる第5遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0020】
態様6によれば、第3木材に入力される音や振動を、第1水平方向に並ぶ第4遮音ゴム及び第5遮音ゴムによって、バランスよく制振することができる。また、上部構造体の荷重を複数の遮音ゴムで支持でき、接合構造の安定性が高まる。
【0021】
(態様7)態様5に記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第3凹部に篏合する第4凸部と、前記第1水平方向に前記第4凸部と隣接して位置し、前記第3凸部に篏合する第4凹部と、を有し、前記上下方向において、前記第3凸部の頂面と、前記第4凹部の底面との間に、重量を支持できる第6遮音ゴムが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0022】
態様7によれば、第3木材に入力される音や振動を、第1水平方向に並ぶ第4遮音ゴム及び第6遮音ゴムによって、バランスよく制振することができる。また、上部構造体の荷重を複数の遮音ゴムで支持でき、接合構造の安定性が高まる。また、第2木材は、第3凸部と第3凹部を有し、第1水平方向の長さが長くなる。そのため、第2木材が安定して第3木材と篏合する。
【0023】
(態様8)態様5~態様7の何れかに記載の接合構造であって、
前記第1水平方向における前記第1木材と前記第3木材の間には、空間と遮音材と吸音材のうちの少なくとも何れかが設けられていること、を特徴とする接合構造。
【0024】
態様8によれば、第1木材又は第3木材から出力された音や振動が、空間や遮音材や吸音材を通る際に制振される。よって、隣室に伝わる音や振動を小さくでき、第1木材~第3木材で区画される室や周囲の室の遮音、防振性能が高まる。
【0025】
(態様9)態様1から態様8の何れかに記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第2木材よりも前記上下方向の前記他方側に設けられる横材に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であり、前記横材の上面よりも室内側に、遮音床が設けられていることと、前記横材の下面よりも室内側に、遮音天井が設けられていることと、のうちの少なくとも一方を満たすこと、を特徴とする接合構造。
【0026】
態様9によれば、室で発生した音や振動が横材(床や天井)に入力される前に、遮音床や遮音天井によって制振される。また、横材に入力された音や振動が、遮音床や遮音天井によって制振された後に、室内に放射される。よって、第1木材や第2木材で区画される室や周囲の室の遮音、防振性能が高まる。
【0027】
(態様10)態様1から態様9の何れかに記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第1木材よりも下方に設けられ、かつ、前記第2木材よりも下方に設けられる横材の上面に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であること、を特徴とする接合構造。
【0028】
態様10によれば、横材の上に第1遮音ゴムが設けられることにより、上階の壁(第1木材)に入力された音や振動が制振され、下階の壁や横材(天井)への伝播を抑制できる。逆に、下階の壁や横材(天井)に入力された音や振動が制振され、上階の壁(第1木材)への伝播を抑制できる。
【0029】
(態様11)態様1から態様9の何れかに記載の接合構造であって、
前記第2木材は、前記第1木材よりも上方に設けられ、かつ、前記第2木材よりも上方に設けられる横材の下面に接合され、前記横材と前記第1木材とを接合する接合木材であること、を特徴とする接合構造。
【0030】
態様11によれば、横材の下に第1遮音ゴムが設けられることにより、下階の壁(第1木材)に入力された音や振動が制振され、上階の壁や横材(天井)への伝播を抑制できる。逆に、上階の壁や横材(天井)に入力された音や振動が制振され、下階の壁(第1木材)への伝播を抑制できる。
【0031】
===第1実施形態===
図1は、比較例の接合構造の説明図である。図2は、第1実施形態の接合構造81の説明図である。図3A図3Cは、第1接合ユニット20の説明図であり、図3Aは、接合木材21(第2木材)を示し、図3Bは、壁10(第1木材)の下端部を示す。
【0032】
図2に示すように、第1実施形態の接合構造81は、木造建築物の一部であり、互いに直交する上下方向、X方向、Y方向(不図示、図2の紙面に直交する方向)が定められる。接合構造81は、上下方向に沿う壁10(縦材)と、X方向及びY方向に沿う横材11と、それらで区画される室2~6を有する。横材11は床としても天井としても機能し、上階の床111は下階の天井112と共用される。図2では、X方向(第1水平方向)を面外方向とする壁10を例示するが、本実施形態の接合構造81は、Y方向を面外方向とする壁にも適用できる。以下の実施形態で説明する接合構造も同様である。
【0033】
また、壁10や横材11には、平らで矩形な板状の木材を採用できる。具体的には、複数枚の木質の板材を繊維方向が互いに直交するように積層して接着したCLT(Cross Laminated Timber)などの木質板材を採用できる。ただし、CLTに限らず、板状の木材は、例えば、LVL(Laminated Veneer Lumber)や、集成材、無垢材など、他の木材であってもよい。
【0034】
木材を建材とする木造建築物内の室1~6を耐火区画とするためには、壁10や、壁10と横材11との接合部分に、隙間を生じさせず、密着させる必要がある。そうすることで、壁10等の隙間から隣室へ火炎や煙が噴き出してしまうことを防止でき、隣室への火炎の燃え広がりを、遅らせたり、防いだりすることができる。
【0035】
一方、建築物には、耐火性能だけでなく、遮音性能や防振性能も求められる。例えば、図1に示す比較例の接合構造では、木質材料の壁90と床91の接合部分に遮音ゴム92が設置されている。そのため、例えば、上階の壁90に入力された音や振動が、遮音ゴム92で制振され、床91や下階の壁93への伝播を抑制できる。よって、室内の遮音、防振性能が高められる。しかし、一般的に用いられている遮音ゴム92は可燃性である。そのため、図1に示すように、遮音ゴム92が一方の室から隣室まで連続して配されていると、火炎が遮音ゴム92に着火した際に、その火炎が隣室へ真っ直ぐに噴き出しやすく、隣戸間の耐火性能が得られないという問題があった。
【0036】
そこで、第1実施形態では、上下方向の上側(一方側)に設けられる壁10(第1木材)と、上下方向の下側(他方側)に設けられる横材11とを接合する接合構造81において、図3Aに示す接合木材21(第2木材)を設ける。接合木材21は、接合木材21よりも下側に設けられる横材11に接合され、壁10と横材11とを接合する。
【0037】
接合木材21は、X方向に切った断面形状が四角形であり、Y方向に延在する角材である。接合木材21には、CLTなど、壁10や横材11と同様の木材を採用できる。接合木材21の下面は、横材11の上面11aに、ビス等の係止具や接着剤などによって接合固定され、一体化している。
【0038】
また、図3Bに示すように、壁10の下端部は、X方向の一の側が切欠かれた第1凹部101と、X方向の他の側に第1凹部101と隣接する第1凸部102を有する。つまり、相欠き形状を成す。第1凹部101と第1凸部102は、それぞれ、X方向に切った断面形状が四角形であり、壁10のY方向の一端から他端に亘り延在している。第1凹部101のX方向の切欠き幅は、壁10のX方向の幅の半分程度であるとよい。
【0039】
そして、図3Cに示すように、接合木材21の一部は、壁10の第1凹部101に篏合するように設置される。この状態において、壁10の第1凸部102のX方向一の側の側面102aは、当該側面102aに対向する接合木材21の側面21aと面接触する部位を有している。また、上下方向において、壁10の第1凹部101の底面101a(ここでは下面)と、当該底面101aに対向する接合木材21の頂面21b(ここでは上面)との間に、第1遮音ゴム22が設けられている。
【0040】
より好ましくは、上下方向において、壁10の第1凸部102の頂面102b(ここでは下面)と、当該頂面102bと対向する横材11の面11a(ここでは上面)との間に、別の第2遮音ゴム23が設けられているとよい。
【0041】
なお、第1遮音ゴム22、第2遮音ゴム23、及び、以下の実施形態で説明する遮音ゴムとしては、音や振動を低減する機能を有する周知のものを採用でき、上方の構造体の荷重(重量)を支持できる耐荷重性を有する遮音ゴム(防振ゴム)を採用するとよい。また、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23は、壁10や接合木材21や横材11に、接着剤などで接合固定されるとよい。また、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23は、壁10のY方向の一端部から他端部に亘り連続して設けられていることが望ましい。そうすることで、遮音ゴムが間欠に配置されているときのように上方の構造体の荷重が局所的に集中してしまうことを防止でき、また、接合構造81の安定性が高まる。
【0042】
上記の接合構造81によれば、壁10に入力された音や振動が、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23により制振され、下階の壁10や横材11への伝播を抑制できる。また、下階の壁10や横材11から上階の壁10に入力されようとする音や振動を、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23により制振できる。よって、壁10で区画される室やその周囲の室の遮音、防振性能が高められ、室の居住性も高まる。
【0043】
また、壁10の第1凹部101に第1遮音ゴム22が設けられ、第1凸部102に第2遮音ゴム23が設けられることで、壁10や横材11に入力された音や振動を、X方向に偏ることなくバランスよく制振させることができる。また、壁10に掛かる荷重を第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23で支持できるので、接合構造81の安定性が高まる。
【0044】
ただし、上記に限定されず、壁10の第1凸部102と横材11の間の第2遮音ゴム23が存在しなくてもよい。その場合、第1遮音ゴム21の遮音性能が阻害されないように、壁10の第1凸部102の頂面102bは、横材11の上面11aに固定されないことが好ましい。
【0045】
また、壁10の第1凸部102の側面102aと、接合木材21の側面21aとが、面接触しており、隙間が生じていない。そのため、X方向に隣り合う室が非連通とり、隣り合う室の一方で火災が生じたとしても、火炎や煙が他方の室に噴き出す隙間が存在しない。また、第1遮音ゴム22に火炎が燃え移ったとしても、火炎は第1凸部102で堰き止められ、第2遮音ゴム23に火炎が燃え移ったとしても、火炎は接合木材21で堰き止められる。さらに、第1凸部102と接合木材21の側面が面接触しているので、火炎が燃え広がる経路が塞がれる。そのため、比較例(図1)のように遮音ゴム92が隣室にまで連続している場合に比べて、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23を燃やす火炎が真っ直ぐに突き抜け難く、火炎の燃え広がりを一時減速させることができる。よって、他方の室への火炎の燃え広がりを遅らせたり防いだりでき、壁10を用いて耐火区画を形成できる。
【0046】
なお、互いに対向する第1凸部102と接合木材21の側面102a,21aの部分の少なくとも一部が面接触していればよい。面接触している面積が増えることで、隣室への火炎や煙の噴き出しをより抑制できる。また、第1凸部102と接合木材21の側面102a,21aは、接合されていなくてもよいし、壁10と接合木材21の個々の振動を伝達しない程度に(例えばビスや接着剤等で)接合されていてもよい。
【0047】
以上のように、第1実施形態の接合構造81によれば、壁10を用いて耐火区画を形成しつつ、壁10で区画される室や周囲の室の遮音、防振性能を高めることができる。また、以下の説明では、図3Bのように切欠かれた壁10の端部に、図3Aの接合木材21と、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23が接合された部位を、第1接合ユニット20とも称す。
【0048】
また、第1実施形態の接合構造81では、接合木材21は、壁10よりも下方に設けられ、かつ、接合木材21よりも下方に設けられる横材11の上面11aに接合される。つまり、第1接合ユニット20が床上に設けられる。この場合、壁10に入力された音や振動が下階の壁10や横材11に伝播する前に、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23で制振される。また、下階の壁10や横材11に入力された音や振動が、壁10に伝播する前に、第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23で制振される。
【0049】
具体的には、図2の接合構造81では、上階の壁10Aの下端部と、中間階の壁10Bの下端部に、第1接合ユニット20が設けられている。ここで、壁10Bで区画される中間階の室1において音が発生したとする。その音が壁10Bに入力されると、壁10B内を伝播する。壁10Bの上方へ伝播した音は、上階の壁10Aの下端部の第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23で制振され、上階の壁10Aへの伝播を抑制できる。一方、壁10Bの下方へ伝播した音は、壁10Bの下端部の第1遮音ゴム22及び第2遮音ゴム23で制振され、下階の壁10Cや横材11Bへの伝播を抑制できる。
【0050】
===第2実施形態===
図4A図4Cは、第2実施形態の接合構造82の説明図である。図4Aは、接合木材31(第2木材)を示し、図4Bは、壁10(第1木材)の下端部を示す。第2実施形態の接合構造82では、第1実施形態と比して、接合木材31の形状が異なる。壁10の下端部の形状は、第1実施形態と概ね同じであり、壁10の下端部は、X方向の一の側が切欠かれた第1凹部101と、それに隣接する第1凸部102を有する。
【0051】
第2実施形態の接合木材31(第2木材)は、断面が階段形状であり、壁10の第1凹部101に篏合する第2凸部311と、X方向に第2凸部311と隣接して位置し、壁10の第1凸部102に篏合する第2凹部312を有する。
【0052】
そして、第1実施形態と同様に、壁10の第1凸部102の一の側の側面102aは、当該側面102aに対向する接合木材31の側面31aと面接触する部位を有する。また、壁10の第1凹部101の底面101aと、当該底面101aに対向する接合木材31の第2凸部311の頂面31bとの間に、重量を支持できる第1遮音ゴム32が設けられている。より好ましくは、壁10の第1凸部102の頂面102bと、接合木材31の第2凹部312の底面312aとの間に、重量を支持できる第3遮音ゴム33が設けられているとよい。
【0053】
この場合にも、壁10に入力された音や振動が、第1遮音ゴム32及び第3遮音ゴム33により制振され、下階の壁10や横材11への伝播を抑制できる。また、下階の壁10や横材11から上階の壁10に入力されようとする音や振動を、第1遮音ゴム32及び第3遮音ゴム33により制振できる。よって、壁10で区画される室やその周囲の室の遮音、防振性能が高められる。また、壁10の第1凸部102の側面102aと接合部材31の側面31aとが面接触しているため、隣室への火炎や煙の噴き出しを抑制できる。よって、壁10を用いて耐火区画を形成できる。
【0054】
また、第1実施形態の接合部材21(図3A)に比べて、第2実施形態の接合部材31(図4A)の方が、X方向の長さが長くなり、横材11と接合する面が大きく安定した形状となる。そのため、壁10とも安定して篏合し、上方の部材(ここでは壁10)を安定して支持できる。逆に、第1実施形態の接合木材21の方が、加工が容易であったり、汎用の角材を使用したりできる。また、以下の説明では、図4Bのように切欠かれた壁10の端部に、図4Aの接合木材31と、第1遮音ゴム32及び第3遮音ゴム33とが、接合された部位を、第2接合ユニット30とも称す。
【0055】
===第3実施形態===
図5は、室1で発生した音の伝播経路の説明図である。図6は、第3実施形態の接合構造83の説明図である。図5は、第1実施形態の接合構造81(第1接合ユニット20)において、例えば、中間階の室1にて音が発生したときの伝播経路を示す。
【0056】
音が壁10Bに入力されると、壁10Bを上下方向に伝播した音は、第1接合ユニット20により制振され、上階の壁10Aや、下階の壁10B及び横材11への伝播が抑制される。ただし、1枚の壁10で室1~6を区画する場合、壁10に入力された音がそのまま、隣の室に伝わるおそれがある。
【0057】
そこで、1枚の壁10で室を区画する場合、つまり、X方向における壁10の一対の側面のうち、一の側の側面10Baは、室2(第1の室)を区画し、他の側の側面10Bbは、室1(第2の室)を区画する場合、以下であるとよい。すなわち、図6に示すように、壁10の一対の側面10Ba,10Bbのうちの少なくとも一方よりも室内側に、遮音壁41が設けられているとよい。そうすることで、室1で発生した音や振動が、壁10Bに入力し、壁10Bから室2側へ放射しても、遮音壁41によって低減(制振)される。そのため、隣の室2内に伝わる音を小さくできる。
【0058】
また、図6では、室2側にしか遮音壁41が設けられていないが、室1側にも遮音壁41が設けられていることが好ましい。そうすることで、室1で発生した音や振動が、壁10Bに入力される前に、室1側の遮音壁41(不図示)によって低減される。よって、室2へ放射される音もより小さくできる。
【0059】
より好ましくは、遮音壁41は、壁10Bから空間を空けて設置するとよい。そうすることで、壁10Bと遮音壁41とが接触している場合に比べて、間の空間(空気層)で音や振動を遮音できる。そのため、壁10Bから遮音壁41に入力される音や振動や、遮音壁41から壁10Bに入力される音や振動を低減できる。よって、室1~6に放射される音をより小さくできる。
【0060】
また、図5に示すように、中間階の室1で発生した音は、天井(横材11A)に入力され、上階の室3に放射されるおそれがある。また、天井(横材11A)に入力され伝播した音は、隣室2や上階の隣室4に放射されたり、中間階の壁10Bに回り込み、中間階の室1,2に放射されたりするおそれがある。同様に、床(横材11B)に入力され伝播した音も、隣室2や下階の隣室6に放射されたり、下階の壁10Cに回り込み、下階の室5,6に放射されたりするおそれがある。
【0061】
そこで、図6に示すように、横材11の上面よりも室内側に、遮音床43が設けられていたり、横材11の下面よりも室内側に、遮音天井42が設けられていたりするとよい。そうすることで、室1で発生した音や振動が、横材11(床、天井)に入力される前に、室1の遮音天井42や遮音床43によって低減される。また、横材11に入力された音や振動が、周囲の室2~6の遮音天井42や遮音床43によって低減された後に、周囲の室2~6内へ放射される。そのため、周囲の室2~6内に放射される音や振動を小さくでき、室内の遮音、防振性能が高まる。
【0062】
また、遮音天井42や遮音床43は、横材11から空間を空けて設置するとよい。そうすることで、横材11と遮音天井42や遮音床43が接触している場合に比べて、間の空間において音や振動を軽減でき、横材11から遮音天井42や遮音床43に入力される音や振動や、遮音天井42や遮音床43から横材11に入力される音や振動を低減できる。よって、室1~6内に放射される音や振動をより小さくできる。例えば、遮音天井42は、横材11から垂下する天井釣りボルト等によって固定したり、遮音床43は、横材11に立設する支持脚によって支持したりするとよい。
【0063】
なお、図6に示す遮音壁41、遮音天井42、遮音床43の配置の数や位置は一例であり、これに限定されるものではなく、例えば各室1~6の用途に応じて遮音壁41等の設置を決定するとよい。また、遮音壁41等が配されない第1実施形態の接合構造81(図5)であってもよく、第1実施形態の接合構造81では、木質材料である壁10や横材11が室内の人に視認され、意匠性が向上する。また、室内空間を広く確保できる。
【0064】
また、遮音壁41、遮音天井42、及び、遮音床43としては、直接接触して伝播したり、空気の振動により入力したりした音や振動を、増幅させずに低減して出力する機能を持つもの(壁、天井、床)であれば、特に限定されない。例えば、壁10や横材11に直接貼ったり、空間を空けて設置したりする形態のもの(アスファルト系の制振板や石膏ボードやロックウール吸音板等)であってもよいし、横材11の面に設けた防振ゴムから室内側に延びる部材(束等)に、各種材料の内装仕上げ材を取り付ける形態のものであってもよい。また、壁10と遮音壁41の間や、横材11と遮音天井42又は遮音床43との間に、ロックウールを敷設(充填)してもよく、その場合には遮音性能が更に高まる。
【0065】
ただし、上記に限定されず、遮音又は吸音機能を有さない内装仕上げ材を、壁10や横材11から間隔を空けて(具体的には300mm以上離して)設置してもよい。この場合であっても、壁10や横材11が室内に露出している場合に比べると、室内で発生した音や振動は、内装仕上げ材との間の空間を通る間に低減され、遮音、防振性能が得られる。
【0066】
===第4実施形態===
図7A及び図7Bは、第4実施形態の接合構造84の説明図である。第4実施形態の接合構造84では、床上ではなく、床下に、第1接合ユニット20や第2接合ユニット30が設けられる。例えば、第1実施形態で説明した第1接合ユニット20(図3C)を上下方向に反転させて、図7Aに示すように床下(壁10の上端部)に設けるとよい。また、第2実施形態で説明した第2接合ユニット30(図4C)を上下方向に反転させて、図7Bに示すように床下(壁10の上端部)に設けてもよい。
【0067】
つまり、接合木材21,31(第2木材)は、壁10(第1木材)よりも上方に設けられ、かつ、接合木材21,31よりも上方に設けられる横材11の下面11bに接合される。この場合、壁10に入力された音や振動が上階の壁10や横材11に伝播する前に、第1遮音ゴム22,32や第2遮音ゴム23や第3遮音ゴム33で制振される。また、上階の壁10や横材11に入力された音や振動が、下階の壁10に伝播する前に、第1遮音ゴム22,32や第2遮音ゴム23や第3遮音ゴム33で制振される。よって、上階の壁10や横材11への音や振動の伝播を抑制でき、また、上階の壁10や横材11からの音や振動の伝播を抑制できる。
【0068】
===第5実施形態===
図8及び図9は、分割ユニット13の説明図である。図10は、第5実施形態の接合構造85の説明図である。図11A図11Cは、第3接合ユニット50の説明図であり、図11Aは、接合木材51(第2木材)を示し、図11Bは、壁10(第1木材)及び対向壁14(第3木材)の下端部を示す。
【0069】
木造建築物は、図8図9に示すような複数の分割ユニット13が組み合わさることにより構築することができる。木造建築物の建築現場とは異なる場所、例えば工場等において、分割ユニット13を予め製造し、それを建築現場に搬入することで、建築現場での施工を容易にすることができる。
【0070】
図8では、X方向に間隔を空けて対応する一対の壁10(CLT等)の上部が、横材11(CLT等)に連結固定されている。また、分割ユニット13によっては、Y方向の端部に端壁17が設けられていてもよい。また、図8に例示する門型の分割ユニット131に限らない。例えば、図9に示すように、横材13のX方向の中央部に間仕切り壁15が連結固定された形状の分割ユニット132であってもよい。
【0071】
上記のような分割ユニット13を組み合わせた木造建築物では、隣り合う室の間に2枚の壁10,14が設けられる場合がある。第5実施形態の接合構造85では、室1~6を区画する壁10,14が2枚である箇所に採用される接合構造である。そのため、例えば、図9に例示する木造建築物において、室を区画する壁10,14が2枚である箇所には、第5実施形態の接合構造85(第3接合ユニット50)を採用したり、後述する第6実施形態の接合構造86(第4接合ユニット60)を採用したりできる。一方、室を区画する壁が1枚である箇所、例えば、間仕切り壁15や、端部に位置する壁10には、前述の第1接合ユニット20(図3C)や第2接合ユニット30(図4C)を採用できる。
【0072】
上記のように、第5実施形態の接合構造85は、壁10(第1木材)よりもX方向の一の側において、壁10と対向する壁14(第3木材)を有する。以下、第5実施形態の接合構造85について説明する。また、以下の説明では、壁14を対向壁14とも称す。
【0073】
図11Bに示すように、壁10の下端部の形状は、第1実施形態と概ね同じであり、壁10の下端部は、X方向の一の側が切欠かれた第1凹部101と、それに隣接する第1凸部102を有する。対向壁14は、壁10をX方向に反転させた形状である。詳しくは、対向壁14の下端部は、X方向の他の側が切欠かれた第3凹部141と、X方向に第3凹部141と隣接する第3凸部142を有する。
【0074】
そして、壁10の第1凹部101と対向壁14の第3凹部141に、図11Aに示す接合木材51(第2木材)の一部が篏合する。第5実施形態の接合木材51は、X方向に長い長方形状を断面とする角材であり、第1実施形態の接合木材21(図3A)と、それをX方向に反転させたものとを、組み合わせた形状の木材となる。
【0075】
また、図11Cに示すように、壁10の第1凸部102のX方向の一の側の側面102aは、それに対向する接合木材51の側面51aと面接触する部位を有する。対向壁14の第3凸部142のX方向の他の側の側面142aは、それに対向する接合木材51の側面51cと面接触する部位を有する。
【0076】
また、壁10の第1凹部101の底面101a(ここでは下面)と、それに対向する接合木材51の頂面51b(ここでは上面)との間に、重量を支持できる第1遮音ゴム52が設けられ、対向壁14の第3凹部141の底面141aと、それに対向する接合木材51の頂面51bとの間にも、重量を支持できる第4遮音ゴム54が設けられている。
【0077】
このような接合構造85においても、第1遮音ゴム52により壁10と、下階の壁10及び横材11との間で、音や振動が制振され、また、第4遮音ゴム54により対向壁14と、下階の対向壁14及び横材との間で、音や振動が制振される。よって、壁10、14で区画される室やその周囲の室の遮音、防振性能が高められる。
また、壁10の側面102aと接合部材51の側面51aとが面接触しており、対向壁14の側面142aと接合木材51の側面51cとが面接触している。そのため、隣室への火炎や煙の噴き出しを抑制でき、壁10、14を用いて耐火区画を形成できる。
また、2枚の壁10、14と横材11を接合する接合木材51を共用することで、2枚の壁10、14がそれぞれ接合木材を有する場合に比べて、資材点数を削減できる。
【0078】
より好ましくは、壁10の第1凸部102の頂面102bと、それに対向する横材11の面11a(ここでは上面)との間にも、重量を支持できる第2遮音ゴム53が設けられ、対向壁14の第3凸部142の頂面142bと、それに対向する横材11の面11aとの間にも、重量を支持できる第5遮音ゴム55が設けられているとよい。そうすることで、X方向に偏りがなく、バランスよく音や振動を制振させることができる。また、壁10の荷重を第1遮音ゴム52及び第2遮音ゴム53で支持でき、対向壁14の荷重を第4遮音ゴム54及び第5遮音ゴム55で支持できる。よって、接合構造85の安定性が高まる。
なお、以下の説明では、図11Bのように切欠かれた壁10及び対向壁14の端部に、図11Aの接合木材51と、第1遮音ゴム52、第2遮音ゴム53、第4遮音ゴム54、及び第5遮音ゴム55が接合された部位を、第3接合ユニット50とも称す。
【0079】
また、図10図11Cに示すように、X方向における壁10と対向壁14の間には、空間と遮音材と吸音材のうちの少なくとも何れかが設けられていることが好ましい。遮音材又は吸音材56としては、入力された音(振動)を遮音又は吸音し、出力する音(振動)を低減できるものであれば、特に限定されることなく、例えば、石膏ボードやロックウール等を採用できる。
【0080】
そうすることで、一方の壁10、14に入力された音が、空間や遮音材又は吸音材56を通る間に遮音又は吸音され、他方の壁10、14に入力される音が小さくなる。よって、壁10と対向壁14とが接触している場合に比べて、壁10、14を挟んで隣り合う室に伝播する音や振動をより軽減できる。そのため、壁10、14で区画される室の遮音、防振性能がより高まる。
【0081】
===第6実施形態===
図12A図12Cは、第6実施形態の接合構造86の説明図である。図12Aは、接合木材61(第2木材)を示し、図12Bは、壁10(第1木材)及び対向壁14の下端部を示す。第6実施形態の接合構造86は、第5実施形態と同様に、室1~6を区画する壁10,14が2枚である箇所に採用される接合構造である。2枚の壁10,14の下端部の形状は、図12Bに示すように、概ね第5実施形態と同じ形状であり、壁10は第1凹部101と第1凸部102を有し、対向壁14は第3凹部141と第3凸部142を有する。
【0082】
図12Aに示すように、第6実施形態の接合木材61(第2木材)は、第5実施形態の接合木材51とは異なり、第2実施形態の接合木材31と、それをX方向に反転させたものとを、組み合わせた形状となる。詳しくは、接合木材61は、壁10の第1凹部101に篏合する第2凸部611と、壁10の第1凸部102に篏合する第2凹部612を有する。さらに、接合木材61は、対向壁14の第3凹部141に篏合する第4凸部613と、対向壁14の第3凸部142に篏合する第4凹部614を有する。また、第6実施形態においても、壁10と対向壁14の間に空間や遮音材又は吸音材66が設けられていることが望ましい。
【0083】
そして、壁10の第1凹部101の底面101aと、それに対向する接合木材61の頂面61bとの間に、重量を支持できる第1遮音ゴム62が設けられ、対向壁14の第3凹部141の底面141aと、それに対向する接合木材61の頂面61bとの間に、重量を支持できる第4遮音ゴム64が設けられている。また、図12Cに示すように、壁10の第1凸部102のX方向の一の側の側面102aは、それに対向する接合木材61の側面61aと面接触する部位を有し、対向壁14の第3凸部142のX方向の他の側の側面142aは、それに対向する接合木材61の側面61cと面接触する部位を有する。
【0084】
そのため、第1遮音ゴム62により、壁10と下階の壁10及び横材11との間で、音や振動が制振され、第4遮音ゴム64により、対向壁14と下階の対向壁14及び横材11との間で、音や振動が制振される。よって、壁10及び対向壁14で区画される室やその周囲の室の遮音、防振性能が高められる。
また、壁10の側面102aと接合部材61の側面61aとが面接触しており、対向壁14の側面142aと接合部材61の側面61cとが面接触している。そのため、隣室への火炎や煙の噴き出しを抑制でき、壁10及び対向壁14を用いて耐火区画を形成できる。
また、2枚の壁10、14と横材11を接合する接合木材61を共用することで、それぞれの壁10、14に接合木材を設ける場合に比べて、資材点数を削減できる。
【0085】
より好ましくは、壁10の第1凸部102の頂面102bと、それに対向する接合木材61の第2凹部612の底面612aとの間に、重量を支持できる第3遮音ゴム63が設けられているとよい。また、対向壁14の第3凸部142の頂面142bと、それに対向する接合木材61の第4凹部614の底面614aとの間に、重量を支持できる第6遮音ゴム65が設けられているとよい。そうすることで、X方向に偏りがなく、バランスよく音や振動を制振させることができる。また、壁10の荷重を第1遮音ゴム62及び第3遮音ゴム63で支持でき、対向壁14の荷重を第4遮音ゴム64及び第6遮音ゴム65で支持できる。よって、接合構造86の安定性が高まる。
なお、以下の説明では、図12Bのように切欠かれた壁10及び対向壁14の端部に、図12Aの接合木材61と、第1遮音ゴム62、第3遮音ゴム63、第4遮音ゴム64、及び第6遮音ゴム65が接合された部位を、第4接合ユニット60とも称す。
【0086】
===第7実施形態===
図13A及び図13Bは、第7実施形態の接合構造87の説明図である。第7実施形態の接合構造87では、床上ではなく、床下に、第3接合ユニット50や第4接合ユニット60が設けられる。第5実施形態で説明した第3接合ユニット50(図11C)を上下方向に反転させて、図13Aに示すように床下(壁10及び対向壁14の上端部)に設けるとよい。又は、第6実施形態で説明した第4接合ユニット60(図12C)を上下方向に反転させて、図13Bに示すように床下(壁10及び対向壁14の上端部)に設けてもよい。例えば、図8図9で例示した分割ユニット13を上下方向に反転させて使用する場合に、第7実施形態の接合構造87を採用するとよい。
【0087】
この場合、壁10や対向壁14に入力された音や振動を、上階の壁10や上階の対向壁14や横材11に伝播する前に制振できる。また、上階の壁10や上階の対向壁14や横材11に入力された音や振動を、下階の壁10や下階の対向壁14に伝播する前に制振できる。つまり、上階の2枚の壁10、14及び横材11と、下階の2枚の壁10、14との間で、音や振動の伝播を抑制できる。
【0088】
===第8実施形態===
図14は、第8実施形態の接合構造88の説明図である。第5実施形態から第7実施形態の接合構造85~87では、室1~6を区画する壁10,14が2枚である。この場合、例えば室1で発生し、壁10Bに入力された音は、空間や遮音材又は吸音材56,66を通り、さらに対向壁14を通った後に、隣室2に放射される。そのため、空間や遮音材又は吸音材56,66を通る間に音(振動)は低減され、隣室2に放射される音(振動)は小さくなる。そのため、室1~6を区画する壁10が1枚であるときのように(図6参照)、壁10の室内側に遮音壁41を設けなくても、隣室への音を遮音できる。
【0089】
ただし、横材11(床、天井)に入力された音は、壁10が1枚であるときと同様に、横材11を伝播し、周囲の室1~6に放射されるおそれがある。そこで、室1~6を区画する壁10,14が2枚であるときは、図14に示すように、横材11の上面よりも室内側に、遮音床43が設けられていたり、横材11の下面よりも室内側に、遮音天井42が設けられていたりするとよい。
【0090】
そうすることで、例えば室1で発生した音が、横材11(床、天井)に入力される前に、室1の遮音天井42や遮音床43によって遮音される。また、横材11に入力され放射された音が、周囲の室2~6の遮音天井42や遮音床43によって遮音された後に、周囲の室2~6内へ放射される。そのため、周囲の室2~6に放射される音を軽減でき、室1~6内の遮音、防振性能が高まる。なお、遮音天井42及び遮音床43は、第3実施形態にて説明したものと同様とする。
【0091】
===第9実施形態===
図15は、第9実施形態の接合構造89の説明図である。ここまで、床上又は床下に、遮音ゴムが設けられる実施形態を例示したが、これに限らず、壁10の途中に遮音ゴムが設けられてもよい。例えば、図15に示すように、上方の壁10D(第1木材)の下端部の一部を切欠いて第1凹部70を形成しつつ、第1凸部71を形成する。下方の壁10E(第2木材)の上端部の一部を、第1凸部71に篏合するように切欠いて第2凹部75を形成しつつ、上方の壁10Dの第1凹部70に篏合する第2凸部72を形成する。そして、上方の壁10Dの第1凹部70と下方の壁10Eの第2凸部72の間に重量を支持できる第1遮音ゴム73を設けるとよい。また、上方の壁10Dの第1凸部71の側面と、それに対向する下方の壁10Eの側面とを面接触させる。望ましくは、上方の壁10Dの第1凸部71と下方の壁10Eの第2凹部75の間に重量を支持できる第3遮音ゴム74を設けるとよい。
【0092】
また、図9に例示した木造建築物では、最も下側の分割ユニット13と基礎16の間に、遮音ゴムが設けられていない。これに限らず、例えば、壁の下部と、根太(横材)や大引き材(第2木材)等の基礎16の間に、第1接合ユニット20や第2接合ユニット30や第3接合ユニットや50や第4接合ユニット60を設けてもよい。
【0093】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0094】
1~6 室、
10 壁(第1木材)、
10D 上方の壁(第1木材)、10E 下方の壁(第2木材)、
101 第1凸部、102 第1凹部、
11 横材、
13 分割ユニット、
14 壁(対向壁、第3木材)、
141 第3凸部、142 第4凹部、
20 第1接合ユニット、
21 接合木材(第2木材)、
22 第1遮音ゴム、23 第2遮音ゴム、
30 第2接合ユニット、
31 接合木材(第2木材)、
311 第2凸部、312 第2凹部、
32 第1遮音ゴム、33 第3遮音ゴム、
41 遮音壁、42 遮音天井、43 遮音壁、
50 第3接合ユニット、
51 接合木材(第2木材)、
52 第1遮音ゴム、53 第2遮音ゴム、
54 第4遮音ゴム、55 第5遮音ゴム、
56 遮音材又は吸音材、
60 第4接合ユニット、
61 接合木材(第2木材)、
611 第2凸部、612 第2凹部、
613 第4凸部、614 第4凹部、
62 第1遮音ゴム、62 第3遮音ゴム、
64 第4遮音ゴム、65 第6遮音ゴム、
66 遮音材又は吸音材、
70 第1凹部、71 第1凸部、
72 第2凸部、
73 第1遮音ゴム、74 第3遮音ゴム、
75 第2凹部、
81~89 接合構造、
90 壁、91 横材、
92 遮音ゴム、93 壁、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15