(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095267
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】植物生産システムの循環培養液の処理方法、植物生産システムの循環培養液の処理装置、及び植物生産システム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240703BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G31/00 602
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212428
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北澤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】二見 賢一
(72)【発明者】
【氏名】古市 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】高木 哲史
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓矢
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA15
2B314MA17
2B314MA21
2B314MA23
2B314MA27
2B314MA35
2B314MA38
2B314MA42
2B314MA48
2B314PA03
2B314PA06
2B314PA08
2B314PA13
2B314PA16
2B314PA17
(57)【要約】
【課題】循環培養液の成分変化を抑制でき、細菌及び藻類等の繁殖を抑制しながら、簡易な装置で安全に除菌浄化処理を行うことが可能な植物生産システムの循環培養液の処理方法、植物生産システムの循環培養液の処理装置及び植物生産システムを提供する。
【解決手段】植物生産システムの循環培養液のpHが7以下となるように、循環培養液に酸を注入する酸注入工程と、酸を注入した後の循環培養液を処理槽121内に収容し、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線を循環培養液に照射し、処理槽121内においてオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線を、酸素を含有する気体に照射してオゾンを生成させ、オゾン及び酸素を含有する気体を循環培養液に注入して循環培養液をオゾン殺菌する除菌浄化処理工程と、除菌浄化処理工程後の循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整工程とを有する植物生産システムの循環培養液の処理方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物生産システムの循環培養液のpHが7以下となるように、前記循環培養液に酸を注入する酸注入工程と、
前記酸を注入した後の前記循環培養液を処理槽内に収容し、前記循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線を前記循環培養液に照射し、前記処理槽内においてオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線を、酸素を含有する気体に照射してオゾンを生成させ、前記オゾン及び前記酸素を含有する気体を前記循環培養液に注入して前記循環培養液をオゾン殺菌する除菌浄化処理工程と、
前記除菌浄化処理工程後の前記循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整工程と
を有する植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項2】
気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成させ、生成した前記気泡を前記除菌浄化処理工程で処理される前記循環培養液に注入する気泡注入工程を更に有することを含む請求項1に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項3】
前記酸素を含有する気体に対する前記気泡の前記循環培養液への供給比が、体積比で0.1以上となるように、前記酸素を含有する気体及び前記気泡を注入することを含む請求項2に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項4】
前記除菌浄化処理工程で処理される前記循環培養液のDOが5~20mg/Lとなるように、前記酸素を含有する気体及び/又は気泡を前記循環培養液に注入することを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項5】
前記除菌浄化処理工程は、
前記処理槽内に配置された前記第1及び前記第2の紫外線を照射可能な紫外線照射手段と、前記処理槽内において前記紫外線照射手段の周囲に配置されたケーシングとの間に設けられた気体流通部内に前記酸素を含有する気体を注入し、
前記気体流通部内に注入された前記酸素を含有する気体に前記第2の紫外線を照射して前記オゾンを生成させ、
前記気体流通部内の前記酸素を含有する気体及び前記オゾンを前記処理槽内の前記循環培養液中に注入することを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項6】
前記除菌浄化処理工程の前記循環培養液中のオゾン濃度が0.005~0.5mg-O3/L-循環培養液となるように前記処理槽内で前記オゾンを生成させることを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項7】
前記循環培養液に液体肥料を注入する工程を更に有する請求項1~3のいずれか1項に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項8】
前記循環培養液の電気伝導率の測定結果に基づいて、前記循環培養液の電気伝導率を、処理対象とする植物の生育に適切な電気伝導率に調整する工程を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の植物生産システムの循環培養液の処理方法。
【請求項9】
植物生産システムの循環培養液のpHが7以下となるように、前記循環培養液に酸を注入する酸処理手段と、
前記酸を注入した前記循環培養液を収容する処理槽と、前記処理槽内に配置され、前記循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線とオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線とを照射する紫外線照射手段と、前記第2の紫外線と反応して前記オゾンの生成を促す酸素を含有する気体を前記処理槽内へ注入する気体注入手段とを備える除菌浄化処理手段と、
前記除菌浄化処理手段で処理された前記循環培養液を、植物の生育に適切なpHに調整する調整手段と
を備える植物生産システムの循環培養液の処理装置。
【請求項10】
前記酸処理手段と前記除菌浄化処理手段との間に設けられ、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成し、生成した前記気泡を前記循環培養液へ注入する気泡注入手段を更に備える請求項9に記載の植物生産システムの循環培養液の処理装置。
【請求項11】
前記紫外線照射手段が、前記第1の紫外線及び前記第2の紫外線を照射可能な紫外線ランプと、前記紫外線ランプの周囲に配置されたケーシングとを備え、前記紫外線ランプと前記ケーシングとの間に気体流通部を形成し、
前記気体注入手段が、前記気体流通部に接続され、前記酸素を含有する気体を前記気体流通部内に注入し、
前記気体流通部に接続された循環部が、前記第2の紫外線の照射により前記気体流通部内に生成された前記オゾン及び前記酸素を含む気体を前記処理槽内の前記循環培養液へ循環させて注入するように構成されていることを含む請求項9又は10に記載の植物生産システムの循環培養液の処理装置。
【請求項12】
植物の成長に必要な栄養素を含む循環培養液を用いて植物を栽培する栽培棚と、
前記栽培棚から排出される前記循環培養液を前記栽培棚へ循環させる循環手段と、
前記栽培棚から排出された前記循環培養液に対し、pHが7以下となるように酸を注入する酸処理手段と、
前記酸を注入した前記循環培養液を収容する処理槽と、前記処理槽内に配置され、前記循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線と前記循環培養液中にオゾンを発生させるための波長域を有する第2の紫外線とを照射する紫外線照射手段と、前記第2の紫外線と反応して前記オゾンの生成を促す酸素を含有する気体を前記処理槽内へ注入する気体注入手段とを備える除菌浄化処理手段と、
前記除菌浄化処理手段に接続され、前記除菌浄化処理手段で処理された前記循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整手段と
を備える植物生産システム。
【請求項13】
前記酸処理手段に供する前記循環培養液の取水箇所が、前記栽培棚の後段であり前記循環手段内、もしくは前記栽培棚から排出された前記循環培養液を貯留する培養液槽である請求項12に記載の植物生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生産システムの循環培養液の処理方法、植物生産システムの循環培養液の処理装置及び植物生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物生産システムで利用される循環培養液は、一般的には水、肥料成分、pH調整剤から構成されている。循環培養液は、植物生産システム内を循環し、栽培棚の植物へ水分と栄養分を供給する液体である。循環培養液は、数週間から数か月程度、植物の生育のために利用された後で、全量が廃棄され、その後、新たな循環培養液に入れ替えられることが多い。しかしながら、循環培養液の入れ替えは、大量の水道水が必要であること、入れ替え作業時における栽培棚及びシステム内の清掃作業に人手と時間を要すること、或いは、使用済の循環培養液を廃棄する際に、循環培養液に含まれる肥料成分が同時に廃棄されること等の種々の課題を有している。中でも、循環培養液が、生産システム内で循環されることによって細菌や藻類が発生し増加する問題が大きな課題の一つとなっている。
【0003】
このような循環培養液中の細菌や藻類の発生及び増加を抑制する方策として、特許第5802558号公報(特許文献1)には、液肥である培養液を入れる養液タンクと栽培ベッドとの間を循環させる養液栽培システムであって、オゾン供給機能と紫外線照射機能と光触媒作用機能を有する除菌浄化ユニットの相乗効果によって殺菌作用と有機物分解作用とを発揮するようにした養液栽培システムの例が記載されている。
【0004】
特許第5191782号公報(特許文献2)には、液肥である培養液を入れる溶液タンクと栽培ベッドとの間を循環させる養液栽培システムであって、栽培ベッドと養液タンクとを供給ラインと戻りラインとにより接続して循環ラインを構成し、供給ラインから分岐して浄化養液タンクと浄化栽培ベッドとを有する分岐循環ラインを設け、この分岐循環ライン内の浄化養液タンクに除菌浄化ユニットを接続した養液栽培システムの例が記載されている。
【0005】
また、循環培養液の植物の生育性能を向上させるための技術も種々報告されている。特開平7-132029号公報(特許文献3)及び特許第4754512号公報(特許文献4)には、植物の水耕栽培を行う際に利用する培養液の溶存酸素量を高めるために、植物の水耕栽培用の培養液に微細気泡を注入する植物の水耕栽培方法の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5802558号公報
【特許文献2】特許第5191782号公報
【特許文献3】特開平7-132029号公報
【特許文献4】特許第4754512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2等に記載されるように、循環培養液の除菌処理方法としては、紫外線処理、オゾン酸化処理、酸化促進処理、薬品による処理等が一般的に行われる。しかしながら、紫外線処理では、循環培養液の濁度や色度による除菌効果が十分達成されない場合がある。オゾン酸化処理では、オゾンガスを供給するため、循環培養液中又は周囲の気体中の残留オゾンが、植物を枯らす場合や植物の変色を引き起こす場合がある。食品用の植物生産システムでは、酸化促進処理や薬品による処理が使用できない場合もある。また、これら紫外線処理、オゾン酸化処理、酸化促進処理及び薬品による処理は、循環培養液の中の金属イオン成分の酸化等を引き起こし、色度の増加等の循環培養液の成分変化を生じさせるという問題もある。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、循環培養液の成分変化を抑制でき、細菌及び藻類等の繁殖を抑制しながら、簡易な装置で安全に除菌浄化処理を行うことが可能な植物生産システムの循環培養液の処理方法、植物生産システムの循環培養液の処理装置及び植物生産システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、循環培養液に対して特定の除菌浄化処理を行うことが有用であるとの知見を得て本発明に至った。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、植物生産システムの循環培養液のpHが7以下となるように、循環培養液に酸を注入する酸注入工程と、酸を注入した後の循環培養液を処理槽内に収容し、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線を循環培養液に照射し、処理槽内においてオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線を、酸素を含有する気体に照射してオゾンを生成させ、オゾン及び酸素を含有する気体を循環培養液に注入して循環培養液をオゾン殺菌する除菌浄化処理工程と、除菌浄化処理工程後の循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整工程とを有する植物生産システムの循環培養液の処理方法である。
【0011】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は一実施態様において、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成させ、生成した気泡を除菌浄化処理工程で処理される循環培養液に注入する気泡注入工程を更に有する。
【0012】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は別の一実施態様において、酸素を含有する気体に対する気泡の循環培養液への供給比が、体積比で0.1以上となるように、酸素を含有する気体及び気泡を注入することを含む。
【0013】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は更に別の一実施態様において、除菌浄化処理工程で処理される循環培養液のDOが5~20mg/Lとなるように、酸素を含有する気体及び/又は気泡を循環培養液に注入することを含む。
【0014】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は更に別の一実施態様において、除菌浄化処理工程は、処理槽内に配置された第1及び第2の紫外線を照射可能な紫外線照射手段と、処理槽内において紫外線照射手段の周囲に配置されたケーシングとの間に設けられた気体流通部内に酸素を含有する気体を注入し、気体流通部内に注入された酸素を含有する気体に第2の紫外線を照射してオゾンを生成させ、気体流通部内の酸素を含有する気体及びオゾンを処理槽内の循環培養液中に注入することを含む。
【0015】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は更に別の一実施態様において、除菌浄化処理工程の循環培養液中のオゾン濃度が0.005~0.5mg-O3/L-循環培養液となるように処理槽内でオゾンを生成させることを含む。
【0016】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は更に別の一実施態様において、循環培養液に液体肥料を注入する工程を更に有する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理方法は更に別の一実施態様において、循環培養液の電気伝導率の測定結果に基づいて、循環培養液の電気伝導率を、処理対象とする植物の生育に適切な電気伝導率に調整する工程を有する。
【0018】
本発明は別の一側面において、植物生産システムの循環培養液のpHが7以下となるように、循環培養液に酸を注入する酸処理手段と、酸を注入した循環培養液を収容する処理槽と、処理槽内に配置され、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線とオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線とを照射する紫外線照射手段と、第2の紫外線と反応してオゾンの生成を促す酸素を含有する気体を処理槽内へ注入する気体注入手段とを備える除菌浄化処理手段と、除菌浄化処理手段で処理された循環培養液を、植物の生育に適切なpHに調整する調整手段とを備える植物生産システムの循環培養液の処理装置である。
【0019】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置は一実施態様において、酸処理手段と除菌浄化処理手段との間に設けられ、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成し、生成した気泡を循環培養液へ注入する気泡注入手段を更に備える。
【0020】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置は別の一実施態様において、外線照射手段が、第1の紫外線及び第2の紫外線を照射可能な紫外線ランプと、紫外線ランプの周囲に配置されたケーシングとを備え、紫外線ランプとケーシングとの間に気体流通部を形成し、気体注入手段が、気体流通部に接続され、酸素を含有する気体を気体流通部内に注入し、気体流通部に接続された循環部が、第2の紫外線の照射により気体流通部内に生成されたオゾン及び酸素を含む気体を処理槽内の循環培養液へ循環させて注入するように構成されていることを含む。
【0021】
本発明は更に別の一側面において、植物の成長に必要な栄養素を含む循環培養液を用いて植物を栽培する栽培棚と、栽培棚から排出される循環培養液を栽培棚へ循環させる循環手段と、栽培棚から排出された循環培養液に対し、pHが7以下となるように酸を注入する酸処理手段と、酸を注入した循環培養液を収容する処理槽と、処理槽内に配置され、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線と循環培養液中にオゾンを発生させるための波長域を有する第2の紫外線とを照射する紫外線照射手段と、第2の紫外線と反応してオゾンの生成を促す酸素を含有する気体を処理槽内へ注入する気体注入手段とを備える除菌浄化処理手段と、除菌浄化処理手段に接続され、除菌浄化処理手段で処理された循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整手段とを備える植物生産システムである。
【0022】
本発明の実施の形態に係る植物生産システムは一実施態様において、酸処理手段に供する循環培養液の取水箇所が、栽培棚の後段であり循環手段内、もしくは栽培棚から排出された循環培養液を貯留する培養液槽である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、循環培養液の成分変化を抑制でき、細菌及び藻類等の繁殖を抑制しながら、簡易な装置で安全に除菌浄化処理を行うことが可能な植物生産システムの循環培養液の処理方法、植物生産システムの循環培養液の処理装置及び植物生産システムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図2】第1の実施の形態の第1変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図3】第1の実施の形態の第2変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図5】第2の実施の形態の第1変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図6】第2の実施の形態の第2変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図8】第3の実施の形態の第1変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図9】第3の実施の形態の第2変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図10】第3の実施の形態の第3変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図11】第3の実施の形態の第4変形例に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図12】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図13】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図14】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図15】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図16】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図17】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図18】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図19】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図20】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図21】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図22】その他の実施の形態に係る植物生産システムの循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図23】本発明の実施例に係る循環培養液の処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0026】
<植物生産システム100>
本実施形態に係る植物生産システム100は一般的に植物工場、野菜工場、苗生産システム、薬用植物工場、バイオ植物工場などを含み、より具体的には人工光型植物工場、光合成型植物工場等が挙げられる。中でも本実施形態に係る植物生産システム100は、人工光型植物工場に好適に利用することができる。
【0027】
人工光型植物工場は、屋内の閉鎖的な環境において、植物栽培棚、空調装置(二酸化炭素供給装置)、光源、循環培養液循環手段(ポンプ、pH調整装置、電気伝導度調整装置など)、液体肥料注入装置、培養液槽(貯槽)から構成される。人工光型植物工場は、特定波長のLED光源などを利用した人工光と、空調と、循環培養液と、その他植物生育に必要な環境要因を制御し、一定の生育条件を維持しながら養液栽培を行う植物生産システム100である。植物生育に必要な環境要因としては、温度、光量、二酸化炭素濃度、水質(各栄養塩類及び微量金属成分を含む)、湿度、気流、循環培養液の循環水量等を含む。なお、本発明では、
図1に示すように、植物生産システム100として、植物生産システム100の一部を構成する栽培棚5、循環手段4、培養液槽10(
図3参照)を例示しているが、本植物生産システム100はこれらの構成に限定されないことは勿論である。
【0028】
<栽培棚5>
栽培棚5は、植物生産システム100において植物が生育される箇所を指す。栽培棚5では、生育対象の植物が、樹脂製のパネルなどで保持されている。循環培養液は、典型的には、栽培棚5内の植物の根部分へ供給され、栽培棚5内を流れた循環培養液が、栽培棚5の後段から系外へと排出される。図示を省略しているが、栽培棚5には、光源、二酸化炭素供給装置、温度計、湿度計、各種センサ類などが設置されており、各植物の生育に適した一定の環境条件が維持されている。
【0029】
<循環培養液>
栽培棚5を循環する循環培養液は、培養液、栽培液、循環培養液、水耕培養液、養液などとも呼称される。循環培養液は、植物生産システム100内において循環利用され、主に、水、栄養塩類(窒素、りん)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ホウ素(B)等の微量元素成分を含み、植物の生育に必要な水分と栄養素を供給する液体である。循環培養液は、栽培棚5、循環手段4及び培養液槽10を循環し、一定のpH及び電気伝導率となるように、水質項目が常時監視されている。循環培養液の水質項目に変化があった場合は、必要量のpH調整剤(酸、アルカリ剤)や液体肥料を注入し、水質を一定に維持させるように調整される。
【0030】
<液体肥料>
液体肥料は、一般的に液肥、栄養剤などと呼称され、循環培養液中へ栄養塩類や微量金属成分を補充するために用いられる液体肥料である。液体肥料は、栄養塩類、微量金属成分を含む。栄養塩類、微量金属としては、具体的には、窒素(N)とその化合物、リン(P)とその化合物、Na、K、Ca、Mg、Fe、Bと、各金属の水和物又は化合物を含む。液体肥料は、水等の溶媒に目的に応じた上記成分を溶解させて製造される。
【0031】
<浮遊物質>
浮遊物質(SS:Suspened Solids)とは、排水中に浮遊する固形状の懸濁物質のことであり、孔径1μmのろ紙でろ過した際に、ろ紙上に残留する物質を指す。SSは無機性及び有機性の物質を含む。無機性のSSは、土壌由来の成分や粘土成分などを含む。有機性のSSは、動植物及び微生物の細胞由来や工場由来の成分を含む。本実施形態の被処理水に含まれるSSは特に限定しないが、清涼飲料水製造工場の製造工程で生じた成分、活性汚泥、流動担体から剥離した汚泥、凝集処理工程で生じた汚泥フロック由来のSSが該当する。
【0032】
<一般細菌>
本実施形態において「細菌」又は「一般細菌」は、準寒天培地によって36±1℃で、24±2時間培養したときに、培地上にコロニーを形成する細菌(特に従属栄養細菌)を指し、上水試験法(日本水道協会発行、上水試験方法)又は下水試験方法(日本下水道協会発行、下水試験方法)に準拠した方法で測定する。培地上に形成されたコロニー数は、個/mL、CFU/mLとして表す。細菌又は一般細菌は一般生菌をも含む。植物生産システムは、野菜や果物類などの食品用途に用いられるため、培養液中の細菌または一般細菌には一定の基準値が定められており、一定濃度以下とする必要がある。
【0033】
<藻類>
藻類は、循環培養液を循環利用する際に、液中、栽培棚、流路、循環培養液の循環手段、培養液槽などに発生する植物プランクトンを指す。具体的には、緑藻類、藍藻類、黄金藻類、珪藻類などを指し、特に、光合成色素(クロロフィルa)を細胞内に持つ、緑藻類を指す。植物生産システム内で藻類が発生した場合、循環培養液の交換頻度及び流路の清掃頻度が増加するなどの問題が生じる。
【0034】
(第1の実施の形態)
<循環培養液の処理装置>
本発明の第1の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理装置は、
図1に示すように、植物生産システム100の循環培養液に酸を注入する酸処理手段1と、除菌浄化処理手段2と、除菌浄化処理手段2で処理された循環培養液を、植物の生育に適切なpHに調整する調整手段3とを備える。
【0035】
酸処理手段1は、植物生産システム100の循環培養液のpHが7以下となるように、循環培養液に酸を注入し、循環培養液を酸性に調整するための装置である。酸処理手段1は、貯留槽、薬注ポンプ、配管、その付随設備から構成される。酸注入ラインの前段もしくは後段にpH測定装置(不図示)を設け、pHの状況に応じて酸の注入量を制御することも可能である。pH測定装置は特に限定されないが、pH計、pH電極、pHセンサなどが挙げられる。また、全有機炭素計、色度計などを併せて設置することが可能である。酸の種類は特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸、ホウ酸などの無機酸が挙げられる。中でも、循環培養液の色度成分等の性状変化を長期間抑制し、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理の効果をより高く得るためには、酸としてリン酸、硝酸等を用いることがより好ましい。
【0036】
酸処理手段1では、循環培養液のpHが6以下、更にはpHが5.5以下、より更にはpHが5以下となるように、循環培養液に酸を注入することが好ましい。循環培養液は、肥料成分としての微量金属を含むが、後述する除菌浄化処理手段2による紫外線照射や酸化促進処理により金属イオンの酸化が生じ、循環培養液の色度が増加する可能性がある。本実施形態では、酸処理手段1が設けられることにより、循環培養液中の金属成分、特に鉄やマンガン等の酸化に起因する循環培養液の色度の増加が抑制できるため、循環培養液の成分変化が効果的に抑制できる。
【0037】
除菌浄化処理手段2は、栽培棚5から排出された循環培養液を除菌及び浄化処理するための装置である。除菌浄化処理手段2は、酸処理手段1で酸を注入した後の循環培養液を収容する処理槽21と、処理槽21内に配置され、循環培養液に照射する紫外線照射手段22と、紫外線照射手段22から照射される紫外線と反応して処理槽21内でオゾンの生成を促すために、酸素を含有する気体を処理槽21内へ注入する気体注入手段23とを備える。
【0038】
紫外線照射手段22の構成は特に限定されない。紫外線照射手段22は、例えば、紫外線ランプ122、紫外線ランプ122の外側に紫外線ランプ122の周囲を覆うように配置されたケーシング25、電源及び配線(不図示)等を備え、紫外線ランプ122とケーシング25との間に気体流通部126を形成するように構成されている。紫外線ランプ122の種類に特に制限はないが、熱陰極型、冷陰極型のランプが好適に用いられる。ケーシング25は、紫外線ランプ122を防護しつつ、紫外線ランプ122とケーシング25との間に、気体注入手段23から注入される酸素を含有する気体を流通させる機能を有する。ケーシング25の材質に制限はないが、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ガラス樹脂等の無色透明であって、紫外線照射手段22が照射する波長域の紫外線を吸収または反射せず、紫外線による劣化を生じにくいものが好ましい。
【0039】
紫外線照射手段22は、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線と、循環培養液中にオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線とを循環培養液に照射する装置である。
図1に示す例では、紫外線照射手段22は、第1の紫外線を照射する第1の紫外線照射手段22A(第1の紫外線ランプ)と、第2の紫外線を照射する第2の紫外線照射手段22B(第2の紫外線ランプ)とが、それぞれ別々に備えられる例を示しているが、この例には限定されない。好ましくは、波長域の異なる第1の紫外線と第2の紫外線とを、一本の紫外線ランプで照射可能な紫外線照射手段22を用いることにより、小型化及び装置簡略化が図れる。
【0040】
第1の紫外線の波長域は、循環培養液を殺菌処理可能な波長域であれば限定されないが、典型的には波長域240~300nm、より典型的には240~260nmである。第2の紫外線の波長域は、紫外線の照射によりオゾンを生成させる波長域であれば限定されないが、典型的には波長域180~190nm、より典型的には185nmである。
【0041】
気体注入手段23は、例えば、エアコンプレッサ、空気圧力計、空気流量計、減圧弁、配管、その付随装置から構成される。酸素を含有する気体としては、取り扱い性、入手容易性および経済性の観点等から、空気を利用することが最も好ましい。また、酸素を含有する気体として、酸素の他にも、オゾン、二酸化炭素、水素等の任意の気体を更に含有させてもよいし、これら2種類以上の気体をそれぞれ同時に導入することも可能である。気体注入手段23は、紫外線ランプ122とケーシング25との間に形成された気体流通部126に接続されている。気体注入手段23は、ケーシング25に設けられた注入口231を介して酸素を含有する気体、典型的には空気を気体流通部126に注入する。
【0042】
除菌浄化処理手段2では、紫外線照射手段22によって、第1の紫外線を循環培養液に照射することにより、循環培養液中の一般細菌及び藻類を死滅させるための装置である。除菌浄化処理手段2では、気体注入手段23によって、空気等の酸素を含有する気体を紫外線照射手段22の周囲の気体流通部126に注入した状態で第2の紫外線を照射することにより、気体流通部126には、注入した酸素の一部からオゾンが生成する。更に、第2の紫外線の照射により生成した少量のオゾンと、第1の紫外線照射手段22Aによる第1の紫外線の照射によって、循環培養液中にヒドロキシラジカルが生成される。これにより、除菌浄化処理手段2では、紫外線と、オゾンと、ヒドロキシラジカルとによる酸化分解反応の促進処理(AOP処理)が行われる。このAOP処理により、循環培養液中の一般細菌、藻類、浮遊物質(SS)、溶解性有機物等が効率良く分解される。
【0043】
AOP処理(Advanced Oxidation Process)とは、酸化促進処理又は促進酸化処理と呼称されている。このAOP処理は、いくつかの酸化剤と水との反応によって、単独の酸化処理よりも多くのヒドロキシラジカルを発生させて、酸化分解反応を促進する方法である。AOP処理で用いられる酸化剤としては、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。AOP処理は、薬剤等を用いた処理方法と異なり、処理後の残留物が残らず、脱色性に優れる点で有用である。そのため、植物生産システム100等のような植物の生育に用いられる循環培養液の除菌浄化処理に適用することによって、循環培養液の成分変化、細菌及び藻類等の繁殖を抑制しながら、簡易な装置で安全に除菌浄化処理を行うことができる。本実施形態では、AOP処理の中でも、紫外線による紫外線(UV)処理をAOP処理に組み合わせることにより、酸化処理、有機物処理、殺菌処理などが促進できるため、単独の紫外線処理やオゾン処理やAOP処理よりも、更に高い除菌浄化処理効果を有する。
【0044】
気体注入手段23による気体の注入量に特は制限されないが、注入量が多すぎると空気と紫外線との反応が不十分となり、オゾンの生成量が不足する一方で、少なすぎると、植物の生育に必要な十分な酸素量(溶存酸素濃度:DO)を備えた循環培養液が得られない場合がある上、除菌浄化処理手段2で実施するAOP処理のためのオゾンの生成量が不足し、除菌浄化処理効果が小さくなる場合がある。以下に限定されるものではないが、安定してより高い除菌浄化処理効果を得る上では、除菌浄化処理工程の循環培養液のDOが5~20mg/Lとなるように、酸素を含有する気体及び/又は気泡を循環培養液に注入することが好ましく、DOが6~15mg/Lとなるように注入することがより好ましく、DOが6~12mg/Lとなるように注入することがより好ましい。
【0045】
酸素含有気体として空気を供給する場合は、処理槽21内に供給される循環培養液に対して、0.005~1L/L-循環培養液で供給することが好ましく、0.01~0.5L/L-循環培養液で供給することがより好ましい。以下に限定されるものではないが、酸素含有気体として空気を供給する場合、循環培養液と注入気体の気液比(循環培養液/酸素を含有する気体の体積比)を1~200とすることが好ましく、3~100とすることが更に好ましい。
【0046】
紫外線照射手段22の気体流通部126で生成されたオゾンと酸素を含有する気体は、気体流通部126に接続された循環部24を介して、処理槽21内のケーシング25の外側の循環液流通部127を流れる循環培養液へ注入される。これにより、紫外線照射で発生した微量のオゾンを有効に利用してAOP処理をより効率的に行うことができる。なお、除菌浄化処理手段2の前段に浮遊懸濁成分除去のためのフィルター等の前処理装置(不図示)を設置することにより、循環培養液の浄化効果を更に高めることが可能な点で好ましい。
【0047】
処理槽21内の循環培養液中のオゾンの生成量が多すぎると栽培棚5へ循環する循環培養液中にオゾンが残存し、植物の変色等を生じさせることがある。本発明では、処理槽21内に外部からオゾンを供給するのではなく、処理槽21内、更には紫外線照射手段22の気体流通部126に空気を注入し、気体流通部126で酸素と紫外線とを反応させることにより微量のオゾンを発生させ、発生したオゾンと紫外線との反応によって酸化力の強いヒドロキシラジカルを生成させる。循環培養液は、酸処理手段1によってpHが7以下、更には6以下、より更には5.5以下となるように処理されているため、循環培養液中にオゾンを効率良く溶存できる。また、循環培養液中のオゾンは微量であり、更に後述する調整手段3でpH調整が行われることによって、植物等に悪影響が生じない程度に分解されるため、循環培養液中に溶存するオゾンの分解処理等を特別に設ける必要が無い。さらに、外部からのオゾン供給がないため、装置構成が簡易であり、ランニングコストの低減が可能である。よって、本発明によれば、循環培養液をより簡易かつ小型な設備で除菌浄化処理できる。
【0048】
以下に限定されるものではないが、本実施形態では、除菌浄化処理手段2における除菌浄化処理工程後、具体的には、除菌浄化処理手段2から排出された循環培養液中のオゾン濃度が0.005~0.5mg-O3/L-循環培養液、より典型的には0.01~0.4mg-O3/L-循環培養液、更に典型的には0.01~0.3mg-O3/L-循環培養液となるように、除菌浄化処理工程におけるオゾン処理が行われることが好ましい。
【0049】
調整手段3は、除菌浄化処理手段2を経た循環培養液に対し、pH調整剤を注入することで循環培養液のpHを植物の生育に適切なpHに調整する装置である。調整手段3は、典型的には、pH調整剤を貯留する貯留槽、薬注ポンプ、配管、その付随設備から構成される。調整手段3は、循環培養液とpH調整剤を撹拌する処理槽等を有していても良いし、循環培養液を流れる配管中に直接注入する形式としてもよい。
【0050】
調整手段3において用いられるpH調整剤としては、典型的にはアルカリ剤が利用できる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウムまたはこれらの水和物などが挙げられる。pH調整剤として液体肥料を使用することも可能である。この場合、液体肥料として水酸化カリウムの水溶液や水和物等を用いることで効率の良い処理が行える。pH調整剤の注入量は、循環培養液のpHが適正になる量であれば特に限定されない。調整手段3では、pHが5~7、より典型的には、pHが5.5~6.5となるようにpH調整剤が循環培養液中に注入される。また、調整手段3でpH調整剤を加えてpHが5~7となるように調整されることで、オゾンのラジカル化を促進できるため、循環培養液中の溶解性有機物等の分解処理を行いながら栽培棚5の植物の生育に適切なpHに調整できる。
【0051】
調整手段3の前段もしくは後段には、循環培養液のpHを測定するためのpH測定装置が配置されてもよい。これにより、pH測定装置の測定結果に応じて、pH調整剤の注入量を制御することが可能である。pH測定装置の測定結果に応じて、循環培養液中にりん酸、硝酸、硫酸等の酸が注入されても構わない。pH測定装置としては、特に限定されないが、pH計、pH電極、pHセンサなどが挙げられる。調整手段3によるpH調整処理後の循環培養液の水質を測定するために、全有機炭素計、色度計などを併せて設置することも可能である。
【0052】
調整手段3でpHが調整された循環培養液は、栽培棚5から排出される循環培養液を栽培棚5へと循環させる循環手段4によって栽培棚5へ循環される。循環手段4は、植物生産システム100内において、循環培養液を循環させるポンプ、配管、その付随設備から構成される。
図1には図示していないが、循環手段4には、循環培養液の流量計、圧力計、pH計、電気伝導率計、色度計、全有機炭素(TOC)計、酸化還元電位(ORP)計、溶存酸素濃度(DO)計、画像判断用のカメラ、またそれらに関わるセンサを任意の場所に設置可能である。
【0053】
本発明の第1の実施の形態によれば、除菌浄化処理手段2の紫外線照射手段22を介して2つの波長域の紫外線の照射を行うと同時に、気体注入手段23から紫外線照射手段22の気体流通部126へ酸素を含有する気体を注入して第2の紫外線を照射することで、少量のオゾンを生成させ、オゾンの存在下で第1の紫外線を照射することでヒドロキシラジカルを生成させる。その結果、紫外線とオゾンによるAOP処理が促進され、この促進効果によって、循環培養液中の除菌効果が促進でき、細菌や藻類の増加を長期間抑制できる。
【0054】
更に、本発明の第1の実施の形態によれば、従来のようにオゾンを外部から供給するものではなく、殺菌のための薬品も使用しないため、薬品未使用且つ低オゾン濃度での除菌浄化処理が提供できる。その結果、循環培養液への薬品の残留成分や残留オゾン濃度がほとんどなく、栽培棚5の植物の生育を阻害しない循環培養液が得られる。更に、本発明の実施の形態に係る循環培養液の処理装置によれば、酸処理手段1と調整手段3とを備えることにより、除菌浄化処理工程における酸化促進処理時の循環培養液中の金属イオンの酸化による色度の増加も抑制できる。これにより、循環培養液の成分変化を抑制し、長期間、細菌及び藻類等の繁殖を抑制しながら、簡易な装置で安全に除菌浄化処理を行うことが可能となる。
【0055】
図2に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段の循環手段4の循環ライン(配管)内に設けられており、循環手段4から取水された循環培養液の少なくとも一部に対して、酸処理手段1による酸処理、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理、調整手段3によるpH調整処理を行ってもよい。調整手段3を経た循環培養液は、循環手段4の循環ライン内の栽培棚5の上流側へと戻される。
図2に示す処理装置によれば、循環培養液の少なくとも一部を取水できる。循環培養液中の有機物、細菌及び藻類等の発生が少ない場合には循環培養液の一部を取水して除菌浄化処理を行って循環手段4へ戻すことができるため、循環培養液を全量処理する場合に比べて、より簡易で効率的な除菌浄化処理を行うことができる。
【0056】
図3に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段に接続された培養液槽10に設けられており、培養液槽10から取水された循環培養液の少なくとも一部に対して、酸処理手段1による酸処理、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理、調整手段3によるpH調整処理を行ってもよい。調整手段3を経た循環培養液は、培養液槽10または循環手段4へと戻される。
図3に示す処理装置によれば、循環培養液の少なくとも一部を取水し、培養液槽10または循環手段4へ戻すことができるため、循環培養液を全量取水して処理する場合に比べて効率的な処理が行える。また、除菌浄化処理後の循環培養液を一旦、培養液槽10へ返送することで、培養液槽10内において循環培養液の成分濃度を均一化できる。これにより、循環培養液中の成分濃度の変動が小さい循環培養液を安定的に栽培棚5へ供給することができる。
【0057】
(処理方法)
図1~
図3に示す第1の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理装置を用いて、循環培養液の除菌浄化処理を行うことができる。即ち、本発明の第1の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理方法は、植物生産システム100の循環培養液のpHが7以下となるように、循環培養液に酸を注入する酸注入工程と、酸を注入した後の循環培養液を処理槽21内に収容し、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線を循環培養液に照射し、処理槽21内においてオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線を、酸素を含有する気体に照射してオゾンを生成させ、オゾン及び酸素を含有する気体を循環培養液に注入して循環培養液をオゾン殺菌する除菌浄化処理工程と、除菌浄化処理工程後の前記循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整工程とを有する。
【0058】
第1の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理方法によれば、酸素の存在下で第1及び第2の紫外線を循環培養液に照射して、紫外線とオゾンによるAOP処理(UV-AOP処理)を行うことができる。よって、長期間、細菌及び藻類等の繁殖を抑制しつつ、除菌浄化処理を経た後も栽培棚5の植物の生育を阻害しない循環培養液が得られる。
【0059】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理装置は、
図4に示すように、酸処理手段1と、除菌浄化処理手段2と、調整手段3と、酸処理手段1と除菌浄化処理手段2との間に設けられ、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成させて生成した気泡を循環培養液へ注入する気泡注入手段6を備える。
【0060】
気泡注入手段6では、気体注入手段23から供給される酸素を含有する気体の一部を気泡注入手段6に注入することで微小な気泡を生成し、この気泡を循環培養液へ溶解させ、気泡を含む循環培養液を除菌浄化処理手段2へ送給する。気泡注入手段6で生成させる気泡径を小さくするほど、気泡が循環培養液中に溶解する時間が長くなる。そのため、気泡注入手段6で生成させる気泡径を小さくすることにより、循環培養液中に残存する気泡を多くし、これにより循環培養液中のDOをより好適な範囲に調整できる。
【0061】
気泡注入手段6としては特に限定されないが、エジェクター方式、インジェクター方式、旋回流方式、ベンチュリー方式、二相臨海流方式、回転翼負圧利用自吸方式(スタティックミキサー)、オーラジェット方式などの水流によるせん断力や旋回流を利用した装置、キャビテーションを利用した装置、加圧溶解による装置、多孔質膜を用いた装置等の種々の装置が利用可能である。
【0062】
中でも、第2の実施の形態で利用される気泡注入手段6としては、多孔質膜を備える気泡生成装置を用いることにより、装置を小型化及び簡略化できる点で好ましい。多孔質膜を備える気泡生成装置では、多孔質膜へ気体を供給し、多孔質膜の表面に発生した微細気泡を水流のせん断力によって流し、水中に微小な気泡を生成させる。気泡注入手段6ではコンプレッサー等から気体を気体注入手段23へ供給する気体供給ラインから分岐させた分岐ラインを介して気泡注入手段6へ気体を注入することができる。分岐ラインから分岐させる気体量を調整することで、気泡注入手段6が循環培養液へ注入する気体量の比と気体注入手段23が除菌浄化処理手段2へ供給する気体量の比を調整できる。
【0063】
以下に限定されるものではないが、本発明では、気泡注入手段6が循環培養液へ注入する気体量の比と気体注入手段23が除菌浄化処理手段2へ供給する気体量の比、即ち、循環培養液に供給される、酸素を含有する気体に対する気泡の供給比(気泡注入手段6の供給量/気体注入手段23の供給量)は、体積比で0.0超1.0未満とする。好ましくは、酸素を含有する気体に対する気泡の循環培養液への供給比が、体積比で0.1以上となるように、酸素を含有する気体及び気泡を注入することが好ましい。供給比は、0.2以上とすることがより好ましく、0.3以上とすることが好ましい。供給比は、0.9以下がより好ましく、0.2以上0.8以下が更に好ましく、0.3以上0.6以下がより更に好ましい。
【0064】
気泡注入手段6で生成させる気泡は、気泡径100μm以下、更には10μm以下のマイクロバブルとすることが好ましく、気泡径1000nm以下のウルトラファインバブルとすることが更に好ましい。マイクロバブルは、循環培養液中を収縮しながら浮力によってゆっくり浮上する。そのため、紫外線照射手段22によって第2の紫外線が照射される際に、気泡径1mm程度のミリバブルに比べて紫外線照射時間が長くでき、これによりオゾンの生成量を増大できる。
【0065】
ウルトラファインバブルは、一般的には、超微細気泡、又はナノバブルなどとも呼称され、気泡径が数十nmから1000nm(1μm)までの気泡を指す。ウルトラファインバブルは、気泡径が1μmから100μmの微細気泡として知られるマイクロバブル又はマイクロファインバブルとは区別される。ウルトラファインバブルの主な物性は、気泡径が非常に小さく上昇速度が非常に遅いため、液中に長期間存在可能であることと、気泡が圧壊する際にヒドロキシラジカルが生じることと、溶解効率が非常に高いことと、マイナスの表面電荷をもつことと、気泡と気泡とが近づくと反発すること等が報告されている。
【0066】
ウルトラファインバブルは、気泡径が微小なために浮力が小さいため、水中に数週間~数か月もの長期間残存でき、マイクロバブルよりも更に循環培養液中の滞留時間が長くなる。ウルトラファインバブルが循環培養液で消失することなく長期間滞留することによって、気泡注入手段6から栽培棚5まで酸素を高濃度で供給可能である。また、ウルトラファインバブルから生成させたオゾンを含む気泡、所謂オゾンウルトラファインバブルは、循環培養液中に長時間滞留し、気泡の圧壊又は紫外線照射手段22から照射される第2の紫外線と反応してヒドロキシラジカルを生成させる。ウルトラファインバブルは溶解効率が高いため、液中に溶解しにくいオゾンガスを外部から注入する場合に比べてその酸化作用、殺菌効果、脱色効果も高くなる。なお、気泡注入手段6は、マイクロバブル又はウルトラファインバブル生成時に、同時に副産物として、気泡径1μm~1mm程度のミリバブルを生成させてもよい。気泡径の異なる種々の気泡を生成させて循環培養液中へ注入することにより、循環培養液中のDOの維持と除菌浄化処理とを効率良く行うことができる。
【0067】
気泡注入手段6として、多孔質膜を用いた装置を利用してウルトラファインバブル又はマイクロバブルを生成させるためには、注入する気体の圧力を0.1MPa以上、更には0.5MPa以上とすることが好ましい。気体の圧力が高すぎると、装置維持の観点及び高圧処理の観点から効率的でない場合があるため、気体の圧力の上限値は例えば1MPa以下とすることができる。
【0068】
気泡注入手段6へ供給される気体は、空気が最も好ましいが、酸素、オゾン、二酸化炭素、水素等の任意の気体を更に含有させてもよいし、2種類以上の気体を同時に導入することも可能である。気泡注入手段6の前段に、浮遊懸濁成分除去のためのフィルターを設置することも可能である。気泡注入手段6による循環培養液への気泡を注入することにより、循環培養液中に高濃度に長時間気泡を存在させ、これによりオゾン生成時のオゾン濃度を向上できる。その結果、AOP処理時の処理を促進できる。また、循環培養液中に高濃度に気泡が残存することによる副次的な効果として、DO濃度の高い循環培養液を栽培棚5へ送ることができるため、栽培棚5の植物の生育を促進できる。
【0069】
第2の実施の形態によれば、気泡注入手段6を備えることより、気泡径100μm以下、好ましくは気泡径1000nm以下の気泡を循環培養液中に溶解させることができ、これにより気泡を含む循環培養液が除菌浄化処理手段2へ供給される。気泡径の小さい気泡、例えば気泡径1000nm以下の気泡は、循環培養液中に溶解すると、その気泡が除菌浄化処理手段2の処理槽21内で長期間滞留する。第2の紫外線の照射によって、気泡中の酸素からも微量のオゾンが生成される。生成されたオゾンと紫外線とヒドロキシラジカルとの反応によって除菌浄化処理手段2におけるAOP処理の処理効率は増大する。また、除菌浄化処理後も、循環培養液中に気泡が長期間残存することにより、循環培養液のDOを向上できるため、植物の生育に好適な循環培養液が作製できる。また、気泡注入手段6を備えることによって、循環培養液のDOを向上できるため、除菌浄化処理手段2に注入する空気量を低減できる。これにより、循環培養液へ注入する空気量を全体的に低減させて気泡注入のための動力を削減することができるため、より経済的且つ効率的な処理が行える。
【0070】
図5に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段の循環手段4の循環ライン内に設けられており、循環手段4から取水された循環培養液の少なくとも一部に対して、酸処理手段1による酸処理、気泡注入手段6による気泡注入処理、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理、調整手段3によるpH調整処理を行ってもよい。調整手段3を経た循環培養液は、循環手段4の循環ライン内の栽培棚5の上流側へと戻される。
【0071】
図6に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段に接続された培養液槽10に設けられており、培養液槽10から取水された循環培養液の少なくとも一部に対して、酸処理手段1による酸処理、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理、調整手段3によるpH調整処理を行ってもよい。調整手段3を経た循環培養液は、培養液槽10または培養液槽10を介さずに循環手段4へ戻される。
【0072】
(処理方法)
図4~
図6に示す第2の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理装置を用いて、循環培養液の除菌浄化処理を行うことができる。即ち、本発明の第2の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理方法は、植物生産システム100の循環培養液のpHが7以下となるように、循環培養液に酸を注入する酸注入工程と、気泡径100μm以下、更には1000nm以下の酸素を含有する気泡を生成させ、生成した気泡を除菌浄化処理工程で処理される循環培養液に注入する気泡注入工程と、酸を注入した後の循環培養液を処理槽21内に収容し、循環培養液を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線を循環培養液に照射し、処理槽21内においてオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線を、酸素を含有する気体に照射してオゾンを生成させ、オゾン及び酸素を含有する気体を循環培養液に注入して循環培養液をオゾン殺菌する除菌浄化処理工程と、除菌浄化処理工程後の循環培養液を植物の生育に適切なpHに調整する調整工程とを有する。
【0073】
第2の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理方法によれば、気泡注入手段6において、マイクロバブル又はウルトラファインバブルを生成させ、生成した気泡を循環培養液に注入する。マイクロバブル又はウルトラファインバブルは、気泡径1mm超の大きな気泡に比べて、処理槽21内を浮上する速度が遅いため、紫外線照射手段22による第2の紫外線の照射を長期間受けることができる。その結果、気体注入手段23からのみ、オゾンと酸素を含有する気体を循環培養液へ注入する場合に比べて、循環培養液中の気泡内の酸素からより多くのオゾンの発生が気体できる。その結果、除菌浄化処理手段2においてオゾンの発生量を増大させ、除菌浄化処理手段2におけるAOP処理をより効率的に行える。また、酸素を含む気体のウルトラファインバブルは液中に長時間滞留するため、栽培棚5の植物へ酸素を多く供給することが可能である。
【0074】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理装置は、
図7に示すように、循環培養液の電気伝導率を測定する電気伝導率計7と、循環培養液に液体肥料を注入する液肥手段8と、循環培養液のpHを測定するpH計9a、9bとを備える点が、
図1に示す処理装置と異なる。
【0075】
図7では、電気伝導率計7が調整手段3の後段の循環手段4に接続される例を示している。電気伝導率計7による循環培養液の電気伝導率の測定結果は、図示しない制御手段に出力される。制御手段では、循環培養液の電気伝導率の測定結果に基づいて、循環培養液の電気伝導率を、処理対象とする植物の生育に適切な電気伝導率に調整するように、例えば、液体肥料やpH調整剤等を循環培養液へ供給するように、所定の制御信号を出力する。或いは、循環培養液の電気伝導率の測定結果に基づいて、操作者が、手動で循環培養液に供給する液体肥料又はpH調整剤の添加量を調整することにより、循環培養液の電気伝導率を好適な値に調整してもよい。
【0076】
液肥手段8は、液体肥料を循環培養液に注入し、循環培養液中の肥料成分濃度を一定に維持するための装置である。液肥手段8は、貯留槽、薬注ポンプ、配管、その付随設備で構成される。
図7の例では、液肥手段8は、酸処理手段1、調整手段3及び調整手段3の後段の循環手段4に接続されている。
【0077】
循環培養液中の肥料成分の残留値は、電気伝導率計7によってモニタリングすることが可能である。そのため、液肥手段8の前段または後段に電気伝導率計7を設置し、自動制御によって必要量の液体肥料を注入するようにしてもよい。電気伝導率の範囲は、130mS/m以上が好ましく、140mS/m以上がより好ましく、150mS/m以上がさらに好ましい。電気伝導率の上限値は、例えば300mS/m以下とすることが好ましく、250mS/m以下とすることがより好ましい。
【0078】
pH計9a、9bは、酸処理手段1の後段と、調整手段3の後段にそれぞれ配置されている。pH計9aによって、酸処理手段1の後段で循環培養液のpHを測定及び監視することで、除菌浄化処理手段2へ供給される循環培養液のpHが適正範囲にあるかどうかを確認できる。除菌浄化処理手段2へ供給される循環培養液のpHが適正範囲(pH7以下、より好ましくは5以下)にない場合は、例えばpH調整剤を注入してpHを調整した後に、pH調整後の循環培養液を除菌浄化処理手段2へ供給することにより、循環培養液中の微量金属成分の酸化を抑制でき、循環培養液の色度上昇を抑制することができる。また、調整手段3を経た循環培養液のpHをpH計9bによって測定することにより、栽培棚5へ供給される循環培養液のpHを適正範囲に調整できる。これにより、栽培棚5での植物の生育を安定して行うことができる。
【0079】
図8に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段の循環手段4の循環ライン内に設けられており、循環手段4から取水された循環培養液の少なくとも一部に対して、酸処理手段1による酸処理、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理、調整手段3によるpH調整処理、及び液肥手段8による液体肥料の循環培養液への供給を行ってもよい。調整手段3を経た循環培養液は、循環手段4の循環ライン内の栽培棚5の上流側へと戻される。
【0080】
図9に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段に接続された培養液槽10に設けられており、培養液槽10から取水された循環培養液の少なくとも一部に対して、酸処理手段1による酸処理、除菌浄化処理手段2による除菌浄化処理、調整手段3によるpH調整処理及び液肥手段8による液体肥料の循環培養液への供給を行ってもよい。調整手段3を経た循環培養液は、循環手段4へと戻される。
【0081】
図10に示すように、
図8の処理装置に対して更に、酸処理手段1と除菌浄化処理手段2との間に接続された気泡注入手段6を設置してもよい。また、液肥手段8を、調整手段3でpH調整された循環培養液を循環手段4へ戻す注入口の後段に更に設け、循環手段4内を流れる循環培養液に対して液体肥料を供給するようにしてもよい。
図11に示すように、
図9の処理装置に対して更に、酸処理手段1と除菌浄化処理手段2との間に接続された気泡注入手段6を設置してもよい。
【0082】
(処理方法)
図7~
図11に示す第3の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理装置を用いて、循環培養液の除菌浄化処理を行うことができる。即ち、本発明の第3の実施の形態に係る植物生産システム100の循環培養液の処理方法は、第1の実施の形態に係る処理方法に加えて、循環培養液の電気伝導率を測定する工程と、循環培養液に液体肥料を注入する工程と、循環培養液のpHを測定する工程を更に含む。第3の実施の形態に係る処理方法によれば、電気伝導率計7、液肥手段8、及びpH計9a、9bを備えることにより、循環培養液の性状をより精度良く調整できる。
【0083】
(その他の実施の形態)
図12に示す例は、
図1~
図11の酸処理手段1の代わりに酸注入部11を備え、
図1~
図11の調整手段3の代わりにアルカリ注入部31を備え、アルカリ注入部31の後段に循環培養液を貯留するための培養液槽10を備える例を示している。培養液槽10の後段の循環手段4には、電気伝導率計7、液肥手段8、pH計9、9a、9bが接続されており、循環培養液の水質が測定できるようになっている。
【0084】
酸注入部11は、酸の貯留槽、薬注ポンプ、配管、その付随設備から構成され、循環手段4内に設けられた注入点から循環培養液中に酸を注入する。アルカリ注入部31は、アルカリの貯留槽、薬注ポンプ、配管、その付随設備から構成され、除菌浄化処理手段2で処理された循環培養液に対して循環手段4内に設けられた注入点から循環培養液中にアルカリを注入する。
図12においては、複数の栽培棚5が設けられている。複数の栽培棚5は、循環手段4に並列に接続されている。
図12に示す処理装置によれば、複数の栽培棚5に対してより均一且つ適切な成分で構成された循環培養液を循環供給することができる。
図13に示すように、栽培棚5と酸注入部11との間に接続された循環手段4にポンプ41が更に設けられていてもよい。
【0085】
図14に示す例は、複数の栽培棚5から排出された循環培養液が循環手段4を介して培養液槽10へ貯留され、培養液槽10内に貯留された循環培養液が循環手段4を介して複数の栽培棚5へ戻される構成を示している。循環培養液の取水箇所及び返送箇所は培養液槽10又は循環手段4に設けられている。
【0086】
図15に示すように、酸注入部11と除菌浄化処理手段2との間に気泡注入手段6が設けられていても良い。
図16に示すように、循環培養液の取水箇所及び返送箇所は、植物生産システム100の栽培棚5に接続された循環手段4の循環ライン内に設けられていてもよい。
図17に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5に接続された培養液槽10に設けられていてもよい。循環培養液の返送箇所は、培養液槽10を介さずに循環手段4へ直接接続されてもよい。
【0087】
図18に示す処理装置は、循環手段4の配管に設けられた注入部(不図示)に液体肥料を注入する液肥注入部81を備えていてもよい。液肥注入部81は、液体肥料の貯留槽、薬注ポンプ、配管、その付随設備から構成される。液体肥料の種類や数は特に限定されない。例えば、
図19に示すように、液肥注入部81a、81bが培養液槽10の前段及び後段の複数個所に設けられていてもよい。
図20に示すように、液肥注入部81a、81bが、培養液槽10への循環培養液の返送配管に設けられた注入点と、培養液槽10の後段の循環手段4に設けられた注入点とに接続されていてもよい。循環培養液の返送箇所は、培養液槽10に設けられていてもよいし、培養液槽10の後段の循環手段4に設けられてもよい。
【0088】
図21に示すように、
図15における酸注入部11に供する循環培養液の取水箇所が、植物生産システム100内の栽培棚5の後段の循環手段4内にあり、ポンプ41と、酸注入部11と、気泡注入手段6と、除菌浄化処理手段2と、アルカリ注入部31と、培養液槽10を介して、循環培養液を栽培棚5へ返送するように構成されてもよい。
【0089】
図22に示すように、循環培養液の取水箇所は、植物生産システム100の栽培棚5の後段に接続された培養液槽10に設けられており、培養液槽10から取水された循環培養液の少なくとも一部に対する酸注入処理、気泡注入処理、除菌浄化処理及びpH調整処理を行った後に、培養液槽10又は循環手段4へ戻すようにしてもよい。
【0090】
本発明の実施の形態によれば、循環培養液に対し2つの波長域の紫外線の照射と同時に空気を供給することで少量のオゾンを生成させ、紫外線とオゾンによるAOP処理が促進される。この促進効果によって除菌効果が促進され、細菌や藻類の増加抑制効果が得られる。また、本発明の実施の形態によれば、気泡注入手段6を配置することにより、気泡注入手段6で生成される気泡(ウルトラファインバブル)の酸素溶解効率が非常に高いことから、循環培養液中のDOを長期間高濃度に維持可能である。その結果、栽培棚5へ供給される循環培養液中のDOを適切な濃度に調整できる。また、このウルトラファインバブルに第2の紫外線を照射してオゾン(オゾンウルトラファインバブル)を生成させることで、オゾンの溶解を促進し、除菌効果も促進できる。
【実施例0091】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0092】
<装置構成>
図23に、試験に利用した循環培養液の処理装置の概略図を示す。本処理装置は、循環培養液を収容する原水槽101と、原水槽101中の循環培養液を取水して除菌浄化処理した後に再び原水槽101へ返送する培養液循環ライン104と、培養液循環ライン104に接続された除菌浄化処理手段120と、培養液循環ライン104に接続され、循環培養液に気泡を注入する気泡注入手段106とを備える。
【0093】
気泡注入手段106に酸素を含有する気体として空気を注入するため、気泡注入手段106にはエアコンプレッサ128を接続した。除菌浄化処理手段120へ酸素を含有する気体として空気を注入するため、操作盤110に付随するエアポンプ(不図示)を設け、空気注入ライン123に流量計と空気ドレンを設け、操作盤110に付随するエアポンプにより処理槽121内へ空気を注入させた。除菌浄化処理手段120の処理槽121内の中央部には、波長域185nm及び254nmの紫外線を照射可能な一本の紫外線ランプを設置し、紫外線ランプの外側にガラス製のケーシング125を設けた。ケーシング125内に形成した気体流通部126に空気注入ライン123から空気を注入した。空気注入ライン123からケーシング125内に供給された空気の一部から波長域185nmの紫外線照射によってオゾンガスを生成させた。空気及びオゾンガスは循環部124を介して除菌浄化処理手段2の処理槽121内の液相部分である循環液流通部127へ循環させて循環培養液中に注入させる構成とした。原水槽101には、撹拌機142を設置し、原水槽101に接続された循環ポンプ141から、培養液循環ライン104へ循環培養液を送給した。
【0094】
<試験条件>
表1に試験条件を示す。原水は植物工場Aから採取した循環培養液を使用し、全量を50Lとし、循環水量:15L/min、循環時間:10分、水温:20~30℃(無調整)とした。原水pHは、pH5~8の範囲で調整した。紫外線ランプの出力は110Wとし、紫外線照射量は0.37Wh/Lとし、紫外線照射時間は10分とした。紫外線照射量は、紫外線照射量=(紫外線出力×紫外線照射時間)÷(循環水量×循環時間)の式に基づき算出した。
【0095】
試験1に対しては気体の注入を行わず紫外線の照射のみを行い、試験2~8は、除菌浄化処理手段120のケーシング125内に気体を供給した。試験6~8では更に、気泡注入手段106でウルトラファインバブルを生成させて循環培養液に注入した。注入気体は空気とし、合計注入量を0.38~1.9L/minの範囲で調整した。気泡注入手段106への空気注入量(気泡注入量)は、試験7:0.19L/min、試験8:0.1L/minとした。表1中、「気液比」とは、循環培養液の循環水量に対する注入空気量(循環水量/注入空気量)の体積比を示す。ここでは、試験2~5、7:40、試験6:7.9、試験8:38とした。
【0096】
【0097】
<測定項目>
表2及び表3に原水及び処理水の水質分析結果を示す。測定項目は、pH、水温、DO(溶存酸素濃度)、電気伝導度、色度、濁度、一般細菌数、全マンガン(Mn)、溶解性Mn、全鉄(Fe)、溶解性Fe、一般細菌低減率、色度増加率とし、これら水質分析項目の測定方法については上水試験法(日本水道協会発行、上水試験方法)または下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)、JIS-K0102(日本産業規格)に準拠して測定した。電気伝導度は原水及び処理水に対して導電率計を用いて測定した。
【0098】
表2及び表3中の一般細菌低減率については、一般細菌低減率=(原水濃度-処理水濃度)÷原水濃度×100に基づいて算出した。「色度増加率」は、色度増加率=(処理水濃度-原水濃度)÷処理水濃度×100に基づいて算出した。溶解性成分の測定用サンプルは、孔径1mmのガラスろ紙を用いてろ過処理し、ろ過後のろ液を用いた。
【0099】
【0100】
【0101】
<除菌浄化処理への影響>
一般細菌低減率は、試験1:94.8%、試験2:97.8%、試験3:98.7%、試験4:99.1%、試験5:98.8%、試験6:97.4%、試験7:96.7%、試験8:97.0%で、除菌浄化処理時に2波長域の紫外線のみを照射した試験1よりも、2波長域の紫外線と空気を注入した試験2~8の方が良好な除菌浄化処理効果が得られている。即ち、紫外線照射のみよりも空気注入した場合の方が一般細菌数は低減することが分かる。そのため、除菌浄化処理手段120へ空気を注入した場合、紫外線照射のみよりも空気を注入した方の処理効果が向上することが分かる。
【0102】
<pH調整による影響>
色度増加率は、試験1:11%、試験2:50%、試験3:26%、試験4:高濃度濁度のため測定不可、試験5:5.6%、試験6:50%、試験7:40%、試験8が32%であった。また、原水にpH調整剤を添加して試験条件をpH7にした試験3、pH8にした試験4、pH5にした試験5は、試験3:1.5度、試験4:50度、試験5:1.0度であり、除菌浄化処理前の原水を7より大きくし、8に近づけることで濁度が急増した。また、原水をpH8に調整する際に原水が白濁し白色の沈殿物が析出した。これは、循環培養液中の肥料成分の金属イオンがアルカリ性条件下で水酸化物として析出したためと考えられる。色度増加等の成分変化を抑制するためには、pH条件は7以下、更には6以下、より更には5.5以下、より更には5以下とし、肥料成分の析出防止のためには、最終的な処理水をpH7以下とする必要があることが分かった。
【0103】
<気泡注入処理の影響>
循環培養液のpH調整を行わずに同一の合計気体注入量とした試験2及び試験7の比較において、気泡を注入していない試験2の一般細菌低減率は97.8%であり、気泡を注入した試験7では96.7%で、いずれも95%以上の十分に高い一般細菌低減率が得られた。一方で、処理水中のDOは試験2では7.7mg/Lであるのに対し、試験7では8.7mg/Lとなり、ウルトラファインバブルを注入した試験7の方が試験2よりも循環培養液中のDOが高くなった。また、試験7の合計気体注入量は、試験6の1/5程度であったが、試験6及び試験7の処理水DOはいずれも同等程度で高いDOを維持できた。即ち、
図23の空気注入ライン123を介した循環培養液への除菌浄化処理手段120への気体の注入と、気泡注入手段106によるウルトラファインバブル等の気泡の注入を併用し、気体の注入量を最適化することで、合計気体注入量を少なくしながら処理水のDOを高く維持できることが分かる。更に、除菌浄化処理手段120への気体の注入と、気泡注入手段106による循環培養液へのウルトラファインバブル等の気泡の注入を併用した試験7及び8の結果から、気泡の注入割合を大きくする方が、処理水DOを高く維持できることが分かった。このように、本実施形態によれば、一般細菌の増殖抑制を行いつつ、植物の生育促進に好適な処理水の高いDOが維持できることが分かる。
【0104】
<オゾン生成の影響>
波長域185nm及び254nmの紫外線を照射した後の試験5及び6の循環培養液について、除菌浄化処理手段120のケーシング内の気体を採取し、気体中のオゾン濃度を測定した。表4中「気中オゾン濃度」は、下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)に準じて測定した。表4中「空気注入量」は
図23の空気注入ライン123からの空気の注入流量を示し、「循環水量」は、除菌浄化処理手段120へ流入させる循環培養液の供給流量を示す。表4中「オゾン供給量」は気中オゾン濃度×空気流入量によって算出し、オゾン濃度は、循環培養液の循環水量に対するオゾン供給量によって評価した。気中オゾン濃度は、試験5:0.6mg-O
3/L-Air、試験6:0.3mg-O
3/L-Airであり、オゾン供給量は、試験5:0.014g-O
3/h、試験6:0.034g-O
3/hとなった。オゾン供給量濃度は、試験5:0.015mg-O
3/L-循環培養液、試験6:0.038mg-O
3/L-循環培養液であった。オゾン濃度は一般的なオゾン酸化処理の場合よりも低濃度であった。
【0105】
【0106】
このように、本試験によれば、循環培養液に第1及び第2の紫外線を照射する紫外線照射処理と酸素を含有する気体を注入する気体注入処理を有する除菌浄化処理を行うことにより、気体注入処理工程を有さない試験1よりも一般細菌を低減させることが可能であり、溶解性有機物も比較的低減傾向であった。また、試験5(pH5)の色度増加率は試験2~4(pH6~8)よりも低く、酸性条件では本装置による色度増加の抑制効果があることが確認できた。更に、試験7及び8によれば、循環培養液にウルトラファインバブル等の気泡を注入する処理を更に備えることにより、処理装置全体としては少ない空気注入量でより高いDOを維持でき、後段の栽培棚での植物の生育促進への効果が期待できることが分かった。更に、試験5及び6で生成されるオゾン濃度は低濃度であったが、紫外線のみよりも一般細菌低減および溶解性有機物の低減効果も大きく、本処理方法及び処理装置の有効性を確認できた。
【0107】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。なお、本発明では植物生産システムの循環培養液の除菌浄化処理を例に説明したが、循環培養液の代わりに、紫外線及びオゾンを用いた除菌浄化処理に好適な種々の被処理水に適用できる。このように、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。