(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095268
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】歯ブラシ柄及び歯ブラシ並びに歯ブラシ柄の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20240703BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61C17/22 E
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212431
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】仁井田 一成
(72)【発明者】
【氏名】小泉 正和
(72)【発明者】
【氏名】小林 正人
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB19
3B202DB01
3B202HA02
(57)【要約】
【課題】使用に耐え得る強度を維持しつつ、材料の使用量が削減された歯ブラシ柄及び歯ブラシと、これらを簡易に得ることが可能な歯ブラシ柄の製造方法とを提供する。
【解決手段】歯ブラシ柄1は、ブラシ8を取付け可能な歯ブラシ柄2である。柄2は、把持部5を備える。把持部5は、射出成形によって形成された少なくとも1つの閉空間Sを備える。歯ブラシ1は、柄2とブラシ8とを備える。歯ブラシ柄の製造方法は、柄を得るためのキャビティに、材料を充填することと、前記材料の充填後、前記成形キャビティの内部から、前記閉空間を形成するように当該成形キャビティの延在方向にガスを供給することと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシを取付け可能な歯ブラシ柄であって、
前記ブラシ柄は、把持部を備えており、
前記把持部は、射出成形によって形成された少なくとも1つの閉空間を備える、歯ブラシ柄。
【請求項2】
前記少なくとも1つの閉空間は、前記歯ブラシ柄の長手延在方向に間隔を空けて配置された複数の閉空間である、請求項1に記載された歯ブラシ柄。
【請求項3】
前記歯ブラシ柄の長手延在方向において、前記閉空間に隣接する2つの仕切部のうちの、少なくとも1つは、貫通孔又は凹部を備えており、
前記貫通孔又は前記凹部には、密封部が埋設されている、請求項1に記載された歯ブラシ柄。
【請求項4】
前記密封部は、前記把持部の表面のうちの少なくとも一部を覆う被覆部に連なっている、請求項3に記載された歯ブラシ柄。
【請求項5】
請求項1に記載された歯ブラシ柄と、ブラシと、を備えた、歯ブラシ。
【請求項6】
成形型を用いた成形によって、少なくとも1つの閉空間を備える歯ブラシ柄を得るための、歯ブラシ柄の製造方法であって、
歯ブラシ柄を得るための成形キャビティに、材料を充填することと、
前記材料の充填後、前記成形キャビティの内部から、前記閉空間を形成するように当該成形キャビティの延在方向にガスを供給することと、を含む、歯ブラシ柄の製造方法。
【請求項7】
前記材料及び前記ガスは、それぞれ、前記歯ブラシ柄の把持部成形側から当該歯ブラシ柄のヘッド成形側に向かって供給される、請求項6に記載された歯ブラシ柄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシ柄及び歯ブラシ並びに歯ブラシ柄の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯ブラシには、自然環境に配慮する目的で、歯ブラシ柄を天然の植物繊維で形成したものが知られている(例えば、「特許文献1」参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、他の環境対策として、樹脂使用量を削減することが求められることがある。
【0005】
上記従来の歯ブラシの把持部の内部には中空部が形成されており、当該中空部は、前記把持部の後端側に開口している。こうした構成の歯ブラシによれば、歯ブラシ柄を樹脂で形成したとき、樹脂使用量を削減することができる。
【0006】
しかしながら、上記従来の歯ブラシは、使用時に変形し易いという問題があり、樹脂使用量の削減と強度との両立という点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、使用に耐え得る強度を維持しつつ、材料の使用量が削減された歯ブラシ柄及び歯ブラシと、これらを簡易に得ることが可能な歯ブラシ柄の製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る、歯ブラシ柄は、ブラシを取付け可能な歯ブラシ柄であって、前記ブラシ柄は、把持部を備えており、前記把持部は、射出成形によって形成された少なくとも1つの閉空間を備える。
【0009】
(2)上記(1)の歯ブラシ柄において、前記少なくとも1つの閉空間は、前記歯ブラシ柄の長手延在方向に間隔を空けて配置された複数の閉空間であることが好ましい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の歯ブラシ柄であって、前記歯ブラシ柄の長手延在方向において、前記閉空間に隣接する2つの仕切部のうちの、少なくとも1つは、貫通孔又は凹部を備えており、前記貫通孔又は前記凹部には、密封部が埋設されていることが好ましい。
【0011】
(4)上記(1)~(3)の歯ブラシ柄であって、前記密封部は、前記把持部の表面のうちの少なくとも一部を覆う被覆部に連なっているものとすることができる。
【0012】
(5)本発明に係る、歯ブラシは、上記(1)~(4)のいずれか1つの歯ブラシ柄と、ブラシと、を備える。
【0013】
(6)本発明に係る、歯ブラシ柄の製造方法は、成形型を用いた成形によって、少なくとも1つの閉空間を備える歯ブラシ柄を得るための、歯ブラシ柄の製造方法であって、歯ブラシ柄を得るための成形キャビティに、材料を充填することと、前記材料の充填後、前記成形キャビティの内部から、前記閉空間を形成するように当該成形キャビティの延在方向にガスを供給することと、を含む。
【0014】
(7)上記(6)の、歯ブラシ柄の製造方法において、前記材料及び前記ガスは、それぞれ、前記歯ブラシ柄の把持部成形側から当該歯ブラシ柄のヘッド成形側に向かって供給されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用に耐え得る強度を維持しつつ、材料の使用量が削減された歯ブラシ柄及び歯ブラシと、これらを簡易に得ることが可能な歯ブラシ柄の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、歯ブラシの正面図であり、当該歯ブラシは、本発明の一実施形態に係る、歯ブラシ柄を備えている。
【
図4】
図1の歯ブラシ柄を、
図1のX-X断面相当で示す断面図である。
【
図5】本発明の、一実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法を適用可能な成形型の一例を部分的にかつ概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態に係る、歯ブラシ柄及び歯ブラシ並びに歯ブラシ柄の製造方法について説明をする。
【0018】
(歯ブラシ柄及び歯ブラシ)
図1には、本発明の一実施形態に係る、歯ブラシ1がブラシ8の側から示されている。歯ブラシ1は、本発明の一実施形態に係る、歯ブラシ柄2を備えている。
【0019】
歯ブラシ1は、歯ブラシ柄2と、複数のブラシ毛からなるブラシ8と、を備えている。歯ブラシ柄2には、ブラシ8が取付けられている。
【0020】
ここで、歯ブラシ柄2の長手延在方向は、長さ方向ともいう。また、歯ブラシ柄2の短手方向延在方向は、幅方向ともいう。さらに、ブラシ取付け穴(ブラシ8)の延在方向は、厚さ方向ともいう。
【0021】
上述のとおり、歯ブラシ柄2には、ブラシ8を取付けることができる。歯ブラシ柄2は、ヘッド部3と、ネック部4と、把持部5とを備えている。ブラシ8は、ヘッド部3に植毛されている。ネック部4は、ヘッド部3と把持部5とを連結している。ただし、ネック部4は、省略することができる。
【0022】
加えて、本実施形態において、歯ブラシ柄2は、把持部5の表面の一部を覆う被覆部6を備えている。本実施形態において、歯ブラシ柄2は、2つの被覆部6を備えている。
図1に示すように、2つの被覆部6の一方は、歯ブラシ柄2の正面側に配置されている。また、2つの被覆部6の他方は、
図2に示すように、歯ブラシ柄2の背面側に配置されている。
【0023】
図3を参照すれば、「正面側」とは、ブラシ8が取り付けられている側をいう。また、「背面側」とは、ブラシ8が取り付けられている側と反対側、即ち、正面側と反対側をいう。
【0024】
図4には、歯ブラシ柄2が、
図1のX-X断面相当で示されている。ここで、X-X断面は、歯ブラシ柄2の幅方向中心を通って当該歯ブラシ柄2の長さ方向に延在するとともに歯ブラシ柄2の幅方向に延在する面及び歯ブラシ柄2の長さ方向に延在する面に対して直交する面である。
【0025】
本実施形態において、2つの被覆部6の一方の正面側表面F1は、
図4に示すように、歯ブラシ柄2の把持部5の正面側表面とともに、平らな歯ブラシ柄2の正面側表面を形成している。また、本実施形態において、2つの被覆部6の他方の背面側表面F2もまた、
図4に示すように、歯ブラシ柄2の把持部5の背面側表面とともに、平らな歯ブラシ柄2の背面側表面を形成している。
【0026】
即ち、本実施形態において、歯ブラシ柄2の厚さ方向に配置された、把持部5の表面の少なくとも一部は、
図4に示すように、平らな面によって構成されている。ただし、被覆部6の表面(F1,F2)は、歯ブラシ柄2の厚さ方向に配置された、把持部5の表面の少なくとも一部を膨出させることができる。あるいは、被覆部6の表面(F1,F2)は、歯ブラシ柄2の厚さ方向に配置された、把持部5の表面の少なくとも一部を窪ませることができる。
【0027】
把持部5は、射出成形によって形成された少なくとも1つの閉空間Sを備えている。閉空間Sは、外部に通じる開口部を有しない、閉じられた空間である。これによって、歯ブラシ柄2、ひいては、当該歯ブラシ柄2を備える歯ブラシ1によれば、使用に耐え得る強度を維持しつつ、材料の使用量が削減される。さらに、歯ブラシ柄2、ひいては、歯ブラシ1によれば、把持部5に形成された空間が閉空間であることから、液体(例えば、水)等の侵入が防止されることによって衛生的である。
【0028】
従来の歯ブラシ柄は、その内部に中空部を備えており、当該中空部は、開口部を通して外界に通じている。しかしながら、こうした中空部を把持部に設けた場合、歯ブラシの使用時に、歯ブラシ柄が受けるモーメント力によって、把持部が変形することがある。
【0029】
これに対し、本実施形態に係る歯ブラシ柄2の把持部5の内部には、閉空間Sが形成されている。把持部5の内部に閉空間Sを形成したことによって、当該閉空間Sの分だけ、歯ブラシ柄2の製造に要する材料(例えば、樹脂)を削減することができる。
【0030】
加えて、閉空間Sには、当該閉空間Sを外部に通じさせる開口部が存在しない。例えば、閉空間Sの長さ方向に隣接する2つの部分はそれぞれ、仕切部5aによって仕切られている。仕切部5aは、植物の竹の節のように、歯ブラシ1の使用時に、歯ブラシ柄2が受けるモーメント力に起因する変形を抑制する。即ち、仕切部5aは、把持部5のうちの、閉空間Sが形成されている領域の部分を補強する。
【0031】
したがって、
図4の歯ブラシ柄2によれば、仕切部5aによって使用に耐え得る強度を維持しつつ、閉空間Sが形成されることによって、材料の使用量が削減される。ひいては、
図1の歯ブラシ1によれば、仕切部5aによって使用に耐え得る強度を維持しつつ、閉空間Sが形成されることによって、材料の使用量が削減される。
【0032】
ところで、
図4に示すように、閉空間Sは、複数であることが好ましい。本実施形態において、少なくとも1つの閉空間Sとは、長手方向に間隔を空けて配置された複数の閉空間Sである。この場合、閉空間Sが複数となることにより、歯ブラシ柄2の製造に要する材料をさらに削減することができる。また、この場合も、閉空間Sの間の仕切部5aはそれぞれ、植物の竹の節のように、把持部5のうちの、閉空間Sが形成されている領域の部分を補強する。したがって、この場合、仕切部5aによって使用に耐え得る強度を維持しつつ、材料(樹脂)の使用量がさらに削減される。
【0033】
本実施形態において、把持部5は、2つの閉空間Sを備えている。ただし、閉空間Sは、3つ以上とすることができる。
【0034】
長さ方向において、閉空間Sに隣接する2つの仕切部5aのうちの、少なくとも1つが貫通孔又は凹部を備えている場合、前記貫通孔又は前記凹部には、密封部7が埋設されていることが好ましい。この場合、歯ブラシ柄2の表面は、凹凸の少ない滑らかな表面となる。
【0035】
本実施形態において、長さ方向において、閉空間Sに隣接する3つの仕切部5aのうちの、2つの仕切部5aは貫通孔5bを備えている。貫通孔5bには、それぞれ、密封部7が埋設されている。これによって、本実施形態において、歯ブラシ柄2の表面は、凹凸の少ない滑らかな表面となる。ただし、貫通孔5bは、上述のとおり、歯ブラシ柄2を貫通しない凹部に置き換えることもできる。この場合もまた、前記凹部には、密封部7を埋設することができる。
【0036】
密封部7は、把持部5の表面のうちの少なくとも一部を覆う被覆部6に連なっていることが好ましい。この場合、密封部7を被覆部6とともに一体的に形成することができる。
【0037】
密封部7は、樹脂を用いて成形することができる。本実施形態において、密封部7は、2つの被覆部6のそれぞれに連なっている。さらに、本実施形態において、2つの密封部7は、2つの被覆部6を介して一体的に連なっている。これによって、本実施形態において、密封部7は、被覆部6とともに一体的に形成することができる。本実施形態において、密封部7は、被覆部6とともに、エラストマ等の弾性材料によって一体的に成形されている。本実施形態において、密封部7は、例えば、二色成形、インサート成形等によって、被覆部6とともに射出成形することができる。
【0038】
次に、
図5には、本発明に係る、一実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法を適用可能な成形型の一例が部分的にかつ概略的に示されている。
【0039】
(歯ブラシ柄の製造方法)
本実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法は、成形型10を用いた成形によって、少なくとも1つの閉空間Sを備える歯ブラシ柄2を得るための、歯ブラシ柄の製造方法である。本実施形態は、歯ブラシ柄2を得るための成形キャビティCに、材料Mを充填することと、前記材料Mの充填後、前記成形キャビティCの内部から、前記閉空間Sを形成するように当該成形キャビティCの延在方向にガスGを供給することと、を含む。
【0040】
本実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法によれば、成形型10の成形キャビティCの内部に材料M及びガスGを供給することによって、使用に耐え得る強度を維持しつつ、材料の使用量が削減された歯ブラシ柄2及び歯ブラシ1を簡易に得ることができる。
【0041】
加えて、本実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法において、材料M及びガスGは、それぞれ、歯ブラシ柄2の把持部成形側から当該歯ブラシ柄2のヘッド成形側に向かって供給されるものとすることができる。本実施形態では、材料Mの供給ゲート13aは、歯ブラシ柄2のヘッド部3と長さ方向において反対側に位置する把持部5の長さ方向端部に設けることが好ましい。また、本実施形態では、ガスGの供給ゲート14aは、歯ブラシ柄2の長さ方向の途中に設けることが好ましい。さらに、本実施形態では、材料Mの供給ゲート13aと、ガスGの供給ゲート14aとのそれぞれを、ヘッド部3に向かって指向させることが好ましい。この場合、材料Mと、ガスGとが同じ方向に射出(噴射)されることで、成形性を向上させることができる。したがって、この場合、歯ブラシ柄2の内部に、均一な閉空間Sを簡易に形成することができる。
【0042】
図5を参照すれば、成形型10は、上型11と下型12とを備えている。本実施形態では、上型11を可動型とし、下型12を固定型とする。これによって、上型11と下型12との間は、上型11の上下動によって開閉させることができる。ただし、成形型10によれば、上型11を固定型とし、下型12を可動型とすることも可能である。
【0043】
図5に示すように、上型11と下型12とを合わせたとき、上型11と下型12との合わせ面F10には、歯ブラシ柄2を得るための成形キャビティCが形成される。
【0044】
以下の説明において、
図5の成形型10によって製造される、歯ブラシ柄2は、被覆部6が無いものとする。ただし、
図5の成形型10は、成形キャビティCの内部形状を適宜変更することによって、
図1の歯ブラシ1に採用された歯ブラシ柄2を成形することができる。
【0045】
成形型10は、成形キャビティCの内部に樹脂Mを供給する樹脂供給路13と、成形キャビティCの内部にガスGを供給するガス供給路14と、を備えている。
【0046】
本実施形態において、樹脂供給路13は、供給ゲート13aを通して、成形キャビティCの内部に通じている。本実施形態において、供給ゲート13aは、合わせ面F10に形成されている。また、本実施形態において、供給ゲート13aは、歯ブラシ柄2の把持部成形側から当該歯ブラシ柄2のヘッド成形側に向かって指向している。
図5では、供給ゲート13aは、図面左側から右側に向かって指向している。樹脂供給路13から供給された樹脂Mは、供給ゲート13aを通して、成形キャビティCの内部に射出(供給)される。
【0047】
本実施形態において、ガス供給路14は、成形キャビティCの内部から、成形キャビティCの延在方向にガスGを供給する。本実施形態において、成形キャビティCの延在方向は、歯ブラシ柄2の長手延在方向(
図5では、図面左右方向)である。本実施形態において、ガスGは、合わせ面F10の延長線上で供給される。
【0048】
本実施形態において、成形キャビティCの内部には、2つのガス供給ノズル部15が配置されている。
【0049】
図6には、
図5の成形型10の領域Aが拡大して示されている。
【0050】
図6に示すように、本実施形態において、2つのガス供給路14は、それぞれ、ガス供給ノズル部15の内部に形成されている。ガス供給ノズル部15の側壁15sには、ガス供給路14を外部に開放する供給ゲート(噴出口)14aが形成されている。これによって、ガスGは、ガス供給ノズル部15に形成された供給ゲート14aを通して、キャビティCの内部に噴射させることができる。本実施形態において、2つの供給ゲート14aは、それぞれ、樹脂供給路13の供給ゲート13aと同様に、歯ブラシ柄2の把持部成形側から当該歯ブラシ柄2のヘッド成形側に向かって指向している。
【0051】
ここで、
図5を参照して、成形型10を用いた、歯ブラシ柄の製造方法の一例について説明をする。
【0052】
この例ではまず、上型11と下型12とを閉じることによって、上型11と下型12との合わせ面F10に成形キャビティCを形成する。
【0053】
次いで、供給ゲート13aを通して成形キャビティCの内部に樹脂Mを射出(供給)する。樹脂Mには、本実施形態ではポリアセタール樹脂(POM)を使用したが、その他の例としては、例えば、AS樹脂(アクリロニトリル‐スチレン樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PLA(ポリ乳酸)など使用することができる。
【0054】
そして、樹脂Mの射出開始後、速やかに供給ゲート14aを通して成形キャビティCの内部にガスGを噴射する。ガスGの噴射は、例えば、樹脂Mの噴射から0.1秒~1秒後に開始する。ガスGの圧力としては、例えば、1.5MPa~28MPaの範囲、本実施形態では具体的には、4MPaが挙げられる。ガスGの噴射(供給)は、成形が終了するまで継続させているが、成形品が冷却されれば供給を止めることができる。ガスGとしては、例えば、空気、窒素等の、樹脂Mに対して不活性のガスが挙げられる。
【0055】
樹脂M及びガスGの供給後、成形型10の温度が下がったことを見計らって、上型11と下型12とを開くことによって、成形キャビティCの内部から、成形品としての歯ブラシ柄2を取り出す。これによって、閉空間Sを備えた歯ブラシ柄2を射出成形することができる。なお、本実施形態において、歯ブラシ柄2の取り出しは、押出しピン16を用いて行う。ただし、歯ブラシ柄2の取り出し手段は、押出しピン16に限定されるものではなく、既存の様々な手段を採用することができる。
【0056】
この例では、成形型10の型締めと、樹脂Mの供給と、ガスSの供給と、成形型10の型開きと、成形品(歯ブラシ柄2)の取り出しという、単純な工程を経て、歯ブラシ柄2を得ることができる。したがって、成形型10を用いた、本実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法によれば、使用に耐え得る強度を維持しつつ、樹脂Mの使用量が削減された歯ブラシ柄2を簡易に得ることができる。
【0057】
歯ブラシ柄2を備えた歯ブラシは、従来と同様に、歯ブラシ柄2にブラシ8を植毛することによって形成することができる。なお、上述の歯ブラシ1の場合は、成形型10から取り出した歯ブラシ柄2に対して被覆部6を成形するための成形を追加で行う。このように、成形型10を用いた、本実施形態に係る、歯ブラシ柄の製造方法によれば、使用に耐え得る強度を維持しつつ、樹脂Mの使用量が削減された歯ブラシを簡易に得ることができる。
【0058】
加えて、この例では、樹脂Mの供給ゲート13a及びガスGの供給ゲート14aは、それぞれ、歯ブラシ柄2の把持部成形側から当該歯ブラシ柄2のヘッド成形側に向かって指向している。本実施形態では、材料Mの供給ゲート13aは、歯ブラシ柄2のヘッド部3と長さ方向において反対側に位置する把持部5の長さ方向端部に設けられている。また、本実施形態では、ガスGの供給ゲート14aは、歯ブラシ柄2の長さ方向の途中に、具体的には、把持部5の途中に設けられている。さらに、本実施形態では、材料Mの供給ゲート13aと、ガスGの供給ゲート14aとのそれぞれを、ヘッド部3に向かって指向させている。この場合、材料Mと、ガスGとが同じ方向に射出(噴射)されることで、成形性を向上させることができる。したがって、この場合、歯ブラシ柄2の内部に、均一な閉空間Sを簡易に形成することができる。
【0059】
以上、本発明の例示的な実施形態に係る、歯ブラシ柄及び歯ブラシ並びに歯ブラシ柄の製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で、様々に変更することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:歯ブラシ, 2:ブラシ柄, 3:ヘッド部, 4:ネック部, 5:把持部,
5a:仕切部, 5b:貫通孔(凹部), 6:被覆部, 7:埋設部, 8:ブラシ, 10:成形型, 11:上型, 12:下型, 13:材料供給路, 13a:供給ゲート, 14:ガス供給路, 14a:供給ゲート(噴射口), 15:ガス供給ノズル部, 16:押出しピン, C:成形キャビティ, F1:把持部の正面側表面, F2:把持部の背面側表面