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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009527
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1347 20060101AFI20240116BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20240116BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02F1/1347
G02F1/1339 505
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111118
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 洋祐
【テーマコード(参考)】
2H189
2H291
【Fターム(参考)】
2H189AA22
2H189AA35
2H189DA72
2H189HA06
2H189HA16
2H189LA13
2H189LA17
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB02
2H291LA22
(57)【要約】
【課題】
表示パネルと輝度調整パネルを重複して配置した液晶表示装置において、表示パネルと輝度調整パネルの接着領域における、水分による偏光板の劣化を防止する。
【解決手段】第1のTFT基板300と第1の対向基板500が第1のシール材110で接着した第1の液晶パネル20の上面に第2の偏光板40が貼り付けられ、第2のTFT基板100と第2の対向基板200が第2のシール材110で接着した第2の液晶パネル10の下面に第3の偏光板50が貼り付けられ、前記第1の液晶パネル20と第2の液晶パネル10とが重複して配置し、前記第1の対向基板500の周辺部と前記第2のTFT基板100の周辺部が第3のシール材120によって接着し、前記第2の偏光板40と前記第3の偏光板50は、前記第3のシール材120の内側に配置し、前記第2の偏光板40と前記第3の偏光板50は接着層70によって接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のTFT基板と第1の対向基板が第1のシール材で接着した第1の液晶パネルの下面に第1の偏光板が貼り付けられ、上面に第2の偏光板が貼り付けられ、
第2のTFT基板と第2の対向基板が第2のシール材で接着した第2の液晶パネルの下面に第3の偏光板が貼り付けられ、上面に第4の偏光板が貼り付けられ、
前記第1の液晶パネルと第2の液晶パネルとが重複して配置した液晶表示装置であって、
前記第1の対向基板の周辺部と前記第2のTFT基板の周辺部が第3のシール材によって接着し、
前記第2の偏光板と前記第3の偏光板は、前記第3のシール材の内側に配置し、前記第2の偏光板と前記第3の偏光板は接着層によって接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記接着層は、OCAであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記接着層は、OCRであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第3のシール材の材料は、前記第1のシール材、または、前記第2のシール材と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第3のシール材の厚さは、前記第1のシール材または前記第2のシール材の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第3のシール材の幅は、前記第1のシール材または前記第2のシール材の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の液晶パネルの表示領域の周辺、または、前記第1の液晶パネルの周辺には額縁領域が遮光層によって形成され、前記額縁領域の幅は、前記第3のシール材の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2の液晶パネルは表示パネルであり、前記第1の液晶パネルは輝度調整パネルであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
第1のTFT基板と第1の対向基板が第1のシール材で接着した第1の液晶パネルの下面に第1の偏光板が貼り付けられ、上面に第2の偏光板が貼り付けられ、
第2のTFT基板と第2の対向基板が第2のシール材で接着した第2の液晶パネルの下面に第3の偏光板が貼り付けられ、上面に第4の偏光板が貼り付けられ、
前記第1の液晶パネルと第2の液晶パネルとが重複して配置した液晶表示装置であって、
前記第1の対向基板の周辺部と前記第2のTFT基板の周辺部が第3のシール材によって接着し、
前記第2の偏光板と前記第3の偏光板は、前記第3のシール材の内側に配置し、前記第2の偏光板と前記第3の偏光板の間にはオイルが存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
前記オイルの屈折率は、1.43乃至1.55であることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記オイルの屈折率は、1.48乃至1.52であることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記オイルはイマージョンオイルであることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記第3のシール材の材料は、前記第1のシール材、または、前記第2のシール材と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記第3のシール材の厚さは、前記第1のシール材または前記第2のシール材の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記第3のシール材の幅は、前記第1のシール材または前記第2のシール材の幅よりも大きいことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記第2の液晶パネルの表示領域の周辺、または、前記第1の液晶パネルの周辺には額縁領域が遮光層によって形成され、前記額縁領域の幅は、前記第3のシール材の幅よりも大きいことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記第2の液晶パネルは表示パネルであり、前記第1の液晶パネルは輝度調整パネルであることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルを複数重ねて用いることによって、高コントラストを実現する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置において、コントラストを向上させるために、表示パネルに重畳して、輝度調整のみ行う輝度調整パネルを使用することが知られている。すなわち、黒表示部分には、輝度調整パネルによってバックライトを遮断して、より深い黒を実現するものである。
【0004】
特許文献1には、2枚の液晶表示パネルを重ねて配置することによってコントラストの高い画像を実現する構成が記載されている。また、特許文献1には、2枚の液晶表示パネルを重ねるための、組み立て方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-131775
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶は偏向光のみ制御することが出来るので、液晶表示パネルの下側と上側に偏光板を貼り付けて使用する。偏光板の構造は、PVA(Poly Vinyl Alchol)にヨウ素化合物を含侵させた構成の偏光素子をTAC(Tri Acetate)等の保護層で挟んだ構成である。
【0007】
以後、本明細書では、画像を表示する液晶表示パネルを表示パネルといい、ローカルに輝度を調整する液晶表示パネルを輝度調整パネルと呼ぶ。表示パネルを上側に配置し、輝度調整パネルを下側に配置するように接着すると、表示パネルの下偏光板と輝度調整パネルの上偏光板が接着することになる。
【0008】
偏光板の保護層を構成するTACは吸湿性がある。一方、偏光素子を構成するPVAは湿気が存在すると変質しやすい。また、これに熱が加わると変質が加速し、透過率が低下したり、透過率にムラが生じたりする。表示パネルと輝度調整パネルを重ねて使用すると、2枚の偏光板が重なることになる。すなわち、吸水性の高いTAC層が2層、接着材を挟んで存在する構成が2セット重ねて存在することになり、この領域の湿度が高くなる。そうすると、PVAで構成される偏光素子が劣化し、画質を低下させることになる。
【0009】
本発明の課題は、以上の問題点を解決し、画像のコントラストが高く、かつ、信頼性の高い、液晶表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0011】
(1)第1のTFT基板と第1の対向基板が第1のシール材で接着した第1の液晶パネルの下面に第1の偏光板が貼り付けられ、上面に第2の偏光板が貼り付けられ、第2のTFT基板と第2の対向基板が第2のシール材で接着した第2の液晶パネルの下面に第3の偏光板が貼り付けられ、上面に第4の偏光板が貼り付けられ、前記第1の液晶パネルと第2の液晶パネルとが重複して配置した液晶表示装置であって、前記第1の対向基板の周辺部と前記第2のTFT基板の周辺部が第3のシール材によって接着し、前記第2の偏光板と前記第3の偏光板は、前記第3のシール材の内側に配置し、前記第2の偏光板と前記第3の偏光板は接着層によって接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【0012】
(2)第1のTFT基板と第1の対向基板が第1のシール材で接着した第1の液晶パネルの下面に第1の偏光板が貼り付けられ、上面に第2の偏光板が貼り付けられ、第2のTFT基板と第2の対向基板が第2のシール材で接着した第2の液晶パネルの下面に第3の偏光板が貼り付けられ、上面に第4の偏光板が貼り付けられ、前記第1の液晶パネルと第2の液晶パネルとが重複して配置した液晶表示装置であって、前記第1の対向基板の周辺部と前記第2のTFT基板の周辺部が第3のシール材によって接着し、前記第2の偏光板と前記第3の偏光板は、前記第3のシール材の内側に配置し、前記第2の偏光板と前記第3の偏光板の間にはオイルが存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】輝度調整パネルを有する表示装置の分解斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4】偏光板の断面図である。
図5】実施例1の液晶表示装置の断面図である。
図6図5のシール部の詳細断面図である。
図7】液晶表示パネルの平面図である。
図8】輝度調整パネルの平面図である。
図9図5の構成を実現する第1の実施形態によるプロセスフローの例を示す断面図である。
図10図9の工程に続く工程を示す断面図である。
図11図10の工程に続く工程を示す断面図である。
図12図5の構成を実現する第2の実施形態によるプロセスフローの例を示す断面図である。
図13図12の工程に続く工程を示す断面図である。
図14図13の工程に続く工程を示す断面図である。
図15】実施例2の液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の内容を、実施例を用いて説明する。
【実施例0015】
図1は、本発明における液晶表示装置の分解斜視図である。図1において、第1液晶表示パネル10(以後表示パネル10)と第2液晶表示パネル20(以後輝度調整パネル20)が重ねて使用される。輝度調整パネル20の背面にバックライト1000が配置している。この方式はローカルディミングと呼ばれることもある。すなわち、画像において、黒表示される領域には、光を照射しない。これによって、非常にコントラストの高い画像を実現することが出来る。
【0016】
表示パネル10と輝度調整パネル20は同じ液晶表示パネルを用いてもよいが、表示装置全体としての画面の輝度、画質の向上のために、表示パネル10と輝度調整20パネルの仕様は、一部変えている。例えば、全体として輝度を向上させるために、カラーフィルタは輝度調整パネル20には使用されない。また、表示パネル10と輝度調整パネル20の間におけるモアレ等の干渉を防止するために、配線構成を表示パネル10と輝度調整パネル20との間で異ならせる等の対策がとられる場合もある。
【0017】
図2は、図1の構成を組み立てた状態における図1のA-A断面図である。図2において、上側に配置する表示パネル10は配線やTFTが形成されたTFT基板100と対向基板200で構成され、TFT基板100と対向基板200との間に、液晶層300が挟持され、画素毎にバックライトからの光を制御する。
【0018】
TFT基板100と対向基板200とは、周辺においてシール材110で接着している。シール材110の幅は接着の信頼性が保てる範囲で、出来るだけ小さく形成される。液晶は、偏光光のみ制御できるので、表示パネル10の下側には、下偏光板50が配置し表示パネル10の上側には、上偏光板60が配置している。
【0019】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分には、端子領域が形成されている。端子領域には、表示パネル10を駆動するためのドライバIC180等が配置されている。一方、TFT基板100と対向基板200が重複している部分には表示領域が形成されている。
【0020】
図2において、対向基板200には、カラー画像を形成するためのカラーフィルタ201が形成されている。Rは赤カラーフィルタ、Gは緑カラーフィルタ、Bは青カラーフィルタである。カラーフィルタとカラーフィルタの間及び表示領域の周辺の額縁領域には遮光層202が形成されている。
【0021】
遮光層202は、表示領域では、画像のコントラストを向上させる役割を有する。周辺の額縁領域には、走査線引き出し線、走査線駆動回路等、多くの配線が集中するので、これらの配線からの反射等を防止するために、遮光が必要である。そこで、額縁領域の遮光膜として遮光層202が形成されている。この部分の遮光層202の幅、すなわち、額縁領域の幅は、多くの周辺配線に対して遮光をする必要があるので、シール材110の幅よりも大きく形成される。
【0022】
図2において、輝度調整パネル20が表示パネル10の下側に配置している。輝度調整パネル20の構造は、表示領域の画素構造を除いて、表示パネル10の構造と基本的には同じである。すなわち、配線やTFT等が形成されたTFT基板400と対向基板500が対向し、TFT基板400と対向基板500との間に液晶層300が存在している。TFT基板400と対向基板500の周辺はシール材110によって接着している。シール材110は、表示パネル10側のシール材110と同様、幅は小さい。
【0023】
TFT基板400は対向基板500よりも大きく形成され、TFT基板500が1枚になっている部分には、端子領域が形成されている。端子領域には、表示パネルを駆動するためのドライバIC180等が配置されている。一方、TFT基板400と対向基板500が重複している部分には表示領域が形成されている。
【0024】
輝度調整パネル20の対向基板500には、カラーフィルタは形成されていない。輝度調整パネル20の光透過率を低下させないためである。しかし、遮光層202は、表示パネル10の対向基板200と同様、輝度調整パネル20の対向基板500においても形成されている。表示領域周辺における配線領域を遮光する必要性は輝度調整パネル20においても表示パネル10と同様だからである。輝度調整パネル20においても、周辺領域における遮光層202の幅、すなわち、額縁領域の幅は、シール材110の幅よりも大きい。
【0025】
一方、輝度調整パネル20の表示領域においては、表示領域の映像信号線の代わりに輝度信号線21が形成されているが、輝度信号線21に合わせて遮光層202が形成されている。配線からの反射を防止するためであるが、輝度信号線21のピッチは映像信号線2のピッチよりも大きいので、輝度調整パネル20の表示領域に形成される遮光層202のピッチも表示パネル10における遮光層202のピッチよりも大きくなっている。
【0026】
図2において、表示パネル10と輝度調整パネル20が接着材、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)によって接着している。具体的には、表示パネル10の下偏光板50と輝度調整パネル20の上偏光板40が接着材70によって接着している。接着材(OCA)70は、アクリル系、シリコーン系等の樹脂で形成されているので、水分を吸収しやすい。
【0027】
図2において、輝度調整パネル20の背面にバックライト1000が配置している。バックライト1000には、LEDアレイが使用される。LEDは高輝度を得ることができるが、同時に発熱も大きい。この熱は、輝度調整パネル20を通過して、輝度調整パネル20と表示パネル10の間の2枚の偏光板40、50及びOCA70に到達する。偏光板の偏光素子は、水分を吸着しやすいTACで挟持されているので、水分と熱にさらされる。そうすると、偏光素子を構成するPVAの劣化が進む。
【0028】
図3は、図1のB-B断面図である。図3は、端子領域が存在しない他は、図2と基本的には同じである。ところで、図3において、表示パネル10の対向基板200に形成されている、カラーフィルタの画素構造は、A-A断面とB-B断面とは、必ずしも同一ではないが、図2及び図3では、模式図なので、わかりやすくするために、同じ構造として描いている。表示パネル10における遮光層202で区画される画素構成についても同様である。その他の構成は、図2で説明したのと同様なので、説明を省略する。
【0029】
図2及び図3に示すように、表示パネル10と輝度調整パネル20はOCA70によって接着している。具体的には、輝度調整パネル20に貼り付けられた偏光板40と表示パネル10に貼り付けられた偏光板50をOCA70によって接着している。偏光板40、50もOCA70も樹脂で形成されるので、水分を吸収し易い。
【0030】
すなわち、OCA70の付近では、水分を含みやすい層が複数重なることになる。このような構造において、図2及び図3に示すように、偏光板40、50やOCA70の側面から、白矢印Mで示すように水分が侵入すると、偏光板40、50等に水分が滞留しやすくなり、この水分によって偏光板40、50の劣化が進行する。
【0031】
図4は偏光板の構造の例としての、偏光板40の断面図である。偏光板40は、偏向作用を有する偏光素子41を保護層42で挟んだ構成であり、保護層42の一方に、輝度調整パネル20の対向基板500と接着するための粘着層43が形成された構成である。他の偏光板30、50、60も同じ構成である。
【0032】
偏光素子41は、PVAを主体にし、ヨウ素(I)化合物を含侵させて形成される。厚さt1は、例えば20μmである。保護層42は、TACで形成され、厚さt2は、例えば40μmである。TAC42は親水性であるので、吸湿しやすく、吸湿すると膨張する。一方、TAC42は偏光素子41を紫外線から保護するために、紫外線を吸収する必要があるので、ある程度の厚さが必要である。粘着層43は、TFT基板100あるいは対向基板200との接着力を十分に保つだけの厚さが必要であり、厚さt3は例えば25μmである。そうすると、1枚の偏光板40の厚さは、125μm程度になる。
【0033】
一方、OCA70の厚さは、例えば150μmである。したがって、OCA70と2枚の偏光板40、50の合計の厚さは400μm程度となり、図2及び図3の白矢印Mで示すように、側面から水分が侵入しやすくなる。以後偏光板40、50及び接着層70を含んだ領域を接着領域と呼ぶこともある。この接着領域は、ガラスで形成されたTFT基板100及び対向基板200で上面と下面を覆われているので、侵入した水分は接着領域に滞留する。
【0034】
そうすると、偏光素子41は常に水分に晒されることになる。偏光素子41を構成するPVAは、水分の存在によって、加水分解し、変質する。具体的には、透過率が不均一になったり低下したりする。そして、加水分解は、熱の存在によってさらに加速する。接着領域は、バックライトからの熱にさらされる。したがって、偏光素子41は、厳しい環境にさらされることにより、劣化が進行する。これは、液晶表示装置の寿命に大きく影響する。
【0035】
本発明は、以上のような問題を解決するものである。図5は、実施例1の断面図である。図5は、図1のB-B断面図に相当する。図5図3と大きく異なる点は、表示パネル10と輝度調整パネル20の接着をシール材120によって行っていることである。以後この部分のシール材を第2シール材120と呼び、表示パネル10あるいは輝度調整パネル20のTFT基板100と対向基板200等の接着で用いられるシール材を第1シール材110とも呼ぶこともある。
【0036】
図5の特徴は、第2シール材120によって、第2偏光板40、接着層70、第3偏光板50を、外気の水分から保護することである。第2シール材120は、第1シール材110と同様な材料でよい。シール材の材料としてはエポキシ材又はアクリル材が用いられる。ところで、第2シール材120は、製造工程の都合上、紫外線硬化と熱硬化を併用できる材料であるとなおよい。UV硬化と熱硬化を併用できる材料としては、エポキシのエポキシ基に部分的にアクリル酸を付加させた材料、いわゆるアクリロイル化エポキシ樹脂等が存在する。第2シール材120も、第1シール材110と同様に、水分を透過しにくい材料が使用される。
【0037】
TFT基板100と対向基板200を接着する第1シール材110と表示パネル10と輝度調整パネル20を接着する第2シール材120との大きな違いは厚さである。第1シール材110の厚みt4は、液晶層300の厚みと同等である3μm程度であるのに対し、第2シール材120は内側に2枚の偏光板40、50とOCA70を収容しているので、厚さt5は例えば400μm程度になる。図5のその他の構成は、図2で説明したのと同じであるので、説明を省略する。
【0038】
図6は、図5のシール部を拡大して示す断面図である。図6において、表示パネル10及び輝度調整パネル20の額縁領域を定義する遮光層202の幅はw1である。TFT基板100と対向基板200を接着する第1シール材110の幅はw2であり、厚さはt4である。w2は小さく形成され、1mm以下である場合が多い。OCA70と2枚の偏光板40、50を外部から保護するための第2シール材120の幅は、w3であり、厚さはt5である。
【0039】
第2シール材120の幅w3は、十分な接着力を確保するために、第1シール材110の幅w2よりも大きく形成される。また、第2シール材120は、厚さが大きく、したがって、断面積が大きいために、その分水分を透過させやすくなるので、幅w3を第1シール材110の幅w2よりも大きくして、水分が透過するための時間を長くする必要もある。
【0040】
しかし、第2シール材120の幅w3は額縁領域を定義する遮光層202の幅w1よりも小さくする必要がある。したがって、w1>w3>w2の関係になる。また、(第1シール材110の厚さt4)<(第2シール材120の厚さt5)の関係となっている。
【0041】
図7は、図5の表示パネル10の平面図である。図7において、TFT基板100と対向基板200が第1シール材110によって接着している。TFT基板100と対向基板200が重なった部分に表示領域160が形成され、TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分が端子領域170である。端子領域170には、ドライバIC180が2個配置している。端子領域170には、多数の端子が形成され、表示パネル10に電源や信号を供給するためにフレキシブル配線基板が接続されるが、図7では省略されている。
【0042】
図7において、額縁領域を除いた部分が表示領域160となっているが、額縁領域の幅w1は遮光層202によって規定されている。第1シール材110の幅はw2である。第2シール材120は、TFT基板100の下側に形成され、幅はw3である。
【0043】
表示領域160において、走査線1が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。映像信号線2が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線1と映像信号線2で囲まれた領域に副画素3が形成されている。副画素3には、対向基板200に形成される赤カラーフィルタ201R、緑カラーフィルタ201G、青カラーフィルタ201Bのいずれかが対応する。3個の副画素3によって画素4が構成される。なお、配線からの反射を防止するために、配線に対応して対向基板200に遮光層202が形成されている。
【0044】
図8は、輝度調整パネル20の平面図である。輝度調整パネル20の構成は、一部を除いて表示パネル10と同じである。図8において、TFT基板300と対向基板500が第1シール材110によって接着している。表示領域160には、走査線1が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、輝度信号線21が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線1と輝度信号線21で囲まれた部分に画素4が形成されている。
【0045】
図8において、輝度信号線21の横方向のピッチは、図7の映像信号線2の横方向のピッチの3倍であり、図8においては、副画素は形成されない。また、輝度調整パネル20の対向基板500には、カラーフィルタは形成されていない。光透過率を上げるためである。しかし、輝度調整パネル20においても、TFT基板300に形成された走査線1と輝度信号線21に対応して対向基板500においては遮光層202が形成されている。配線からの反射を防止するためである。
【0046】
ところで、図7においても、図8においても、映像信号線2及び輝度信号線21は縦方向にy方向に直線的に延在しているが、製品によっては、ジグザグに延在する場合もある。また、ジグザグの形状も表示パネル10の映像信号線2と輝度調整パネル20の輝度信号線21とで異ならせる場合が多い。
【0047】
図8において、額縁領域を規定する遮光層202の幅w1、TFT基板300と対向基板500を接着する第1シール材110の幅w2、輝度調整パネル20と表示パネル10を接着する第2シール材120の幅w3は、図7の場合と同様、w1>w3>w2である。ただし、第2シール材120は、輝度調整パネル20の対向基板500の上に形成されている。
【0048】
このように、図5に示す実施例1の構成によれば、第2シール材120によって、外部からの水分の侵入を防止するので、偏光板40、50及びOCA70が水分を含むことを防止することが出来る。これによって、偏光素子41の水分による劣化を防止し、液晶表示装置の寿命を延ばすことが可能になる。
【0049】
ところで、第2シール材120の厚さは、第1シール材110の厚さに比べて非常に大きい。したがって、第1シール材110と同様な方法では、第2シール材120を形成できない場合も生ずる。図9乃至図11は、第2シール材120を形成する製造方法の例を示す断面図である。これを第1実施形態と呼ぶ。
【0050】
図9は、表示パネル10の下面に第3偏光板50を接着し、輝度調整パネル20の上面に第2偏光板40とOCA70を接着した状態を示す断面図である。なお、OCA70は、表示パネル10側の第3偏光板50に接着してもよい。第2偏光板40、第3偏光板50、OCA70の外形は表示パネル10及び輝度調整パネル20の外形よりも小さく整形されている。
【0051】
図10において、表示パネル10の周辺、すなわち、第3偏光板50が存在しない部分には、ディスペンサあるいはスクリーン印刷によって、第2シール材120が塗布されている。また、輝度調整パネル20の周辺、すなわち、第2偏光板40とOCA70が存在しない部分には、ディスペンサあるいはスクリーン印刷によって、第2シール材120が塗布されている。
【0052】
第2シール材120には、紫外線硬化及び熱硬化を併用することが出来る、例えば、アクリロイル化エポキシ樹脂等が用いられる。したがって、図10に示すように、表示パネル10の周辺、及び、輝度調整パネル20の周辺に第2シール材120を形成した後、紫外線を照射することによって、仮硬化させることが出来る。
【0053】
その後、図11に示すように、表示パネル10と輝度調整パネル20を、第2シール材120を用いて接着し、熱硬化する。この方法によれば、第2シール材120を表示パネル10側と輝度調整パネル20側に分けて塗布するので、第2シール材120の厚さが厚くとも、精度よく塗布することが出来る。また、第2偏光板40、第3偏光板50、OCA70がスペーサの役割をするので、シール材120の中に、スペーサとして作用させるために、粒径の非常に大きい、フィラーを分散させる必要もない。
【0054】
以上の実施例では、第2偏光板40と第3偏光板50を接着する接着層70には、OCA70を使用したが、これに限らず、液体の接着材を使用して、硬化させる構成でもよい。図12乃至図14は、このような構成を実現するためのプロセス例を示す断面図である。これを第2実施形態と呼ぶ。第2実施形態でも、シール材120は、第1実施形態と同じ、紫外線硬化及び熱硬化を併用することが出来る、例えば、アクリロイル化エポキシ樹脂等を使用する。
【0055】
図12のプロセスを実施する前に、表示パネル10の下面に第3偏光板50を接着し、輝度調整パネル20の上面に第2偏光板40を接着しておく。その後、図12に示すように、表示パネル10の周辺、すなわち、第3偏光板50が存在しない部分に、ディスペンサあるいはスクリーン印刷によって、第2シール材120を塗布し、また、輝度調整パネル20の周辺、すなわち、第2偏光板40が存在しない部分に、ディスペンサあるいはスクリーン印刷によって、第2シール材120を塗布する。
【0056】
図12の輝度調整パネル20側において、第2シール材120の高さを偏光板40の高さよりも、hだけ高くしておく。第2シール材120の内側で、第2偏光板40の上に接着材80、例えばOCR(Optical Clear Resin)を注入するスペース、すなわち、凹部を確保するためである。hは例えば100μmである。図12において、表示パネル10側と輝度調整パネル20側の第2シール材120に対して紫外線を照射して仮硬化させる。
【0057】
図13は、輝度調整パネル20側において、第2紫外線照射によって、仮硬化した第2シール材120によって形成された凹部内に、ODF(One Drop Fill)方式によってOCR80を注入している状態を示す断面図である。複数のディスペンサ600から、計算した量のOCR72を滴下する。OCR72にはシリコーン系とアクリル系が存在し、また、紫外線硬化型と熱硬化型が存在する。
【0058】
その後、図14に示すように、表示パネル10と輝度調整パネル20を、第2シール材120を用いて接着し、熱硬化する。このとき、OCR72と第2シール材120が同時に熱硬化される。この方法においても、第2シール材120を表示パネル10側と輝度調整パネル20側に分けて塗布するので、第2シール材120の厚さが厚くとも、精度よく塗布することが出来る。また、表示パネル10と輝度調整パネル200を接着する際、紫外線によって半硬化した第2シール材120をスペーサとして使用することが出来るので、第2シール材120の中に、スペーサとして作用させるために、粒径の非常に大きい、フィラーを分散させる必要もない。なお、ODFは輝度調整パネル20側において行ったが、表示パネル10側で行うこともできる。
【0059】
以上で説明したように、実施例1によれば、表示パネル10と輝度調整パネル20の接着領域において、第2偏光板40、接着層70又は72、第3偏光板50を水分から保護することが出来るので、コントラストの優れた、かつ、信頼性の高い液晶表示装置を実現することが出来る。
【実施例0060】
実施例1では、表示パネル10と輝度調整パネル20の接着領域に第2シール材120の他に、接着材である、OCA70あるいはOCR72を用いている。接着材として機能させるためには、ある程度の厚さが必要である。実施例2では、表示パネル10と輝度調整パネル20の接着の役割は、第2シール材120に持たせ、第2偏光板40と第3偏光板50の間には、接着層ではなく、オプティカルカップリングの役割のみを持たせる層、例えば、高屈折オイル80を使用する。
【0061】
図15は実施例2の構成を示す断面図である。表示パネル10と輝度調整パネル20の構成は、実施例1と同じである。図15が実施例1の図5と異なる点は、第2偏光板40と第3偏光板50の間に、OCA70ではなく、高屈折オイル80が使用されていることである。高屈折オイル80は第2シール材120によってシールされている。高屈折オイル80は、接着の作用は不要なので、層厚は、均一に形成できる範囲において、薄くすることが出来、例えば、5μm程度でもよい。
【0062】
高屈折率オイル80を使用する理由は、輝度調整パネル20と表示パネル10のオプティカルカップリング、具体的には、第2偏光板40と第3偏光板50の間のオプティカルカップリングを向上させるためである。
【0063】
高屈折オイル80の層厚は薄くできるので、実施例1におけるOCA等の接着材70を使用する場合に比して、表示パネル10と輝度調整パネル20の視差によるずれを軽減することが出来る。また、層厚が小さいために、含有する水分も少なく出来る。これに加え、屈折オイル80の層厚を小さくすることによって、第2シール材120の厚さも小さく出来る。したがって、第2シール材120を透過する水分量も低減することが出来る。さらに、高屈折オイルとして、OCA等よりも、水分の吸収量を小さい材料を選択することが出来る。したがって、水分による偏光板の偏光素子の劣化もさらに軽減することが出来る。
【0064】
TFT基板や対向基板として使用されるガラスの屈折率や、偏光板の屈折率を考慮すると、高屈折オイル80の屈折率は、好ましくは、1.43乃至1.55程度であり、より好ましくは、1.48乃至1.52である。このような、高屈折オイル80としては、イマージョンオイルが挙げられる。イマージョンオイルはレンズの開口率を実質的に上げるために、例えば、対物レンズとカバーガラスの間に充填するなどして使用されている。イマージョンオイルとしては、さまざまな光学機器メーカーから、様々な製品が販売されている。イマージョンオイルの屈折率は、おおむね1.52である。
【0065】
図15を可能にする製造方法は、例えば、図12乃至図14に示す、実施例1の第2形態と同様な製造方法を用いることが出来る。実施例2においては、高屈折オイル80の厚さは、実施例1におけるOCR72の厚さに対して小さいので、図13におけるhは小さくて済む。その分だけ製造が容易である。
【0066】
このように、実施例2によれば、高いコントラストを有する画像を形成することが出来、また、信頼性の高い、液晶表示装置を実現することが出来る。
【符号の説明】
【0067】
1…走査線、 2…映像信号線、 3…サブ画素、 4…画素、 10…表示パネル、 20…輝度調整パネル、 21…輝度信号線、 30…第1偏光板、 40…第2偏光板、 41…偏光素子、 42…保護層、 43…粘着材層、 50…第3偏光板、 60…第4偏光板、 70…OCA、 72…OCR、 80…高屈折オイル、 100…TFT基板、 110…第1シール材、 120…第2シール材、 160…表示領域、 170…端子領域、 180…ドライバIC、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…遮光層、 300…液晶層、 400…TFT基板、 500…対向基板、 600…ディスペンサ、 1000…バックライト、 R…赤カラーフィルタ、 G…緑カラーフィルタ、 B…青カラーフィルタ、 M…水分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15