IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧 ▶ 群馬県の特許一覧

特開2024-95272金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機
<>
  • 特開-金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機 図1
  • 特開-金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機 図2
  • 特開-金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機 図3
  • 特開-金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機 図4
  • 特開-金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機 図5
  • 特開-金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095272
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20240703BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212438
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】生田目 昂
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 美子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 広樹
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】牛木 龍二
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM23
4F202AM32
4F202AP19
4F202AP20
4F202AR06
4F202CA11
4F202CB01
4F202CP01
4F202CP10
4F206AM23
4F206AM32
4F206AP19
4F206AP20
4F206AR06
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN05
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP30
4F206JQ05
4F206JQ81
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】金型装置内の堆積物の付着量を簡便に推定することができる射出成形機を提供する。
【解決手段】この発明の射出成形機1は、金型装置101内に成形材料を射出する射出装置11を備えるものであって、射出装置11及び/又は金型装置101からの発生ガスを分析し、成形材料に由来する材料ガスの発生量を測定するガス分析部と、当該成形材料を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との関係についての材料分解情報に基づき、前記材料ガスの発生量から、金型装置101内の堆積物の付着量を推定する堆積物推定部とを有するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置内に成形材料を射出する射出装置を備える射出成形機に用いられ、金型装置内の堆積物を予測する装置であって、
射出装置及び/又は金型装置からの発生ガスを分析し、成形材料に由来する材料ガスの発生量を測定するガス分析部と、
当該成形材料を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との関係についての材料分解情報に基づき、前記材料ガスの発生量から、金型装置内の堆積物の付着量を推定する堆積物推定部と
を有する堆積物予測装置。
【請求項2】
射出装置及び/又は金型装置からの発生ガスを捕集するガス捕集部をさらに有する請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項3】
前記ガス捕集部が、金型装置に設けられるガスベントから排出される発生ガスを捕集可能である請求項2に記載の堆積物予測装置。
【請求項4】
前記ガス捕集部が、射出装置のノズル先端部から排出される発生ガスを捕集可能である請求項2に記載の堆積物予測装置。
【請求項5】
前記材料ガス及び前記揮発成分がそれぞれ、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素を含む請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項6】
前記材料ガス及び前記揮発成分がそれぞれ、C1~C6の前記炭化水素を含む請求項5に記載の堆積物予測装置。
【請求項7】
前記材料ガス及び前記揮発成分が、C4の前記炭化水素を含む請求項5に記載の堆積物予測装置。
【請求項8】
前記材料ガス及び前記揮発成分が、1,3-ブタジエンを含む請求項5に記載の堆積物予測装置。
【請求項9】
成形材料の加熱を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との間に、相関係数が0.7以上である相関があり、
前記材料分解情報が、当該相関についての相関関係情報を含む請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項10】
前記材料分解情報が、成形材料の加熱実験の結果についての実験結果情報を含む、請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項11】
前記成形材料を加熱した場合の温度が、180℃以上かつ320℃以下である請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項12】
前記成形材料を加熱した場合の温度が、射出装置の加熱時における当該金型装置内の成形材料の温度を含む、請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項13】
堆積物推定部で推定された前記堆積物の付着量に応じて、金型装置の清掃の要否を判定する清掃判定部をさらに有する請求項1に記載の堆積物予測装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の堆積物予測装置と、射出装置とを備える射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形機に用いる金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機に関するものであり、特に、射出成形に際して金型装置内に付着し得る堆積物の推定ないし予測についての技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を用いた射出成形では、当該射出成形機に金型装置を取り付けた状態で、射出装置にて熱可塑性樹脂等の成形材料を溶融させるとともに金型装置内に射出し、その溶融状態の成形材料を金型装置内で固化させる。
【0003】
このような射出成形を繰り返し行うと、金型装置内の空間や隙間には、主として、成形材料に由来する成分が付着して堆積する。この堆積物は、モールドデポジットと称され得るものであり、そのままにして射出成形を継続すれば、いわゆるガス焼けや成形材料の充填不良等の成形不具合を招くおそれがある。それ故に、射出成形機をある程度の期間にわたって使用したときは、金型装置内の堆積物を取り除くため、金型装置を清掃してメンテナンスすることが必要になる。
【0004】
金型装置内の堆積物に関し、特許文献1には、「シリンダ温度を設定値に基づいて制御するプロセスコントローラを備える射出成形機において、前記プロセスコントローラは、樹脂の各シリンダ温度における揮発性成分の強度を蓄積する情報集積部と、この蓄積されたデータをもとに各揮発性成分におけるシリンダ温度と強度の関係を求め、求められた各揮発性成分におけるシリンダ温度と強度の関係をもとに揮発性成分強度の近似曲線を求めるモールドデポジット演算部と、求められた近似曲線の傾きが所定値αとなる場合の温度を求め、該温度により前記シリンダ温度を設定するシリンダ温度処理部とを備えることを特徴とする射出成形機」が提案されている。
【0005】
特許文献2では、「金型キャビティ内に溶融樹脂を充填し、モールド部品を射出成形するモールド部品の製造装置であって、前記金型キャビティ内に溶融樹脂が充填される際に発生するガスの物理量を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された物理量を成形ショット毎に記憶する記憶手段と、前記記憶手段によって成形ショット毎に記憶された物理量の変化率を演算し、該物理量の変化率から金型の保守時期を決定する演算手段と、を備えていることを特徴とするモールド部品の製造装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-194861号公報
【特許文献2】特開2011-152766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した堆積物は、金型装置内に発生するので外部から把握し難く、頻繁にその確認をすることは手間を要する。また、金型装置内への堆積物の付着量は、成形材料の種類や金型装置の形状、成形条件等に応じて変化することから、金型装置の清掃が必要になる時期を決めることは困難であった。
【0008】
かかる状況の下、金型装置内の堆積物の付着量を簡便に推定でき、それにより金型装置の清掃が必要な時期を予測できるようになることが望まれている。
【0009】
特許文献1では、「モールドデポジットによる成形不良の削減」のため、「最適なシリンダ温度に設定すること」を目的としており、金型装置内の堆積物の付着量を推定することについて十分に検討されているとは言い難い。
【0010】
また、特許文献2に記載されているように、「金型キャビティ内に溶融樹脂が充填される際に発生するガスの物理量を検出」し、「該物理量の変化率から金型の保守時期を決定」しようとしても、堆積物の付着量を有効に推定できないことがある。
【0011】
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、金型装置内の堆積物の付着量を簡便に推定することができる金型装置内の堆積物予測装置及び、射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決することができる一の堆積物予測装置は、金型装置内に成形材料を射出する射出装置を備える射出成形機に用いられ、金型装置内の堆積物を予測する装置であって、射出装置及び/又は金型装置からの発生ガスを分析し、成形材料に由来する材料ガスの発生量を測定するガス分析部と、当該成形材料を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との関係についての材料分解情報に基づき、前記材料ガスの発生量から、金型装置内の堆積物の付着量を推定する堆積物推定部とを有するものである。
【0013】
また、射出成形機は、上記の堆積物予測装置と射出装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
上述した堆積物予測装置によれば、金型装置内の堆積物の付着量を簡便に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一の実施形態の堆積物予測装置を用いることができる射出成形機の一例を示す断面図である。
図2】この発明の一の実施形態の堆積物予測装置を示すブロック図である。
図3図2の堆積物予測装置のガス捕集部で発生ガスを捕集する態様の一例を模式的に示す拡大断面図である。
図4図2の堆積物予測装置のガス捕集部で発生ガスを捕集する態様の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
図5】1gのPBT1を280℃で加熱したとき(図5(A))および300℃で加熱したとき(図5(B))の不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量をプロットしたグラフである。
図6】1gのPBT2を280℃で加熱したとき(図6(A))および300℃で加熱したとき(図6(B))の不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態の堆積物予測装置は、たとえば、図1に例示するような射出成形機1で、射出成形機1に取り付けられた金型装置101内の堆積物を予測することに用いられるものである。
【0017】
図1に示す射出成形機1は概して、内部に配置されたスクリュ13の回転及び前進ならびに、周囲に配置されたヒータ14の加熱により、熱可塑性樹脂等の成形材料を溶融させて金型装置101内に向けて射出する射出装置11と、射出装置11を金型装置101に対して前進・後退変位させる移動装置21と、金型装置101を型締状態と型開状態との間で開閉させる型締装置31と、型開状態の金型装置101から成形品を取り外すエジェクタ装置41とを備えるものである。
【0018】
なお、射出成形機1に取り付ける金型装置101は、図示の例では、型締状態で内側にキャビティが区画形成される固定金型102及び可動金型103、ならびに、エジェクタ装置41により変位されて成形品を押し出して取り出すエジェクタピン等の可動部材104を有する。この金型装置101は、主に固定金型102と可動金型103の二つに分割された2プレート金型と称され得るものであるが、さらにスライド型ないしスライドコアもしくはストリッパープレートを有して三つに分割された3プレート金型とすることも可能である。金型装置101は、製造しようとする成形品の形状等に応じて適宜、射出成形機1に取り付けられ、また交換され得るものであり、ここでは、金型装置101は射出成形機1の一部とはみなさない。射出成形機1と、射出成形機1に取り付けられた金型装置101とを備える設備ないし機器は、射出成形システムと称されることがある。
【0019】
射出成形機1を使用する射出成形では、後述するように、前回の計量工程で既に射出装置11の内部に成形材料が所定の量で計量されて配置された状態で、型締装置31を用いて金型装置101を閉じて型締状態とする型締工程を行う。
次いで、スクリュ13の前進により上記の成形材料を金型装置101内に向けて射出し、成形材料を金型装置101内のキャビティに充填する充填工程と、スクリュ13をさらに前進させて射出装置11の先端部の内部にある成形材料を所定の圧力に保持する保圧工程とを順次に行う。
【0020】
その後、金型装置101のキャビティに充填された成形材料を冷却して固化させ、成形品を得る冷却工程を行う。この際に、射出装置11内に別途投入した成形材料を、ヒータ14による加熱下でスクリュ13の回転により射出装置11の先端部に向けて送りながら溶融させ、所定の量の成形材料を先端部に充填する計量工程が行われる。
さらにその後は、型締装置31を作動させて金型装置101を開いて型開状態とし、エジェクタ装置41により可動部材104を移動させ、金型装置101から成形品を取り外す取出工程を行う。
【0021】
(堆積物予測装置)
上述したような射出成形を繰り返し行っていると、金型装置101内の隙間や空間の表面に、主に、成形材料に由来する成分が付着して堆積物(いわゆるモールドデポジット)が生じる。この堆積物は、金型装置101内への成形材料の円滑な充填を阻害し、成形品の形状不良を発生させる他、ガスベントを閉塞させてガス焼けの原因になる等といった成形不具合を招く。
【0022】
そのような成形不具合の発生を防止するため、金型装置101を取り付けた射出成形機1をある程度の期間にわたって使用したときは、金型装置101を清掃して堆積物を取り除く必要がある。しかるに、これまでは、堆積物がどの程度付着しているかについて把握することが容易ではなかったので、金型装置101を適切な時期に清掃することができなかった。成形不具合が発生して初めて、金型装置101内に堆積物が多く付着していることに気が付くこともあった。
【0023】
これに対し、この実施形態では、図2に例示する堆積物予測装置を用いて、金型装置101内の堆積物を予測する。この堆積物予測装置は、射出装置11及び/又は金型装置101からの発生ガスを分析するガス分析部と、ガス分析部に接続され、ガス分析部での分析結果をもとに、金型装置101内の堆積物の付着量を推定する堆積物推定部とを有するものである。なお、堆積物推定部は、所定の演算を行う演算部に含まれ得る。
【0024】
より詳細には、ガス分析部では、射出装置11及び/又は金型装置101から排出される発生ガスを分析し、その分析により、成形材料に由来する材料ガスの発生量を測定する。これにより、成形材料の熱分解により生成される材料ガスがどの程度発生しているかを把握することができる。ガス分析部には、たとえば、ガスクロマトグラフやガスセンサ等が好適に用いられ得る。
【0025】
そして、堆積物推定部は、ガス分析部から分析結果である材料ガスの発生量の情報が送られ、その情報から金型装置101内の堆積物の付着量を推定する。ここでは、堆積物の付着量を推定するに当り、射出成形で用いている成形材料を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との関係についての材料分解情報を用いることが重要である。
【0026】
材料分解情報によれば、成形材料の加熱時における揮発成分の生成量から不揮発成分の生成量がわかる。揮発成分の生成量は、射出装置11及び/又は金型装置101から排出された材料ガスの発生量に、また不揮発成分の生成量は、金型装置101内で生成された堆積物の付着量にそれぞれ対応し得る。したがって、堆積物推定部で当該材料分解情報を用いることで、金型装置101内の堆積物の付着量を有効に推定することができる。このことは、実際に金型装置101の内部を高頻度で確認することに比して、極めて簡便に行うことが可能である。
【0027】
堆積物予測装置は、図2に示すように、ユーザが任意ないし所定の情報を入力するために使用する入力部、及び/又は、情報を記憶する記憶部をさらに有する場合がある。それらの入力部や記憶部はそれぞれ、演算部に接続される。上記の材料分解情報は、予め記憶部に記憶させておくことや、ユーザにより入力部から入力されることにより、堆積物推定部で用いられる。また、外部から無線もしくは有線の通信又は記憶装置等により材料分解情報を取得し、これを堆積物推定部で用いてもよい。たとえば、IOT(Internet of Things)の一つとしてインターネットに接続された堆積物予測装置、又は、堆積物予測装置が組み込まれた射出成形機1で、インターネットを介して上記の材料分解情報を取得することも可能である。また、堆積物予測装置は、堆積物推定部や後述の清掃判定部での演算結果を出力する出力部をさらに有することもある。出力部に加えて又は代えて、上記の演算結果を視覚的に表示する表示部を設けてもよい。
【0028】
材料分解情報は、たとえば、射出成形で用いる成形材料の加熱実験を別途行うこと等により得ることができる。材料分解情報には、そのような成形材料の加熱実験の結果についての実験結果情報が含まれ得る。
【0029】
成形材料の加熱実験を行う場合、射出成形で射出装置11を加熱するときの金型装置101内の成形材料の温度と対応する温度、特に当該加熱時における射出装置11内の成形材料の温度と実質的に等しい温度で、成形材料を加熱することができる。成形材料を加熱した場合の温度には、実際に射出装置11を加熱するときの射出装置11内の成形材料の温度が含まれることが好ましい。つまり、加熱実験等での成形材料の加熱温度は、射出成形の加熱時における射出装置11内の成形材料の温度が網羅されていることが好適である。具体的には、このときの温度(以下、「成形温度」ともいう。)は、たとえば、180℃以上かつ320℃以下の温度域とすることがある。
【0030】
加熱実験で成形材料を加熱すると、成形材料は分解し、不揮発成分と揮発成分が生成される。それらの不揮発成分及び揮発成分のそれぞれの生成量を測定することにより、成形材料を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との関係についての材料分解情報が得られる。
【0031】
成形材料から生成する不揮発成分の生成量は、加熱装置を用いて測定することができる。この場合、当該加熱装置の加熱炉内に成形材料を配置する。そして、加熱炉が接続された経路に、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等の不活性ガスを導入させながら、成形材料を上記の成形温度まで昇温する。加熱炉における流通ガスの出口付近には捕集部材が設置されており、その捕集部で、加熱炉の出口排出される不揮発成分を捕集する。その後、捕集部で捕集された不揮発成分の質量を求める。なお、たとえば平板状等の捕集部材については、ガラス、金属、セラミックといった材質をいずれも好ましく使用することができる。
【0032】
また、成形材料から生成する揮発成分の生成量は、加熱装置を用いて測定することができる。この加熱装置では、加熱炉内に成形材料を配置した後、加熱炉が接続された経路を真空排気した後、経路に、所定の圧力となるように不活性ガスを導入し、さらに加熱炉内の成形材料を上記の成形温度まで昇温する。これにより生成されて経路内を流れる揮発成分の一部をサンプリングし、ガスクロマトグラフでその定量分析を行う。
【0033】
例えば成形材料一例として、エステル系高分子材料の一種であるPBTは、加熱すると、熱分解により主鎖が切断されて、テレフタル酸やオリゴマー等の不揮発成分(高沸点成分)である析出物と、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素を含む揮発成分が生成され得る。揮発成分は、例えばCn2n+2(n≧1)で表されるアルカン、Cn2n(n≧2)で表されるアルケン、Cn2n-2(n≧2)で表されるアルキンやジエン等である場合がある。なお、エチレン、エタン、アセチレンなどの炭素数2の炭化水素を総称してC2、プロパン、プロピレン、プロピン、プロパジエン、シクロプロパン、シクロプロペンなどの炭素数3の炭化水素を総称してC3、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン、シクロブタン、シクロブテン、シクロブタジエンなどの炭素数4の炭化水素を総称してC4、n-ペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンチン、2-ペンチンなどの炭素数5の炭化水素を総称してC5、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-メチル-2-ペンテン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、シクロヘキサン、1-シクロヘキセン、1-シクロヘキシンなどの炭素数6の炭化水素を総称してC6のように記す。不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との間には良好な直線性が見られることから、成形材料を成形温度に加熱した際の揮発成分の生成量が分かれば、モールドデポジットの原因となる不揮発成分の生成量を推定できる。
【0034】
また、加熱実験により生成する不揮発成分と揮発成分の生成量の定量が可能で、材料分解情報を得ることができる成形材料としては、ポリエステル系高分子材料、ポリアミド系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂が好ましく、なかでもポリエステル系高分子材料、ポリアミド系高分子材料がより好ましく、特にポリエステル系高分子材料が最も好ましい。
【0035】
ポリエステル系高分子材料では、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を好ましく用いることができる。また、上記樹脂は単独でも良いし、複数の混合物でも良い。また、共重合体のように異種のモノマーユニットを含んでいてもよい。
【0036】
加熱装置の加熱炉内の温度は、180℃以上かつ320℃以下が好ましく、250℃以上かつ310℃以下がより好ましく、280℃以上かつ300℃以下が最も好ましい。加熱炉内の温度を180℃未満とした場合には成形材料が十分に溶融せず、揮発成分や不揮発成分の生成量も少ないため、材料分解情報の正確性が低下する懸念があり、また320℃より高い温度の場合には成形材料の熱分解が顕著となり、不揮発成分の定量が困難となる懸念があるためである。
【0037】
不揮発成分は堆積物として金型装置101内に付着していると考えられるので、上記の不揮発成分の生成量は、堆積物の付着量に実質的に対応ないし一致する。堆積物推定部でこのように推定すれば、金型装置101内における堆積物の付着量の推定精度が大きく向上する。
【0038】
また、成形材料を加熱した場合における不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との間の相関係数は、0.7以上、さらに0.9以上であることが好ましい。材料分解情報は、そのような相関についての相関関係情報を含むことができる。
【0039】
なお、たとえば材料分解情報が既知の情報である場合や、外部から入手可能である場合等には、上述したような別途の加熱実験は省略できることもある。また、種類の異なる成形材料ごとの複数種類の材料分解情報を、たとえば記憶部に記憶させておく等して、堆積物推定部で用いることも可能である。また、たとえば深層学習(Deep Learning)その他の機械学習を利用して、既知の材料分解情報及び実際の堆積物の付着量等から学習を行い、材料分解情報の精度をさらに高めていくことも考えられる。このことは、先述したように、堆積物予測装置をインターネットに接続可能とすることにより実現しやすくなる。これにより、射出成形機1の使用に際するユーザエクスペリエンスを向上させ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一助になることが期待される。
【0040】
ところで、堆積物予測装置は、図2に示すように、ガス分析部に接続され、射出装置11及び/又は金型装置101からの発生ガスを捕集するガス捕集部をさらに有することがある。ガス捕集部は、図3及び/又は図4に示すように、射出成形機1に配置することができるが、発生ガスを捕集できれば図示のガス捕集部の配置態様に限らない。
【0041】
図3に示すガス捕集部51は、少なくとも一部が筒状を有し、金型装置101内に設けられるガスベント105を通って排出される発生ガスGgを捕集できるものである。ガスベント105は、金型装置101内のキャビティに成形材料が充填される際に押し出される空気等の気体を外部に外出するべく金型装置101に設けられるものであり、エアーベントとも呼称される。ガスベント105からは、空気とともに射出成形時に発生する発生ガスGgが排出され、そこには成形材料に由来する材料ガスの大部分が含まれ得る。したがって、ガスベント105から発生ガスGgを捕集し、上述したようなガス分析部による分析及び堆積物推定部による推定を行ったときは、堆積物の付着量の推定精度を十分に高めることができる。
【0042】
なお、ガス捕集部51は、自動又は手動で動かすことができるものとしてもよい。この場合、たとえば、発生ガスGgを捕集する際は、ガス捕集部51を、図3に白抜き矢印で示すように、金型装置101のガスベント105に連通する穴部に接近させて動かし、そこに接続する。また、発生ガスGgを捕集した後は、ガス捕集部51を、金型装置101から離れるように動かすことができる。
【0043】
図4では、筒状のガス捕集部61は、射出装置11のノズル12bの先端部から排出される発生ガスGgを捕集できるように、ノズル12bの付近に配置されている。同図に黒塗り矢印で示すように、後述の移動装置21によりシリンダ12が金型装置101から離れる向きに射出装置11が後退変位したとき、ガス捕集部61は、白抜き矢印で示すように、シリンダ12のノズル12bに接近させ、その先端部から排出される発生ガスを捕集することができる。
【0044】
図4のガス捕集部61により発生ガスを捕集するタイミングは特に限らないが、たとえば、射出成形で用いる成形材料を別の成形材料に交換すること等を目的として、シリンダ12の先端部に蓄積されている成形材料を、スクリュ13の前進によりノズル12bから排出させるパージ動作の際等とすることができる。このガス捕集部61は、図3のガス捕集部51と比較すると、金型装置101の形状によらず使用することができるという利点がある。
【0045】
堆積物予測装置はさらに、堆積物推定部で推定された堆積物の付着量に応じて、金型装置101の清掃の要否を判定する清掃判定部を有することもできる。
【0046】
清掃判定部では、たとえば、堆積物推定部での推定結果である堆積物の付着量が、所定の基準値以上であるか否かを判定する。そして、推定結果の付着量が基準値未満であれば、金型装置101の清掃が不要であると判断し、何のアクションも起こさないか、又は、出力部から清掃が不要である旨を出力する。あるいは、推定結果の付着量が基準値以上である場合は、出力部を通じてユーザに、金型装置101の清掃が必要である旨を出力することができる。これにより、ユーザは、金型装置101の清掃が必要になる程度に堆積物が付着していることを認識することができて、その清掃をするように促される。
【0047】
また、清掃判定部は、堆積物推定部での堆積物の付着量の推定結果を用いて、金型装置101のメンテナンスのサイクルを決定することもできる。
【0048】
以上に述べた堆積物予測装置は、射出成形機1とは別の装置とすることも可能であるが、射出成形機1が備えるものとしてもよい。射出成形機1が堆積物予測装置を備えるときは、堆積物予測装置の演算部(堆積物推定部及び清掃判定部)を、射出成形機1の動作を制御する制御装置の制御部に含めることができる。また、堆積物予測装置の入力部、記憶部及び出力部は、射出成形機の制御装置のものと共用とすることがある。
【0049】
(射出装置)
射出装置11は主に、金型装置101に向けて延びる円筒状等のシリンダ12と、シリンダ12の内部にそれと中心軸線を平行にして配置されて、周囲にフライトが螺旋状に設けられたスクリュ13と、シリンダ12の外周側にその周囲を取り囲んで配置されたバンド状等のヒータ14と、シリンダ12及びスクリュ13の後方側に配置されたモータボックス15とを備える。図示は省略するが、モータボックス15内には、シリンダ12の先端部に所定の量の成形材料を蓄積させるため、スクリュ13を中心軸線周りに回転させる計量モータや、金型装置101に接近する方向及び金型装置101から離れる方向の各方向へのスクリュ13の前進及び後退変位を行う射出モータ、スクリュ13が成形材料から受ける圧力を検出する圧力検出センサ等が配置されている。
【0050】
なおここでは、金型装置101の固定金型102が取り付けられる型締装置31の固定プラテン32aに接近する向きを前方側とし、固定プラテン32aから離隔する向きを後方側とする。したがって、図1では固定プラテン32aの右側に位置する射出装置11について見ると、固定プラテン32aに接近する左向きが前方側となり、固定プラテン32aから離隔する右向きが後方側になる。
【0051】
シリンダ12は、後方側でモータボックス15の手前に、成形材料をシリンダ12内に投入するためのホッパーが取り付けられ得る供給口12aが設けられる。また、金型装置101に近接するシリンダ12の先端部には、その前方側で横断面積が小さくなるノズル12bが設けられている。なお、供給口12aの近傍には水冷等による水冷シリンダ12cを設けることができる。
【0052】
ノズル12bの周囲を含むシリンダ12の周囲に配置されるヒータ14は、たとえば図示のように、シリンダ軸線方向で複数の部分に分割されて、各ヒータ部分の内側のシリンダ12の内部を異なる温度で加熱できるものとすることができる。各ヒータ部分には、温度検出器を設けることができる。
【0053】
スクリュ13の先端側は、図示は省略するが、その外径を部分的に小さくして設けた括れ部の周囲に、スクリュ13とともに前進及び後退変位してそれより前方側に送られた成形材料の後方側への逆流を防止する逆流防止リングが配置されることがある。この逆流防止リングは、たとえば、それより前方側もしくは後方側に位置する成形材料から受ける圧力に応じて、スクリュ13に対して前後に変位し、それにより後方側から前方側に向かう成形材料の流れのみを許容するものである。
【0054】
このような構成を有する射出装置11によれば、供給口12aからシリンダ12の内部に投入された成形材料は、計量工程で、シリンダ12の外周側のヒータ14による加熱の下、計量モータで駆動されるスクリュ13の回転に基いて溶融されつつ、シリンダ12の内部で前方側に向けて送られて、シリンダ12の先端部に蓄積される。この際に、スクリュ13は射出モータにより後退変位させられて、シリンダ12の先端部に、成形材料が蓄積される空間を形成する。なお、先にも述べたように、この計量工程は、前回の成形時の冷却工程等の際に行うことができる。
【0055】
その後、充填工程で、スクリュ13を前進変位させることにより、シリンダ12の先端部の成形材料は、ノズル12bを経て金型装置101に向けて射出される。さらにその後の保圧工程では、シリンダ12の先端部に残留している成形材料を通じて、金型装置101のキャビティに充填された成形材料に圧力を作用させる。このとき、金型装置101のキャビティで成形材料の冷却収縮に起因して不足した成形材料を補充することができる。
【0056】
なお、この射出成形機1はインラインスクリュ式のものであるが、可塑化シリンダ及び可塑化スクリュと、射出シリンダ及び射出プランジャーとに構造及び機能上分離させたプリプラ式の射出成形機とすることも可能である。
【0057】
(移動装置)
移動装置21は、たとえば射出装置11のモータボックス15の下部等に設けられ、固定プラテン32aに対して射出装置11を前進及び後退変位させる進退駆動機構である。
移動装置21を構成する進退駆動機構としては種々の機構を採用することができるが、図示の移動装置21は、油圧等の液圧ポンプ22と、液圧ポンプ22を作動させる電動等によるポンプ作動用モータ23と、液圧ポンプ22から作動液が供給されて、先端が固定プラテン32aに固定されたピストンロッドを押出・引込運動させる複動型の液圧シリンダ24とを含んで構成されている。
【0058】
この移動装置21は、上述した液圧ポンプ22、ポンプ作動用モータ23及び液圧シリンダ24が取り付けられたスライドベース25、ならびに、ベースフレーム2上に敷設されて該スライドベース25の直線運動を案内するガイド26をさらに含む。それにより、スライドベース25の上部に載置された射出装置11の進退変位を実現する。
【0059】
移動装置21により、射出装置11を金型装置101から離隔させたり、また、射出装置11を金型装置101に接近させて、射出装置11のシリンダ12のノズル12bを所定の圧力で金型装置101に押し付ける、いわゆるノズルタッチを行ったりすることが可能になる。
【0060】
(型締装置)
型締装置31は、金型装置101の固定金型102に対して可動金型103を変位させて金型装置101を開閉し、金型装置101を型締状態、型閉状態または型開状態とする。この型締装置31は、固定プラテン32a、可動プラテン32b及びタイバー32cを含むプラテン32と、プラテン32を稼働させるプラテン稼働機構33とを有してなる。
【0061】
プラテン32のうち、固定プラテン32aは、先述したように、ベースフレーム2のプラテン取付けプレートに固定して取り付けられる。一方、可動プラテン32bは、ベースフレーム2のガイド用プレート上に敷設されたガイド部材32d上に配置されて、固定プラテン32aに対して離隔する方向及び接近する方向にスライドすることができる。
【0062】
プラテン稼働機構33は、ベースフレーム2上に配置されたリヤプラテン34と、リヤプラテン34上に設けた型締モータ35と、型締モータ35の回転運動を、可動プラテン32bの変位方向の直線運動に変換する運動変換機構36と、運動変換機構36に伝達された力を増大させて可動プラテン32bに伝えるトグル機構37とを備えるものである。
【0063】
このうち、運動変換機構36は、回転運動を直線運動に変換できる種々の機構とすることができるが、この例では、型締モータ35により回転駆動されるねじ軸36a及び、ねじ軸36aに羅合するナット36bを含んで構成されるものとしている。運動変換機構36をボールねじとすることも可能である。
【0064】
そして、運動変換機構36からの伝達力を増大させるトグル機構37は、リヤプラテン34及びナット36bと可動プラテン32bとをつなぐ複数のリンク37a~37cを、ジョイントで揺動可能に接続してなるものである。
リンク及びジョイントの個数ならびにその形状は適宜変更することが可能であるが、図1に示すところでは、ナット36bに接続されて上下方向に延びるクロスヘッド37dに、該クロスヘッド37dを隔てて上下に位置するリンク37a~37cからなる一対のリンク群が、揺動可能に接続されて設けられている。
【0065】
なお、リヤプラテン34上には、上述した型締モータ35の他、型厚調整モータ38も設けることができる。この型厚調整モータ38は、先述のプラテン32の各タイバー32cの延長部分に接続されたねじ軸及びナットに回転駆動力を付与することにより、固定プラテン32aと、ベースフレーム2上で移動可能に載置されたリヤプラテン34との間の間隔を調整するべく機能する。これにより、金型装置101の交換や、温度変化に起因する金型装置101の厚みの変更等の際にも、金型装置101に所期したとおりの型締力を与えることができるように型厚の調整を行うことができる。図示は省略するが、ベースフレーム2上で固定プラテン側を移動可能とし、リヤプラテン側を固定としても、型厚の調整を実現可能である。
【0066】
図示の型締装置31は、可動プラテン32bの移動方向が水平方向と平行な横型のものであるが、該移動方向を垂直方向とした竪型のものとすることも可能である。
【0067】
(エジェクタ装置)
可動プラテン32bに設けられるエジェクタ装置41は、可動プラテン32bを貫通して延びて、金型装置101のエジェクタピン等の可動部材104を後方側から押圧するよう進退駆動されるエジェクタロッド42と、エジェクタロッド42を作動させるべく、たとえばモータ及びボールねじ等の運動変換機構を含むロッド駆動源43とを有する。
【0068】
エジェクタ装置41により、成形品の取出工程で、ロッド駆動源43により駆動されるエジェクタロッド42を前進させて、金型装置101内で可動部材104を突き出し、金型装置101から成形品を押し出すことが可能になる。なお、可動部材104を突き出した後は、ロッド駆動源43によりエジェクタロッド42を後退させて元の位置に戻すことができる。
【実施例0069】
次に、この発明の堆積物予測装置の実施に関連する試験を行ったので、以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的とするものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0070】
(試験例1)
図5(A)および図5(B)に一例として、成形材料に市販のPBT(Sigma Aldrich製、品番:190942)(「PBT1」と称する。)を用いた場合の材料分解情報を示す。
【0071】
図5(A)は1gのPBT1を、加熱装置を用いて280℃で加熱したときの不揮発成分の生成量と、加熱装置を用いて280℃で加熱したときの揮発成分の生成量をプロットしたグラフである。また、図5(B)は1gのPBT1を、加熱装置を用いて300℃で加熱したときの不揮発成分の生成量と、加熱装置を用いて300℃で加熱したときの揮発成分の生成量をプロットしたグラフである。
【0072】
図5から明らかなように、PBT1では不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との間には、強い正の相関があることが解かる。したがって、射出成形に用いる成形材料がPBT1の場合、射出装置及び/又は金型装置から排出された材料ガスの発生量を揮発成分の生成量とすると、その材料ガスの発生量から、不揮発成分の生成量がほぼ一義的に定まることになる。
【0073】
(試験例2)
図6(A)および図6(B)に他の例として、成形材料にPBT1とは異なるメーカーで製造されたPBT(Polyplastics製、品番:DURANEX2000)(「PBT2」と称する。)を用いた場合の材料分解情報を示す。
【0074】
図6(A)は1gのPBT2を、加熱装置を用いて280℃で加熱したときの不揮発成分の生成量と、加熱装置を用いて280℃で加熱したときの揮発成分の生成量をプロットしたグラフである。また、図6(B)は1gのPBT2を、加熱装置を用いて300℃で加熱したときの不揮発成分の生成量と、加熱装置を用いて300℃で加熱したときの揮発成分の生成量をプロットしたグラフである。
【0075】
図6から明らかなように、PBT2でも不揮発成分の生成量と揮発成分の生成量との間には、強い正の相関があることが解かる。したがって、射出成形に用いる成形材料がPBT2の場合、射出装置11及び/又は金型装置101から排出された材料ガスの発生量を揮発成分の生成量とすると、その材料ガスの発生量から、不揮発成分の生成量がほぼ一義的に定まることになる。
【0076】
以上より、この発明によれば、金型装置内の堆積物の付着量を簡便かつ有効に推定できる可能性が示唆された。
【符号の説明】
【0077】
1 射出成形機
2 ベースフレーム
11 射出装置
12 シリンダ
12a 供給口
12b ノズル
12c 水冷シリンダ
13 スクリュ
14 ヒータ
15 モータボックス
21 移動装置
22 液圧ポンプ
23 ポンプ作動用モータ
24 液圧シリンダ
25 スライドベース
26 ガイド
31 型締装置
32 プラテン
32a 固定プラテン
32b 可動プラテン
32c タイバー
32d ガイド部材
33 プラテン稼働機構
34 リヤプラテン
35 型締モータ
36 運動変換機構
36a ねじ軸
36b ナット
37 トグル機構
37a~37c リンク
37d クロスヘッド
38 型厚調整モータ
41 エジェクタ装置
42 エジェクタロッド
43 ロッド駆動源
51、61 ガス捕集部
101 金型装置
102 固定金型
103 可動金型
104 可動部材
105 ガスベント
Gg 発生ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6