(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095313
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物および接着体
(51)【国際特許分類】
C09J 167/02 20060101AFI20240703BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C09J167/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212513
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 甫規
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040ED031
4J040JA04
4J040JB01
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA42
4J040LA05
4J040MA09
4J040MA10
4J040NA05
(57)【要約】
【課題】生分解性を有しつつ、十分なタックフリータイムを実現可能なホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
粘着付与剤、および可塑剤をさらに含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与剤が水酸基を有する、請求項2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
スプレー塗布に用いられる、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
下記評価方法で得られるタックフリータイムが5秒以上である、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物。
(タックフリータイム評価方法)
ホットメルト接着剤組成物を180℃で加熱・溶融し、ハンドガンを用いて、PETフィルムにスプレー塗布する。ゴム手袋をした状態で、塗布されたホットメルト接剤組成物の表面を指で軽く触っても、指(ゴム手袋)につかない状態になるまでの時間を計測する。
【請求項6】
請求項1または2に記載のホットメルト接着剤組成物を用いて接着された接着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物および接着体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、ナプキン、タンポン等の衛生材料及び生理用品に代表される積層体に使用される接着剤には、エラストマーやオレフィン系ポリマーをベースとしたホットメルト接着剤が使用されている。近年、環境対応の観点から脱プラスチックの要求が高まっている。上述した積層体に関しても、基材にバイオマス由来、または生分解性樹脂を用いるだけでなく、ホットメルト接着剤にも生分解性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6057837号
【特許文献2】特開2004-131675号公報
【特許文献3】特許第4852794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホットメルト接着剤では、生分解性を有しつつ、十分なタックフリータイムを確保することが困難であった。
本発明は上述のような課題を鑑みたものであり、生分解性を有しつつ、十分なタックフリータイムを実現可能なホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、ホットメルト接着剤組成物である。当該ホットメルト接着剤組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【0006】
上記態様のホットメルト接着剤組成物は、粘着付与剤、および可塑剤をさらに含んでもよい。この場合、前記粘着付与剤が水酸基を有してもよい。
上記態様のホットメルト接着剤組成物は、スプレー塗布に用いられてもよい。
上記態様のホットメルト接着剤組成物は、下記評価方法で得られるタックフリータイムが5秒以上であってもよい。
(タックフリータイム評価方法)
ホットメルト接着剤組成物を180℃で加熱・溶融し、ハンドガンを用いて、PETフィルムにスプレー塗布する。ゴム手袋をした状態で、塗布されたホットメルト接剤組成物の表面を指で軽く触っても、指(ゴム手袋)につかない状態になるまでの時間を計測する。
【0007】
本発明の他の態様は、接着体である。当該接着体は、上述したいずれかの態様のホットメルト接着剤組成物を用いて接着される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生分解性を有しつつ、十分なタックフリータイムを実現可能なホットメルト接着剤組成物に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0010】
(ホットメルト接着剤組成物)
実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。ホットメルト接着剤組成物がPBATを含むことにより、ホットメルト接着剤組成物に生分解性を付与することができる。
ホットメルト接着剤組成物全体に対するPBATの含有量は、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。これにより、ホットメルト接着剤組成物に十分な生分解性を付与することができる。
【0011】
PBATのメルトフローレート(MFR、190℃、2.16kgf、ISO1133に準拠)は、1.0g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましく、3.0g/10分以上がさらに好ましい。
【0012】
PBATの重量平均分子量は、1万~100万が好ましく、5万~50万がより好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC装置を用いて測定される、ポリスチレン換算値である。
【0013】
実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、PBAT以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。当該熱可塑性樹脂は、生分解性を有することがより好ましい。これによれば、ホットメルト接着剤組成物に十分な生分解性を付与することができる。
実施形態に係るホットメルト接着剤組成物に用いることができるPBAT以外の熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、たとえば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリイソブテン、ポリオレフィン類(たとえばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリアルキレンオキシド類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ニトロブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-ブチレン)-block-ポリスチレン(SEBS)、水添ニトロブタジエンゴム(水添NBR)、水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(水添SBS)、水添スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(水添SIS)、水添ポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-ブチレン)-block-ポリスチレン(水添SEBS)などが挙げられる。
生分解性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリグリコール酸(PGA)、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0014】
ホットメルト接着剤組成物は、粘着付与剤、および可塑剤をさらに含んでもよい。
【0015】
・粘着付与剤
粘着付与剤としては、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されない。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の天然樹脂;石油樹脂(炭化水素樹脂)、スチレン系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂;等の芳香族化合物及び脂環族化合物、並びに、それらの水素添加物を挙げることができる。
【0016】
ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン;不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン;これらロジン、変性ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル等、及び、それらの水素添加物が挙げられる。
【0017】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン等を主成分とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等、及び、それらの水素添加物が挙げられる。
【0018】
石油樹脂としては、芳香族系炭化水素系石油樹脂、脂環族系炭化水素系石油樹脂、芳香族脂肪族の共重合系石油樹脂、芳香族脂環族の共重合系石油樹脂等、及び、それらの水素添加物が挙げられる。
【0019】
スチレン系樹脂としては、ポリαメチルスチレン、αメチルスチレン/スチレン共重合体、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー/αメチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー共重合体、スチレン系モノマー/スチレン系モノマー以外の芳香族系モノマー共重合体等を挙げることができる。
これらの粘着付与剤は、単独で、又は、組み合せて用いることができる。これらのうち、基材との接着性、特に、湿潤状態の基材との接着性、硬化した接着剤の材料強度、本発明のホットメルト接着剤組成物を適用した基材の吸水性(吸水速度)に優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができることから、石油樹脂が好ましく、芳香族系炭化水素石油樹脂、脂環族芳香族の共重合系石油樹脂、水素添加脂環族炭化水素系樹脂、水素添加芳香族系炭化水素石油樹脂、がより好ましい。
【0020】
粘着付与剤は水酸基を有することが好ましい。これによれば、PBATとの相溶性を高めることができる。
【0021】
ホットメルト接着剤組成物100質量部に対する粘着付与剤の含有量は、10~90質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましく、30~70質量部がさらに好ましい。
【0022】
・可塑剤
可塑剤としては、グリセリン又はポリグリセリンと、脂肪酸とを、混合、加熱などして得られる化合物が挙げられる。可塑剤は、市販のものを用いることができる。
ポリグリセリンは、グリセリンを重合したものである。ポリグリセリンの重合数は、本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、例えば、2~10が好ましい。ポリグリセリンの重合数がかかる範囲にある場合には、基材との接着性、および硬化した接着剤の材料強度が優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
【0023】
ポリグリセリンは、グリセリンを重合したものである。ポリグリセリンの重合数は、本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、例えば、2~10が好ましい。ポリグリセリンの重合数がかかる範囲にある場合には、基材との接着性、硬化した接着剤の材料強度により優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
【0024】
本実施形態に係る脂肪酸は、本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて特に限定されないが、炭素数が8~22の脂肪酸が好適に用いられる。脂肪酸の炭素数がかかる範囲にある場合には、基材との接着性、硬化した接着剤の材料強度により優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
【0025】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸、及び、不飽和脂肪酸を含む。不飽和脂肪酸の二重結合の数は、特に限定されないが、一般に入手可能なものを使用することができる。
【0026】
飽和脂肪酸としては、
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の直鎖状飽和脂肪酸;
2-メチルプロピオン酸、2-メチル酪酸、2-メチル吉草酸、2-メチルカプロン酸、2-メチルエナント酸、2-メチルカプリル酸、2-メチルペラルゴン酸、2-メチルカプリン酸、2-メチルウンデシル酸、2-メチルラウリン酸、2-メチルトリデシル酸、2-メチルミリスチン酸、2-メチルペンタデシル酸、2-メチルパルミチン酸、2-メチルマルガリン酸、2-メチルステアリン酸、2-メチルアラキジン酸、3-メチルプロピオン酸、4-メチルプロピオン酸、5-メチルプロピオン酸、6-メチルプロピオン酸、3-エチルプロピオン酸、2-メチルヘキサデカン酸、2-メチルエイコサデカン酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチル酪酸、2,3-ジメチル酪酸、2,2-ジメチルステアリン酸、2,3-ジメチルステアリン酸、2,4-ジメチルステアリン酸、2,2,3-トリメチル吉草酸、2,2,4-トリメチル吉草酸、2,3,3-トリメチル吉草酸、2,3,4-トリメチル吉草酸、3,3,4-トリメチル吉草酸、3,4,4-トリメチル吉草酸、2,2,3-トリメチルマルガリン酸等の分岐飽和脂肪酸;
4-ブチルシクロヘキサンカルボン酸、3-シクロペンチルプロピオン酸、4-イソブチルシクロヘキサンカルボン酸、4-プロピルシクロヘキサンカルボン酸、4-ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、3-シクロペンチルプロピオン酸、シクロヘキシル酢酸、3-ヒドロキシ-1-アダマンタン酢酸等の環状飽和脂肪酸(trans型及びcis型の区別は省略した);
2-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシエナント酸、2-ヒドロキシカプリル酸、2-ヒドロキシペラルゴン酸、2-ヒドロキシカプリン酸、2-ヒドロキシウンデシル酸、2-ヒドロキシラウリン酸、2-ヒドロキシトリデシル酸、2-ヒドロキシミリスチン酸、2-ヒドロキシペンタデシル酸、2-ヒドロキシパルミチン酸、2-ヒドロキシマルガリン酸、2-ヒドロキシステアリン酸、2-ヒドロキシアラキジン酸、2-ヒドロキシベヘン酸、3-ヒドロキシカプリル酸、4-ヒドロキシカプリル酸、5-ヒドロキシカプリル酸、6-ヒドロキシカプリル酸、2,2-ジヒドロキシカプリル酸、2,3-ジヒドロキシカプリル酸、2,4-ジヒドロキシカプリル酸、2,5-ジヒドロキシカプリル酸、3,3-ジヒドロキシカプリル酸、3,4-ジヒドロキシカプリル酸、3,5-ジヒドロキシカプリル酸、4,4-ジヒドロキシカプリル酸、4,5-ジヒドロキシカプリル酸、5,5-ジヒドロキシカプリル酸、2,2,3-トリヒドロキシペンタン酸、2,2,4-トリヒドロキシペンタン酸、2,3,3-トリヒドロキシペンタン酸、2,3,4-トリヒドロキシペンタン酸、3,3,4-トリヒドロキシペンタン酸、3,4,4-トリヒドロキシペンタン酸、2-メチル-2-ヒドロキシヘプタン酸、2-メチル-3-ヒドロキシヘプタン酸、2-メチル-4-ヒドロキシヘプタン酸、2-メチル-5-ヒドロキシヘプタン酸、3-メチル-3-ヒドロキシヘプタン酸、3-メチル-4-ヒドロキシヘプタン酸、3-メチル-5-ヒドロキシヘプタン酸、4-メチル-4-ヒドロキシヘプタン酸、4-メチル-5-ヒドロキシヘプタン酸、5-メチル-5-ヒド
ロキシヘプタン酸、2-エチル-2-ヒドロキシヘキサン酸、2-プロピル-2-ヒドロキシヘキサン酸、等のヒドロキシ飽和脂肪酸;等を挙げることができる。
【0027】
不飽和脂肪酸としては、
ミリストレイン酸(炭素数14)、パルミトレイン酸(炭素数16)、サピエン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、エライジン酸(炭素数18)、バクセン酸(炭素数18)等のモノ不飽和脂肪酸(二重結合を1つ含む不飽和脂肪酸);
リノール酸(炭素数18)等のジ不飽和脂肪酸(二重結合を2つ含む不飽和脂肪酸);
α-リノレン酸(炭素数18)、γ-リノレン酸(炭素数18)、ピノレン酸(炭素数18)、
エレオステアリン酸(炭素数18)、β-エレオステアリン酸(炭素数18)等のトリ不飽和脂肪酸(二重結合を3つ含む不飽和脂肪酸);
ステアリドン酸(炭素数18)等のテトラ不飽和脂肪酸(二重結合を4つ含む不飽和脂肪酸);
ボセオペンタエン酸(炭素数18)等のペンタ不飽和脂肪酸(二重結合を5つ含む不飽和脂肪酸);等を挙げることができる。これらの脂肪酸は、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
【0028】
可塑剤は、基材との接着性、硬化した接着剤の材料強度により優れたホットメルト接着剤組成物を得ることができる点で、グリセリン又は重合数が2~10のポリグリセリンと、炭素数が8~22の脂肪酸との縮合エステルがより好ましく、グリセリン又は重合数が2~10のポリグリセリンと、炭素数が8~22の直鎖状脂肪酸と、の縮合エステルが更に好ましい。
【0029】
ホットメルト接着剤組成物100質量部に対する可塑剤の含有量は、10~90質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましく、30~70質量部がさらに好ましい。
【0030】
・添加剤
ホットメルト接着剤組成物は、本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、上述した可塑剤とは異なる可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤(リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、帯電防止剤、難燃剤、上述した粘着付与樹脂とは異なる粘着付与剤、抗菌剤、光安定剤、安定剤、分散剤、溶剤、親水性付与剤等が挙げられる。
【0031】
・タックフリータイム
ホットメルト接着剤組成物は、下記評価方法で得られるタックフリータイムが5秒以上であることが好ましく、10秒以上であることがより好ましく、20秒以上であることがさらに好ましい。タックフリータイムを5秒以上とすることにより、スプレー塗布に適した接着材組成物とすることができる。また、後述するような塗布工程後、冷却固化するまでの時間を十分長くすることができるため、接着対象物との密着性を十分に高めることができ、ひいては、強固に接着された接着体(積層体)を得ることができる。
(タックフリータイム評価方法)
ホットメルト接着剤組成物を180℃で加熱・溶融し、ハンドガンを用いて、PETフィルムにスプレー塗布する。ゴム手袋をした状態で、塗布されたホットメルト接剤組成物の表面を指で軽く触っても、指(ゴム手袋)につかない状態になるまでの時間を計測する。
【0032】
(ホットメルト接着剤組成物の製造方法)
ホットメルト接着剤組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造可能である。例えば、一軸又は二軸押出機等の連続混練機、もしくは、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、高剪断Z翼ミキサー等のバッチ式混練機に、上述した原料を投入し、所定時間混練すればよい。
【0033】
(用途)
実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、十分なタックフリータイムを有するため、スプレー塗布用の組成物として好適に用いられる。以下、本実施形態のホットメルト接着剤組成物をスプレー塗布する場合について詳述する。
【0034】
まず、本実施形態のホットメルト接着剤組成物を溶融した状態で保持する(溶融工程)。次に、溶融状態であるホットメルト接着剤組成物を、接着対象面の少なくとも一方に、所望の塗布量となるようにスプレー塗布する(塗布工程)。スプレー方法としては、公知の方法、例えば、カーテンスプレー、オメガスプレー、スパイラルスプレー、サミットスプレー等を適用可能である。塗布工程後、一方の接着対象面に他方の接着対象面を押し付けた状態で維持し、ホットメルト接着剤組成物を冷却固化させる(固化工程)。なお、塗布工程の前に、接着対象面に公知の表面処理を行ってもよい。
【0035】
(接着体)
実施形態に係る接着体(積層体)は、上述した態様のホットメルト接着剤組成物を用いて基材が接着された積層物である。接着体に用いられる基材は、特に限定されないが、生分解性を有する基材を用いることが好ましい。生分解性を有する基材を上述した態様のホットメルト接着剤組成物で接着することにより、得られる接着体全体を生分解性に優れたものにすることができる。
実施形態に係る接着体に用いられる基材としては、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、シクロオレフィン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等の樹脂フィルム、樹脂シートや樹脂多孔体;MDF、合板、パーチクルボード等の木質基材;不織布、織布、編み物等の繊維基材;ステンレス、アルミニウム、銅、鉄鋼、クロム、亜鉛、ジェラルミン、ダイカスト、これらの合金などの金属基材などが挙げられる。
より具体的には、当該基材は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリグリコール酸(PGA)、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉ポリエステル樹脂等の生分解性樹脂フィルム、生分解性樹脂不織布、生分解性樹脂ファブリック、生分解性樹脂多孔体、紙からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0036】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
表1に示す成分および配合量にて、プラネタリーミキサーにて、180℃で15分間混練して、各実施例および各比較例に係るホットメルト接着剤組成物を得た。
【0039】
各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着剤を、以下に従い評価した。
【0040】
(ブリード)
各実施例及び各比較例の係るホットメルト接着剤組成物を用いて10cm×10cm×t1mmの平板サンプルを作製した。当該平板サンプルを、23℃、50%RHの恒温恒湿室で一晩放置した後、下記の基準にしたがってブリードを評価した。
<ブリード評価基準>
A:表面が乾いており、触診しても可塑剤が染み出ない
B:表面が乾いているが、触診すると可塑剤が染み出ている
C:表面に湿潤由来の光沢があり、触ると可塑剤が染み出ている
【0041】
(相溶性)
各実施例及び各比較例の係るホットメルト接着剤組成物をガラス製バイアル瓶に入れ、180℃の恒温槽で30分放置した。その後、ホットメルト接着剤組成物を目視して確認し、下記の判断基準に従い判定した。
<相溶性評価基準>
A:透明である
B:一部にモヤ、もしくは少し白濁が確認できる
C:完全に白濁している
【0042】
(剥離強度)
下記の試験条件にて、ハンドスプレーにより各実施例及び各比較例の係るホットメルト接着剤組成物をPBS不織布へスプレー塗布し(塗布量:30g/m2)、その上にPBSフィルムを貼り合わせることにより積層体を作製した。得られた積層体について、剥離試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ AG-X)を用いて剥離強度(180°剥離試験、剥離速度:300mm/分)を測定した。また、剥離時の破壊モードを確認した。剥離強度および破壊モードに関する結果を表1に示す。
<試験条件>
塗工機:ハンドスプレー
基材:PBS不織布/PBSフィルム
塗布温度:180℃
ノズル:スパイラルノズル
貼りあわせ時間:30秒
【0043】
(タックフリータイム)
各実施例及び各比較例の係るホットメルト接着剤組成物を180℃で溶融し、ハンドガンを用いて、PETフィルムにスプレー塗布した。ゴム手袋をした状態で、表面を指で軽く触っても、指(ゴム手袋)につかない状態になるまでの時間(秒)を計測し、タックフリータイムとした。タックフリータイムの結果を表1に示す。
【0044】
(溶融粘度)
各実施例及び各比較例の係るホットメルト接着剤組成物の160℃、180℃、200℃における溶融粘度を、レオメータ(株式会社アントンパール製、MCR302)にパラレルプレートを装着して、周波数1Hz、ずり速度1rad/秒の条件の下で測定を行った。溶融粘度に関する結果を表1に示す。
【0045】
(DSC測定)
各実施例および各比較例のホットメルト接着剤組成物について、DSC装置(示差走査熱量計、株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて、融点(℃)、融解エネルギー(mJ/mg)、固化温度(℃)および結晶化エネルギー(mJ/mg)を測定した。融点(融解温度)、固化温度(結晶化温度)に関しては、JIS-K7121に準拠し、融解エネルギー、結晶化エネルギーは融解時あるいは結晶化時の発熱量から測定した。DSC測定時の条件を以下に記載する。
昇温速度:5℃/分
降温速度:5℃/分
N2ガス:40ml/分
各測定結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1に示すように、実施例1~4のホットメルト接着剤組成物は、樹脂成分としてPBATを用いることにより生分解性を発揮しつつ、十分なタックフリータイムを発揮することが確認された。これに対して、比較例1、2のホットメルト接着剤組成物はでは、十分なタックフリータイムが得られないことが分かった。