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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095314
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/172 20060101AFI20240703BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240703BHJP
   B60T 13/13 20060101ALI20240703BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60T8/172 Z
B60T8/17 B
B60T13/13
B60T13/138 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212514
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本山 航也
(72)【発明者】
【氏名】石本 卓士
(72)【発明者】
【氏名】澤頭 良彦
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048CC18
3D048CC19
3D048FF16
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH42
3D048HH50
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH75
3D048RR06
3D048RR11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA25
3D246GB01
3D246HA43A
3D246HA45A
3D246HA47C
3D246JB28
3D246LA07Z
3D246LA15Z
3D246LA16Z
3D246LA33Z
3D246LA57Z
3D246LA63Z
(57)【要約】
【課題】車輪のホイールシリンダの減圧制御の精度向上を目的とする。
【解決手段】ECU(2)は、電気モータ(163)によって電動シリンダ(16)と保持弁(182)との間のブレーキ液の第2液圧が所定圧力となる位置にピストン(162)を制御した状態で、各車輪の保持弁(182)を完全に閉弁した後に、対象車輪の減圧弁(183)を所定時間だけ開弁して対象車輪のホイールシリンダ内のブレーキ液の第1液圧を減圧する減圧処理を実行し、前記減圧処理において減圧されたブレーキ液を電動ポンプ(184)によって低圧リザーバ(186)から電動シリンダ(16)へ汲み上げたときの前記第2液圧の変動量を取得する取得処理を実行し、前記取得処理において取得された前記変動量と、電動シリンダ(16)から保持弁(182)に至るまでの液圧伝達経路の消費液量特性とに基づいて、前記減圧処理における前記対象車輪の前記減圧弁の減圧液量を推定する推定処理とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧源および調圧ユニットを制御する制御装置であって、
前記加圧源は、シリンダ、および電気モータの駆動によって前記シリンダ内を移動するピストンを有し、
前記調圧ユニットは、前記加圧源と各車輪のホイールシリンダとを接続する液路に配置され、前記加圧源による前記ホイールシリンダ内のブレーキ液の第1液圧の増圧を抑制する常開型の複数の保持弁、前記ホイールシリンダとブレーキ液を貯留する調圧リザーバとを接続する液路に配置され、前記第1液圧を減圧する常閉型の複数の減圧弁、および前記調圧リザーバから前記加圧源へブレーキ液を汲み上げる電動ポンプ、を有し、
前記制御装置は、
前記電気モータによって前記加圧源と前記保持弁との間のブレーキ液の第2液圧が所定圧力となる位置に前記ピストンを制御した状態で、前記各車輪の前記保持弁を閉弁した後に、前記各車輪のいずれかである対象車輪の前記減圧弁を所定時間だけ開弁して前記対象車輪の前記第1液圧を減圧する減圧処理を実行し、
前記減圧処理において減圧されたブレーキ液を前記電動ポンプによって前記調圧リザーバから前記加圧源へ汲み上げたときの前記第2液圧の変動量を取得する取得処理を実行し、
前記取得処理において取得された前記変動量と、前記加圧源から前記対象車輪の前記保持弁に至るまでの液圧伝達経路の消費液量特性とに基づいて、前記減圧処理における前記対象車輪の前記減圧弁の減圧液量を推定する推定処理を実行する、制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記減圧処理における前記所定時間から想定される減圧液量と、前記推定処理において推定された前記減圧液量に基づいて、前記第1液圧の減圧を制御する減圧制御時における前記対象車輪の前記減圧弁の開弁時間を補正する補正処理を更に実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記補正処理において補正された前記開弁時間に基づいて前記減圧弁を制御し、前記各車輪の前記ホイールシリンダにおけるブレーキ液の液圧を減圧して前記各車輪に対する制動力を制御するアンチロックブレーキ制御を実行する、請求項2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動力を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレーキ液の流量を制御し、ホイールシリンダ圧を増減圧する制動制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/55419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の制動制御装置には、車輪のホイールシリンダの減圧制御にさらなる精度向上が望まれている。
【0005】
本発明の一態様は、車輪のホイールシリンダの減圧制御の精度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、加圧源および調圧ユニットを制御する制御装置であって、前記加圧源は、シリンダ、および電気モータの駆動によって前記シリンダ内を移動するピストンを有し、前記調圧ユニットは、前記加圧源と各車輪のホイールシリンダとを接続する液路に配置され、前記加圧源による前記ホイールシリンダ内のブレーキ液の第1液圧の増圧を抑制する常開型の複数の保持弁、前記ホイールシリンダとブレーキ液を貯留する調圧リザーバとを接続する液路に配置され、前記第1液圧を減圧する常閉型の複数の減圧弁、および前記調圧リザーバから前記加圧源へブレーキ液を汲み上げる電動ポンプ、を有し、前記制御装置は、前記電気モータによって前記加圧源と前記保持弁との間のブレーキ液の第2液圧が所定圧力となる位置に前記ピストンを制御した状態で、前記各車輪の前記保持弁を閉弁した後に、前記各車輪のいずれかである対象車輪の前記減圧弁を所定時間だけ開弁して前記対象車輪の前記第1液圧を減圧する減圧処理を実行し、前記減圧処理において減圧されたブレーキ液を前記電動ポンプによって前記調圧リザーバから前記加圧源へ汲み上げたときの前記第2液圧の変動量を取得する取得処理を実行し、前記取得処理において取得された前記変動量と、前記加圧源から、前記対象車輪の前記保持弁に至るまでの液圧伝達経路の消費液量特性とに基づいて、前記減圧処理における前記対象車輪の前記減圧弁の減圧液量を推定する推定処理とを実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、車輪のホイールシリンダの減圧制御の精度向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る制動制御装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示すECUによる制御の流れを示すフローチャートである。
図3】制動制御装置の各部の駆動タイミングとサーボ圧の経時変化とを示すタイミングチャートである。
図4】消費液量特性について説明する図である。
図5】減圧液量の推定値の算出について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
[制動機構]
図1を参照して、本実施形態に係る制動制御装置1の一例について説明する。図1は、制動制御装置1の概略構成を示す図である。制動制御装置1は、車両に備えられる。
【0011】
{制動制御装置の構成}
制動制御装置1は、車両に備えられた車輪FL、FR、RLおよびRRに対し、制動力を付与する。制動制御装置1は、図1に示すように、加圧ユニット1Aと、調圧ユニット1Bと、ECU(Electronic Control Unit)2と、を備えている。なお、図1は、各部の位置が制動操作を受ける前の初期位置にあるときの状態を示している。
【0012】
〔加圧ユニット〕
加圧ユニット1Aは、ブレーキ液を貯留するマスタリザーバ11と、マスタシリンダ12と、ストロークシミュレータ13と、液路14A、14B、14Cおよび14Dと、第1開閉弁15Aと、第2開閉弁15Bと、電動シリンダ16と、前輪ホイールシリンダ17Aと、後輪ホイールシリンダ17Bと、サーボ圧センサScと、液圧センサSdと、を備えている。以下、各部について、図1における左方を加圧ユニット1Aにおける前方とし、図1における右方を加圧ユニット1Aにおける後方として説明する。
【0013】
(マスタシリンダ)
マスタシリンダ12は、調圧ユニット1Bにブレーキ液を供給する。マスタシリンダ12は、メインシリンダ121と、入力シリンダ122と、マスタピストン123と、入力ピストン124と、マスタばね125と、入力ばね126と、を備えている。
【0014】
メインシリンダ121は、底壁121aと、第1周壁121bと、第2周壁121cと、第1環状壁121dと、を有している。底壁121aは、加圧ユニット1Aにおける前方から見て、略円板状をなしている。第1周壁121bは、底壁121aから底壁121aの軸線Lに沿って延びる円筒状をなしている。第2周壁121cは、第1周壁121bの後端から第1周壁121bの軸線Lに沿って延びる円筒状をなしている。第2周壁121cの内径は第1周壁121bの内径よりも大きくなっている。第1環状壁121dは、第2周壁121cの後端から第2周壁121cの軸線Lに向かって延びている。第1環状壁121dは円環状をなしている。
【0015】
入力シリンダ122は、第3周壁122aと、第2環状壁122bと、を有している。第3周壁122aは、円筒状をなしている。第3周壁122aは、メインシリンダ121の第2周壁121cと軸線Lが一致するように、第1環状壁121dに接合されている。第2環状壁122bは、第3周壁122aの後端から第3周壁122aの軸線Lに向かって延びる円筒状をなしている。
【0016】
マスタピストン123は、メインシリンダ121の第1周壁121bの内周面、第2周壁121cの内周面および第1環状壁121dの内周面に面接触する状態で、マスタシリンダ12に収容されている。マスタピストン123の後端は、第1環状壁121dよりも後方に突出し、入力シリンダ122内に位置している。マスタピストン123がこのように配置されることにより、メインシリンダ121内には、マスタ室Ra、第1液室Rb、およびサーボ室Rcが形成される。
【0017】
マスタ室Raは、マスタシリンダ12の前方端寄りの位置において、底壁121aと第1周壁121bとマスタピストン123とによって区画される液室である。マスタ室Raは、マスタリザーバ11と接続されている。詳しくは、第1周壁121bにおけるマスタ室Raの後方端寄りの箇所に形成されるポートを介してマスタリザーバ11と接続されている。第1液室Rbは、マスタ室Raよりも後方において、第2周壁121cとマスタピストン123とによって区画される液室である。サーボ室Rcは、第1液室Rbよりも後方において、第2周壁121cと第1環状壁121dとマスタピストン123とによって区画される液室である。また、サーボ室Rcは、その受圧面積が、マスタ室Raの受圧面積と等しく設定されている。マスタ室Raと第1液室Rbは、互いに接続されていない、すなわち、マスタ室Raと第1液室Rbは、ブレーキ液を授受しない。また、第1液室Rbとサーボ室Rcは互いに接続されていない。
【0018】
マスタピストン123は、メインシリンダ121および入力シリンダ122に対して移動可能となっている。移動する際、マスタピストン123は、第1周壁121bの内周面、第2周壁121cの内周面および第1環状壁121dの内周面を摺動する。また、マスタピストン123が図1に示した初期位置から前方に移動すると、マスタ室Raとマスタリザーバ11とがマスタピストン123によって遮断される。その結果、マスタピストン123が前方へ移動するのに伴い、マスタ室Raの液圧が増大していく。
【0019】
入力ピストン124は、入力シリンダ122の第3周壁122aの内周面および第2環状壁122bの内周面に面接触する状態で、マスタシリンダ12に収容されている。入力ピストン124の後方端は、第2環状壁122bよりも後方に突出し、ブレーキペダル124aに連結されている。また、入力ピストン124の前方端は、マスタピストン123の後方端と離間している。入力ピストン124がこのように配置されることにより、入力シリンダ122内には、第2液室Rd、および第3液室Reが形成される。第2液室Rdは、メインシリンダ121の第1環状壁121dとマスタピストン123と第3周壁122aと入力ピストン124とによって区画される液室である。第3液室Reは、第2液室Rdよりも後方において、第3周壁122aと第2環状壁122bと入力ピストン124とによって区画される液室である。第3液室Reは、マスタリザーバ11と接続されている。第2液室Rdと第3液室Reは、互いに接続していない。
【0020】
入力ピストン124は、入力シリンダ122に対して移動可能となっている。このため、入力ピストン124は、ブレーキペダル124aが操作される、すなわち踏まれると、その操作量に応じて、前方、すなわち、マスタピストン123に接近する方向に移動する。その際、入力ピストン124が第3周壁122aの内周面および第2環状壁122bの内周面を摺動する。また、入力ピストン124が前方に移動する際、マスタリザーバ11から第3液室Reにブレーキ液が供給される。また、入力ピストン124は、ブレーキペダル124aの操作が解除されると、後方に移動する。その際、第3液室Reからマスタリザーバ11にブレーキ液が排出される。
【0021】
マスタばね125は、メインシリンダ121内であって、マスタ室Ra、詳しくは、メインシリンダ121の底壁121aとマスタピストン123との間に配置されている。そして、マスタばね125は、マスタピストン123を後方、すなわちマスタ室Raの容積を拡大する方向に付勢している。つまり、マスタばね125は、マスタピストン123が前方に移動すると、弾性的に圧縮される。マスタピストン123を移動させる力が低下すると、マスタばね125はマスタピストン123を押し戻す。
【0022】
入力ばね126は、入力シリンダ122内であって、入力シリンダ122の第2液室Rd、詳しくは、メインシリンダ121の第1環状壁121dと入力ピストン124との間に配置されている。入力ばね126は、入力ピストン124を後方、すなわち第2液室Rdの容積を拡大する方向に付勢している。つまり、入力ばね126は、入力ピストン124が前方に移動すると、弾性的に圧縮される。入力ピストン124を移動させる力が低下すると、入力ばね126は入力ピストン124を押し戻す。
【0023】
(液路)
液路14Aは、調圧ユニット1Bを介して、マスタシリンダ12のマスタ室Raと前輪ホイールシリンダ17Aとを接続している。液路14Bは、第1液室Rbと第2液室Rdとを接続している。液路14Cは、マスタリザーバ11と液路14Bとを接続している。液路14Dは、調圧ユニット1Bを介して、マスタシリンダ12のサーボ室Rcと後輪ホイールシリンダ17Bとを接続している。
【0024】
(第1開閉弁および第2開閉弁)
第1開閉弁15Aは、液路14Bにおける、液路14Cとの接続点よりも第2液室Rd側に設けられている。第2開閉弁15Bは、液路14Cにおける、液路14Bとの接続点と電動シリンダ16との接続点との間に設けられている。第1開閉弁15Aおよび第2開閉弁15Bは、共に常閉型の電磁弁である。制動時、第1開閉弁15Aおよび第2開閉弁15Bには、それぞれ電流が供給される。このとき、第1開閉弁15Aが開弁して、第1液室Rbおよび第2液室Rdがストロークシミュレータ13に接続される。また、このとき、第2開閉弁が閉弁して、第1液室Rbおよび第2液室Rdがマスタリザーバ11から遮断される。そして、ストロークシミュレータ13がブレーキペダル114aの操作量に応じた反力を発生させる。液路14Bにおける第1開閉弁15Aと第2液室Rdとの間には、液路14Bの液圧Pdを測定する液圧センサSdが設けられている。
【0025】
(電動シリンダ)
電動シリンダ16は、マスタシリンダ12および調圧ユニット1Bにブレーキ液を供給する加圧源である。電動シリンダ16は、シリンダ161と、ピストン162と、電気モータ163とを備える。ピストン162は、電気モータ163の駆動によってシリンダ161内を移動する。
【0026】
電動シリンダ16は、後輪ホイールシリンダ17B、およびマスタシリンダ12のサーボ室Rcと接続されている。即ち、電動シリンダ16は、後輪ホイールシリンダ17B、およびサーボ室Rcにブレーキ液を供給可能である。電動シリンダ16は、ブレーキペダル124aの操作量(以下、「操作変位量Ss」と称する。)に応じたサーボ圧Pc(第2液圧)に加圧されたブレーキ液を出力ポート16aから液路14Dへ吐出する。具体的には、操作変位量Ssに基づいて、ECU2が目標圧Ptを算出する。そして、ECU2が、サーボ圧Pcが目標圧Ptと一致するよう電動シリンダ16の電気モータ163を制御する。サーボ圧Pcは、サーボ圧センサScによって検出される。ここで、サーボ圧センサScは、サーボ圧Pcを測定する液圧センサである。サーボ圧Pcはサーボ室Rcの液圧と等しい。また、操作変位量Ssは、例えば、ブレーキペダル124aに備えられたストロークセンサSSによって測定することができる。
【0027】
電動シリンダ16から出力された液圧Pcのブレーキ液は、液路14Dを通って、サーボ室Rcおよび調圧ユニット1Bそれぞれに供給される。サーボ室Rcにブレーキ液が供給されることで、マスタピストン123は前方、すなわちマスタ室Raの容積が減少する方向に移動し、マスタ圧Pmを発生させる。つまり、マスタピストン123の移動に伴い、マスタ室Raから液路14Aに、液圧Pmに加圧されたブレーキ液が吐出される。液路14Aに吐出された液圧Pm(=Pc)のブレーキ液は、調圧ユニット1Bを経由して前輪ホイールシリンダ17Aに供給される。すなわち、前輪ホイールシリンダ17Aは、マスタシリンダ12を介して電動シリンダ16と接続されているとも言える。上述したように、マスタシリンダ12は、マスタ室Raの受圧面積が、サーボ室Rcの受圧面積と等しく設定されている。このため、サーボ圧Pcはマスタ圧Pmと等しい。
【0028】
(ホイールシリンダ)
ホイールシリンダ17Aおよび17Bは、ブレーキ液が供給されると、図示しないブレーキパッドを移動させる。移動したブレーキパッドは、車輪FL、FR、RLおよびRRと一体に回転する図示しない回転板に押し付けられる。これにより、車輪FL、FR、RLおよびRRに対し、制動力が付与される。ホイールシリンダ17Aおよび17Bは、ホイールシリンダ17Aおよび17B内の液圧であるホイール圧(第1液圧)が高いほど、ブレーキパッドを回転板に強く押し付ける。つまり、ホイール圧が高いほど、車輪FL、FR、RLおよびRRが発生する制動力が大きくなる。
【0029】
〔調圧ユニット〕
調圧ユニット1Bは、アンチロックブレーキ(ABS)制御および車両挙動を安定化する横滑り防止制御を行うためのものである。調圧ユニット1Bは、ホイールシリンダ17Aおよび17Bの各ホイール圧を個別に調整して、車輪FL、FR、RLおよびRRの制動力を個別に調整する。調圧ユニット1Bは、電動シリンダ16と各車輪FL、FR、RL、RRのホイールシリンダ17A、17Bとを接続する液路14A、14Dに配置される。
【0030】
調圧ユニット1Bは、前輪液圧調整部18Aと、後輪液圧調整部18Bと、を備えている。前輪液圧調整部18Aおよび後輪液圧調整部18Bは、液圧回路上、互いに独立している。このため、調圧ユニット1Bは、前輪ホイールシリンダ17Aに作用するホイール圧と、後輪ホイールシリンダ17Bに作用するホイール圧を独立して調圧することができる。以下、調圧ユニット1Bについて、加圧ユニット1A側を上流側、ホイールシリンダ17Aおよび17B側を下流側として説明する。また、前輪液圧調整部18Aと後輪液圧調整部18Bは多くの構成が共通しているため、まずは前輪液圧調整部18Aの各構成について説明し、後輪液圧調整部18Bについては、前輪液圧調整部18Aとの差異についてのみ説明する。
【0031】
(前輪液圧調整部)
前輪液圧調整部18Aは、上流側からのマスタ圧Pmを基に、前輪ホイールシリンダ17Aのホイール圧を加圧することが可能に構成されている。また、前輪液圧調整部18Aは、前輪ホイールシリンダ17Aのホイール圧を調圧可能に構成されている。前輪液圧調整部18Aは、加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12と前輪ホイールシリンダ17Aとの間に設けられている。
【0032】
前輪液圧調整部18Aには、加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12からブレーキ液が供給される。前輪液圧調整部18Aは、加圧ユニット1Aが発生させた基礎液圧を基に、前輪ホイールシリンダ17Aの液圧を増大可能に構成されている。前輪液圧調整部18Aは、入力された液圧と前輪ホイールシリンダ17Aの液圧との間に差圧を発生させることで前輪ホイールシリンダ17Aを加圧するように構成されている。
【0033】
前輪液圧調整部18Aは、増圧弁181と、チェックバルブ181aと、保持弁182と、チェックバルブ182aと、減圧液路183aと、減圧弁183と、ポンプ液路184aと、電動ポンプ184と、電気モータ185と、還流液路186aと、低圧リザーバ186と、マスタ圧センサSmと、を備えている。
【0034】
ここで、液路14Aは、分岐部Xで、車輪FR側の前輪ホイールシリンダ17Aに接続する液路14Aと、車輪FL側の前輪ホイールシリンダ17Aに接続する液路14Aとに分岐している。左右の各液路14Aに配置される構成、すなわち保持弁182、チェックバルブ182a、減圧液路183a、および減圧弁183は、左右で同様の構成となっている。このため、以下、左右の各液路14Aにそれぞれ設けられる構成については、右側の構成についてのみ説明し、左側の構成についてはその説明を省略する。
【0035】
増圧弁181は、液路14Aにおいて、分岐部Xとマスタ圧センサSmとの間に設けられた常開型のリニア弁、すなわちノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。増圧弁181の開度が制御されることで、増圧弁181を挟んだ上下流間に差圧を発生させることができる。なお、後輪液圧調整部18Bにおける増圧弁181は、分岐部Xと加圧ユニット1Aとの間に設けられている。これは、後輪液圧調整部18Bがマスタ圧センサSmを備えていないためである。
【0036】
チェックバルブ181aは、増圧弁181に対して並列に設けられている。チェックバルブ181aは、上流側から下流側に向けてのブレーキ液の流通のみを許可するよう構成されている。
【0037】
保持弁182は、ホイールシリンダ17Aと当該ホイールシリンダ17Aを加圧する加圧源とを接続するブレーキ液の液路14Aに配置されている。また、保持弁182は、電流の供給を受けることにより、加圧源によるホイールシリンダ17A内のホイール圧の増圧を抑制することができる常開型のリニア弁、すなわちノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。つまり、保持弁182は、液路14Aにおいて、電動シリンダ16によってブレーキ液が供給される位置、すなわち、分岐部Xよりもホイールシリンダ17A側に設けられている。保持弁182に電流が供給されない場合には、保持弁182は全開状態である。保持弁182に電流が供給される場合には、電流の値に応じて、その開弁量が減少される。従って、所定の差圧を維持するためには、所定の電流が供給される。
【0038】
ここで、上記増圧弁181と、ここまで説明してきた保持弁182との差異について説明する。電気モータ185が駆動されると、電動ポンプ184が、増圧弁181の上流側からブレーキ液を吸引し、それを増圧弁181の下流側、すなわち分岐部Xに吐出する。これにより、増圧弁181を通るブレーキ液の循環流が発生する。増圧弁181が備えるソレノイドの推力は、循環流、すなわち分岐部Xから上流側へ向かうブレーキ液の流れに対抗するように作用する。この推力によって増圧弁181の弁座と弁体との隙間が狭められると、オリフィス効果によって、増圧弁181と保持弁182との間の液路14Aの液圧である調整圧が、マスタ圧Pmよりも大きくなる。
【0039】
一方、保持弁182が備えるソレノイドの推力は、分岐部Xから前輪ホイールシリンダ17Aへ向かうブレーキ液の流れに対抗するように作用する。この推力によって保持弁182の弁座と弁体との隙間が狭められると、保持弁182は、調整圧が、前輪ホイールシリンダ17Aに伝達されるのを阻止することができる。ホイール圧の増加が必要な場合には、保持弁182が開弁され、ホイールシリンダ17Aに作用する液圧が調整圧と等しくなる。上述したように、マスタ室Raの受圧面積とサーボ室Rcの受圧面積が等しく設定されることで、サーボ圧Pcはマスタ圧Pmと等しくなっている。このため、このときのマスタ圧Pmは調整圧と等しくなる。
【0040】
チェックバルブ182aは、保持弁182に対して並列に設けられている。チェックバルブ182aは下流側から上流側に向けてのブレーキ液の流通のみを許可するように構成されている。
【0041】
ここで、第1液路14aは、液路14Aの一部を構成し、加圧ユニット1Aの電動シリンダ16と保持弁182とをマスタシリンダ12を介して接続している。第2液路14bは、液路14Aの一部を構成し、保持弁182と前輪ホイールシリンダ17Aとを接続している。なお、後輪液圧調整部18Bにおける第1液路14aは、液路14Dの一部を構成し、電動シリンダ16と保持弁182とを直接接続している。また、後輪液圧調整部18Bにおける第2液路14bは、液路14Dの一部を構成し、保持弁182と後輪ホイールシリンダ17Bとを接続している。なお、第2液路14bにおけるブレーキ液の液圧は、第1液圧の一種である。
【0042】
減圧液路183aは、液路14Aにおける、保持弁182とホイールシリンダ17Aとの間と、低圧リザーバ186とを接続する液路である。減圧液路183a上に、減圧弁183が配置されている。減圧弁183は、ホイールシリンダ17A内のホイール圧を減圧することができる常閉型、すなわち、ノーマルクローズ型の電磁弁である。減圧弁183が開弁状態の場合、ホイールシリンダ17A内のブレーキ液は減圧液路183aを介して低圧リザーバ186に流入可能である。したがって、減圧弁183を開弁させることで、ホイールシリンダ17Aの圧力を減圧可能である。
【0043】
ポンプ液路184aは、減圧液路183aにおける、減圧弁183と低圧リザーバ186との間と、液路14Aの分岐部Xと、を接続する液路である。ポンプ液路184aには電動ポンプ184が設けられている。
【0044】
電動ポンプ184は、電気モータ185の駆動に応じて作動するポンプであり、例えば周知のピストンポンプまたはギアポンプである。電動ポンプ184の吸入側は低圧リザーバ186と接続されていて、電動ポンプ184の吐出側は分岐部Xに接続されている。電動ポンプ184が作動すると、低圧リザーバ186内のブレーキ液を吸入して、分岐部Xにブレーキ液を供給する。例えば各保持弁182を閉じ電動ポンプ184の駆動により低圧リザーバ186内のブレーキ液を汲み上げようとすると、電動ポンプ184が吐出したブレーキ液は、分岐部Xを介して加圧ユニット1Aのマスタシリンダ12に供給される。なお、後輪液圧調整部18Bでは、上述した前輪液圧調整部18Aとは異なり、電動ポンプ184が吐出したブレーキ液は、分岐部Xを介して加圧ユニット1Aの電動シリンダ16に供給される。
【0045】
低圧リザーバ186はブレーキ液を貯留する周知の調圧リザーバであり、減圧液路183aおよび還流液路186aと接続されている。還流液路186aは、液路14Aにおける、増圧弁181よりも上流側と低圧リザーバ186とを接続する液路である。低圧リザーバ186内のブレーキ液は、電動ポンプ184の作動により吸入される。低圧リザーバ186内のブレーキ液量が減少すると、低圧リザーバ186内の弁が開弁し、液路14Aから還流液路186aを介して低圧リザーバ186にブレーキ液が供給される。
【0046】
マスタ圧センサSmは、マスタ圧Pmを測定する液圧センサである。マスタ圧Pmは、第1液路14aにおけるブレーキ液の液圧であり、第2液圧の一種である。マスタ圧センサSmは、第1液路14aにおいて増圧弁181よりも加圧ユニット1A側に設けられている。
【0047】
(後輪液圧調整部)
後輪液圧調整部18Bは、前輪液圧調整部18Aと同様、上流側からのサーボ圧Pcを基に、増圧弁181等によって、後輪ホイールシリンダ17Bのホイール圧を加圧することが可能に構成されている。また、後輪液圧調整部18Bは、保持弁182等によって、ホイールシリンダ17Bを調圧可能に構成されている。後輪液圧調整部18Bは、電動シリンダ16と後輪のホイールシリンダ17Bとの間に設けられる。後輪液圧調整部18Bは、マスタ圧センサSmを備えていない点を除き、前輪液圧調整部18Aと同様に構成されている。
【0048】
(ECU)
ECU2は、制動制御装置1を構成する各構成要素、本実施形態では、加圧ユニット1Aおよび調圧ユニット1Bを制御する制御ユニットである。ECU2は、制御装置の一例である。ECU2は、プロセッサ、メモリ、駆動回路、および入出力インタフェースを備えたマイクロコンピュータにより構成される。ECU2には少なくとも一つのプロセッサが備えられ、プロセッサはメモリに格納された制御プログラムに従って、各種制御を実行する。プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。メモリには、制御プログラムと共に、各種データが格納されている。メモリの例として、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を挙げることができる。駆動回路は、加圧ユニット1Aおよび調圧ユニット1Bへ電流を供給する。ECU2は、入出力インタフェースを介して、制動制御装置1に備えられる各センサSS、Sc、Sd、Sm、およびSkからのデータ取得が可能である。
【0049】
次に、図2図5を参照して、ECU2による加圧ユニット1Aおよび調圧ユニット1Bの制御について説明する。図2は、図1に示すECU2による制御の流れを示すフローチャートである。図3は、制動制御装置1の各部の駆動タイミングとサーボ圧の経時変化とを示すタイミングチャートである。図4は、消費液量特性について説明する図である。図5は、減圧液量の推定値の算出について説明する図である。なお、以下において説明するECU2による制御は、車両に制動制御装置1が搭載された状態で実施される。
【0050】
なお、以下の説明においては、図2に示すフローチャートをベースに説明する。図2以外の図面を参照して説明する場合、参照先を記載する。また、図3に示すタイミングチャートにおいて、各項目の横軸は時間Tを示し、「電動シリンダ」の項目の縦軸は電動シリンダ16のピストン162の変位量Spを示し、「サーボ圧」の項目の縦軸はサーボ圧センサScが測定したサーボ圧Pcを示し、その他の項目の縦軸は各部に供給される電流値iを示している。
【0051】
ステップS1において、ECU2は、保持弁182より上流側の消費液量特性Zcを算出する。消費液量特性Zcは、電動シリンダ16から保持弁182に至るまでの液圧伝達経路である第1液路14aの消費液量特性、すなわちサーボ圧Pcと消費液量Qcとの関係であり、図4にその一例を示す。縦軸のサーボ圧Pcは、サーボ圧センサScが測定した液圧である。横軸の消費液量Qcは、全ての保持弁182が完全に閉弁された状態で、サーボ圧Pcを発生させるために必要なブレーキ液の液量である。すなわち、消費液量Qcは、サーボ圧Pcを発生させる際に、電動シリンダ16、マスタシリンダ12、および第1液路14aによって消費されるブレーキ液の液量である。この消費液量Qcは、マスタシリンダ12、電動シリンダ16、および第1液路14aの剛性(「ばね定数」とも称される。)によって定まる。
【0052】
ステップS1において、ECU2は、保持弁182及び電動シリンダ16の駆動を制御する。詳細について図3を参照して説明する。ECU2は、時間T1にて各保持弁182に電流値i0の電流を供給することにより各保持弁182を完全に閉弁させる。次に、ECU2は、各保持弁182を完全に閉弁させた状態のまま、電動シリンダ16を制御して、サーボ圧Pcを増加させていく。より詳しくは、ECU2は、時間T2にてシリンダ161に対してピストン162を前方、すなわち、ブレーキ液を出力ポート16aから液路14Dへ吐出する方向へ移動させる。その際、ECU2は、ピストン162の変位量Spを取得する。ピストン162の変位量Spは、例えば、電動シリンダ16の電気モータ163に備えられた回転角センサSkが測定したモータ回転角Kaに基づいて算出することができる。変位量Spの取得は、1回でもよいし複数回行ってもよい。その後、ECU2は、時間T3にてピストン162を後方へ移動させるように電気モータ163を制御し、時間T4にて電気モータ163の駆動を停止させる。変位量Spは、時間T3にて最大の変位量Sp3となる。サーボ圧Pcは、電動シリンダ16のストロークに応じて増減し、時間T3にて最大の値Pc3となる。
【0053】
また、ステップS1において、ECU2は、取得した変位量Spを消費液量q0に変換する。そして、ECU2は、変位量Spを得たときの、サーボ圧Pcと消費液量q0との関係から消費液量特性Zcを求める。例えば、ECU2は、サーボ圧の値Pc0と消費液量Qc0との関係を多項式(例えば二次関数)で近似する。この多項式で近似する場合の演算を可視化すれば、次のようになる。すなわち、図4に示したように、横軸を消費液量Qc、縦軸をサーボ圧Pcとする平面上に、サーボ圧の値Pc0と消費液量Qc0との関係をプロットし、プロットした点を通る緩やかな曲線を描くことになる。ステップS1にて求められた消費液量特性Zcは、ECU2のメモリに格納される。但し、格納先は当該メモリに限られるものではない。
【0054】
ステップS2において、ECU2は、各保持弁182を開弁させる。具体的には、ECU2は、図3に示す時間T5において、各保持弁182への電流の供給を停止することにより、各保持弁182を開弁させる。
【0055】
ステップS3において、ECU2は、保持弁182より上流側の液圧が所定の圧力となるように電動シリンダ16の位置を制御する。詳細について、図3を参照して説明する。ECU2は、時間T6にて電気モータ163を駆動し、例えばサーボ圧Pc1となるように、変位量Sp1の位置にピストン162を移動する。ピストン162の位置は、回転角センサSkが測定したモータ回転角Kaに基づいて制御される。ECU2は、ピストン162を所定の位置まで移動させブレーキ液の液圧を所定の圧力とする。
【0056】
ステップS4において、ECU2は、各車輪FL、FR、RL、RRの各保持弁182を完全に閉弁する。図3に示すように、ECU2は、時間T8にて各保持弁182に電流値i0の電流を供給することにより全ての保持弁182を完全に閉弁させる。
【0057】
ステップS5において、ECU2は、所定の減圧液量となるように対象車輪(測定車輪)の減圧弁183を所定時間だけ駆動する。ここで、減圧液量は、減圧弁183が開弁したときに低圧リザーバ186に流入したブレーキ液の液量である。対象車輪は、各車輪のうちの一つである。詳細について、図3を参照して説明する。ECU2は、時間T9にて、対象車輪に対応する減圧弁183に電流値i1の電流を供給し、当該減圧弁183を開弁させる。これにより、第2液路14bの液圧、すなわちホイール圧の液圧が減圧する。
【0058】
このとき、全ての保持弁182は閉弁しているため、液路14Aおよび液路14Dの液圧、即ちサーボ圧Pcに変化は生じない。ECU2は、時間T10にて、対象車輪に対応する減圧弁183に対する電流の供給を停止する。これにより、当該減圧弁183が閉弁する。なお、ステップS5において、対象車輪以外の車輪(非測定車輪)の減圧弁183には電流は供給されない。
【0059】
ステップS5において、所定の減圧液量は任意に設定され、所定時間は、対象車輪において、任意の減圧液量が得られるまでにかかると想定される減圧弁183の開弁時間である。例えば、1ccの減圧液量が得られるまでに減圧弁183の開弁時間が2msかかると想定される場合、所定の減圧液量を1ccとして、所定時間を2msとして予め設定される。換言すれば、所定の減圧液量は、所定時間だけ開弁したしたときに想定される減圧弁183による減圧液量である。以下、当該所定の減圧液量を「想定液量」と称する。
【0060】
なお、ステップS3~S5の処理が本願発明に係る減圧処理に相当する。
【0061】
ステップS6において、ECU2は、電気モータ185を駆動して低圧リザーバ186内のブレーキ液を電動ポンプ184により汲み上げ、サーボ圧Pcの変動量ΔPを取得する。詳細について、図3を参照して説明する。ECU2は、時間T10にて対象車輪に対応する減圧弁183が閉弁した後、時間T11にて電気モータ185に電流値i2の電流を供給する。汲み上げられたブレーキ液は、対象車輪が前輪の場合、液路14Aに吐出され、対象車輪が後輪の場合、液路14Dに吐出される。このとき、液路14Aおよび液路14Dの液圧は、等しく、且つ電動ポンプ184により吐出されたブレーキ液により増加する。この際、ECU2は、サーボ圧センサScが測定したサーボ圧Pcを取得する。サーボ圧Pcは、時間T11以降、徐々に増加し、その後、サーボ圧Pcの値は一定となる。ECU2は、所定時間経過後である時間T12にて電気モータ185への電流の供給を停止することで、電動ポンプ184を停止する。なお、ステップS6は、本願発明に係る取得処理に相当する。
【0062】
図3に示すように、電気モータ185を駆動する前のサーボ圧Pc1から、電気モータ185駆動した後の最も液圧が高いサーボ圧Pc2までの圧力変化がサーボ圧Pcの変動量ΔPである。上記のステップS6における、取得されるサーボ圧Pcの変動量ΔPは、減圧弁183の減圧液量特性である。制動制御装置1の個体差、または減圧弁183の経年劣化により減圧弁183の減圧液量特性が異なると考えられる。
【0063】
ステップS7において、ECU2は、ステップS6における汲み上げ後のサーボ圧Pcの変動量ΔPと、ステップS1にて算出された消費液量特性Zcと、に基づいて対象車輪の減圧弁183の減圧液量を推定する。
【0064】
より具体的には、ステップS7において、ECU2は、ステップS1にて算出された消費液量特性Zcを表す多項式、およびステップS6でのサーボ圧Pcの変動量ΔPから、対象車輪の減圧液量の推定値ΔQを算出する。より詳しくは、図5に示すように、消費液量特性Zcを表す多項式に、サーボ圧Pc1及びサーボ圧Pc2を当てはめて、サーボ圧Pc1及びサーボ圧Pc2のそれぞれにおける消費液量Qc1及び消費液量Qc2を算出する。消費液量Qc1及び消費液量Qc2から推定値ΔQ、すなわち、消費液量Q2-消費液量Q1が算出される。なお、ステップS7は、本願発明に係る推定処理に相当する。
【0065】
ステップS8において、ECU2は、ステップS7にて算出した推定値ΔQに基づいて、減圧制御時における、対象車輪に接続されている減圧弁183の開弁時間を補正する。。より詳しくは、ECU2は、ステップS5における所定時間から想定される減圧弁183の減圧液量と推定値ΔQとに基づいて、減圧弁183の開弁時間を補正する。なお、減圧制御は、減圧弁183を開弁し、ブレーキ液を低圧リザーバ186へ供給することで、ホイールシリンダ17Aおよび17Bそれぞれのホイール圧を減圧する制御である。
【0066】
具体的には、ステップS8において、ECU2は、ステップS5における想定液量と推定値ΔQとの差に応じて、減圧制御時における減圧弁183の開弁時間を補正する。より詳しくは、推定値ΔQが想定液量よりも大きい値である場合、ECU2は、減圧制御時における減圧弁183の開弁時間を短くする側に補正する。推定値ΔQが想定液量よりも小さい値である場合、ECU2は、減圧制御時における減圧弁183の開弁時間を長くする側に補正する。なお、推定値ΔQが想定液量とほぼ同じ値である場合、ECU2は補正を行わず、減圧制御時における減圧弁の開弁時間はデフォルトの開弁時間である。ステップS8は、本願発明に係る補正処理に相当する。
【0067】
上記のように、ECU2は減圧処理S3~S5における想定液量と推定処理S7において推定された減圧液量との差に応じて、減圧制御時における減圧弁183の開弁時間を補正する。そのため、制動制御装置1の個体差、又は車両の経年劣化に伴う減圧液量の変化に応じたホイールシリンダの減圧制御を実行することができる。これにより、ECU2の減圧制御の精度を向上させることができる。
【0068】
また、ECU2は、ステップS7において補正された各減圧弁183の開弁時間に関する情報を、ECU2のメモリに格納する。ECU2は、減圧制御が実行される場合、補正された減圧弁の183の開弁時間に基づいてその減圧弁183を制御し、各車輪FL、FR、RLおよびRRの各ホイールシリンダ17Aおよび17Bにおけるブレーキ液の液圧を減圧する。減圧制御は、一例としてアンチロックブレーキ制御時において実施される制御である。
【0069】
上記のように、ECU2は、補正後の減圧弁183の開弁時間に基づいてアンチロックブレーキ制御時における減圧制御を実行する。そのため、制動制御装置1の個体差、又は減圧弁183の経年劣化に伴う減圧液量の変化に応じたアンチロックブレーキ制御を実行することができる。これにより、アンチロックブレーキ制御の精度を向上させることができる。
【0070】
上記ECU2の構成によれば、対象車輪の減圧弁183によるブレーキ液の減圧液量を推定することができる。即ち、対象車輪の減圧弁183の減圧液量特性を取得することができる。そのため、減圧液量特性に応じた減圧制御が可能となり、制動制御装置1の個体差等によるばらつきがあったとしても、減圧制御における減圧の調圧精度を向上させることができる。また、制動制御装置1を車載した状態で対象車輪の減圧弁183に応じた減圧液量特性を算出することができる。そのため、減圧弁183の経年劣化後の減圧液量特性の取得が可能となり、減圧弁183の経年劣化後の減圧の調圧精度も向上させることができる。これにより、車輪のホイールシリンダの減圧制御の精度を向上させることができる。
【0071】
<実施形態その他>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
上記実施形態では、消費液量特性Zcを算出した後、対象車輪の減圧弁183の減圧液量を推定する処理を行ったが、これに限られるものではない。消費液量特性Zcは、予め実験によって求めることができる。従って、ECU2は、上述したステップS7において、予めメモリに記憶させた実験により求めた消費液量特性Zcを用いてもよい。この場合、ステップS1を省略することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、ECU2は、サーボ圧センサScが測定した液圧を使用しているが、これに限られない。液路14Aおよび液路14Dに設けられた液圧センサ、例えばマスタ圧センサSmが測定した液圧を使用してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、一つのECU2が加圧ユニット1Aおよび調圧ユニット1Bをそれぞれ制御する構成としたが、これに限られるものではない。制動制御装置1は、加圧ユニット1Aを制御する第1のECU、および調圧ユニット1Bを制御する第2のECUを備えてもよい。
【0075】
なお、複数の車輪の減圧弁の減圧特性を取得する場合、ECU2は、上記ステップS7を終了した後、ステップS2に戻り、別の対象車輪の減圧弁183についてステップS2~S7の処理を実行する。
【符号の説明】
【0076】
1 制動制御装置、1A 加圧ユニット、1B 調圧ユニット、2 ECU、
16 電動シリンダ、17A 前輪ホイールシリンダ、17B 後輪ホイールシリンダ、
182 保持弁、183 減圧弁、186 低圧リザーバ、Sc サーボ圧センサ、
Zc 消費液量特性
図1
図2
図3
図4
図5