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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009533
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】巻回体収容箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20240116BHJP
   B65D 25/52 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B65D5/72 A
B65D25/52 E
B65D25/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111136
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】関 孝幸
【テーマコード(参考)】
3E060
3E062
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB05
3E060BA13
3E060BB01
3E060BC02
3E060CE04
3E060CE07
3E060CE15
3E060CE18
3E060CE19
3E060CE22
3E060CF05
3E060CG12
3E060DA17
3E060EA14
3E062AA03
3E062AB13
3E062AC02
3E062AC03
3E062AC05
3E062LA19
3E062LA25
(57)【要約】
【課題】巻回体が後板に向けて動くことを抑えながらも、開口から巻回体が飛び出すことを抑制する巻回体収容箱を提供する。
【解決手段】前板21から後板22に向かう方向が幅方向DWであり、開口から底板25に向かう方向が高さ方向DHであり、一方の脇板から他方の脇板に向かう方向が長さ方向DLであり、右脇板23のなかで幅方向DW、かつ高さ方向DHの中心が、右基準位置23Bであり、巻回体収容箱のなかで右基準位置23Bよりも幅方向DWの後板22側が後部20Bであり、後部20Bの高さ方向DHにおいて、右基準位置23Bを含む開口20T側の部分における脇板間の長さ方向DLの内寸の最小値が、右基準位置23Bよりも底板25側の部分における脇板間の長さ方向DLの内寸よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、前板、後板、および左右で一対の脇板を備え、前記前板の上辺、前記後板の上辺、および前記脇板の上辺が巻回体を出し入れするための開口を区画する巻回体収容箱であって、
前記前板から前記後板に向かう方向が幅方向であり、
前記開口から前記底板に向かう方向が高さ方向であり、
1つの前記脇板から他の前記脇板に向かう方向が長さ方向であり、
前記脇板のなかで前記幅方向、かつ前記高さ方向の中心が、基準位置であり、
前記巻回体収容箱のなかで前記基準位置よりも前記幅方向の前記後板側が後部であり、
前記後部の前記高さ方向において、
前記基準位置を含む前記開口側の部分における前記脇板間の前記長さ方向の内寸の最小値が、
前記基準位置よりも前記底板側の部分における前記脇板間の前記長さ方向の内寸よりも小さい
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記巻回体収容箱のなかで前記基準位置よりも前記幅方向の前記前板側が前部であり、
前記最小値が、前記前部における前記脇板間の前記長さ方向の内寸よりも小さい
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記脇板は、
前記後板から折り曲げられ、前記巻回体収容箱の最も内側に位置する第1脇板と、
前記前板から折り曲げられる第2脇板と、
前記底板から折り曲げられ、前記巻回体収容箱の最も外側に位置する第3脇板と、を含み、
前記第1脇板は、
前記後部を構成し、前記基準位置よりも前記底板側である底側部分と、
前記後部を構成し、前記基準位置を含む前記開口側である開口側部分と、を備え、
前記底側部分は、前記第3脇板に接合され、
前記開口側部分は、前記第3脇板から前記巻回体収容箱の内側に離間する
請求項1または2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
前記後板は、前記底板と接する後板下辺をさらに有し、
前記第1脇板は、前記後板と第1罫線を介して接し、
前記第1罫線は、前記後板下辺の端から前記後板の前記上辺に向けて延びる第1罫線部分と、前記後板の上辺の端から前記後板下辺に向けて延びる第2罫線部分との境界で折れ曲がる
請求項3に記載の巻回体収容箱。
【請求項5】
前記第1罫線は、前記巻回体収容箱の外表面に切り込み線を有する
請求項4に記載の巻回体収容箱。
【請求項6】
前記脇板の内表面における前記幅方向の先端、かつ前記高さ方向の基端である部位から前記基準位置に向けて、前記後部における前記長さ方向の内寸が徐々に大きくなり、
かつ前記基準位置から前記底板に向けて、前記後部における前記長さ方向の内寸が一定となるように、前記脇板が曲げられている
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体を収容するための巻回体収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
巻回体収容箱の一例は、ラップフィルムを収容するための直方体状のカートンである。筒状の芯体に巻き回されたラップフィルムは、巻回体収容箱の内表面と巻回体の間に隙間を空けた状態で、巻回体収容箱に収容されている。
【0003】
巻回体収容箱と巻回体との間の隙間により、巻回体は、ラップフィルムの引き出し時に、巻回体収容箱のなかで前後方向に動いたり、芯体の軸線が左右方向に対して斜めになるように動いたりする。こうした巻回体の動きによる不安定な引き出しは、ラップフィルムを切断しにくくしたり、本来切断されるべき方向に対して斜めとなる方向にラップフィルムの切断を誘導したりする。また、巻回体を収容した巻回体収容箱の輸送時における巻回体の動きは、ラップフィルムの端部に傷をつけたり、傷を起点にした裂けをラップフィルムの引き出し時に生じさせたりする。
【0004】
例えば特許文献1には、巻回体収容箱としてのカートンが記載されている。このカートンは、背面板に連接される後補助板が左右の側板の内側に重ねられ、さらに後補助板が内側に向って突出することによって、巻回体であるロールを保持するように構成されている。また、底面板に連接された左右の側板の先端に設けられた差込片を内側に突出させるようにして、ロールの飛び出しを防止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-65710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のカートンもフィルムは、前面板の上縁から引き出される。したがって、ロールも、カートン内部において、前面板側に偏る。フィルムの引き出し時には、後補助板によってロールが保持され、かつ、差込片によって飛び出しが防止されているといっても、内部のロールが上方に持ち上がってしまい、その結果、カートンからロールが飛び出してしまう懸念が残る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための巻回体収容箱は、底板、前板、後板、および左右で一対の脇板を備え、前記前板の上辺、前記後板の上辺、および前記脇板の上辺が巻回体を出し入れするための開口を区画する巻回体収容箱であって、前記前板から前記後板に向かう方向が幅方向であり、前記開口から前記底板に向かう方向が高さ方向であり、1つの前記脇板から他の前記脇板に向かう方向が長さ方向であり、前記脇板のなかで前記幅方向、かつ前記高さ方向の中心が、基準位置であり、前記巻回体収容箱のなかで前記基準位置よりも前記幅方向の前記後板側が後部であり、前記後部の前記高さ方向において、前記基準位置を含む前記開口側の部分における前記脇板間の前記長さ方向の内寸の最小値が、前記基準位置よりも前記底板側の部分における前記脇板間の前記長さ方向の内寸よりも小さい。
【0008】
上記構成によれば、巻回体収容箱の後部における長さ方向の内寸が、基準位置を含む開口側の部分に最小値を有する。長さ方向の内寸に最小値を与える部位は、後部のなかで巻回体と接しやすい。そのため、巻回体収容箱は、巻回体が後板に向けて動くことを抑えながらも、開口から巻回体が飛び出すことを抑制できる。
【0009】
上記巻回体収容箱において、前記巻回体収容箱のなかで前記基準位置よりも前記幅方向の前記前板側が前部であり、前記最小値が、前記前部における前記脇板間の前記長さ方向の内寸よりも小さい構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、巻回体収容箱の後部における長さ方向の内寸の最小値が、前部における脇板間の内寸よりも小さい。そのため、巻回体収容箱は、巻回体が後板に向けて動くことを抑えながらも、巻回体の開口からの飛び出しを抑制できる。
【0011】
上記巻回体収容箱において、前記脇板は、前記後板から折り曲げられ、前記巻回体収容箱の最も内側に位置する第1脇板と、前記前板から折り曲げられる第2脇板と、前記底板から折り曲げられ、前記巻回体収容箱の最も外側に位置する第3脇板と、を含み、前記第1脇板は、前記後部を構成し、前記基準位置よりも前記底板側である底側部分と、前記後部を構成し、前記基準位置を含む前記開口側である開口側部分と、を備え、前記底側部分は、前記第3脇板に接合され、前記開口側部分は、前記第3脇板から前記巻回体収容箱の内側に離間する構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1脇板において、開口側部分が第3脇板から巻回体収容箱の内側に離間し、かつ底側部分が第3脇板に接合されている。これにより、第1脇板と第3脇板との長さ方向における相対的な位置の相違によって、後部における基準位置を含む開口側の部分に、長さ方向の内寸が最小値となる部位を配置できる。
【0013】
上記巻回体収容箱において、前記後板は、前記底板と接する後板下辺をさらに有し、前記第1脇板は、前記後板と第1罫線を介して接し、前記第1罫線は、前記後板下辺の端から前記後板の前記上辺に向けて延びる第1罫線部分と、前記後板の上辺の端から前記後板下辺に向けて延びる第2罫線部分との境界で折れ曲がる構成としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、後板と第1脇板との境界である第1罫線が、底板側の第1罫線部分と開口側の第2罫線部分との境界で折れ曲がる。そのため、開口部分を第3脇板から離間させると共に、底側部分を第3脇板に接合させるような、複雑な構造が容易に実現される。
【0015】
上記巻回体収容箱において、前記第1罫線は、前記巻回体収容箱の外表面に切り込み線を有する構成としてもよい。上記構成によれば、後板から第1罫線で第1脇板を折り曲げ、これによって開口側部分を第3脇板から離間させると共に、底側部分を第3脇板に接合させることが容易ともなる。
【0016】
上記巻回体収容箱において、前記脇板の内表面における前記幅方向の先端、かつ前記高さ方向の基端である部位から前記基準位置に向けて、前記後部における前記長さ方向の内寸が徐々に大きくなり、かつ前記基準位置から前記底板に向けて、前記後部における前記長さ方向の内寸が一定となるように、前記脇板が曲げられている構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、後部における長さ方向の内寸を開口側の部分で最小にすることが脇板の折り曲げによって実現される。そして、脇板の内表面における幅方向の先端、かつ高さ方向の基端から基準位置に向けて、長さ方向の内寸が徐々に大きくなるため、巻回体が縮径する場合であっても、上述した効果が得られる。また、巻回体を開口に向けて取り出しやすくもなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、巻回体の前後方向の動きを抑制しつつ、巻回体の飛び出しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、開封前の巻回体収容箱を正面右側上方から見た斜視図である。
図2図2は、開封後の巻回体収容箱を正面左側上方から見た斜視図である。
図3図3は、巻回体収容箱の内寸を説明するための箱本体の上面図である。
図4図4は、巻回体収容箱の内部構造を示す斜視図である。
図5図5は、巻回体収容箱の後面を後方から見た後面図である。
図6図6は、巻回体収容箱の内側面を内側から見た側面図であって、内寸の変化を説明するための側面図である。
図7図7は、巻回体収容箱の内寸の変化を説明するための上面図である。
図8図8は、巻回体収容箱を製造するための中間体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図8を参照して、巻回体収容箱の一実施形態を説明する。まず、図1図2とを参照して巻回体収容箱の全体に関わる構成を説明する。次に、図3を参照して巻回体収容箱の内寸を説明する。そして、図4から図6を参照して巻回体収容箱の内寸を定める構造を説明する。なお、巻回体収容箱における各構成の説明を補助するため、図8を参照して巻回体収容箱を製造するための中間体を適宜参照する。
【0021】
[巻回体入り収容箱]
図1が示すように、巻回体入り収容箱は、巻回体収容箱10と、ラップフィルム巻回体(以下、単に巻回体50Rともいう)とを備える。巻回体収容箱10は、1つの方向に延びる直方体状を有する。巻回体収容箱10は、例えば、コートボール紙などの1枚の厚紙からなる中間体(図8を参照)を折り曲げて接着することによって製造される。巻回体50Rは、芯材となる紙製の筒体50Cと、長尺物の一例であるラップフィルム50とを備える。ラップフィルム50は、筒体50Cに巻き付けられている。筒体50Cの軸方向Aの長さは、ラップフィルム50の左右方向における長さよりも長い。筒体50Cの軸方向Aの両端は、巻回されたラップフィルム50のフィルム端から突出している。
【0022】
[巻回体収容箱10]
巻回体収容箱10は、箱本体20と蓋体30とを備える。箱本体20は、上面が開口した直方体状を有する。箱本体20は、前板21、後板22、右脇板23、左脇板24、および、底板25を備える。右脇板23と、左脇板24とは、左右で一対の脇板を構成する。前板21、後板22、右脇板23、および、左脇板24は、底板25から立設し、1つの周壁を構成する。
【0023】
箱本体20と蓋体30とを構成する材料は、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、ダンボール、または複数の厚紙が積層された積層板でもよいし、1枚の厚紙でもよい。巻回体収容箱10の製造における取り扱いが容易である点から、箱本体20と蓋体30とを構成する材料は、コートボール紙などの板紙であることが好ましい。
【0024】
図2が示すように、箱本体20の開口20Tは、周壁の上辺によって区画される。巻回体50Rは、開口20Tを通じて出し入れされる。巻回体50Rの軸方向Aは、巻回体収容箱10が延在する方向とほぼ平行である。ラップフィルム50は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテンからなる群から選択されるいずれか1種類を原材料とするフィルム、もしくは、これらを組み合わせた多層フィルムであるが、これに限定されるものではない。ラップフィルム50の最外層に位置するフィルムが傷つくことを抑えられる点から、ラップフィルム50は、塩化ビニリデン系樹脂を主成分とすることが好ましい。塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を含むものであればよい。
【0025】
以下、底板25に対する開口20Tの側を上側、開口20Tに対する底板25の側を下側として説明する。また、前板21に対する後板22の側を後側、後板22に対する前板21の側を前側として説明する。また、右脇板23に対する左脇板24の側を左側、および、左脇板24に対する右脇板23の側を右側として説明する。前板21から後板22に向かう方向は、幅方向DWである。開口20Tから底板25に向かう方向は、高さ方向DHである。右脇板23から左脇板24に向かう方向、および左脇板24から右脇板23に向かう方向は、長さ方向DLである。
【0026】
[箱本体20]
前板21、後板22、および底板25は、それぞれ左右方向に延びる矩形板状を有する。前板21と後板22とは、前後方向に向かい合う。底板25の前辺は、前板21の下辺であり、底板25の後辺は、後板22の下辺である。また、前板21において高さ方向DHに延びる辺は前板短辺であり、後板22の高さ方向DHに延びる辺は後板短辺である。
【0027】
右脇板23、および左脇板24は、矩形板状を有し、左右方向に向かい合う。右脇板23の下辺は、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の右辺に繋がる。左脇板24の下辺もまた、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の左辺に繋がる。
【0028】
前板21は、副前板21A(図8を参照)と主前板21B(図8を参照)とを備える。副前板21Aは、箱本体20の内表面を構成する。主前板21Bは、前板21の外表面を構成する。副前板21Aは、主前板21Bの上辺21Tで主前板21Bに連接する。副前板21Aは、主前板21Bに対して上辺21Tで箱本体20の内側に折り曲げられている。主前板21Bの外表面は、ラップフィルム50を仮止めするための仮止め部21Sを備える。
【0029】
主前板21Bは、左右で一対の前板フラップ21Fを備える。前板フラップ21Fは、主前板21Bのなかの高さ方向DHの中央よりも主前板21Bの上辺21T寄りで、仮止め部21Sを左右方向で挟むように位置する。
【0030】
前板フラップ21Fは、主前板21Bの上辺21Tの一部分と、当該一部分に両端を有した曲線状の切り込み線21FCとによって囲まれる。切り込み線21FCは、主前板21Bの上辺21Tの一端から他端向けて下方に凸となる弧状を有する。蓋体30を開けると、前板フラップ21Fは、箱本体20の前方に回動して主前板21Bから浮き上がる。主前板21Bから浮き上がる前板フラップ21Fは、開口20Tから引き出されて切断されたラップフィルム50の切断端を主前板21Bから浮き上がらせる。
【0031】
仮止め部21Sは、左右方向に並ぶ複数の四角形状を有した仮止め要素を備える。仮止め部21Sの位置は、主前板21Bの外表面のなかで高さ方向DHの中央よりも上辺21T寄りであり、かつ、左右方向の中央を含む。仮止め部21Sは、UVニスで形成されることが好ましいが、ラップフィルム50を仮止めできるものであれば、これに限定されない。仮止め部21Sは、箱本体20の開口20Tから引き出されて前板21の上辺21Tから垂れ下がるラップフィルム50を前板21の外表面に仮止めする。
【0032】
副前板21Aの上部は、前後方向に延びる規制片3R,4Rを備える。規制片3R,4Rは、副前板21Aの上辺の左右両端部に位置する。規制片3R,4Rは、副前板21Aの上辺から罫線LR(図8を参照)で折り曲げられている。規制片3R,4Rは、ラップフィルム50を箱本体20から引き出すときに、巻回体50Rの筒体50Cに前方上側から当たる。これによって、規制片3R,4Rは、巻回体50Rが箱本体20から飛び出すことを抑える。
【0033】
右脇板23は、第1右脇板13F、第2右脇板23F、および第3右脇板53F(図8を参照)を備える。左脇板24は、第1左脇板14F、第2左脇板24F、および第3左脇板54F(図8を参照)を備える。第1右脇板13F、および第2右脇板23Fは、箱本体20の内表面を構成する。第1左脇板14F、および第2左脇板24Fは、箱本体20の内表面を構成する。第3右脇板53F、および第3左脇板54Fは、箱本体20の外表面を構成する。第1右脇板13Fは、第2右脇板23Fよりも箱本体20の内側に位置する。第1左脇板14Fは、第2左脇板24Fよりも箱本体20の内側に位置する。第1右脇板13Fと第1左脇板14Fとは、それぞれ第1脇板の一例である。第2右脇板23Fと第2左脇板24Fとは、それぞれ第2脇板の一例である。第3右脇板53Fと第3左脇板54Fとは、第3脇板の一例である。
【0034】
右脇板23は、前後方向に延びる蓋係止片3Tを備える。左脇板24は、前後方向に延びる蓋係止片4Tを備える。蓋係止片3Tは、右脇板23を構成する第3右脇板53Fの上辺3Eに接続される。蓋係止片3Tは、第3右脇板53Fの上辺3Eである罫線LT2(図8を参照)で箱本体20の外側(右側)に折り曲げられて、箱本体20の右側に突き出ている。蓋係止片3Tは、前後方向に延在している。蓋係止片4Tは、左脇板24を構成する第3左脇板54Fの上辺4Eに接続される。蓋係止片4Tは、第3左脇板54Fの上辺4Eである罫線LT2(図8を参照)で箱本体20の外側(左側)に折り曲げられて、箱本体20の左側に突き出ている。蓋係止片4Tは、前後方向に延在している。
【0035】
[蓋体30]
図1に戻り、蓋体30は、上蓋板31、前蓋板32、蓋体右脇板33、および蓋体左脇板34を備える。上蓋板31は、後板22の上辺22Tに回転可能に連接する。上蓋板31は、後板22の上辺22Tを軸として、箱本体20に対して回転し、箱本体20の開口20Tを開閉する。
【0036】
前蓋板32と前板21とは、相互にほぼ同形の矩形板状を有する。前蓋板32の上辺は、上蓋板31の前辺である。前蓋板32は、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、前板21の外表面全体を覆う。前蓋板32は、高さ方向DHの中間よりも下方に、半円状を有した複数の切り込み部32Cを備える。切り込み部32Cの内側面は、前板21の外表面と接着される。前蓋板32における高さ方向DHのほぼ中央は、左右方向の全幅にわたるミシン目線32Mを備える。ミシン目線32Mは、下方に向けた凸となる形状を有する。ミシン目線32Mの右端は、ミシン目線32Mに沿って前蓋板32を上下に分割するための開封端32Nである。
【0037】
開封端32Nが前方に引っ張られるとき、前蓋板32はミシン目線32Mで切断される。また、前板21と前蓋板32との接着は、切り込み部32Cで引き剥がされる。これにより、前蓋板32は、前蓋板32の左右方向の全幅が、ミシン目線32Mを境にして、下側と上側とに分割される。前蓋板32のなかでミシン目線32Mに区画された上側は、掩蓋板32Pである。前蓋板32のなかでミシン目線32Mに区画された下側は、切り取り片32Kである。
【0038】
図2に戻り、切り取り片32Kは、ラップフィルム50の使用の開始に際して、箱本体20から切り離される。切り取り片32Kが蓋体30から切り離されると、掩蓋板32Pの下端辺から、切断刃35の刃先全体が露出する。そして、蓋体30が後板22の上辺22Tで回転することによって、箱本体20の開口20Tが開く。
【0039】
掩蓋板32Pは、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、上蓋板31の前辺から下方に向けて延びる板状を有し、前板21の外表面上部を覆う。掩蓋板32Pの高さ方向DHでの幅は、左右方向の両端部を除き、左右方向の中央部で最も大きく、左右方向の中央部からそれぞれの端部に移動するにつれて、高さ方向DHの幅が短くなる。
【0040】
掩蓋板32Pの内表面には、切断刃35が接合される。切断刃35は、左右方向に並ぶ刃先を有した鋸刃状を有する。切断刃35は、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、複数の刃先が掩蓋板32Pから下方に突出するように、掩蓋板32Pに接合される。掩蓋板32Pに切断刃35を接合する方法は、例えば、掩蓋板32Pと切断刃35との間にシーラント材や接着層を介在させて、超音波接着によって行われる。また、掩蓋板32Pに切断刃35を接合する方法は、切断刃35を構成する刃材樹脂層にシーラント層をラミネートした構成とすることもできる。
【0041】
切断刃35を構成する材料は、特に限定されず、例えば、樹脂、あるいは、金属である。切断刃35は、例えば、樹脂と添加剤とを含み、添加剤の種類や、その添加量によって、切断刃35の剛性や、掩蓋板32Pに対する切断刃35の接着性を調整することができる。
【0042】
切断刃35を構成する樹脂は、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PES(ポリエーテルサルフォン)樹脂である。切断刃35を構成する添加剤は、例えば、オレフィン系樹脂などの樹脂や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルクなどの無機材料である。シーラント層を構成する樹脂は、例えば、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリオレフィンなどが使用される。
【0043】
蓋体右脇板33は、蓋右脇板33Fと接合片323とを備える。蓋体左脇板34は、蓋左脇板34Fと接合片324とを備える。蓋右脇板33Fは、上蓋板31と蓋右脇板33Fとの交線である短辺で上蓋板31に連接する。蓋左脇板34Fは、上蓋板31と蓋左脇板34Fとの交線である短辺で上蓋板31に連接する。
【0044】
蓋体右脇板33と蓋体左脇板34とにおいて、各蓋脇板33F,34Fは、蓋体30の外表面を構成する。各接合片323,324は、蓋体30の内表面を構成する。蓋体右脇板33と蓋体左脇板34とは、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、右脇板23の外表面上部を覆い、また、左脇板24の外表面上部を覆う。
【0045】
接合片323は、上蓋板31と蓋右脇板33Fとの交線である短辺との間に隙間を空けて位置する。接合片324もまた、上蓋板31と蓋左脇板34Fとの交線である短辺との間に隙間を空けて位置する。これにより、接合片323,324は、上蓋板31との間に隙間を空けて位置し、蓋体右脇板33、蓋体左脇板34の内表面に、段部33S,34Sを形成する。上述した各蓋係止片3T,4Tは、蓋体30が開口20Tを塞ぐとき、段部33S,34Sに嵌まり込み、クリック音を発生させて、段部33S,34Sと係合する。各蓋係止片3T,4Tは、段部33S,34Sとの係合を通じ、閉塞状態で上蓋板31が浮き上がることを抑える。
【0046】
[巻回体入り収容箱の組立]
巻回体入り収容箱の組立において、まず、巻回体収容箱10の中間体は、副前板21Aが主前板21Bよりも箱本体20の内側に位置するように、副前板21Aが主前板21Bに対し上辺21Tで折り曲げられる。これと共に、副前板21Aが主前板21Bの内側に貼り付けられる。次に、巻回体収容箱10の中間体は、底板25が後板22に対し罫線Lで折り曲げられると共に、前蓋板32が上蓋板31に対し罫線Lで折り曲げられる。また、主前板21Bの上に前蓋板32が重ねられると共に、主前板21Bの下部と切り取り片32Kが使用時に剥離可能になるように接着される。これによって、巻回体収容箱10の中間体は、扁平の四角筒状に成形される。続いて、巻回体収容箱10の中間体は、底板25に対して主前板21Bと後板22とが立ち上がるように罫線Lで折り曲げられる。これによって、巻回体収容箱10の中間体は、矩形の四角筒状に成形される。
【0047】
次に、第1右脇板13Fが後板22に対し罫線LTで折り曲げられ、第2右脇板23Fが主前板21Bに対し罫線LTで折り曲げられると共に、第3右脇板53Fが底板25に対し罫線LTで折り曲げられる。また、第2右脇板23Fが第1右脇板13Fの外側に折り重ねられると共に、第3右脇板53Fが第2右脇板23Fの外側に折り重ねられて接着される。これによって、右脇板23が成形される。
【0048】
次に、蓋係止片3Tが、第3右脇板53Fの上辺3Eで箱本体20の外側に折り曲げられる。規制片3Rが、副前板21Aの上辺から罫線LRで折り曲げられる。さらに、蓋右脇板33Fが上蓋板31に対し罫線LTで折り曲げられると共に、接合片323が、掩蓋板32Pに対し罫線LTで折り曲げられる。そして、蓋右脇板33Fが接合片323の外側に折り重ねられて接着されることによって、蓋体右脇板33が成形される。
【0049】
次に、四角筒状を有した中間体のなかに巻回体50Rが挿入される。また、第1左脇板14Fが後板22に対し罫線LTで折り曲げられ、第2左脇板24Fが主前板21Bに対し罫線LTで折り曲げられると共に、第3左脇板54Fが底板25に対し罫線LTで折り曲げられる。さらに、第2左脇板24Fが第1左脇板14Fの外側に折り重ねられると共に、第3左脇板54Fが第2左脇板24Fの外側に折り重ねられて接着される。これによって、左脇板24が成形される。
【0050】
次に、蓋係止片4Tが、第3左脇板54Fの上辺4Eで箱本体20の外側に折り曲げられる。規制片4Rが、副前板21Aの上辺から罫線LRで折り曲げられる。さらに、蓋左脇板34Fが上蓋板31に対し罫線LTで折り曲げられると共に、接合片324が、掩蓋板32Pに対し罫線LTで折り曲げられる。そして、蓋左脇板34Fが接合片324の外側に折り重ねられて接着されることによって、蓋体左脇板34が成形される。
【0051】
[巻回体収容箱10の内寸LA]
図3は、蓋体30の表示を割愛した巻回体収容箱10の内部構造を示す箱本体20の上面図である。図3が示すように、右基準位置23Bは、右脇板23のなかで幅方向DWの中心であり、かつ高さ方向DHの中心(図4を参照)でもある。左基準位置24Bは、左脇板24のなかで幅方向DWの中心であり、かつ高さ方向DHの中心でもある。基準線BLは、右基準位置23Bと左基準位置24Bとを通り、かつ長さ方向DLに沿って延びる直線である。
【0052】
巻回体収容箱10の後部20Bは、巻回体収容箱10のなかの後側半分を構成する。後部20Bは、巻回体収容箱10のなかで、右基準位置23Bよりも幅方向DWの後側、かつ左基準位置24Bよりも幅方向DWの後側に位置する。後部20Bは、巻回体収容箱10のなかで基準線BLよりも幅方向DWの後側に位置する。
【0053】
巻回体収容箱10の前部20Fは、巻回体収容箱10のなかの前側半分を構成する。前部20Fは、巻回体収容箱10のなかで、右基準位置23Bよりも幅方向DWの前側、かつ左基準位置24Bよりも幅方向DWの前側に位置する。前部20Fは、巻回体収容箱10のなかで基準線BLよりも幅方向DWの前側に位置する。
【0054】
後部20Bにおける内寸LAは、右脇板23と左脇板24との間の長さ方向DLの距離である。後部20Bにおいて、右脇板23と左脇板24との間の長さ方向DLの距離は、第1右脇板13Fと第1左脇板14Fとの長さ方向DLの距離である。底板25と対向する視点から見て、後部20Bにおける内寸LAは、基準位置(基準線BLと右脇板23との交点、基準線BLと左脇板24との交点)を含む開口20T側において、後板22から前板21に向けて大きくなる。
【0055】
前部20Fにおける内寸LAは、右脇板23と左脇板24との間の長さ方向DLの距離である。前部20Fにおいて、右脇板23と左脇板24との間の長さ方向DLの距離は、第1右脇板13Fと第1左脇板14Fとの長さ方向DLの距離、または、第2右脇板23Fと第2左脇板24Fとの長さ方向DLの距離である。なお、本実施形態では、前部20Fに規制片3Rと規制片4Rが形成されているが、これらは内寸LAの特定には考慮しない。前部20Fにおいても、後部20Bにおいても、内寸LAは、右脇板23を構成する部材、左脇板24を構成する部材、および罫線(本実施形態では13F、23F、53F、罫線LT)のみによって特定される。また、筒体50Cの外周面に接することなく、巻回体収容箱10の内側に向けて突き出るような他の構成が、右脇板23と左脇板24との少なくとも一方に設けられたとしても、こうした他の構成も、内寸LAの特定には考慮しない。上述した他の構成の一例は、筒体50Cに挿入される舌片状の係止片である。
【0056】
巻回体収容箱10において、第1右脇板13Fは、罫線LTを介して後板22に連接し、罫線LTは、右脇後端辺23Eを形成する。第1左脇板14Fは、罫線LTを介して後板22に連接し、罫線LTは、左脇後端辺24Eを形成する。右脇後端辺23Eと左脇後端辺24Eとの間の内寸LAは、底板25と対向する視点から見て、後部20Bにおける開口20T側に内寸LAの最小値を有する。
【0057】
[脇板構造]
図4は、右脇板23を前方左上側から見た斜視図である。図4は、右脇板23の内部構造を説明する便宜上、開口20Tを開けた蓋体30の一部について図示を割愛する。なお、右脇板23と左脇板24とは、巻回体収容箱10の長さ方向DLにおける中心に対象面を有した面対称となる構造を有する。以下、左脇板24が有する構造のなかで右脇板23が有する構造と重複する説明を割愛し、右脇板23の構造を主に説明する。
【0058】
図4が示すように、第1右脇板13Fは、後板22の端部から前板21の端部に向けて延びる。第1右脇板13Fの先端は、第2右脇板23Fの内側(巻回体50R側)に位置する。第1右脇板13Fの全体は、第3右脇板53Fの内側に位置する。第2右脇板23Fは、前板21の端部から後板22の端部に向けて延びる。第2右脇板23Fの先端は、第1右脇板13Fの外側に位置する。第2右脇板23Fの全体は、第3右脇板53Fの内側に位置する。第3右脇板53Fは、箱本体20の外表面を構成する。第3右脇板53Fは、前板21と底板25とに対しほぼ直交するように位置し、右脇板23を構成する。
【0059】
第2右脇板23Fの外側面は、第3右脇板53Fの内側面に接着されている。第2右脇板23Fの一部は、巻回体収容箱10の前部20Fにおいて内表面を構成する。第2右脇板23Fは、前板21と底板25とに対しほぼ直交する面上に位置する。
【0060】
第1右脇板13Fの外側面は、第3右脇板53Fの内側面に接着されている。第1右脇板13Fの一部は、巻回体収容箱10の後部20Bにおいて内表面を構成する。第1右脇板13Fの他部は、巻回体収容箱10の前部20Fにおいて内表面を構成する。
【0061】
第1右脇板13Fにおける下端辺13ETは、図8が示すように、右脇後端辺23Eの下端から傾斜する直線状の傾斜辺で構成されている。図4に戻って、第1右脇板13Fが後板22に対して罫線LTで折り曲げられると、下端辺13ETは、底板25と第3右脇板53Fとを繋ぐ罫線LTに近接または突き当てられる。すなわち、第1右脇板13Fは、罫線LTを構成する後述の罫線E1L~E3Lに従って折れ曲がることで、後板22や底板25に対して直角に位置するのではなく、内向きかつ前向きとなった斜面を形成する。
【0062】
第1右脇板13Fは、2本の切り込み線である折り曲げ補助線FL1,FL2を備える。2本の折り曲げ補助線FL1,FL2は、第1右脇板13Fの下端辺13ETに沿って延びる。折り曲げ補助線FL1,FL2を備えることで、第1右脇板13Fが罫線LT(図8を参照)で正しく容易に折れ曲がる。
【0063】
高さ方向DHにおいて、第1右脇板13Fのなかで右基準位置23Bを含む開口20T側の部分は、開口側部分13FAである。高さ方向DHにおいて、第1右脇板13Fのなかで右基準位置23Bよりも底板25側の部分は、底側部分13FBである。幅方向DWにおいて、第1右脇板13Fにおける開口側部分13FAの長さは、底側部分13FBの長さよりも短い部分を含む。第1右脇板13Fにおける開口側部分13FAでは、幅方向DWにおいて、底側部分13FBよりも第2右脇板23Fと重なる領域が少ない。第1右脇板13Fにおける底側部分13FBは、前部20Fを構成すると共に、幅方向DWにおいて、第2右脇板23Fと重なる部分が多くなる。
【0064】
第1右脇板13Fにおける底側部分13FBは、前板21と底板25とに対しほぼ直交する面上に位置する。底側部分13FBの外側面は、第3右脇板53Fの内側面に接着されている。底側部分13FBと後板22とが形成する角度θbは、高さ方向DHのほぼ全体にわたり90°である。
【0065】
右脇板23と左脇板24との間における底側部分13FBでの内寸LAは、幅方向DWの全体にわたり、また高さ方向DHの全体にわたり、ほぼ一定である。右脇板23と左脇板24との間における底側部分13FBでの内寸LAを、幅方向DWおよび高さ方向DHの全体にわたり、ほぼ一定とすることで、巻回体50Rの回転の妨げとならないようにする。
【0066】
第1右脇板13Fの開口側部分13FAは、後板22の上辺22Tの位置では第3右脇板53Fの内側面に対して離間し、前板21側に向って徐々に第3右脇板53Fの内側面に徐々に近づくように位置する。そして、第1右脇板13Fの開口側部分13FAおよび第3右脇板53Fは、右脇板23のなかに、隙間23Sを区画する。隙間23Sは、上下を逆さにし、かつ開口20Tと同一面を底面とした逆三角錐形状を有している。開口側部分13FAと第3右脇板53Fとの間の距離は、後板22から右基準位置23Bの方向に向けて徐々に小さくなり、かつ開口20T面から右基準位置23Bの方向に向けて徐々に小さくなる。
【0067】
このように、第1右脇板13Fは、開口側部分13FAの外側面が、第3右脇板53Fに対して箱本体20の内側に離間するように位置し、底側部分13FBの外側面は、第3右脇板53Fの内側面に接着されている。このため、後部20Bにおける開口20T側の部分に、内寸LAが最小値となる部位を配置できる。このように構成すると、筒体50Cの後方端部上側部分を箱本体20の内側面に接触させることができる。これにより、巻回体50Rが後板22に向けて動くことを抑制することができ、さらに規制片3Rと協働して開口20T側に浮き上がりにくくできる。また、第1右脇板13Fの底側部分13FBと後板22とがなす角度、および第3右脇板53Fと底側における後板22がなす角度は、共にほぼ90°である。そのため、第1右脇板13Fの底側部分13FBの外側面と、第3右脇板53Fの底側の内側面は、隙間がなくなることで、十分な強度を有した接着が可能となる。
【0068】
開口側部分13FAと後板22とが形成する角度θaは、底側部分13FB側から開口20T側に向けて徐々に大きくなる。右基準位置23Bを含む上側において、開口側部分13FAと後板22とが形成する角度θbは、90°よりも大きく、好ましくは92°以上115°以下、さらに好ましくは93°以上110°以下である。90°よりも大きくすることで第1右脇板13Fの開口側部分13FAにおける後板22近くの領域が斜面となり、筒体50Cの端面後部上側部分が効果的に第1右脇板13Fと接触し、筒体50Cの位置を制御することができる。92°以上115°以下とすることで筒体50Cの摩擦抵抗を実用に適した範囲とすることができる。また、93°以上110°以下とすることで筒体50Cの位置制御をしつつ、巻回体50Rの引き出し性や出し入れ等のバランスが良く、巻回体収容箱10を最も使いやすい範囲とすることができる。
【0069】
巻回体収容箱10の後部20Bでは、高さ方向DHにおいて、右基準位置23Bを含む開口20T側の部分における内寸LAが、開口20Tから右基準位置23Bに向けて、徐々に大きくなる。また、後部20Bでは、高さ方向DHにおいて、右基準位置23Bを含む開口20T側の部分における内寸LAの最小値が、右基準位置23Bよりも底板25側の部分における内寸LAよりも小さい。後部20Bのなかで内寸LAが最小値を有する部位は、開口20T側の部位である。
【0070】
[脇後端部構造]
巻回体収容箱10において、第1右脇板13Fは、右脇後端辺23Eを介して後板22に連接する。右脇後端辺23Eは、底側端辺E1、境界端辺E2、および開口側端辺E3を備える。高さ方向DHにおいて、底側端辺E1と開口側端辺E3との間に境界端辺E2が位置する。境界端辺E2は、開口側端辺E3と底側端辺E1とを接続する。
【0071】
底側端辺E1は、第1右脇板13Fが後板22に連接する部分であり、かつ底板25、後板22、および第1右脇板13Fで構成される角から開口20Tに向けて連続する。底側端辺E1は、上述した角度θbを形成する。第1右脇板13Fの内側面のなかで、底側端辺E1から前側に延びる面は、長さ方向DLにほぼ直交する平面である。高さ方向DHにおける底側端辺E1の長さは、例えば、第1右脇板13Fの高さ方向DHにおける長さの1/3である。第1右脇板13Fのなかで、第1右脇板13Fの下端辺13ET、底側端辺E1、および折り曲げ補助線FL2に囲まれる部分は、前板21と底板25とに対しほぼ直交する面上に位置し、第3右脇板53Fの内側面に接着されている。
【0072】
開口側端辺E3は、第1右脇板13Fが後板22に連接する部分であり、かつ開口20Tの角から底板25に向けて連続する。開口側端辺E3は、上述した角度θaを形成する。第1右脇板13Fの内側面のなかで、開口側端辺E3から前側に延びる面は、高さ方向DHに対して傾く傾斜面であり、かつ長さ方向DL、および幅方向DWに対して傾く傾斜面である。高さ方向DHにおける開口側端辺E3の長さは、例えば、第1右脇板13Fの高さ方向DHにおける長さの1/3である。第1右脇板13Fのなかで、第1右脇板13Fの上端辺13UT、開口側端辺E3、および折り曲げ補助線FL1に囲まれる部分は、長さ方向DL、および幅方向DWに対して傾く傾斜部分であり、第3右脇板53Fから離間している。
【0073】
境界端辺E2は、第1右脇板13Fが後板22に連接する部分であり、かつ開口側端辺E3の下側端部から底側端辺E1の上側端部まで連続する。第1右脇板13Fの内側面のなかで、境界端辺E2から前側に延びる面は、高さ方向DH、長さ方向DL、および幅方向DWに対して傾く傾斜面である。境界端辺E2の延びる方向において境界端辺E2の長さは、例えば、第1右脇板13Fの高さ方向DHにおける長さの1/3である。第1右脇板13Fのなかで、2つの折り曲げ補助線FL1,FL2、および境界端辺E2に囲まれる部分は、高さ方向DH、長さ方向DL、および幅方向DWに対して傾く傾斜部分であり、第3右脇板53Fから離間している。
【0074】
図5は、右脇後端辺23Eを後側下方から見た後面図である。なお、図5は、第1右脇板13Fの構造を説明する便宜上、底側端辺E1、境界端辺E2、および開口側端辺E3をそれぞれ破線で示し、かつ第1右脇板13Fの外側面にドットを付して示す。図6におけるドット領域は、図5でのドット領域の内側面を示す。
【0075】
図5および図6が示すように、第1右脇板13Fは、右脇板23のなかに隙間23Sを区画する。隙間23Sは、後板22から前板21に向けて先細りとなる空間であり、かつ開口側部分13FAから底側部分13FBに向けて先細りとなる空間である。長さ方向DLにおける後板上辺22Tの長さL1(図5を参照)は、長さ方向DLにおける隙間23Sの長さLNの分だけ、底板25に後板22を連接するための罫線Lなど、他の罫線Lの長さL2よりも短い。
【0076】
第1右脇板13Fは、罫線LT(図8を参照)を介して後板22に連接する。罫線LTは、第1罫線の一例であり、折れ曲がる線状を有する。第1右脇板13Fに後板22を連接するための罫線LTは、第1罫線部分と、第2罫線部分と、境界罫線とを備える。第1罫線は、直線状を有し、境界罫線を有さず、第1罫線部分と第2罫線部分とが直接つながっていてもよい。また、第1罫線部分、第2罫線部分、境界罫線は、それぞれ直線状であってもよいし、いずれかが曲線状であってもよい。
【0077】
第2罫線部分は、開口側罫線E3Lである。開口側罫線E3Lは、開口側端辺E3を形成する罫線であり、後板上辺22Tの端から後板22の下辺22BLに向けて延びる。第2罫線部分は、切り込み線を有していてもよい。第1罫線部分は、底側罫線E1Lである。底側罫線E1Lは、底側端辺E1を形成する罫線であり、後板22の下辺22BLから後板上辺22Tに向けて延びる。また、第1罫線は、境界罫線E2Lを備える。境界罫線E2Lは、境界端辺E2を形成する罫線であり、第1罫線部分と第2罫線部分とを所定の角度をもって接続する。これにより、第1罫線部分と第2罫線部分は、境界罫線E2Lを境界として折れ曲がる。また、第1罫線は、巻回体収容箱10の外表面から内側に向けて切れ込まれた切り込み線を含む。
【0078】
上述したように、第1右脇板13Fは、下端辺13ETが傾斜辺で構成されることで、下端辺13ETが底板25と第3右脇板53Fとを繋ぐ罫線LTに近接または突き当てられるように折り曲げられる。これにより、後部20Bでは、開口側罫線E3Lおよび境界罫線E2Lが前板21の方向に折れ曲がる。これにより、第1右脇板13Fは、内向きかつ前向きの斜面を形成する。そして、後面と対向する視点から見て、後板22および第1右脇板13Fで構成される角には、内側に窪んだ隙間23Sを構成するための傾斜面が構成される。そして、第1右脇板13Fは、右基準位置23Bを含む開口20T側で、三次元曲面状が構成される。
【0079】
第1右脇板13Fの内側面のなかで、底側端辺E1から前側に延びる面が、長さ方向DLにほぼ直交する平面である。一方、第1右脇板13Fの内側面のなかで、開口側端辺E3から前側に延びる面、および境界端辺E2から前側に延びる面は、それぞれ高さ方向DH、長さ方向DL、および幅方向DWに対して別々の傾きを有した傾斜面である。したがって、第1罫線のうち、第2罫線部分である開口側罫線E3Lに、巻回体収容箱10の外表面から内側に向けて切れ込まれた切り込み線を有するようにすると、後板22に対する第1右脇板13Fの罫線LTでの折り曲げが容易となる。これによって、巻回体収容箱10の成形性が向上する。なお、切り込み線は、半切れ線が好ましい。
【0080】
また、開口側罫線E3Lの上端は、後板22と上蓋板31との罫線Lの端部と交わる(図8参照)。罫線Lは、隙間23Sの長さLNに相当する部分が切り込み線Cを備える。罫線Lの端部は、切り込み線Cで切り離されることで後板22と上蓋板31と分離した状態となる。そのため、第1右脇板13Fを罫線E1L~E3Lで折り曲げると、第1右脇板13Fが後板22や底板25に対して内向きかつ前向きの斜面となるように形成される。
【0081】
[作用]
上述したように、後部20Bにおける内寸LAは、基準線BLよりも開口20T側において、第1脇板13F,14Fによって、後板22から前板21に向けて徐々に大きくなり、かつ開口20Tから底板25に向けて徐々に大きくなる。後部20Bにおける内寸LAは、基準線BLよりも底板25側において、ほぼ一定である。
【0082】
脇板の内表面における幅方向DW(前板21から後板22に向かう方向)の先端(後板22側)であって、かつ高さ方向DH(開口20Tから底板25に向かう方向)の基端(開口20T側)である部位は、後板上辺22Tと右脇後端辺23Eが交差する交差部23Yである。図6、および図7の矢印が示すように、後部20Bにおける内寸LAは、後板22の交差部23Yから右基準位置23Bに向けて徐々に大きくなる。また、前部20Fにおける内寸LAは、高さ方向DHおよび幅方向DWにおいて、第2右脇板23Fや第2左脇板24Fの厚さ程度の相違を含めて、ほぼ一定である。
【0083】
後部20Bにおける開口20T側の内寸LAの最小値は、前部20Fにおける内寸LAよりも小さい。このため、巻回体50Rが後板22に向けて動くとき、巻回体50Rの筒体50Cの端面が第1脇板13F,14Fに接し、これによって巻回体50Rが後板22に向けて動くことを抑える。この際、後部20Bにおける開口20T側の内寸LAは、長さ方向DLにおけるラップフィルム50の端が第1脇板13F,14Fに直接接触して傷がつかないように構成される。
【0084】
前部20Fにおける底板25側の内寸LAは、後部20Bにおける開口20T側の内寸LAよりも大きく、後部20Bにおける底板25側の内寸LAとはほぼ同じである。ラップフィルム50の先端が巻回体収容箱10の内部に巻き戻ってしまった場合などのように、巻回体収容箱10の開口20Tで巻回体50Rが出し入れされるときは、第1右脇板13Fの上端辺13UTのほぼ中央を外側に押し広げるようにして指をいれることで、筒体50Cの端部に指をかけて巻回体50Rを持ち上げることができる。このような方法で巻回体50Rの出し入れを容易に行うことができる。
【0085】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)巻回体収容箱10の後部20Bにおける内寸LAが、基準位置を含む開口20T側の部分に最小値を有する。内寸LAが最小値となる部位は、後部20Bのなかで巻回体の筒体50Cの端面と接しやすい。そのため、巻回体収容箱10は、巻回体50Rが後板22に向けて動くことを抑えながらも、開口20T側へ動くことも抑制できる。その結果、巻回体50Rの開口20Tからの飛び出しを抑制できる。巻回体50Rの開口20Tからの飛び出しは、前部20Fにおいて、規制片3R,4Rによっても抑えられる。
【0086】
(2)巻回体収容箱10の後部20Bにおける内寸LAの最小値が、前部20Fにおける右脇板23と左脇板24との間の内寸LAよりも小さい。そのため、巻回体収容箱10は、巻回体50Rが後板22に向けて動くことを抑えながらも、巻回体50Rの開口20Tからの飛び出しを抑制できる。
【0087】
(3)第1右脇板13Fの開口側部分13FAが第3右脇板53Fから内側に離間し、かつ第1右脇板13Fの底側部分13FBが第3右脇板53Fに接合されている。これにより、第1右脇板13Fと第3右脇板53Fとの長さ方向DLにおける相対的な位置の相違によって、後部20Bにおける基準位置を含む開口20T側の部分に、内寸LAが最小値となる部位を配置できる。
【0088】
(4)後板22と第1右脇板13Fとは、罫線LTを介して接し、開口側罫線E3Lと底側罫線E1Lが、境界罫線E2Lを境界として折れ曲がる。そのため、開口側部分13FAを第3右脇板53Fから離間させると共に、底側部分13FBを第3右脇板53Fに接合させるような、複雑な構造が容易に実現される。
【0089】
(5)第1右脇板13Fと後板22を連接する罫線LTにおいて、開口側罫線E3Lが切り込み線を含むため、後板22から第1右脇板13Fを折り曲げることで、開口側部分13FAを第3右脇板53Fから離間させることができる。これと共に、底側部分13FBを第3右脇板53Fに接合させることが容易ともなる。
【0090】
(6)後部20Bにおける内寸LAを開口20T側の部分で最小にすることが、右脇板23の折り曲げによって実現される。そして、右脇板23の内表面における幅方向DWの先端(後板22側)、かつ高さ方向DHの基端(開口20T側)から右基準位置23Bに向けて、内寸LAが徐々に大きくなるため、ラップフィルム50の使用によって巻回体50Rが縮径する場合であっても、上記に準じた効果が得られる。
【0091】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
[第1脇板]
・境界罫線E2Lの少なくとも一部は、切り込み線である半切れ線、あるいはミシン目線であってもよい。開口側罫線E3Lの少なくとも一部もまた、切り込み線である半切れ線、あるいはミシン目線であってもよい。なお、境界罫線E2Lは、切り込み線を割愛された構成でもよいし、開口側罫線E3Lもまた、切り込み線を割愛された構成でもよい。こうした構成であっても、上記(1)から(4)、(6)に準じた効果は得られる。切り込み線Cも半切れ線、あるいはミシン目線であってもよい。
【0092】
・第1右脇板13Fに後板22を連接するための罫線LTは、直線状を有してもよいし、曲線状を有してもよい。第1右脇板13Fに後板22を連接するための罫線LTが、例えば後板下辺22BLと鈍角を形成する直線状を有する構成であっても、後部20Bにおける内寸LAが開口20T側の部分に最小値を有するように、第1右脇板13Fを構成することは可能である。こうした構成であっても、上記(1)から(3)、(6)に準じた効果は得られる。
【0093】
・第1右脇板13Fにおける下端辺13ETは、底板25に接する緩やかな曲線状を有してもよいし、底板25に接する直線状を有してもよい。
・左脇板24の内表面は、長さ方向DLと直交する平面状であってもよい。すなわち、開口側罫線E3Lおよび境界端辺E2は、底側罫線E1Lを延長した直線であってもよい。こうした構成であっても、後部20Bにおける内寸LAが開口20T側の部分に最小値を有する構成は、第1右脇板13Fによって実現される。
【0094】
[内寸]
・右脇板23と左脇板24との間における開口側部分13FAでの内寸LAの全ては、右脇板23と左脇板24との間における底側部分13FBでの内寸LA以下でもよい。
【0095】
・右脇板23と左脇板24との間における開口側部分13FAでの内寸LAの最大値は、右脇板23と左脇板24との間における底側部分13FBでの内寸LAの最大値以下でもよい。
【0096】
・右脇板23と左脇板24との間の内寸LAが最小値を示す部位は、第1右脇板13Fにおける前方端に位置してもよいし、上端辺13UTの延びる方向における中間に位置してもよい。
【0097】
・巻回体収容箱10のなかで内寸LAの最小値を示す部位は、巻回体収容箱10の後部20Bに位置してもよいし、前部20Fに位置してもよいし、後部20Bと前部20Fとの両方に位置してもよい。
【符号の説明】
【0098】
DH…高さ方向
DL…長さ方向
DW…幅方向
LA…内寸
LR,LT…罫線
10…巻回体収容箱
13F…第1右脇板
13FA…開口側部分
13FB…底側部分
14F…第1左脇板
20…箱本体
20F…前部
20B…後部
20T…開口
21…前板
21T,3E,4E…上辺
22…後板
22BL…後板下辺
23…右脇板
23B…右基準位置
23F…第2右脇板
23S…隙間
24…左脇板
24B…左基準位置
24F…第2左脇板
25…底板
30…蓋体
50…ラップフィルム
50C…筒体
50R…巻回体
53F…第3右脇板
54F…第3左脇板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8