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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095331
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】情報処理装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/46 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01J3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212540
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】笹木 亮
(72)【発明者】
【氏名】宗像 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】成 恵美
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA05
2G020DA16
2G020DA22
2G020DA32
2G020DA34
2G020DA35
2G020DA66
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな色の製品の処方の探索を効率化するための、情報処理装置の動作方法等を開示する。
【解決手段】情報処理装置の動作方法は、複数の化粧剤それぞれの反射光の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値として取得する工程と、目視による色が類似する複数の化粧剤の所定の指標値同士が近似する場合に、当該所定の指標値を、一対の化粧剤の色の類否を前記指標値同士の近似度合いに基づき判定するための評価指標値とする情報を格納する工程とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置の動作方法であって、
複数の化粧剤それぞれの反射光の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値として取得する工程と、
目視による色が類似する複数の化粧剤の所定の指標値同士が類似する場合に、当該所定の指標値を、一対の化粧剤の色の類否を前記指標値同士の近似度合いに基づき判定するための評価指標値とする情報を格納する工程と、
を有する動作方法。
【請求項2】
請求項1において、
目視による色が類似する複数の化粧剤の前記所定の指標値同士は、目視による色が類似しない複数の化粧剤の前記所定の指標値同士より高い近似度合いで近似する、
動作方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記所定の指標値同士は、特徴空間における距離が第1の距離のときには第1の近似度合いで近似し、前記距離が前記第1の距離より小さい第2の距離のときには前記第1の近似度合いより高い第2の近似度合いで近似する、
動作方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記化粧剤の反射光は、当該化粧剤の切断面における反射光である、
動作方法。
【請求項5】
情報処理装置の動作方法であって、
目視による色が類似する複数の化粧剤それぞれの反射光の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値として、当該複数の化粧剤における所定の指標値が近似することを示す情報を取得する工程と、
目標とする色を有する目標化粧剤と複数の比較用化粧剤とにおける反射光の前記所定の指標値の情報を取得する工程と、
前記複数の比較用化粧剤から、前記所定の指標値が前記目標化粧剤と近似する比較用化粧剤を選定する工程と、
を有する動作方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記所定の指標値同士は、特徴空間における距離が第1の距離のときには第1の近似度合いで近似し、前記距離が前記第1の距離より小さい第2の距離のときには前記第1の近似度合いより高い第2の近似度合いで近似する、
動作方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記化粧剤の反射光は、当該化粧剤の切断面における反射光である、
動作方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、化粧剤といった、対象物に色彩を塗布する化学製品において、所望の色の製品を新たに開発する際は、材料の処方を新たに探索する必要がある。かかる開発過程を支援する技術が種々提案されており、例えば特許文献1には、コンピュータにより反射率を変化させた色彩を選択可能に表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-258854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、新製品に求められる色が多様化しており、新製品の処方の探索を効率化することが求められる。
【0005】
上記に鑑み、以下では、新たな色の製品の処方の探索を効率化するための、情報処理装置の動作方法等を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示における情報処理装置の動作方法は、複数の化粧剤それぞれの反射光の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値として取得する工程と、目視による色が類似する複数の化粧剤の所定の指標値同士が近似する場合に、当該所定の指標値を、一対の化粧剤の色の類否を前記指標値同士の近似度合いに基づき判定するための評価指標値とする情報を格納する工程とを有する。
【0007】
また、本開示における別の態様における情報処理装置の動作方法は、目視による色が類似する複数の化粧剤それぞれの反射光の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値として、所定の指標値が近似することを示す情報を取得する工程と、目標とする色を有する目標化粧剤と複数の比較用化粧剤とにおける反射光の前記所定の指標値の情報を取得する工程と、前記複数の比較用化粧剤から、前記所定の指標値が前記目標化粧剤と近似する比較用化粧剤を選定する工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における情報処理装置の動作方法等によれば、新たな色の製品の処方の探索を効率化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理システムの構成例を示す図である。
図2】情報処理装置の動作手順例を示すフローチャート図である。
図3】評価指標値選定について説明する図である。
図4】類似サンプルと目視による類似サンプルの例を示す図である。
図5】情報処理装置の動作手順例を示すフローチャート図である。
図6】比較用サンプルの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
[システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態の構成例を示す図である。情報処理システム1は、ネットワーク12を介して互いに情報通信可能に接続される情報処理装置10と測色装置11とを有する。情報処理装置10は、例えば、一以上のパーソナルコンピュータである。情報処理装置10は、タブレット端末装置、スマートフォン等を含んでもよい。測色装置11は、例えば、化粧剤のサンプル13に入射光15を照射して測定面14における複数の反射角における反射光16の分光強度を測定するための機器である。ネットワーク12は、例えば、研究所、工場等の構内LAN(Local Area Network)である。ネットワーク12は、インターネット、アドホックネットワーク、MAN(Metropolitan Area Network)、移動体通信網もしくは他のネットワークを含んでもよい。
【0012】
本実施形態における情報処理装置10の動作方法によれば、情報処理装置10は、複数の化粧剤それぞれの反射光16の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値として取得する。また、情報処理装置10は、目視による色が類似する複数の化粧剤のある指標値同士が近似する場合に、その指標値を、一対の化粧剤の色の類否を指標値同士の近似度合いに基づき判定するための評価指標値とする情報を格納する。
【0013】
本実施形態における情報処理装置10の更なる動作方法によれば、情報処理装置10は、目視による色が類似する複数の化粧剤それぞれの反射光の、反射角と色成分の組合せ毎の強度を指標値としてある指標値が近似することを示す評価指標値情報を取得する。また、情報処理装置10は、目標とする色を有する目標化粧剤と複数の比較用化粧剤とにおける反射光の評価指標値の情報を取得する。さらに、情報処理装置10は、複数の比較用化粧剤から、評価指標値が目標化粧剤と近似する比較用化粧剤を選定する。
【0014】
本実施形態によれば、目視により類似する色を有する複数の化粧剤において類似する指標値を用いて、新たに目標とする化粧剤と色が類似する比較用化粧剤を選定することが可能となる。化粧剤の場合、ユーザの顔肌の色が本来多様であることに加え、価値観、美意識の多様化を受けて、開発すべき新製品の色が多岐に亘るが、本実施形態によれば、目標とする化粧剤の色に類似する色を有し処方が既知の比較用化粧剤の選定を、効率化することが可能となる。
【0015】
次いで、情報処理装置10の構成について説明する。
【0016】
情報処理装置10は、通信部101、記憶部102、制御部103、入力部105、及び出力部106を有する。これらの構成は、情報処理装置10が互いに情報通信可能な二以上のコンピュータで構成される場合には、二以上のコンピュータに適宜に配置される。
【0017】
通信部101は、一以上の通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、有線又は無線LAN規格に対応し、近傍のルータ装置に接続するインタフェースである。通信部101は、情報処理装置10の動作に用いられる情報を受信し、また情報処理装置10の動作によって得られる情報を送信する。情報処理装置10は、通信部101によりネットワーク12に接続され、ネットワーク12経由で他の装置と情報通信を行う。
通信インタフェースは、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、若しくは5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応するモジュール等を有し、移動体通信の基地局を介してネットワーク12に接続されてもよい。
【0018】
記憶部102は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する一以上の半導体メモリ、一以上の磁気メモリ、一以上の光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)である。RAMは、例えば、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)である。ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)である。記憶部102は、制御部103の動作に用いられる情報と、制御部103の動作によって得られた情報とを格納する。
【0019】
制御部103は、一以上のプロセッサ、一以上の専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)等の専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。制御部103は、情報処理装置10の各部を制御しながら、情報処理装置10の動作に係る情報処理を実行する。
【0020】
情報処理装置10の機能は制御部103に含まれるプロセッサが、制御プログラムを実行することにより実現される。制御プログラムは、プロセッサを制御部103として機能させるためのプログラムである。また、情報処理装置10の一部又は全ての機能が、制御部103に含まれる専用回路により実現されてもよい。また、制御プログラムは、制御部103により読取り可能な非一過性の記録・記憶媒体に格納され、制御部103が媒体から読み取ってもよい。
【0021】
入力部105は、一以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォン、撮像画像を取り込むカメラ等である。更に、入力用インタフェースは、画像コードをスキャンするスキャナ又はカメラ、ICカードリーダを含んでもよい。入力部105は、情報処理装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付け、入力される情報を制御部103に送る。
【0022】
出力部106は、一以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイである。出力部106は、情報処理装置10の動作によって得られる情報を出力する。
【0023】
次いで、測色装置11について説明する。測色装置11は、測色対象物の表面に光を照射して、反射光の反射角毎に、複数の色成分の強度を計測する。複数の色成分の強度は、分光強度又は分光反射率である。測色装置11は、測色対象物に向け例えば380nm~780nmの波長の光を照射するLED(Light-Emitting Diode)素子と、測色対象物からの反射光を複数の反射角に亘って受光する受光器と、受光器からの出力に基づき反射角毎の分光強度又は分光反射率を成分とするスペクトルを導出するプロセッサとを有する。また、測色装置11は、通信モジュールを有し、これによりネットワーク12と接続し、情報処理装置10から指示を受けて動作したり、測色により得られた反射角毎のスペクトルを含む測色情報を情報処理装置10へ送ったりする。
【0024】
次いで、化粧剤のサンプル13について説明する。サンプル13は、ユーザの顔に着色するための色材を含み、目視することで色の判別が可能な固形、ペースト、粉剤等の化粧剤である。化粧剤は、例えば、口紅、頬紅、アイシャドウ等である。口紅のような固形剤の場合、外気に触れる界面よりも、固形剤の内部における色材の分散状態が目視により大きな影響を与えうる。よって、サンプル13の切断面を測定面14として目視及び反射光16の強度測定を行うことが好適である。切断には、ワイヤー、カッター等、略平坦な切断面を形成しうる切断手段が好適に用いられる。サンプル13の延伸方向に対しある程度傾いた面で切断することが、ある程度以上の大きさの切断面を確保するうえで好適である。さらに、測定面14を露出した状態でサンプル13を治具により固定し、測色装置11を動作させて測色を行うことが、安定した測色結果を得るうえで好適である。
【0025】
[情報処理装置の動作例1]
図2は、情報処理装置10の動作手順例を説明するためのフローチャート図である。各ステップは、制御部103により実行される。図2の動作手順は、評価指標値を決定するための動作手順である。
【0026】
ステップS201において、制御部103は、測色情報を用意する。複数のサンプル13に対しユーザが測色装置11による測色を行うことで、サンプル13毎の測色情報が得られる。サンプル13の数は、例えば、200~1000の任意の数である。制御部103は、測色装置11から受けて記憶部102に格納したサンプル13毎の測色情報を読み出す。各測色情報は、反射角毎の色成分の強度の値を含む。反射角は、例えば、測定面における正反射の角度を0度として、0度に対する正又は負の値で特定される複数の角度である。制御部103は、色成分の強度の値を任意の表色系における指標の値に変換する。指標は、例えば、色調、輝度等の値である。ここで、制御部103は、指標値の分布が最も少ない部分を0とするように、各指標値に補正を行う。例えば、色相を表すh値を用いた場合にh値が0~360度の値を有するところ、h値に120度回転させる補正を行う。具体的には、制御部103は、h値が0度以上120度未満の場合にはh値に240度を加え、h値が120度以上の場合にはh値から120度を減ずる補正を行う。そうすることで、0度付近の色相と360度付近の色相の乖離の大きさをより的確にh値の角度の大きさに反映することが可能となる。こうして、反射角と、色成分の強度の値に対応する各指標の値との組合せである指標値が得られる。なお、指標値の表色系は、任意の表色系とすることが可能であり、例えば、L*a*b*、XYZ、L*u*v*、RGB等の表色系を用いることが可能である。
【0027】
ステップS202において、制御部103は、指標値のスケーリングと次元削減を行う。スケーリングのための処理は、例えば標準化である。また、次元の削減のための処理は、例えば主成分分析である。制御部103は、色調、輝度、粒子感を表す各指標について、サンプル13毎の指標値とサンプル13全ての指標値の平均との差分を標準偏差で除して、平均が0で分散が1の標準化された指標値を生成することで標準化を行う。また、制御部103は、標準化された指標値に対し主成分分析を行い、累積寄与率が一定基準(例えば90%~95%)以上の主成分数を導出する。なお、指標値のスケーリングには、標準化以外にも、例えば正規化等の任意の方法を用いてもよい。また、指標値の次元削減には、主成分分析以外にも、例えばt-SNE(t-Distributed Stochastic Neighbor Embedding)、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)等の任意の手法を用いてもよい。
【0028】
ステップS203において、制御部103は、目標色と類似色の距離を導出する。制御部103は、ステップS202で導出した主成分数までの標準化された指標値を特徴量として、サンプル13相互の特徴空間における距離である。以下、距離はユークリッド距離を使用し説明する。また、制御部103は、任意のアルゴリズムにより目標とするサンプル13(以下、目標サンプル)を決定し、目標サンプルに指標値のユークリッド距離が近いサンプル13を類似サンプルとして抽出する。制御部103は、ユークリッド距離が近い順に任意の数(例えば2~4個)のサンプル13を類似サンプルとして抽出してもよい。そして、制御部103は、指標値毎に、目標サンプルと複数の類似サンプルの指標値間のユークリッド距離の平均(以下、平均距離d_knnという)を導出する。ここにおいて、目標サンプルの色が目標色に対応し、類似サンプルの色が類似色に対応する。また、平均距離d_knnが目標色と類似色の距離である。
【0029】
ステップS204において、制御部103は、目視による目標色と類似色の類似度合いとして、指標値間の近似度合いを示すユークリッド距離を導出する。制御部103は、出力部106により目標サンプルと比較用サンプルの識別情報等を表示し、目視による任意の数(例えば2~4個)の類似サンプルを指定する情報の入力部105への入力をユーザから受け付ける。目視による類似サンプルは、例えば複数の評価者が目標サンプルと比較用サンプルの化粧剤を直接的に目視することで比較用サンプルの中から選定される。制御部103は、ユーザからの入力に基づき、類似サンプルを決定する。各類似サンプルには、評価者による類似度に応じたスコアの情報が付されており、制御部103はスコアに基づいて類似サンプルを決定してもよい。制御部103は、類似サンプルを指定する情報とともに、スコアの値を示す情報の入力を受け付け、スコアの合計が大きい順に任意の数の類似サンプルを決定する。また、制御部103は、指標値毎に、目標サンプルと目視による複数の類似サンプルの指標値間のユークリッド距離の平均(以下、平均距離d_eyeという)を導出する。ここにおいて、目標サンプルの色が目標色に対応し、類似サンプルの色が類似色に対応する。また、平均距離d_eyeが目標色と類似色の距離である。
【0030】
ステップS205において、制御部103は、評価指標値候補を選定する。評価指標値は、目標色と目視による類似色が近似するような指標値である。制御部103は、類似サンプルと目視による類似サンプルについて、指標値毎に、平均距離d_knnに対する目視による平均距離d_eyeの比率(以下、距離比という)を導出する。距離比が小さいほど、目標色と目視による類似色との高い類似度を示す。例えば制御部103は、各指標値の距離比に対し適用する閾値を任意のアルゴリズムにより決定する。閾値は、例えば、0.5~1.5の間で任意のピッチ幅で設定される。さらに、制御部103は、距離比が閾値未満となるような指標値、つまり、平均距離d_knnと目視による平均距離d_eyeが互いに一定程度近似するような指標値が、評価指標値候補として選定される。
【0031】
図3は、距離比と閾値の例を示す。図3のグラフは、指標値(横軸)毎の距離比(縦軸)と、閾値1.0を示す。ここでは、37個の指標値のうち18個で、距離比が閾値未満となる。よって、18個の指標値が評価指標値として選定される。
【0032】
図2に戻り、ステップS206以降において制御部103は、評価指標値候補を検証するための処理を実行する。
【0033】
ステップS206において、制御部103は、評価指標値候補における指標値のスケーリングと次元削減を行う。制御部103は、評価指標値候補に対し標準化、主成分分析を行い、累積寄与率が一定(例えば90%~95%)以上の主成分数を導出することで、指標値の次元を削減する。
【0034】
ステップS207において、制御部103は、評価指標値候補における目標色との距離を導出する。制御部103は、ステップS206で導出した主成分数までの標準化された指標値を特徴量として、サンプル間のユークリッド距離を導出する。
【0035】
ステップS208において、制御部103は、類似サンプルを設定するする。制御部103は、ユークリッド距離が近い順に任意の数(例えば2~4個)のサンプルを類似サンプルとして設定する。
【0036】
ステップS209において、制御部103は、ステップS208で導出した類似サンプルに、ステップS203で決定した目視による類似サンプルが含まれる確率を、包含確率として導出する。
【0037】
図4は、包含確率の導出方法について説明する図である。図4には、目標サンプルに対する目視による類似サンプルを対応付けたテーブルが示される。テーブル中の値は、サンプル名である。類似サンプルは、各目標サンプルに対し、左から類似度が高い順に列記される。類似サンプルのサンプル名に付された数字は、目視した評価者によるスコアの合計である。また、類似サンプルに該当するサンプルのサンプル名は、ユークリッド距離が近い順に1位~3位が異なるパターンのハッチングにより示される。制御部103は、例えば、目視による類似度が最も高い類似サンプルに、類似度が最上位~3位までの類似サンプルが含まれる確率を包含確率として導出する。図4のテーブルにおいては、目視による類似度が最も高い9個の類似サンプルに、類似度が最上位~3位までの8個の類似サンプルが含まれるので、包含確率は89%(=8/9)である。
【0038】
図2に戻り、ステップS210において、制御部103は、評価指標値候補の情報と包含確率とを対応付けて記憶部102に格納する。
【0039】
ステップS212において、制御部103は、ステップS205において評価指標値選定に用いた距離比に対する閾値の変更の余地があるか否かを判定する。制御部103は、例えば、0.5~1.5の範囲で任意のピッチで閾値を変更させるとき、変更の余地の有無、つまり未検証の閾値の有無を判定する。余地がある場合(Yes)、制御部103は、ステップS205~S210を実行し、異なる評価指標値候補とその包含確率とを導出して格納する。閾値の変更の余地がなくなると(No)、制御部103は、ステップS214へ進む。
【0040】
ステップS214において、制御部103は、評価指標値を決定する。制御部103は、評価指標値候補の中から、最も高い包含確率を有する候補を選択して、評価指標値として決定する。すなわち制御部103は、目視による色が類似する複数の化粧剤において一定程度類似する評価指標値候補の中から、一対の化粧剤の色の類否を前記指標値同士の近似度合いに基づき判定するための評価指標値を、包含度確率を用いて決定する。制御部103は、決定した評価指標値を記憶部102に格納する。また、制御部103は、決定した評価指標値を出力部106によりユーザへ向けて表示してもよい。
【0041】
情報処理装置10が、ステップS201~S214を実行することで、評価指標値が決定される。
【0042】
[情報処理装置の動作例2]
図5は、情報処理装置10の動作手順例を説明するためのフローチャート図である。各ステップは、制御部103により実行される。図5動作手順は、新たな目標サンプルの色に類似する色を有する類似サンプルを、評価指標値を用いて選定するための手順である。新たな目標サンプルは、新たに処方を開発するための目標とする色を有する化粧剤のサンプル13である。ユーザは、目標サンプルの測定面14を測色装置11により測色して、測色情報を情報処理装置11へ送る。
【0043】
ステップS501において、制御部103は、目標サンプルの評価指標値を取得する。制御部103は、測色装置11から送られる目標サンプルの測色情報を受けて記憶部102に格納する。測色情報は、反射角毎の色成分の強度の値、すなわち指標値を含む。制御部103は、各指標値を、評価指標値を選定したときと同じ表色系の指標値に変換する。そして、制御部103は、記憶部102に格納された評価指標値の情報を参照し、目標サンプルの指標値から評価指標値に対応する指標値を抽出することで、目標サンプルの評価指標値を取得する。
【0044】
ステップS502において、制御部103は、比較用サンプルの評価指標値を取得する。制御部103は、記憶部102に格納された比較用サンプルの測色情報を取得する。測色情報は、測色装置11から送られて記憶部102に格納される。比較用サンプルの測色情報は、類似サンプル選定の都度、測色装置11から送られてもよいし、予め一回的に測色装置11から送られて記憶部102に格納された情報が類似サンプルの選定に際して読み出されてもよい。制御部103は、比較用サンプルの指標値を、評価指標値を選定したときと同じ表色系の指標値に変換する。そして、制御部103は、記憶部102に格納された評価指標値の情報を参照し、比較用サンプルの指標値から評価指標値に対応する指標値を抽出することで、比較用サンプルの評価指標値を取得する。
【0045】
制御部103は、目標サンプル及び比較用サンプルの評価指標値において、指標値の分布が最も少ない部分を0とするように、例えばh値に所定の角度を加えるなどして、各指標値の補正を行う。
【0046】
ステップS504において、制御部103は、評価指標値のスケーリングと次元削減を行う。例えば、制御部103は、スケーリングのための処理として、各指標について平均と標準偏差を用いて標準化を行い、標準化された指標値を生成する。また、制御部103は、次元削減のための処理として、標準化された指標値に対し固有ベクトルを用いた主成分分析を行い、累積寄与率が一定(例えば90%~95%)以上の主成分数を導出する。
【0047】
ステップS505おいて、制御部103は、目標サンプルと比較用サンプルの、評価指標値同士の類似度合いとして、評価指標値間の距離を導出する。制御部103は、ステップS504で導出した主成分数までの標準化された評価指標値の値を特徴量として、評価指標値間のユークリッド距離を導出する。
【0048】
ステップS506において、制御部103は、目標サンプルとの近似度が高い、つまり距離が小さい比較用サンプルの情報を表示する。制御部103は、目標サンプルと評価指標値間のユークリッド距離の平均が小さい順に、比較用サンプルをソートする。そして、制御部103は、ソートした比較用サンプルの情報を出力部106によりユーザへ向けて表示する。
【0049】
図6は、比較用サンプルの表示例を示す図である。表示例60は、項目表示部61、サンプル表示グラフ62、サンプル表示テーブル65を含む。項目表示部61は、目標サンプル、サンプル表示グラフ62におけるX軸、Y軸に表示される評価指標値の種類を表示する。サンプル表示グラフ62は、X軸が反射角15度のL値に対応する評価指標値「L-15」、Y軸が反射角45度のL値に対応する評価指標値「L-45」の値をそれぞれ示し、X-Y座標平面にプロットされた目標サンプルの評価値63と比較用サンプルの評価値64を示す。サンプル表示テーブル65は、第1列に比較用サンプルの化粧剤の識別情報、第2列以降に評価指標値毎の比較用サンプルと目標サンプルとの類似度の値を表示する。類似度は、任意のアルゴリズムによりユークリッド距離が変換された、ユークリッド距離の大きさと負の相関を有する値である。すなわち、ユークリッド距離が小さく、評価指標値の値が目標サンプルに近いほど指標値間の近似度が高く、すなわち類似度は大きくなる。ここでは、X軸の「L-15」、Y軸の「L-45」の順で、指標値間のユークリッド距離が小さい、つまり類似度が大きい順にソートされて表示される。
る。かかる表示例60によれば、ユーザは、目標サンプルに類似する比較用サンプルを視覚的に認識することが可能となる。
【0050】
上述のような情報処理装置10の動作により、新たな色の化粧剤を開発する際、目標サンプルと色が類似する比較用サンプルの選定を効率化することが可能となる。特に、熟練の評価者による目視と同等の評価が情報処理装置10の動作として可能となるので、未熟な評価者による評価を支援することが可能となる。そして、選定された比較用サンプルの予め既知の処方に基づいて目標色を再現可能な処方を開発する場合において、最も類似する色の比較用サンプルを効率的に選定することができるので、目標色の処方の開発効率向上が可能となる。
【0051】
上述において、情報処理装置10の動作を規定する処理・制御プログラムは、クラウドサーバ等に格納されていて、ネットワーク12経由で情報処理装置10にダウンロードされてもよいし、コンピュータに読取り可能な非一過性の記録・記憶媒体に格納され、情報処理装置10が媒体から読み取ってもよい。
【0052】
上述した動作手順は、一の情報処理装置により実行される場合も、各工程の一部又は全部が複数の情報処理装置により実行される場合も、本実施形態の範囲に含まれる。また、複数の情報処理装置が用いられる場合、互いに通信可能に接続されていてもよいし接続されていなくてもよい。複数の情報処理装置が互いに通信可能に接続されていない場合、一の情報処理装置による情報処理の結果は、例えば記憶媒体に格納されて他の情報処理装置により読み出されることで、他の情報処理装置に共有されてもよい。
【0053】
上述において、実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:情報処理装置
11:測色装置
12:ネットワーク
13:化粧剤
14:表面
15:入射光
16:反射光
101:通信部
102:記憶部
103:制御部
105:入力部
106:出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6