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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095340
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】レンズユニット及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240703BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G03B30/00
G02B7/02 A
G02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212560
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井上 道夫
(72)【発明者】
【氏名】松原 範幸
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA01
2H044AB09
2H044AH05
2H044AH07
(57)【要約】
【課題】レンズの熱による膨脹又は収縮に関わらず、光軸に対するレンズの位置の変化を防止可能なレンズユニット及び撮像装置を提供する。
【解決手段】レンズユニット(100)の鏡筒(101)はプラスチックレンズ(102、103)を保持する。プラスチックレンズ(102、103)の凹部(102d、103d)は鏡筒(101)の凸部(101a)と嵌合し、その先端は凹部(102d、103d)の底には接触しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、保持構造を介して前記鏡筒に保持されるプラスチックレンズと、を有するレンズユニットであって、
前記保持構造は、前記プラスチックレンズ及び前記鏡筒の一方に形成される凹部と、前記プラスチックレンズ及び前記鏡筒の他方に形成される、前記凹部に嵌合する凸部と、を含み、
前記凸部は、その先端が前記凹部の底に接触しないように前記凹部と嵌合する、
レンズユニット。
【請求項2】
前記プラスチックレンズは、レンズ有効面と、その外側を囲む外枠部と、前記外枠部に形成される前記凹部を有し、
前記鏡筒は、内周壁面から内側の特定位置に位置する前記凸部を有する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記レンズユニットは、前記プラスチックレンズを複数有し、前記鏡筒は、複数の前記プラスチックレンズの前記凹部に共通して嵌合する前記凸部を有する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズユニットは、ガラスレンズをさらに有する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記プラスチックレンズは、光軸方向に付勢されて前記鏡筒内で支持される、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記凹部又は凸部は、前記プラスチックレンズの周方向における3か所に設けられている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記鏡筒は、その内周壁面から突出し、前記プラスチックレンズの光軸方向に沿って延在するリブを有し、
前記リブは、基端部とそれよりも幅広の先端部とを有し、前記先端部で前記凹部に嵌合し、
前記プラスチックレンズは、前記鏡筒の内径よりも小さな外径を有する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記鏡筒は、その内周壁面からの特定位置に、前記プラスチックレンズの光軸方向に沿って延在し、前記凹部に嵌合するボスを有し、
前記プラスチックレンズは、前記鏡筒の内径よりも小さな外径を有する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記鏡筒は、その端面から前記プラスチックレンズの光軸方向に沿って延在し、前記凹部に嵌合するボスを有する、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記レンズユニットは遮光部材又はスペーサをさらに有し、前記遮光部材又はスペーサは前記凹部を有し、前記鏡筒の前記凸部が前記凹部に嵌合して前記鏡筒に保持される、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のレンズユニットを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用レンズユニットは、-40℃から120℃という広い温度範囲で使用され、またレンズ材料毎に線膨張係数も異なる。このため、鏡筒の材料の線熱膨脹係数とレンズの材料の線膨張係数との差による形状変化に対応して、レンズの位置を決める必要がある。レンズユニットにおいて光軸方向に隣接するレンズの位置を決める構造としては、光軸方向に隣接するレンズにおける凹凸の係合によって鏡筒内におけるレンズの位置を決める構造が知られている。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-72543号公報
【特許文献2】特開2020-42140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような光軸方向に沿う凹凸の係合によってレンズ同士の位置を決める場合では、いずれかのレンズの位置がずれた場合に、それに隣接するレンズの位置もずれ、かつ位置のずれが大きくなることがある、という問題がある。
【0005】
本発明の課題は、レンズの熱による膨脹又は収縮に関わらず、光軸に対するレンズの位置の変化を防止可能なレンズユニット及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレンズユニットは、鏡筒と、鏡筒の内径よりも小さな外径を有し、保持構造を介して前記鏡筒内に保持されるプラスチックレンズと、を有するレンズユニットであって、保持構造は、プラスチックレンズ及び鏡筒の一方に形成される凹部と、プラスチックレンズ及び鏡筒の他方に形成される、凹部に嵌合する凸部と、を含み、凸部は、その先端が凹部の底に接触しないように凹部と嵌合する。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像装置は、上記レンズユニットを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、レンズユニット及びそれを備える撮像装置において、レンズの熱による膨脹又は収縮に関わらず、光軸に対するレンズの位置の変化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係るレンズユニットの構成を模式的に示す側面断面図である。
図3図1に示すレンズユニットの一部分解斜視図である。
図4図1に示すレンズユニットを右側面から見た構成を模式的に示す図である。
図5図4中のA部を拡大して示す図である。
図6】プラスチックレンズの凹部に係合する鏡筒の凸部の熱膨脹又は熱収縮時における嵌合位置の様子を模式的に示す図である。
図7】本発明の実施形態2に係るレンズユニットの一部分の構成を模式的に示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態3に係るレンズユニットの一部分の構成を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の実施形態4に係るレンズユニットの一部分解斜視図である。
図10】本発明におけるプラスチックレンズの凹部の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
[撮像装置]
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を模式的に示す図である。図1に示されるように、撮像装置200は、本体201及び本体201に着脱可能なレンズユニット100を有している。本体201は、カバーガラス204と、撮像素子としてのCCDセンサ205とを有している。CCDセンサ205は、レンズユニット100の光学系の光軸が中心軸となる位置に配置されている。レンズユニット100は、鏡筒101を備えている。
【0011】
[レンズユニット]
図2は、本発明の実施形態1に係るレンズユニットの構成を模式的に示す側面断面図である。図3は、図1に示すレンズユニット100の一部分解斜視図である。図4は、図1に示すレンズユニット100を右側面から見た構成を模式的に示す図である。図5は、図4中のA部を拡大して示す図である。レンズユニット100は、鏡筒101、プラスチックレンズ102、103、ガラスレンズ104及びリテーナ105を有している。以下、より対物側に配置されている。プラスチックレンズ102は、二枚のプラスチックレンズのうち、より対物側に配置されているプラスチックレンズであり、プラスチックレンズ103はより像面側に配置されているプラスチックレンズである。
【0012】
鏡筒101は、レンズ及びその他の光学素子を保持する部材である。鏡筒101は、略円筒形状を有し、保持する光学素子の光軸と重なる中心軸を有する、略円柱状の内部空間を形成する。鏡筒101は、軸方向の中央部に周設する凸条部111を有し、それよりも対物側の第一室120と、像面側の第二室130とを含む。第一室120には、必要に応じてスペーサなどを介して、レンズを含む複数の光学素子が配置されている。これらの光学素子は、ガラス製であり、対物側リテーナ121の締着によって、第一室120において前述の中心軸上に固定されている。なお、図1で示した本体201は、リテーナ105の右側の空間に収まるため、鏡筒101内に一体化された撮像装置200が構成できる。
【0013】
第二室130には、プラスチックレンズ102、103及びガラスレンズ104が配置されている。このように、レンズユニット100は、ガラスレンズ104をさらに有している。プラスチックレンズ102、103は、それぞれ、鏡筒101と係合して第二室130内において同軸上に配置されている。ガラスレンズ104は、像面側からリテーナ105に付勢され、スペーサ107を介してプラスチックレンズ102、103を向けて押圧するように配置されている。このように、プラスチックレンズ102、103は、光軸方向に付勢されて鏡筒101内で支持されている。
【0014】
次いで、鏡筒101がプラスチックレンズ102、103を保持する構造を説明する。鏡筒101は、第二室130において、三つの凸部101aを有する。凸部101aのそれぞれは、凸条部111から鏡筒101の軸方向に沿って延在するリブである。凸部101aのそれぞれは、鏡筒101の内周壁面から径方向の中心に向けて突出しており、鏡筒101の中心軸を中心とする三回対称の位置、すなわち周方向において等間隔、に配置されている。
【0015】
凸部101aのそれぞれは、図5に示されるように、断面形状において、基端部101a2と先端部101a1とを有する。基端部101a2は、断面形状が略矩形の部分であり、先端部101a1は、断面形状が略円形の部分である。基端部101a2の幅をm、先端部101a1の幅(直径)をnとすると、m<nである。なお、nは、後述する凹部の幅(d)と実質的に同じであり、mは当該凹部の幅よりも実質的に小さい。このように、凸部101aは、基端部101a2と、それよりも幅広の先端部101a1とを有している。
【0016】
プラスチックレンズ102は、レンズ有効面102b、外枠部102c及び凹部102dを有している。レンズ有効面102bは、平面視したときの外形が円形の部分であって、レンズとして機能する部分である、レンズ有効面102bは、プラスチックレンズ102に求められる光学特性に応じて適宜に設計される。
【0017】
外枠部102cは、レンズ有効面102bの外側を囲む略円環状の部分である。平面視したときの外枠部102cの内周側の形状は円形であり、外周側の形状は、鏡筒101の内周壁面に沿う略円形状である。外枠部102cの外縁は、常に鏡筒101の内周壁面に対して特定の大きさ以上の隙間を有している。このように、プラスチックレンズ102は鏡筒101の内径よりも小さな外径を有している。
【0018】
凹部102dは、外枠部102cに形成されている。凹部102dは、外枠部102cの外縁から径方向に沿って延在する、平面視したときの形状が略U字状の切り欠き部である。凹部102dは、外枠部102cに三つ形成されており、そのそれぞれは外枠部102cの周方向における等間隔の位置に形成されている。このように、凹部は、プラスチックレンズ102の周方向における3か所に設けられている。凹部102dの幅dは、前述の凸部101aの先端部101a1の幅nと同じ大きさである。
【0019】
プラスチックレンズ103も、プラスチックレンズ102と同様に、レンズ有効面103b、外枠部103c及び凹部103dを有している。そして、外枠部103cの外縁は、常に鏡筒101の内周壁面に対して特定の大きさ以上の隙間を有している。また、凹部103dは、外枠部103cに形成されている以外は、凹部102dと同様の位置、同様の形状、及び同じ幅dを有する。
【0020】
次いで、鏡筒がプラスチックレンズを保持する形態を、プラスチックレンズ102を例に説明する。図4に示されるように、鏡筒101の凸部101aは、プラスチックレンズ102の凹部102dに嵌合している。プラスチックレンズ102は、光軸に沿ってみたとき(平面視したとき)に、外枠部102cの外形は、鏡筒101の内周壁面の形状に追従し、かつ外枠部102cの外縁は、鏡筒101の内周壁面に対して特定の隙間を有している。
【0021】
また、凸部101aは凹部102dに挿入され、先端部101a1の両側部が凹部102dの側壁部に当接することで凸部101aが凹部102dに嵌合している。しかしながら、凸部101aの先端部101a1は、凹部102dの底に対して特定の隙間を有している。このように、凸部101aは、その先端が凹部102dの底に接触しないように凹部102dと嵌合している。
【0022】
なお、プラスチックレンズ103も、プラスチックレンズ102と同様に、鏡筒101の凸部101aに嵌合することで鏡筒101内に保持される。すなわち、鏡筒101の凸部101aは、プラスチックレンズ103の凹部103dにも嵌合する。凸部101aの先端部101a1は、凹部103dの底に対して特定の隙間を有している。また、プラスチックレンズ103の外枠部103cの外形も、鏡筒101の内周壁面の形状に追従し、かつ外枠部103cの外縁は、鏡筒101の内周壁面に対して特定の隙間を有している。このように、レンズユニット100は、二枚のプラスチックレンズ102、103を有し、鏡筒101は、プラスチックレンズ102、103の凹部102d、103dに共通して嵌合する凸部101aを有している。
【0023】
なお、プラスチックレンズ102、103には、上記のように鏡筒101に保持された状態で各レンズの光軸が鏡筒101の中心軸に合うように、位置の調整(光軸合わせ)がなされている。
【0024】
ここで、プラスチックレンズと鏡筒との間に形成される「特定の隙間」について説明する。「特定の隙間」とは、撮像装置200の使用環境温度の範囲においてプラスチックレンズ102、103が熱膨脹した場合でも、凸部の先端部と凹部の底との間に隙間が残され、また、外枠部の外縁と鏡筒の内周壁面との間に隙間が残されるのに十分な大きさの隙間である。当該「特定の隙間」は、撮像装置200に求められる使用環境温度、及び、プラスチックレンズ102、103及び鏡筒101の材料の線膨脹係数、から適宜に求めることが可能である。当該「特定の隙間」は、このように撮像装置200の用途及びプラスチックレンズの材料に応じて決められるが、前述した車載用レンズユニットであれば、コンマ数ミリ程度である。当該レンズユニットの組み立て用のマージンは一般に数十ミクロンであることから、当該マージンに比べると十分に大きい隙間となる。
【0025】
レンズユニット100では、温度環境に関わらず、鏡筒101内においてプラスチックレンズ102、103の光軸に対する位置が維持される。以下、鏡筒101におけるプラスチックレンズ102、103の係合の様子を説明する。図6は、プラスチックレンズの凹部に係合する鏡筒の凸部の、熱膨脹又は熱収縮時における嵌合位置の様子を模式的に示す図である。いずれのプラスチックレンズも同様の挙動を示すので、ここでは、プラスチックレンズ102を例に説明する。
【0026】
図6の左側の図は、常温時における凸部の先端部101a1と凹部102dとのプラスチックレンズ102の径方向における位置関係を示している。たとえば、常温であれば、先端部101a1は、径方向において、凹部102dの中央部で凹部102dに嵌合している。
【0027】
図6の右側上の図は、高温時における先端部101a1と凹部102dとのプラスチックレンズ102の径方向における位置関係を示している。高温時では、プラスチックレンズ102が熱膨脹し、径方向の外側に向けて膨脹する。これに対して、鏡筒101はプラスチックレンズ102ほどには膨脹しない。そのため、凹部102dが先端部101a1に対して相対的に外側に移動する。したがって、高温時では、先端部101a1は、径方向において、凹部102dの底部付近で、しかし凹部102dの底には接触せずに、凹部102dに嵌合している。
【0028】
図6の右側下の図は、低温時における先端部101a1と凹部102dとのプラスチックレンズ102の径方向における位置関係を示している。低温時では、プラスチックレンズ102が熱収縮し、鏡筒101はプラスチックレンズ102ほどには収縮しない。そのため、凹部102dが先端部101a1に対して相対的に内側に移動する。したがって、低温時では、先端部101a1は、径方向において、凹部102dの外縁部付近で凹部102dに嵌合している。
【0029】
プラスチックレンズ102は、光軸を中心に、光軸に直交する面方向へ均等に膨脹、収縮する。一方、凸部及び凹部102dは、ともにプラスチックレンズの径方向における光軸を中心として回転対称の三か所に、径方向に沿って延在している。このため、いずれの先端部101a1も、凹部102d内を径方向に同程度の大きさで移動する。よって上記の凹部102d内での先端部101a1の相対的な移動によっても径方向における中心、すなわち光軸の位置は移動しない。よって、このような熱膨脹及び熱収縮によってプラスチックレンズ102が変形しても、プラスチックレンズ102の光軸に対する位置は、常温時に光軸合わせされた位置に保たれる。
【0030】
なお、図6には図示されないが、前述したように、プラスチックレンズ102の外縁と鏡筒101の内周壁面も、互いに接触しない位置関係を維持する。すなわち、高温時には、プラスチックレンズ102の外縁は、常温時に比べて鏡筒101の内周壁面により近づくが接触しない。また、低温時には、プラスチックレンズ102の外縁は、常温時に比べて鏡筒101の内周壁面からより遠ざかる。
[主な作用効果]
【0031】
本実施形態において、プラスチックレンズ102、103は、ともに鏡筒101の内径よりも小さな外径を有している。また、凸部101aは、その先端部101a1が凹部102d、103dの底に接触しないように凹部102d、103dと嵌合している。このように、本実施形態では、プラスチックレンズ102、103が、それぞれ径方向において鏡筒101との間に隙間を有して鏡筒101に保持されている。そして、当該隙間は、前述したようにプラスチックレンズ102、103の熱膨脹の程度に基づいて設定されている。よって、プラスチックレンズ102、103は、熱膨脹時及び熱収縮時に、光軸(中心)から径方向に均等に変形する。よって、鏡筒101内におけるプラスチックレンズ102、103の位置は、熱膨脹及び熱収縮によっても、予め調整されている光軸合わせの位置に保たれる。
【0032】
また、本実施形態では、プラスチックレンズ102、103が凹部102d、103dを有し、鏡筒101が凸部101aを有している。したがって、凸部101aの先端部101a1を凹部102d、103dに嵌合させながらプラスチックレンズ102、103を鏡筒101に装着しやすく、また光軸合わせの位置に位置調整しやすい。
【0033】
また、プラスチックレンズ102、103が凹部102d、103dを有し、鏡筒101が凸部101aを有することは、成形の精度を容易に高める観点からもより有利である。本実施形態における凸部と凹部とを成形で作製する場合を比べると、凸部101aでは先端部101a1の精度が確保され、凹部は深さ方向と長さ方向の全体にわたって幅の精度が確保される。このように凹部の方が、精度の確保の範囲がより広くなる。
【0034】
また、一般に、鏡筒に比べて、プラスチックレンズの形状はよりシンプルであり、また、材料にガラスフィラー等の無機コンパウンドが配合されず、材料の組成もシンプルである。そのため、プラスチックレンズは、鏡筒に比べて所望の精度を実現することが容易で、成形精度も高くしやすい。したがって、プラスチックレンズ102、103が凹部102d、103dを有し、鏡筒101が凸部101aを有する構成が好適である。
【0035】
また、本実施形態では、プラスチックレンズ102、103の凹部102d、103dの両方に、一つの凸部101aが共通して嵌合している。したがって、このような凸部及び凹部からなる保持構造の設計及び製造がより容易であり、生産性の観点から有利である。
【0036】
また、本実施形態では、レンズユニット100は、プラスチックレンズ102、103に加えてガラスレンズ104をさらに有している。したがって、レンズユニット100の所望の光学特性をより簡素な光学構成で実現するのに有利である。
【0037】
また、本実施形態では、プラスチックレンズ102、103は、ガラスレンズ104とともに、鏡筒101の第二室130において、光軸方向に付勢されて鏡筒101内で支持されている。したがって、鏡筒とレンズとの線膨張係数差により発生する温度変化時の光軸方向レンズガタを抑える観点から好適である。
【0038】
また、本実施形態では、凹部102d、103dはプラスチックレンズ102、103の周方向における3か所に設けられており、鏡筒101の凸部101aは凹部に対応する位置に配置されている。したがって、プラスチックレンズ102、103を光軸方向に向けて安定して支持し、かつ熱膨脹及び熱収縮で変形する方向を径方向に限定するのに好適である。
【0039】
また、本実施形態では、鏡筒101の凸部101aを、鏡筒101の内周壁面から突出し、かつプラスチックレンズ102、103の光軸方向に沿って延在するリブで構成している。したがって、凹部102d、103dに嵌合する凸部101aの先端部101a1が基端部101a2によって鏡筒101の内周壁面上に径方向に沿って支持される。よって、凸部101aの径方向における安定性を高める観点から有効である。
【0040】
また、本実施形態では、当該リブは、基端部101a2とそれよりも幅広の先端部101a1とを有し、先端部101a1で凹部102d、103dに嵌合している。したがって、プラスチックレンズ102、103の熱膨脹又は熱収縮によって凹部102d、103dと凸部101aとが相対的に移動する際の抵抗をより小さくすることができる。よって、プラスチックレンズ102、103を熱膨脹又は熱収縮によって円滑に径方向に変形させる観点から好適である。
〔実施形態2〕
【0041】
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、レンズユニットにおける鏡筒の凸部がボスで構成されている以外は、前述した実施形態1と実質的に同じである。
【0042】
図7は、本発明の実施形態2に係るレンズユニットの一部分の構成を模式的に示す斜視図である。図7に示されるように、レンズユニット300は、鏡筒301を有し、鏡筒301は凸部301aを有する。凸部301aは、凸条部111の側面から第二室内に、鏡筒301の軸方向に沿って延在するボスである。凸部301aの断面形状は、前述した凸部101aの先端部101a1と同じ略円形であり、凸部301aのサイズも先端部101a1のそれと同じである。また、鏡筒301の内周壁面からの径方向における凸部301aの位置も、先端部101a1のそれと同じである。このように、鏡筒301は、その内周壁面からの特定位置に、プラスチックレンズ102、103の光軸方向に沿って延在し、凹部102d、103dに嵌合するボスを有している。
【0043】
凸部301aは、実施形態1の先端部101a1と同様に凹部102d、103dに嵌合する。したがって、プラスチックレンズ102、103の熱膨脹時又は熱収縮時において、先端部101a1と同様に、凹部102d、103dの底に接触しない範囲において、凹部102d、103dにおける凸部301aの嵌合位置が相対的に移動する。よって、実施形態1と同様に、鏡筒101内におけるプラスチックレンズ102、103の位置は、熱膨脹及び熱収縮によっても、予め調整されている光軸合わせの位置に保たれる。
【0044】
加えて、本実施形態では、凸部301aがボスで構成されている。したがって、径方向に沿って鏡筒101の内周壁面とつながる構成を有さない。よって熱膨脹時及び熱収縮時における凸部301aの径方向における変位が実質的に生じない。よって、保持構造における凸部301aの径方向における寸法安定性を高める観点から好適である。また、ボスで構成することによって加工と測定がやや容易になるという観点からも好適である。
〔実施形態3〕
【0045】
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図8は、本発明の実施形態3に係るレンズユニットの一部分の構成を模式的に示す断面図である。図8に示されるように、レンズユニット350は、鏡筒351が支持する第1のガラスレンズ352、第2のガラスレンズ353及びプラスチックレンズ354を有している。
【0046】
第1のガラスレンズ352及び第2のガラスレンズ353は、鏡筒351の内周壁面351aによって支持されている。鏡筒351は、その端面からプラスチックレンズ354の光軸方向に沿って延在するボス351cを有している。プラスチックレンズ354は、その外枠部に設けられた凹部354dにボス351cが嵌合して支持されている。プラスチックレンズ354は、不図示の押さえ環によって、光軸方向に沿って像面側から物体側に向けて付勢される。
【0047】
本実施形態では、鏡筒351と同等の外径を有するレンズユニット350が、前述の凸部と凹部とによって鏡筒351に保持される。したがって、レンズ350のレンズ有効面の径を鏡筒351の内径と略同じとすることが可能である。このように、本実施形態は、レンズ有効径のより大きなプラスチックレンズを保持するのに好適である。
〔実施形態4〕
【0048】
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、プラスチックレンズに加えて他の光学素子をプラスチックレンズと同様に保持構造によって鏡筒に保持する以外は、前述した実施形態1と同じである。図9は、本発明の実施形態3に係るレンズユニットの一部分解斜視図である。図8に示されるように、レンズユニット400は、プラスチックレンズ102とプラスチックレンズ103との間に遮光部材404を有している。
【0049】
遮光部材404は、平面視したときに円環状の板状の部材であり、中央にはレンズ有効面よりも小さな円形の開口を有している。また、遮光部材404の外径は、プラスチックレンズの外枠部のそれと略同じである。さらに、遮光部材404の外縁部には、外縁から径方向に沿って延在する三つの凹部404dが形成されている。凹部404dは、プラスチックレンズ102、103の凹部102d、103dと同じ大きさ及び形状を有している。遮光部材404も、プラスチックレンズ102、103と同様に、鏡筒101の凸部101aに嵌合し、径方向において鏡筒101及び凸部101aとの間に隙間を有し、かつ中央開口の中心が光軸と重なる位置で、鏡筒101に保持されている。
【0050】
上記のように、本実施形態では、レンズユニット100は遮光部材404をさらに有し、遮光部材404は、凹部404dを有し、鏡筒101の凸部101aが凹部404dに嵌合して鏡筒101内に保持されている。したがって、プラスチックレンズ102、103と同様に、遮光部材404は、熱膨脹又は熱収縮しても、その面方向における中心の位置が光軸と重なる位置を維持したまま、鏡筒101に保持される。このよに、本発明の実施形態に係る保持構造は、プラスチックレンズ以外の他の光学素子も同様に保持し、当該他の光学素子の保持においてもプラスチックレンズの保持と同様の効果を奏する。
〔変形例〕
【0051】
図10は本発明おけるプラスチックレンズの凹部の配置を説明するための図である。符号1002はプラスチックレンズ1005の中心(光軸)である。プラスチックレンズ1005に凹部1003を形成する場合、プラスチックレンズ1005の熱膨脹又は熱収縮によっても、プラスチックレンズ1005に対する凹部1003の相対的な位置及び大きさは保たれる。よって、本発明においてプラスチックレンズ1005に形成する凹部1003は、径方向に沿って延在していれば、周方向における位置及び数は限定されない。
【0052】
前述の実施形態において、本体201は、カバーガラス204に代えて、赤外線カットフィルターなどの実質的な屈折力を有さない光学素子を有していてもよい。
【0053】
また、前述の実施形態において、撮像装置200は、撮像素子により取得した撮像画像データを電気的に加工して、撮像画像の形状を変化させる画像処理部を有してもよい。また、本実施形態に係る撮像装置200は、当該画像処理部において撮像画像データを、例えば画像の要部を拡大する(ズーム)加工をするために用いる画像補正データ及び画像補正プログラムなどを保持する画像補正データ保持部、などを有することがより好ましい。
【0054】
また、前述の実施形態において、プラスチックレンズが凸部を、鏡筒が凹部を有していてもよい。また、凸部がリブである場合、凸部の幅は、全体にわたって前述した先端部の幅と同じであってもよい。プラスチックレンズが凸部を有する場合では、プラスチックレンズは、外枠部を有していなくてもよい。
【0055】
また、前述の実施形態において、凸部は複数のプラスチックレンズの凹部に共通して嵌合しているが、鏡筒に保持すべき光学素子ごとに独立して鏡筒又は当該光学素子の一方に形成されてもよい。
【0056】
また、前述の実施形態において、プラスチックレンズのみでレンズユニットの所望の光学性能を実現可能である場合には、レンズユニットはガラスレンズを有していなくてもよい。
【0057】
また、前述の実施形態において、撮像装置200に求められる光学特性を満たす範囲において、凹部又は凸部の配置数は、3よりも小さく(例えば2)てもよいし、3よりも大きく(例えば4以上)てもよい。
【0058】
また、本発明の実施形態において、凸部は、実施形態1のリブと実施形態2のボスとの両方を含んでいてもよい。
【0059】
また、前述の実施形態3では、他の光学素子として遮光部材が鏡筒にさらに保持される形態を説明したが、他の光学素子は、遮光部材以外の部材であってよく、あるいは、レンズの間隔を調整するためのスペーサであってもよい。スペーサのような構造上の部材であっても、レンズに当接する部材であれば、プラスチックレンズと同様に鏡筒に保持することによって、プラスチックレンズの位置を光軸に対応した位置に維持するのにより好適である。
〔まとめ〕
【0060】
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様のレンズユニット(100)は、鏡筒(101)と、保持構造を介して鏡筒に保持されるプラスチックレンズ(102、103)と、を有するレンズユニットであって、保持構造は、プラスチックレンズ及び鏡筒の一方に形成される凹部(102d、103d)と、プラスチックレンズ及び鏡筒の他方に形成される、凹部に嵌合する凸部(101a)と、を含み、凸部は、その先端が凹部の底に接触しないように凹部と嵌合する。第一の態様によれば、レンズユニットにおいて、レンズの熱による膨脹又は収縮に関わらず、光軸に対するレンズの位置の変化を防止することができる。
【0061】
本発明の第二の態様に係るレンズユニットは、第一の態様において、プラスチックレンズが、レンズ有効面(102b、103b)と、その外側を囲む外枠部(102c、103c)と、外枠部に形成される凹部を有し、鏡筒は、内周壁面から内側の特定位置に位置する凸部を有する。第二の態様は、レンズユニットの組み立てにおけるプラスチックレンズの装着及び位置調整を容易にする観点からより一層効果的である。
【0062】
本発明の第三の態様に係るレンズユニットは、第一の態様又は第二の態様において、プラスチックレンズを複数有し、鏡筒は、複数のプラスチックレンズの凹部に共通して嵌合する凸部を有する。第三の態様は、保持構造としての凸部を有する鏡筒を簡易に作製可能な観点からより一層効果的である。
【0063】
本発明の第四の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、レンズユニットは、ガラスレンズ(104)をさらに有する。第四の態様は、所望の光学特性を有するレンズユニットを簡素な光学構成で実現する観点からより一層効果的である。
【0064】
本発明の第五の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、プラスチックレンズは、光軸方向に付勢されて鏡筒内で支持される。第五の態様は、鏡筒内におけるプラスチックレンズを位置のずれを抑制する観点からより一層効果的である。
【0065】
本発明の第六の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第五の態様のいずれかにおいて、凹部又は凸部は、プラスチックレンズの周方向における3か所に設けられている。第六の態様は、鏡筒内におけるプラスチックレンズの径方向の位置ずれを抑制する観点からより一層効果的である。
【0066】
本発明の第七の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第六の態様のいずれかにおいて、鏡筒がその内周壁面から突出してプラスチックレンズの光軸方向に沿って延在するリブを有し、当該リブが基端部(101a2)とそれよりも幅広の先端部(101a1)とを有して先端部で凹部に嵌合し、プラスチックレンズは、前記鏡筒の内径よりも小さな外径を有する。第七の態様は、凸部の強度を高める観点からより一層効果的である。
【0067】
本発明の第八の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第七の態様のいずれかにおいて、鏡筒がその内周壁面からの特定位置に、プラスチックレンズの光軸方向に沿って延在して凹部に嵌合するボスを有し、プラスチックレンズは、前記鏡筒の内径よりも小さな外径を有する。第八の態様は、凸部の径方向における寸法安定性を高める観点からより一層効果的である。
【0068】
本発明の第九の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第八の態様のいずれかにおいて、鏡筒は、その端面からプラスチックレンズの光軸方向に沿って延在し、凹部に嵌合するボスを有する。第九の態様は、プラスチックレンズのレンズ有効径を大きくする観点からより一層効果的である。
【0069】
本発明の第十の態様に係るレンズユニットは、第一の態様から第九の態様のいずれかにおいて、遮光部材(404)又はスペーサをさらに有し、遮光部材又はスペーサが凹部(404d)を有し、鏡筒の凸部が当該凹部に嵌合して鏡筒に保持される。第九の態様は、レンズ間に配置されるレンズ以外の構成要素も光軸を基準とする位置に保持する観点からより一層効果的である。
【0070】
本発明の第十一の態様に係る撮像装置(200)は、第一の態様から第十の態様のいずれかのレンズユニットを有する。第十一の態様によれば、レンズユニットを備える撮像装置において、レンズの熱による膨脹又は収縮に関わらず、光軸に対するレンズの位置の変化を防止することができる。第十一の態様によれば、レンズユニットを備える撮像装置において、レンズの熱による膨脹又は収縮に関わらず、光軸に対するレンズの位置の変化を防止することができる。
【0071】
本発明によれば、鏡筒とレンズに加工を施すだけで部品点数を増やすことなく、広い温度範囲に対応した製品を提供することができ、廃棄物処理の削減に効果がある。したがって、本発明によれば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任つかう責任」の達成への貢献が期待される。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
100、300、350、400 レンズユニット
101、301、351 鏡筒
101a、301b、354d 凸部
101a1 先端部
101a2 基端部
102、103、354、1005 プラスチックレンズ
102b、103b レンズ有効面
102c、103c 外枠部
102d、103d、354d、404d、1003 凹部
104、352,353 ガラスレンズ
105 リテーナ
107 スペーサ
111 凸条部
120 第一室
121 対物側リテーナ
130 第二室
200 撮像装置
201 本体
204 カバーガラス
205 CCDセンサ
301a、351c ボス
404 遮光部材
1002 中心
OA 光軸
図1
図2
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図10