IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095364
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/81
A61K8/06
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212601
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】松崎 祐大
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB282
4C083AB372
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC472
4C083AC582
4C083AD022
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD632
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC19
4C083CC23
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC37
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD27
4C083DD33
4C083DD38
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】塗布中の肌なじみの早さが向上された新規な化粧料組成物を提供する。
【解決手段】化粧料組成物であって、アクリル酸系水溶性高分子、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、及び水を含む化粧料組成物であり、
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料組成物であって、
アクリル酸系水溶性高分子、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、及び水を含む化粧料組成物であり、
【化1】
前記式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、mが2以上であり、かつRの少なくとも一部が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、メチル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記アクリル酸系水溶性高分子が、アクリル酸メタクリル酸共重合体及び/又はカルボキシビニルポリマーを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
水系化粧料組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
可溶化系化粧料組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
水中油型乳化化粧料組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料組成物に増粘剤等を配合することが多い一方で、増粘剤を含むと、化粧料組成物の使用感(例えば、塗布中の肌なじみの早さ等)に悪影響を及ぼす場合がある。
【0003】
特許文献1では、べたつきを軽減し、使用感に極めて優れた皮膚外用剤として、特定のアクリル酸系増粘剤(アクリル酸系水溶性高分子)とエリスリトールアルキルエーテルとを組み合わせて皮膚外用剤が開示されている。より具体的には、特許文献1の皮膚剤用剤は、(A)ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上のアクリル酸系増粘剤と、(B)エリスリトールアルキルエーテルとを含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-234960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクリル酸系水溶性高分子を含む場合の化粧料組成物の使用感の問題は、依然として改善する余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、塗布中の肌なじみの早さが向上された新規な化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0008】
〈態様1〉
化粧料組成物であって、
アクリル酸系水溶性高分子、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、及び水を含む化粧料組成物であり、
【化1】
前記式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
前記ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
前記ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物。
〈態様2〉
前記式(1)において、Aが、下記式(2)で表され:
【化2】
前記式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である、
態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記ポリマーが、ランダム共重合体である、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記式(1)において、mが2以上であり、かつRの少なくとも一部が、メチル基である、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様5〉
前記式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、メチル基である、請求項態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様6〉
前記アクリル酸系水溶性高分子が、アクリル酸メタクリル酸共重合体及び/又はカルボキシビニルポリマーを含む、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
水系化粧料組成物である、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
可溶化系化粧料組成物である、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様9〉
水中油型乳化化粧料組成物である、態様1~6のいずれか一項2に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布中の肌なじみの早さが向上された新規な化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
《化粧料組成物》
本発明の化粧料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、
アクリル酸系水溶性高分子、下記式(1)で表される構造を有するポリマー、及び水を含む化粧料組成物であり、
【化3】
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、かつm及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、
ポリマーの数平均分子量が、10,000以下であり、かつ
ポリマーのIOB値が、0.4~1.8である、
組成物
である。
【0012】
本発明の組成物は、増粘剤としてのアクリル酸系水溶性高分子を含んでいるにもかかわらず、塗布中の肌なじみの早さが向上されている。
【0013】
理論に限定されるものではないが、これは、主に、本発明のポリマーの特性、すなわち式(1)で示す特有の構造、特定の範囲の数平均分子量(10,000以下)、及び特定の範囲のIOB(Inorganic Organic Balance)値(0.4~1.8)に由来するものと推測する。
【0014】
また、特定の構造をもつ本発明ポリマーは、両親媒性であり、水相に溶解する傾向があるものの、疎水的な性質も有するため、アクリル酸系水溶性高分子と油性である肌とのなじみを改善し、それによって本発明の組成物の塗布中における肌なじみの早さを向上できると考えられる。
【0015】
〈アクリル酸系水溶性高分子〉
本発明の組成物は、アクリル酸系水溶性高分子を含む。アクリル酸系水溶性高分子は、本発明の組成物において、増粘剤として機能することもできて、また、場合によって、乳化剤として機能することもできる。
【0016】
アクリル酸系水溶性高分子は、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を構成単位として含む水溶性高分子であり、構成単位が1種のホモポリマーであってもよいし、構成単位が2種以上のコポリマーであってもよい。
【0017】
本発明において、アクリル酸系水溶性高分子は、より具体的には、例えばアクリル酸メタクリル酸共重合体及び/又はカルボキシビニルポリマーを含んでよい。
【0018】
これらのアクリル酸メタクリル酸共重合体として、例えば、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーについては「Pemulen(登録商標)TR-2」等が挙げられるが、これらに限定されない。また、アクリル酸メタクリル酸共重合体として、市販のものを用いることができる。市販されているアクリル酸メタクリル酸共重合体としては、例えば、「Pemulen(登録商標)TR-1」(Lubrizol Advanced Materials,Inc.社製)、住友精化株式会社製の、AQUPEC(登録商標)HV-501ER、AQUPEC(登録商標)HV-701EDR、AQUPEC(登録商標)HV-801ERK、AQUPEC(登録商標)HV-803ERK、AQUPEC(登録商標)SW-703ER及びAQUPEC(登録商標)SW-705ER、並びにLubrizol Advanced Materials,Inc.社製の、カーボポール(登録商標)1342、カーボポール(登録商標)1382、カーボポール(登録商標)ETD 2020polymer、カーボポール(登録商標) SC-200 polymer、カーボポール(登録商標)SC-800、カーボポール(登録商標)Ultrez 20 polymer、及びカーボポール(登録商標) Ultrez 21 Polymer等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、増粘剤としての機能と乳化剤としての機能とを兼備している観点から、アクリル酸系水溶性高分子は、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含むことが好ましい。
【0019】
カルボキシビニルポリマー(「カルボマー」とも称する)は、構造上にアルキル酸を主鎖としており、カルボキシル基をもつ水溶性高分子である。また、カルボキシビニルポリマーは市販のものを用いることができる。市販されているカルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Lubrizol Advanced Materials,Inc.社製のカーボポール(登録商標)981、カーボポール(登録商標)940、及びカーボポール(登録商標)980、並びに住友精化株式会社製の、AQUPEC(登録商標)MGN40R、AQUPEC(登録商標)HV-505E、及びAQUPEC(登録商標)HV-505E等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の組成物において、アクリル酸系水溶性高分子の含有量は、特に限定されず、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、又は0.7質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0021】
また、アクリル酸系水溶性高分子として、アクリル酸メタクリル酸共重合体とカルボキシビニルポリマーとの両方を含む場合には、それらの含有量比(アクリル酸メタクリル酸共重合体:カルボキシビニルポリマー)は、特に限定されず、例えば、10:1~1:10、5:1~1:5、1:1~1:5、又は1:1.1~1:5であってよい。
【0022】
〈本発明のポリマー〉
本発明の組成物は、以下に説明する本発明のポリマーを含む。本発明のポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する:
【化4】
【0023】
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。なお、本発明において、炭素数1~4のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、これらのアルキル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲノ基等が挙げられる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また、mが2以上である場合、すなわち、複数のRが存在する場合、各々のRは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、特に、Rの少なくとも一部は、メチル基であることが好ましい。Rの少なくとも一部がメチル基である場合には、例えば、本発明の組成物の使用感を向上させる観点から好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子と炭素数1~4のアルキル基とが混在していている状態であってよい。すなわち、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部は炭素数1~4のアルキル基であってよい。好ましくは、Rの一部は水素原子であり、かつ他の一部はメチル基である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、特に、メチル基であることがより好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、R及びRの少なくとも一方は、メチル基であることが好ましい。
【0031】
式(1)において、Aは、炭素数2~4のアルキレン基である。より具体的には、Aは例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等であってよいが、これらに限定されない。特に、Aは、下記式(2)で表されることが好ましい:
【化5】
【0032】
式(2)において、Rは、炭素数1又は2のアルキル基である。より具体的には、Rは、メチル基又はエチル基であってよい。
【0033】
式(1)において、m及びnは、それぞれの構成単位の平均付加モル数を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1.0~50であり、より具体的には、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、又は10以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、12以下、10以下、又は5.0以下であってよい。
【0034】
また、式(1)において、mは、1.0以上14以下であることが好ましく、2.0以上5.0以下であることがより好ましい。また、式(1)において、nは、2.0以上34以下であることが好ましく、6.0以上12以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m+nは、4.0以上、4.5以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上であってよく、また50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は12以下であってよい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、式(1)において、m:nは、1:10~10:1であってよい。
【0037】
本発明のポリマーは、数平均分子量は、10,000以下である。より具体的には、本発明のポリマーの数平均分子量は、例えば、10,000以下、5,000以下、3,500以下、3,000以下、2,500以下、2,000以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下、1,100以下、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下であってよく、また130以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は500以上であってよい。また、本発明のポリマーの数平均分子量は、300以上3,500以下であることが好ましく、500以上1,200以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明のポリマーのIOB値は、0.4~1.8である。より具体的には、本発明のポリマーのIOB値は、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、又は0.7以上であってよく、また1.8以下、1.6以下、1.4以下、又は1.2以下であってよい。また、本発明のポリマーのIOB値は、0.7以上1.2以下であることが好ましい。
【0039】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。なお、IOB値の決定方法については、実施例に記載の方法を参照できる。
【0040】
本発明のポリマーは、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0041】
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、各構成単位に対応するエポキシドを付加重合することによって行ったよい。また、付加重合は、ブロック重合であってもよく、ランダム重合であってもよいが、ランダム重合であることが好ましい。
【0042】
また、本発明のポリマーの製造方法は、上記の付加重合によって得られたポリマーに対して、更にハロゲン化アルキルと反応させることを更に含んでよい。ハロゲン化アルキルとの反応を介して、得られたポリマーの分子内の水酸基は、アルキル基によって封鎖されて、その結果ポリマー全体の疎水性を所望のとおりに調整することができる。本発明において、ポリマーの分子内において、アルキル基による水酸基の封鎖率は、例えば30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、又は55%以上であってよく、また60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、又は55%以下であってよい。なお、アルキル基による水酸基の封鎖率は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0043】
本発明のポリマーの特徴の一つとして、高い水溶性及び高い脂溶性を兼備することである。
【0044】
本発明のポリマーの水への溶解度は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であり得る。
【0045】
また、本発明のポリマーの脂溶性の指標として、例えばオリーブ油への溶解度を用いることができる。本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度は、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.50質量%以上、又は1.00質量%以上であり得る。なお、本発明のポリマーのオリーブ油への溶解度の上限値は特に限定されず、例えば10質量%以下であってよい。
【0046】
本発明の組成物において、本発明のポリマーの含有量は、特に限定されず、例えば、組成物全体に対して、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってよく、また、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0047】
〈水〉
本発明の組成物は、水を含む。本発明の組成物に用いられる水として、特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水であってよい。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0048】
本発明の組成物において、水の含有量は特に限定されず、組成物全体に対して、例えば30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、また95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。なお、水の含有量は、目的とする化粧料組成物の用途に合わせて、適宜調整してよい。
【0049】
以下では、本発明の組成物に含み得るその他の成分について説明する。なお、これらのその他の成分は、目的の剤型や化粧料の用途等に基づき、適宜選択することができ、本発明は、これらの成分に限定されることはない。
【0050】
〈その他の成分〉
その他の成分として、例えば、炭化水素油、シリコーン油、ロウ類、脂肪酸エステル類、高級アルコール類、紫外線吸収剤、界面活性剤、保湿剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
炭化水素油としては、例えば、水添ポリデセン、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス等が挙げられる。
【0052】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、平均分子量20万以上のシリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0053】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、液状ラノリン、ジョジョバロウ等が挙げられる。
【0054】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、ミツロウ脂肪酸2-オクチルドデシル等が挙げられる。
【0055】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、ミツロウ脂肪酸2-オクチルドデシル等が挙げられる。
【0056】
紫外線吸収剤としては下記化合物が挙げられる。
(1)安息香酸系紫外線吸収剤:例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等。
【0057】
(2)アントラニル酸系紫外線吸収剤:例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等。
【0058】
(3)サリチル酸系紫外線吸収剤:例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等。
【0059】
(4)ケイ皮酸系紫外線吸収剤:例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等。
【0060】
(5)トリアジン系紫外線吸収剤:例えば、ビスレゾルシニルトリアジン等。更に具体的には、ビス{〔4-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ〕フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス{4-(2-エチルヘキシロキシカルボニル)アニリノ}1,3,5-トリアジン等。
【0061】
(6)その他の紫外線吸収剤:例えば、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン。ジモルホリノピリダジノン等のピリダジン誘導体。
【0062】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等挙げられる。これらの界面活性剤は、1種類単独で使用されてもよく、2種類以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0063】
ノニオン界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、PPG-13デシルテトラデセス-24、モノイソステアリン酸PEG-20グリセリル、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、モノイソステアリン酸PEG-10、イソステアリン酸PEG-60グリセリル、ステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸PEG-12、モノオレイン酸ポリエチレングリコール400、モノステアリン酸ポリエチレングリコール400、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、本明細書において、「POE」は、ポリオキシエチレン基を意味する。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、セッケン用素地、ラウリン酸塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各塩。以下においても同じ)、パルミチン酸塩等の脂肪酸セッケン;ラウリル硫酸塩等の高級アルキル硫酸エステル塩;POEラウリル硫酸塩等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン酸塩;POEオレイルエーテルリン酸塩、POEステアリルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸塩、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸塩等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N-ラウロイルグルタミン酸塩、N-ミリストイル-L-グルタミン酸塩等のN-アシルグルタミン酸塩;N-ラウロイルグルタミン酸塩、N-ミリストイルグルタミン酸塩、N-ステアロイルグルタミン酸塩等のN-アシルグルタミン酸塩;N-ラウロイルグリシン塩、N-ミリストイルグリシン塩、N-ステアロイルグリシン塩等のN-アシルグリシン塩;N-ラウロイルアラニン塩、N-ミリストイルアラニン塩、N-ステアロイルアラニン塩等のN-アシルアラニン塩;N-ラウロイルアスパラギン酸塩、N-ミリストイルアスパラギン酸塩、N-ステアロイルアスパラギン酸塩等のN-アシルアスパラギン酸塩;N-ココイル-N-メチルタウリン塩、N-ラウロイル-N-メチルタウリン塩、N-ミリストイル-N-メチルタウリン塩、N-ステアロイル-N-メチルタウリン塩、N-ココイルタウリン塩等の長鎖アシル低級アルキル型タウリン塩;ドデカン-1,2-ジオール酢酸エーテル塩等のヒドロキシエーテルカルボン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸塩等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;ロート油等の硫酸化油;POEアルキルエーテルカルボン酸、POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸塩、N-パルミトイルアスパラギン酸ジ塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキシド-1-カルボキシエチルオキシ-2ナトリム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
保湿剤として、例えば、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、PEG-8(ポリエチレングリコール)、トリメチルグリシン、グルコース、ソルビトール、及びマルチトール等が挙げられる。
【0068】
本発明の組成物には、上記成分の他に、通常皮膚外用剤に配合され得る成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。配合可能成分を具体例に例示する。
【0069】
多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、1,2-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0070】
その他の水溶性高分子としては、例えば、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等が挙げられる。
【0071】
その他、エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、δ-トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、ε-ポリリジン等の防腐剤;クエン酸、乳酸、ヘキサメタリン酸等の有機又は無機酸よびその塩;ビタミンA、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート等のビタミンA誘導体、ビタミンB3及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、アルブチン、セファランチン等の各種薬剤、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、オウゴン、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サクラリーフ等の植物の抽出物、β-カロチン等の色素等も配合することができる。
【0072】
〈本発明の組成物の剤型及び用途〉
本発明の組成物の剤型は、目的に合わせて任意に調整することができる。例えば、本発明の組成物は、水系(水分散系を含む)、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン、若しくはスティック等であってもよく、又は不織布等のシートに含浸あるいは塗布した製剤等であってもよい。また、乳化系として、例えば水中油型乳化組成物であってもよく、油中水型乳化組成物であってもよいが、水中油型乳化組成物であることが好ましい。
【0073】
また、本発明の化粧料の製品形態は、特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料;日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤);ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、ボディーシャンプー等の皮膚洗浄料;ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、シャンプー、リンス、育毛料等の毛髪化粧料;又は軟膏等であってよい。
【0074】
〈本発明の組成物の製造方法〉
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、常法により製造することができる。例えば、本発明の組成物が水中油型乳化化粧料組成物である場合、上述した必須成分及び化粧料に通常配合される成分を混合して常法により製造することができる。
【実施例0075】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
《合成例1及び2》
以下の合成例1及び2は、それぞれ下記式(3)で表される構造を有するポリマーを合成した:
【化6】
なお、式(3)において、[]内は、ランダム共重合体である。
【0077】
〈合成例1〉
合成例1:R=H、R=H、R=CH、R=CH、m=2.0、及びn=6.0のポリマー1
下記方法で合成を行い、ポリマー1を得た。
【0078】
メタノール128g及び触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後5時間攪拌した。オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、合成例1のポリマー1、2000gを得た。
【0079】
以下では、得られたポリマー1に対して、各種の物性値を求めた。
【0080】
(数平均分子量)
得られたポリマー1の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により算出した。システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。このクロマトグラムからポリエチレングリコールを標準とし、数平均分子量を求めたところ、約530であった。
【0081】
(重量平均分子量)
得られたポリマー1の重量平均分子量は、上記と同様にGPC計算によって求めて、約859であった。
【0082】
(多分散度)
上記で求めた数平均分子量及び重量平均分子量の結果から、ポリマー1の多分散度Mw/Mnは、1.62であった。
【0083】
(IOB値)
得られたポリマー1のIOB値は、以下のように求めたところ、1.1であった。
【0084】
より具体的には、ポリマー1において、有機性値として、炭素を20、iso分岐を-10にて計算した。また、無機性値は、水酸基を100、エーテル結合を20にて計算した。
・メタノール部位:(炭素数1、水酸基1)×1
有機性値:20
無機性値:100
・グリシドール部位:(炭素数3、iso分岐1、水酸基1、エーテル結合1)×2
有機性値:(60-10)×2=100
無機性値:(100+20)×2=240
・プロピレンオキシド部位:(炭素数3、iso分岐1、エーテル結合1)×6
有機性値:(60-10)×6=300
無機性値:20×6=120
以上、合計有機性値が420となる、合計無機性値が460となるため、IOB値が1.09となる。
【0085】
(曇点)
得られたポリマー1に対して、5wt%水溶液を調製し、85℃に加温後、冷却し、透明溶液となる温度は74℃であった。よって、ポリマー1の曇点は、74℃であることが分かった。
【0086】
(水酸基価)
得られたポリマー1の水酸基価は、JIS K-1557-1の測定方法に従い測定したところ、294であった。
【0087】
(水への溶解性)
得られたポリマー1の水への溶解性は、後述する「相溶性評価」の方法と同じように求めたところ、50質量%以上であった。
【0088】
(オリーブ油への溶解性)
得られたポリマー1のオリーブ油への溶解性は、以下のように求めた。すなわち、ポリマー1を、濃度が1.0wt%となるようオリーブ油と混合し、外観を確認した。均一であれば「〇」とした。この場合、ポリマー1のオリーブ油への溶解性は、1.0質量%であった。
【0089】
以上で測定したポリマー1の各種物性値は、下記の表1に示す。
【0090】
〈合成例2〉
合成例2:R=H及びCH、R=H及びCH、R=CH、R=CH、m=2.0、及びn=6.0のポリマー2
下記方法で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0091】
メタノール128gと触媒として水酸化カリウム6.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら80℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりグリシドール592gとプロピレンオキシド1392gの混合物を95℃にて20時間かけて滴下させ、その後2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム244gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル200gを温度80~130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するため減圧-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ポリマー2、1820gを得た。塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が125であったことから、RとRにおけるメチル基と水素原子の割合(CH/H)は0.57であることが分かった。すなわち、ポリマー2の水酸基封鎖率が57%であった。
【0092】
上述したポリマー1の場合と同様に、得られたポリマー2に対して、各種の物性値を求めて、それぞれの結果は下記の表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
《実施例1~12及び比較例1》
以下の表2に示す処方に基づき、実施例1~12及び比較例1の組成物(水中油型乳化組成物)を、それぞれ調製し、下記の評価方法に基づき、使用性を評価し、結果は表2に示す。なお、特に断りのない限り、表2の数値は、配合量を表し、単位は質量%である。
【0095】
(塗布中の肌なじみの早さの評価)
各組成物を、専門パネル10人が肌に塗布した効果を下記のように評価し、「肌へのなじみが早い」と回答したパネルの数によって下記のように分類する:
「A」:10人中8人以上が感じる;
「B」:10人中5~7人が感じる;
「C」:10人中3~4人以上が感じる;
「D」:10人中2人以下が感じる。
【0096】
また、調製後の各組成物に対して、調製当日のうちに、B型粘度計 ローターNo.3 12rpmで、30℃にて、それぞれの粘度を測定した。結果は、表2に示す。
【0097】
更に、調製後の各組成物に対して、調製当日のうちに、顕微鏡を用いて、乳化粒子の大きさ(マイクロメーターによる測定)及びその分布状況(検鏡視野の粒子の均一度)を肉眼で総合的に判定することによって、実施例及び比較例で得られた各化粧料のそれぞれの乳化粒子径を求めた。なお、表2において、「1~15(20)」という表現は、大部分の乳化粒子の径が約1~15μmの範囲であり、約20μmまでの少数の乳化粒子も存在したことを意味している。
【0098】
【表2】
【0099】
表2から明らかなように、実施例1~12の組成物は、いずれも、比較例1の組成物に比べて、「塗布中のなじみの早さの評価」において、より優れた結果が得られていることが分かった。
【0100】
《処方例》
以下では、本発明の組成物の処方例を例示的に挙げる。なお、本発明は、以下の処方例によって何ら限定されるものではない。また、処方例中の「ポリマー1」及び「ポリマー2」は、それぞれ上述した「合成例1」及び「合成例2」で合成された「ポリマー1」及び「ポリマー2」である。
【0101】
〈処方例1〉
【表3】
【0102】
〈処方例2〉
【表4】
【0103】
〈処方例3〉
【表5】