(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095368
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】炭素化処理装置及び炭素化処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20240703BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20240703BHJP
B09B 101/25 20220101ALN20240703BHJP
B09B 101/80 20220101ALN20240703BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20240703BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
C10B53/00 A
B09B101:25
B09B101:80
B09B101:85
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212619
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】523000248
【氏名又は名称】鈴木 利昭
(71)【出願人】
【識別番号】523002622
【氏名又は名称】石井 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昭
【テーマコード(参考)】
4D004
4H012
【Fターム(参考)】
4D004AA11
4D004AA12
4D004CA24
4D004CA26
4D004CA32
4D004CA42
4D004CC01
4D004DA01
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA10
4H012HB04
4H012JA03
(57)【要約】
【課題】処理対象物を、前処理なしで一括投入のうえ、ワンシステム内で組成、素材ごとに分離回収すると同時に工業用炭素原料を製造することが可能な炭素化処理装置及び炭素化処理方法を提供する。
【解決手段】処理対象物(M)から工業用炭素素材を製造し、同時に、再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な炭素化処理装置(100)であって、導入された処理対象物(M)に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うことで当該有機化合物を分離して除去するための炭素化室(5)を少なくとも備え、炭素化室(5)は、室内の温度を約450℃に上昇させることで、処理対象物(M)からC(炭素)ガス及びH(水素)ガスを除去して炭素化(炭素化分解)させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物から工業用炭素素材を製造し、同時に、再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な炭素化処理装置であって、
導入された処理対象物に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うことで当該有機化合物を分離して除去するための炭素化室を少なくとも備え、
前記炭素化室は、室内の温度を約450℃に上昇させることで、前記処理対象物からC(炭素)ガス及びH(水素)ガスを除去して炭素化させる
ことを特徴とする炭素化処理装置。
【請求項2】
前記炭素化室に投入される前の処理対象物が導入される窒素置換室をさらに備え、
前記窒素置換室は、室内の空気を窒素で置換することで、室内に窒素を導入する
ことを特徴とする請求項1に記載の炭素化処理装置。
【請求項3】
処理対象物(処理対象の廃棄物)の導入側から排出側へ処理の流れに沿って、導入待機室、窒素置換室、予熱蒸発室、加熱分解室、炭素化室、冷却待機室、冷却室、排出待機室の各室が設けられており、
前記処理対象物は、前記炭素化処理装置の入口側に設けられた搬入コンベアによって前記炭素化処理装置内に投入され、前記各室をこの順番に導かれて処理され、最終的に出口側に設けられた搬出コンベアによって前記炭素化処理装置の外部へ排出される
ことを特徴とする請求項1に記載の炭素化処理装置。
【請求項4】
前記予熱蒸発室は、前記処理対象物に水分が付着あるいは存在している場合に除去するための室であり、
前記加熱分解室は、前記処理対象物に高分子化合物が付着あるいは含有している場合にそれを除去するための室であり、
前記炭素化室は、前記処理対象物に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うための室であり、
前記冷却待機室及び前記冷却室は、前記炭素化室を出た前記処理対象物の温度を低下させ発火を防ぐための室である。
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項5】
前記導入待機室と前記排出待機室は、総個室数が2個であり、前記予熱蒸発室は、総個室数が2個であり、前記加熱分解室は、総個室数が3個であり、前記炭素化室は、総個室数が5個であり、前記冷却待機室は、は総個室数が2個であり、前記冷却室は、総個室数が3個であり、
前記炭素化処理装置は、合計17室の個室を備えた構造である
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項6】
前記導入待機室、前記窒素置換室、前記予熱蒸発室、前記加熱分解室、前記炭素化室、前記冷却待機室、前記冷却室、前記排出待機室の各室の室内温度を個別に管理可能な温度管理装置を備え、
前記温度管理装置は、少なくとも前記予熱蒸発室、前記加熱分解室、前記炭素化室それぞれの室内温度を10℃単位で制御できる機能を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項7】
前記温度管理装置は、各室の室内温度を前記処理対象物と適合する温度として150℃から450℃の範囲内で設定可能であり、かつ、510℃を危険温度として設定し、いずれかの室内の温度が510℃に達した場合には強制的にすべての電熱発生機器の電源をカットする機能を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項8】
前記導入待機室、前記排出待機室、前記予熱蒸発室、前記加熱分解室、前記炭素化室、前記冷却室は互いが隔壁で仕切られて完全に独立した室である
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項9】
前記導入待機室、前記窒素置換室、前記予熱蒸発室、前記加熱分解室、前記炭素化室、前記冷却待機室、前記冷却室、前記排出待機室の各室それぞれから個別に気体を導出することが可能な導出管を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項10】
前記導入待機室、前記窒素置換室、前記予熱蒸発室、前記加熱分解室、前記炭素化室、前記冷却待機室、前記冷却室、前記排出待機室の各室それぞれを個別に冷却する冷却装置を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項11】
前記導入待機室、前記窒素置換室、前記予熱蒸発室、前記加熱分解室、前記炭素化室、前記冷却待機室、前記冷却室、前記排出待機室の各室に酸素濃度計測機器を設置し、前記酸素濃度計測機器で計測される酸素濃度が計量下限以下であることを条件に装置を稼働させるようにした
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素化処理装置。
【請求項12】
処理対象物から工業用炭素素材を製造し、同時に、再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な炭素化処理方法であって、
導入された処理対象物に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うことで当該有機化合物を分離して除去するための炭素処理工程を少なくとも備え、
前記炭素処理工程では、室内の温度を約450℃に上昇させることで、前記処理対象物からCガス及びHガスを除去して炭素化(炭素化分解)させる
ことを特徴とする炭素化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、廃タイヤ、木材、その他廃棄物等の有機物を含む一般廃棄物を炭素化して固形化する炭素化処理装置及び炭素化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の工業用炭素素材を製造する方法は、おもに原油やプラスチック或いは石炭を原料として炭化製造しており、その製造工程では、酸化燃焼の工程が存在するために二酸化炭素をはじめ様々な化学合成反応ガスが発生している。そのため、排出ガス等を処理するために膨大なコストが必要となり、さらに廃プラスチック等を原料とした場合、プラスチックの製造時には様々な素材が使用されており又は添加物の付加されているために細目分別が必要となり、そのために手間やコストがかかるという問題があった。他の再資源化技術では、保冷車のアルミ車体のように金属とウレタンのような高分子化合物が接着されている物はその剥離が難しく、そのために再素材としては利用されておらず、さらに、ペットボトルのように数種類の材質が一体化している物は素材ごとに分離するためにキャップ類を外すなど、時間と人力を必要としている。
【0003】
さらに、廃棄物には空きビン、空き缶のように数種類の素材が混入しており、また、内容物が容器内に残っている物がある。そのため、リサイクルや再資源化をするには多大な手間と費用がかかり、再商品化されたものは通常品より原価が高くなる。さらに、廃棄自動車の解体の際に発生するシュレッターダストなどは、膨大な種類の素材が混合しており、素材毎に分離しての回収は事実上不可能である。そのため、現状では、多くの廃棄物を焼却や埋め立てせざるを得ない。
【0004】
廃棄物を焼却すると、非常に高温となり焼却炉の耐用年数が非常に短くなり、また、大量の二酸化炭素が発生するという問題もある。そのため現在は、廃棄物の埋め立て処理が主流となっている。そして、埋立処分場の残存年数を延ばすために、廃棄物処理の焼却処理の手法として灰溶融方式などが開発されたが、そのための装置やシステム、及びそれらの管理には莫大な費用と手間がかかる。それにもかかわらず、排出される廃棄物の量が増加していくことで、埋め立て可能な最終処分場が減少する傾向が続いている。
【0005】
人類は現在まで、地球上にある各種資源を採掘し製品にすることで大量に消費してきた。その中でも工業用炭素原料を製造する際には、地下資源として存在する原油を利用し、又は、原油から製造したプラスチックなどの合成樹脂材料を原料として製造する方法が主流となっており、そのために、限りある資源が枯渇しようとしている。更に、その製品化の工程で二酸化炭素が発生し、利用できない原料は焼却或いは埋め立てしなければならない。しかしながら、焼却すれば排ガスによる大気汚染が進み、埋め立てすれば土壌汚染や地下水汚染等の問題が発生し、最終処分場の不足にもつながる。
【0006】
上記のような廃棄物処理に関する諸問題を解決するためには、素材原料を回収しようとする廃棄物や不要となった有機物から排ガスや有害物質などを出来るだけ出さずに工業用炭素素材を製造し、同時に、土砂、鉄、非鉄金属、ガラス素材あるいはレアメタルなどの再生資源を組成ごとに別々に回収し、かつ、炭素原料用油の回収を行うことができるようにすることで、回収した各素材を有効利用することが可能な廃棄物処理のための装置及び方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、素材原料を回収しようとする廃棄物や不要となった有機物から炭素化という手段により組成分離を実施して工業用炭素素材を製造し、同時に、土砂、鉄、非鉄金属、ガラス素材あるいはレアメタルなどの再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な炭素化処理装置及び炭素化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、炭素含有物、例えば植物やプラスチック、或いは炭素含有物とその他の無機物が混在した物、例えば産業廃棄物や一般廃棄物、或いは接着材等によって炭素含有物と各種別々の素材が接着されている物、例えば家電品、自動車、園芸用品、農用資材などのような物を、前処理なしで一括投入のうえ、ワンシステム内で組成、素材ごとに分離回収すると同時に工業用炭素原料を製造、抽出する炭素化処理装置及び炭素化処理方法である。
【0010】
具体的に、本発明は、処理対象物(M)から工業用炭素素材を製造し、同時に、再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な炭素化処理装置(100)であって、導入された処理対象物(M)に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うことで当該有機化合物を分離して除去するための炭素化室(5)を少なくとも備え、炭素化室(5)は、室内の温度を約450℃に上昇させることで、処理対象物(M)からC(炭素)ガス及びH(水素)ガスを除去して炭素化(炭素化分解)させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、処理対象物(M)から工業用炭素素材を製造し、同時に、再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な炭素化処理方法であって、導入された処理対象物(M)に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うことで当該有機化合物を分離して除去するための炭素処理工程を少なくとも備え、炭素処理工程では、室内の温度を約450℃に上昇させることで、処理対象物(M)からCガス及びHガスを除去して炭素化(炭素化分解)させることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる炭素化処理装置又は炭素化処理方法によれば、各種素材組成が混濁したものから素材毎、組成毎に各組成素材を回収でき、また同時に、炭素化処理することにより工業用炭素原料を製造することができ、同時に投入原材料に原油由来のもの、例えばプラスチック、合成ゴム等が混入していた場合、炭素製造用油の回収もワンシステムで可能となる。これにより、分別、分離をすることなく全ての素材や原材料が混濁した状態で投入することができ省力化が可能になる。
【0013】
また、この炭素化処理装置(100)では、炭素化室(5)に投入される前の処理対象物(M)が導入される窒素置換室(2)をさらに備え、窒素置換室(2)は、室内の空気を窒素で置換することで、室内に窒素を導入するようにしてもよい。
【0014】
投入した処理対象物を炭素化処理によって組成分離する際にダイオキシン類及び二酸化炭素の発生原因である酸化燃焼(高温酸化による熱分解)が起きないようにするための手段として空気中の窒素を利用することができる。
【0015】
また、この炭素化処理装置(100)では、処理対象物(M)の導入側から排出側へ処理の流れに沿って、導入待機室(1)、窒素置換室(2)、予熱蒸発室(3),加熱分解室(4)、炭素化室(5)、冷却待機室(6)、冷却室(7)、排出待機室(8)の各室が設けられており、処理対象物(M)は、炭素化処理装置(100)の入口(A)側に設けられた搬入コンベア(10)によって炭素化処理装置(100)内に投入され、各室(1~8)をこの順番に導かれて処理され、最終的に出口(B)側に設けられた搬出コンベア(11)によって炭素化処理装置(100)の外部へ排出されるようにしてもよい。
【0016】
また、予熱蒸発室(3)は、処理対象物(M)に水分が付着あるいは存在している場合に除去するための室であり、加熱分解室(4)は、処理対象物(M)に高分子化合物が付着あるいは含有している場合にそれを除去するための室であり、炭素化室(5)は、処理対象物(M)に有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うための室であり、冷却待機室(6)及び冷却室(7)は、炭素化室(5)を出た処理対象物(M)の温度を低下させ発火を防ぐための室であってよい。
【0017】
また、導入待機室(1)と排出待機室(8)は、総個室数が2個であり、予熱蒸発室(3)は、総個室数が2個であり、加熱分解室(4)は、総個室数が3個であり、炭素化室(5)は、総個室数が5個であり、冷却待機室(6)は、は総個室数が2個であり、冷却室(7)は、総個室数が3個であり、炭素化処理装置(100)は、合計17室の個室を備えた構造であることが望ましい。
【0018】
また、導入待機室(1)、窒素置換室(2)、予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)、冷却待機室(6)、冷却室(7)、排出待機室(8)の各室の室内温度を個別に管理可能な温度管理装置を備え、当該温度管理装置は、少なくとも予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)それぞれの室内温度を10℃単位で制御できる機能を有してもよい。
【0019】
炭素化処理装置は、炭素化処理と組成分離を同一施設内で同時に行うため、厳格な温度管理が必要であるところ、上記のような温度管理装置を備えることで、簡単な構成及び制御でありながら、厳格な温度管理が可能となる。また、酸化燃焼を防止することで、熱損失を最小限に抑えることも可能となる。
【0020】
また、温度管理装置は、各室の室内温度を処理対象物(M)と適合する温度として150℃から450℃の範囲内で設定可能であり、かつ、510℃を危険温度として設定し、いずれかの室内の温度が510℃に達した場合には強制的にすべての電熱発生機器の電源をカットする機能を有してもよい。
【0021】
ここでの危険温度は、材料が組成分離により一酸化炭素ガスが発生した場合の発火温度以下としてある。いずれかの室内の温度が危険温度に達した場合には強制的にすべての電熱発生機器の電源をカットする機能を有することで、装置の安全性を効果的に高めることができる。
【0022】
また、導入待機室(1)、排出待機室(8)、予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)、冷却室(7)は互いが隔壁で仕切られて完全に独立した室であってよい。
【0023】
導入待機室(1)、排出待機室(8)、冷却室(7)、予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)は互いが隔壁で仕切られて独立した室であることで、それぞれの室内温度の干渉が最小限となり、分解ガスの干渉もない構造となる。
【0024】
また、導入待機室(1)、窒素置換室(2)、予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)、冷却待機室(6)、冷却室(7)、排出待機室(8)の各室それぞれから個別に気体を導出することが可能な導出管を備えてもよい。
【0025】
各室には各々条件の違うガスが発生するため、各室毎に使用素材の違う分解ガス導管を設置して、互いの室から排出されたガスが混合することを防止することができる。
【0026】
また、導入待機室(1)、窒素置換室(2)、予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)、冷却待機室(6)、冷却室(7)、排出待機室(8)の各室それぞれを個別に冷却する冷却装置を備えてもよい。
【0027】
また、導入待機室(1)、窒素置換室(2)、予熱蒸発室(3)、加熱分解室(4)、炭素化室(5)、冷却待機室(6)、冷却室(7)、排出待機室(8)の各室に酸素濃度計測機器を設置し、酸素濃度計測機器で計測される酸素濃度が計量下限以下であることを条件に装置を稼働させる方式としてもよい。
【0028】
内部酸素濃度が計測機器下限であることを条件に装置を稼働させることで、各室内の残留酸素は計測不可能の数値となるので、装置の高い安全性を確保することができる。
【0029】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる炭素化処理装置及び炭素化処理方法によれば、素材原料を回収しようとする廃棄物や不要となった有機物から炭素化による組成分離を実施して工業用炭素素材を製造し、同時に、土砂、鉄、非鉄金属、ガラス素材あるいはレアメタルなどの再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる炭素化処理装置(廃棄物処理装置)のシステム構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる炭素化処理装置(廃棄物処理装置)の外観構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】炭素化処理装置での各処理工程とその温度変化を示す図である。
【
図4】本発明の炭素化処理装置による処理(炭素化処理)と従来の焼却施設による焼却処理との比較について示す表である。
【
図5】本発明の炭素化処理装置による処理(炭素化処理)における各種値の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明の一実施形態にかかる炭素化処理装置(廃棄物処理装置)の全体構成を示す図で、
図1はシステム構成を示す模式図、
図2は外観構成の一例を示す斜視図である。また、
図3は、炭素化処理装置での各処理工程とその温度変化を示す図である。
【0033】
本実施形態の炭素化処理装置100は、例えば廃タイヤ、木材、その他廃棄物等の有機物を含む一般廃棄物を炭素化して固形化する炭素化処理装置であって、素材原料を回収しようとする廃棄物や不要となった有機物から炭素化という手段により組成分離を実施して工業用炭素素材を製造し、同時に、土砂、鉄、非鉄金属、ガラス素材あるいはレアメタルなどの再生資源を組成ごとに別々に回収し、また、炭素原料用油の回収を行うことで、それぞれを再利用させることが可能な装置である。
【0034】
この炭素化処理装置100は、工業用炭素素材を製造、抽出するための材料を、一括して投入できる相当の大きさのあるコンテナ(例えばメッシュ状の籠)等の入れ物に入れ、当該入れ物の大きさに相当する個室に導入し、その個室に対して酸化燃焼が起きないように窒素ガスを注入し、投入物の特性及び回収素材の特性に応じた管理温度により組成分離を促進させ、各種素材組成が混濁したものから素材毎、組成毎に各組成素材を回収する。同時に、炭素化処理することにより工業用炭素原料を製造することができ、また、投入原材料に原油由来のもの、例えばプラスチック、合成ゴム等が混入していた場合、炭素製造用油の回収もワンシステムで可能となる。
【0035】
炭素化処理装置100は、具体的には、
図1に示すように、処理対象物(処理対象の廃棄物)Mの導入側から排出側へ処理の流れに沿って、導入待機室1、窒素置換室2、予熱蒸発室3,加熱分解室4、炭素化室5、冷却待機室6、冷却室7、排出待機室8の各室が設けられている。処理対象物Mは、炭素化処理装置100の入口A側に設けられた搬入コンベア(搬入ローラー)10によって炭素化処理装置100内に投入され、上記の各室1~8へ順番に導かれて処理され、最終的に排出物M’として炭素化処理装置100の出口B側に設けられた搬出コンベア(搬出ローラー)11によって炭素化処理装置100の外部へ排出される。以下、炭素化処理装置100内に設けられた上記の各室について詳細に説明する。
【0036】
〔1〕導入待機室(窒素待機室)
導入待機室1は、炭素化処理装置100の入口A側に設けた搬入コンベア(搬入ローラー)10を流れてきた処理対象物(処理対象の廃棄物)Mを最初に導入して待機させるための室(待機準備室)である。導入待機室1は、室内に窒素ガスが注入されてもよい。
【0037】
〔2〕窒素置換室(予備室)
窒素置換室2は、室内の空気を窒素で置換することで、室内に窒素を導入する。この窒素置換室2内に窒素ガスが注入されることで、処理対象物Mの酸化燃焼が起きないようにする。すなわちここでは、投入した処理対象物を組成分離する際にダイオキシン類及び二酸化炭素の発生原因である酸化燃焼(高温酸化による熱分解)が起きないようにするための手段として空気中の窒素を利用する。
【0038】
〔3〕予熱蒸発室(予備加熱室)
予熱蒸発室3は、処理対象物Mに水分(H2O)が付着あるいは存在(含有)している場合にそれを蒸発させて除去するための室である。この予熱蒸発室3は、室内の温度を一例として約150℃程度に上昇させることで、処理対象物Mに付着している水分を蒸発させることができる。
【0039】
〔4〕加熱分解室
加熱分解室4は、処理対象物Mを更に加熱することで、処理対象物Mに含まれる塩素(Cl)ガスを除去(塩素を含有する有機化合物を分解する)ための室である。加熱分解室4は、室内の温度を一例として約300℃程度に上昇させることで塩素ガスを除去する。
【0040】
〔5〕炭素化室(炭素化分解室又は組成分離分解室)
炭素化室5では、処理対象物Mに有機化合物が使用されている場合に組成分離を行うことで、有機化合物を分離して除去する。この炭素化室5は、室内の温度を一例として約450℃程度に上昇させることで、処理対象物MからC(炭素)ガス及びH(水素)ガスを除去して炭素化(炭素化分解)することが可能となる。処理対象物Mが炭素化されて固形化されることで、処理対象物Mに含まれる素材そのものを原料(材料)の状態で回収できる。
【0041】
〔6〕冷却待機室(冷却室)
冷却待機室6は、炭素化室5での炭素化処理(炭素化分解処理)が終わった後の処理対象物Mを後の冷却室7に導入する前に待機させるための室である。この冷却待機室6では、一例として、処理対象物Mを一時的に待機させることで、その温度を約450℃から約300℃程度まで低下させることができる。また、この冷却待機室6では、処理対象物Mやその周囲(コンテナ内)に含まれている各種ガスの除去も行うようにしてもよい。さらに、炭素化室5を出た処理対象物Mの周囲の気体の圧力を調圧(雰囲気の圧力を低下させる)するようにすることも可能である。
【0042】
〔7〕冷却室
冷却室7は、炭素化室5での炭素化処理(炭素化分解処理)が終わった後の処理対象物Mの温度を速やかに低下させることで発火を防ぐための室である。冷却室7は、一例として、処理対象物Mの温度を約300℃から約100℃以下まで低下させることができる。冷却室7は、一例として冷却媒体(蒸留水)による水冷方式の冷却構造を備えることができる。
【0043】
〔8〕排出待機室(予備冷却室)
排出待機室8は、炭素化処理装置100の出口B側に設けた搬出コンベア(搬出ローラー)11で運ばれる前の処理対象物M(排出物M’)を待機させるための室(待機準備室)である。なお、排出待機室8では、先の冷却室7で冷却された処理対象物を待機させることで、当該処理対象物Mを更に冷却する効果も奏することができる。
【0044】
また、導入待機室1と排出待機室8は、それぞれ炭素化処理装置100の入口A側(最前部)と出口B側(最後部)とに設置されており、それらの総個室数は2個(2室)である。また、予熱蒸発室3は、総個室数が2個(2室)であり、加熱分解室4は、総個室数3個(3室)であり、炭素化室5は、総個室数が5個(5室)であり、冷却待機室6は、総個室数が2個(2室)であり、冷却室7は、総個室数3個(3室)である。したがって、この炭素化処理装置100は、全体として合計17室の個室を有する構造である。
【0045】
また、少なくとも導入待機室1、予熱蒸発室3、加熱分解室4、炭素化室5、冷却室7、及び排出待機室8はそれぞれ独立した室(部屋)となっており、互いの室の温度の干渉が最小限になるようにそれらの間には隔壁が設けられている。また、このような隔壁が設けられていることで、互いの室内で分解・生成したガスが干渉しない構造となっている。
【0046】
また、図示は省略するが、すべての室内にそれぞれ酸素濃度計測機器が設置されており、炭素化処理装置100は、酸素濃度計測機器によって計測される各室内の酸素濃度が計量下限以下であることを条件として稼働させる方式としている。
【0047】
また、この炭素化処理装置100は、各室の温度を一定間隔(例えば、10℃間隔)で任意の温度に設定可能な温度管理装置を備えている。これにより、特に、予熱蒸発室3、加熱分解室4、炭素化室5それぞれの室内温度を10℃ごとの任意の温度に制御できる機能を有している。
【0048】
そして、この炭素化処理装置100では、各室の室内温度は原材料と適合する温度に設定することが可能な温度管理装置(図示せず)が設けられており、当該温度管理装置によって、各室内の温度が150℃から450℃の範囲内で設定される。また、各室の温度として510℃を危険温度として設定し、万一、いずれかの室内の温度が510℃に達した場合には、強制的にすべての電熱発生機器の電源をカットするようになっている。なお、ここでの危険温度は、材料が組成分離により一酸化炭素ガスが発生した場合の発火温度以下として設定された温度である。
【0049】
また、この炭素化処理装置100は、各室内での処理において各々条件の違うガスが発生するため、各室毎に使用素材の違う分解ガス導管を設置し、各々個別に冷却される構造の冷却手段を有している。この冷却手段は、完全間接とし、冷却媒体(蒸留水)と分解ガスとは一切接触のない構造となっている。
【0050】
本実施形態の炭素化処理装置(炭素化処理装置)100では、一例として、漁網、ロープ、畳、毛布、布類、布団、座布団、石油製品などの様々な廃棄物を処理することができる。
【0051】
図4は、本発明の炭素化処理装置による処理(炭素化処理)と従来の焼却施設による焼却処理との比較について示す表である。同図の表に示すように、本発明の炭素化処理装置による処理(炭素化処理)は、従来の焼却施設による焼却処理と比較して、環境汚染物質の排出量を削減でき、施設の設置や運用にかかる費用の低廉化を図ることができる。
【0052】
図5は、本発明の炭素化処理装置による処理(炭素化処理)における各種値の測定結果を示す表である。同図の表に示すように、本発明の炭素化処理装置による処理では、二酸化炭素の排出や各種化学合成ガスの発生を大幅に抑制できるため、大気汚染や地下水汚染・土壌汚染を実質的に無くすことが可能となる。
【0053】
本実施形態の炭素化処理装置100によれば、炭素含有物である処理対象物、例えば植物やプラスチック、或いは炭素含有物とその他の無機物が混在した物、あるいは、産業廃棄物や一般廃棄物、あるいは接着材等によって炭素含有物と各種別々の素材が接着されている物、さらには、例えば、家電品、自動車、園芸用品、農用資材などのような処理対象物を、前処理なしで一括投入のうえ、ワンシステム内で組成、素材ごとに分離回収すると同時に工業用炭素原料を製造することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態の炭素化処理装置100では、加工品を含め様々な処理対象物(原材料)から、工業用炭素原料を製造し、同時に、金属その他を加工前の原材料状態で回収することを可能とするものである。その個別原料回収率は、総量で70%超となる。本実施形態の炭素化処理装置100の内部(各室の内部)は、大気中から精製した窒素で充満されており、混入原料毎の適正温度で処理されるため、酸化反応や合成反応は起こらず、素材そのものを原料材料の状態で回収できる。また、混入している金属は酸素が存在していないため酸化せずそのままの状態で回収でき、高分子化合物は一度ガスとして蒸発し、その後、液化される。たとえば、塩化ビニールのような高分子化合物やPCBのような有機化合物などは、その物質の特性に応じた適温により、一時的にその各組成の状態で分解ガス化され、そのガスを水で洗浄することにより塩素分を塩化水素として回収でき、あるいは、触媒を使用することにより食塩、工業用塩等として回収できるため、その残りは原油状態で無害な液体として回収できる。木材、竹、草等の植物などは、木酢、竹酢等の酵素の存在した液化物が回収され、そのほかの残物は工業用炭素素材として回収できる。この回収液化物は、一般に木酢、竹酢と呼ばれ再利用できる。
【0055】
本実施形態の炭素化処理装置100によれば、廃棄物処理に関する従来の視点を変えることができ、枯渇しかかっている資源を廃棄物から回収して半永久的に供給できる手段となり得る。
【0056】
また、本実施形態の炭素化処理装置100を利用することにより、携帯電話やパソコンなどからは、工業用炭素原料を製造できると同時に、油化物や銅、鉄、アルミ、その他さまざまなレアメタルを回収できる。また、近い将来、太陽光パネルが大量に廃棄されると予想されているが、本発明の炭素化処理装置及び炭素化処理方法によれば、太陽光パネルも組成毎に分離、原料として再使用できるようになる。そのうえ、本発明の炭素化処理装置及び炭素化処理方法による作業工程からの排水は一切なく、水質汚染の心配は無く、排気ガスの回収システムを装着することによりエネルギーに変換することができるので、最終的に排出される廃棄物は、ほぼ0となる。
【0057】
また、本発明にかかる炭素化処理装置又は炭素化処理方法は、工業用炭素原料を製造する工程で、同時に各種資源を調達でき、二酸化炭素の排出や各種化学合成ガスの発生を大幅に抑制でき、大気汚染や地下水汚染・土壌汚染が無くなるため、従来の資源回収手段と比較して各種環境改善のために必要としたコスト(環境会計)の面からもそのコストの大幅な削減となるものである。生成されたカーボンは各種凝固剤を使用することにより、鉄と同等の強度持たせることが可能であり、その形状も様々に成型できる。したがって、例えば、建築基礎パネル、運送用パネル、壁材、屋根瓦などに成型することができる。
【0058】
また、最終処分場を掘り起こし、そこに埋め立てされている廃棄物を本発明の炭素化処理装置及び炭素化処理方法で再処理することにより、工業用炭素素材を製造できるとともに各種資源の調達もでき、最終処分場の延命や環境改善もできる。さらに、原料となる素材により、工業用炭素素材は半導体原料としても利用できる。
【0059】
また、本発明の炭素化処理装置及び炭素化処理方法では、その一連の処理工程において内部酸素濃度は計測下限まで低減させているため、ダイオキシン類及び二酸化炭素を殆ど発生させることはなく、また、最終的に排出される廃棄物がほぼ0となるため、最終処分場に持ち込む廃棄物が発生しない。これらによって、現在の焼却施設や最終処分場も不要となる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 導入待機室
2 窒素置換室
3 予熱蒸発室
4 加熱分解室
5 炭素化室
6 冷却待機室
7 冷却室
8 排出待機室
100 炭素化処理装置
A 入口
B 出口
M 処理対象物