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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095371
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】高周波電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212631
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄也
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC12
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD38
2G084DD55
2G084HH05
2G084HH08
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH24
2G084HH25
2G084HH27
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH52
(57)【要約】
【課題】第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方の期間において第1電源側の反射波電力の電力値を小さくする。
【解決手段】本開示に係る高周波電力供給システムは、第1電源と第2電源と第1整合器と第2整合器とを有する。第2電源は、第2進行波電圧を出力するON動作と第2進行波電圧を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行う。第1電源は、第2電源ON期間では周波数変調制御を行い、第2電源OFF期間では、基本周波数F1にオフセット周波数を加えた基本周波数F3を有する進行波電圧VF3を出力する周波数オフセット制御を行う。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基本周波数を有する第1進行波電圧を出力可能である第1電源と、
前記第1基本周波数より低い第2基本周波数を有する第2進行波電圧を出力可能である第2電源と、
前記第1電源と負荷との間に接続された第1整合器と、
前記第2電源と前記負荷との間に接続された第2整合器と、
を備え、
前記第2電源は、前記第2進行波電圧を出力するON動作と前記第2進行波電圧を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行い、
前記第1電源は、前記ON動作が行われる第2電源ON期間では周波数変調制御を行い、前記OFF動作が行われる第2電源OFF期間では、前記第1基本周波数を有する第1進行波電圧を出力する
高周波電力供給システム。
【請求項2】
前記周波数変調制御は、前記第1進行波電圧を前記第2基本周波数と同じ周波数を有する変調信号で周波数変調させることによって行われる、
請求項1に記載の高周波電力供給システム。
【請求項3】
前記変調信号は、初期位相、周波数偏移及びオフセット周波数を調整パラメータとし、
前記初期位相及び前記周波数偏移を調整することによって、前記第2電源ON期間に算出される前記第1電源の出力端における反射係数絶対値又は反射波電力の電力値を小さくし、
オフセット周波数を調整することによって、前記第2電源ON期間に算出される前記第1電源の出力端における反射係数絶対値又は反射波電力の電力値を小さくする
請求項2に記載の高周波電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラズマ処理装置に用いられる高周波電力供給システムは、2台の高周波電源(第1電源と第2電源)を有しており、それぞれの電源から負荷に向けて基本周波数(基本波の周波数)が異なる高周波電圧(進行波電圧)を出力している。例えば、第1電源1は、プラズマの生成に適した基本周波数F1を有する高周波電圧(進行波電圧VF1)を出力することにより高周波電力(第1進行波電力)を負荷に供給する。第2電源は、イオンの加速に適した基本周波数F2(基本周波数F1>基本周波数F2)を有する高周波電圧(進行波電圧VF2)を出力することにより高周波電力(第2進行波電力)を負荷に供給する。(特許文献1~3参照)。
【0003】
また、第1電源と負荷との間には、第1整合器が設けられ、第1電源の出力端(第1整合器の入力端)における反射波電力の電力値が小さくなるように、内部の可変素子の値(例えば、可変キャパシタの容量値)を調整することによって、第1電源側のインピーダンス整合を行っている。また、第2電源と負荷との間には、第2整合器が設けられ、内部の可変素子の値(例えば、可変キャパシタの容量値)を調整することによって、第2電源の出力端(第2整合器の入力端)における反射波電力の電力値が小さくなるように、第2電源側のインピーダンス整合を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-536295号公報
【特許文献2】特開2017-188434号公報
【特許文献3】米国特許第10304669号明細書
【特許文献4】特開2022-102688号公報
【特許文献5】特許第6312405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成では、相互変調歪(以下、IMD:InterModulation Distortion)が発生する。その影響で、第1電源側において、反射波電力が基本周波数F2の周期に応じて変動する現象が発生する。このIMDに起因する反射波電力の電力値を小さくするために、第1電源が周波数変調制御を行う技術が知られている。
【0006】
しかし、この技術は、IMDが発生しているときに反射波電力の電力値を小さくする技術である。そのため、第1電源が進行波電圧VF1を出力しているときに、第2電源が、進行波電圧VF2を出力するON動作と進行波電圧VF2を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行う場合には、反射波電力の電力値を十分に小さくすることが出来ない。
すなわち、第2電源がON動作を行う第2電源ON期間では、IMDが発生するので、周波数変調制御を行うことによって反射波電力の電力値を小さくできる。しかし、第2電源がOFF動作を行う第2電源OFF期間では、進行波電圧VF2が出力されないのでIMDが発生しない。そのため、第2電源OFF期間でも第1電源の出力を周波数変調させると、かえって反射波電力の電力値を増大させてしまう。
【0007】
また、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とでは、第2電源の出力状態が大きく異なるので、第1整合器3の整合動作だけでは、第2電源ON期間と第2電源OFF期間の両方の期間で、第1電源側の反射波電力の電力値を小さくできない。なぜならば、第1整合器3の整合動作にかかる時間がパルス変調の周期時間よりも長いためである。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、第1電源が進行波電圧VF1を出力しているときに、第2電源が、進行波電圧VF2を出力するON動作と進行波電圧VF2を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行う場合に、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方の期間において、第1電源側の反射波電力の電力値を小さくする高周波電力供給システム90を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る高周波電力供給システムは、
第1基本周波数を有する第1進行波電圧を出力可能である第1電源と、
前記第1基本周波数より低い第2基本周波数を有する第2進行波電圧を出力可能である第2電源と、
前記第1電源と負荷との間に接続された第1整合器と、
前記第2電源と前記負荷との間に接続された第2整合器と、
を備え、
前記第2電源は、前記第2進行波電圧を出力するON動作と前記第2進行波電圧を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行い、
前記第1電源は、前記ON動作が行われる第2電源ON期間では周波数変調制御を行い、前記OFF動作が行われる第2電源OFF期間では、前記第1基本周波数を有する第1進行波電圧を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高周波電力供給システムによれば、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方の期間において第1電源側の反射波電力の電力値を小さくできる。すなわち、第1電源側の反射係数の絶対値を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、高周波電力供給システム90の構成を示す図である。
図2図2は、同期パルス信号に対する進行波電圧VF2と進行波電圧VF1との関係を示す図である。
図3図3は、位相リセット信号生成部46の構成例である。
図4図4は、位相リセット信号の生成方法を説明するための図である。
図5図5は、変調信号の元となる基本変調信号のイメージ図である。
図6図6は、変調信号のイメージ図である。
図7図7は、変調信号と進行波電圧VF1との関係を示す図である。
図8図8は、変調信号生成部10の構成例を示す図である。
図9図9は、周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行う際のフローチャートの一例(その1)である。
図10図10は、周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行う際のフローチャートの一例(その2)である。
図11図11は、周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行う際のフローチャートの一例(その3)である。
図12図12は、周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行う際のフローチャートの一例(その4)である。
図13図13は、負荷側インピーダンスZ1又は反射係数ρ1の一例(その1)である。
図14図14は、負荷側インピーダンスZ1又は反射係数ρ1の一例(その2)である。
図15図15は、負荷側インピーダンスZ1又は反射係数ρ1の一例(その3)である。
図16図16は、オフセット周波数探索工程を説明するための図である。
図17図17は、オフセット周波数探索工程の完了後に、第1整合動作を実行したときの負荷インピーダンス又は反射係数の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る高周波電力供給システム90の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、高周波電力供給システム90の構成を示す図である。
高周波電力供給システム90は、RF帯(RF:Radio Frequency)の周波数の高周波電圧を出力することにより高周波電力を負荷(例えばプラズマ処理装置PA)に供給する装置である。
このような高周波電力供給システム90は、例えば、第1電源1、第2電源2及び重畳整合器5を有する。また、重畳整合器5は、第1整合器3、第2整合器4及び出力部51を備えている。そして、第1電源1及び第2電源2のそれぞれから負荷に向けて基本周波数(基本波の周波数)が異なる高周波電圧を出力している。
なお、本明細書では、第1電源1の基本周波数を基本周波数F1(第1基本周波数の一例)、第2電源2の基本周波数を基本周波数F2(第2基本周波数の一例)、基本周波数F1にオフセット周波数を加えた周波数を基本周波数F3(第3基本周波数の一例)とする。
【0014】
また、第1電源1から出力されて負荷に向かう高周波電圧を進行波電圧VF1(第1進行波電圧の一例)、負荷側から反射されて第1電源1に戻ってくる高周波電圧を反射波電圧VR1、第1電源1から出力されて負荷に向かう高周波電力を進行波電力PF1、負荷側から反射されて第1電源1に戻ってくる高周波電力を反射波電力PR1とする。
また、第2電源2から出力されて負荷に向かう高周波電圧を進行波電圧VF2(第2進行波電圧の一例)、負荷側から反射されて第2電源2に戻ってくる高周波電圧を反射波電圧VR2、第2電源2から出力されて負荷に向かう高周波電力を進行波電力PF2、負荷側から反射されて第2電源2に戻ってくる高周波電力を反射波電力PR2とする。
【0015】
また、進行波電力PF1の電力値を進行波電力値pf1、反射波電力PR1の電力値を反射波電力値pr1、進行波電力値pf1から反射波電力値pr1を減算した電力値を負荷側電力値pl1(図略)、進行波電力PF2の電力値を進行波電力値pf2、反射波電力PR2の電力値を反射波電力値pr2、進行波電力値pf2から反射波電力値pr2を減算した電力値を負荷側電力値pl2(図略)とする。
【0016】
また、本明細書では、進行波電圧に対する反射波電圧の比(反射波電圧/進行波電圧)で表される反射係数をρとし、反射係数ρの絶対値(大きさ)をΓとする。
また、必要に応じて添え字を用いて、対応する箇所を表している。例えば、第1電源1及び第1整合器3の系統では「1」、第2電源2及び第2整合器4の系統では「2」、第1電源1に関するものは「g」、第1整合器3に関するものは「m」を用いている。
【0017】
第1電源1は、基本周波数F1を有する進行波電圧VF1を出力することにより進行波電力PF1を負荷に供給する。この際、進行波電力値pf1が目標電力値p0となるようにフィードバック制御される。なお、負荷側電力値pl1が目標電力値p0となるようにフィードバック制御することも可能であるが、以下では説明を省略する。
【0018】
進行波電圧VF1は、プラズマの生成に適した比較的高い基本周波数F1を有する。基本周波数F1は、例えば、40.68MHzである。もちろん、基本周波数F1は、40.68MHzに限定されるものではなく、例えば13.56MHz、27.12MHz等の工業用のRF帯の周波数であってもよい。また、後述するように、第1電源1は、周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行うように構成されている。
【0019】
第2電源2は、基本周波数F1より低い基本周波数F2を有する進行波電圧VF2を出力することにより第2進行波電力を負荷に供給する。この際、進行波電力値pf2が目標電力値となるようにフィードバック制御される。なお、負荷側電力値pl2が目標電力値となるようにフィードバック制御される場合もあるが、以下では説明を省略する。
進行波電圧VF2は、イオンの加速に適した比較的低い基本周波数F2を有する。基本周波数F2は、例えば400kHzである。もちろん、基本周波数F2は、400kHzに限定されるものではなく、他の周波数であってもよい。
第2電源2は、予め定められた周期で、進行波電圧VF2を出力するON動作と進行波電圧VF2を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行うように構成されている。ここで、第2電源2がON動作を行う期間を第2電源ON期間とし、OFF動作を行う期間を第2電源OFF期間とする。
【0020】
第2電源ON期間では、第1電源1から進行波電圧VF1が出力され、第2電源2から進行波電圧VF2が出力されるので、IMDが発生する。しかし、第2電源OFF期間では、第1電源1から進行波電圧VF1が出力されているが、第2電源2から進行波電圧VF2が出力されていないので、IMDは発生しない。
第2電源2におけるON動作とOFF動作との切り替えは、例えば、同期信号に基づいて行う。同期信号は、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間にそれぞれ対応した制御を行うためのものである。
なお、第2電源2は、同期信号を入力することなく、ON動作とOFF動作とを繰り返すパルス変調を行ってもよい。その場合は、第2電源2が同期パルス信号に相当する同期信号を生成し、第1電源1及び重畳整合器5に出力すればよい。また、重畳整合器5の第2整合器4において同期信号を生成することができる。この場合は、第2整合器4が同期パルス信号に相当する同期信号を生成し、第1電源1に出力すればよい。
【0021】
重畳整合器5は、例えば、第1電源1及び第2電源2とプラズマ処理装置PA(負荷の一例)の下部電極EL1との間に電気的に接続される。また、重畳整合器5は、第1整合器3、第2整合器4及び出力部51を備えている。
【0022】
負荷の一例であるプラズマ処理装置PAは、例えば平行平板型であり、チャンバーCH内で下部電極EL1及び上部電極EL2が互いに対向する。下部電極EL1上には、処理対象となる基板SBが載置され得る。第1電源1及び第2電源2は、重畳整合器5を介して下部電極EL1に電気的に接続される。上部電極EL2は、グランド電位に電気的に接続される。チャンバーCHは、給気管を介してガス供給装置(図示せず)に接続され、排気管を介して真空装置(図示せず)に接続される。
【0023】
外部制御装置61は、例えば、高周波電力供給システム90に各種の指令(電源ON等)や、目標電力値等の条件を与える装置である。また、例えば、第1電源1で算出した進行波電力値pf1等のデータを取得してモニタする等の機能を有している。
同期パルス生成部62は、同期信号の一例としての同期パルス信号生成し、第1電源1、第2電源2および重畳整合器5に供給する。同期パルス信号は、後述する図2に示すように、第2電源2のパルス変調周期に対応した2レベルの矩形波状のパルス信号である。例えば、同期パルス信号が第1レベルのときを第2電源ON期間とし、同期パルス信号が第2レベルのときを第2電源OFF期間とすればよい。通常は、第1レベル>第2レベルである。例えば、第1レベルが「1」、第2レベルが「0」である。
【0024】
同期信号の一例として、上記のように同期パルス生成部62が出力した同期パルス信号を用いた例を示したが、他の同期信号を用いても良い。例えば、第2電源2又は第2整合器4が生成した同期信号を用いることができる。なぜならば、第2電源2は、自身のパルス変調周期が分かっているので、同期信号を生成ることができるからである。また、第2整合器4は、第2整合器4で検出する進行波電圧VF2の情報に基づいて、第2電源2のパルス変調周期を取得できるからである。
また、同期信号は、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間にそれぞれ対応する信号でなくてもよい。例えば、第2電源ON期間の開始時に対応したパルス信号等であってもよい。この場合、第2電源OFF期間に対応する信号はないが、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の時間が分かっているので、第2電源OFF期間の開始タイミングを認識することができる。
【0025】
<高周波電力供給システム90の概略動作説明>
第1電源1から出力された進行波電圧VF1は、第1整合器3及び出力部51を介してプラズマ処理装置PAの下部電極EL1に供給される。第2電源2から出力された進行波電圧VF2は、第2整合器4及び出力部51を介してプラズマ処理装置PAの下部電極EL1に供給される。すなわち、本実施形態では、重畳整合器5内部の出力部51において進行波電圧VF1と進行波電圧VF2とを重畳させて下部電極EL1に供給している。これにより、プラズマ処理装置PAは、下部電極EL1と上部電極EL2との間にプラズマPLを発生させる。また、重畳整合器5は、第1整合器3において第1電源1側のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとを整合させる第1整合動作を実行するとともに、第2整合器4において第2電源2側のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとを整合させる第2整合動作を実行する。
【0026】
なお、高周波電力供給システム90及びプラズマ処理装置PAは、図1の構成に限定されない。例えば、重畳整合器5に進行波電圧VF1と進行波電圧VF2とを重畳させる出力部51がなく、第1電源1から出力される進行波電圧VF1が第1整合器3を介して上部電極EL2(この場合、図1と異なりグランド電位に電気的に接続されていない)に供給され、第2電源2から出力される進行波電圧VF2が第2整合器4を介して下部電極EL1に供給されるような構成等、様々な構成がある。このような他の構成にも本実施形態の高周波電力供給システム90を用いることが可能である。
【0027】
上述したように、第1電源1及び第2電源2から基本周波数に高低差のある複数の進行波電圧を負荷に供給すると、IMDの影響で、第1電源1側において検出される反射波電力値pr1が第2電源2側の基本周期(基本波の周期)に応じて変動する現象が発生する。この際の反射波電力値pr1は比較的大きい。そのため、第1電源1側における反射係数絶対値Γ1又を小さくするために、第1電源1が周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行うとともに、第1整合器3が第1電源1側のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとを整合させる整合動作を実行する。
【0028】
図2は、同期パルス信号に対する進行波電圧VF2と進行波電圧VF1との関係を示す図である。
図2(a)は、同期パルス信号の一例であり、図2(b)は、進行波電圧VF2の一例であり、図2(c)は、進行波電圧VF1の一例である。
【0029】
図2(a)に示すように、同期パルス信号は、第1レベルと第2レベルとを繰り返す矩形波状のパルス信号である。図2(b)に示すように、第2電源2は、同期パルス信号が第1レベルのときにON動作を行うので、進行波電圧VF2を出力する。また、第2電源2は、同期パルス信号が第2レベルのときにOFF動作を行うので、進行波電圧VF2を出力しない。
【0030】
上述したように、第2電源2がON動作を行うときが第2電源ON期間であり、第2電源2がOFF動作を行うときが第2電源OFF期間であるので、第2電源ON期間にはIMDが発生するが、第2電源OFF期間にはIMDが発生しない。そのため、第1電源1は、第2電源ON期間に周波数変調制御を行い、第2電源OFF期間に周波数オフセット制御を行うので、第1電源1の進行波電圧VF1の基本周波数は、図2(c)に示すように、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とで異なる。しかし、図2(c)に示すように、第1電源1の進行波電圧VF1の振幅は、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とで同じである。
【0031】
なお、図2(c)は、後述する周波数変調制御の変調パラメータ探索工程及び周波数オフセット制御のオフセット周波数探索工程が完了した後の進行波電圧VF1の一例である。また、図2(c)では、周波数変調していることが分かるように、第2電源ON期間の最初と最後の部分の周波数を高くし、中央部分の周波数を低くしているが、これに限定されない。
【0032】
<第1電源1の詳細>
第1電源1は、第2電源ON期間において進行波電圧VF1を第2基本周波数と同じ周波数F2を有する変調信号で周波数変調させる周波数変調制御を行う。また、第1電源1は、第2電源OFF期間において、基本周波数F1にオフセット周波数を加えた基本周波数F3を有する進行波電圧VF3を出力する周波数オフセット制御を行う。
なお、周波数オフセット制御の一態様としてオフセット周波数が0Hzであってもよい。すなわち、実質的に周波数オフセット制御を行わないでもよい。この場合でも、第2電源OFF期間に周波数変調制御を行うことによる悪影響が生じないので効果がある。例えば、オフセット周波数が0Hzでよいことが分かっていれば、オフセット周波数探索工程も行う必要はない。
【0033】
以下、図1を参照して、第1電源1の構成を説明する。
第1電源1は、第1電源1用通信部11、変調信号生成部10、被変調信号生成部12、振幅調整部13、増幅部14、第1電源1用センサ15、電力情報算出部16、反射係数絶対値算出部17、目標電力設定部18、減算部19及び電力制御部20を有する。
なお、第1電源1において、算出処理、信号処理を行う部分は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、メモリ等の記憶媒体等によって構成することができる。また、予めROM(Read Only Memory)等に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、算出、時間の計測等の処理を行うことができる。また、第1電源1には、図示しない基本クロック生成部が備わっており、基本クロック生成部から出力されるクロック信号に基づいて制御周期毎に処理が実行される。
【0034】
第1電源1用通信部11は、同期信号として同期パルス生成部62が出力した同期パルス信号を入力し、変調信号生成部10、電力情報算出部16及び目標電力設定部18に向けて出力する。また、第1整合器3及び第2整合器4と通信を行うことができる。例えば、第1整合器3から初期位相探索指令を受信することができる。
【0035】
また、第1電源1用通信部11は、外部制御装置61との通信も可能である。例えば、外部制御装置61から目標電力値p0等の情報を入力し、目標電力設定部18に向けて出力することができる。また、例えば、電力情報算出部16で算出した進行波電力値pf1、反射波電力値pr1を外部制御装置61に向けて出力することができる。外部制御装置61では、入力した情報をモニタする等の活用ができる。その他、第1整合器3及び第2整合器4と送受信することが可能であるが、説明を省略する。
【0036】
変調信号生成部10は、基本周波数F2と同じ周波数を有する変調信号を生成し、被変調信号生成部12に向けて出力する。変調信号は、第1電源1から出力する進行波電圧VF1の周波数を定めるための信号であり、第2電源2におけるON動作とOFF動作にそれぞれ対応した波形情報を有している。この変調信号については後述する。なお、変調信号生成部10は、第1電源1用通信部11から出力された同期信号に基づいて第2電源ON期間及び第2電源OFF期間を認識することができる。
【0037】
被変調信号生成部12は、変調信号が示す周波数情報に基づいて、初期位相α、周波数偏移及びオフセット周波数が調整された被変調信号を出力する。被変調信号生成部12は、例えば、DDS(Direct Digital Synthesizer)を用いることができる。
【0038】
被変調信号は、図2(c)と同様の波形を有しており、周波数変調する期間と周波数が一定の期間とを繰り返す波形となっている。すなわち、被変調信号は、振幅が一定であるが、第2電源ON期間では変調信号によって周波数変調されており、第2電源OFF期間では変調信号によって周波数がオフセットされた波形信号となっている。なお、被変調信号は、図2(c)の進行波電圧VF1と同様の波形なので、アナログの波形信号のように表しているが、実際にはデジタルデータとなっており、制御周期毎にデータが生成されて出力される。
【0039】
振幅調整部13は、被変調信号生成部12から出力された被変調信号と電力制御部20から出力された振幅調整信号を入力する。そして、被変調信号の振幅を振幅調整信号に基づいて調整し、進行波電圧初期信号VF1iniとして増幅部14に向けて出力する。これにより、第1電源1(増幅部14)から出力される第1進行波電力PFの電力値である進行波電力値pf1が後述する目標電力設定部18で設定された目標電力値p0になるように進行波電圧VF1の振幅が変更される。
なお、振幅調整部13から出力される進行波電圧初期信号VF1iniは、実際にはデジタルデータとなっており、制御周期毎にデータが生成されて出力される。
また、振幅調整部13と増幅部14との間には、図示しないD/A変換器が設けられている。
【0040】
増幅部14は、振幅調整部13から出力された進行波電圧初期信号VF1iniを増幅して、進行波電圧VF1として出力する。この進行波電圧VF1の波形は、被変調信号生成部12から出力される被変調信号と同様の波形を有している。もちろん被変調信号と進行波電圧VF1との振幅は異なるが、周波数は同じである。
すなわち、第1電源1は、第2電源ON期間において、進行波電圧VF1を基本周波数F2と同じ周波数(本実施形態では400kHz)を有する変調信号で変調させる周波数変調制御を行い、第2電源OFF期間において、基本周波数F1にオフセット周波数を加えた基本周波数F3を有する進行波電圧VF3を出力する周波数オフセット制御を行っていると言える。また、増幅部14の前段に、高調波成分等を除去するフィルタを設けてもよい。また、増幅部14の後段に、高調波成分等を除去するフィルタを設けてもよい。
【0041】
第1電源1用センサ15は、第1電源1の出力端に設けられており、増幅部14から出力された進行波電圧VF1を通過させて重畳整合器5の第1整合器3に向けて出力する。また、増幅部14から出力された進行波電圧VF1を検出し、その検出信号である進行波電圧検出信号vf1gを電力情報算出部16に向けて出力する。また、負荷側から反射されて第1電源1に戻ってくる反射波電圧VR1を検出し、その検出信号である反射波電圧検出信号vr1gを電力情報算出部16に向けて出力する。
なお、第1電源1用センサ15と電力情報算出部16との間には、図示しないA/D変換器が設けられている。
【0042】
電力情報算出部16は、第1電源1用センサ15から出力された進行波電圧検出信号vf1gと反射波電圧検出信号vr1gを入力し、入力した信号に基づいて、進行波電力値pf1及び反射波電力値pr1を算出する。
【0043】
(1)進行波電力値pf1
電力情報算出部16は、入力した進行波電圧検出信号vf1gに基づいて進行波電力値pf1を算出する。例えば、入力した進行波電圧検出信号vf1gを二乗し、その後、所望の成分を抽出するローパスフィルタ(例えばIIRフィルタ等)によって不要な周波数成分の情報をカットし、更に、進行波電力値pf1に変換するための定数を乗算して、進行波電力値pf1を算出する。進行波電力値pf1は、例えば、進行波電圧検出信号vf1g^2/R(R:抵抗値に相当するゲイン)によって算出することができる。算出した進行波電力値pf1は、反射係数絶対値算出部17及び減算部19に向けて出力される。
【0044】
もちろん、算出方法は、上記に限定されるものではない。例えば、所定の期間の移動平均値にしてもよい。また、所定の期間の平均値にしてもよい。要するに、進行波電力値pf1に関する情報を算出すればよい。以降の説明では、移動平均値や平均値を算出する等の処理を行う場合も含めて、単に進行波電力値pf1と表記する。
【0045】
また、第2電源ON期間に検出した進行波電圧検出信号vf1gに基づいて算出した進行波電力値pf1を進行波電力値pf11とし、第2電源OFF期間に検出した進行波電圧検出信号vf1gに基づいて算出した進行波電力値pf1を進行波電力値pf12とし、
第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方で検出した進行波電圧検出信号vf1gに基づいて算出した進行波電力値pf1を進行波電力値pf13とする。
【0046】
また、進行波電力値pf1は、後述する反射係数絶対値算出部17と減算部19とに向けて出力されるが、両者は異なっていてもよい。例えば、ローパスフィルタの条件が異なってもよい。
【0047】
(2)反射波電力値pr1
電力情報算出部16は、入力した反射波電圧検出信号vr1gに基づいて反射波電力値pr1を算出する。例えば、入力した反射波電圧検出信号vr1gを二乗し、その後、所望の成分を抽出するローパスフィルタ(例えばIIRフィルタ等)によって不要な周波数成分の情報をカットし、更に、反射波電力値pr1に変換するための定数を乗算して、反射波電力値pr1を算出する。反射波電力値pr1は、例えば、反射波電圧検出信号vr1g^2/R(R:抵抗値に相当するゲイン)によって算出することができる。算出した反射波電力値pr1は、反射係数絶対値算出部17に向けて出力される。
【0048】
もちろん、算出方法は、上記に限定されるものではない。例えば、所定の期間の移動平均値にしてもよい。また、所定の期間の平均値にしてもよい。要するに、反射波電力値pr1に関する情報を算出すればよい。以降の説明では、移動平均値や平均値を算出する等の処理を行う場合も含めて、単に反射波電力値pr1と表記する。
【0049】
また、第2電源ON期間に検出した反射波電圧検出信号vr1gに基づいて算出した反射波電力値pr1を反射波電力値pr11とし、第2電源OFF期間に検出した反射波電圧検出信号vr1gに基づいて算出した反射波電力値pr1を反射波電力値pr12とし、
第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方で検出した反射波電圧検出信号vr1gに基づいて算出した反射波電力値pr1を反射波電力値pr13とする。
【0050】
反射係数絶対値算出部17は、進行波電力値pf1及び反射波電力値pr1に基づいて、反射係数絶対値Γ1を算出する。反射係数絶対値Γ1は、例えば、√(反射波電力値pr1/進行波電力値pf1)によって算出することができる。算出した反射係数絶対値Γ1は、変調信号生成部10に向けて出力される。
もちろん、算出方法は、上記に限定されるものではない。例えば、所定の期間の移動平均値にしてもよい。また、所定の期間の平均値にしてもよい。要するに、反射係数絶対値Γ1に関する情報を算出すればよい。以降の説明では、移動平均値や平均値を算出する等の処理を行う場合も含めて、単に反射係数絶対値Γ1と表記する。
【0051】
また、第2電源ON期間に検出した進行波電力値pf1及び反射波電力値pr1に基づいて算出した反射係数絶対値Γ1を反射係数絶対値Γ11とし、
第2電源OFF期間に検出した進行波電力値pf1及び反射波電力値pr1に基づいて算出した反射係数絶対値Γ1を反射係数絶対値Γ12とし、
第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方で検出した進行波電力値pf1及び反射波電力値pr1に基づいて算出した反射係数絶対値Γ1を反射係数絶対値Γ13とする。
【0052】
目標電力設定部18は、進行波電力値pf1の目標値として、目標電力値p0が予め設定されている。目標電力設定部18は、目標電力値p0を減算部19に向けて出力する。
【0053】
減算部19は、目標電力値p0から進行波電力値pf1を減算し、減算結果を誤差情報Δpfとして電力制御部20に向けて出力する。
【0054】
電力制御部20は、誤差情報Δpfに応じて進行波電圧初期信号VF1iniの振幅を制御するための振幅調整信号を生成して振幅調整部13に向けて出力する。これにより、進行波電圧初期信号VF1iniの振幅を定めることができる。すなわち、振幅調整信号の大きさを調整することによって進行波電圧VF1の振幅を調整でき、ひいては、進行波電力値pf1を調整することができる。
例えば、目標電力値p0が1,000[W]であり、進行波電力値pf1が950[W]であれば、目標電力値p0に対して50[W]不足しているので、電力制御部20は、負荷に供給する進行波電力値pf1を50[W]大きくするように振幅調整信号の大きさを定めて出力する。このような進行波電圧初期信号VF1iniの振幅の制御には、例えば、PI制御やPID制御等の公知の手法を用いることができる。
なお、上述したように、目標電力設定部18が、第2電源ON期間用の目標電力値p01と第2電源OFF期間用の目標電力値p02とを出力するので、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とを区別して電力値の制御を行うことができる。
【0055】
<重畳整合器5の詳細>
重畳整合器5は、第1整合器3、第2整合器4及び出力部51を有する。第1整合器3は、例えば、第1電源1と下部電極EL1との間に電気的に接続される。第2整合器4は、例えば、第2電源2と下部電極EL1との間に電気的に接続される。第1整合器3は、第1整合動作を実行し、第2整合器4は、第2整合動作を実行する。
【0056】
<第1整合器3>
第1整合器3は、第1側通信部31、第1側センサ32、第1側整合回路33、第1側算出部34及び第1側制御部35を有する。
なお、第1整合器3において、算出処理、信号処理を行う部分は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、メモリ等の記憶媒体等によって構成することができる。また、予めROM(Read Only Memory)等に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、算出、時間の計測等の処理を行うことができる。また、第1整合器3には、図示しない基本クロック生成部が備わっており、基本クロック生成部から出力されるクロック信号に基づいた制御周期毎に処理が実行される。
【0057】
第1側通信部31は、同期信号として同期パルス生成部62が出力した同期パルス信号を入力し、第1側算出部34及び第1側制御部35に向けて出力する。また、第1側通信部31は、第1電源1及び第2整合器4と通信を行うことができる。例えば、第1整合器3で算出した反射係数ρ1を第1電源1に向けて出力することができる。
【0058】
第1側センサ32は、第1整合器3の入力端に設けられており、第1整合器3の入力端(第1電源1の出力端と同等)から負荷側を見た負荷側インピーダンスZ1を算出するための情報、又は、第1整合器3の入力端における反射係数ρ1を算出するための情報を検出する。負荷側インピーダンスZ1と反射係数ρ1とは、相互に変換可能であるため、どちらを検出してもよい。
【0059】
負荷側インピーダンスZ1を算出する場合は、例えば、第1側センサ32として電圧検出器及び電流検出器が用いられる。この場合、第1整合器3の入力端における電圧を電圧検出器で検出し、その検出信号として電圧検出信号v1を出力する。また、第1整合器3の入力端における電流を電流検出器で検出し、その検出信号として電流検出信号i1を出力する。電圧検出信号v1及び電流検出信号i1は、第1側算出部34に向けて出力される。
【0060】
第1整合器3の入力端における反射係数ρ1を算出する場合は、例えば、第1側センサ32として方向性結合器が用いられる。この場合、第1電源1から出力される進行波電圧VF1を検出し、その検出信号として進行波電圧検出信号vf1mを出力するとともに、負荷側から反射されて戻ってくる反射波電圧VR1を検出し、その検出信号として反射波電圧検出信号vr1mを出力する。進行波電圧検出信号vf1m及び反射波電圧検出信号vr1mは、第1側算出部34に向けて出力される。
なお、第1側センサ32と第1側算出部34との間には、図示しないA/D変換器が設けられている。
【0061】
第1側整合回路33は、第1側センサ32と出力部51との間に設けられている。この第1側整合回路33は、内部に、例えば、容量(キャパシタンス)を変更できる可変キャパシタ(可変コンデンサともいう)等の可変素子を備えており、後述する第1側制御部35からの指令によって可変素子の可変値(可変キャパシタの場合は容量、可変インダクタの場合はインダクタンス)を変更し、第1整合器3の入力端から負荷側を見た負荷側インピーダンスZ1を調整できるようになっている。可変素子として可変インダクタが備わっている場合もある。また、第1側制御部35からの指令によって可変素子の容量を変更するために、図示しない駆動回路を備えている。
また、可変素子以外にもインダクタンスが固定値のインダクタが備わっている場合が多い。また、容量(キャパシタンス)が固定値のキャパシタが備わっている場合がある。
このような第1側整合回路33は、所謂、逆L型(L型ともいう)、π型等の整合回路が用いられることが多い。
なお、可変キャパシタは、様々なタイプがある。例えば、電極間の距離を変更することによって容量を変更するタイプの可変キャパシタがある。また、スイッチと直列接続したキャパシタを複数個並列接続するとともにスイッチの状態(ON/OFF)を変更することによって全体の容量を変更するタイプの可変キャパシタがある。このように、可変キャパシタのタイプは限定されない。
【0062】
第1側算出部34は、第1側センサ32から出力された情報に基づいて、反射係数ρ1又は負荷側インピーダンスZ1を算出し、第1側負荷情報として第1側制御部35に向けて出力する。このような反射係数ρ1と負荷側インピーダンスZ1とは、負荷の状態を表す情報である。なお、第1側算出部34は、入力側に、不要な信号成分(例えば高調波成分)を除去するためのフィルタを備えていてもよい。この際、フィルタの方式は適宜選択すればよい。
【0063】
反射係数ρ1は、例えば、反射波電圧検出信号vr1m/進行波電圧検出信号vf1mによって算出できる。また、負荷側インピーダンスZ1は、例えば、電圧検出信号v1/電流検出信号i1によって算出できる。また、負荷側インピーダンスZ1は、例えば、電圧検出信号v1の大きさ、電流検出信号i1の大きさ及び電圧検出信号v1と電流検出信号i1との位相差θに基づいて算出することができる。このような反射係数ρ1と負荷側インピーダンスZ1との算出方法は周知であるので、説明を省略する。
【0064】
また、反射係数ρ1と負荷側インピーダンスZ1とは、相互に変換可能なので、説明を簡略化するために、以下では、第1側算出部34が、反射係数ρ1又は負荷側インピーダンスZ1のいずれかについてだけ説明する場合がある。
また、第2電源ON期間に、第1側センサ32で検出した情報に基づいて算出した反射係数ρ1を反射係数ρ11とし、第2電源ON期間に第1側センサ32で検出した情報に基づいて算出した負荷側インピーダンスZ1を負荷側インピーダンスZ11とする。
また、第2電源OFF期間に、第1側センサ32で検出した情報に基づいて算出した反射係数ρ1を反射係数ρ12とし、第2電源ON期間に第1側センサ32で検出した情報に基づいて算出した負荷側インピーダンスZ1を負荷側インピーダンスZ12とする。
また、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方で、第1側センサ32で検出した情報に基づいて算出した反射係数ρ1を反射係数ρ13とし、第2電源ON期間に第1側センサ32で検出した情報に基づいて算出した負荷側インピーダンスZ1を負荷側インピーダンスZ13とする。
【0065】
第1側制御部35は、第1側算出部34から出力された第1側負荷情報を用いて、反射係数ρ1の絶対値Γ1が目標反射係数絶対値Γ0(通常は0)に近づくように第1側整合回路33内部の可変素子の可変値を制御するための指令信号を出力する。換言すれば、負荷側インピーダンスZ1が第1電源1の出力インピーダンスZ0の複素共役となるように、第1側整合回路33内部の可変素子の可変値を制御するための指令信号を出力する。例えば、第1側整合回路33に備わっている可変素子が可変キャパシタの場合、容量を制御するための指令信号を出力する。より具体的には、例えば、反射係数ρ1の絶対値Γ1が目標反射係数絶対値Γ0に一番近くなると予測される可変キャパシタの容量を算出し、その容量になるように、可変キャパシタを駆動させる駆動回路に指令信号を出力する。
【0066】
第1側制御部35は、このような制御を繰り返し行う。その結果、反射係数ρ1の絶対値Γ1が予め定めた閾値以下になった場合には、第1整合動作が完了したと見なして、第1側通信部31を介して、第1整合動作が完了した旨の完了通知を第1電源1に向けて出力することができる。このような整合動作は、例えば、特許第3183914号公報、特許第4975291号公報、特許第6084417号公報、特許第6177012号公報、特許第6312405号公報、特許第7105185号公報、特許第7105184号公報、特許第7112952号公報、特許第6898338号公報、特許第6773283号公報等に開示された多数の方式があるので、適した制御方式を選択すればよい。
【0067】
第2整合器4は、第2側通信部41、第2側センサ42、第2側整合回路43、第2側算出部44、第2側制御部45及び位相リセット信号生成部46を有する。位相リセット信号生成部46以外は、適用周波数等が異なるが、それぞれ、第1整合器3の第1側通信部31、第1側センサ32、第1側整合回路33、第1側算出部34及び第1側制御部35と同様の機能を有しているので説明を省略する。
【0068】
なお、第2側算出部44は、第1側算出部34と同様に、第2側センサ42から出力された情報(反射波電圧検出信号vr2m及び進行波電圧検出信号vf2m、又は、電圧検出信号v2及び電流検出信号i2)に基づいて、反射係数ρ2又は負荷側インピーダンスZ2を算出し、第2側負荷情報として第2側制御部45に向けて出力する。
【0069】
図3は、位相リセット信号生成部46の構成例である。
図4は、位相リセット信号の生成方法を説明するための図である。
位相リセット信号生成部46は、パルス変換部461と分周処理部462とを備えている。
パルス変換部461は、コンパレータを有しており、コンパレータを用いて第2電源ON期間における正弦波状の進行波電圧検出信号vf2mを矩形信号に変換する。例えば、図4(a)に示すように、進行波電圧検出信号vf2mの振幅が、振幅中心を超えたらHighレベルとし、振幅中心を下回ればLowレベルとすることで、図4(b)に示すように、進行波電圧検出信号vf2mに対応したパルス信号を生成することができる。
【0070】
なお、進行波電圧検出信号vf2mは、例えば、タイミングt0~t1の期間、タイミングt1~t2の期間、・・・、タイミングt7~t8の期間が、それぞれ、第2電源2の基本周期に対応する1周期である。また、タイミングt0~t8の期間及びタイミングt16~t24の期間は、第2電源ON期間であるので、進行波電圧検出信号vf2mを検出できるが、タイミングt8~t16の期間、及びタイミングt24~t32の期間は、第2電源OFF期間なので、進行波電圧検出信号vf2mを検出できない。
【0071】
分周処理部462は、基本周波数F2を有するパルス信号をN分周(Nは2以上の整数)し、F2/Nのパルス周波数を有する位相リセット信号を生成する。第2側算出部44は、生成した位相リセット信号を、第2側通信部41を介して、第1電源1に向けて出力する。
本実施形態では、基本周波数F2が400kHzなので、図4(c)に示すように、N=8の場合、パルス周波数F2/N=400kHz/8=50kHzになる。
この位相リセット信号は、実際の進行波電圧VF2に基づいて生成された信号であるため、進行波電圧VF2に同期した信号となる。
【0072】
<変調信号について>
図5は、変調信号の元となる基本変調信号のイメージ図である。
図5では、横軸が時間、縦軸が周波数である。この図5に示すように、変調信号生成部10は、まず基本周波数F2と同じ周波数を有する正弦波信号を基本変調信号として生成する。この際、後述するように初期位相αが考慮されて、初期位相αだけ時間軸方向に波形がシフトする。なお、周波数偏移を示す振幅は、例えば±1である。これは、この後の工程で、振幅が設定されるとともに、波形が調整されるからである。このような基本変調信号は、例えば、DDS(Direct Digital Synthesizer)によって生成することができる。
【0073】
図6は、変調信号のイメージ図である。
図6では、横軸が時間、縦軸が周波数であり、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間における第1電源1の基本周波数の変化を表している。なお、図6では、変調信号をアナログの波形信号のように表しているが、実際には、デジタルデータとなっており、制御周期毎に周波数情報を示すデータが生成されて出力される。
【0074】
図7は、変調信号と進行波電圧VF1との関係を示す図である。
図7(a)は、第2電源ON期間中の変調信号の1周期の波形であり、図7(b)は、変調信号に対応する期間に第1電源1から出力される進行波電圧VF1の波形を示している。
図6の例では、パルス変調のデューティ比が50%(第2電源ON期間の時間と第2電源OFF期間の時間とが同じ)であり、第2電源ON期間の時間及び第2電源OFF期間の時間がともに20μ秒となっている。すなわち、パルス変調の周波数は、1/40μ秒=25kHzとなっている。なお、変調信号の時間軸に対する周波数は、基本周波数F2と同じ周波数(本実施形態では400kHz)となっている。
【0075】
また、図6の例では、第2電源ON期間における第1電源1の基本周波数F1が40.68MHzであり、周波数偏移が±1.2MHzである場合を例示している。そのため、第2電源ON期間では、基本周波数F1は40.68MHzを中心に、±1.2MHzの範囲で変動している。なお、図6の例では、周波数偏移を±1.2MHzとしているが、これに限定されるものではなく、第1電源1の仕様範囲内で調整可能である。
この周波数偏移を調整することによって、反射係数絶対値Γ1を小さくできる。すなわち、反射波電力値pr1を小さくできる。このように、反射係数絶対値Γ1が小さくなれば、反射波電力値pr1も小さくなるので、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1のいずれかに基づいて制御を行えばよい。
【0076】
また、図6の例では、第2電源ON期間の全てにおいて周波数偏移を±1.2MHzとするのではなく、第2電源ON期間の開始時には周波数偏移を小さくし、時間の経過とともに周波数偏移を徐々に大きくし、最終的に周波数偏移を±1.2MHzにしている。反対に、第2電源ON期間の終了時には周波数偏移を徐々に小さくしている。しかし、これに限定されるわけではなく、例えば、第2電源ON期間の全てにおいて周波数偏移を±1.2MHzにしてもよい。このように、周波数偏移の設定は、状況に応じて設定することが可能である。
【0077】
また、図7の例では、変調信号の1周期の開始時の位相(以下、初期位相αという)が0度である場合に、変調信号に対応する期間に第1電源1から出力される進行波電圧VF1の波形を示している。図7のような対応関係がある場合、変調信号の1周期の0度での進行波電圧VF1の周波数が高く、変調信号の1周期の180度での進行波電圧VF1の周波数が低く、変調信号の1周期の360度での進行波電圧VF1の周波数が高い。
しかし、初期位相αの値を変更することにより、時間軸方向に波形をシフトできるので、対応関係を変更することができる。例えば、初期位相αを180度に設定すると、変調信号の1周期の0度での進行波電圧VF1の周波数が低く、変調信号の1周期の180度での進行波電圧VF1の周波数が高く、変調信号の1周期の360度での進行波電圧VF1の周波数が低いという対応関係に変更することができる。実際には、図5で説明した基本変調信号を生成する段階で初期位相αが用いられて、時間軸方向に波形がシフトする。
そして、この初期位相αを調整することによっても、反射係数絶対値Γ1を小さくできる。
【0078】
すなわち、第2電源ON期間では初期位相α及び周波数偏移を調整することによって、反射係数絶対値Γ1を小さくできる。そのため、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1に基づいて、初期位相αの最適値と周波数偏移の最適値とを探索する変調パラメータ探索工程を設けている。そして、この変調パラメータ探索工程で得られた初期位相αの最適値と周波数偏移の最適値とを用いて、第2電源ON期間において周波数変調制御が行われる。
【0079】
上記の変調パラメータ探索工程については、例えば、特許文献4(特開2022-102688号公報)に示されているように、初期位相α(特許文献4では、「変調開始位相θ」)を0~360度の範囲で変化させたときに、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1が一番小さくなる初期位相αを探索すればよい。すなわち初期位相αの最適値を探索すればよい。以降、このような工程を初期位相探索工程という。
また、周波数偏移(特許文献4では、「変調量ゲインA」)を変化させたときに、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1が一番小さくなる周波数偏移を探索すればよい。すなわち、周波数偏移の最適値を探索すればよい。以降、このような工程を周波数偏移探索工程又は周波数偏移ゲイン探索工程という。
【0080】
一方、第2電源OFF期間では、第1電源1の基本周波数が40.12MHz一定になっている。この40.12MHzは、基本周波数F1である40.68MHzにオフセット周波数の-0.5MHzを加算した周波数(基本周波数F3の一例)である。上記のように、第2電源OFF期間ではIMDが発生しないので、第2電源ON期間のような周波数変調制御を行わない代わりに、周波数オフセット制御を行い、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1を小さくさせている。図6の例では、オフセット周波数の-0.5MHzとしたが、最適なオフセット周波数は状況によって異なるため、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1に基づいてオフセット周波数の最適値を探索するオフセット周波数探索工程を設けている。そして、このオフセット周波数探索工程で得られたオフセット周波数の最適値を用いて、周波数オフセット制御が行われる。
【0081】
なお、変調パラメータ探索工程及びオフセット周波数探索工程において、反射波電力値pr1を用いる場合は、反射係数絶対値算出部17は不要となり、電力情報算出部16から出力された反射波電力値pr1が変調信号生成部10に入力されることになる。
【0082】
次に、図8を用いて変調信号生成部10の構成等について説明する。
図8は、変調信号生成部10の構成例を示す図である。
図8に示すように、変調信号生成部10は、基本変調信号生成部102、周波数情報出力部103、初期位相出力部104、周波数偏移ゲイン出力部105、乗算部106、オフセット周波数出力部110及び第2電源OFF期間波形調整部120を備えている。変調信号生成部10にも、クロック信号が入力されており、クロック信号に基づいて制御周期毎に処理が実行される。
【0083】
基本変調信号生成部102は、変調信号の基本波である基本変調信号を生成する電子回路である。この基本変調信号生成部102は、例えば、DDS(Direct Digital Synthesizer)を用いることができ、クロック信号、位相リセット信号、周波数情報、及び初期位相αが入力される。これにより、基本変調信号生成部102は、制御周期毎に、所望の正弦波信号を基本変調信号として出力する。
【0084】
周波数情報は、基本変調信号の周波数を示す情報である。基本変調信号の周波数は、進行波電圧VF2の基本周波数F2と同じ周波数である。本実施形態の場合、基本変調信号の周波数は400kHzである。また、位相リセット信号は、第2整合器4から出力される。
基本変調信号生成部102は、位相リセット信号が入力されたタイミングで、基本変調信号の初期位相を初期位相出力部104から出力された初期位相αにリセットし、周波数情報が示す周波数(400kHz)の正弦波信号を基本変調信号(図5参照)として出力する。
【0085】
なお、基本変調信号生成部102から出力される基本変調信号の位相間隔は、第1電源1の制御周期によって異なる。例えば、第1電源1が100MHzの制御周期で動作していれば、250分割(100MHz/400kHz)されるので、1.44度(360度/250)の位相間隔毎の周波数情報が制御周期毎に出力される。第1電源1が500MHzの制御周期で動作していれば、1250分割(500MHz/400kHz)されるので、0.288度(360度/1250)の位相間隔毎の周波数情報が制御周期毎に出力される。制御周期は、図示しないシステムクロックから出力されるクロック信号に基づいて設定される。
【0086】
<位相リセット信号の目的>
第1電源1と第2電源2とは別の機器であるため、別のクロック信号に基づいて制御周期が定まっている。別のクロック信号では、僅かであるがクロック信号の周期時間が異なるので、第1電源1が認識する時間と第2電源2が認識する時間とにズレが生じる。そのため、処理を実行する毎に、第1電源1が認識する時間と第2電源2が認識する時間とのズレが蓄積し、増大していく。このズレは、大きくなりすぎないうちに解消するのが好ましい。
具体的には、クロック信号の相違によって、第1電源1が認識する第2電源ON期間の開始タイミングからの経過時間と、第2電源2が認識する第2電源ON期間の開始タイミングからの経過時間とにズレが生じていく。そうなると、精度のよい制御ができなくなる。
そこで、所定のタイミングで位相リセット信号を第1電源1の基本変調信号生成部102に入力することによって、上記のズレの解消を図っている。
【0087】
位相リセット信号は、上述したように、第2整合器4で検出された進行波電圧VF2の検出信号に基づいて生成されているので、上記のようなズレの蓄積が生じない。したがって、第2整合器4で検出された進行波電圧VF2の検出信号に基づいて生成した位相リセット信号を用いると、精度のよい制御を行うことができ、周波数変調制御を行った際の反射波電力の低減効果を高めることができる。
基本変調信号生成部102は、少なくとも第2電源ON期間の開始タイミングに、位相リセット信号を入力し、ズレの解消を図るのが好ましい。
【0088】
初期位相出力部104は、基本変調信号における変調を開始すべき初期位相αが設定されており、この初期位相αを基本変調信号生成部102に向けて出力する。なお、初期位相αは、基準位相(例えば0度)からの位相差である。
また、初期位相出力部104は、初期位相探索指令が入力されたときに、初期位相探索工程を実行する。この初期位相探索工程によって探索した初期位相αの最適値を新たな初期位相αとして設定する。
初期位相出力部104は、初期位相探索工程を実行するために、反射係数絶対値Γ1に関する情報又は反射波電力値pr1に関する情報を入力する。そして、初期位相αを順次変更していき、反射係数絶対値Γ1に関する情報又は反射波電力値pr1が一番小さい初期位相αを選定する。
【0089】
周波数偏移ゲイン出力部105は、基本変調信号の周波数偏移を増減させるための周波数偏移ゲインが設定されており、設定された周波数偏移ゲインが乗算部106に向けて出力される。
周波数偏移は、第1電源1の基本周波数F1の周波数変調における周波数変化の幅であり、第1電源1の仕様に基づいて設定範囲が定められる。
例えば、第1電源1の周波数偏移の仕様が、基本周波数F1に対して最大±1.2MHzであれば、後述する乗算部106での処理結果が、上記範囲内になるように周波数偏移ゲインが設定される。本実施形態では、図5に例示したように、基本変調信号の周波数偏移が±1MHzに設定されているので、この±1MHzに対する倍率で周波数偏移ゲインを設定する。例えば、第1電源1の基本周波数F1の周波数変調範囲を±1.2MHzに設定する場合は、周波数偏移ゲインを1.2に設定すればよい。
【0090】
また、周波数偏移ゲイン出力部105は、周波数偏移ゲイン探索指令が入力されたときに、周波数偏移ゲイン探索工程を実行する。この周波数偏移ゲイン探索工程によって探索した周波数偏移ゲインの最適値を新たな周波数偏移ゲインとして設定する。
周波数偏移ゲイン出力部105は、周波数偏移ゲイン探索工程を実行するために、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1を入力する。そして、初期位相αを順次変更していき、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1が一番小さい周波数偏移ゲインを選定する。
【0091】
【0092】
乗算部106は、制御周期毎に、基本変調信号が示す周波数情報と周波数偏移ゲインとを乗算し、その乗算結果を制御周期毎に調整変調信号として第2電源ON期間波形調整部120に向けて出力する。この乗算部106での処理によって、第1電源1の基本周波数F1の周波数偏移が定まる。
【0093】
オフセット周波数出力部110は、第2電源OFF期間における周波数情報をオフセットさせるためのオフセット周波数の情報が設定されている。このオフセット周波数の情報は、第2電源OFF期間波形調整部120に向けて出力される。本実施形態では、図6に例示したように、オフセット周波数が-0.5MHzに設定されている。
【0094】
また、オフセット周波数出力部110は、オフセット周波数探索指令が入力されたときに、オフセット周波数探索工程を実行する。このオフセット周波数探索工程によって探索したオフセット周波数の最適値を新たなオフセット周波数として設定する。
オフセット周波数出力部110は、オフセット周波数探索工程を実行するために、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1を入力する。そして、オフセット周波数を順次変更していき、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1が一番小さいオフセット周波数を選定する。
【0095】
第2電源OFF期間波形調整部120は、制御周期毎に、調整変調信号が示す周波数情報、同期パルス信号及びオフセット周波数出力部110から出力されたオフセット周波数の情報を入力する。調整変調信号は、図5に示す基本変調信号に対して初期位相αと周波数偏移とを適用した信号であるが、第2電源ON期間と第2電源OFF期間との区別がなく、またオフセット周波数が適用されていない。そこで、同期パルス信号とオフセット周波数の情報とを用いて、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とを区別するとともに、オフセット周波数を適用させる。これにより、図6に示した変調信号を生成することができる。
【0096】
<フローチャート>
以下、第1電源1の周波数変調制御及び周波数オフセット制御について、フローチャートを用いて更に説明する。
【0097】
図9図12は、周波数変調制御及び周波数オフセット制御を行う際のフローチャートの一例である。なお、図9図12は、一連の工程を4つに分けて図示している。また、各図では左側から順に、第2電源2、第2整合器4、第1整合器3、第1電源1の順番で、上から下に向かって工程が示されている。また、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とは同じ時間であるとする。
【0098】
ステップS1では、第1電源1、第2電源2、第1整合器3及び第2整合器4は、それぞれ初期値で待機している。
【0099】
ステップS2では、第1電源1から負荷に進行波電力PF1の供給を開始するとともに、第2電源2から進行波電力PF2を負荷に供給開始する。この電力供給は、その後も継続される。これにより、第1整合器3で第1整合動作が開始され、第2整合器4で第2整合動作が開始される。この際、第1整合器3では、第2電源ON期間と第2電源OFF期間の両方における負荷側インピーダンスZ13又は反射係数ρ13に基づいて第1整合動作を行う。すなわち、加重平均による整合動作が行われる。
【0100】
第1整合器3及び第2整合器4は、それぞれで整合動作を行い、最大限に反射波電力を低減させようとする。その結果、ステップS3に示すように、それぞれの整合動作が完了する。
図13(a)は、ステップS3完了時点での負荷側インピーダンスZ1又は反射係数ρ1の軌跡80及びその中心81の一例をスミスチャート上に示したものである。この例に示すように、負荷側インピーダンスZ1又は反射係数ρ1は、ある程度の範囲で変動する。そのため、負荷側インピーダンスZ1の軌跡80の中心81を代表値として考え、中心81がスミスチャートの中心に近づくように制御される。
また、図13(a)に示すように、この段階では負荷側インピーダンスZ13又は反射係数ρ13の変動範囲が広く、且つ、軌跡80の中心81はスミスチャートの中心から離れている。
【0101】
第2電源2は、予め定められた周期で、進行波電圧VF2を出力するON動作と進行波電圧VF2を出力しないOFF動作とを繰り返すパルス変調を行うように構成されているので、第2電源ON期間ではIMDが発生し、第1電源1側での反射波電力PR1が大きくなる。
【0102】
そのため、ステップS4に示すように、第1整合器3はIMD状態を検出する。これにより、ステップS5に示すように、第1整合器3は第1整合動作を開始する。この際、第1整合器3は、第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11に基づいて第1整合動作を行う。
第1整合器3は、最大限に反射波電力を低減させたようとする。その結果、ステップS6に示すように、整合動作が完了する。このとき、図13(b)に示すように、負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の変動範囲が広いが、軌跡80の中心81は、スミスチャートの中心付近に移動する。
【0103】
しかし、この時点では、周波数変調制御が行われておらず、且つ、初期位相α、周波数偏移(周波数偏移ゲインで設定)及びオフセット周波数が適切でない。そのため、これらのパラメータの最適値を求めるために、変調パラメータ探索工程及びオフセット周波数探索工程を実行する。なお、変調パラメータ探索工程は、初期位相探索工程と周波数偏移ゲイン探索工程とを含んでいる。
【0104】
ステップS7に示すように、第1整合器3における第1整合動作を停止する。これにより、第1整合器3は、前記可変素子の可変値を変更することなく維持する。また、ステップS8に示すように、周波数変調の開始を決定する。
その後、ステップS9に示すように、第1整合器3は、第1電源1に対して初期位相探索工程の開始を指令する。
【0105】
ステップS10に示すように、第1電源1はこの指令を受信した後、ステップS11に示すように、初期位相αの最適値を探索する動作を行う。この際、第1電源1は、第2電源ON期間における反射係数絶対値Γ11又は反射波電力値pr11に基づいて初期位相探索工程を実行する。
【0106】
ステップS12に示すように、初期位相αの最適値の探索が完了すると、第1電源1は、初期位相αの最適値を新たな初期位相αとして設定する。それとともに、第1電源1は、第1整合器3に対して初期位相探索工程が完了したことを通知する。
このとき、図14(a)に示すように、負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心81は、スミスチャートの中心から離れる。
【0107】
ステップS13に示すように、第1整合器3が完了通知を受信すると、ステップS14に示すように、第1整合器3は第1整合動作を開始する。この際、第1整合器3は、第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11に基づいて第1整合動作を行う。
第1整合器3は、最大限に反射波電力を低減させたようとする。その結果、ステップS15に示すように、整合動作が完了する。このとき、図14(b)に示すように、負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心81は、スミスチャートの中心付近に移動する。
【0108】
次に、ステップS16に示すように、第1整合器3における第1整合動作を停止する。これにより、第1整合器3は、前記可変素子の可変値を変更することなく維持する。その後、ステップS17に示すように、第1整合器3は、第1電源1に対して周波数偏移ゲイン探索工程の開始を指令する。
【0109】
ステップS18に示すように、第1電源1はこの指令を受信した後、ステップS19に示すように、周波数偏移ゲインの最適値を探索する動作を行う。この際、第1電源1は、第2電源ON期間における反射係数絶対値Γ11又は反射波電力値pr11に基づいて周波数偏移ゲイン探索工程を実行する。
【0110】
ステップS20に示すように、周波数偏移ゲインの最適値の探索が完了すると、第1電源1は、周波数偏移ゲインの最適値を新たな周波数偏移ゲインとして設定する。それとともに、第1電源1は、第1整合器3に対して周波数偏移ゲイン探索工程が完了したことを通知する。このとき、図15(a)に示すように、負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心81は、スミスチャートの中心から離れるが、負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の変動範囲は狭くなっている。
【0111】
ステップS21に示すように、第1整合器3が完了通知を受信すると、ステップS22に示すように、第1整合器3は第1整合動作を開始する。この際、第1整合器3は、第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11に基づいて第1整合動作を行う。第1整合器3は、最大限に反射波電力を低減させたようとする。その結果、ステップS23に示すように、整合動作が完了する。このとき、図15(b)に示すように、負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心81は、スミスチャートの中心付近に移動する。
【0112】
次に、ステップS24に示すように、第1整合器3における第1整合動作を停止する。これにより、第1整合器3は、前記可変素子の可変値を変更することなく維持する。その後、ステップS25に示すように、第1整合器3は、第1電源1に対してオフセット周波数探索工程の開始を指令する。
【0113】
ステップS26に示すように、第1電源1はこの指令を受信した後、ステップS27に示すように、オフセット周波数の最適値を探索する動作を行う。この際、第1電源1は、第2電源OFF期間における反射係数絶対値Γ12又は反射波電力値pr12に基づいてオフセット周波数探索工程を実行する。
【0114】
ステップS28に示すように、オフセット周波数の最適値の探索が完了すると、第1電源1は、オフセット周波数の最適値を新たなオフセット周波数として設定する。それとともに、第1電源1は、第1整合器3に対してオフセット周波数探索工程が完了したことを通知する。なお、第1電源1は、負荷に対する進行波電力PF1の供給を継続する。
【0115】
ステップS29に示すように、第1整合器3が完了通知を受信すると、ステップS30に示すように、第1整合器3は第1整合動作を開始する。この際、第1整合器3では、第2電源ON期間と第2電源OFF期間の両方における負荷側インピーダンスZ13又は反射係数ρ13に基づいて第1整合動作を行う。すなわち、加重平均による整合動作を行う。
【0116】
第1整合器3は、最大限に反射波電力を低減させたようとする。その結果、ステップS31に示すように、整合動作が完了する。なお、第1整合器3は、第1整合動作を継続し、負荷側インピーダンスZ13又は反射係数ρ13から算出できる反射係数絶対値が予め定めた閾値よりも大きくなった場合に、反射波電力を低減させる動作を行う。
【0117】
なお、第1整合器3は、第2電源OFF期間では、第2電源ON期間における第1整合動作によって調整された可変素子の可変値を変更することなく維持するのが好ましい。このようにすれば、周波数オフセット制御を安定して行うことができる。
【0118】
ここで、上記のオフセット周波数探索工程について更に説明する。
図16は、オフセット周波数探索工程を説明するための図である。
オフセット周波数探索工程が開始された時点で、第2電源OFF期間において第1電源1から進行波電圧VF1を出力すると、負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12は、例えば、図16の「F1」に示すようになる。しかし、これでは反射係数ρ12の大きさが大きいので、オフセット周波数探索工程を実行して、負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12がスミスチャートの中心に一番近くなるオフセット周波数を探索する。
【0119】
図16において、f1、f2、f3、f4及びf5はオフセット周波数の候補の一例である。また、F1、F1+f1、F1+f2、F1+f3、F1+f4及びF1+f5は、基本周波数F1にオフセット周波数の候補を加算した基本周波数F3を示している。なお、図16におけるF1は、オフセット周波数がない場合(0MHzの場合)の基本周波数F3となる。
【0120】
このような条件で、第2電源OFF期間において、基本周波数F3として、F1、F1+f1、F1+f2、F1+f3、F1+f4及びF1+f5を順次設定する。そして、第1電源1から基本周波数F3を有する進行波電圧VF3を出力すると、基本周波数F3の変化にともない第2電源OFF期間における負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12は、図16に示すように変化していく。
【0121】
図16に示した例では、基本周波数F3がF1+f2のとき、すなわち、オフセット周波数がf2のときの負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12がスミスチャートの中心に一番近い。そのため、f2をオフセット周波数として採用すればよい。
【0122】
ここで、オフセット周波数探索工程の趣旨を説明する。
オフセット周波数探索工程の目的は、第2電源OFF期間における反射波電力を低減させるためのオフセット周波数を探索することであるが、第2電源OFF期間だけで考えるのではなく、第2電源ON期間との関係も考慮する必要がある。
具体的には、周波数変調パラメータ探索工程及びオフセット周波数探索工程の完了後には、これらの工程で定めた初期位相α、周波数偏移(周波数偏移ゲイン)及びオフセット周波数を用いた処理がされる。この際、ステップS30に示すように、第1整合器3は、加重平均による整合動作を行う。そのため、第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11と、第2電源OFF期間における負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12との差異が小さい方が望ましい。
【0123】
本実施形態の場合、図16に示した軌跡80の中心81に対応する負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11と、基本周波数F3がF1+f2のときの負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12との差異が小さい方が望ましい。
このような趣旨からすると、本来であれば、第1電源1において、負荷側インピーダンスZ1又は反射係数ρ1を算出する必要がある。すなわち、第1電源1用センサ15は、第1整合器3の第1側センサ32と同様の構成にし、且つ、電力情報算出部16は、第1整合器3の第1側算出部34と同様の算出機能を備える必要が生じる。そうなると、第1電源1の構成を変更する必要があるだけでなく、演算負荷が大きくなる。
【0124】
これに対して本実施形態では、反射係数絶対値Γ1又は反射波電力値pr1を算出できればよい。具体的には、第2電源OFF期間には、反射係数絶対値Γ11又は反射波電力値pr11を算出し、第2電源OFF期間には、反射係数絶対値Γ12又は反射波電力値pr12を算出できればよい。
なぜならば、図14に示すように、ステップS23完了時点での第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心81は、スミスチャートの中心付近に位置するからである。
【0125】
そのため、第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11がスミスチャートの中心であると仮定したとしても誤差は小さい。そのため、第2電源OFF期間に、反射係数絶対値Γ12又は反射波電力値pr12しか算出しなくても、上記の趣旨に沿った処理を行うことができる。なぜならば、その反射係数絶対値Γ12は、第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11と、第2電源OFF期間における負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12との差異に相当するからである。そして、反射係数絶対値Γ12が小さい程、上記の差異が小さいことを意味するので、反射係数絶対値Γ12が最小となるオフセット周波数を探索すればよい。
反射波電力値pr12についても、同様の考えができ、反射波電力値pr12が小さい程、上記の差異が小さいことを意味するので、反射波電力値pr12が最小となるオフセット周波数を探索すればよい。
【0126】
もちろん、ステップS23完了時点での第2電源ON期間における負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心81が、スミスチャートの中心付近からずれると、そのずれ量に応じて、周波数オフセット制御の精度が低下していく。しかし、軌跡80の中心81は、通常は許容範囲(例えば、Γ<0.03)に収まるので、実用上は問題とならない。
【0127】
図17は、オフセット周波数探索工程の完了後に、第1整合動作を実行したときの負荷インピーダンスの一例である。
図17において「●」は負荷側インピーダンスZ11又は反射係数ρ11の軌跡80の中心であり、「■」は負荷側インピーダンスZ12又は反射係数ρ12であり、「▲」は負荷側インピーダンスZ13又は反射係数ρ13である。
なお、この時点では、初期位相α、周波数偏移ゲイン及びオフセット周波数の最適値が適用されているので、第2電源ON期間では周波数変調制御が精度良く行われ、第2電源OFF期間では周波数オフセット制御が精度よく行われる。
また、この段階では加重平均による整合動作が行われる。本実施形態では、第2電源ON期間と第2電源OFF期間とは同じ時間であるので、図17に示した負荷側インピーダンスZ13を示す「▲」がスミスチャートの中心位置になるように制御される。
【0128】
以上のように周波数変調制御に必要な初期位相α及び周波数偏移ゲイン、オフセット周波数制御に必要なオフセット周波数の最適値を取得し、これらのパラメータを適用することによって、反射波電力を最大限低減させることができる。
【0129】
本実施形態の高周波電力供給システム90によれば、例えば、周波数変調制御によって、第2電源2がON動作を行う第2電源ON期間における第1電源1側の反射波電力の電力値を小さくできる。すなわち、第1電源1側の反射係数の絶対値を小さくできる。また、第2電源2がOFF動作を行う第2電源OFF期間では、第1進行波電圧を出力するので、周波数変調制御による悪影響がない。そのため、第2電源ON期間及び第2電源OFF期間の両方の期間において第1電源1側の反射波電力の電力値を小さくできる。すなわち、第1電源1側の反射係数の絶対値を小さくできる。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0131】
1 第1電源
11 第1電源1用通信部
10 変調信号生成部
12 被変調信号生成部
13 振幅調整部
14 増幅部
15 第1電源1用センサ
16 電力情報算出部
17 反射係数絶対値算出部
18 目標電力設定部
19 減算部
20 電力制御部
2 第2電源
3 第1整合器
31 第1側通信部
32 第1側センサ
33 第1側整合回路
34 第1側算出部
35 第1側制御部
4 第2整合器
41 第2側通信部
42 第2側センサ
43 第2側整合回路
44 第2側算出部
45 第2側制御部
46 位相リセット信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
図16
図17