(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095375
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置、及び射出成形機の管理装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212637
(22)【出願日】2022-12-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水梨 琢也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM20
4F206AM22
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JM00
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP28
4F206JP30
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】射出成形を行うためのユーザの負担を低減する。
【解決手段】一実施形態に係る射出成形機の制御装置は、学習済みモデルを再現するための変数情報を取得するように構成されている取得部と、取得された変数情報で、学習済みモデルを生成又は更新するように構成されている制御部と、学習済みモデルを用いて、射出成形に関する推論を実行するように構成されている推論部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習済みモデルを再現するための変数情報を取得するように構成されている取得部と、
取得された前記変数情報で、前記学習済みモデルを生成又は更新するように構成されている制御部と、
前記学習済みモデルを用いて、射出成形に関する推論を実行するように構成されている推論部と、
を備える射出成形機の制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記変数情報として、前記学習済みモデルの重みとバイアスとを含むパラメータ情報を取得し、
前記制御部は、取得した前記パラメータ情報で、前記学習済みモデルを更新し、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記変数情報として、前記学習済みモデルのネットワーク構造を示したハイパーパラメータ情報を取得し、
前記制御部は、取得した前記ハイパーパラメータ情報に基づいて、前記学習済みモデルを生成する、
請求項1に記載の射出成形機の制御装置。
【請求項4】
生成又は更新された前記学習済みモデルを再現するための前記変数情報を出力する出力部を、さらに備える、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の射出成形機の制御装置。
【請求項5】
学習済みモデルを再現するための変数情報を取得する取得部と、
取得された前記変数情報で、前記学習済みモデルを生成又は更新する制御部と、
前記学習済みモデルを用いて、射出成形に関する推論を実行するように構成されている推論部と、
射出成形機の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の制御装置、及び射出成形機の管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、射出成形機において、成形品を生成するためには、射出成形のために設定を行う必要がある。当該設定を行うためには、当該設定で製造された成形品を確認して、設定を再調整することを繰り返して、適切な設定を導き出していた。このため、当該設定には、職人が時間と労力を要して行う必要がある。
【0003】
近年、コンピュータの処理能力の向上に伴い、人工知能が発展する傾向にある。例えば、特許文献1には、成形品の品質に基づいて射出成形の設定を決定するために機械学習を用いる技術が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、学習済みモデルの生成と、学習済みモデルを用いた推論と、を一つの機器で行う技術である。射出成形機に当該技術を適用する場合、射出成形機で成形品の生産を行いながら学習させることになる。この場合、学習済みモデルが学習するために十分なショット数のデータを得ることが難しい。
【0005】
十分な教師データで機械学習を行った学習済みモデルを生成するために、射出成形機の制御装置と別の学習装置を設けることが考えられる。つまり、学習装置が、十分な教師データを用いて学習済みモデルを生成し、当該学習済みモデルを用いた推論装置(例えば、射出成形機の制御装置)に搭載する手法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、学習装置と、推論装置(例えば、射出成形機の制御装置)との間で、例えばCPU、OS、開発言語等が異なる場合には、学習装置で生成された学習済みモデルと、推論装置が実行可能な学習済みモデルと、の間に互換性がないことがあるという問題がある。つまり、学習装置で生成した学習済みモデルを、構成が異なる機器である推論機器(例えば、射出成形機の制御装置)に搭載するのは難しい。
【0008】
本発明の一態様は、学習装置で生成された学習済みモデルを、学習装置と互換性のない機器で利用可能とすることで、射出成形を行うためのユーザの負担を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る射出成形機の制御装置は、学習済みモデルを再現するための変数情報を取得するように構成されている取得部と、取得された変数情報で、学習済みモデルを生成又は更新するように構成されている制御部と、学習済みモデルを用いて、射出成形に関する推論を実行するように構成されている推論部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、射出成形を行うためのユーザの負担を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る学習装置及び射出成形機の制御装置による学習済みモデルに関する連携を示した概念図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る学習装置及び制御装置で用いられる学習済みモデルの構造を例示した図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る学習装置及び制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るパラメータ抽出部が抽出する、パラメータの構造体を例示した図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る学習装置及び制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る学習装置が、制御装置にハイパーパラメータ情報を送信する概念を示した情報である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るパラメータ情報とハイパーパラメータ情報の一例を示した図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る学習装置、群管理装置及び射出成形機の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0014】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0015】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0016】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0017】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0018】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0019】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0020】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0021】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0022】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0023】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0024】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0025】
なお、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0026】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0027】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0028】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0029】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0030】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0031】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0032】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0033】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0034】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0035】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0036】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0037】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0038】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0039】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0040】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0041】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0042】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0043】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0044】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0045】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0046】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0047】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0048】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0049】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0050】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0051】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0052】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0053】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0054】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0055】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0056】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、シリンダ310内で計量された成形材料を、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0057】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0058】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0059】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0060】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0061】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0063】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0064】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0065】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0066】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0067】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0068】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0069】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0070】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサ831、832は、金型装置800の内部に設置される。
【0071】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0072】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0073】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0074】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0075】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0076】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0077】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0078】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0079】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0080】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0081】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0082】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0083】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0084】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0085】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0086】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0087】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0088】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0089】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0090】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0091】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704と、通信インターフェース705とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0092】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し生産する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0093】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0094】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0095】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0096】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0097】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0098】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。タッチパネル770は、表示された画面領域に操作を受け付け可能とする。また、タッチパネル770の画面領域には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0099】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0100】
(第1の実施形態)
射出成形機で成形する際に、学習済みモデルを用いて設定を行いたいという要望がある。その際に、学習済みモデルを生成するための学習フェーズを様々な状況で行いたいという要望が生じると考えられる。例えば、出荷後に行いたいという要望が生じると考えられる。
【0101】
射出成形機の出荷先で機械学習の学習フェーズを行う際に、射出成形機上で学習処理を行うことも考えられる。射出成形機の処理装置に高い処理能力が要求されるため、従来と比べてコストが大きくなるという問題がある。
【0102】
このため、学習処理を、射出成形機と異なる処理システムで行うことが考えられる。しかしながら、射出成形機の出荷先で、学習フェーズを実施することは、出荷先の担当者が、学習に用いられる教師データを生成するために必要なデータをどのような手順で収集したらよいかを認識している必要がある。当該担当者が、適切な収集の手順を設定した上で、射出成形機で成形の工程にデータ収取を含める必要がある。さらに、学習済みモデルを生成するためには、大量のデータが必要となる。このため、知識や時間を考慮すると、幅広いユーザが行えるようにするのは難しい。また、出荷先に対して、学習に必要なデータを収集するために支援ツールを提供することが考えられる。しかしながら、現段階において、当該支援ツールの開発は難しい。
【0103】
そこで、出荷先では、射出成形機が推論処理のみを行い、教師データの収集と、学習済みモデルの生成と、を出荷先と異なる人が行う方式が考えられる。当該方式としては、射出成形機の生産者が、射出成形機を出荷する前に、必要なデータを収集して学習を行った学習済みモデルを生成し、射出成形機に事前に組み込む方法も含まれる。なお、射出成形機の生産者が、出荷先に出張してデータを収集して学習済みモデルを生成するのは、学習済みモデルを生成するために必要なデータの量を考慮すると、作業時間的に難しい。
【0104】
データの収集及び学習済みモデルの生成を、出荷先と異なる人が行う場合に、学習フェーズと推論フェーズとでは、例えばCPU、OS、開発言語等のシステム環境が異なると考えられる。一般的には、射出成形機の制御装置は、射出成形機の制御に好適な構成を採用しているため、学習フェーズに好適な情報処理装置で採用されているシステムとは異なる可能性がある。つまり、情報処理装置が学習フェーズで生成する学習済みモデルと、推論フェーズを行う射出成形機の制御装置が推論フェーズで実行可能な学習済みモデルと、では、CPU、OS等の違いによるバイナリレベル、及び、サポートされる言語・ライブラリの違いによるソースレベル、のうちいずれか一つ以上で異なる可能性が高い。
【0105】
そこで、本実施形態においては、学習フェーズと推論フェーズとの間で異なるシステム環境である場合でも、学習フェーズで作成した学習済みモデルを、射出成形機上で再現できる方法を提案する。当該方法を実現するための構成について説明する。
【0106】
図3は、本実施形態に係る学習装置及び射出成形機の制御装置による学習済みモデルに関する連携を示した概念図である。
【0107】
図3で示される例では、テスト用射出成形機1350と、学習装置1300と、射出成形機10の制御装置700と、を示している。
【0108】
図3に示される例では、テスト用射出成形機1350と、学習装置1300と、を、例えば、射出成形機10の生産者が所有することが考えられるが、射出成形機の生産者が所有する手法に制限するものではなく、例えば、出荷後に、学習済みモデルを生成するサービス事業者が所有してもよい。
図3に示される射出成形機10及び制御装置700は、例えば出荷前の状況を示してもよい。
【0109】
テスト用射出成形機1350は、機械学習を行うための射出成形機とする。テスト用射出成形機1350の構成は、射出成形機10と同様として説明を省略する。
【0110】
本実施形態に係るテスト用射出成形機1350は、オペレータによる設定に従って、成形品を生産する。そして、テスト用射出成形機1350は、射出成形を行っている間に計測された波形データと、成形品に関する測定データと、を学習装置1300に出力する。波形データ及び測定データは、機械学習を行うために利用される情報とする。
【0111】
学習装置1300は、入力された波形データ及び測定データに基づいて教師データを生成し、教師データ記憶部1321に格納する。
【0112】
ところで、人工知能を活用するためには、学習(training)フェーズと、推論(inference)フェーズと、を実行する必要がある。
【0113】
学習装置1300は、学習フェーズを実行する。このために、学習装置1300の学習部1313は、教師データ記憶部1321に記憶された教師データをニューラルネットワークに読み込ませ、シナプスの重みづけ及びバイアスを調整したネットワークを、学習済みモデルLMとして生成する。
【0114】
学習装置1300は、例えば、工場等に設置されるオンプレミスサーバであってもよいし、クラウドサーバであってよい。さらには、学習装置1300は、工場等に配置される定置型の端末装置、又は可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。定置型の端末装置には、例えば、デスクトップ型のPC(Personal Computer)が含まれてよい。また、携帯型の端末装置には、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC等が含まれてよい。
【0115】
射出成形機10の制御装置700は、推論フェーズを実行する。このため、制御装置700の推論部714は、学習済みモデルLM'にデータを入力した場合に、学習済みモデルLM'からの出力結果に基づいて制御を行う。
【0116】
ところで、学習装置1300と、制御装置700とは、例えばCPU、OS、開発言語等が異なる。
【0117】
本実施形態では、学習装置1300の学習部1313は、第1言語(例えばPython)を用いて実装されている。一方、制御装置700の推論部714は、第2言語(例えばC++)を用いて実装されている。
【0118】
例えば、学習装置1300は、大量の教師データを読み込ませて、ニューラルネットワークを用いたバックプロパゲーションによる学習を行うので、処理速度が速いCPUが望ましい。また、学習装置1300の学習部1313では、開発言語として、一般的に用いられるPython(第1言語の一例)で実装される傾向にある。
【0119】
一方、制御装置700は、学習済みモデルLM'にデータを入力して、学習済みモデルLM'からの出力結果に基づいて制御を行う。このような制御では、学習装置1300と比べて処理速度は低くてよい。推論部714は、射出成形機10の制御装置700に搭載するために、C++(第2言語の例)で実装される傾向にある。
【0120】
仮に、制御装置の推論部が、学習装置の学習部と同等の手段を実装する場合には、制御装置が、学習装置と同様の処理性能を有するハードウェア等を搭載することが要求されるのでコストが増加する。
【0121】
そこで、本実施形態では、学習装置1300の学習部1313が生成する学習済みモデルLMと、制御装置700の推論部714が利用する学習済みモデルLM'と、の構造を共通化した。そして、学習装置1300は、制御装置700に学習済みモデルLMの重み及びバイアスを受け渡す。学習済みモデルLM'の重み、バイアスを更新することで、学習済みモデルLM'の重み、バイアス及び構造を、学習済みモデルLMと一致させる。
【0122】
そこで、学習装置1300のパラメータ抽出部1314が、学習済みモデルLMの重み及びバイアスを抽出し、重み及びバイアスの構造情報(以下、パラメータ構造情報とも称する)を生成する。
【0123】
重み及びバイアスの構造情報(パラメータ構造情報)は、例えば、学習済みモデルLMに含まれる各重みの値と、学習済みモデルLMに含まれる各バイアスの値と、学習済みモデルLMにおいて重み及びバイアスを収容する位置を示したパラメータ構造情報と、が含まれている。パラメータ構造情報は、例えば、多次元配列の次元毎に、重み及びバイアスの個数を含んでいる。
【0124】
なお、重み及びバイアスの構造情報は、各重みの値、各バイアスの値、及びパラメータ構造情報を含んでいればよく、例えば、各重みの値、各バイアスの値、をデータ構造に従って所定の手法(例えばJSON(JavaScript Object Notation)、XML(Extensible Markup Language)、ONNX(Open Neural Network Exchange)等)で記述したオブジェクトであってもよい。
【0125】
そして、学習装置1300から射出成形機10に重み及びバイアスの構造情報が受け渡される。
【0126】
射出成形機10には、既に学習済みモデルLM'が搭載されている。学習済みモデルLM'は、一般的な学習済みモデルと同様のデータ構造を有していればよく、実際に学習済みであってもよいし、未学習であってもよい。学習済みモデルLM'が未学習の場合には、予め初期値等が設定されている。
【0127】
射出成形機10のパラメータ更新部712が、受け取った重み及びバイアスの構造情報に基づいて、学習済みモデルLM'の重み及びバイアスを更新する。これにより、学習装置1300の学習フェーズで生成された学習済みモデルを用いた推論が可能となる。次に学習済みモデルの実際の構造について具体的に説明する。
【0128】
図4は、第1の実施形態に係る学習装置1300及び制御装置700で用いられる学習済みモデルLM、LM'の構造を例示した図である。
【0129】
図4に示される学習済みモデルLM、LM'は、入力層と、中間層と、出力層とで構成されている。入力層は例えば2200ノードを有し、中間層は例えば200ノードを有し、出力層は1ノードを有する。
【0130】
学習済みモデルLM、LM'は、2200ノードに対応する入力データが入力された場合に、1ノードに対応する出力データを出力する。
【0131】
入力データは、例えば、射出成形が行われている間に変化する実績値を時系列順に示した時系列データとする。入力データとしては、射出成形が行われている間に、型内圧センサ831、832(学習装置1300に入力する実績値、または、入力するデータの基となる実績値を検出するための検出部の一例。目的に応じて、他の検出部で検出した実績値を用いても良い。)の検出結果として計測された型内圧の変化を時系列順に示した時系列データ(以下、波形データと称する)とする。なお、2個の型内圧センサ831、832に基づいた型内圧の変化の算出手法は、周知の手法を問わずあらゆる手法を用いてよく、例えば平均を求めてもよい。
【0132】
出力データは、例えば、成形品の重量とする。
【0133】
つまり、学習済みモデルLM、LM'は、型内圧の変化を示した波形データが入力された場合に、当該型内圧の場合に生成される成形品の重量の推定値を出力する。学習装置1300に型内圧センサ831、832の実績値、または、それに基づいた波形データを入力するにあたって、学習済みモデルLM,LM'で扱えるように前処理をかけても良い。なお、これは推論の場合も同じである。
【0134】
図4で示される例では、入力層では、各ノードに対応する変数を、入力変数ベクトルx
0~2199と定義する。中間層では、各ノードに対応する変数を、中間変数ベクトルz
0~199と定義する。出力層では、ノードに対応する変数を、出力変数yと定義する。
【0135】
この場合、中間層の中間変数ベクトルz
0を算出する式は、以下の式(1)で算出される。式(1)において、重みベクトルw
0~199,0~2199は、入力層の各ノードから中間変数ベクトルz
0~199の各々値を出力するための(200×2200次元の)重みベクトルとする。なお、中間変数ベクトルz
1~199も同様の式を用いることで算出可能なため、説明を省略する。バイアスb
0~199は、
図4では省略しているが、ニューラルネットワークで用いられるバイアスとする。活性化関数φは、例えばReLU関数を用いることが考えられるが、他の関数を用いてもよい。
【0136】
z0=φ(w0,0~2199・x0~2199+b0)……(1)
【0137】
出力層の出力変数yを算出する式は、以下の式(2)で算出される。式(2)において、重みベクトルw'
0~199は、中間層の各ノードから出力変数yに値を出力するための重みベクトルとする。バイアスb'は、
図4では省略しているが、ニューラルネットワークで用いられるバイアスとする。活性化関数φ'は、例えばReLU関数を用いることが考えられるが、他の関数を用いてもよい。
【0138】
y=φ'(w'0~199・z0~199+b')……(2)
【0139】
本実施形態に係る制御装置700の推論部714は、例えば、射出成形が行われている間の型内圧の変化する実績値を示した波形データ(入力データ1401の例)を、学習済みモデルに入力することで、学習済みモデルから成形品の重量の推定値(出力データ1402の例)を受け取る。
【0140】
学習装置1300は、教師データを用いて、全てのパラメータ(全ての重み及びバイアスを含む)を調整する。つまり、学習装置1300の学習部1313は、出力変数yが、正解の値に可能な限り近づくようにパラメータ(全ての重み及びバイアスを含む)の更新量を、出力側から繰り返し逆算して反映していく。
【0141】
上述した式(1)及び式(2)に示されるように、ノードの数と接続の有無が共通している場合、重み及びバイアスを一致させれば、同じ式を再現できる。なお、接続の有無が必要なのは、ノード間が全て接続ではない場合があると考えられるためである。
【0142】
制御装置700の推論部714が用いる学習済みモデルLM'と、学習装置1300の学習部1313が生成する学習済みモデルLMと、において、入力層、中間層、及び出力層のノード数は共通している。このため、重み及びバイアスを一致させた場合に、学習済みモデルを再現できる。
【0143】
そこで、学習装置1300が、制御装置700に、学習フェーズで調整されたパラメータ(重み及びバイアス)を受け渡す。制御装置700では、受け取ったパラメータで学習済みモデルを更新する。これにより、制御装置700の推論部714が用いる学習済みモデルLM'と、学習装置1300の学習部1313が生成する学習済みモデルLMと、の間のパラメータ(重み及びバイアス)を一致させることができる。換言すれば、制御装置700の推論部714は、学習装置1300の学習部1313の学習結果が再現された学習済みモデルLM'を利用できる。
【0144】
なお、本実施形態では、射出成形機10に搭載する学習済みモデルLM'の一例を示したものであって、成形品の重量の推定値を出力する学習済みモデルLM'以外の学習済みモデルに適用してもよい。
【0145】
なお、本実施形態では、学習済モデルの一例として、ニューラルネットワークを用いた例について説明するが、ニューラルネットワークを用いた例に制限するものではなく、他の学習済みモデルを用いてもよい。例えば、決定木に基づいた機械学習アルゴリズム(決定木、ランダムフォレスト、又は、勾配ブースティング決定木等)を用いてもよいし、SVR (サポートベクトル回帰)を用いてもよい。
【0146】
本実施形態においては、パラメータは、学習によって変更される変数であって、例えば、重み及びバイアスが含まれる。一方、学習によって変更されない変数は、ハイパーパラメータと称する。ハイパーパラメータは、学習する前に予め設定が必要なパラメータであって、例えば、学習済みモデルのネットワーク構造(例えば、層の数、及び層毎のノードの数)を含む。
【0147】
図5は、本実施形態に係る学習装置1300及び制御装置700の機能構成の一例を示す図である。
図5に示されるように、学習装置1300と制御装置700との間は通信回線NWにて接続されている。
【0148】
学習装置1300の機能は、任意のハードウェア又は任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、
図5に示すように、学習装置1300は、CPU1301、記憶媒体1302、及び通信インターフェース1303を含む。
【0149】
記憶媒体1302は、インストールされた各種プログラムを格納すると共に、各種処理に必要なファイルやデータ等を格納する。記憶媒体1302は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)やフラッシュメモリ等を含む。
【0150】
本実施形態に係る記憶媒体1302は、教師データ記憶部1321と、学習済みモデル記憶部1322と、を備える。
【0151】
教師データ記憶部1321は、学習済みモデルLMの学習に用いる教師データを記憶する。
【0152】
学習済みモデル記憶部1322は、学習済みモデルLMを記憶する。
【0153】
通信インターフェース1303は、外部機器と通信可能に接続するためのインターフェースとして用いられる。これにより、学習装置1300は、通信インターフェース1303を通じて、例えば、射出成形機10等の外部機器と通信することができる。また、通信インターフェース1303は、接続される機器との間の通信方式等によって、複数の種類の通信インターフェースを有してもよい。
【0154】
学習装置1300のCPU1301は、記憶媒体1302に格納されているプログラムを実行する。これにより、CPU1301は、機能部として、取得部1311と、教師データ生成部1312と、学習部1313と、パラメータ抽出部1314と、通信制御部1315と、を含む。
【0155】
取得部1311は、テスト用射出成形機1350から、型内圧の変化を時系列順に示した波形データと、重量センサによる成形品の重量の測定データと、の組み合わせを複数取得する。取得する型内圧の変化を示した波形データ及び成形品の重量の測定データの数は、特に制限するものではなく、学習済みモデルLMを生成可能な数であればよい。
【0156】
教師データ生成部1312は、取得部1311が取得した、型内圧の変化を示した波形データ及び成形品の重量の測定データの組み合わせから、教師データを生成する。なお、本実施形態は教師データの一例を示したものであって、異なる教師データでもよい。異なる教師データの場合、必要に応じて出力パラメータに正解条件を設定してもよい。
【0157】
教師データ生成部1312が生成した教師データは、教師データ記憶部1321に格納される。
【0158】
学習部1313は、教師データ記憶部1321に記憶された複数の教師データに基づいた機械学習を行うことで、学習済みモデルLMを生成する。つまり、学習部1313は、教師データの各々に含まれる、型内圧の変化を示した波形データ、及び成形品の重量の測定データを読み込んで機械学習を行い、学習済みモデルLMを生成する。生成された学習済みモデルLMは、射出成形機10で計測された波形データを入力することで、成形品の重量の推定値を出力できる。
【0159】
学習済みモデルLMは、ベースの学習モデルに対して、教師あり学習が適用されることにより生成される。具体的には、学習部1313は、入力としての波形データと、出力としての推定値となりえるデータ(成形品の重量の測定データ)との組み合わせによる教師データの集まり(教師データセット)に基づいて、機械学習を行うことで、学習済みモデルLMを生成する。生成された学習済みモデルLMは、学習済みモデル記憶部1322に格納される。
【0160】
また、学習済みモデルLMは、既存の学習済みモデルLMに新たな教師データセットを追加学習させることにより、更新されてもよい。
【0161】
学習済みモデルLMの生成に用いる機械学習としては、例えば、ニューラルネットワークを適用してもよいし、他の例としては、ディープニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)用いた機械学習であって、深層学習(ディープラーニング)を適用してもよい。深層学習としては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク、RNN(Recurrent Neural Networks)、LSTM(Long Short Term Memory)を適用してもよい。
【0162】
パラメータ抽出部1314は、学習済みモデル記憶部1322に記憶された学習済みモデルLMから、学習済みモデルLMを構成する各層に設定されているパラメータ(例えば、重み、及びバイアス)を示した構造体を抽出する。本実施形態では、学習によって更新されうる変数情報の一例として、重み及びバイアスを用いた例について説明する。なお、本実施形態は、変数情報の一例を示したもので、重み及びバイアスに制限するものではなく、学習済みモデルの更新又は生成に用いられる情報であればよい。
【0163】
図6は、本実施形態に係るパラメータ抽出部1314が抽出する、パラメータの構造体を例示した図である。
図6に示されるように、パラメータの構造体では、層毎に、重みとバイアスとが設定されている。
図6に示されるパラメータの構造体は、
図4に示した学習済みモデルLM、LM'に対応した例とする。
【0164】
図6の入力層と中間層との間の重みを表した2次元配列1601は、例えば、重みベクトルw
0~199,0~2199を示している。入力層と中間層との間のバイアスを表した1次元配列1602は、例えば、バイアスb
0~199を示している。
【0165】
図6の中間層と出力層との間の重みを表した1次元配列1603は、例えば、重みベクトルw'
0~199を示している。入力層と中間層との間のバイアス1604は、例えば、バイアスb'を示している。
【0166】
図6に示される配列及び数値は一例を示したものであって、当該配列及び数値に制限するものではない。つまり、パラメータの構造体は、学習済みモデルのネットワーク構造及び教師データによる学習内容等に応じて異なるデータとなる。
【0167】
図6に示されるように、パラメータの構造体に含まれる重み及びバイアスの各々は、数値である。つまり、パラメータの構造体は、学習装置1300と制御装置700との間のCPU、OS、開発言語等に依存するデータではない。このため、制御装置700は、学習装置1300から出力されたパラメータの構造体を示す情報を読み込むことができる。
【0168】
パラメータの構造体を示す情報のフォーマットは、制御装置700及び学習装置1300の各々が読み込み及び出力可能なフォーマットであればよく、バイナリであってもよいし、テキストであってもよい。さらには、既に定められているフォーマットを用いてもよい。フォーマットとして例えばJSON、XML、又はONNXを用いてもよい。
【0169】
図5に戻り、通信制御部1315は、通信I/F1303を用いて、射出成形機10等の外部機器との間で情報を送受信する。例えば、通信制御部1315は、パラメータの構造体を示すパラメータ構造情報を、制御装置700に送信してもよい。
【0170】
なお、本実施形態は、パラメータの構造体を示す情報を制御装置700に送信する例について示したが、制御装置700に情報を受け渡す手法を制限するものではない。例えば、外部記憶媒体を用いて、学習装置1300から制御装置700に情報を受け渡してもよい。
【0171】
図5には、射出成形機10の制御装置700の構成要素を機能ブロックで示している。
図5に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。
図3に示すように、制御装置700のCPU701は、通信制御部711と、パラメータ更新部712と、射出成形処理部713と、再学習部715と、パラメータ抽出部716と、を備える。また、制御装置700は、記憶媒体702に、学習済みモデル記憶部721を備える。
【0172】
学習済みモデル記憶部721は、学習済みモデルLM'を記憶する。学習済みモデルLM'の層毎の構成は、学習装置1300の学習済みモデル記憶部1322に記憶されている学習済みモデルLMと同様とする。
【0173】
通信制御部711は、通信I/Fを用いて、学習装置1300等の外部機器との間で情報を送信及び受信する。例えば、通信制御部711は、学習済みモデルLMのパラメータの構造体を示すパラメータ構造情報を、学習装置1300から受信する。パラメータ構造情報は、学習装置1300の学習済みモデルLMを再現するための重み、バイアスを含む情報とする。
【0174】
なお、本実施形態では、パラメータ構造情報を取得する手法として、学習装置1300から受信する例について説明したが、パラメータ構造情報の取得手法を制限するものではない。例えば、外部記憶媒体を介してパラメータ構造情報を取得してもよい。
【0175】
パラメータ更新部712は、受信したパラメータ構造情報で、学習済みモデル記憶部721に記憶されている学習済みモデルLM'を更新する。これにより、パラメータ更新部712は、学習済みモデル記憶部721に記憶されている学習済みモデルLM'の重み及びバイアスを、学習装置1300の学習済みモデルLMと一致させることができる。
【0176】
パラメータ更新部712は、例えば、学習済みモデルLM'を更新するためのプログラムとして構成してもよい。パラメータ更新部712は、学習済みモデル記憶部721に記憶されている学習済みモデルLM'と受信したパラメータ構造情報と、の間で定義されている層の数、及び層毎のノード数が一致しているか否かを判定してもよい。そして、パラメータ更新部712は、一致していると判定した場合に、学習済みモデルLM'を更新する。パラメータ更新部712は、一致していないと判定した場合に、学習済みモデルLM'の更新を行わず、構造が違う旨のアラート画面を、表示装置760等に出力してもよい。
【0177】
射出成形処理部713は、推論部714を備え、射出成形機10の射出成形を行うための処理を実行する。
【0178】
推論部714は、学習済みモデル記憶部721に記憶されている学習済みモデルLM'を用いて、射出成形に関する推論を実行する。
【0179】
本実施形態に係る推論部714は、射出成形処理部713によって行われる射出成形の際に、型内圧センサ831、832の検出結果である型内圧の変化を示した波形データを学習済みモデルLM'に入力し、学習済みモデルLM'から、成形品の重量の推定値を受け取る。そして、推論部714は、成形品の重量の推定値の出力等を行うことができる。さらに射出成形処理部713が、重量の推定値に基づいて、射出成形動作の制御を行ってもよい。これにより、本実施形態では、学習済みモデルLM'による推論を用いた射出成形の制御を行うことができる。
【0180】
また、本実施形態では、射出成形処理部713による射出成形の型内圧センサ831、832から出力された実績値に基づいて、学習済みモデルLM'の再学習を行ってもよい。
【0181】
再学習部715は、型内圧センサ831、832から出力された波形データと、成形品の重量の測定データとの組み合わせによる教師データを生成し、教師データに基づいて機械学習を行うことで、学習済みモデルLM'の再学習を行う。
【0182】
パラメータ抽出部716は、学習済みモデルLM'の重み及びバイアスを抽出し、重み及びバイアスを示したパラメータ構造情報を生成する。
【0183】
そして、通信制御部(出力部の一例)711は、パラメータ抽出部716により生成されたパラメータ構造情報を、学習装置1300又は他の射出成形機に送信する。これにより、射出成形機10で再学習等が行われた学習済みモデルLM'を、他の機器に適用できる。換言すれば、射出成形機10で生成又は更新された学習済みモデルLM'を他の機器で再現できる。
【0184】
つまり、本実施形態では、学習によって更新されうる変数情報の一例として、重み及びバイアスを用いた例について説明した。本実施形態では、学習済みモデルLMと、学習済みモデルLM'との間で、層の数、及び各層の構造を一致させている。このため、制御装置700が、学習済みモデルLMから抽出された、学習によって更新されうる変数情報(例えば、重み及びバイアス)で、学習済みモデルLM'を更新することで、学習済みモデルの内部の構造及び値を一致させることができるので、学習済みモデルを再現することが可能となる。
【0185】
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、学習装置1300が、学習によって更新されうる変数情報として、学習済みモデルLMの重み及びバイアスの構造情報を、制御装置700に受け渡す例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、受け渡す変数情報を、重み及びバイアスの構造情報に制限するものではない。そこで第2の実施形態では、学習によって更新されることがない変数情報として、例えばハイパーパラメータを受け渡す例について説明する。
【0186】
図7は、本実施形態に係る学習装置1300A及び制御装置700Aの機能構成の一例を示す図である。なお、上述した実施形態と同様の構成は同一の符号を割り当て、説明を省略する。学習装置1300Aは、上述した実施形態の学習装置1300と同様に、テスト用射出成形機1350からの波形データ等に基づいて学習済みモデルLMAを生成する。制御装置700Aは、上述した実施形態の制御装置700と同様に射出成形機10を制御する。制御装置700Aは、射出成形機10を制御する際に、学習済みモデルLMA'を用いる。
【0187】
第1の実施形態では、学習済みモデルLMと学習済みモデルLM'とはハイパーパラメータが共通している例について説明した。これに対して、第2の実施形態においては、学習装置1300Aの学習済みモデルLMAと、制御装置700Aの学習済みモデルLMA'との間でネットワーク構造が予め定められていない例とする。ただし、学習装置1300Aの学習済みモデルLMA、及び制御装置700Aの学習済みモデルLMA'では、入力データ及び出力データを予め定義される必要があるので、入力層のノード数(チャネル数含む)、出力層のノード数については予め定められている。
【0188】
学習装置1300Aは、CPU1301、記憶媒体1302、及び通信インターフェース1303を含む。
【0189】
本実施形態に係る記憶媒体1302は、教師データ記憶部1321と、学習済みモデル記憶部1322Aと、を備える。
【0190】
学習済みモデル記憶部1322Aは、学習済みモデルLMAを記憶する。
【0191】
学習装置1300AのCPU1301は、記憶媒体1302に格納されているプログラムを実行する。これにより、CPU1301は、機能部として、取得部1311と、教師データ生成部1312と、学習部1313と、パラメータ抽出部1314と、ハイパーパラメータ抽出部1316と、通信制御部1315と、を含む。
【0192】
ハイパーパラメータ抽出部1316は、学習済みモデル記憶部1322Aに記憶されている学習済みモデルLMAからハイパーパラメータを抽出し、当該ハイパーパラメータを含むハイパーパラメータ情報を生成する。
【0193】
通信制御部1315は、上述した実施形態と同様の制御を行うほかに、ハイパーパラメータ情報を、制御装置700に送信する。
【0194】
図8は、本実施形態に係る学習装置1300Aが、制御装置700Aにハイパーパラメータ情報を送信する概念を示した情報である。
【0195】
上述した実施形態で示したように、学習装置1300Aと、制御装置700Aと、はCPU、OS、開発言語等が異なる。つまり、CPU及びOSのうちいずれか一つ以上に互換性がない場合には、学習済みモデルがバイナリレベルで異なる。また、学習側がPython言語のようなインタープリタ型言語で学習済みモデルを生成し、推論側と異なる開発言語を用いる場合には、学習済みモデルがソースレベルで異なる。仮に、推論側が学習側と同様にPythonを用いたとしても関連するライブラリのサポート状況が異なる場合には、推論側が学習済みモデルを実質的に実行するのが難しい。このため、学習装置1300Aは、学習済みモデルLMAを制御装置700Aに受け渡したとしても、制御装置700Aは、学習済みモデルLMAを実行する(又は動作させる)ことができない。
【0196】
そこで、本実施形態では、学習済みモデルLMAの各層のノード数等が示されたハイパーパラメータ情報を、学習装置1300Aから、制御装置700Aに受け渡す。そして、制御装置700Aは、受け取ったハイパーパラメータ情報に基づいて、学習済みモデルLMA'を生成する。
【0197】
換言すれば、学習装置1300Aの学習済みモデルLMAのネットワーク構造(入力層のノード数n1、中間層のノード数n2、出力層のノード数n3)と、制御装置700Aの学習済みモデルLMA'のネットワーク構造(入力層のノード数n1、中間層のノード数n2、出力層のノード数n3)と、を一致させることができる。
【0198】
ハイパーパラメータ情報は、例えば、学習済みモデルLMAのネットワーク構造を実現するための情報であって、例えば、中間層の数、各層のユニット数、活性化関数の種類等が含まれると共に、畳み込み層について、例えばカーネルサイズ、ストライド、パディング、及びグループが含まれる。なお、本実施形態は、ハイパーパラメータ情報に含まれる情報を、ネットワーク構造を実現するための情報に制限するものではなく、学習率、バッチサイズが含まれてもよい。つまり、予め定義された学習済みモデルLMAの構成を実現するための情報であれば、ハイパーパラメータ情報に含めてよい。本実施形態では、学習によって更新されることがない変数情報の一例として、ネットワーク構造の情報を用いた例について説明する。なお、本実施形態は、変数情報の一例を示したもので、ネットワーク構造の情報に制限するものではなく、学習済みモデルの更新又は生成に用いられる情報であればよい。
【0199】
図7に戻り、制御装置700AのCPU701は、通信制御部711と、モデル生成部717と、パラメータ更新部712と、射出成形処理部713と、再学習部715と、パラメータ抽出部716と、ハイパーパラメータ抽出部718と、を備える。また、制御装置700は、記憶媒体702に、学習済みモデル記憶部721Aを備える。
【0200】
学習済みモデル記憶部721は、学習済みモデルLMA'を記憶する。学習済みモデルLMA'は、後述するモデル生成部717により生成される。
【0201】
通信制御部711は、上述した実施形態と同様の制御を行うと共に、学習装置1300Aからハイパーパラメータ情報を受信する。
【0202】
モデル生成部717は、ハイパーパラメータ情報に基づいて、学習済みモデルLMA'を生成し、学習済みモデル記憶部721に記憶する。なお、生成された学習済みモデルLMA'の重み及びバイアスは初期値でよい。学習済みモデルLMA'の重み及びバイアスは、第1の実施形態と同様の手法で更新されるものとして説明を省略する。また、学習済みモデルLMA'の生成に用いるハイパーパラメータ情報には、学習済みモデルLMAのパラメータ情報(例えば重み及びバイアス)が含まれてもよい。
【0203】
図9は、本実施形態に係るパラメータ情報とハイパーパラメータ情報の一例を示した図である。
図9に示される例では、ハイパーパラメータ情報にはパラメータ情報が含まれている。つまり、
図9には、ハイパーパラメータ情報1901が含まれる他、パラメータ情報として、入力層-中間層の重みを表した2次元配列1902と、入力層-中間層のバイアスを表した1次元配列1903と、中間層-出力層の重みを表した1次元配列1904と、中間層-出力層のバイアス1905と、が含まれている。
【0204】
入力層-中間層の重みを表した2次元配列1902、入力層-中間層のバイアスを表した1次元配列1903、中間層-出力層の重みを表した1次元配列1904、中間層-出力層のバイアス1905は、
図6の2次元配列1601、1次元配列1602、1次元配列1603、及びバイアス1604と同様として説明を省略する。
【0205】
ハイパーパラメータ情報1901は、層の数(
図9に示される例では、入力層、中間層、及び出力層の3層とする)、及び層毎のノードの数が定義されている。
図9に示される例では、ハイパーパラメータ情報1901は、入力層のノード数"n1=2200"、中間層のノード数"n2=200"、及び出力層のノード数"n3=1"の場合が示されている。さらに、ハイパーパラメータ情報1901は、層の数及び層毎のノード数に加えて、演算の種類(Op-type)が定義されている。
図9で示される例では"Op-type"として"Linear"と"ReLU"が定義された例とするが、他の演算の種類が定義されてもよい。演算の種類が"Linear"の場合、"Shape"に定義された多次元配列の各次元と要素数の構造に基づいた、演算が行われる。ここでは、行列積演算とバイアスの加算を行っているが構造に合わせて変更させても良い。なお、実際に演算に用いられる重み及びバイアスは、上述した実施形態と同様とする。また、上述した活性化関数φとして"ReLU"を用いる場合、負の入力は"0"として出力され、"0"又は正の値の入力はそのまま出力される。
【0206】
つまり、
図9で示されるハイパーパラメータ情報によって、各層の間で行われる演算の種類を認識できる。そして、
図9にはパラメータ情報も含まれているので、演算に用いられる具体的な重み及びバイアスも認識できる。また、
図9で示されるように、ハイパーパラメータ情報1901は、学習装置1300Aと制御装置700Aとの間のCPU、OS、開発言語等に依存するデータではない。このため、制御装置700Aは、学習装置1300Aから出力されたハイパーパラメータの構造体を示す情報(例えば、ハイパーパラメータ情報1901)、を読み込むことができる。なお、本実施形態では、ハイパーパラメータ情報に含まれるパラメータ情報も読み込まれる。
【0207】
なお、
図9に示されるハイパーパラメータ情報、及びパラメータ情報は一例を示したものであって、
図9に示されるハイパーパラメータ情報、及びパラメータ情報に制限するものではない。つまり、ハイパーパラメータ情報、及びパラメータ情報は、例えば、学習済みモデルのネットワーク構造及び教師データによる学習内容等に応じて異なるデータとなる。
【0208】
図9に示されるように、例えば、学習装置1300Aの開発環境において、学習済みモデルLMAのネットワーク構造(例えば、中間層は1つ、入力層のノード数n1、中間層のノード数n2、出力層のノード数n3)等が定義された場合に、制御装置700Aは、学習装置1300Aからハイパーパラメータ情報を受信する。そして、制御装置700Aは、ハイパーパラメータ情報に基づいて、当該学習済みモデルLMAと同様のネットワーク構造等が定義された学習済みモデルLMA'を生成する。受信した情報にパラメータ情報が含まれている場合、制御装置700Aは、当該パラメータ情報で、学習済みモデルLMA'の重み及びバイアスを設定する。なお、学習済みモデルLMAの再定義が行われた場合に、中間層の数、及び中間層のノードの数は、変更されてもよいが、入力層及び出力層のノードの数は、変更されないものとする。これにより、学習済みモデルLMA'を利用する推論部714の修正を抑制できる。
【0209】
本実施形態においては、開発者が、学習装置1300Aのために、第1言語(例えばPython)で学習済みモデルLMAを定義した場合、制御装置700Aのために、第2言語(例えばC++)で学習済みモデルLMA'を定義する作業を軽減できる。
【0210】
ハイパーパラメータ抽出部718は、学習済みモデルLMA'からハイパーパラメータを抽出し、ハイパーパラメータを示したハイパーパラメータ情報を生成する。
【0211】
そして、通信制御部(出力部の一例)711は、ハイパーパラメータ抽出部718により生成されたハイパーパラメータ情報を、学習装置1300A又は他の射出成形機に送信する。これにより、射出成形機10で生成された学習済みモデルLMA'を、他の機器に適用できる。換言すれば、射出成形機10で生成された学習済みモデルLMA'を他の機器で再現できる。
【0212】
本実施形態では、学習によって更新されることがない変数情報の一例として、ネットワーク構造の情報を用いた例について説明した。本実施形態では、学習装置1300Aが、ネットワーク構造の情報を制御装置700Aに受け渡すことで、制御装置700Aが、学習装置1300Aで生成された学習済みモデルLMAと層の数、及び各層の構造が同一の学習済みモデルLMA'を実現できる。そのうえで、このため、制御装置700Aが、学習済みモデルLMAから抽出された、学習によって更新されうる変数情報(例えば、重み及びバイアス)で、学習済みモデルLMA'を更新する。これにより、学習装置1300A及び制御装置700の間で、学習済みモデルの構造及び値を一致させることができるので、学習済みモデルを再現することが可能となる。
【0213】
上述した実施形態においては、パラメータ及びハイパーパラメータのうちいずれか一つ以上を含んだ変数情報を、制御装置700、700Aに受け渡す。これにより、制御装置700、700Aは、学習装置1300、1300Aと同じ学習済みモデルの生成又は更新することができる。
【0214】
(第3の実施形態)
上述した実施形態においては、射出成形機10の制御装置が学習済みモデルを用いて制御を行う場合について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、射出成形機10の制御装置が学習済みモデルを用いる手法に制限するものでない。そこで、第3の実施形態では、射出成形機10を制御する群管理装置1900が、学習済みモデルを用いて制御を行う例について説明する。
【0215】
図10は、本実施形態に係る、学習装置1300A、群管理装置1900及び射出成形機10の構成を例示した図である。
図10に示されるように、群管理装置1900は、例えば、8台の射出成形機10の管理を行う。なお、管理する射出成形機の数は、一例を示したものであって、任意の数でよい。
【0216】
本実施形態は、上述した実施形態で示した制御装置700Aによる学習済みモデルを用いた制御を、複数の射出成形機10に対する群管理機能を有する群管理装置1900に適用したものである。
【0217】
本実施形態に係る学習装置1300Aは、第2の実施形態と同様の構成を備えている。学習装置1300Aは、ハイパーパラメータ情報、及びハイパーパラメータ情報に含まれるパラメータ構造情報を、通信回線NWを介して、群管理装置1900に送信する。
【0218】
通信回線NWは、例えば、インターネット通信回線とする。そして、学習装置1300Aと群管理装置1900との間で通信を行う場合には、VPN(Virtual Private Network)で接続することが好ましい。VPNで接続することで、通信の安全性を向上させることができる。
【0219】
群管理装置(管理装置の一例)1900は、複数の射出成形機10を生産性の面から管理する装置であり、各射出成形機10と接続され、前に述べた制御装置700、700Aと同様に、成形条件や各種センサから得られる検出信号を受信し、生産状況の管理・計画を補助する。
【0220】
群管理装置1900は、例えば、パーソナルコンピュータで実現してもよい。但し、群管理装置1900は、通常、各射出成形機10に対する射出成形動作の制御機能は持たないが、パーソナルコンピュータの機能を拡張すれば制御機能を持たせることもできる。
【0221】
群管理装置1900は、制御装置700Aと同様に、記憶装置(図示せず)を有し、記憶装置には学習済みモデルLMA'が記憶されている。
【0222】
群管理装置1900は、制御装置700Aと同様に、CPU(図示せず)を有し、記憶装置に記憶されたプログラムをCPUに実行させることにより、制御装置700と同様に、通信制御部711、モデル生成部717、パラメータ更新部712、推論部714を含む射出成形処理部713、再学習部715、パラメータ抽出部716、及びハイパーパラメータ抽出部718が実現されている。各構成で実行される処理は、上述した実施形態と同様として説明を省略する。
【0223】
群管理装置1900は、通信回線NWを介して学習装置1300Aと接続可能にされている。
【0224】
群管理装置1900は、学習装置1300Aから、ハイパーパラメータ情報、及びハイパーパラメータ情報に含まれるパラメータ構造情報を受信する。そして、群管理装置1900は、受信したハイパーパラメータ情報、及びハイパーパラメータ情報に含まれるパラメータ構造情報に基づいて学習済みモデルの生成、及び更新を行う。生成及び更新は、上述した実施形態と同様とする。
【0225】
生産状況の管理・計画を補助として、例えば、群管理装置1900では、受信した検出信号で示される波形データに基づいて、学習済みモデルLMA'が成形品の重量の推定値を出力してもよい。当該出力は、例えば成形品の品質確認に用いることが考えられる。また、群管理装置1900は、各射出成形機10に対する射出成形動作の制御機能を持つ場合、成形品の重量に基づいて射出成形動作の制御を行ってもよい。
【0226】
<作用>
上述した実施形態においては、学習装置1300、1300A、1700Aから受信したハイパーパラメータ情報、及びハイパーパラメータ情報に含まれるパラメータ構造情報に基づいて学習済みモデルの生成、及び更新を行うことで、制御装置700、700A及び群管理装置1900は、例えば、CPU、OS、開発言語が異なる学習装置1300、1300Aと同様の学習済みモデルを再現できる。これにより、射出成形機10の制御装置700、700A、及び群管理装置1900で学習済みモデルを学習する必要を低減させることができる。したがって、機械学習を行うための負担を軽減できる。前述の通り、本実施例ではパラメータ構造情報はハイパーパラメータ情報に含まれるが、パラメータ構造情報を含まないハイパーパラメータ情報を用いても良い。
【0227】
上述した実施形態では、学習フェーズの処理を、射出成形機10の制御装置又は群管理装置に搭載されたCPUと比べて高性能のCPUが搭載された学習装置で行うことができる。機械学習に要する時間を短縮できるので、学習フェーズの負担を軽減できる。
【0228】
以上、本発明に係る射出成形機の制御装置、及び射出成形機の表示装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0229】
10 射出成形機
700 制御装置
701 CPU
711 通信制御部
712 パラメータ更新部
713 射出成形処理部
714 推論部
715 再学習部
716 パラメータ抽出部
717 モデル生成部
718 ハイパーパラメータ抽出部
721 学習済みモデル記憶部
1300、1300A、1700A 学習装置
1301 CPU
1302 記憶媒体
1303 通信インターフェース
1311 取得部
1312 教師データ生成部
1313 学習部
1314 パラメータ抽出部
1315 通信制御部
1316 ハイパーパラメータ抽出部
1321 教師データ記憶部
1322 学習済みモデル記憶部