(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095378
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ベシクル含有組成物及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240703BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/55
A61K8/37
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212641
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 聖二
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC262
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD571
4C083AD572
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】水素添加レシチンの溶解性、ベシクルの形成性及びベシクルの安定性に優れ、かつふっくらとしたはり感を付与することができ、肌なじみが良く、べたつきのないベシクル含有組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係るベシクル含有組成物の一態様は、(A)水素添加レシチンと、(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと、(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルと、(C)グリセリンと、(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールと、を含有し、前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの含有量に対する前記(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルの含有量の質量比[(B1)/(B2)]が0.01~10であり、前記(A)成分を含むベシクルを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水素添加レシチンと、
(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと、
(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルと、
(C)グリセリンと、
(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールと、
を含有し、
前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの含有量に対する前記(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルの含有量の質量比[(B1)/(B2)]が0.01~10であり、
前記(A)成分を含むベシクルを含有することを特徴とするベシクル含有組成物。
【請求項2】
前記(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルがモノステアリン酸グリセリルである、請求項1に記載のベシクル含有組成物。
【請求項3】
前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルがイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルである、請求項1に記載のベシクル含有組成物。
【請求項4】
前記(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールが、1,3-ブチレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のベシクル含有組成物。
【請求項5】
(E)イソステアリン酸及びポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を更に含有する、請求項1に記載のベシクル含有組成物。
【請求項6】
前記(C)グリセリンと前記(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールとの合計含有量に対する、前記(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとの合計含有量の質量比[(B1+B2)/(C+D)]が0.005~0.04である、請求項1に記載のベシクル含有組成物。
【請求項7】
前記(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールの含有量に対する前記(C)グリセリンの含有量の質量比[(C)/(D)]が0.5~3である、請求項1に記載のベシクル含有組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のベシクル含有組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベシクル含有組成物及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚化粧料等の皮膚外用剤は、浸透感に優れ、べたつかず、塗布後の肌にふっくらとしたはり感を付与する等の効果実感に優れることが求められている。
【0003】
一方、レシチン(リン脂質)は保水効果に優れ、皮膚を健やかに保ち、肌荒れを改善する作用があることが知られている。レシチンは生体膜の構成成分であり、肌との親和性が良好で安全性の高い物質であるため、外用基剤として使用することが提案されている(特許文献1参照)。レシチンは両親媒性物質であるため、水中では自己会合し分子集合体として存在し、ベシクルと呼ばれる二重膜構造の閉鎖型小胞体を形成する。
【0004】
従来、レシチンを含有する化粧料の製造には、レシチン由来の凝集物の発生を防ぎ、リポソーム粒子を微小化及び均一化するために、高圧乳化処理を複数回繰り返す方法が用いられていた(例えば、特許文献2参照)。また、配合面からレシチン由来の凝集物の発生を防ぐためには、適切な活性剤を配合することが必要とされおり、例えば、レシチンによるベシクルの経時安定性を得るために、ステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤を配合した組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、水素添加リン脂質と、イソステアリン酸及び/又はイソステアリルアルコールと、多価アルコールとを含有し、浸透感、べたつきがない、塗布後の肌が柔らかい等の効果実感や安定性が良好な透明乃至半透明の化粧料(特許文献4参照)や、水和状態のオクテニルコハク酸デンプンアルミニウムと、モノベヘン酸グリセリルと、キサンタンガムと、カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーと、水と、リン脂質と、モノステアリン酸グリセリル及び/又はモノステアリン酸ソルビタンと、を含有し、ハリ感やコク感を付与しつつも、存安定性が良好な乳化化粧料(特許文献5参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62-93239号公報
【特許文献2】国際公開第2020/149162号
【特許文献3】特開2021-014435号公報
【特許文献4】国際公開第2011/081136号
【特許文献5】特許第6747763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、水素添加レシチンの溶解性、ベシクルの形成性及びベシクルの安定性に優れ、かつふっくらとしたはり感を付与することができ、肌なじみが良く、べたつきのないベシクル含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るベシクル含有組成物の一態様は、(A)水素添加レシチンと、(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと、(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルと、(C)グリセリンと、(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールと、を含有し、前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの含有量に対する前記(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルの含有量の質量比[(B1)/(B2)]が0.01~10であり、前記(A)成分を含むベシクルを含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、水素添加レシチンの溶解性、ベシクルの形成性及びベシクルの安定性に優れ、かつふっくらとしたはり感を付与することができ、肌なじみが良く、べたつきのないベシクル含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
(ベシクル含有組成物)
一実施形態に係るベシクル含有組成物は、(A)水素添加レシチンと、(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと、(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルと、(C)グリセリンと、(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールと、を含有し、前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの含有量に対する前記(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルの含有量の質量比[(B1)/(B2)]が0.01~10であり、前記(A)成分を含むベシクルを含有する。
【0012】
従来技術、例えば、特許文献2に記載のレシチンを含有する化粧料の製造方法は、特殊な乳化設備が必要であり、製造が非常に煩雑であるという問題があった。また、特許文献3の組成物は、ステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤を配合することで、レシチンが有する効果実感を損ね、浸透感や肌のふっくらとしたはり感が得られず、べたつきが生じるという問題があった。また、特許文献4の化粧料は、べたつきが生じるという問題があり、特許文献5の乳化化粧料は、リン脂質の溶解性が悪いという問題があった。
【0013】
これに対し、一実施形態に係るベシクル含有組成物は、水素添加レシチンの溶解性、ベシクルの形成性及びベシクルの安定性に優れ、かつふっくらとしたはり感を付与することができ、肌なじみが良く、べたつきのないものである。
【0014】
一実施形態に係るベシクル含有組成物は、上記各種成分に加え、(E)イソステアリン酸及びポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよく、更にその他の成分を含有していてもよい。
【0015】
<(A)水素添加レシチン>
前記(A)成分としての水素添加レシチン(「水添レシチン」とも称する)は、主に、一実施形態に係るベシクル含有組成物を皮膚に適用した際に、内側からふんわり持ち上がるようなふっくらとしたはり感を付与するために配合される。
【0016】
前記(A)成分の水素添加レシチンは、動植物から抽出及び/又は精製した天然レシチン、若しくは化学合成物である合成レシチンのアシル基に水素を添加したレシチン誘導体(両性界面活性剤)である。前記水素添加レシチンは、不飽和基が少ないため、安定性、特に熱や酸化に対する安定性が向上したものである。
【0017】
前記天然レシチンは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、スフィンゴミエリン(SM)、ホスファチジン酸などが所定の比率で存在する。
【0018】
「レシチン」という用語は、従来はリン脂質の1種類であるホスファチジルコリンの別名として使用されていたが、現在はリン脂質を含む脂質の総称とされており、本明細書においても同様の定義とする。
【0019】
また、「リン脂質」とは、分子中にリン酸エステル部位を有する脂質の総称である。一般的なリン脂質の構造は、1分子中にリン酸エステル塩型のアニオン活性基及び第四級アンモニウム塩型のカチオン活性基からなる親水基と、2つのアシル基(脂肪酸残基)からなる疎水基を有する。
【0020】
前記(A)成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大豆レシチン、菜種レシチン、トウモロコシレシチン、落花生レシチン、ヒマワリレシチン、サフラワー(ベニバナ)レシチン、綿実レシチン、アマニレシチン、ゴマレシチン、オリーブレシチン、米レシチン、キリレシチン、グレープレシチン、アボカドレシチン、ヤシレシチン、パームレシチン等の植物性レシチンの水素添加物;卵黄レシチン等の動物性レシチンの水素添加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(A)成分としては、安定性及び入手性の観点から、大豆レシチンの水素添加物(水素添加大豆レシチン)、卵黄レシチンの水素添加物(水素添加卵黄レシチン)が好ましく、水素添加大豆レシチンがより好ましい。
【0021】
前記(A)成分は、前記天然レシチン又は前記合成レシチンを公知の方法で水素添加処理したものであってもよく、市販品であってもよい。前記(A)成分の市販品としては、例えば、商品名で、NIKKOL レシノール S-10E(精製水素添加大豆リン脂質、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL レシノール S-10EX(精製水素添加大豆リン脂質、日光ケミカルズ株式会社製)、Phospholipid PCSH70(水素添加大豆リン脂質、日本精化株式会社製)、COATSOME(登録商標) NC-21(水素添加大豆リン脂質、日油株式会社製)、COATSOME(登録商標) NC-61(水素添加大豆リン脂質、日油株式会社製)、ベイシスLS-60HR(日清オイリオ株式会社製)、卵黄レシチン PL-100P(水素添加卵黄レシチン、キューピー株式会社製)などが挙げられる。
【0022】
前記(A)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベシクル含有組成物の全質量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~0.5質量%がより好ましい。前記(A)成分の含有量が0.01質量%以上であると、ふっくらとしたはり感を好適に付与することができ、5質量%以下であると、凝集を抑制でき、ベシクルの形成性が良好である。
【0023】
<<ベシクル>>
一実施形態に係るベシクル含有組成物は、前記(A)成分を含むベシクル(「リポソーム」とも称する)を含有する。
本明細書において、「ベシクル(リポソーム)」とは、脂質二重膜で形成される閉鎖型小胞体を意味する。脂質二重膜が1重である構造をシングルラメラ構造と言い、脂質二重膜が多重である構造をマルチラメラ構造と言う。一実施形態に係るベシクル含有組成物が含有するベシクルは、シングルラメラ構造及びマルチラメラ構造のいずれであってもよい。
一実施形態に係るベシクル含有組成物における前記(A)成分を含むベシクルは、その閉鎖型小胞体の内部に水性成分を保持することができ、及び/又は閉鎖型小胞体膜内に油性成分を保持することができる。
【0024】
前記ベシクルのモード径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下が更に好ましい。前記ベシクルのモード径が100nm以下であると、粒子同士の合一による凝集が生じにくく、ベシクルが安定して存在することができる。
ここでモード径とは、粒径分布における最頻度粒径である。前記ベシクルのモード径は、例えば、粒径測定装置(ZETASIZER NANO-S90、マルバーン・パナリティカル社製)で測定することができる。
【0025】
従来、ベシクル粒子を微小化及び均一化する場合は、高圧乳化装置(例えば、マントンゴウリン、フレンチプレス、マイクロフルイダイザー等のホモジナイザー)を用いて、例えば、30MPa・s以上の高圧下で乳化し、更にこの高圧乳化処理を複数回繰り返すことが必要であった。これに対し、一実施形態に係るベシクル含有組成物は、前記(B1)成分、前記(B2)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分を含有し、更に前記質量比[(B1)/(B2)]を0.01~10とすることにより、高圧乳化処理を行うことなく微小化及び均一化したベシクルを形成することができ、効率良く簡便に製造することができる。
【0026】
<(B1)ステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステル>
前記(B1)成分としてのステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルは、主に、ベシクルの粒径の制御や安定化の向上のために配合される。
【0027】
前記(B1)成分のステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記(A)成分の水素添加レシチンの溶解性の向上の点で、モノステアリン酸グリセリルが好ましい。
【0028】
前記(B1)成分は、適宜合成したものであってもよく、市販品であってもよい。前記(B1)成分の市販品としては、例えば、商品名で、CERASYNT SD(アシュランド・ジャパン株式会社製)、Cutina(登録商標) GMS V(BASFジャパン株式会社製)、EMALEX GMS-B、EMALEX GMS-F(以上、日本エマルジョン株式会社製)、IMWITOR 491、IMWITOR 900 K、(以上、IOI Oleo GmbH製)、NIKKOL MGS-AMV、NIKKOL MGS-AV、NIKKOL MGS-BMV、NIKKOL MGS-BV2、NIKKOL MGS-F20V、NIKKOL MGS-F40V、NIKKOL MGS-F50V(以上、日光ケミカルズ株式会社製)、SustOleo GMS(INOLEX, Inc.製)、TEGIN M Pellets MB、TEGO Care 165 MB(以上、Evonik Operations GmbH製)、TG-C(三洋化成工業株式会社製)、モノグリMB(日油株式会社製)、モンテックスA(ミヨシ油脂株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
前記(B1)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベシクル含有組成物の全質量に対して、0.005質量%~5質量%が好ましく、0.02質量%~0.2質量%がより好ましい。前記(B1)成分の含有量が0.005質量%以上であると、ベシクルの形成性及び安定性が良好であり、5質量%以下であると、前記(A)成分の溶解性及びベシクルの安定性が良好であり、またふっくらとしたはり感を好適に得ることができる。
【0030】
<(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル>
前記(B2)成分としてのイソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルは、主に、ベシクルの粒径の制御や安定化の向上のために配合される。
【0031】
前記(B2)成分のイソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記(A)成分の水素添加レシチンの溶解性の向上の点で、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(「イソステアリン酸PEGグリセリル」と略記することがある)が好ましい。
【0032】
前記(B2)成分のイソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルにおける酸化エチレンの平均付加モル数としては、一実施形態に係るベシクル含有組成物の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2~60が好ましく、5~60がより好ましい。
【0033】
前記(B2)成分は、適宜合成したものであってもよく、市販品であってもよい。前記(B2)成分の市販品としては、例えば、商品名で、EMALEX GWIS-105(イソステアリン酸PEG-5グリセリル)、EMALEX GWIS-105EX5(イソステアリン酸PEG-5グリセリル)(以上、日本エマルジョン株式会社製)、ユニオックスGM-5IS(イソステアリン酸PEG-5グリセリル、日本油脂株式会社製)、Mファインオイル ISG-20M(イソステアリン酸PEG-20グリセリル)(ミヨシ油脂株式会社製)、EMALEX GWIS-120(イソステアリン酸PEG-20グリセリル)、EMALEX GWIS-120EX(イソステアリン酸PEG-20グリセリル)(以上、日本エマルジョン株式会社製)、ユニオックスGM-20IS(イソステアリン酸PEG-20グリセリル)(日油株式会社製)、EMALEX GWIS-160(イソステアリン酸PEG-60)、EMALEX GWIS-160EX(イソステアリン酸PEG-60)(以上、日本エマルジョン株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
前記(B2)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベシクル含有組成物の全質量に対して、0.005質量%~0.5質量%が好ましく、0.02質量%~0.2質量%がより好ましい。前記(B2)成分の含有量が0.005質量%以上であると、べたつきのなさが良好であり、0.5質量%以下であると、前記(A)成分の溶解性及びベシクルの安定性が良好であり、またふっくらとしたはり感を好適に得ることができる。
【0035】
<<質量比[(B1)/(B2)]>>
前記(B2)成分のイソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの含有量(質量%)に対する前記(B1)成分のステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルの含有量(質量%)の質量比[(B1)/(B2)]は、0.01~10であるが、0.1~7が好ましい。前記質量比[(B1)/(B2)]が、0.01未満であると、ベシクルが形成できず、べたつきが生じ、10超であると、ベシクルが形成できず、肌なじみが悪く、べたつきが生じる。
【0036】
<(C)グリセリン>
前記(C)成分としてのグリセリンは、主に、粒径が小さく、歪みの少ないベシクルを形成するために配合される。
【0037】
前記(C)成分は、適宜合成したものであってもよく、市販品であってもよい。前記(C)成分の市販品としては、例えば、商品名で、RG・コ・P(日油株式会社製)、トリオール VE(高級アルコール工業株式会社製)、化粧品用濃グリセリン(ミヨシ油脂株式会社製)、食添用グリセリン-S(新日本理化株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
前記(C)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベシクル含有組成物の全質量に対して、1質量%~15質量%が好ましく、3質量%~7.5質量%がより好ましく、3質量%~4.5質量%が更に好ましい。前記(C)成分の含有量が1質量%以上であると、ベシクルが形成しやすく、15質以下であると、肌なじみのよさ及びべたつきのなさが良好である。
【0039】
<(D)一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコール>
前記(D)成分としての一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールは、主に、前記(A)成分の水素添加レシチンの溶解性の向上及びベシクルの形成のしやすさのために配合される。
【0040】
前記(D)成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、グルコース、ソルビトール、マルチトール、スクロース、ラフィノース、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、トレハロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(D)成分としては、前記(A)成分の水素添加レシチンの溶解性の向上及びベシクルの形成のしやすさの観点から、1,3-ブチレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
前記(D)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベシクル含有組成物の全質量に対して、1質量%~10質量%が好ましく、1.5質量%~8質量%がより好ましい。前記(D)成分の含有量が1質量%以上であると、前記(A)成分の溶解性及びベシクルの形成のしやすさが良好であり、10質以下であると、肌なじみのよさ及びべたつきのなさが良好である。
【0042】
<<質量比[(C)/(D)]>>
前記(D)成分の一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールの含有量(質量%)に対する前記(C)成分のグリセリンの含有量(質量%)の質量比[(C)/(D)]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5~5が好ましく、1~5がより好ましく、1.5~3が更に好ましい。前記質量比[(C)/(D)]が0.5以上であると、粒径が小さく、歪みの少ないベシクルを形成しやすく、5以下であると、前記(A)成分の溶解性が良好である。
【0043】
<<質量比[(B1+B2)/(C+D)]>>
前記(C)成分のグリセリンと前記(D)成分の一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールとの合計含有量(質量%)に対する、前記(B1)成分のステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと前記(B2)イソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとの合計含有量(質量%)の質量比[(B1+B2)/(C+D)]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.005~0.06が好ましく、0.005~0.04がより好ましく、0.01~0.04が更に好ましい。前記質量比[(B1+B2)/(C+D)]が0.05以上であると、肌なじみのよさ及びべたつきのなさが良好であり、0.06以下であると、ベシクルの形成のしやすさが良好である。
【0044】
<(E)イソステアリン酸及びポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種>
一実施形態に係るベシクル含有組成物は、ベシクルの形成の安定性の観点から、更に(E)成分としてのイソステアリン酸及びポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0045】
前記(E)成分としてのポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテル(以下、「POA・POEジアルキルエーテル」と略記することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0046】
【0047】
前記一般式(I)中、「R1」及び「R2」は、それぞれ独立して、炭素原子数1~4の炭化水素基又は水素原子を表し、「AO」は炭素原子数3~4のオキシアルキレン基を表し、「EO」はオキシエチレン基を表し、「m」はAOの平均付加モル数を表し、1≦m≦70であり、「n」はEOの平均付加モル数を表し、1≦n≦70であり、m+nは40以下である。
【0048】
前記一般式(I)中の「AO」の具体例としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。これらの中でも、前記一般式(I)中の「AO」は、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
【0049】
前記一般式(I)中の「m」は1≦m≦70であるが、1≦m≦30が好ましく、1≦m≦20がより好ましい。
【0050】
前記一般式(I)中の「n」は1≦n≦70であるが、1≦m≦30が好ましく、1≦m≦20がより好ましい。
【0051】
前記一般式(I)中の「m」と「n」との合計(m+n)は40以下であるが、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0052】
前記一般式(I)中の「AO」及び「EO」を付加する順序としては、特に制限はなく、前記一般式(I)で表される化合物は、「AO」と「EO」とをブロック状に付加したブロック共重合体であってもよく、「AO」と「EO」とをランダムに付加したランダム共重合体であってもよい。前記ブロック共重合体には、2段ブロックのみならず、3段以上のブロックを含む共重合体が含まれる。これらの中でも、前記一般式(I)で表される化合物は、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0053】
前記一般式(I)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100~10,000が好ましく、200~5,000がより好ましく、300~2,000が更に好ましい。
【0054】
前記一般式(I)で表される化合物の一分子中の「AO」と「EO」との合計に対するEOの割合[EO/(AO+EO)]は、20モル%~80モル%であることが好ましい。
【0055】
前記一般式(I)中の「R1」及び「R2」における炭素原子数1~4の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。これらの中でも、前記一般式(I)中の「R1」及び「R2」における炭素原子数1~4の炭化水素基は、メチル基、エチル基が好ましい。
【0056】
前記一般式(I)で表される化合物の一分子中の「R1」及び「R2」は、それぞれ同一の1種の炭化水素基であってもよく、炭化水素基と水素原子とが混在してもよく、炭素原子数が異なる複数の炭化水素基が混在していてもよい。ただし、「R1」及び「R2」の各々について、炭化水素基と水素原子との存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の比[Y/X]が0.15以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましい。
【0057】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル、PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル、PEG/PPG-11/9ジメチルエーテル、PEG/PPG-55/28ジメチルエーテル、PEG/PPG-36/41ジメチルエーテル、PEG/PPG-6/3ジメチルエーテル、PEG/PPG-8/4ジメチルエーテル、PEG/PPG-6/11ジメチルエーテル、PEG/PPG-14/27ジメチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(E)成分としてのポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルは、ベシクルの形成の安定性の観点から、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテルが好ましい。
【0058】
前記(E)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベシクル含有組成物の全質量に対して、0.01質量%~0.2質量%が好ましく、0.05質量%~0.1質量%がより好ましい。前記(E)成分の含有量が0.01質量%以上又は0.2質量%以下であると、ベシクルの形成のしやすさが良好である。
【0059】
<その他の成分>
一実施形態に係るベシクル含有組成物は、前記(A)成分、前記(B1)成分、前記(B2)成分、前記(C)成分、前記(D)成分、及び前記(E)成分に加え、更にその他の成分を含有していてもよい。
【0060】
前記その他の成分としては、一実施形態に係るベシクル含有組成物の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤、医薬品又は化粧品等に用いられる任意の添加剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記その他の成分は、その性質に応じて、一実施形態に係るベシクル含有組成物における連続相としての水相、ベシクルに内在する分散相としての水相、又はベシクル二分子膜内における分散相としての油相に配合され得る。
【0062】
前記その他の成分の含有量としては、一実施形態に係るベシクル含有組成物の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0063】
なお、前記(A)成分の作用を効果的に奏するために、ステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤は実質的に含まないことが好ましい。ここで「実質的に含まない」とは、本発明の効果を奏することができる含有量であればよいが、前記(A)成分の含有量と等量が好ましく、前記(A)成分の含有量の半量がより好ましく、0質量%が更に好ましい。
【0064】
一実施形態に係るベシクル含有組成物は、水素添加レシチンの溶解性及びベシクルの形成性に優れ、ふっくらとしたはり感を付与することができる。上記した通り、前記(A)成分を含むベシクルは、その閉鎖型小胞体の内部に水性成分を保持することができ、及び/又は閉鎖型小胞体膜内に油性成分を保持することができるため、一実施形態に係るベシクル含有組成物は、例えば、薬剤を保持させて生体内に投与し、薬効を長期間にわたって維持できるなどの利点から、医薬、化粧品、食品分野等におけるマイクロカプセルとして用いることができる。また、ベシクルを形成することによって、透明性等の外観にも優れる組成物が得られるため、一実施形態に係るベシクル含有組成物は、化粧料やその基材等の皮膚外用剤としても好適に使用できる。
【0065】
<<ベシクル含有組成物の製造方法>>
一実施形態に係るベシクル含有組成物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いて適宜製造することができる。例えば、一実施形態に係るベシクル含有組成物は、前記(A)成分の水素添加レシチンと、前記(B1)成分のステアリン酸残基を有するグリセリン脂肪酸エステルと、前記(B2)成分のイソステアリン酸残基を有するポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルと、前記(C)成分のグリセリンと、前記(D)成分の一分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールと、更に必要に応じて、前記(E)成分のイソステアリン酸及びポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種と、前記その他の成分と、を撹拌して混合することによって得ることができる。
【0066】
上記製造方法によって、前記(B1)成分、前記(B2)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分、更に必要に応じて、前記(E)成分及び前記その他の成分を含有する溶媒中に、前記(A)成分、更に必要に応じて、前記その他の成分を含有するベシクルを自発的に形成することができる。
【0067】
(皮膚外用剤)
一実施形態に係る皮膚外用剤は、本発明のベシクル含有組成物を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。一実施形態に係る皮膚外用剤は、本発明のベシクル含有組成物を含有するため、皮膚にふっくらとしたはり感を付与することができ、肌なじみが良く、べたつきのないものである。
【0068】
<ベシクル含有組成物>
一実施形態に係る皮膚外用剤が含有するベシクル含有組成物は、本発明のベシクル含有組成物である。
一実施形態に係る皮膚外用剤における前記ベシクル含有組成物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記皮膚外用剤は、前記ベシクル含有組成物そのものであってもよい。
【0069】
<その他の成分>
一実施形態に係る皮膚外用剤は、前記ベシクル含有組成物に加え、更にその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、一実施形態に係るベシクル含有組成物の効果を損なわない限り、特に制限はなく、化粧料に通常配合し得るような成分の中から適宜選択することができ、例えば、低級アルコール、各種抽出液、保湿剤(ただし、前記(A)成分、前記(B1)成分、前記(B2)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分を除く)、油剤、水溶性高分子、粉体、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、色素、香料、キレート剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、抗菌剤、皮膚有効成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記その他の成分の含有量としては、前記ベシクル含有組成物の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
一実施形態に係る皮膚外用剤は、例えば、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、サンケア料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム等のスキンケア化粧料;化粧用下地化粧料等の化粧料;ファンデーション、アイシャドウ、頬紅、口紅等のメーキャップ化粧料;ヘアセット剤、ヘアジェル等の毛髪化粧料又は染毛剤;外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等の外用剤などに好適に使用することができる。
【実施例0072】
以下に実施例及び比較例を挙げて実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「%」の記載はいずれも「質量%」を表し、各成分は全て純分換算した値であり、配合量はベシクル含有組成物の全質量に対する「質量%」を示す。また、(B2)成分の含有量(質量%)に対する、(B1)成分の含有量(質量%)の質量比[(B1)/(B2)]は、小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位まで求め記載した。(D)成分の含有量(質量%)に対する、(C)成分の含有量(質量%)の質量比[(C)/(D)]、及び(B1)成分及び(B2)成分の合計含有量(質量%)に対する、(A)成分の含有量(質量%)の質量比[(A)/(B1+B2)]は、いずれも小数点以下第2位を四捨五入し、小数点以下第1位まで求め記載した。また、(C)成分及び(D)成分の合計含有量(質量%)に対する、(B1)成分及び(B2)成分の合計含有量(質量%)の質量比[(B1+B2)/(C+D)]は、小数点以下第4位を四捨五入し、小数点以下第3位まで求め記載した。
【0073】
(実施例1~14及び比較例1~5)
下記表1~表4に記載の組成及び配合量の実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物を常法により調製した。
具体的には、25℃、相対湿度50%、時間の条件下で、(C)成分と(D)成分とを80℃~90℃に加温した混合溶液を調製し、該混合溶液中に(B1)成分又は(B1)の比較成分、(B2)成分又は(B2)の比較成分、及び(E)成分を添加し、混合した。この混合溶液に(A)成分を添加して手動にて撹拌混合を実施した後、ホモミキサー(T.K.ロボミックス、PRIMIX社製)で混合した。十分に撹拌した後、この混合溶液に精製水を添加し、再度ホモミキサー(T.K.ロボミックス、PRIMIX社製)による混合を行い、実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物を得た。
【0074】
<評価>
得られた実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物について、以下のようにして、「(A)成分の溶解性」、「ベシクルの形成のしやすさ」、「ベシクルの安定性」、「ふっくらとしたはり感」、「べたつきのなさ」、及び「肌なじみのよさ」について評価した。評価結果を下記表1~表4に示した。
【0075】
<<(A)成分の溶解性>>
実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物中のベシクルの溶解性は、各ベシクル含有組成物の調製の際の(A)成分の溶解時間、及び溶解後の外観で評価した。
【0076】
具体的には、25℃、相対湿度50%、時間の条件下で、(C)成分と(D)成分とを80℃~90℃に加温した混合溶液を調製し、該混合溶液中に(B1)成分、(B2)成分、及び(E)成分を添加し、混合した。この混合溶液に(A)成分を添加して手動にて撹拌混合を実施した時の(A)成分の溶解時間を確認した。その後、専門評価者が目視にて外観を確認し、下記評価基準に基づき評価した。なお、評価基準A及びBが実用可能な範囲である。
-ベシクルの溶解性の評価基準-
A:(A)成分が5分間以内に溶解し、得られた組成物はやや透明度があり、分離及び沈殿が認められない。
B:(A)成分が5分間超10分間以内に溶解し、得られた組成物は透明度が若干ある、及び/又は、分離がわずかに認められる。
C:(A)成分が10分間超で溶解又は10分間を超えても溶解せず、得られた組成物は透明度が低い、及び/又は、分離及び不溶解物が多く認められる。
【0077】
<<ベシクルの形成のしやすさ>>
実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物のベシクルの形成のしやすさは、粒径測定装置(ZETASIZER NANO-S90、マルバーン・パナリティカル社製)を用いて測定し、評価した。
具体的には、粒子(ベシクル)の濃度が0.1質量%となるようにベシクル含有組成物を純水で希釈した後、0.45μmのフィルターで不純物を除去し、測定用サンプルを調製した。この測定用サンプルを、25℃における散乱強度を散乱角度173°(後方散乱光)の条件で測定し、測定装置に搭載されている解析ソフトで平均粒径及び分散度を算出した。粒径はキュムラント解析法により解析し、分散度はキュムラント解析で得られる2次キュムラントの値を規格化した数値である。この分散度は一般的に用いられているパラメーターであり、市販の動的光散乱測定装置を用いることで自動的に解析が可能である。粒径解析に必要な溶媒の粘度は、25℃の純水の粘度、即ち0.89mPa・sの値を用いた。測定した粒度分布より、下記評価基準に基づき評価した。なお、評価基準A及びBが実用可能な範囲である。
-ベシクルの形成のしやすさの評価基準-
A:ベシクルの平均粒径が200nm以下で、得られた組成物は透明度があり分離及び不溶解物が認められない。
B:ベシクルの平均粒径が200nm超1μm以下で、得られた組成物はやや透明度があり分離及び不溶解物は認められない。
C:ベシクルの平均粒径が1μm超で、得られた組成物は透明度が低く、分離及び不溶解物がわずかに認められる。
【0078】
<<ベシクルの安定性>>
実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物のベシクルの形成の安定性は、各ベシクル含有組成物の外観で評価した。
具体的には、実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物を透明ガラス容器に密閉し、専門評価者が、初期の透明度、並びに、分離及び/又は沈殿の有無を目視にて観察した。次いで、前記ベシクル含有組成物を密閉した透明ガラス容器を25℃、相対湿度50%、24時間の条件で静置した後、専門評価者が、透明度、並びに、分離及び/又は沈殿の初期からの変化の度合いを目視にて観察し、下記評価基準に基づき評価した。なお、評価基準A及びBが実用可能な範囲である。
-ベシクルの溶解性の評価基準-
A:初期からの透明度に変化がなく、かつ分離及び沈殿が認められない。
B:初期からの透明度に比べてやや透明度が悪い、及び/又は、分離及び沈殿がわずかに認められる。
C:初期からの透明度に比べて非常に透明度が悪い、及び/又は、分離及び沈殿が多く認められる。
【0079】
<<ふっくらとしたはり感>>
専門パネル10名が、実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物0.4gを手に取り、全顔に全量を塗布した後のふっくらとしたはり感を評価し、下記評価基準に基づき評価した。なお、評価基準A及びBが実用可能な範囲である。
-ふっくらとしたはり感の評価基準-
A:10名中9名以上が、ふっくらとしたはり感があると回答した
B:10名中7名以上8名以下が、ふっくらとしたはり感があると回答した
C:10名中6名以下が、ふっくらとしたはり感があると回答した
【0080】
<<べたつきのなさ>>
専門パネル10名が、実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物0.4gを手に取り、全顔に全量を塗布した後のべたつきのなさを評価し、下記評価基準に基づき評価した。なお、評価基準A及びBが実用可能な範囲である。
-べたつきのなさの評価基準-
A:10名中9名以上が、べたつきがないと回答した
B:10名中7名以上8名以下が、べたつきがないと回答した
C:10名中6名以下が、べたつきがないと回答した
【0081】
<<肌なじみのよさ>>
専門パネル10名が、実施例1~14及び比較例1~5のベシクル含有組成物0.4gを手に取り、全顔に全量を塗布した後の肌なじみのよさを評価し、下記評価基準に基づき評価した。なお、評価基準A及びBが実用可能な範囲である。
-肌なじみのよさの評価基準-
A:10名中9名以上が、肌なじみがよいと回答した
B:10名中7名以上8名以下が、肌なじみがよいと回答した
C:10名中6名以下が、肌なじみがよいと回答した
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
なお、実施例及び比較例において、各成分としては、以下のものを使用した。
・ 水添レシチン:NIKKOL レシノール S-10E(精製水素添加大豆リン脂質、日光ケミカルズ株式会社製)
・ モノステアリン酸グリセリル:サンステン18GKV(MB)(太陽化学株式会社製)
・ オレイン酸グリセリル:SUNSOFT O-30S-C(太陽化学株式会社製)
・ イソステアリン酸PEG-60グリセリル:EMALEX GWIS-160(日本エマルジョン株式会社製)
・ イソステアリン酸PEG-20グリセリル:EMALEX GWIS-120(日本エマルジョン株式会社製)
・ イソステアリン酸PEG-5グリセリル:EMALEX GWIS-105(日本エマルジョン株式会社製)
・ ステアリン酸PEG-5グリセリル:EMALEX GM-5(日本エマルジョン株式会社製)
・ PEG-30フィトステロール:NIKKOL BPS-30(日光ケミカルズ株式会社製)
・ グリセリン:化粧品用濃グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)
・ 1,3-ブチレングリコール:1,3-BG(Cosmetic Quality)(長瀬産業株式会社製)
・ ジプロピレングリコール:ジプロピレングリコール・DPG-FC(不二化成株式会社製)
・ イソステアリン酸:イソステアリン酸 EX(高級アルコール工業株式会社製)
【0087】
以上の通り、本発明を具体的な実施形態及び実施例に基づいて説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものにすぎず、本発明は上記実施形態及び実施例により限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、付加、変更等を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。